説明

印刷装置及び印刷装置の制御方法

【課題】バイディレクション方式の印刷装置であって、印刷処理に必要な印刷情報の設定処理を効率的に行なって印刷時間の短縮を図ることのできる印刷装置等を提供する。
【解決手段】キャリッジの移動中に駆動波形データに基づいて印刷を実行し、印刷パス毎に駆動波形データの生成処理及び設定処理を行う、印刷パスの移動方向が可変である印刷装置が、次パス用の駆動波形データの生成処理を、予測される次パスの移動方向に基づき、現パスのキャリッジの停止前であって現パスの印刷の完了後に実行する生成手段と、現パスのキャリッジの停止後に、決定された次パスの移動方向と予測された移動方向が一致している場合には、生成手段で生成された駆動波形データの設定処理を実行し、一致していない場合には、決定された移動方向に基づき次パス用の駆動波形データの生成処理と設定処理を実行する設定手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるバイディレクション印刷方式を採用する印刷装置等に関し、特に、印刷処理に必要な印刷情報の設定処理を効率的に行なって印刷時間の短縮を図ることのできる印刷装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、インクジェット方式のプリンタでは、複数のノズルを備えたヘッドがキャリッジに搭載されて、キャリッジと共に用紙の移動方向(副走査方向)に垂直な方向(主走査方向)に移動し、その移動中にノズルから用紙にインクを吐出することによって印刷を行なう。そして、この1移動による印刷パスと用紙の紙送りとが交互に繰り返されてその用紙への印刷処理が実行される。従って、各印刷パスに必要な印刷情報、例えば、印刷を行なう範囲、インク吐出に用いられる駆動波形データなどは、その印刷パスのキャリッジの移動開始前に準備される必要がある。
【0003】
また、上記印刷パスの方向、すなわち、インク吐出を伴うキャリッジの移動方向が上記主走査方向の両方向に行なわれる、いわゆるバイディレクション印刷方式を採用するプリンタもある。かかるプリンタでは、効率的なキャリッジの移動を考慮して、現在の印刷パスのインク吐出終了位置と次の印刷パスのインク吐出開始位置とから、適宜、次の印刷パスでのキャリッジの移動方向が決定される。また、上記駆動波形データは、通常、キャリッジの移動方向によって異なるものが用いられる。
【0004】
従来、かかるバイディレクション印刷方式を採用するプリンタでは、現在の印刷パスのキャリッジ移動が停止した後、次の印刷パスの上記印刷情報を準備し、その後に次のパスのキャリッジ移動を開始するという手順で処理が行なわれていた。なお、かかる印刷情報の準備のうち上記駆動波形データの準備では、具体的には、キャリッジの移動方向毎に定められた基本波形データの読み出し、当該データに対するその時点での温度等に基づく補正、及び補正後の駆動波形データのハードウェアへの設定の処理がなされる。
【0005】
かかる従来の処理では、現在の印刷パスと次の印刷パスの間に上記印刷情報の準備時間が発生し、その時間が、上述した用紙の紙送り時間内に収まる場合には、当該準備処理が律速条件とならないが、用紙の紙送り時間が短くその時間内に収まらない場合があり、この場合には、この印刷情報の準備により次の印刷パス開始が待たされることになる。
【0006】
下記特許文献1では、このような課題を解決するために、印刷終了後キャリッジが減速を開始すると共に次の印刷パスに必要なの印刷情報を生成することが提案されている。
【特許文献1】特開昭62−257873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記バイディレクション印刷方式を採用する従来のプリンタでは、上述の通り、印刷情報の準備処理により次の印刷パスの開始が待たされる場合があり、プリンタのスループット向上の観点から課題があった。
【0008】
