説明

印刷装置、画像処理装置、およびプログラム

【課題】記録媒体の変形量に基づいて、印刷像の表現サイズを変更することにより、印刷品質を向上する印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像データ記憶手段に記憶された複数の画像データを、最初に記録される第1画像データとそれ以外の第2画像データとに分離し、第2画像データが表現する画像について画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なって分割領域画像とし、該分割領域画像それぞれに対して記録媒体の移動方向について段階的となるような所定の補正量を画像定着処理の平行方向に加えることで得られた第3画像データを、第1画像データによる画像記録の後に記録することで、記録媒体が台形状に変形したとしても、記録媒体の変形に追随するように分割領域画像それぞれに対して補正を行なうため、記録媒体に対して画像定着処理を行なったとしても印刷品質が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
枚葉状の紙葉などの記録媒体に対して無版印刷を行なう印刷装置、画像処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速印刷を所望される昨今の状況から、最近「ワンパス式」の印刷ヘッドを備えたインクジェットプリンタが開発されている。
ワンパス式の印刷ヘッドとは、記録媒体の搬送方向に直交する幅(以降搬送幅と称する)以上の走査幅を実現するために複数のインクジェットヘッドが列設されていることを特徴とした印刷ヘッドである。
単数乃至数個程度のインクジェットヘッドを備えた印刷ヘッドが往復動作することにより記録媒体を走査するシャトル式のインクジェットプリンタとは異なり、ワンパス式のインクジェットプリンタは、搬送幅以上の走査幅を実現するために列設された数十個乃至数百個のインクジェットヘッドからインクを吐出することにより、一度の走査で記録媒体に印刷を行なうことができる。
これにより、ワンパス式の印刷ヘッドを備えたインクジェットプリンタは高速印刷を実現している。
【0003】
このようなインクジェットプリンタでは、インク吐出による記録媒体における色にじみの影響を最小限に押さえるため、インク吐出が行なわれた直後の記録媒体に対して赤外線ヒータによる放射加熱、あるいはドライヤによる熱風を吹き付けての加熱などの乾燥処理を行なうことが一般的である。この乾燥処理により、排出された記録媒体が積み重なるように排紙された場合であっても、他の記録媒体にインクの色移りを防止することも可能としている。
しかし、このような乾燥処理を行なうことにより、記録媒体の変形が生じ、複数回インクを吐出して印刷を行なった場合の記録媒体における印刷品質が低下するという問題が生じていた。
【0004】
例えば、KCMY4色の印刷を行なうためのインクジェットプリンタでは、記録媒体搬送路に対して直列に配置されたワンパス式の印刷ヘッドが各色分備えられることで、記録媒体搬送路を通過する記録媒体への印刷が行なわれる。また、印刷ヘッドによるインク吐出直後に記録媒体に対して乾燥処理を行なうための乾燥器が、やはり記録媒体搬送路に対して直列に、各色印刷ヘッドの直後に配置されている。
【0005】
このようなインクジェットプリンタにおいて、印刷像を形成するためのKインク吐出が記録媒体に対して行なわれると、記録媒体搬送路上を記録媒体が移動して、乾燥器による乾燥処理が行なわれる。このとき、乾燥処理のため加熱された記録媒体は、紙ならば含有している水分が蒸発することで収縮し、合成樹脂薄板ならば熱膨張が生じることにより、変形が生じる。
【0006】
記録媒体搬送路上を移動した記録媒体に対して、C色インク吐出による印刷像形成が行なわれるが、K色インクに対する乾燥処理が行なわれた結果記録媒体は変形しているため、C色インク吐出によって形成された印刷像はK色インク吐出によって形成された印刷像と重ね合わせると、色の重なりにズレが生じてしまうことで、印刷品質が低下するという問題が生じるのである。
このような印刷品質の低下を防ぐために、例えば次のような技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−312081
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、最初に記録媒体に印刷される第1印刷データの画像の表現サイズを変更することにより、熱処理により印刷媒体が収縮したとしても印刷ズレが生じることなく印刷品質が向上した印刷システムを提供する発明について開示している。
しかし、特許文献1に開示された発明では、確かに主走査方向乃至副走査方向について画素列を変更することで第1印刷データの画像表現サイズを変更しているが、このような技術ではこれまでの開発過程で判明した問題を解決することはできないことが明らかになった。
【0009】
図9は、記録媒体搬送路上を記録媒体Pが搬送されている状態を示すための図である。図9(a)で示すように、記録媒体Pは、インク吐出後に乾燥器Hの下部を通過することで、乾燥処理が行なわれる。
【0010】
図9(b)は、搬送された記録媒体Pが乾燥器Hの下部を通過している状態を示すための図である。記録媒体Pに対する乾燥処理は、該記録媒体Pが記録媒体搬送路上を搬送される都合上、瞬時に行なわれるわけではない。従って、図示しているように、記録媒体Pの一部に対して乾燥器Hによる乾燥処理が行なわれているという状態が発生する。
【0011】
その結果、乾燥処理による記録媒体Pにおける水分量は記録媒体Pの搬送方向に対して変化してゆくことになり、その結果、図9(c)に示すように、乾燥処理が終了した記録媒体Pは台形状に変形することになる。このような変形は、記録媒体Pが紙であり、インクジェットプリンタによるインク吐出量が多い場合には特に顕著になる。すなわち、大量に吐出されたインクを紙が吸収するので、紙が含有する水分量が多くなり、乾燥処理に必要な時間が増大するため、変形量もまた大きくなる。
【0012】
また、記録媒体Pが合成樹脂薄板の場合、合成樹脂はインクに含有される水分を吸収しないため、インク吐出量が多いと合成樹脂薄板表面にインクによる皮膜形成を行なう必要があり、さらに乾燥処理に必要な時間が増大することで、熱膨張による変形を受けた記録媒体Pは、図9(c)とは異なって逆台形状に変形することになる。
【0013】
従って、従来の技術のように、記録媒体Pの変形量を考慮せずに単純な印刷画像の表現サイズの変更を行なったのでは、印刷品質を向上することができないのである。
【0014】
そこで、本発明は、記録媒体Pの変形量に基づいて、印刷像の表現サイズを変更することにより、印刷品質を向上する印刷装置を提供することを目的とする。
また、記録媒体Pの変形量に基づいて印刷像の表現サイズを変更する画像処理を行なう画像処理装置を提供することを目的とする。
加えて、一般的なコンピュータで実行することにより、記録媒体Pの変形量に基づいて印刷像の表現サイズを変更する画像処理を行なうプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決する為に、請求項1に係る発明は、複数の画像記録手段と、該複数の画像記録手段それぞれによって記録が行なわれた直後の記録媒体が相対的に移動することにより画像定着処理を行なう複数の画像定着手段と、を備えた印刷装置において、前記複数の画像記録手段において複数の画像を記録するために該複数の画像データを格納した画像データ記憶手段と、前記画像データ記憶手段より画像データを読出し、前記複数の画像記録手段において最初の記録を行なう第1画像データと、それ以外の第2画像データと、に分離する画像分離手段と、前記画像分離手段で分離された第2画像データが表現する画像について、前記画像定着手段による画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なうことにより複数の分割領域画像に分割する画像分割手段と、前記画像分割手段により分割された複数の分割領域画像それぞれに対して、前記画像定着手段による画像定着処理の平行方向かつ前記記録媒体の移動方向に対して段階的となるような所定の補正量を加える補正処理を行なう分割領域画像補正手段と、前記分割領域画像補正手段により補正処理がなされた複数の分割領域画像を統合して前記複数の画像記録手段において2回目以降の記録を行なう第3画像データとする画像統合手段と、前記画像分離手段により分離された第1画像データと、前記画像統合手段により統合された第3画像データと、をそれぞれ画像記録データとして前記複数の画像記録手段に出力する画像記録データ出力手段と、を有することを特徴としている。
【0016】
また、請求項2に係わる発明は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記画像分割手段が、前記第2画像データが表現する画像に対する分割処理を行なうための所定数を算出する領域分割数算出手段を備えること、を特徴としている。
【0017】
さらに、請求項3に係わる発明は、請求項2に記載の印刷装置であって、前記領域分割算出手段が、前記複数の画像定着手段による画像定着処理が行なわれた記録媒体の変形量の測定結果に基づいて、分割処理を行なうための所定数を算出すること、を特徴としている。
【0018】
