印刷装置、及び、印刷方法
【課題】画像の盛り上がりを目立ち難くする。
【解決手段】光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と被印刷材に光を照射する照射部とを有するヘッド部と、ヘッド部と被印刷材とを相対移動させる移動機構と、移動機構を制御して、ヘッド部と被印刷材とを相対移動させ、複数の吐出部から複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、被印刷材に着弾した光硬化性インクに照射部から光を照射させる制御部と、を備え、被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、制御部は、複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成する。
【解決手段】光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と被印刷材に光を照射する照射部とを有するヘッド部と、ヘッド部と被印刷材とを相対移動させる移動機構と、移動機構を制御して、ヘッド部と被印刷材とを相対移動させ、複数の吐出部から複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、被印刷材に着弾した光硬化性インクに照射部から光を照射させる制御部と、を備え、被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、制御部は、複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光(例えば、紫外線(Ultra Violet Light:「UV」と略す)や可視光など)の照射によって硬化する光硬化性の液体(例えば、紫外線硬化性インク、「UVインク」と略す)を吐出して印刷を行う印刷装置として、例えばプリンターが知られている。このようなプリンターでは、ノズルから紙、布、フィルムシート等の被印刷材にUVインクを吐出した後、被印刷材に形成されたドットに光を照射する。これにより、ドットが硬化して被印刷材に定着する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-74878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UVインクは紫外線により瞬時に硬化が可能なので、非吸収性媒体に印刷が可能であり、浸透性インク(例えば水性インク)などを用いて画像を吸収性媒体に印刷した場合と比べて、印刷画像を構成するドットが被印刷材の表面から盛り上がって形成される。
更に、UVインクを用いて被印刷材に画像を印刷した場合、印刷画像のエッジ近傍が他の部分よりも特に盛り上がる現象(厚盛り現象)が生じるおそれがある。そして、厚盛り現象に起因して、印刷画像の一部のみで光が正反射された状態で印刷画像が視認されると、印刷画像が立体的に見えてしまい、印刷画像が実際よりも厚く知覚されて、印刷画像の画質を悪化させる原因になる。
【0005】
そこで、本発明は、画像の盛り上がりを目立ち難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させ、前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる制御部と、を備え、前記被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、前記制御部は、前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成することを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aは、UVインクを用いて被印刷材に印刷した印刷画像の説明図である。図1Bは、図1Aの点線で示す領域(エッジ近傍)の厚さの測定値のグラフである。
【図2】図2Aは、図1Aの印刷画像を上から見た図である。図2Bは、図2Aの印刷画像の一部で光が正反射したときの様子の説明図である。
【図3】印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図4】プリンター1の斜視図である。
【図5】プリンター1のヘッド周辺の概略図である。
【図6】図6A及び図6Bは、プリンター1の横断面図である。
【図7】ヘッド31の構成の説明図である。
【図8】コンピューター110のプリンタードライバーの機能の説明図である。
【図9】光吸収層生成処理のフロー図である。
【図10】図10A〜図10Gは、パスによる画像形成の様子の一例を示す概略説明図である。
【図11】第1実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図12】第1実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図13】第1実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である
【図14】第2実施形態のヘッドの構成の説明図である
【図15】第2実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図16】第2実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である
【図17】第2実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図18】ラインプリンターによる本発明の実施形態の概略説明図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させ、前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる制御部と、を備え、前記被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、前記制御部は、前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成することを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれは、光吸収層により画像の盛り上がり部分の光散乱を抑制でき、色味や光沢感の変化を抑えることができる。よって、画像の盛り上がり部分を目立ち難くするができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記画像の盛り上がり部分は、前記画像の縁の端部領域であることが望ましい。
このような印刷装置によれは、印刷画像が立体的に知覚されないようにすることができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、各吐出部からの前記光硬化性インクの吐出量を制御することによって前記被印刷材に大きさの異なる複数種類のドットを形成し、前記複数種類のドットのうちの最も小さいドットを用いて前記光吸収層を形成することが望ましい。
このような印刷装置によれば、光吸収層を形成した領域と、光吸収層を形成していない領域とにおいて画像の色合いに違いが生じるのを抑制することができる。
【0013】
また、前記光吸収層は、前記画像の盛り上がり部分に黒色のドットが離散的に配置されて形成されたものであることが望ましい。
このような印刷装置によれば、光吸収層を形成した領域と、光吸収層を形成していない領域とにおいて画像の色合いに違いが生じるのを抑制することができる。また、画像の盛り上がりをより目立ち難くすることができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記複数の吐出部は、主画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第1吐出部と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第2吐出部と、を有し、前記制御部は、前記第1吐出部及び前記第2吐出部からの前記光硬化性インクの吐出をそれぞれ制御することによって、前記主画像と前記補助画像とを重ねて形成し、且つ、前記主画像及び前記補助画像の盛り上がり部分に前記光吸収層を形成することが望ましい。
このような印刷装置によれば、主画像と補助画像とによる盛り上がり部分が大きくなるので、より効果的に盛り上がりを抑えることができる。
【0015】
また、光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部を備えた印刷装置により前記被印刷材に画像を印刷する印刷方法であって、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる相対移動工程と、前記被印刷材に対して相対的に移動する前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出し、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射する画像形成工程と、前記被印刷材に対して相対的に移動する前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成し、前記光吸収層に前記照射部から前記光を照射する光吸収層形成工程と、を有することを特徴とする印刷方法が明らかとなる。
【0016】
以下の実施形態では、インクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0017】
===概要===
<厚盛り現象・厚盛り感について>
プラスチックフィルム等のような被印刷材はインクを吸収しにくい性質を有するため、このような被印刷材にインクジェット方式によって印刷を行う際に、光硬化性インクとしてUVインクが用いられることがある。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、紫外線(UV)が照射されると硬化する性質を有する。UVインクを硬化させてドットを形成することによって、インク受容層を持たずインク吸収性の無い被印刷材に対しても印刷を行うことができる。なお、インク受容層を持たない被印刷材としては、例えばフィルム(具体的には、塩化ビニールフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)フィルム等)がある。
【0018】
但し、UVインクで形成されたドットは被印刷材の表面で隆起しているため、UVインクを用いて被印刷材に印刷画像を形成すると、被印刷材の表面に凹凸ができる。また、印刷画像が塗り潰し画像である場合には、印刷画像が厚みを有することになる。
【0019】
図1Aは、UVインクを用いて被印刷材に印刷した印刷画像の説明図である。
UVインクは紫外線(UV)により瞬時に硬化が可能なので、UVインクを用いて画像を印刷すると、被印刷材のインク吸収性に依存せずに、ドットが盛り上がって形成される。塗り潰し画像を印刷すると、UVインクで形成されたドットが所定の領域を埋め尽くすため、厚みのある印刷画像Gが被印刷材S上に形成されることになる。例えば、被印刷材Sに文字を印刷する場合、厚みのある文字画像(塗り潰し画像)が被印刷材S上に形成されることになる。UVインクを用いて印刷された印刷画像Gの厚さは、数μm程度になる。
【0020】
図1Bは、図1Aの点線で示す領域T(エッジ近傍)の厚さの測定値のグラフである。グラフの横軸は被印刷材Sの位置を示し、縦軸はドットの高さ(印刷画像Gの厚さ)を示している。なお、印刷画像Gは、インク重量を10ngとしてドットを形成し、720×720dpiの印刷解像度で塗り潰した画像である。印刷画像Gの厚さは、ミツトヨ社製のノンストップCNC(Computer Numerical Control)画像測定機Quick Vision Stream plusを用いて測定した。図に示すように、この印刷画像Gは、5μmほどの厚さである。
【0021】
グラフ中の位置Xは、印刷画像Gの最も外側の位置を示している。言い換えると、位置Xは、印刷画像Gの端(エッジ)の位置を示している。また、グラフ中の位置Aは、印刷画像のエッジ近傍における最厚位置(最も高い位置)を示している。言い換えると、位置Aは、印刷画像Gのエッジ近傍における突出部分の位置を示している。
【0022】
位置Aは、位置Xから約200μmほど内側に位置している。位置Xから位置Aまでの領域(グラフ中の領域B)では、印刷画像の内側ほどインクが厚くなっている。位置Aでは厚さが最大(約6μm)になる。また、位置Aから位置Dまでの領域(グラフ中の領域C)では、内側(図面右側)に向けて印刷画像G(インク層)が薄くなっていく。そして位置Dで厚さが5μm程度に達し、それより内側では、ほぼ一様な厚さになる。
【0023】
本明細書では、グラフ中の位置Aのように、エッジ近傍が他の部分よりも特に盛り上がる現象のことを「厚盛り現象」と呼ぶ。この厚盛り現象は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象である。また、本明細書では、エッジ近傍、具体的には、印刷画像を形成する領域(以下、画像形成領域ともいう)のうち画像の端(例えば、図1Bの位置X)から画像の厚さが一様になる位置(例えば、図1Bの位置D)までの領域Bと領域Cを合わせた領域のことを端部領域Eと呼ぶ。図1Bの場合、端部領域Eは、画像の端からの距離が約580μm以下の領域である。図1Bにおいて符号Fで示す箇所が画像形成領域である。
【0024】
図2Aは、図1Aの印刷画像Gを上から見た図である。図2Bは、図2Aの印刷画像の一部で光が正反射したときの様子の説明図である。図2Bでは、印刷画像の内側で光って視認される部分を白く示している。
【0025】
印刷画像の中央部分では、厚さがほぼ一様になっているため、一様な光沢性が得られる。但し、印刷画像のエッジ近傍(端部領域E)では、厚さが一様ではないため、一様な色味や光沢性は得られない。
【0026】