また、上記特許文献1に記載の装置は、バイディレクション印刷方式を考慮に入れたものではないので、キャリッジの移動が効率的なものとなっておらず、上記印刷情報の準備処理においても、上記キャリッジの移動方向の決定等に関し実効あるものとなっていなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、いわゆるバイディレクション印刷方式を採用する印刷装置であって、印刷処理に必要な印刷情報の設定処理を効率的に行なって印刷時間の短縮を図ることのできる印刷装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、キャリッジの移動中に駆動波形データに基づいて印刷を実行し、当該キャリッジの1移動による印刷パス毎に、前記駆動波形データの生成処理及び当該生成したデータの上記印刷に用いるため設定処理を行う、前記印刷パスの移動方向が可変である印刷装置が、処理中の前記印刷パスである現パスの次に行われる前記印刷パスである次パス用の前記駆動波形データの生成処理を、予測される前記次パスの前記移動方向に基づいて、前記現パスにおける前記キャリッジの停止前であって前記現パスの前記印刷の完了後に実行する、生成手段と、前記現パスにおけるキャリッジの停止後に、決定された前記次パスの前記移動方向と前記予測された移動方向が一致している場合には、前記生成手段で生成された駆動波形データの前記設定処理を実行し、前記決定された移動方向と前記予測された移動方向が一致していない場合には、前記決定された移動方向に基づいて前記次パス用の駆動波形データの前記生成処理と前記設定処理を実行する、設定手段とを有することである。
【0011】
更に、上記の発明において、好ましい態様は、前記生成手段による生成処理が、前記現パスの印刷に引き続いて行われることを特徴とする。
【0012】
更にまた、上記の発明において、好ましい態様は、前記生成手段による生成処理が、前記次パスの印刷指示タイミングに関わらず実行されることを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、キャリッジの移動中に駆動波形データに基づいて印刷を実行し、当該キャリッジの1移動による印刷パス毎に、前記駆動波形データの生成処理及び当該生成したデータの上記印刷に用いるため設定処理を行う、前記印刷パスの移動方向が可変である印刷装置の制御方法が、処理中の前記印刷パスである現パスの次に行われる前記印刷パスである次パス用の前記駆動波形データの生成処理を、予測される前記次パスの前記移動方向に基づいて、前記現パスにおける前記キャリッジの停止前であって前記現パスの前記印刷の完了後に実行させる、生成工程と、前記現パスにおけるキャリッジの停止後に、決定された前記次パスの前記移動方向と前記予測された移動方向が一致している場合には、前記生成工程で生成された駆動波形データの前記設定処理を実行させ、前記決定された移動方向と前記予測された移動方向が一致していない場合には、前記決定された移動方向に基づいて前記次パス用の駆動波形データの前記生成処理と前記設定処理を実行させる、設定工程とを有することである。
【0014】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0016】
図1は、本発明を適用したプリンタの実施の形態例に係る構成図である。図1に示すプリンタ1が本発明を適用した印刷装置であり、次の印刷パス(以下、次パスと呼ぶ)のために必要なヘッド駆動波形データの生成とそのハードウェア(HPU17)への設定のうち、生成の処理を現在処理中の印刷パス(以下、現パスと呼ぶ)のインク吐出完了に引き続いて実行し、現パスのキャリッジ停止後に上記設定の処理を実行して、次パスのキャリッジ移動開始タイミングを早め、印刷装置のスループットの向上を図ろうとするものである。
【0017】
本プリンタ1は、バイディレクション印刷方式を採用したインクジェットプリンタである。通常は、パーソナルコンピュータなどのホスト2から印刷データを受信し、当該データに含まれる制御情報とインク吐出のためのドットデータに基づいて印刷媒体である用紙3に対して印刷処理を実行する。インク吐出を行なうための印刷機構及び用紙の搬送を行なうための搬送機構は従来装置と同様であり、キャリッジ24の移動による印刷パスと用紙3の紙送りとが交互に繰り返されて当該用紙3への印刷処理が実行される。