加えて、請求項4に係わる発明は、請求項2に記載の印刷装置であって、前記領域分割算出手段が、前記第2画像データにより表現される画像の画素量に基づいて、分割処理を行なうための所定数を算出すること、を特徴としている。
【0019】
そして、請求項5に係わる発明は、請求項1から4いずれかに記載の印刷装置であって、前記複数の画像記録手段が前記記録媒体を搬送する搬送路に沿って直列に配置されており、前記複数の画像定着手段が前記複数の画像記録手段それぞれに対して直列に配置されていること、を特徴としている。
【0020】
また、請求項6に係わる発明は、複数の画像記録手段と、該複数の画像記録手段それぞれによって記録が行なわれた直後の記録媒体が相対的に移動することにより画像定着処理を行なう複数の画像定着手段と、を備えた印刷装置に画像記録データを出力する画像処理装置であって、前記画像処理装置が、前記複数の画像記録手段において複数の画像を記録するために該複数の画像データを格納した画像データ記憶手段と、前記画像データ記憶手段より画像データを読出し、前記複数の画像記録手段において最初の記録を行なう第1画像データと、それ以外の第2画像データと、に分離する画像分離手段と、前記画像分離手段で分離された第2画像データが表現する画像について、前記画像定着手段による画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なうことにより複数の分割領域画像に分割する画像分割手段と、前記画像分割手段により分割された複数の分割領域画像それぞれに対して、前記画像定着手段による画像定着処理の平行方向かつ前記記録媒体の移動方向に対して段階的となるような所定の補正量を加える補正処理を行なう分割領域画像補正手段と、前記分割領域画像補正手段により補正処理がなされた複数の分割領域画像を統合して前記複数の画像記録手段において2回目以降の記録を行なう第3画像データとする画像統合手段と、前記画像分離手段により分離された第1画像データと、前記画像統合手段により統合された第3画像データと、をそれぞれ画像記録データとして前記複数の画像記録手段に出力する画像記録データ出力手段と、を有することを特徴としている。
【0021】
さらに、請求項7に係わる発明は、複数の画像記録手段と、該複数の画像記録手段それぞれによって記録が行なわれた直後の記録媒体が相対的に移動することにより画像定着処理を行なう複数の画像定着手段と、を備えた印刷装置に画像記録データを出力するために、コンピュータのCPUがメモリにおいて実行するプログラムであって、前記プログラムが、前記複数の画像記録手段において複数の画像を記録するために該複数の画像を格納した画像データ記憶ステップと、前記画像データ記憶ステップより画像データを読出し、前記複数の画像記録手段において最初の記録を行なう第1画像データと、それ以外の第2画像データと、に分離する画像分離ステップと、前記画像分離ステップで分離された第2画像が表現する画像について、前記画像定着手段による画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なうことにより複数の分割領域画像に分割する画像分割ステップと、前記画像分割ステップにより分割された複数の分割領域画像それぞれに対して、前記画像定着手段による画像定着処理の平行方向かつ前記記録媒体の移動方向に段階的となるような所定の補正量を加える補正処理を行なう分割領域画像補正ステップと、前記分割領域画像補正ステップにより補正処理がなされた複数の分割領域画像を統合して前記複数の画像記録手段において2回目以降の記録を行なう第3画像とする画像統合ステップと、前記画像分離ステップにより分離された第1画像データと、前記画像統合ステップにより統合された第3画像データと、をそれぞれ画像記録データとして前記複数の画像記録手段に出力する画像記録データ出力ステップと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の印刷装置は、画像データ記憶手段に記憶された複数の画像データを、最初に記録される第1画像データとそれ以外の第2画像データとに分離し、第2画像データが表現する画像について画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なって分割領域画像とし、該分割領域画像それぞれに対して記録媒体の移動方向について段階的となるような所定の補正量を画像定着処理の平行方向に加えることで得られた第3画像データを、第1画像データによる画像記録の後に記録する。これにより、記録媒体が台形状に変形したとしても、記録媒体の変形に追随するように分割領域画像それぞれに対して補正を行なうため、第1画像データによる記録と第3画像データによる記録とが一致するので、記録媒体に対して画像定着処理を行なったとしても印刷品質が向上する。
【0023】
請求項2に記載の印刷装置は、画像分割手段による分割処理を行なうための所定数を算出する領域分割数算出手段を備えることにより、記録媒体の変形に対して適切な数の分割領域画像を得ることが可能になる。これにより、第1画像データによる記録と第3画像データによる記録とが一致するので、記録媒体に対して画像定着処理を行なったとしても印刷品質が向上する。
【0024】
請求項3に記載の印刷装置は、領域分割算出手段による分割処理を行なうための所定数を、複数の画像定着手段による画像定着処理が行なわれた記録媒体の変形量を測定して算出するので、記録媒体の変形に対して適切な数の分割領域画像を得ることが可能になる。これにより、第1画像データによる記録と第3画像データによる記録とが一致するので、記録媒体に対して画像定着処理を行なったとしても印刷品質が向上する。
【0025】
請求項4に記載の印刷装置は、領域分割算出手段による分割処理を行なうための所定数を、画像記録の際に吐出されるインク量に関連する第2画像データにより表現される画像の画素量に基づいて算出するので、記録媒体の変形に対して適切な数の分割領域画像を得ることが可能になる。これにより、第1画像データによる記録と第3画像データによる記録とが一致するので、記録媒体に対して画像定着処理を行なったとしても印刷品質が向上する。
【0026】
請求項5に記載の印刷装置は、複数の画像記録手段が記録媒体を搬送する搬送路に沿って直列に配置されており、複数の画像定着手段が複数の画像記録手段各々に対して直列に配置されていることにより、記録媒体に対して連続的に画像記録、画像定着を繰り返して画像記録を行なうので、高速印刷を実現することが可能となる。
【0027】
請求項6に記載の画像処理装置は、画像データ記憶手段に記憶された複数の画像データを、最初に記録される第1画像データとそれ以外の第2画像データとに分離し、第2画像データが表現する画像について画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なって分割領域画像とし、該分割領域画像それぞれに対して記録媒体の移動方向について段階的となるような所定の補正量を画像定着処理の平行方向に加えることで第1画像データによる画像記録の後に記録する第3画像データを得ることができる。これにより、印刷装置における画像定着処理によって、記録媒体が台形状に変形したとしても、記録媒体の変形に追随するように分割領域画像それぞれに対して補正を行なっているため、第1画像データによる記録と第3画像データによる記録とが一致するので、記録媒体に対して画像定着処理を行なったとしても印刷品質が向上する。
【0028】
請求項7に記載のプログラムは、コンピュータにおいて、画像データ記憶手段に記憶された複数の画像データを、最初に記録される第1画像データとそれ以外の第2画像データとに分離し、第2画像データが表現する画像について画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なって分割領域画像とし、該分割領域画像それぞれに対して記録媒体の移動方向について段階的となるような所定の補正量を画像定着処理の平行方向に加えることで第1画像データによる画像記録の後に記録する第3画像データを得るステップを実行することができる。これにより、印刷装置における画像定着処理によって、記録媒体が台形状に変形したとしても、記録媒体の変形に追随するように分割領域画像それぞれに対して補正を行なっているため、第1画像データによる記録と第3画像データによる記録とが一致するので、記録媒体に対して画像定着処理を行なったとしても印刷品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】印刷装置100を説明するための図である。
【図2】画像処理装置1とプリンタ2の制御部20を説明するための図である。
【図3】印刷装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】ステップS3における動作を詳細に説明するためのフローチャートである。
【図5】画像分割設定メニューMDを説明するための図である。
【図6】画像を複数の分割領域画像に分割した状態を説明するための図である。
【図7】複数の分割領域画像それぞれに対して補正量を追加した状態を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態である画像処理装置10を説明するための図である。