エッジ近傍では、厚盛り現象のため、印刷画像は一様な厚さにはならず、印刷画像のエッジよりも内側に、エッジに沿った突出部分が形成される。この結果、光の反射角次第によって、図2Bに示すように、印刷画像Gの一部(Ge)がエッジに沿って光って視認されることがある。観察者の目、光源及び印刷画像の位置関係・角度によって、図1Bの傾斜領域で正反射した光が観察者の目に入り、図2Bに示すように印刷画像Gが視認されるのである。
【0027】
図2Bに示すように、エッジに沿って印刷画像Gの一部(Ge)が光って見えると、印刷画像全体が立体的に知覚されてしまう。喩えると、コンピューター・グラフィックスで3次元物体をディスプレイ上で2次元画像として物体の一部の輝度を明るく表示したときのように(例えば光線追跡法により3次元物体を2次元画像として表示したときのように)、印刷画像が立体的に知覚されてしまう。この結果、実際には5μmほどの厚さであるにも関わらず、印刷画像Gの観察者には、それ以上に厚く知覚されてしまうことになる。
【0028】
本明細書では、この厚盛り現象のために印刷画像が実際よりも厚く知覚されることを「厚盛り感」と呼ぶ。「厚盛り感」という課題は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の課題である。
【0029】
なお、通常の製版印刷(フレキソ印刷やオフセット印刷など)による印刷画像は、UVインクを用いた印刷画像と比べると、厚さがほとんど無い。このため、通常の製版印刷による印刷画像では、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。また、被印刷材Sにインクを浸透させて印刷した印刷画像も、印刷画像の厚さはほとんど無い。このため、被印刷材Sにインクを浸透させて印刷した印刷画像でも、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。このように、厚盛り現象や厚盛り感は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象・課題である。
【0030】
そこで、以下に示す実施形態では、画像の盛り上がり部分(具体的には端部領域E)の、厚盛り感を抑制するようにしている。
【0031】
===第1実施形態===
≪印刷システムの構成≫
図面を参照しながら第1実施形態の印刷装置の基本的な構成について説明する。図3は、印刷システムの構成を示すブロック図である。図4は、プリンター1の斜視図である。図5は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図6A及び図6Bは、プリンター1の横断面図である。図6Aは図5のA−A断面に相当し、図6Bは図5のB−B断面に相当する。
【0032】
なお、本実施形態において、以下に説明するプリンター1と、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター110とから構成される装置(システム)は、印刷装置に該当する。そして、プリンター1のコントローラー60とコンピューター110は、印刷装置を制御するための制御部を構成している。なお、これには限定されず、例えば、コンピューター110、あるいは、コントローラー60のみで制御部を構成してもよい。
【0033】
<コンピューターについて>
コンピューター110は、図3に示すように、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。プリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。
【0034】
<プリンターについて>
プリンター1は、紙、布、フィルムシート等の被印刷材Sに向けて、光の一種である紫外線(UV)の照射によって硬化するUVインクを吐出することにより、被印刷材Sに画像を印刷する装置である。UVインクは、前述したように紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。
【0035】
プリンター1は、図3に示すように、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、被印刷材Sに画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0036】
搬送ユニット10は、被印刷材S(例えば、塩化ビニールフィルム)を相対的搬送方向(以下、単に搬送方向ともいう)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モーター(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する(図6A、図6B参照)。給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された被印刷材Sをプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された被印刷材Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の被印刷材Sを支持する。排紙ローラー15は、被印刷材Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0037】
キャリッジユニット20(移動機構に相当する)は、被印刷材Sの搬送方向と交差する方向(以下、移動方向ともいう)に、ヘッド等を移動させるためのものである。なお、交差する方向とは一般的に直交方向のことである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター22とを有する(図4参照)。また、キャリッジ21は、UVインクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。そして、キャリッジ21は、後述するヘッド31及び照射部42a、42bを搭載しており、搬送方向と交差したガイド軸24に支持された状態で、キャリッジモーター22によりガイド軸24に沿って往復移動する。
【0038】
ヘッドユニット30は、被印刷材Sに液体(本実施形態ではUVインク)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える(図5参照)。このヘッド31はキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動中にノズルからUVインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が被印刷材Sに形成される。以下の説明において、移動方向の一端側から他端側に向かって移動する経路のこと往路と呼び、他端側から一端側に移動する経路のことを復路と呼ぶ。本発明の実施形態では、往路及び復路の両期間中にUVインクが吐出される。すなわち、プリンター1は、双方向印刷を行なう。
なお、ヘッド31の構成については、後述する。
【0039】
照射ユニット40は、被印刷材に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。被印刷材上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることによって硬化する。照射ユニット40は、照射部42a、42bを備えている。なお、照射部42a、42bは、キャリッジ21に設けられている。このため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、照射部42a、42bも移動方向に移動する。
【0040】
照射部42a、42bは、ヘッド31を挟むようにして、キャリッジ21上の移動方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。また、照射部42a、42bの搬送方向の長さは、ヘッド31のノズル列の長さとほぼ同じかそれよりも長くなっている。言い換えると、照射部42a、42bは、ヘッド31の各ノズル列と移動方向に並ぶ位置に設けられている。そして、照射部42a、42bは、ヘッド31とともに移動して、ヘッド31のノズル列がドットを形成する範囲にUVを照射する。なお、照射部42a、42bのUV照射の光源としては、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などが用いられる。光源がLEDの場合、入力電流の大きさを制御することによって、UVの照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
【0041】
検出器群50には、リニア式エンコーダー51、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー53、および光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダー51(検出部に相当する)は、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の被印刷材Sの先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、被印刷材Sの有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ21によって移動しながら被印刷材Sの端部の位置を検出し、被印刷材Sの幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、被印刷材Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0042】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、図3に示すように、インターフェイス部61と、CPU(Central Processing Unit)62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0043】
印刷を行うとき、コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向に移動させつつヘッド31からUVインクを吐出させるドット形成動作と、搬送方向に被印刷材Sを搬送する搬送動作とを繰り返し、複数のドットから構成される画像を被印刷材Sに印刷する。以下の説明において、キャリッジ21を(相対的に)被印刷材に対して所定の方向(図面上左又は右)に移動させてドット形成動作やUV照射を行う走査のことを「パス」と呼ぶ。パスの際には、被印刷材Sに対してヘッド31及び照射部42a、42bが相対的に移動する。なお、このとき、後述するように照射部42a、42bによるUV照射も行なわれる。
【0044】
<ヘッド31の構成について>
図7は、ヘッド31の構成の一例の説明図である。この図7はヘッド31を下から(プラテン14側から)見た図である。図ヘッド31の下面には、図7に示すように、ブラックインクノズル列Nkと、シアンインクノズル列Ncと、マゼンダインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyとが形成されている。各ノズル列は、各色のUVインクを吐出するための吐出口であるノズル(吐出部に相当する)を複数個(本実施形態では180個)備えている。以下の説明において、ブラックインク(黒インク)、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクのことをカラーインクともいい、カラーインクによって形成される画像のことをカラー画像ともいう。
【0045】
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:D)でそれぞれ整列している。
【0046】
各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが吐出される。吐出されたUVインクは、被印刷材Sに着弾してドットを形成する。
【0047】
≪プリンタードライバーの処理について≫
プリンター1のユーザーが、アプリケーションプログラム上で描画した画像の印刷を指示すると、コンピューター110のプリンタードライバーが起動する。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する。アプリケーションプログラムからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理などを行う。また、プリンタードライバーは、光吸収層を形成するためのデータを生成する光吸収層生成処理も行う。
【0048】
図8は、コンピューター110のプリンタードライバーの機能の説明図である。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、被印刷材に印刷する解像度(印刷解像度)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。
【0049】
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。なお、CMYKデータは、プリンターが有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて、行われる。なお、色変換処理後の画素データは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。
【0050】
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素毎に2ビットの画素データが対応している。2ビットの画素データは、ドットの有無及びドットの大きさを示すデータになる。例えば、画素データ[00]の場合はドット無し(ドット非形成)、画素データ[01]の場合は小ドット形成、画素データ[10]の場合は中ドット形成、画素データ[11]の場合は大ドット形成というデータになる。なお、画素データを1ビットデータ(2階調)とし、画素データがドットの有無のみを示すようにしても良い。いずれの場合においても、ハーフトーン処理後の画素データは、被印刷材に形成すべきドットを示すデータとなる。
【0051】