【0018】
図1に示すように、プリンタ1には、その制御部として、CPU11、IF12、ASIC13、PROM14、RAM15、EEPROM16、HPU17、HCU18、及びDCユニット19等が備えられる。
【0019】
CPU11は、プリンタ1全体を制御する部分であり、印刷時には、ホスト2からIF12及びASIC13を介して印刷データを受信し、当該データに含まれる制御情報を解釈して、印刷処理に係る各種スケジュールを設定する。具体的には、インク吐出を行なうヘッド25を搭載して主走査方向に移動するキャリッジ24のキャリッジモータ27や用紙3の搬送を行なう紙送りモータ31の駆動スケジュールや、ヘッド25による印刷スケジュール等が設定される。そして、CPU11は、これら設定したスケジュールに従って、各ドライバを介して上記各部の駆動制御を行なう。また、CPU11は、各印刷パスに対してヘッド駆動波形データの生成と設定の処理を行なうが、本プリンタ1では当該処理に特徴があり、その具体的な内容については後述する。なお、CPU11は、PROM14に格納される各種制御プログラムを読み込んで実行することにより、上述した各種処理を実行する。
【0020】
IF12は、ホスト2とのインターフェースであり、前述した印刷データはここを介して受信され、ASIC13は、ホスト2との間で印刷データなど各種データの授受を実行する。PROM14、RAM15、及びEEPROM16は、記憶手段として備えられた各種メモリであり、RAM15には、印刷データのうちの制御情報を格納するコマンドバッファや印刷データのうちのドットデータを格納するイメージバッファなどが設けられる。
【0021】
HPU17は、ヘッドパルスユニットであり、印刷パス毎に、ヘッド25で使用するヘッド駆動波形データを保持し、後述するリニアエンコーダ28からの信号に同期して当該波形データの信号をヘッドドライバ21に出力する部分である。なお、保持するヘッド駆動波形データは波形パラメータとしてCPU11によって設定される。
【0022】
HCU18は、ヘッドコントロールユニットであり、ドット有無を表すドットデータをリニアエンコーダ28からの信号に同期してヘッドドライバ21に出力する部分である。ドットデータは、CPU11によって前記RAM15のイメージバッファから読み出されて、当該HCU18に格納される。なお、HPU17及びHCU18はASIC(Application Specific IC)で構成される。
【0023】
DCユニット19は、CPU11からの指令に基づき、CRモータドライバ22及びPFモータドライバ23を介して、それぞれ、キャリッジモータ27及び紙送りモータ31の駆動制御を行なう部分である。また、DCユニット19は、リニアエンコーダ28からパルス信号SG1、SG2を受信してキャリッジ24の位置、移動速度、移動方向を算出し、エンコーダ32からのパルス信号SG3、SG4を受信して、紙送りモータ31の駆動位置、駆動速度、駆動方向を算出する。
【0024】
プリンタ1の印刷機構は、図1に示すキャリッジ24、それに搭載されるヘッド25、キャリッジを主走査方向に往復移動させるキャリッジモータ27及びタイミングベルト26等で構成される。ヘッド25には、複数のノズルが設けられ、ノズルから所定のタイミングでインクが用紙3に吐出されて印刷が行なわれる。各ノズルには圧電素子が設けられ当該圧電素子に電圧が印加されて上記インク吐出がなされる。当該電圧の印加は、前述したヘッド駆動波形データとドットデータに基づいたヘッドドライバ21からの信号に従って行なわれる。
【0025】
また、プリンタ1には、キャリッジ24の位置、移動速度、移動方向等を検出するためのリニアエンコーダ28が設けられる。当該リニアエンコーダ28は、長手方向に一定ピッチのスリット30aが形成された被検出用テープ30と検出センサ29から構成され、キャリッジ24の移動時には、検出センサ29がスリット30aを検出し、位相が90度ずれた前記2つの信号SG1、SG2を出力する。