【図9】記録媒体搬送路上を移動する記録媒体Pが、乾燥器Hによって行なわれる乾燥処理の結果、影響を受けた状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を利用しながら、本発明を実施形態について、説明を行なう。
【0031】
〈第1の実施形態〉
第1の実施形態は、記録媒体Pの変形処理をプリンタによって行なう、というものである。
図1は、本発明に係わる印刷装置100を説明するための図である。
印刷装置100は、画像処理装置1、プリンタ2とからなる。画像処理装置1とプリンタ2とは、通信線TLで通信可能なように電気的に接続されている。
【0032】
画像処理装置1は、一般的に使用されるパーソナルコンピュータであり、プリンタ2に画像記録データKDを供給する。
プリンタ2は、制御部20、給紙部21、記録媒体搬送路22、排紙部23、記録部24、乾燥器25、およびスキャナ26を備えている。
【0033】
制御部20は、画像処理装置1から供給された画像記録データKDによる印刷を行なうため、プリンタ2を制御する。詳細は後述する。
【0034】
給紙部21は記録媒体Pを収納しており、印刷を行なうために記録媒体搬送路22に対して記録媒体Pを供給する。記録媒体搬送路22は、複数備えられた記録部24(後述する)および複数備えられた乾燥器25(後述する)が動作することによって行なわれる印刷処理のため、記録媒体Pを搬送する。排紙部23は、印刷処理が行なわれた記録媒体Pを蓄積する。
【0035】
記録部24は、記録媒体搬送路22によって搬送される記録媒体Pに対して、画像処理装置1から出力された画像記録データKDに基づいて、制御部20によって制御され画像記録を行なう。プリンタ2の記録部24は、液体インクを吐出するインクジェットヘッドであり、多色印刷を行なうため複数の記録部24が備えられている。ここでは、プリンタ2が4色印刷を実現するため、黒(K)を印刷する記録部24k、シアン(C)を印刷する記録部24c、マゼンダ(M)を印刷する記録部24m、イエロー(Y)を印刷する記録部24yを備えている。
【0036】
これら複数の記録部24は、図示しているように、記録媒体搬送路22に沿って直列に配置されているので、記録媒体搬送路22によって搬送される記録媒体Pに対して順次各記録部24からインクを吐出することで、記録媒体Pに対する高速な印刷を可能としている。
なお、記録部24の配置順序は、KCMYに限定されることはない。
【0037】
また、記録部24の数は4つに限定されることはなく、白色などの特色インクを吐出する記録部24を備えるなど、5つ以上の記録部24を備えていてもよい。逆に、シアン、マゼンダのインクを吐出する記録部24を2つ備えるなど、記録部24の数が3つ以下であってもよい。
【0038】
さらに、記録部24は、液体インクではなく、粉末トナーを吐出するタイプのインクジェットヘッドであってもよい。あるいは、記録部24は電子写真方式の記録手段を採用してもよい。
【0039】
乾燥器25は、記録部24がインクを吐出した記録媒体Pに対して乾燥処理を行なうことで、記録媒体P上に画像を定着させる。乾燥器25は、赤外線による乾燥、あるいは熱風による乾燥など、種々の手段を採用することができる。
【0040】
乾燥器25は、図示しているように、記録媒体搬送路22に沿って直列に配置された複数の記録部24に直列して配置されている。これにより、記録媒体搬送路22によって搬送され各記録部24によるインク吐出がなされた記録媒体Pに対して各乾燥器25が順次乾燥処理を行なうことで、記録媒体Pに対する高速印刷の一助となっている。
【0041】
スキャナ26は、記録媒体搬送路22を搬送される記録媒体Pを撮影する。図示しているように、スキャナ26は、記録媒体搬送路22に沿って直列に配置された複数の記録部24、乾燥器25に直列して配置されているので、各乾燥器25を通過した記録媒体Pを撮影することができる。
スキャナ26で撮影された記録媒体Pの撮影画像は、制御部20によって記録媒体Pの変形量測定に使用される。
【0042】
プリンタ2による記録媒体Pに対する印刷動作は、次のように行なわれる。
給紙部21に収納された記録媒体Pが記録媒体搬送路22に載置される。載置された記録媒体Pは、記録媒体搬送路22によって最初の記録部24の下部を通過する。
記録媒体Pが最初に通過する記録部24kは、画像処理装置1から出力された画像記録出力データSDに基づいて駆動し、黒色のインクを吐出することによって該画像記録出力データSDによって表現される黒色画像を記録媒体Pに形成する。
画像が形成された記録媒体Pは、記録媒体搬送路22によって移動し、乾燥器25の下部を通過する。乾燥器25が、記録媒体Pに対して乾燥処理を行なうことにより、記録媒体Pに吐出された黒色インクの溶媒が蒸発して、黒色画像が記録媒体P上に定着する。
記録媒体Pは、さらに記録媒体搬送路22によって移動し、記録部24c、記録部24m、記録部24yの下部を通過して、C色画像、M色画像、Y色画像が記録媒体Pに形成される。また、各記録部24を通過した後、該各記録部24に直列して配置された乾燥器25それぞれにより乾燥処理を受けることにより、記録媒体P上に画像が定着する。
記録媒体搬送路22上を移動することにより、記録部24全ての下部を通過して画像が形成された記録媒体Pは、排紙部23に蓄積される。
【0043】
このように動作することにより、プリンタ2は記録媒体Pに対して印刷処理を行なう。この時、最初の記録部24kを通過して乾燥器25による乾燥処理が行なわれることにより、記録媒体Pが収縮するなどの変形が生じる。続く記録部24c、24m、24yによる画像形成後、やはり各記録部24に直列に配置された乾燥器25をそれぞれ通過するので、記録媒体Pは変形を繰り返しながら画像が記録されることになり、結果として印刷品質が低下してしまう。
上記のような問題を解決するため、プリンタ2の制御部20が記録媒体Pの変形を考慮した印刷処理を実行する。
【0044】
図2は、画像処理装置1の構成を説明するための図である。画像処理装置1は、一般的に使用されているパーソナルコンピュータであり、CPU11、表示部12、入力部13、ネットワークI/F14、メディアドライブ15、記憶部16、メモリ17より構成されており、通信線TLでプリンタ2と電気的に通信可能なように接続されている。
【0045】
CPU11は、画像処理装置1およびプリンタ2を制御する。表示部12は、画像処理装置1における画像処理、プリンタ2の制御に必要な情報を表示するために使用される。入力部13は、マウスやキーボードで構成されており、プリンタ2を制御するため画像処理装置1に対してオペレータが指示を入力するために使用する。ネットワークI/F14は、画像処理装置1と図示しないネットワークとを接続するためのものである。プリンタ2がネットワークを画像処理装置1と接続されている場合には、このネットワークI/F14を介して、プリンタ2に画像記録出力データSDを出力する。メディアドライブ15は、メディアディスク18に画像記録データKDが記録されている場合に使用する。記憶部16は、プリンタ2に供給するための画像記録データKDを記憶する。メモリ17は、記憶部16によって記憶された図示しないプログラムをCPU11が実行するためのワークエリアである。CPU11によってメモリ17において図示しないプログラムが実行された結果、プリンタ2を制御し、またプリンタ2に画像記録データKDが供給される。
【0046】
画像処理装置1と通信可能に接続されたプリンタ2の制御部20は、画像データ記憶部271、画像分離部272、画像分割部273、分割画像補正部274、画像統合部275、画像記録データ出力部276を有している。これらの機能については、画像処理装置1から制御を行なう。
【0047】
画像データ記憶部271は、プリンタ2で印刷処理を行なうための画像記録データKDを記憶する。画像記録データKDは、記録媒体Pに形成される画像を格納した電子データであり、プリンタ2で記録される複数の色それぞれについての画像記録データKDを画像データ記憶部271が記憶する。すなわち、一つの印刷物であるドキュメント乃至ページを4色表現する場合、画像データ記憶部271は画像記録データKDk、KDc、KDm、KDyという4つのデータを記憶する。
【0048】
画像分離部272は、画像データ記憶部271に記憶された複数の画像記録データKDについて、それぞれ網点化処理を伴う二値化処理を行なった上で、プリンタ2で最初に印刷される画像記録データKDと、それ以降に印刷される画像記録データKDとを分離する。
すなわち、プリンタ2における印刷順序が、KCMYであることから、プリンタ2で最初に印刷される画像記録データKDが、黒色画像を表現する画像を格納した画像記録データKDkであるものとして、画像分離部272が他の画像記録データKDc、KDm、KDyと分離して取り扱う。
分離された各画像記録データKDは、画像分離部272が一時的に記憶する。
【0049】
画像分割部273は、画像分離部で分離された画像記録データKDのうち、最初に印刷される画像記録データKD以外の画像記録データKDが表現する画像について、所定の分割数によって領域分割を行ない、分割画像データDDを得る。
このとき、画像分割部273は、乾燥器25に対して直交する方向について、領域分割を行なう。これは、乾燥器25によって行なわれる乾燥処理により記録媒体Pが変形するためであり、特に記録媒体Pが台形状に変形することを考慮して、記録媒体搬送路22上を移動する記録媒体Pを横断するように備えられた乾燥器25と直交する方向に画像の領域を分割する。