光吸収層生成処理は、画像の盛り上がり部分(本実施形態の場合、印刷画像の端部領域)に光吸収層を形成するためのデータを生成する処理である。本実施形態の場合、ブラックインクによる黒色の小ドットを端部領域に離散的に配置することによって光吸収層を形成する。よって、この光吸収層生成処理で生成されるデータは、ブラックインクノズル列Nkからブラックインクを吐出させるためのデータである。
【0052】
図9は、図8の光吸収層生成処理のフロー図である。
まず、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後の画像データに対してエッジ抽出処理を施し、印刷画像の端(エッジ)に位置するエッジ画素を抽出する(S001)。
【0053】
次に、プリンタードライバーは、エッジ画素から所定距離(例えば0.5μm)の領域(端部領域)を定める(S002)。これにより印刷画像の縁に沿って、例えば0.5μmの幅の端部領域が定められる。
【0054】
そして、プリンタードライバーは、端部領域に含まれる複数の画素について、一定(例えば5%程度)の割合で画素データを「01」とし、その他の画素の画素データを「00」とした光吸収層を形成するためのデータ(以下、光吸収層データともいう)を生成する(S003)。この光吸収層データは、端部領域にはドット(黒の小ドット)を低デューティーで形成し、端部領域以外には、ドットを形成しないデータになる。なお、デューティーとは、単位領域を構成する画素数に対して実際に形成されるドット数の割合のことである。例えばデューティーが10%の場合、10画素に対して1つの画素にドットを形成することになる。
【0055】
このようにして、プリンタードライバーは、カラー画像用のUVインク(カラーインク)を吐出するための画像データとは別に、ブラックインクノズル列Nkを用いて光吸収層を形成するための光吸収層データを生成する。
【0056】
コンピューター110は、4階調の画素データからなる画像データ及び光吸収層データに制御データを付加して印刷データを生成し、印刷データをプリンター1に送信する(図8参照)。印刷データを受信したプリンター1のコントローラー60は、印刷データに含まれている制御データに従って各ユニットを制御すると共に、画像データに従ってヘッド31の各ノズルから選択的にUVインクを吐出して、被印刷材上に画像を印刷する。また、プリンター1は、光吸収層データに従ってヘッド31のブラックインクノズル列Nkのノズルからブラックインクを吐出して光吸収層を形成する。
【0057】
≪印刷動作の概要≫
前述したように、コントローラー60は、印刷データに基づいてキャリッジ21を移動方向に移動させつつヘッド31のノズルからインクを吐出させるパスと、被印刷材Sを搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返し実行して被印刷材Sの画像形成領域にドットを形成する。また、パスの際には、コントローラー60は、照射部42a、42bのうちキャリッジ21の移動方向に対して上流側の照射部からUVを照射させる。これにより被印刷材Sに着弾したUVインク(ドット)に直ちにUVを照射することができる。また、コントローラー60は、パスの合間に被印刷材Sを搬送方向に搬送させる(搬送動作)。
【0058】
図10A〜図10Gは、パスによる画像形成の様子の一例を示す概略説明図である。なお、図において、UVを照射する照射部を斜線で示している。
【0059】
コントローラー60は、コンピューター110から印刷データ(画像データ及び光吸収層データを含む)を受信し、これらのデータに基づいてパスと搬送動作を繰り返し行っていく。
【0060】
まず、往路のパスでは、図10Aに示すように、コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向の一端側の待機位置(以下、ホームポジションともいう)から移動方向の他端側に向けて移動させる。そして、キャリッジ21が画像形成領域に達すると、図10Bに示すように、画像データに基づいて、移動するヘッド31の各ノズルから選択的に被印刷材Sにインクを吐出させ、且つ、移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。被印刷材Sに着弾したUVインク(カラーインク)は照射部42aからのUVの照射を受けて直ちに硬化される。
【0061】
コントローラー60は、キャリッジ21が画像形成領域を通過するとヘッド31からのインクの吐出を停止させ、また、照射部42aからのUVの照射を停止させる。そして、図10Cに示すように、キャリッジ21が移動範囲の端(他端)に達すると、キャリッジ21を停止させる。このパスにより被印刷材Sにはカラーインクによる画像(カラー画像)が印刷される。このカラー画像は、前述したように画像の縁(端部領域E)が盛り上がって形成される。
【0062】
コントローラー60は続いて、キャリッジ21の移動方向を反転させて、復路のパスを実行する。復路のパスでは、コントローラー60は、光吸収層データに基づいてドットの形成(ブラックインクノズル列Nkを用いたドット形成)を行う。
【0063】
図10Dに示すように、キャリッジ21が、移動方向の他端側の端部領域E(すなわち画像の盛り上がり部分)に達すると、コントローラー60は、ブラックインクノズル列Kの各ノズルから低デューティーでブラックインクを吐出させてドット(黒の小ドット)を形成させる。また、コントローラー60は、復路のパスでは、移動方向の上流側とに位置する照射部42bからUVを照射させる。こうして、カラー画像の端部領域E上に光吸収層が形成される。
【0064】
図10Eに示すように、キャリッジ21が移動方向の他端側の端部領域Eを通過すると、コントローラー60は、ブラックインクノズル列Nkからのブラックインクの吐出を停止させ、照射部42bからのUV照射のみを行う。なお、往路のパスでドット(カラー画像)が完全に硬化している場合、UV照射も行わないようにしてもよい。
【0065】
そして、図10Fに示すように、キャリッジ21が移動方向の一端側の端部領域Eに達すると、コントローラーは、再度、ブラックインクノズル列Nkの各ノズルから低デューティーでブラックインクを吐出させてドット(黒の小ドット)を形成させる。
【0066】
その後、キャリッジ21が端部領域Eを通過すると、コントローラー60は、ブラックインクノズル列Nkからのインクの吐出、及び、照射部42bからのUV照射を停止させる。そして、図10Gに示すように、キャリッジ21が移動範囲の端(ホームポジション)に達すると、キャリッジ21の移動を停止させる。
【0067】
その後、コントローラー60は、被印刷材Sをノズル列長さ分だけ搬送方向に搬送させる(搬送動作)。これにより、印刷領域に位置していた被印刷材S(ドットの形成された部分)が印刷領域の搬送方向下流側に搬送され、被印刷材Sの未だ印刷されていない部分が印刷領域に搬送される。
【0068】
以下、同様にしてコントローラー60は、パス(往路のパス及び復路のパス)と搬送動作を繰り返し実行させる。これにより被印刷材Sに画像が印刷されていく。
【0069】
≪印刷画像について≫
図11は、第1実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。前述した厚盛り現象のため、UVインクによって形成されたカラー画像は、画像の縁(端部領域E)で盛り上がっている。本実施形態では、図11に示すように、端部領域Eにブラックインクを吐出して黒色の光吸収層を形成している。このように、画像の盛り上がり部分に黒色の光吸収層を設けることによって、光の散乱を抑制することができ、色味や光沢の変化を抑えることができる。このため、目視上、画像の盛り上がり部分を目立ち難くすることができる。これにより、画像の厚盛り感を抑制することができる。また、端部領域Eの厚盛り感を抑制することにより、印刷画像が立体的に知覚ないようにすることができる。
【0070】
また、もし仮に、光吸収層を黒の大ドットで形成したり、高デューティーで形成したりすると、光吸収層を形成した領域(端部領域E)と、光吸収層を形成していない領域(端部領域Eと隣接する領域)との画像の色合いが変わってしまうおそれがある。これに対し本実施形態では、黒の小ドットを離散的に配置して(黒色の)光吸収層を形成している。よって、光吸収層を形成した領域(端部領域E)と、光吸収層を形成していない領域(端部領域Eと隣接する領域)とに画像の色合いの違いが生じるのを抑制できる。
【0071】
<第1実施形態の変形例1>
図12は、第1実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である。なお、プリンター1及びコンピューター110の構成は第1実施形態と同じである。
【0072】
前述の第1実施形態と比べると、光吸収層の位置が異なっている。具体的には、図12では、カラー画像の下(カラー画像と被印刷材Sとの間)に光吸収層が形成されている。
【0073】
第1実施形態の変形例1では、コントローラー60は、まず、往路のパスの際に光吸収層データに基づいて、画像の盛り上がり部分(端部領域E)にブラックインクのみ吐出して黒の光吸収層を形成する。そして、復路のパスの際に、画像データに基づいてカラーインクを吐出して、被印刷材S上にカラー画像を形成する。このように、第1実施形態と比べると光吸収層とカラー画像の形成順序が異なっている。
その他の動作は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
このようにカラー画像と被印刷材Sとの間に光吸収層を形成した場合においても、印刷画像の周囲の端部領域の画像の盛り上がりを目立ち難くすることができる。この結果、画像の厚盛り感を抑制することができる。
【0075】
<第1実施形態の変形例2>
図13は、第1実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である。第1実施形態の変形例2では、カラー画像中の端部領域に光吸収層が形成されている。つまり、コントローラー60は、パスの際に画像データに基づいて各カラーインクのノズル列からインクを吐出させるとともに、光吸収層データに基づいて、ブラックインクノズル列Nkから光吸収層を形成するためのブラックインクを吐出させる。これにより、一度のパスによって、カラー画像の端部領域に光吸収層の形成された印刷画像が形成される。なお、この第1実施形態の変形例2では、インクの吐出(ドット形成)を行わずにキャリッジ21をホームポジションに戻して、搬送動作をおこなってもよいし、往路のパスの後、搬送動作を行って、その後復路のパスによるドット形成を行ってもよい。
【0076】
この第1実施形態の変形例2においても、端部領域の光吸収層により光の散乱を抑制でき、目視上、画像の端の盛り上がりを目立ち難くすることができる。この結果、厚盛り感を抑制することができる。
【0077】
ただし、この第1実施形態の変形例2では、端部領域の画像の色合いが、端部領域と隣接する領域の画像の色合いと変わってしまうおそれがある。よって、前述した第1実施形態、又は、第1実施形態の変形例1で画像を印刷する方がより望ましい。
【0078】
このように、本発明の実施形態によれば、印刷画像の盛り上がり部分に黒の小ドットを離散的に配置した黒色の光吸収層を形成している。この光吸収層を形成することにより、画像の盛り上がりによる光の散乱を抑制することができ、色味や光沢の変化を抑えることができる。よって、目視上、画像の盛り上がりを目立ち難くすることができ、この結果、印刷画像の盛り上がり部分の厚盛り感を抑制することができる。
【0079】
===第2実施形態===
第2実施形態では、CMYKのカラーインクのみでなく無色透明のクリアインクを使用する。
【0080】
クリアインクは、無色透明のインクであり、表面のコーティング(表面コート)や、被印刷材Sに対するカラーインクの密着性を高めるため(アンカーコート)に用いられる。この第2実施形態では、クリアインクをカラー画像の表面コートの形成に用いている。表面コートはカラー画像(主画像に相当する)を補助するための補助画像であり、このように画像の表面にクリアインクを塗布するとカラー画像を保護したり、光沢性を高めたりすることができる。しかし、クリアインクで表面コートを行うと、画像の端部領域での厚盛り感がさらに増大してしまうおそれがある。
そこで、第2実施形態においても第1実施形態と同様に光吸収層を形成する。
【0081】
図14は、第2実施形態のヘッドの構成の説明図である。第1実施形態(図7)と比べると、第2実施形態のヘッド31´には、カラーインクを吐出する各ノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)に加えて、クリアインクノズル列Nclが設けられている。クリアインクノズル列Nclの複数のノズル(第2吐出部に相当する)は、カラーインクノズル列と同様に、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:D)でそれぞれ整列している。なお、このヘッド31´以外の構成、及び、光吸収層データの生成処理については第1実施形態と同様である。
【0082】
次に、第2実施形態における画像の形成の動作について簡単に説明する。まず、往路のパスにおいて、コントローラー60は、ヘッド31のカラーインクノズル列の各ノズルからインクを吐出させるとともに、照射部42a、42bのうち移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。こうして、被印刷材Sにカラー画像を形成する。
【0083】
次のパス(復路のパス)では、コントローラー60は、ヘッド31のクリアインクノズル列Nclからクリアインクをカラー画像上の全面に吐出(塗布)させる。また、このパスの際に照射部42b(移動方向の上流側)からUVを照射させ、クリアインクによって形成されたドット(以下、クリアドットと呼ぶ)を硬化させる。
【0084】
さらに、次のパス(往路のパス)では、コントローラー60は、光吸収層データに基づいて、ブラックインクノズル列Nkの各ノズルからブラックインクを吐出させる。これにより、画像の端部領域Eのクリアドットの上に黒色の光吸収層の形成された印刷画像が形成される。また、コントローラー60は、このパスの際に、移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。