【0026】
次に、プリンタ1の用紙搬送機構は、図1に示す紙送りモータ31、それによって駆動される搬送ローラ及び排紙ローラ(共に図示せず)等によって構成される。これら搬送ローラ及び排紙ローラの回転により用紙3が副走査方向(図1の紙面に対して垂直方向)に搬送される。そして、この搬送機構により、印刷処理中の用紙3については、印刷パスと印刷パスの間に紙送り動作が実行される。
【0027】
また、紙送りモータ31にはロータリーエンコーダであるエンコーダ32が設けられ、紙送りモータ31の回転時に位相が90度ずれた前記SG3、SG4を出力する。
【0028】
以上説明をしたような構成を有する本実施の形態例に係るプリンタ1では、前述の通り、CPU11が各印刷パスに対して行なうヘッド駆動波形データの生成と設定の処理に特徴があり、以下、その処理内容について説明する。
【0029】
図2は、ヘッド駆動波形データの生成及び設定処理のタイミングを例示したタイムチャートである。図2において、AはCPU11の指令動作の波形を、Bはキャリッジモータ27の動作波形を、また、Cは紙送りモータ31の動作波形を示している。図2に示すように、CPU11が印刷パスnの印刷要求nを出すと、キャリッジモータ27が駆動しキャリッジ24が設定されている印刷開始位置に来るとヘッド25によるインク吐出nが実行される。
【0030】
そのインク吐出nが完了すると、本来は、CPU11の印刷要求nに係る動作が終了するが、本プリンタ1では、CPU11が、インク吐出nに引き続き、次パス用(印字要求n+1用)のヘッド駆動波形データの生成処理を実行する。図2に示すDがこのヘッド駆動波形データの生成処理を表し、当該処理が終了してCPU11の印刷要求nに係る動作が終了する。なお、キャリッジモータ27の駆動停止は、CPU11とは別の処理で実行される。
【0031】
このヘッド駆動波形データの生成処理Dは、具体的には、(1)データ読み出しと(2)補正計算の処理である。(1)データ読み出しでは、CPU11が、PROM14に予め納められている、ヘッド駆動波形の作成のためのベース情報を読み出す。このベース情報は、キャリッジ24の移動方向毎に定められた基本波形を示す情報であり、CPU11は、事前に決定された次パスの予測方向に基づいて対応するデータを読み出す。
【0032】
(2)補正計算は、その時点での環境に適合したヘッド駆動波形とするための補正処理であり、例えば、温度による補正を行なう。この場合、プリンタ1が備えるサーミスタ(図示せず)の値からその時点の温度を算出し、予め定められた方法により、算出した温度に基づく波形の補正を実行する。そして、補正後のヘッド駆動波形データをRAM15に保持しておく。
【0033】
なお、このヘッド駆動波形データの生成処理を行なうためには、上述の通り、次パスにおけるキャリッジ24の移動方向を予測する必要があり、そのためには、次パスにおける印刷範囲を知る必要がある。従って、このインク吐出nが完了した時点で次パスの印刷データが受信されて確定している必要がある。そこで、本プリンタ1では、インク吐出nが完了した時点で次パスの印刷データが確定していない場合には、このヘッド駆動波形データの生成処理を行なわい。
【0034】
このように、ヘッド駆動波形データの生成処理を終了すると、CPU11は、印刷要求nに係る動作を終了し、図2に示すように、用紙3の紙送りを要求する。これに基づき、紙送りモータ31が駆動する。なお、紙送りモータ31の駆動停止は、CPU11とは別の処理で実行される。
【0035】
その後、CPU11は、次パスの印刷要求n+1を発して、図2に示すように、キャリッジ24の停止を待つ。そして、キャリッジ24の停止後、次パス用(印字要求n+1用)のヘッド駆動波形データの設定処理を実行する。図2に示すEがこのヘッド駆動波形データの設定処理を表し、具体的には、CPU11が、前記生成処理DでRAM15に保持しておいた補正後のヘッド駆動波形データを前述したHPC17に波形パラメータとして設定する(図2の(3)波形パラメータ設定)。
【0036】