領域分割が行なわれた結果得られる分割画像を分割画像データDDとして、画像データ分割部273が一時的に記憶する。
【0050】
画像分割部273は、画像記録データKDを分割する分割数を算出するため、領域分割数算出部2731を備えている。領域分割数算出部2731は、後述する工程によって、記録媒体Pの変形量、あるいは分割対象となった画像記録データKDによって表現される画像の画素量に基づいて、分割数を算出する。
そのため、領域分割数算出部2731は、以下のような機能を備えている。
【0051】
(1)領域分割数算出部2731は、プリンタ2に備えられたスキャナ26が撮影した記録媒体Pの画像から記録媒体Pのサイズを取得し、プリンタ2の給紙部21に収納されている記録媒体Pの設定サイズと比較することで、記録媒体Pの変形量の測定結果を得ることができる。該測定結果に基づいて、領域分割数算出部2731は、分割数を算出する。
【0052】
(2)画像処理装置1のオペレータがプリンタ2で試し刷りを行なって得られた記録媒体Pの変形量を入力することにより、領域分割数算出部2731は、記録媒体Pの変形量の測定結果を取得し、領域分割数を算出する。
【0053】
(3)領域分割数算出部2731は、分割画像データDDを得るための対象となる画像記録データKDによって表現される画像の画素量に基づいて分割数を算出する。そのために、領域分割算出部2731は画素量−変形量相関テーブルGHTを備える。取得した画素量と、画素量変形量相関テーブルGHTを参照することにより、領域分割数算出部2731は画素量に基づく分割数の算出を行なう。
【0054】
すなわち、記録媒体Pの変形量は、記録媒体Pに対して記録部24が吐出するインク量の影響を大きく受ける。画像の画素量に基づいて記録部24は画像を形成するので、画素量が多い場合は記録部24によるインク吐出量も大となり、記録媒体Pに浸透する水分量が多くなるため、乾燥器25による乾燥処理を行なったとしても、乾燥処理の時間によってはインク吐出による膨張の影響で、一般的に記録前の記録媒体Pよりもサイズが大きくなる。逆に、画素量が少ない場合は記録部24によるインク吐出量は小となるので、記録媒体Pに浸透する水分量は少なく、乾燥器25による乾燥処理を行なうと溶媒だけでなく記録媒体Pが含有する水分も蒸発するので、記録前の記録媒体Pよりもサイズが小さくなる。
このようにインク量の大小は、記録媒体Pの変形量に影響を与えるので、画像記録データKDによって表現される画像の画素量に基づいて分割数を算出することで、後述する工程により印刷品質を向上させる適切な画像補正を行なうことが可能となる。
【0055】
分割画像補正部274は、画像分割部273によって分割された分割画像データDD各々に対して、補正処理を行なう。このとき分割画像補正部274は、乾燥器25による画像定着処理の平行方向に、かつ記録媒体の移動方向に対して段階的となるような補正量を各分割画像データDDが表現する画像に加えることにより、記録媒体Pが乾燥処理の結果台形状に変形したとしても、次に記録される各分割画像データDDによって表現される画像が最初に画像記録データKDが表現する画像と略一致するように記録される。
分割画像補正部274による各分割画像データDDによって表現される画像に対する補正量の追加は、該各画像の両端に画素列を追加、あるいは削除することによって行なわれる。また、画素列を該各画像の所定間隔に付与、あるいは削除することで、補正量を追加するようにしてもよい。
【0056】
画像統合部275は、プリンタ2で最初に記録される画像記録データKD、および分割画像補正部274によって補正処理が行なわれた複数の分割画像データDDが表現する画像を統合し、一つの補正後画像を表現する補正後画像データADを生成する。画像統合部275によって生成された補正後画像データADが表現する画像は、複数の分割画像データDDが表現する画像に所定の補正量が追加された結果、記録媒体Pの搬送方向に平行して段階的に縮小、あるいは拡大が行なわれた略台形状の画像となる。
【0057】
画像記録データ出力部276は、プリンタ2で最初に記録される画像記録データKD、および画像統合部275で生成された補正後画像データADを複数の記録部24それぞれに出力する。画像記録データ出力部276が出力する画像記録データKDおよび補正後画像データADに対応して、制御部20が、給紙部21、記録媒体搬送部22、複数の記録部24、乾燥器25、排紙部23を動作させることで、記録媒体Pへの印刷を行なう。
【0058】
ここでは、プリンタ2が備える記録部24のうち、記録媒体Pに最初に記録を行なうのは黒色の記録部24kなので、画像記録データ出力部276は画像記録データKDkを記録部24Kに対して出力する。
また、CMY色についてプリンタ2が記録を行なうため、画像記録データ出力部276は、画像分離部272で画像記録データKDkと分離された画像記録データKDc、KDm、KDyに対して画像分割部273、分割画像補正部274、画像統合部275が画像処理を行なった結果得られる補正後画像データADc、ADm、ADyを各々記録部24c、24m、24yに対して出力する。
【0059】
その結果、プリンタ2が、記録媒体Pに対して画像記録出力データKDkによる記録を行なうと、その工程における乾燥処理により記録媒体Pは変形するが、該記録媒体Pの変形を考慮した補正後画像データADc、ADm、ADyが記録媒体Pに記録されるので、記録媒体Pに形成される画像は色ズレを起こさないため、印刷品質が向上する。
【0060】
図3は、印刷装置100の動作、特にプリンタ2の制御部20の動作を説明するためのフローチャートである。
【0061】
まず、ステップS1で、画像処理装置1から供給された複数の画像記録データKDを画像データ記憶部271が記憶する。一つのページ乃至ドキュメントを表現する画像を格納するための複数の画像記録データKDは、ネットワークI/F14を介してネットワークに接続された図示しない画像記録データ作成装置から画像処理装置1が取得してプリンタ2に供給することにより画像データ記憶部271が記憶するか、あるいは画像処理装置1が備える画像データ作成部(図示せず)によって作成されることにより、画像データ記憶部271が記憶する。
【0062】
続くステップS2において、画像分離部272が画像データ記憶部271に記憶された複数の画像記録データKDを読出し、網点化処理を伴う二値化処理を行なった後、プリンタ2において最初に記録媒体Pに記録される画像を格納した画像記録データKDと、それ以降に記録媒体Pに記録される画像を格納した画像記録データKDとに分離する。
プリンタ2がKCMYの順に4色印刷を行なうことができるインクジェットプリンタであれば、画像分離部272は該プリンタ2の記録順序に従って複数の画像記録データKDについて、黒色画像を表現する画像記録データKDkと、CMY色の画像をそれぞれ格納した画像記録データKDc、KDm、KDyとに分離する。
【0063】
ステップS3では、画像分割部273が分離された画像記録データKDc、KDm、KDyのいずれか、あるいは全てに対して、格納された画像を複数の分割領域画像に分割するための分割数を算出し、該複数の分割領域画像を格納した分割画像データDDを生成する。
【0064】
画像分割部273が分割数を算出し、分割画像データDDを生成するプロセスについては、図4を用いて説明を行なう。図4は、画像分割部273の動作を説明するためのフローチャートである。
【0065】
ステップS31において、画像分割部273は、分割数算出手法の選択を画像処理装置1のオペレータに促すために、表示部12に画像分割設定メニューMDを表示する。
【0066】
図5は、画像分割設定メニューMDを説明するための図である。表示部12に表示された画像分割設定メニューMDに対して、画像処理装置1のオペレータは入力部13を操作することで、画像分割部273に対して分割画像データDDを生成するための設定を入力することができる。
画像分割設定メニューMDは、分割画像データDDを生成するための設定を入力するための設定欄として、スキャナ補正設定欄MD1、測定値設定欄MD2、インク量補正設定欄MD3を備えている。また、画像分割設定メニューMDにおける設定終了後に押下するためのOKボタン、画像分割設定メニューMDの表示を中止するためのキャンセルボタンを備えている。
スキャナ補正設定欄MD1、測定値設定欄MD2、インク量補正設定欄MD3はそれぞれラジオボタンを備えており、入力部13の操作によっていずれかのラジオボタンが押下されることで、画像分割部273は該ラジオボタンが押下された設定欄のみを入力可能なアクティヴ状態とする。
【0067】
スキャナ補正設定欄MD1は、プリンタ2に備えられたスキャナ26によって撮影された記録媒体Pのサイズと画像記録データKDが格納する画像が表現するサイズとを比較して記録媒体Pの変形量を求めるための設定を行なうための入力欄である。スキャナ補正設定欄MD1は撮影画像選択チェックボックスMD11を備えている。ラジオボタンが押下されることでスキャナ補正設定欄MD1に対する入力がアクティヴとなり、入力部13による撮影画像選択チェックボックスMD11の入力が可能となる。
【0068】