【0085】
その後、コントローラー60はキャリッジ21を復路方向に移動させ、キャリッジ21をホームポジションに戻す。なお、このときには、UV照射を行っても良いし行わなくても良い。このように、第2実施形態では、キャリッジが移動方向に2回往復移動することによって被印刷材Sの印刷領域に画像を形成している。
【0086】
そして、コントローラー60は、ノズル列長さの搬送量で被印刷材Sを搬送方向に搬送させる(搬送動作)。以下同様の動作を繰り返し行う。
【0087】
図15は、第2実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。図に示すように、被印刷材S上にカラー画像が形成されており、そのカラー画像の上にクリアインクが塗布されている(表面コート)。さらに、画像の盛り上がり部分(端部領域E)のクリアインク上には光吸収層が形成されている。
【0088】
このように、カラー画像の上にクリアインクによる表面コートを形成する場合、画像の厚盛り感がより増大するおそれがある。そこで、この場合も図のように画像の盛り上がり部分(端部領域E)に黒色の光吸収層を形成することで、画像の盛り上がり部分における厚盛り感を抑制することができる。
【0089】
<第2実施形態の変形例1>
図16は、第2実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
この第2実施形態の変形例1では、カラー画像とクリアインクによる表面コートの間に光吸収層が設けられている。つまり、往路のパスでは第2実施形態と同様にカラー画像の形成を行い、復路のパスで光吸収層を形成し、次の往路のパスでクリアインクを全面に塗布している。このようにカラー画像と表面コートの間に光吸収層を設けても、画像の厚盛り感を抑制することができる。
【0090】
<第2実施形態の変形例2>
図17は、第2実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である。この第2実施形態の変形例2では、表面コートの中に、黒色の光吸収層が形成されている。つまり、往路のパスではカラー画像の形成を行い、復路のパスではクリアインクノズル列Nclから画像全面へのクリアインクの吐出と、光吸収層データに基づいたブラックインクノズル列Nkからのブラックインクの吐出を行っている。このように表面コートの間に光吸収層を設けても、画像の厚盛り感を抑制することができる。
なお、この変形例2では表面コートの端部領域のみに光吸収層を設けているが、カラー画像の端部領域Eの中にも光吸収層を設けても良い(図13参照)。
【0091】
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0092】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、移動方向に移動するヘッドからインクを吐出する吐出動作と被印刷材を搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返すプリンター(いわゆるシリアルプリンター)を例に挙げているが、これに限らない。例えばラインプリンターに本発明を適用してもよい。
【0093】
図18は、ラインプリンターによる本発明の実施形態の概略説明図である。
図18に示すラインプリンターでは、被印刷材Sの搬送経路上にカラー画像形成用のヘッド311、UVの照射部421、光吸収層形成用のヘッド312、UVの照射部422が搬送方向の上流側から順に設けられている。
【0094】
ヘッド311には、UVインクを吐出するノズル列が、インク色毎に相対的搬送方向(以下、単に搬送方向ともいう)にライン状に(図上のライン方向に)並んでいる。例えば、ヘッド311の最も搬送方向の上流側には、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列(図上、「Cyan」と記載)が設けられている。その搬送方向下流側に順次マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列(図上、「Magenda」と記載)、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列(図上、「Yellow」と記載)が設けられ、ヘッド311の最も搬送方向下流側には、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列(図上、「Black」と記載)が設けられている。
【0095】
各色インクのノズル列の並び方向(ライン方向)は被印刷材Sの相対的搬送方向と交差する方向となっている。「交差方向」は、通常は直交方向である。各インクのノズル列の長さ(ライン方向の幅)は、画像形成領域Fのライン方向の幅とほぼ同等か、それより長く形成されている。ライン方向において画像形成領域Fが被印刷材Sの両縁まである場合は、画像形成領域Fは被印刷材Sの両縁まであることとなる(図14上で、画像形成領域Fの幅が被印刷材Sの幅と同じになる)。
【0096】
ヘッド312には、光吸収層を形成するためのブラックインクを吐出するブラックインクノズル列(図上「Black」と記載)が、ヘッド311の各ノズル列と同様に設けられている。
【0097】
照射部421は、ヘッド311よりも搬送方向の下流側において、被印刷材Sの相対的搬送方向と交差する方向に設けられている。「交差方向」は、通常は直交方向である。つまり、照射部421はノズルの並び方向(ライン方向)に沿って設けられている。照射部421は、各インクのノズル列の長さとほぼ同じか、それより長く形成されている。被印刷材S上に吐出したインクにUVを照射して硬化させるため、各インクのノズル列より長くすると照射漏れが生じにくい。
【0098】
また、照射部421にはライン方向(ノズルの並び方向)に沿ってUV照射用のLED421Aが多数設けられており、各LED421Aへの入力電流を制御することによって、ライン方向の位置に応じてUVの照射強度を変えることができる。
【0099】
また、照射部422は、ヘッド312よりも搬送方向の下流側において、ノズルの並び方向(ライン方向)に沿って設けられている。照射部422の構成は照射部411の構成と同様であり、イン方向(ノズルの並び方向)に沿ってUV照射用のLED422Aが多数設けられている。
【0100】
以上の構成において、被印刷材Sを搬送方向に搬送しつつ、ヘッド311の各ノズル列のノズルからUVインクを吐出し、被印刷材Sに着弾したUVインクに照射部421からUVを照射する。こうして、被印刷材Sにカラー画像を印刷する。
【0101】
そして、さらに、そのカラー画像の端部領域E上にヘッド312のブラックインクノズル列からブラックインクを吐出して光吸収層を形成し、照射部422のLED422から光吸収層の形成領域にUVを照射して光吸収層を硬化させる。こうすることで、カラー画像の端部領域E上に光吸収層を形成できる(図11参照)。なお、ヘッド312と照射部422を、ヘッド311よりも搬送方向の上流側に設けると、カラー画像の端部領域Eの下に光吸収層を形成することができる(図12参照)。
【0102】
このラインプリンターの場合、ヘッド311の各ノズル列とヘッド312のブラックインクノズル列、及び、照射部421と照射部422がヘッド部に相当する。なお、この例では被印刷材Sを搬送方向に搬送しつつUVインクの吐出(ドット形成)とUV照射を行うこととしたが、ヘッド部を搬送方向に移動しつつ被印刷材Sにインクの吐出及びUV照射を行うようにしてもよい。すなわち、ヘッド部と被印刷材Sを搬送方向(交差方向)に相対的に移動させてUVインクの吐出とUV照射を行うことにより、ライン方向(ノズルの並び方向)にドットが並ぶドット列を一度に形成するものであればよい。
【0103】
なお、ヘッド311と照射部421でカラー画像形成後に、被印刷材Sを逆搬送し、再度、被印刷材Sを搬送方向下流側に搬送させて、ヘッド311のブラックインクノズル列からブラックインクを吐出し、照射部421からUVを照射してカラー画像上に光吸収層を形成するようにしてもよい。この場合ヘッド312、照射部422は設けなくてもよい。
【0104】
また、例えば、印刷領域に搬送された連続用紙(又は単票紙)に対して、ヘッド及び照射部を媒体の搬送方向に移動しながらインクの吐出及びUV照射を行う動作と、ヘッド及び照射部を搬送方向と交差する媒体幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0105】
これらのプリンターの場合においても、印刷データに基づいて、画像形成領域のうちの端部領域を決定し、その端部領域に光吸収層を形成するようにすればよい。これにより、前述した実施形態のように、目視上の厚盛り感を抑制することができる。
【0106】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0107】
<コンピューター110の処理について>
前述のコンピューター110は、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理・光吸収層生成処理などを行っていた。但し、これらの処理の一部又は全部をプリンター1の側で行っても良い。コンピューター110が行っていた光吸収層生成処理をプリンター側で代わりに行う場合には、プリンター1が単体で光吸収層生成処理を施した画像を媒体に印刷することができるので、プリンター1が単体で「印刷装置」に相当する。また、この場合、コントローラー60が制御部に相当する。
【0108】
<光吸収層について>
前述の実施形態では、ブラックインクによる黒ドットで光吸収層を形成していたがこれには限られない。例えばシアンインク、マゼンダインク、イエローインクを使用したコンポジットの黒色で光吸収層を形成するようにしてもよい。ただし、ブラックインクの黒色は、コンポジットの黒色よりも光をより吸収するので、前述の実施形態のようにブラックインクを用いる方が、厚盛り感をより抑制する(盛り上がりをより目立ち難くする)ことができる。
【0109】
また、前述の実施形態では光吸収層を黒色で形成していたがこれには限られず光を吸収する色であればよい。例えば、グレーインクを用いて光吸収層を灰色で形成するようにしてもよい。この場合においても、厚盛り感を抑制することができる。
【0110】
また、前述の実施形態では、画像の端部領域に光吸収層を形成していたが、光吸収層の形成場所は端部領域には限られない。例えば、被印刷材の形状によって画像の特定位置(中心など)が盛り上がる場合では、その盛り上がり部分に光吸収層を形成するようにしてもよい。こうすることで、盛り上がり部分の厚盛り感を抑制することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 プリンター、
10 搬送ユニット、11 給紙ローラー、13 搬送ローラー、
14 プラテン、15 排紙ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
22 キャリッジモーター、24 ガイド軸、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 照射ユニット、42a,42b 照射部、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダー、
53 紙検出センサー、54 光学センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路
110 コンピューター
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光(例えば、紫外線(Ultra Violet Light:「UV」と略す)や可視光など)の照射によって硬化する光硬化性の液体(例えば、紫外線硬化性インク、「UVインク」と略す)を吐出して印刷を行う印刷装置として、例えばプリンターが知られている。このようなプリンターでは、ノズルから紙、布、フィルムシート等の被印刷材にUVインクを吐出した後、被印刷材に形成されたドットに光を照射する。これにより、ドットが硬化して被印刷材に定着する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-74878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UVインクは紫外線により瞬時に硬化が可能なので、非吸収性媒体に印刷が可能であり、浸透性インク(例えば水性インク)などを用いて画像を吸収性媒体に印刷した場合と比べて、印刷画像を構成するドットが被印刷材の表面から盛り上がって形成される。
更に、UVインクを用いて被印刷材に画像を印刷した場合、印刷画像のエッジ近傍が他の部分よりも特に盛り上がる現象(厚盛り現象)が生じるおそれがある。そして、厚盛り現象に起因して、印刷画像の一部のみで光が正反射された状態で印刷画像が視認されると、印刷画像が立体的に見えてしまい、印刷画像が実際よりも厚く知覚されて、印刷画像の画質を悪化させる原因になる。
【0005】
そこで、本発明は、画像の盛り上がりを目立ち難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させ、前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる制御部と、を備え、前記被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、前記制御部は、前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成することを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aは、UVインクを用いて被印刷材に印刷した印刷画像の説明図である。図1Bは、図1Aの点線で示す領域(エッジ近傍)の厚さの測定値のグラフである。
【図2】図2Aは、図1Aの印刷画像を上から見た図である。図2Bは、図2Aの印刷画像の一部で光が正反射したときの様子の説明図である。