なお、前述したとおり、インク吐出nが完了した時点で次パスの印刷データが確定していない場合には、設定すべきヘッド駆動波形データが生成されていないので、この時点で前述した生成処理から処理を実行する。
【0037】
また、この時点では、キャリッジ24の停止位置が確定しているので、次パスn+1におけるキャリッジ24の移動方向が確定する。インク吐出nが完了した時点で前記ヘッド駆動波形データを生成するために予測したキャリッジ24の移動方向が、この確定した移動方向と一致しない場合が稀に発生し、この場合には、生成したデータは使用できないため、この場合にも、この時点で再度生成処理から処理を実行する。
【0038】
このように、生成処理から行なう場合には、図2に示す(1)、(2)、及び(3)の処理がこの時点で行なわれることになる。
【0039】
以上のようにヘッド駆動波形データの設定処理が完了すると、次パスn+1の印刷が開始できるので、キャリッジ24が駆動し、予定された所定位置からインク吐出n+1が実行される。
【0040】
以上説明した手順で処理が繰り返されて印刷処理が実行されていくが、本プリンタ1では、従来、現パスnにおけるキャリッジ24の停止後に行なわれていたヘッド駆動波形データの生成及び設定処理(図2に示す(1)、(2)、及び(3))のうち、生成処理の部分(図2に示す(1)及び(2))を前もって実行しておくので、現パスnでのキャリッジ停止後、次パスn+1のキャリッジ移動開始を早く行なうことが可能となる。
【0041】
図3及び図4は、CPU11が行なう処理の一例を上記ヘッド駆動波形データの生成及び設定に着目して示したフローチャートである。以下、図3及び図4に基づいて、CPU11が行なう一連の処理内容をヘッド駆動波形データの生成及び設定処理を中心に説明する。
【0042】
まず、プリンタ1の電源が投入されると、CPU11は、ヘッド駆動波形データの生成及び設定処理に用いるフラグの値を「要計算」に初期化する(ステップS1)。このフラグの値は、例えばRAM15に保持される。その後、ホスト2から印刷要求を受信するのを待ち(ステップS2のNo)、印刷要求があると(ステップS2のYes)、最初の印刷パスの印刷処理に入る(例えば、図2に示す印刷要求n)。
【0043】
そして、キャリッジ24が停止しているのを確認して(ステップS3のYes)、キャリッジ24の移動方向を決定する。この時点でホスト2から印刷データを受信しているので、処理対象パス(現パス)の印刷位置が確定しており、また、その時点でのキャリッジ24の位置がわかるので、キャリッジ24の効率的な動作を考慮した移動方向が決定される。
【0044】
その後、当該移動方向と予測移動方向が比較されるが、この時点では電源投入後はじめての印刷パスとなりこの予測移動方向がないため、比較結果は一致しないとなる(ステップS4のNo)。その後、処理がステップS5に移行し、フラグの初期値「要計算」がそのまま保持されて、ステップS6でのフラグ値の判定結果から(S6のYes)、処理がステップS7に移行する。
【0045】
ステップS7、S8、及びS9では、現パスに必要な、前述したヘッド駆動波形データの生成及び設定処理を実行する。これらステップS7、S8、及びS9では、それぞれ、図2の(1)データ読み出し、(2)補正計算、及び(3)波形パラメータ設定について前述した内容の処理が実行される。
【0046】
これらの処理により、現パスの印刷準備が完了し、キャリッジ24の駆動が実行される(ステップS10)。その後、予め定められた現パスの印刷開始位置及び印刷終了位置に従って、ヘッド25による現パスのインク吐出(例えば、図2のインク吐出n)が実行される。そして、当該インク吐出が完了すると、すなわち、ヘッド25の駆動が終了すると(ステップ11のYes)、その時点でCPU11は、次パス用のヘッド駆動波形データの生成をすべく、次パスの印刷データが確定しているか判断する(ステップS12)。
【0047】