撮影画像選択チェックボックスMD11は、記録媒体Pの変形量を算出するための比較対象となる記録媒体Pの撮影画像を選択、入力するためのチェックボックスである。撮影画像選択チェックボックスMD11は、kボックス、Cボックス、Mボックス、Yボックスを備えており、kボックスにはデフォルトでチェックが入っている。撮影画像選択チェックボックスMD11のボックスのうち、チェックが入っている色を記録した記録媒体Pの撮影画像サイズを、領域分割数算出部2731が画像記録データKDの表現する画像サイズとの比較対象として取得する。撮影画像選択チェックボックスMD11は複数選択が可能であり、選択が行なわれた記録媒体Pの撮影画像サイズがそれぞれ画像記録データKDの表現する画像サイズとの比較対象となる。
【0069】
測定値設定欄MD2は、テスト印刷などを行なった結果得られた記録媒体Pのサイズを測定した測定値を設定するための入力欄である。測定値設定欄MD2は測定値入力ボックスMD21を備えている。ラジオボタンが押下されることで測定値設定欄MD2に対する入力がアクティヴとなり、入力部13による測定値入力ボックスMD21の入力が可能となる。
【0070】
測定値入力ボックスMD21は、本印刷の前に行なわれたテスト印刷の結果得られた記録媒体Pの測定値を入力するための入力欄である。プリンタ2によるテスト印刷で記録媒体Pに対して複数の記録部24および複数の乾燥器25による記録が行なわれた結果、記録媒体Pは乾燥処理により変形が生じる。変形が生じた記録媒体Pの各辺を測定した結果を測定値入力ボックスMD21に入力することにより、領域分割数算出部2731が該測定値について画像記録データKDの表現する画像サイズとの比較対象として取得する。
なお、測定値入力ボックスMD21に対する記録媒体Pの測定値入力手法は、各辺の測定値に限定するものではない。例えば、乾燥器25に直交する二辺の長さのみを入力するようにしてもよい。あるいはデジタイザを利用して、記録媒体Pの頂点4つを測定値入力ボックスMD21に入力し、該各座標値から記録媒体Pの変形量を測定するようにしてもよい。
【0071】
インク量補正設定欄MD3は、画像記録データKDに格納された画像が記録媒体Pに記録される際に使用されるインク量に基づいて変形量を予測するための設定を行なうための入力欄である。インク量補正設定欄MD3は、インク量補正対象色設定チェックボックスMD31を有している。ラジオボタンが押下されることでインク量補正設定欄MD3に対する入力がアクティヴとなり、入力部13によるインク量補正対象色設定チェックボックスMD31の入力が可能となる。
【0072】
インク量補正対象色設定チェックボックスMD31は、記録媒体Pの変形量を予測するための対象となるインク量の色を選択するためのチェックボックスである。インク量補正対象色設定チェックボックスMD31は、kボックス、Cボックス、Mボックス、Yボックスを備えており、kボックスにはデフォルトでチェックが入っている。インク量補正対象色設定チェックボックスMD31のうちチェックが入っている色について、領域分割算出部2731が記録媒体Pの変形量を予測するための対象となるインク量の色として取得する。インク量補正対象色設定チェックボックスMD31は複数選択が可能であり、選択が行なわれた色のインク量それぞれを、記録媒体Pの変形量の予測対象とする。
【0073】
画像処理装置1のオペレータが入力部13を操作して、画像分割設定メニューMDのスキャナ補正設定欄MD1、測定値設定欄MD2、インク量補正設定欄MD3に備えられたいずれかのラジオボタンを押下することにより、分割数算出手法を選択する。
【0074】
ステップS31において、スキャナ補正設定欄MD1が選択された場合、ステップS32に移行する。また、測定値設定欄MD2が選択された場合、ステップS34へ移行する。あるいは、インク量補正設定欄MD3が選択された場合、ステップS35へ移行する。
(1)スキャナ補正設定
スキャナ補正設定欄MD1が選択されると、ステップS32において、画像処理装置1はプリンタ2を動作させ、テスト印刷を行ない、記録媒体搬送路22上を搬送される記録媒体Pをスキャナ26が撮影し、記録媒体Pの画像を取得する。
【0075】
撮影を行なうスキャナ26は、撮影画像選択チェックボックスMD11のチェックを入れた各色ボックスに対応するスキャナ26となる。すなわち、撮影画像選択チェックボックスMD11のチェックが、デフォルトで指定されているkボックスのみであれば、記録部24kで記録が行なわれた記録媒体Pを撮影するスキャナ26のみが撮影を行ない、他のスキャナ26は撮影を行なわない。逆に、画像選択チェックボックスMD11のチェックが全てのボックスについてなされた場合は、全てのスキャナ26が記録媒体Pの撮影を行なう。
スキャナ26で撮影された記録媒体Pの撮影画像は、制御部20へ送られる。
【0076】
ステップS33で、領域分割算出部2731は、撮影画像に基づく記録媒体Pのサイズと、画像記録データKDに格納された画像が表現するサイズとを比較し、変形量を取得する。変形量の取得は、領域分割算出部2731によって撮影された記録媒体Pの各辺と、画像記録データKDによって表現される画像の各辺とを比較して差分を取得することで行なわれる。
【0077】
あるいは、画像記録データKDに記録時使用すべき記録媒体Pのサイズが予め設定されていた場合は、該設定サイズと撮影画像に基づく記録媒体Pのサイズとを比較して変形量を取得してもよい。
スキャナ補正設定欄MD1の選択に基づく変形量取得が終了したならば、ステップS37へ移行する。
(2)測定値設定
ステップS31で、測定値設定欄MD2を選択すると、ステップS34で画像処理装置1のオペレータが測定値入力ボックスMD21にテスト印刷を行なった結果得られた記録媒体Pの測定値を入力する。オペレータが入力部13を操作して、測定値入力ボックスMD21に記録媒体Pの各辺の長さを入力することで、領域分割数算出部2731は画像記録データKDによって表現される画像の各辺の長さと比較して差分を変形量として取得する。
測定値設定欄MD2の選択に基づく変形量取得が終了したならば、ステップS37へ移行する。
(3)インク量補正設定
ステップS31でインク量補正設定欄MD3を選択すると、ステップS35において、領域分割数算出部2731は、インク量補正対象色設定チェックボックスMD31にチェックが入った色に関する画像記録データKDの画素量を取得する。インク量補正対象色設定チェックボックスMD31のチェックが、デフォルトで指定されているkボックスのみであれば、領域分割数算出部2731は画像分離部272で分離された黒色を表現する画像記録データKDkから画素量を取得する。
【0078】
ここで画素量とは、画像記録データKDが格納する画像を表現するために必要なピクセルの総量のことである。画像記録データKDkの場合、画素量が少なければ表現される画像は白っぽくなり、画素量が多ければ表現される画像は黒っぽくなる。すなわち、画素量が小であれば記録部24kが吐出するインク量は少なく、画素量が大であれば記録部24kが吐出するインク量が多くなる。
【0079】
記録媒体Pに吐出されるインク量が多い場合、画像を記録するため該記録媒体Pはインクの溶媒を大量に吸収することになり、記録媒体Pが膨張する。その後、記録媒体Pに画像を定着させるため乾燥器25による乾燥処理を行なうと溶媒が蒸発することにより記録媒体Pはある程度収縮するが、乾燥処理の時間によってはインク吐出による膨張の影響で、一般的に記録前の記録媒体Pよりもサイズが大きくなる。逆に、記録媒体Pに吐出されるインク量が少ない状態で乾燥処理を行なうと、溶媒だけでなく記録媒体Pが含有する水分も蒸発するため、一般的に記録前の記録媒体Pよりもサイズが小さくなる。このように、インク量、ひいては画素量の大小は記録媒体Pの変形量に大きく関連し、その点を考慮したプロセスがステップS35からのプロセスである。
【0080】
ステップS36で、領域分割数算出部2731は、画像記録データKDから取得した画素量に基づいて、記録媒体Pの変形量を予測する。記録媒体Pの変形量を予測するため、領域分割数算出部2731は画素量−変形量相関テーブルGHTを備えている。
画素量−変形量相関テーブルGHTは、事前にプリンタ2においてインク吐出量を変更したテスト印刷を行ない、記録媒体Pが該テスト印刷の結果変形した変形量を格納したテーブルである。画像の画素量に基づいて決定されるインク吐出量の変化に伴って変化する記録媒体Pの変形量を画素量−変形量相関テーブルGHTを参照することで、領域分割数算出部2731はステップS35で取得した画像記録データKDの画素量から記録媒体Pの変形量を求めることが可能となる。
インク量補正設定欄MD3に基づく変形量取得が終了したならば、ステップS37へ移行する。
【0081】
ステップS32、S34、S35からのいずれかのプロセスに画像処理装置1のオペレータが満足したならば、入力部13を操作してOKボタンを押下する。画像分割部273は、取得した変形量に基づく次のプロセスを実行するため、表示部12に表示された画像分割設定メニューMDを消去する。
【0082】
ステップS37で、領域分割数算出部2731は、取得した記録媒体Pの変形量に基づいて、画像分離部272で分離された2番目以降に記録される画像記録データKDの領域分割を行なうための分割数を算出する。
【0083】
ステップS31からS36のプロセスによって、記録媒体Pの変形量は、搬送方向に平行な辺Pxと、記録媒体Pの搬送方向に直交する辺Pyについて得ることができる。特に分割数の算出に関係するのは記録媒体Pの辺Pyであり、搬送方向順に辺Py1、Py2との差が分割数の算出に関わる変形量となる。
【0084】