【図3】印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図4】プリンター1の斜視図である。
【図5】プリンター1のヘッド周辺の概略図である。
【図6】図6A及び図6Bは、プリンター1の横断面図である。
【図7】ヘッド31の構成の説明図である。
【図8】コンピューター110のプリンタードライバーの機能の説明図である。
【図9】光吸収層生成処理のフロー図である。
【図10】図10A〜図10Gは、パスによる画像形成の様子の一例を示す概略説明図である。
【図11】第1実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図12】第1実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図13】第1実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である
【図14】第2実施形態のヘッドの構成の説明図である
【図15】第2実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図16】第2実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である
【図17】第2実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
【図18】ラインプリンターによる本発明の実施形態の概略説明図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる移動機構と、前記移動機構を制御して、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させ、前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる制御部と、を備え、前記被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、前記制御部は、前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成することを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれは、光吸収層により画像の盛り上がり部分の光散乱を抑制でき、色味や光沢感の変化を抑えることができる。よって、画像の盛り上がり部分を目立ち難くするができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記画像の盛り上がり部分は、前記画像の縁の端部領域であることが望ましい。
このような印刷装置によれは、印刷画像が立体的に知覚されないようにすることができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、各吐出部からの前記光硬化性インクの吐出量を制御することによって前記被印刷材に大きさの異なる複数種類のドットを形成し、前記複数種類のドットのうちの最も小さいドットを用いて前記光吸収層を形成することが望ましい。
このような印刷装置によれば、光吸収層を形成した領域と、光吸収層を形成していない領域とにおいて画像の色合いに違いが生じるのを抑制することができる。
【0013】
また、前記光吸収層は、前記画像の盛り上がり部分に黒色のドットが離散的に配置されて形成されたものであることが望ましい。
このような印刷装置によれば、光吸収層を形成した領域と、光吸収層を形成していない領域とにおいて画像の色合いに違いが生じるのを抑制することができる。また、画像の盛り上がりをより目立ち難くすることができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記複数の吐出部は、主画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第1吐出部と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第2吐出部と、を有し、前記制御部は、前記第1吐出部及び前記第2吐出部からの前記光硬化性インクの吐出をそれぞれ制御することによって、前記主画像と前記補助画像とを重ねて形成し、且つ、前記主画像及び前記補助画像の盛り上がり部分に前記光吸収層を形成することが望ましい。
このような印刷装置によれば、主画像と補助画像とによる盛り上がり部分が大きくなるので、より効果的に盛り上がりを抑えることができる。
【0015】
また、光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部を備えた印刷装置により前記被印刷材に画像を印刷する印刷方法であって、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる相対移動工程と、前記被印刷材に対して相対的に移動する前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出し、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射する画像形成工程と、前記被印刷材に対して相対的に移動する前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成し、前記光吸収層に前記照射部から前記光を照射する光吸収層形成工程と、を有することを特徴とする印刷方法が明らかとなる。
【0016】
以下の実施形態では、インクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0017】
===概要===
<厚盛り現象・厚盛り感について>
プラスチックフィルム等のような被印刷材はインクを吸収しにくい性質を有するため、このような被印刷材にインクジェット方式によって印刷を行う際に、光硬化性インクとしてUVインクが用いられることがある。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、紫外線(UV)が照射されると硬化する性質を有する。UVインクを硬化させてドットを形成することによって、インク受容層を持たずインク吸収性の無い被印刷材に対しても印刷を行うことができる。なお、インク受容層を持たない被印刷材としては、例えばフィルム(具体的には、塩化ビニールフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)フィルム等)がある。
【0018】
但し、UVインクで形成されたドットは被印刷材の表面で隆起しているため、UVインクを用いて被印刷材に印刷画像を形成すると、被印刷材の表面に凹凸ができる。また、印刷画像が塗り潰し画像である場合には、印刷画像が厚みを有することになる。
【0019】
図1Aは、UVインクを用いて被印刷材に印刷した印刷画像の説明図である。
UVインクは紫外線(UV)により瞬時に硬化が可能なので、UVインクを用いて画像を印刷すると、被印刷材のインク吸収性に依存せずに、ドットが盛り上がって形成される。塗り潰し画像を印刷すると、UVインクで形成されたドットが所定の領域を埋め尽くすため、厚みのある印刷画像Gが被印刷材S上に形成されることになる。例えば、被印刷材Sに文字を印刷する場合、厚みのある文字画像(塗り潰し画像)が被印刷材S上に形成されることになる。UVインクを用いて印刷された印刷画像Gの厚さは、数μm程度になる。
【0020】
図1Bは、図1Aの点線で示す領域T(エッジ近傍)の厚さの測定値のグラフである。グラフの横軸は被印刷材Sの位置を示し、縦軸はドットの高さ(印刷画像Gの厚さ)を示している。なお、印刷画像Gは、インク重量を10ngとしてドットを形成し、720×720dpiの印刷解像度で塗り潰した画像である。印刷画像Gの厚さは、ミツトヨ社製のノンストップCNC(Computer Numerical Control)画像測定機Quick Vision Stream plusを用いて測定した。図に示すように、この印刷画像Gは、5μmほどの厚さである。
【0021】
グラフ中の位置Xは、印刷画像Gの最も外側の位置を示している。言い換えると、位置Xは、印刷画像Gの端(エッジ)の位置を示している。また、グラフ中の位置Aは、印刷画像のエッジ近傍における最厚位置(最も高い位置)を示している。言い換えると、位置Aは、印刷画像Gのエッジ近傍における突出部分の位置を示している。
【0022】
位置Aは、位置Xから約200μmほど内側に位置している。位置Xから位置Aまでの領域(グラフ中の領域B)では、印刷画像の内側ほどインクが厚くなっている。位置Aでは厚さが最大(約6μm)になる。また、位置Aから位置Dまでの領域(グラフ中の領域C)では、内側(図面右側)に向けて印刷画像G(インク層)が薄くなっていく。そして位置Dで厚さが5μm程度に達し、それより内側では、ほぼ一様な厚さになる。
【0023】
本明細書では、グラフ中の位置Aのように、エッジ近傍が他の部分よりも特に盛り上がる現象のことを「厚盛り現象」と呼ぶ。この厚盛り現象は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象である。また、本明細書では、エッジ近傍、具体的には、印刷画像を形成する領域(以下、画像形成領域ともいう)のうち画像の端(例えば、図1Bの位置X)から画像の厚さが一様になる位置(例えば、図1Bの位置D)までの領域Bと領域Cを合わせた領域のことを端部領域Eと呼ぶ。図1Bの場合、端部領域Eは、画像の端からの距離が約580μm以下の領域である。図1Bにおいて符号Fで示す箇所が画像形成領域である。
【0024】
図2Aは、図1Aの印刷画像Gを上から見た図である。図2Bは、図2Aの印刷画像の一部で光が正反射したときの様子の説明図である。図2Bでは、印刷画像の内側で光って視認される部分を白く示している。
【0025】
印刷画像の中央部分では、厚さがほぼ一様になっているため、一様な光沢性が得られる。但し、印刷画像のエッジ近傍(端部領域E)では、厚さが一様ではないため、一様な色味や光沢性は得られない。
【0026】
エッジ近傍では、厚盛り現象のため、印刷画像は一様な厚さにはならず、印刷画像のエッジよりも内側に、エッジに沿った突出部分が形成される。この結果、光の反射角次第によって、図2Bに示すように、印刷画像Gの一部(Ge)がエッジに沿って光って視認されることがある。観察者の目、光源及び印刷画像の位置関係・角度によって、図1Bの傾斜領域で正反射した光が観察者の目に入り、図2Bに示すように印刷画像Gが視認されるのである。
【0027】
図2Bに示すように、エッジに沿って印刷画像Gの一部(Ge)が光って見えると、印刷画像全体が立体的に知覚されてしまう。喩えると、コンピューター・グラフィックスで3次元物体をディスプレイ上で2次元画像として物体の一部の輝度を明るく表示したときのように(例えば光線追跡法により3次元物体を2次元画像として表示したときのように)、印刷画像が立体的に知覚されてしまう。この結果、実際には5μmほどの厚さであるにも関わらず、印刷画像Gの観察者には、それ以上に厚く知覚されてしまうことになる。
【0028】
本明細書では、この厚盛り現象のために印刷画像が実際よりも厚く知覚されることを「厚盛り感」と呼ぶ。「厚盛り感」という課題は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の課題である。
【0029】
なお、通常の製版印刷(フレキソ印刷やオフセット印刷など)による印刷画像は、UVインクを用いた印刷画像と比べると、厚さがほとんど無い。このため、通常の製版印刷による印刷画像では、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。また、被印刷材Sにインクを浸透させて印刷した印刷画像も、印刷画像の厚さはほとんど無い。このため、被印刷材Sにインクを浸透させて印刷した印刷画像でも、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。このように、厚盛り現象や厚盛り感は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象・課題である。
【0030】
そこで、以下に示す実施形態では、画像の盛り上がり部分(具体的には端部領域E)の、厚盛り感を抑制するようにしている。
【0031】
===第1実施形態===
≪印刷システムの構成≫
図面を参照しながら第1実施形態の印刷装置の基本的な構成について説明する。図3は、印刷システムの構成を示すブロック図である。図4は、プリンター1の斜視図である。図5は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図6A及び図6Bは、プリンター1の横断面図である。図6Aは図5のA−A断面に相当し、図6Bは図5のB−B断面に相当する。
【0032】
なお、本実施形態において、以下に説明するプリンター1と、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター110とから構成される装置(システム)は、印刷装置に該当する。そして、プリンター1のコントローラー60とコンピューター110は、印刷装置を制御するための制御部を構成している。なお、これには限定されず、例えば、コンピューター110、あるいは、コントローラー60のみで制御部を構成してもよい。
【0033】
<コンピューターについて>
コンピューター110は、図3に示すように、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。プリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。
【0034】
<プリンターについて>
プリンター1は、紙、布、フィルムシート等の被印刷材Sに向けて、光の一種である紫外線(UV)の照射によって硬化するUVインクを吐出することにより、被印刷材Sに画像を印刷する装置である。UVインクは、前述したように紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。
【0035】