この時点で、次パス(例えば、図2の印刷要求n+1)の印刷データがホスト2から受信されてその制御情報が確認できる場合には印刷データが確定していると判断し(ステップS12のYes)、処理がステップS13に移行する。この場合には、図2に基づいて説明した事前のヘッド駆動波形データの生成処理を実行する(例えば、図2のD)。一方、印刷データが確定していないと判断した場合には(ステップS12のNo)、処理がステップS2に移行する。この場合には、事前のヘッド駆動波形データの生成処理は実行されず、当該処理がキャリッジ24の停止後に行なわれることになる。
【0048】
処理がステップS13に移行した場合には、まず、次パスにおけるキャリッジ24の移動方向の予測を行なう。この予測では、確定している次パスの印刷データから把握される次パスの印刷範囲と、予測される現パスでのキャリッジ24の停止位置とから、キャリッジ24の動作が効率的になるような方向に移動方向が決定される。
【0049】
次に、CPU11は、ステップS14及びS15の処理、すなわち、事前のヘッド駆動波形データの生成処理を実行する。具体的には、これらステップS14及びS15では、それぞれ、図2の(1)データ読み出し及び(2)補正計算について前述した内容の処理が実行される。そして、フラグの値を「計算済」に設定する(ステップS16)。すなわち、事前にヘッド駆動波形データが生成されている旨が記録される。
【0050】
その後、処理がステップS2に戻り、既に、次パスの印刷要求を受けているので(S2のYes)、現パスのキャリッジ24の停止を待ち(S3のNo)、キャリッジ24が停止すると(S3のYes)、実際のキャリッジ24の停止位置に基づき、前述したキャリッジ24の移動方向の決定を行なう。
【0051】
そして、当該移動方向と前記ステップS13で予測した移動方向を比較し、双方が一致すれば(ステップS4のYes)、フラグ値が判断され、この場合には、フラグ値が「計算済」であり、「要計算」ではないので(ステップS6のNo)、処理がステップS9に移行する。すなわち、事前に生成した前記ヘッド駆動波形データを次パス用に使用できるので、その生成されたヘッド駆動波形データの設定処理のみを行なう(例えば、図2のE)。当該処理内容は、前述の通りである。その後、当該設定されたヘッド駆動波形データに基づいて、次パスの印刷が実行される(例えば、図2のインク吐出n+1)。
【0052】
一方、前記ステップS4で、実際の停止位置から決定した移動方向と前記ステップS13で予測した移動方向とが一致しない場合には(ステップS4のNo)、事前に生成した前記ヘッド駆動波形データを次パス用に使用できないので、フラグ値が「要計算」に設定されて(ステップ5)、フラグ値の判断から(ステップS6のYes)、処理がステップS7及びS8に移行する。すなわち、再度、ヘッド駆動波形データの生成から処理がなされる。その後、再生成されたデータが設定されて(ステップS9)、それに基づく次パスの印刷が実行される。
【0053】
また、前述したステップS12において、次パスの印刷データが確定しておらず、ステップS2に処理が移行した場合には、次パスの印刷要求が受信されるのを待って、受信後に、前述した電源投入直後の処理と同様の処理を行なう。すなわち、事前にヘッド駆動波形データが生成されていないので、現パスにおけるキャリッジ24の移動が停止した後に(S3のYes)当該データの生成(S7及びS8)と設定(S9)を行なう。そして、設定されたデータに基づく次パスの印刷を実行する。
【0054】
以上説明した処理がパス毎に順次繰り返されて用紙3への印刷処理が遂行される。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態例に係るプリンタ1では、印刷パス毎に必要なヘッド駆動波形データの生成及び設定処理のうち、生成処理までを、対象とする印刷パスの前のパスにおけるキャリッジ24の停止前に行なっておき、当該キャリッジ24の停止後に、生成処理で生成されたデータのハードウェアへの設定処理のみを行なう。従って、前の印刷パスにおけるキャリッジ24の停止後に行う処理を従来よりも短時間で行なうことができるようになり、当該処理が律速条件となるような状況においては、プリンタのスループットを向上させることができる。
【0056】