辺の長さがPy1<Py2、あるいはPy1>Py2となる場合、記録媒体Pは台形状に変形していることを意味する。そこで、領域分割数算出部2731は、Py1とPy2との差分を取り、該差分を記録媒体Pに対する記録時のドット数に換算し、該ドット数の半値を領域分割数とする。なお、ドット数換算時、小数点は四捨五入等を行って丸め込む。
【0085】
取得したドット数の半値を領域分割数とするのは、後述するプロセスにおいて、分割画像データDDに対する記録媒体Pの搬送方向に平行な方向に補正量を追加するに際して、分割画像データDDの搬送方向に平行な二つの辺に補正量を追加するためである。
【0086】
従って、例えば、変形量として2ドットを取得した場合、領域分割数算出部2731はその半値「1」を領域分割数とする。変形量が4ドットであれば、領域分割数はその半値である「2」となる。また、変形量が3ドットだった場合、領域分割数算出部2731は得られた半値「1.5」に対して四捨五入して得られた「2」を領域分割数とする。
【0087】
また同様に、後述するプロセスにおける分割画像データDDに対する記録媒体Pの搬送方向に平行な方向に補正量を追加するに際して、分割画像データDDの搬送方向に直交する辺の中点二つを結んだ線分に対して補正量を追加するのであれば、領域分割数算出部2731は、Py1とPy2との差分を取り、該差分を記録媒体Pに対する記録時のドット数を領域分割数とするようにしてもよい。
【0088】
ステップS38で、画像分割部273は、分割数に基づいて画像分離部272で分離された画像記録データKDに格納された画像の領域分割を行ない、複数の分割画像データDDを生成する。画像分割部273は、求められた分割数で、画像記録データKDによって表現される画像を分割するに際して、搬送方向に直交する方向に等間隔に分割することで、画像の領域分割を行なう。
【0089】
図6は、画像分割部273が、画像記録データKDが表現する画像の領域分割を行ない、複数の分割画像データDDを生成した状態を示すための図である。
図6(a)は、画像記録データKDが表現する画像を示している。矢印は、該画像記録データKDが記録媒体Pに記録される場合の搬送方向である。
図6(b)は、分割数が「4」であった場合、画像分割部273によって画像記録データKDが表現する画像の領域分割を行なった結果得られる4つの分割領域画像を示している。図示しているように、4つの領域分割画像は、記録媒体Pの搬送方向に直交する方向に分割されている。
画像分割部273は、4つの領域分割画像についてそれぞれ分割画像データDD1、DD2、DD3、DD4として生成し、一時的に記憶する。
【0090】
図3に戻り、ステップS3における分割画像データDDの生成終了後、ステップS4で分割画像補正部174は分割画像データDDが表現する分割領域画像に対して補正量を追加する処理を行なう。このとき、分割画像補正部274は、記録媒体Pの変形量に対応して、分割領域画像に対して記録媒体Pの搬送方向に平行な方向に補正量を追加する。また、分割画像補正部274が追加する補正量は、領域分割数算出部1731によって算出された記録媒体Pの搬送方向に直交する辺Py1とPy2との差分を補正量のドット数に換算したものを補正量とする。
なお、補正量の「追加」とは、マイナス方向の追加、すなわち「削減」も含むものとする。
【0091】
図7は、分割画像補正部274によって分割領域画像に対して補正量が追加された状態を説明するための図である。
【0092】
図7(a)は、図示しているように、記録媒体Pの変形量が、搬送方向に直交する辺Py1とPy2とがPy1<Py2の関係で6ドット分変形しているものとして、画像記録データKDが表現する画像に対して分割数「3」で分割を行なった結果得られる4つの分割領域画像に補正量の追加が行なわれる。分割画像データDD1a、DD2a、DD3a、DD4aが表現する分割領域画像に対して、マイナス方向に補正量を追加した状態を示している。ここで、矢印は記録媒体Pの搬送方向である。
分割画像補正部274は、記録媒体Pが搬送方向に対してマイナス方向に変形しているので、分割画像データDD1a、DD2a、DD3a、DD4aが表現する分割領域画像それぞれに対して、記録媒体Pの変形に合わせて、ドット数を削減することによるマイナス方向への補正量追加を実現している。
【0093】
図7(a)に示しているように、分割画像データDD1aが表現する分割領域画像については補正量の追加が行なわれていない。記録媒体Pの搬送方向に向かって分割画像データDD2aが表現する分割領域画像については、その両端に当たる記録媒体Pの搬送方向に平行な方向に補正量を追加する。補正量追加が行なわれる1つめの分割領域画像なので、分割画像データDD2aが表現する分割領域画像の両端はそれぞれ1ドット削除される。さらに記録媒体Pの搬送方向に向かって分割画像データDD3aが表現する分割領域画像についても、記録媒体Pの変形に合わせて、両端がそれぞれ2ドットずつ削除される。そして、分割画像データDD4aが表現する分割領域画像についても同様に、両端がそれぞれ3ドットずつ削除されることで、4つの分割領域画像に対して記録媒体Pの変形量に応じた補正量が追加される。
ここで、ドットの削除は、単純に記録媒体Pの搬送方向に平行な方向のライン分のドットを削除することによって実行される。
【0094】
図7(b)は、分割画像データDD1b、DD2b、DD3b、DD4bが表現する分割領域画像に対して、プラス方向に補正量を追加した状態を示している。すなわち、図示しているように、記録媒体Pの変形量が、搬送方向に直交する辺Py1とPy2とがPy1>Py2の関係で6ドット分変形しているものとして、画像記録データKDが表現する画像に対して分割数「3」で分割を行なった結果得られる4つの分割領域画像に補正量の追加が行なわれる。記録媒体Pが図7(a)の場合とは逆に変形しているので、分割画像補正部274は分割画像データDD1b、DD2b、DD3b、DD4bが表現する各分割領域画像に対して、記録媒体Pの搬送方向に平行して、DD2bの両端に各1ドット、DD3bの両端に各2ドット、DD4bの両端に各3ドットの補正量を追加することにより、4つの分割領域画像に対して記録媒体Pの変形量に応じた補正が行なわれる。
ここで、ドットの追加は、単純に記録媒体Pの搬送方向に平行な方向のライン分のドットを追加することによって実行される。
【0095】
図7(c)は、画像分割部273によって生成された4つの分割画像データDD1c、DD2c、DD3c、DD4cが、記録媒体Pの搬送方向に直交する辺Py1、Py2の中点二つを結んだ線分に対して補正量を追加した場合の辺Py1とPy2との差分を取った結果、記録媒体Pの変形量が、Py1<Py2の関係で3ドット分変形しているものとして、画像記録データKDが表現する画像に対して分割数「3」で分割を行なった結果得られる4つの分割領域画像に補正量の追加を行なった状態を説明するための図である。
図7(c)に示しているように、分割画像データDD1cが表現する分割領域画像については補正量の追加が行なわれていない。記録媒体Pの搬送方向に向かって分割画像データDD2cが表現する分割領域画像については、その中線に当たる記録媒体Pの搬送方向に平行な方向に補正量を追加しており、分割画像データDD2cが表現する分割領域画像の中心が1ドット削除される。さらに記録媒体Pの搬送方向に向かって分割画像データDD3cが表現する分割領域画像についても、記録媒体Pの変形に合わせて、中心が2ドット削除される。そして、分割画像データDD4cが表現する分割領域画像についても同様に、中心が3ドットずつ削除されることで、4つの分割領域画像に対して記録媒体Pの変形量に応じた補正量が追加される。
【0096】
このように、分割画像補正部274によって行なわれる分割画像データDDに対する補正量の追加は、様々な手法を採用することができる。例えば、補正量の追加について、分割領域画像が表現する画像の中央や両端ではなく片端のみに補正量を追加するようにしてもよい。また、分割領域画像が表現する画像内部に乱数的に補正量を追加するようにしてもよい。
【0097】
図3に戻って、ステップS5にて、画像統合部275が、画像記録データKDが表現する画像を複数の分割領域画像に分割し、補正量が追加された該複数の分割領域画像を一つの画像として統合し、該画像を格納した補正後画像データADを生成する。補正後画像データADに格納された画像は略台形状の形状を有する。これは、複数の分割領域画像について、記録媒体Pの搬送方向に平行な方向に記録媒体Pの変形量に対応した補正量をそれぞれ追加したためである。
画像統合部275による補正後画像データADの生成は、画像分割部273が分割処理を行なった画像記録データKDそれぞれに対して行なわれる。すなわち、画像分割部173による分割領域画像の生成が画像記録データKDc、KDm、KDyそれぞれに対して行なわれた場合、画像統合部175は該画像記録データKDに対応した補正後画像データADc、ADm、ADyを生成する。
【0098】
ステップS6で、画像記録データ出力部276は、画像記録データKDk、補正後画像データADc、ADm、ADyを複数の記録部24それぞれに対して出力し記録媒体Pに記録する。
制御部20は、給紙部21を起動し、記録媒体Pを記録媒体搬送路22へ載置する。記録媒体搬送路22は記録部24へ記録媒体Pを搬送する。記録媒体Pが最初に通過する記録部24kは、画像記録データKDkが表現する画像を記録媒体Pに記録する。