プリンター1は、図3に示すように、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、被印刷材Sに画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0036】
搬送ユニット10は、被印刷材S(例えば、塩化ビニールフィルム)を相対的搬送方向(以下、単に搬送方向ともいう)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モーター(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する(図6A、図6B参照)。給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された被印刷材Sをプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された被印刷材Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の被印刷材Sを支持する。排紙ローラー15は、被印刷材Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0037】
キャリッジユニット20(移動機構に相当する)は、被印刷材Sの搬送方向と交差する方向(以下、移動方向ともいう)に、ヘッド等を移動させるためのものである。なお、交差する方向とは一般的に直交方向のことである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター22とを有する(図4参照)。また、キャリッジ21は、UVインクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。そして、キャリッジ21は、後述するヘッド31及び照射部42a、42bを搭載しており、搬送方向と交差したガイド軸24に支持された状態で、キャリッジモーター22によりガイド軸24に沿って往復移動する。
【0038】
ヘッドユニット30は、被印刷材Sに液体(本実施形態ではUVインク)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える(図5参照)。このヘッド31はキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動中にノズルからUVインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が被印刷材Sに形成される。以下の説明において、移動方向の一端側から他端側に向かって移動する経路のこと往路と呼び、他端側から一端側に移動する経路のことを復路と呼ぶ。本発明の実施形態では、往路及び復路の両期間中にUVインクが吐出される。すなわち、プリンター1は、双方向印刷を行なう。
なお、ヘッド31の構成については、後述する。
【0039】
照射ユニット40は、被印刷材に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。被印刷材上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることによって硬化する。照射ユニット40は、照射部42a、42bを備えている。なお、照射部42a、42bは、キャリッジ21に設けられている。このため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、照射部42a、42bも移動方向に移動する。
【0040】
照射部42a、42bは、ヘッド31を挟むようにして、キャリッジ21上の移動方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。また、照射部42a、42bの搬送方向の長さは、ヘッド31のノズル列の長さとほぼ同じかそれよりも長くなっている。言い換えると、照射部42a、42bは、ヘッド31の各ノズル列と移動方向に並ぶ位置に設けられている。そして、照射部42a、42bは、ヘッド31とともに移動して、ヘッド31のノズル列がドットを形成する範囲にUVを照射する。なお、照射部42a、42bのUV照射の光源としては、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などが用いられる。光源がLEDの場合、入力電流の大きさを制御することによって、UVの照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
【0041】
検出器群50には、リニア式エンコーダー51、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー53、および光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダー51(検出部に相当する)は、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の被印刷材Sの先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、被印刷材Sの有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ21によって移動しながら被印刷材Sの端部の位置を検出し、被印刷材Sの幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、被印刷材Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0042】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、図3に示すように、インターフェイス部61と、CPU(Central Processing Unit)62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0043】
印刷を行うとき、コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向に移動させつつヘッド31からUVインクを吐出させるドット形成動作と、搬送方向に被印刷材Sを搬送する搬送動作とを繰り返し、複数のドットから構成される画像を被印刷材Sに印刷する。以下の説明において、キャリッジ21を(相対的に)被印刷材に対して所定の方向(図面上左又は右)に移動させてドット形成動作やUV照射を行う走査のことを「パス」と呼ぶ。パスの際には、被印刷材Sに対してヘッド31及び照射部42a、42bが相対的に移動する。なお、このとき、後述するように照射部42a、42bによるUV照射も行なわれる。
【0044】
<ヘッド31の構成について>
図7は、ヘッド31の構成の一例の説明図である。この図7はヘッド31を下から(プラテン14側から)見た図である。図ヘッド31の下面には、図7に示すように、ブラックインクノズル列Nkと、シアンインクノズル列Ncと、マゼンダインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyとが形成されている。各ノズル列は、各色のUVインクを吐出するための吐出口であるノズル(吐出部に相当する)を複数個(本実施形態では180個)備えている。以下の説明において、ブラックインク(黒インク)、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクのことをカラーインクともいい、カラーインクによって形成される画像のことをカラー画像ともいう。
【0045】
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:D)でそれぞれ整列している。
【0046】
各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが吐出される。吐出されたUVインクは、被印刷材Sに着弾してドットを形成する。
【0047】
≪プリンタードライバーの処理について≫
プリンター1のユーザーが、アプリケーションプログラム上で描画した画像の印刷を指示すると、コンピューター110のプリンタードライバーが起動する。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する。アプリケーションプログラムからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理などを行う。また、プリンタードライバーは、光吸収層を形成するためのデータを生成する光吸収層生成処理も行う。
【0048】
図8は、コンピューター110のプリンタードライバーの機能の説明図である。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、被印刷材に印刷する解像度(印刷解像度)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。
【0049】
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。なお、CMYKデータは、プリンターが有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて、行われる。なお、色変換処理後の画素データは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。
【0050】
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素毎に2ビットの画素データが対応している。2ビットの画素データは、ドットの有無及びドットの大きさを示すデータになる。例えば、画素データ[00]の場合はドット無し(ドット非形成)、画素データ[01]の場合は小ドット形成、画素データ[10]の場合は中ドット形成、画素データ[11]の場合は大ドット形成というデータになる。なお、画素データを1ビットデータ(2階調)とし、画素データがドットの有無のみを示すようにしても良い。いずれの場合においても、ハーフトーン処理後の画素データは、被印刷材に形成すべきドットを示すデータとなる。
【0051】
光吸収層生成処理は、画像の盛り上がり部分(本実施形態の場合、印刷画像の端部領域)に光吸収層を形成するためのデータを生成する処理である。本実施形態の場合、ブラックインクによる黒色の小ドットを端部領域に離散的に配置することによって光吸収層を形成する。よって、この光吸収層生成処理で生成されるデータは、ブラックインクノズル列Nkからブラックインクを吐出させるためのデータである。
【0052】
図9は、図8の光吸収層生成処理のフロー図である。
まず、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後の画像データに対してエッジ抽出処理を施し、印刷画像の端(エッジ)に位置するエッジ画素を抽出する(S001)。
【0053】
次に、プリンタードライバーは、エッジ画素から所定距離(例えば0.5μm)の領域(端部領域)を定める(S002)。これにより印刷画像の縁に沿って、例えば0.5μmの幅の端部領域が定められる。
【0054】
そして、プリンタードライバーは、端部領域に含まれる複数の画素について、一定(例えば5%程度)の割合で画素データを「01」とし、その他の画素の画素データを「00」とした光吸収層を形成するためのデータ(以下、光吸収層データともいう)を生成する(S003)。この光吸収層データは、端部領域にはドット(黒の小ドット)を低デューティーで形成し、端部領域以外には、ドットを形成しないデータになる。なお、デューティーとは、単位領域を構成する画素数に対して実際に形成されるドット数の割合のことである。例えばデューティーが10%の場合、10画素に対して1つの画素にドットを形成することになる。
【0055】
このようにして、プリンタードライバーは、カラー画像用のUVインク(カラーインク)を吐出するための画像データとは別に、ブラックインクノズル列Nkを用いて光吸収層を形成するための光吸収層データを生成する。
【0056】
コンピューター110は、4階調の画素データからなる画像データ及び光吸収層データに制御データを付加して印刷データを生成し、印刷データをプリンター1に送信する(図8参照)。印刷データを受信したプリンター1のコントローラー60は、印刷データに含まれている制御データに従って各ユニットを制御すると共に、画像データに従ってヘッド31の各ノズルから選択的にUVインクを吐出して、被印刷材上に画像を印刷する。また、プリンター1は、光吸収層データに従ってヘッド31のブラックインクノズル列Nkのノズルからブラックインクを吐出して光吸収層を形成する。
【0057】
≪印刷動作の概要≫
前述したように、コントローラー60は、印刷データに基づいてキャリッジ21を移動方向に移動させつつヘッド31のノズルからインクを吐出させるパスと、被印刷材Sを搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返し実行して被印刷材Sの画像形成領域にドットを形成する。また、パスの際には、コントローラー60は、照射部42a、42bのうちキャリッジ21の移動方向に対して上流側の照射部からUVを照射させる。これにより被印刷材Sに着弾したUVインク(ドット)に直ちにUVを照射することができる。また、コントローラー60は、パスの合間に被印刷材Sを搬送方向に搬送させる(搬送動作)。
【0058】
図10A〜図10Gは、パスによる画像形成の様子の一例を示す概略説明図である。なお、図において、UVを照射する照射部を斜線で示している。
【0059】
コントローラー60は、コンピューター110から印刷データ(画像データ及び光吸収層データを含む)を受信し、これらのデータに基づいてパスと搬送動作を繰り返し行っていく。
【0060】
まず、往路のパスでは、図10Aに示すように、コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向の一端側の待機位置(以下、ホームポジションともいう)から移動方向の他端側に向けて移動させる。そして、キャリッジ21が画像形成領域に達すると、図10Bに示すように、画像データに基づいて、移動するヘッド31の各ノズルから選択的に被印刷材Sにインクを吐出させ、且つ、移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。被印刷材Sに着弾したUVインク(カラーインク)は照射部42aからのUVの照射を受けて直ちに硬化される。
【0061】
コントローラー60は、キャリッジ21が画像形成領域を通過するとヘッド31からのインクの吐出を停止させ、また、照射部42aからのUVの照射を停止させる。そして、図10Cに示すように、キャリッジ21が移動範囲の端(他端)に達すると、キャリッジ21を停止させる。このパスにより被印刷材Sにはカラーインクによる画像(カラー画像)が印刷される。このカラー画像は、前述したように画像の縁(端部領域E)が盛り上がって形成される。
【0062】
コントローラー60は続いて、キャリッジ21の移動方向を反転させて、復路のパスを実行する。復路のパスでは、コントローラー60は、光吸収層データに基づいてドットの形成(ブラックインクノズル列Nkを用いたドット形成)を行う。
【0063】
図10Dに示すように、キャリッジ21が、移動方向の他端側の端部領域E(すなわち画像の盛り上がり部分)に達すると、コントローラー60は、ブラックインクノズル列Kの各ノズルから低デューティーでブラックインクを吐出させてドット(黒の小ドット)を形成させる。また、コントローラー60は、復路のパスでは、移動方向の上流側とに位置する照射部42bからUVを照射させる。こうして、カラー画像の端部領域E上に光吸収層が形成される。
【0064】
図10Eに示すように、キャリッジ21が移動方向の他端側の端部領域Eを通過すると、コントローラー60は、ブラックインクノズル列Nkからのブラックインクの吐出を停止させ、照射部42bからのUV照射のみを行う。なお、往路のパスでドット(カラー画像)が完全に硬化している場合、UV照射も行わないようにしてもよい。
【0065】
そして、図10Fに示すように、キャリッジ21が移動方向の一端側の端部領域Eに達すると、コントローラーは、再度、ブラックインクノズル列Nkの各ノズルから低デューティーでブラックインクを吐出させてドット(黒の小ドット)を形成させる。
【0066】
その後、キャリッジ21が端部領域Eを通過すると、コントローラー60は、ブラックインクノズル列Nkからのインクの吐出、及び、照射部42bからのUV照射を停止させる。そして、図10Gに示すように、キャリッジ21が移動範囲の端(ホームポジション)に達すると、キャリッジ21の移動を停止させる。
【0067】
その後、コントローラー60は、被印刷材Sをノズル列長さ分だけ搬送方向に搬送させる(搬送動作)。これにより、印刷領域に位置していた被印刷材S(ドットの形成された部分)が印刷領域の搬送方向下流側に搬送され、被印刷材Sの未だ印刷されていない部分が印刷領域に搬送される。
【0068】
以下、同様にしてコントローラー60は、パス(往路のパス及び復路のパス)と搬送動作を繰り返し実行させる。これにより被印刷材Sに画像が印刷されていく。
【0069】
≪印刷画像について≫
図11は、第1実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。前述した厚盛り現象のため、UVインクによって形成されたカラー画像は、画像の縁(端部領域E)で盛り上がっている。本実施形態では、図11に示すように、端部領域Eにブラックインクを吐出して黒色の光吸収層を形成している。このように、画像の盛り上がり部分に黒色の光吸収層を設けることによって、光の散乱を抑制することができ、色味や光沢の変化を抑えることができる。このため、目視上、画像の盛り上がり部分を目立ち難くすることができる。これにより、画像の厚盛り感を抑制することができる。また、端部領域Eの厚盛り感を抑制することにより、印刷画像が立体的に知覚ないようにすることができる。
【0070】
また、もし仮に、光吸収層を黒の大ドットで形成したり、高デューティーで形成したりすると、光吸収層を形成した領域(端部領域E)と、光吸収層を形成していない領域(端部領域Eと隣接する領域)との画像の色合いが変わってしまうおそれがある。これに対し本実施形態では、黒の小ドットを離散的に配置して(黒色の)光吸収層を形成している。よって、光吸収層を形成した領域(端部領域E)と、光吸収層を形成していない領域(端部領域Eと隣接する領域)とに画像の色合いの違いが生じるのを抑制できる。
【0071】
<第1実施形態の変形例1>
図12は、第1実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である。なお、プリンター1及びコンピューター110の構成は第1実施形態と同じである。
【0072】
前述の第1実施形態と比べると、光吸収層の位置が異なっている。具体的には、図12では、カラー画像の下(カラー画像と被印刷材Sとの間)に光吸収層が形成されている。
【0073】
第1実施形態の変形例1では、コントローラー60は、まず、往路のパスの際に光吸収層データに基づいて、画像の盛り上がり部分(端部領域E)にブラックインクのみ吐出して黒の光吸収層を形成する。そして、復路のパスの際に、画像データに基づいてカラーインクを吐出して、被印刷材S上にカラー画像を形成する。このように、第1実施形態と比べると光吸収層とカラー画像の形成順序が異なっている。
その他の動作は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
このようにカラー画像と被印刷材Sとの間に光吸収層を形成した場合においても、印刷画像の周囲の端部領域の画像の盛り上がりを目立ち難くすることができる。この結果、画像の厚盛り感を抑制することができる。
【0075】
<第1実施形態の変形例2>
図13は、第1実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である。第1実施形態の変形例2では、カラー画像中の端部領域に光吸収層が形成されている。つまり、コントローラー60は、パスの際に画像データに基づいて各カラーインクのノズル列からインクを吐出させるとともに、光吸収層データに基づいて、ブラックインクノズル列Nkから光吸収層を形成するためのブラックインクを吐出させる。これにより、一度のパスによって、カラー画像の端部領域に光吸収層の形成された印刷画像が形成される。なお、この第1実施形態の変形例2では、インクの吐出(ドット形成)を行わずにキャリッジ21をホームポジションに戻して、搬送動作をおこなってもよいし、往路のパスの後、搬送動作を行って、その後復路のパスによるドット形成を行ってもよい。
【0076】
この第1実施形態の変形例2においても、端部領域の光吸収層により光の散乱を抑制でき、目視上、画像の端の盛り上がりを目立ち難くすることができる。この結果、厚盛り感を抑制することができる。
【0077】
ただし、この第1実施形態の変形例2では、端部領域の画像の色合いが、端部領域と隣接する領域の画像の色合いと変わってしまうおそれがある。よって、前述した第1実施形態、又は、第1実施形態の変形例1で画像を印刷する方がより望ましい。
【0078】
このように、本発明の実施形態によれば、印刷画像の盛り上がり部分に黒の小ドットを離散的に配置した黒色の光吸収層を形成している。この光吸収層を形成することにより、画像の盛り上がりによる光の散乱を抑制することができ、色味や光沢の変化を抑えることができる。よって、目視上、画像の盛り上がりを目立ち難くすることができ、この結果、印刷画像の盛り上がり部分の厚盛り感を抑制することができる。
【0079】
===第2実施形態===
第2実施形態では、CMYKのカラーインクのみでなく無色透明のクリアインクを使用する。
【0080】
クリアインクは、無色透明のインクであり、表面のコーティング(表面コート)や、被印刷材Sに対するカラーインクの密着性を高めるため(アンカーコート)に用いられる。この第2実施形態では、クリアインクをカラー画像の表面コートの形成に用いている。表面コートはカラー画像(主画像に相当する)を補助するための補助画像であり、このように画像の表面にクリアインクを塗布するとカラー画像を保護したり、光沢性を高めたりすることができる。しかし、クリアインクで表面コートを行うと、画像の端部領域での厚盛り感がさらに増大してしまうおそれがある。
そこで、第2実施形態においても第1実施形態と同様に光吸収層を形成する。
【0081】
図14は、第2実施形態のヘッドの構成の説明図である。第1実施形態(図7)と比べると、第2実施形態のヘッド31´には、カラーインクを吐出する各ノズル列(Nc、Nm、Ny、Nk)に加えて、クリアインクノズル列Nclが設けられている。クリアインクノズル列Nclの複数のノズル(第2吐出部に相当する)は、カラーインクノズル列と同様に、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:D)でそれぞれ整列している。なお、このヘッド31´以外の構成、及び、光吸収層データの生成処理については第1実施形態と同様である。
【0082】
次に、第2実施形態における画像の形成の動作について簡単に説明する。まず、往路のパスにおいて、コントローラー60は、ヘッド31のカラーインクノズル列の各ノズルからインクを吐出させるとともに、照射部42a、42bのうち移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。こうして、被印刷材Sにカラー画像を形成する。
【0083】
次のパス(復路のパス)では、コントローラー60は、ヘッド31のクリアインクノズル列Nclからクリアインクをカラー画像上の全面に吐出(塗布)させる。また、このパスの際に照射部42b(移動方向の上流側)からUVを照射させ、クリアインクによって形成されたドット(以下、クリアドットと呼ぶ)を硬化させる。
【0084】
さらに、次のパス(往路のパス)では、コントローラー60は、光吸収層データに基づいて、ブラックインクノズル列Nkの各ノズルからブラックインクを吐出させる。これにより、画像の端部領域Eのクリアドットの上に黒色の光吸収層の形成された印刷画像が形成される。また、コントローラー60は、このパスの際に、移動方向の上流側の照射部42aからUVを照射させる。
【0085】
その後、コントローラー60はキャリッジ21を復路方向に移動させ、キャリッジ21をホームポジションに戻す。なお、このときには、UV照射を行っても良いし行わなくても良い。このように、第2実施形態では、キャリッジが移動方向に2回往復移動することによって被印刷材Sの印刷領域に画像を形成している。
【0086】
そして、コントローラー60は、ノズル列長さの搬送量で被印刷材Sを搬送方向に搬送させる(搬送動作)。以下同様の動作を繰り返し行う。
【0087】
図15は、第2実施形態で印刷された画像の端部の形状の概略図である。図に示すように、被印刷材S上にカラー画像が形成されており、そのカラー画像の上にクリアインクが塗布されている(表面コート)。さらに、画像の盛り上がり部分(端部領域E)のクリアインク上には光吸収層が形成されている。
【0088】
このように、カラー画像の上にクリアインクによる表面コートを形成する場合、画像の厚盛り感がより増大するおそれがある。そこで、この場合も図のように画像の盛り上がり部分(端部領域E)に黒色の光吸収層を形成することで、画像の盛り上がり部分における厚盛り感を抑制することができる。
【0089】
<第2実施形態の変形例1>
図16は、第2実施形態の変形例1で印刷された画像の端部の形状の概略図である。
この第2実施形態の変形例1では、カラー画像とクリアインクによる表面コートの間に光吸収層が設けられている。つまり、往路のパスでは第2実施形態と同様にカラー画像の形成を行い、復路のパスで光吸収層を形成し、次の往路のパスでクリアインクを全面に塗布している。このようにカラー画像と表面コートの間に光吸収層を設けても、画像の厚盛り感を抑制することができる。
【0090】
<第2実施形態の変形例2>
図17は、第2実施形態の変形例2で印刷された画像の端部の形状の概略図である。この第2実施形態の変形例2では、表面コートの中に、黒色の光吸収層が形成されている。つまり、往路のパスではカラー画像の形成を行い、復路のパスではクリアインクノズル列Nclから画像全面へのクリアインクの吐出と、光吸収層データに基づいたブラックインクノズル列Nkからのブラックインクの吐出を行っている。このように表面コートの間に光吸収層を設けても、画像の厚盛り感を抑制することができる。
なお、この変形例2では表面コートの端部領域のみに光吸収層を設けているが、カラー画像の端部領域Eの中にも光吸収層を設けても良い(図13参照)。
【0091】
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0092】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、移動方向に移動するヘッドからインクを吐出する吐出動作と被印刷材を搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返すプリンター(いわゆるシリアルプリンター)を例に挙げているが、これに限らない。例えばラインプリンターに本発明を適用してもよい。
【0093】
図18は、ラインプリンターによる本発明の実施形態の概略説明図である。
図18に示すラインプリンターでは、被印刷材Sの搬送経路上にカラー画像形成用のヘッド311、UVの照射部421、光吸収層形成用のヘッド312、UVの照射部422が搬送方向の上流側から順に設けられている。
【0094】
ヘッド311には、UVインクを吐出するノズル列が、インク色毎に相対的搬送方向(以下、単に搬送方向ともいう)にライン状に(図上のライン方向に)並んでいる。例えば、ヘッド311の最も搬送方向の上流側には、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列(図上、「Cyan」と記載)が設けられている。その搬送方向下流側に順次マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列(図上、「Magenda」と記載)、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列(図上、「Yellow」と記載)が設けられ、ヘッド311の最も搬送方向下流側には、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列(図上、「Black」と記載)が設けられている。