【0099】
記録媒体Pはさらに搬送され、乾燥器26による乾燥処理を受ける。乾燥処理を受けた記録媒体Pは変形するが、次の記録部24cによって記録される画像は該記録媒体Pの変形を考慮して複数の分割領域画像に分割された上で補正量が追加された補正後画像データADcが表現する画像なので、該記録媒体Pに記録済のk色の画像に対して大きなズレを起こすことなくc色の画像が記録される。
【0100】
記録部24cによる記録後、記録媒体Pは記録媒体搬送路22を続けて搬送されることで、乾燥処理、記録部24mによる記録、乾燥処理、記録部24yによる記録が繰り返し行なわれる。m色、y色の画像についても、記録媒体Pの変形を考慮して補正量が追加された補正後画像データADm、ADyが画像記録データ出力部276から出力されている場合は、やはり記録媒体Pに記録されたc色画像に対して大きなズレを起こすことのないm色画像が記録され、同様にm色画像に対して大きなズレを起こすことのないy色画像が記録される。
【0101】
従って、図1に示した印刷装置100が図3に示したフローチャートのように動作することにより、記録媒体Pの変形量に基づいて各色画像の表現サイズを変更するので、各色画像は大きなズレを起こすことがなく記録媒体Pに記録されるので、乾燥処理を伴う記録媒体への記録における印刷品質を向上することができる。
【0102】
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態は、記録媒体Pの変形処理を印刷装置100を構成する画像処理装置10で実現する、というものである。
図8は、画像処理装置10の構成を説明するための図である。画像処理装置10は、一般的に使用されているパーソナルコンピュータであり、CPU101、表示部102、入力部103、ネットワークI/F104、メディアドライブ105、記憶部106、メモリ107より構成されており、通信線TLでプリンタ2と電気的に通信可能なように接続されている。
【0103】
CPU11は、画像処理装置10およびプリンタ2を制御し、特にメディアドライブ105に挿入されたメディアディスク108に記録されているプログラムPGをメモリ107において実行することによって、画像処理装置10の機能を実現する。
表示部102は、画像処理装置10における画像処理、プリンタ2の制御に必要な情報を表示するために使用される。
入力部103は、マウスやキーボードで構成されており、画像処理装置10に対してオペレータが指示を入力するために使用する。
ネットワークI/F104は、画像処理装置10と図示しないネットワークとを接続するためのものである。ネットワークI/F104を介して、画像処理装置10はネットワークに接続されている図示しないサーバより、画像処理装置1の機能を実現するプログラムPGをダウンロードすることも可能である。さらに、プリンタ2がネットワークを画像処理装置10と接続されている場合には、このネットワークI/F104を介して、プリンタ2に画像記録出力データSDを出力する。
メディアドライブ105は、メディアディスク108に記録されているプログラムPGを読み取るために使用する。メディアドライブ105で読み取られたプログラムPGにより、画像処理装置10の機能が実現される。
記憶部106は、メディアドライブ105で読み取られたプログラムPGを格納する。
【0104】
メモリ107は、記憶部106によって記憶されたプログラムPGをCPU101が実行するためのワークエリアである。CPU101によってプログラムPGが実行された結果、メモリ107において、画像データ記憶部1071、画像分離部1072、画像分割部1073、分割画像補正部1074、画像統合部1075、画像記録データ出力部1076の機能が実現される。
【0105】
画像データ記憶部1071は、プリンタ2で印刷処理を行なうための画像記録データKDを記憶する。画像記録データKDは、記録媒体Pに形成される画像を格納した電子データであり、プリンタ2で記録される複数の色それぞれについての画像記録データKDを画像データ記憶部1071が記憶する。すなわち、一つの印刷物であるドキュメント乃至ページを4色表現する場合、画像データ記憶部1071は画像記録データKDk、KDc、KDm、KDyという4つのデータを記憶する。
なお、画像データ記憶部1071は、記憶部106に備えるようにしてもよい。
【0106】
画像分離部1072は、画像データ記憶部1071に記憶された複数の画像記録データKDについて、網点化処理を伴う二値化処理を行なった後、プリンタ2で最初に印刷される画像記録データKDと、それ以降に印刷される画像記録データKDとを分離する。
すなわち、プリンタ2における印刷順序が、KCMYであることから、プリンタ2で最初に印刷される画像記録データKDが、黒色画像を表現する画像を格納した画像記録データKDkであるものとして、画像分離部1072が他の画像記録データKDc、KDm、KDyと分離して取り扱う。
分離された各画像記録データKDは、画像分離部1072が一時的に記憶する。あるいは、記憶部106にて、分離された各画像記録データKDを一時的に記憶するようにしてもよい。
【0107】
画像分割部1073は、画像分離部で分離された画像記録データKDのうち、最初に印刷される画像記録データKD以外の画像記録データKDが表現する画像について、所定の分割数によって領域分割を行ない、分割画像データDDを得る。
このとき、画像分割部1073は、プリンタ2の乾燥器25に対して直交する方向について、領域分割を行なう。これは、乾燥器25によって行なわれる乾燥処理により記録媒体Pが変形するためであり、特に記録媒体Pが台形状に変形することを考慮して、記録媒体搬送路22上を移動する記録媒体Pを横断するように備えられた乾燥器25と直交する方向に画像の領域を分割する。
領域分割が行なわれた結果得られる分割画像を分割画像データDDとして、画像データ分割部1073が一時的に記憶する。あるいは、記憶部106によって、分割画像データDDを一時的に記憶するようにしてもよい。
【0108】
画像分割部1073は、画像記録データKDを分割する分割数を算出するため、領域分割数算出部10731を備えている。領域分割数算出部10731は、後述する工程によって、記録媒体Pの変形量、あるいは分割対象となった画像記録データKDによって表現される画像の画素量に基づいて、分割数を算出する。
そのため、領域分割数算出部10731は、以下のような機能を備えている。
【0109】
(1)領域分割数算出部10731は、プリンタ2に備えられたスキャナ26が撮影した記録媒体Pの画像から記録媒体Pのサイズを取得し、プリンタ2の給紙部21に収納されている記録媒体Pの設定サイズと比較することで、記録媒体Pの変形量の測定結果を得ることができる。該測定結果に基づいて、領域分割数算出部10731は、分割数を算出する。
【0110】
(2)画像処理装置1のオペレータがプリンタ2で試し刷りを行なって得られた記録媒体Pの変形量を入力することにより、領域分割数算出部10731は、記録媒体Pの変形量の測定結果を取得し、領域分割数を算出する。
【0111】
(3)領域分割数算出部10731は、分割画像データDDを得るための対象となる画像記録データKDによって表現される画像の画素量に基づいて分割数を算出する。そのために、領域分割算出部10731は画素量−変形量相関テーブルGHTを備える。取得した画素量と、画素量変形量相関テーブルGHTを参照することにより、領域分割数算出部10731は画素量に基づく分割数の算出を行なう。
【0112】
すなわち、記録媒体Pの変形量は、記録媒体Pに対してプリンタ2の記録部24が吐出するインク量の影響を大きく受ける。画像の画素量に基づいて記録部24は画像を形成するので、画素量が多い場合は記録部24によるインク吐出量も大となり、記録媒体Pに浸透する水分量が多くなるため、乾燥器25による乾燥処理を行なったとしても、乾燥処理の時間によってはインク吐出による膨張の影響で、一般的に記録前の記録媒体Pよりもサイズが大きくなる。逆に、画素量が少ない場合は記録部24によるインク吐出量は小となるので、記録媒体Pに浸透する水分量は少なく、乾燥器25による乾燥処理を行なうと溶媒だけでなく記録媒体Pが含有する水分も蒸発するので、記録前の記録媒体Pよりもサイズが小さくなる。
このようにインク量の大小は、記録媒体Pの変形量に影響を与えるので、画像記録データKDによって表現される画像の画素量に基づいて分割数を算出することで、後述する工程により印刷品質を向上させる適切な画像補正を行なうことが可能となる。
【0113】
分割画像補正部1074は、画像分割部1073によって分割された分割画像データDD各々に対して、補正処理を行なう。このとき分割画像補正部1074は、乾燥器25による画像定着処理の平行方向に、かつ記録媒体の移動方向に対して段階的となるような補正量を各分割画像データDDが表現する画像に加えることにより、記録媒体Pが乾燥処理の結果台形状に変形したとしても、次に記録される各分割画像データDDによって表現される画像が最初に画像記録データKDが表現する画像と略一致するように記録される。
分割画像補正部1074による各分割画像データDDによって表現される画像に対する補正量の追加は、該各画像の両端に画素列を追加、あるいは削除することによって行なわれる。また、画素列を該各画像の所定間隔に付与、あるいは削除することで、補正量を追加するようにしてもよい。