【0095】
各色インクのノズル列の並び方向(ライン方向)は被印刷材Sの相対的搬送方向と交差する方向となっている。「交差方向」は、通常は直交方向である。各インクのノズル列の長さ(ライン方向の幅)は、画像形成領域Fのライン方向の幅とほぼ同等か、それより長く形成されている。ライン方向において画像形成領域Fが被印刷材Sの両縁まである場合は、画像形成領域Fは被印刷材Sの両縁まであることとなる(図14上で、画像形成領域Fの幅が被印刷材Sの幅と同じになる)。
【0096】
ヘッド312には、光吸収層を形成するためのブラックインクを吐出するブラックインクノズル列(図上「Black」と記載)が、ヘッド311の各ノズル列と同様に設けられている。
【0097】
照射部421は、ヘッド311よりも搬送方向の下流側において、被印刷材Sの相対的搬送方向と交差する方向に設けられている。「交差方向」は、通常は直交方向である。つまり、照射部421はノズルの並び方向(ライン方向)に沿って設けられている。照射部421は、各インクのノズル列の長さとほぼ同じか、それより長く形成されている。被印刷材S上に吐出したインクにUVを照射して硬化させるため、各インクのノズル列より長くすると照射漏れが生じにくい。
【0098】
また、照射部421にはライン方向(ノズルの並び方向)に沿ってUV照射用のLED421Aが多数設けられており、各LED421Aへの入力電流を制御することによって、ライン方向の位置に応じてUVの照射強度を変えることができる。
【0099】
また、照射部422は、ヘッド312よりも搬送方向の下流側において、ノズルの並び方向(ライン方向)に沿って設けられている。照射部422の構成は照射部411の構成と同様であり、イン方向(ノズルの並び方向)に沿ってUV照射用のLED422Aが多数設けられている。
【0100】
以上の構成において、被印刷材Sを搬送方向に搬送しつつ、ヘッド311の各ノズル列のノズルからUVインクを吐出し、被印刷材Sに着弾したUVインクに照射部421からUVを照射する。こうして、被印刷材Sにカラー画像を印刷する。
【0101】
そして、さらに、そのカラー画像の端部領域E上にヘッド312のブラックインクノズル列からブラックインクを吐出して光吸収層を形成し、照射部422のLED422から光吸収層の形成領域にUVを照射して光吸収層を硬化させる。こうすることで、カラー画像の端部領域E上に光吸収層を形成できる(図11参照)。なお、ヘッド312と照射部422を、ヘッド311よりも搬送方向の上流側に設けると、カラー画像の端部領域Eの下に光吸収層を形成することができる(図12参照)。
【0102】
このラインプリンターの場合、ヘッド311の各ノズル列とヘッド312のブラックインクノズル列、及び、照射部421と照射部422がヘッド部に相当する。なお、この例では被印刷材Sを搬送方向に搬送しつつUVインクの吐出(ドット形成)とUV照射を行うこととしたが、ヘッド部を搬送方向に移動しつつ被印刷材Sにインクの吐出及びUV照射を行うようにしてもよい。すなわち、ヘッド部と被印刷材Sを搬送方向(交差方向)に相対的に移動させてUVインクの吐出とUV照射を行うことにより、ライン方向(ノズルの並び方向)にドットが並ぶドット列を一度に形成するものであればよい。
【0103】
なお、ヘッド311と照射部421でカラー画像形成後に、被印刷材Sを逆搬送し、再度、被印刷材Sを搬送方向下流側に搬送させて、ヘッド311のブラックインクノズル列からブラックインクを吐出し、照射部421からUVを照射してカラー画像上に光吸収層を形成するようにしてもよい。この場合ヘッド312、照射部422は設けなくてもよい。
【0104】
また、例えば、印刷領域に搬送された連続用紙(又は単票紙)に対して、ヘッド及び照射部を媒体の搬送方向に移動しながらインクの吐出及びUV照射を行う動作と、ヘッド及び照射部を搬送方向と交差する媒体幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0105】
これらのプリンターの場合においても、印刷データに基づいて、画像形成領域のうちの端部領域を決定し、その端部領域に光吸収層を形成するようにすればよい。これにより、前述した実施形態のように、目視上の厚盛り感を抑制することができる。
【0106】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0107】
<コンピューター110の処理について>
前述のコンピューター110は、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理・光吸収層生成処理などを行っていた。但し、これらの処理の一部又は全部をプリンター1の側で行っても良い。コンピューター110が行っていた光吸収層生成処理をプリンター側で代わりに行う場合には、プリンター1が単体で光吸収層生成処理を施した画像を媒体に印刷することができるので、プリンター1が単体で「印刷装置」に相当する。また、この場合、コントローラー60が制御部に相当する。
【0108】
<光吸収層について>
前述の実施形態では、ブラックインクによる黒ドットで光吸収層を形成していたがこれには限られない。例えばシアンインク、マゼンダインク、イエローインクを使用したコンポジットの黒色で光吸収層を形成するようにしてもよい。ただし、ブラックインクの黒色は、コンポジットの黒色よりも光をより吸収するので、前述の実施形態のようにブラックインクを用いる方が、厚盛り感をより抑制する(盛り上がりをより目立ち難くする)ことができる。
【0109】
また、前述の実施形態では光吸収層を黒色で形成していたがこれには限られず光を吸収する色であればよい。例えば、グレーインクを用いて光吸収層を灰色で形成するようにしてもよい。この場合においても、厚盛り感を抑制することができる。
【0110】
また、前述の実施形態では、画像の端部領域に光吸収層を形成していたが、光吸収層の形成場所は端部領域には限られない。例えば、被印刷材の形状によって画像の特定位置(中心など)が盛り上がる場合では、その盛り上がり部分に光吸収層を形成するようにしてもよい。こうすることで、盛り上がり部分の厚盛り感を抑制することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 プリンター、
10 搬送ユニット、11 給紙ローラー、13 搬送ローラー、
14 プラテン、15 排紙ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
22 キャリッジモーター、24 ガイド軸、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 照射ユニット、42a,42b 照射部、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダー、
53 紙検出センサー、54 光学センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路
110 コンピューター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、
前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御して、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させ、前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる制御部と、
を備え、前記被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、
前記制御部は、前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記画像の盛り上がり部分は、前記画像の縁の端部領域である
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
各吐出部からの前記光硬化性インクの吐出量を制御することによって前記被印刷材に大きさの異なる複数種類のドットを形成し、
前記複数種類のドットのうちの最も小さいドットを用いて前記光吸収層を形成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記光吸収層は、前記画像の盛り上がり部分に黒色のドットが離散的に配置されて形成されたものである
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記複数の吐出部は、主画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第1吐出部と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第2吐出部と、を有し、
前記制御部は、前記第1吐出部及び前記第2吐出部からの前記光硬化性インクの吐出をそれぞれ制御することによって、前記被印刷材に前記主画像と前記補助画像を重ねて形成し、且つ、前記主画像及び前記補助画像の盛り上がり部分に前記光吸収層を形成する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部を備えた印刷装置により前記被印刷材に画像を印刷する印刷方法であって、
前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる相対移動工程と、
前記被印刷材に対して相対移動する前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出し、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射する画像形成工程と、
前記被印刷材に対して相対移動する前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成し、前記光吸収層に前記照射部から前記光を照射する光吸収層形成工程と、
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項1】
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、
前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御して、前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させ、前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出させ、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる制御部と、
を備え、前記被印刷材に画像を印刷する印刷装置であって、
前記制御部は、前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記画像の盛り上がり部分は、前記画像の縁の端部領域である
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
各吐出部からの前記光硬化性インクの吐出量を制御することによって前記被印刷材に大きさの異なる複数種類のドットを形成し、
前記複数種類のドットのうちの最も小さいドットを用いて前記光吸収層を形成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記光吸収層は、前記画像の盛り上がり部分に黒色のドットが離散的に配置されて形成されたものである
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記複数の吐出部は、主画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第1吐出部と、前記主画像を補助する補助画像を形成するための前記光硬化性インクを吐出する第2吐出部と、を有し、
前記制御部は、前記第1吐出部及び前記第2吐出部からの前記光硬化性インクの吐出をそれぞれ制御することによって、前記被印刷材に前記主画像と前記補助画像を重ねて形成し、且つ、前記主画像及び前記補助画像の盛り上がり部分に前記光吸収層を形成する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
光の照射によって硬化する複数色の光硬化性インクをインク色毎に被印刷材に吐出する複数の吐出部と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部を備えた印刷装置により前記被印刷材に画像を印刷する印刷方法であって、
前記ヘッド部と前記被印刷材とを相対移動させる相対移動工程と、
前記被印刷材に対して相対移動する前記複数の吐出部から前記複数色の光硬化性インクを選択的に吐出し、前記被印刷材に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射する画像形成工程と、
前記被印刷材に対して相対移動する前記複数の吐出部の少なくとも一つを用いて、前記画像の盛り上がり部分に黒色又は灰色の光吸収層を形成し、前記光吸収層に前記照射部から前記光を照射する光吸収層形成工程と、
を有することを特徴とする印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−103381(P2013−103381A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247772(P2011−247772)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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