【0114】
画像統合部1075は、分割画像補正部1074によって補正処理が行なわれた複数の分割画像データDDが表現する画像を統合し、一つの補正後画像を表現する補正後画像データADを生成する。画像統合部1075によって生成された補正後画像データADが表現する画像は、複数の分割画像データDDが表現する画像に所定の補正量が追加された結果、記録媒体Pの搬送方向に平行して段階的に縮小、あるいは拡大が行なわれた略台形状の画像となる。
【0115】
画像記録データ出力部1076は、プリンタ2で最初に記録される画像記録データKD、および画像統合部1075で生成された補正後画像データADを通信線TLを介してプリンタ2へ出力する。
【0116】
プリンタ2は、送信された画像記録データKDおよび補正後画像データADに対応して記録媒体Pへの印刷を行なう。
その結果、プリンタ2が、記録媒体Pに対して画像記録データKDkによる記録を行なうと、その工程における乾燥処理により記録媒体Pは変形するが、該記録媒体Pの変形を考慮した補正後画像データADc、ADm、ADyが記録媒体Pに記録されるので、記録媒体Pに形成される画像は色ズレを起こさないため、印刷品質が向上する。
【0117】
従って、図8に示した画像処理装置10によっても、記録媒体Pの変形量に基づいて各色画像の表現サイズを変更するので、各色画像は大きなズレを起こすことがなく記録媒体Pに記録されるので、乾燥処理を伴う記録媒体への記録における印刷品質を向上することができる。
〈変形例〉
なお、画像分割設定時、インク量を測定して記録媒体Pの変形量を予測するに際して、複数の記録媒体Pの種類毎に該記録媒体Pの変形量が異なることを考慮して、記録媒体Pの種類を入力し、該記録媒体Pの種類に対応した画素量ー変形量補正テーブルGHTを用意しておくことで、記録媒体Pの変形量を予測するようにしてもよい
【符号の説明】
【0118】
1、10 画像処理装置
2 プリンタ
11、101 CPU
12、102 表示部
13、103 入力部
14、104 ネットワークI/F
15、105 メディアドライブ
16、106 記憶部
17、107 メモリ
18。108 メディアディスク
21 給紙部
22 記録媒体搬送路
23 排紙部
24、24k、24c、24m、24y 記録部
25 乾燥器
100 印刷装置
271、1071 画像データ記憶部
272、1072 画像分離部
273、1073 画像分割部
274、1074 分割画像補正部
275、1075 画像統合部
276、1076 画像記録データ出力部
AD、ADc、ADm、ADy 補正後画像データ
DD、DDc、DDm、DDy 分割画像データ
GHT 画素量−変形量補正テーブル
KD、KDk、KDc、KDm、KDy 画像記録データ
MD 画像分割設定メニュー
P 記録媒体
TL 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像記録手段と、該複数の画像記録手段それぞれによって記録が行なわれた直後の記録媒体が相対的に移動することにより画像定着処理を行なう複数の画像定着手段と、を備えた印刷装置において、
前記複数の画像記録手段において複数の画像を記録するために該複数の画像データを格納した画像データ記憶手段と、前記画像データ記憶手段より画像データを読出し、前記複数の画像記録手段において最初の記録を行なう第1画像データと、それ以外の第2画像データと、に分離する画像分離手段と、
前記画像分離手段で分離された第2画像データが表現する画像について、前記画像定着手段による画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なうことにより複数の分割領域画像に分割する画像分割手段と、
前記画像分割手段により分割された複数の分割領域画像それぞれに対して、前記画像定着手段による画像定着処理の平行方向かつ前記記録媒体の移動方向に対して段階的となるような所定の補正量を加える補正処理を行なう分割領域画像補正手段と、
前記分割領域画像補正手段により補正処理がなされた複数の分割領域画像を統合して前記複数の画像記録手段において2回目以降の記録を行なう第3画像データとする画像統合手段と、
前記画像分離手段により分離された第1画像データと、前記画像統合手段により統合された第3画像データと、をそれぞれ画像記録データとして前記複数の画像記録手段に出力する画像記録データ出力手段と、を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記画像分割手段が、前記第2画像データが表現する画像に対する分割処理を行なうための所定数を算出する領域分割数算出手段を備えること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記領域分割算出手段が、前記複数の画像定着手段による画像定着処理が行なわれた記録媒体の変形量の測定結果に基づいて、分割処理を行なうための所定数を算出すること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2に記載に印刷装置であって、
前記領域分割算出手段が、前記第2画像データにより表現される画像の画素量に基づいて、分割処理を行なうための所定数を算出すること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の印刷装置であって、
前記複数の画像記録手段が前記記録媒体を搬送する搬送路に沿って直列に配置されており、前記複数の画像定着手段が前記複数の画像記録手段それぞれに対して直列に配置されていること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項6】
複数の画像記録手段と、該複数の画像記録手段それぞれによって記録が行なわれた直後の記録媒体が相対的に移動することにより画像定着処理を行なう複数の画像定着手段と、を備えた印刷装置に画像記録データを出力する画像処理装置であって、
前記画像処理装置が、前記複数の画像記録手段において複数の画像を記録するために該複数の画像データを格納した画像データ記憶手段と、
前記画像データ記憶手段より画像データを読出し、前記複数の画像記録手段において最初の記録を行なう第1画像データと、それ以外の第2画像データと、に分離する画像分離手段と、
前記画像分離手段で分離された第2画像データが表現する画像について、前記画像定着手段による画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なうことにより複数の分割領域画像に分割する画像分割手段と、
前記画像分割手段により分割された複数の分割領域画像それぞれに対して、前記画像定着手段による画像定着処理の平行方向かつ前記記録媒体の移動方向に対して段階的となるような所定の補正量を加える補正処理を行なう分割領域画像補正手段と、
前記分割領域画像補正手段により補正処理がなされた複数の分割領域画像を統合して前記複数の画像記録手段において2回目以降の記録を行なう第3画像データとする画像統合手段と、
前記画像分離手段により分離された第1画像データと、前記画像統合手段により統合された第3画像データと、をそれぞれ画像記録データとして前記複数の画像記録手段に出力する画像記録データ出力手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
複数の画像記録手段と、該複数の画像記録手段それぞれによって記録が行なわれた直後の記録媒体が相対的に移動することにより画像定着処理を行なう複数の画像定着手段と、を備えた印刷装置に画像記録データを出力するために、コンピュータのCPUがメモリにおいて実行するプログラムであって、
前記プログラムが、前記複数の画像記録手段において複数の画像を記録するために該複数の画像を格納した画像データ記憶ステップと、
前記画像データ記憶ステップより画像データを読出し、前記複数の画像記録手段において最初の記録を行なう第1画像データと、それ以外の第2画像データと、に分離する画像分離ステップと、
前記画像分離ステップで分離された第2画像が表現する画像について、前記画像定着手段による画像定着処理の直交方向に所定数の分割処理を行なうことにより複数の分割領域画像に分割する画像分割ステップと、
前記画像分割ステップにより分割された複数の分割領域画像それぞれに対して、前記画像定着手段による画像定着処理の平行方向かつ前記記録媒体の移動方向に段階的となるような所定の補正量を加える補正処理を行なう分割領域画像補正ステップと、
前記分割領域画像補正ステップにより補正処理がなされた複数の分割領域画像を統合して前記複数の画像記録手段において2回目以降の記録を行なう第3画像とする画像統合ステップと、
前記画像分離ステップにより分離された第1画像データと、前記画像統合ステップにより統合された第3画像データと、をそれぞれ画像記録データとして前記複数の画像記録手段に出力する画像記録データ出力ステップと、を有することを特徴としているプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−201232(P2011−201232A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72462(P2010−72462)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】