また、上記生成処理の際に対象とする印刷パスの移動方向が予測され、上記キャリッジ24の停止後に、当該停止位置から決定される最終的な移動方向が上記予測した移動方向と異なる場合には、再度、上記生成処理から実行する。これにより、キャリッジ24の移動方向に適合した正しいヘッド駆動波形で印刷が行われ、バイディレクション印刷方式におけるキャリッジ24の効率的な動作が確保される。
【0057】
また、上記キャリッジ24の停止前に行われる生成処理が、上記対象とする印刷パスの印刷指示(例えば、図2の印刷要求n+1)のタイミングに関わらず、上記前のパスにおけるインク吐出の後に引き続いて実行される。これにより、上記キャリッジ24の停止前に当該生成処理を完了させられる可能性が高くなり、上記スループットの向上を確実にすることができる。さらに、このタイミングで生成処理が開始されれば、上記対象とする印刷パスの印刷データが確定している可能性が高いので、この時点で生成処理ができずに上記設定処理時に生成処理を行わなければならないケースを少なく抑えることができる。
【0058】
なお、上記実施の形態例では、ヘッド駆動波形データの生成及び設定処理を、プログラムに従ったCPU11の動作で実行したが、ASICなどハードウェアによって実行する形態としてもよい。
【0059】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を適用したプリンタの実施の形態例に係る構成図である。
【図2】ヘッド駆動波形データの生成及び設定処理のタイミングを例示したタイムチャートである。
【図3】CPU11が行なう処理の一例をヘッド駆動波形データの生成及び設定に着目して示したフローチャートである。
【図4】CPU11が行なう処理の一例をヘッド駆動波形データの生成及び設定に着目して示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 プリンタ、 2 ホスト、 3 用紙、 11 CPU(生成手段、設定手段)、 12 IF、 13 ASIC、 14 PROM、 15 RAM、 16 EEPROM、 17 HPU、 18 HCU、 19 DCユニット、 21 ヘッドドライバ、 22 CRモータドライバ、 23 PFモータドライバ、 24 キャリッジ、 25 ヘッド、 26 タイミングベルト、 27 キャリッジモータ、 28 リニアエンコーダ、 29 検出センサ、 30 被検出用テープ、 30a スリット、 31 紙送りモータ、 32 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジの移動中に駆動波形データに基づいて印刷を実行し、当該キャリッジの1移動による印刷パス毎に、前記駆動波形データの生成処理及び当該生成したデータの上記印刷に用いるため設定処理を行う、前記印刷パスの移動方向が可変である印刷装置であって、
処理中の前記印刷パスである現パスの次に行われる前記印刷パスである次パス用の前記駆動波形データの生成処理を、予測される前記次パスの前記移動方向に基づいて、前記現パスにおける前記キャリッジの停止前であって前記現パスの前記印刷の完了後に実行する、生成手段と、
前記現パスにおけるキャリッジの停止後に、決定された前記次パスの前記移動方向と前記予測された移動方向が一致している場合には、前記生成手段で生成された駆動波形データの前記設定処理を実行し、前記決定された移動方向と前記予測された移動方向が一致していない場合には、前記決定された移動方向に基づいて前記次パス用の駆動波形データの前記生成処理と前記設定処理を実行する、設定手段とを有する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記生成手段による生成処理が、前記現パスの印刷に引き続いて行われる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2において、
前記生成手段による生成処理が、前記次パスの印刷指示タイミングに関わらず実行される
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
キャリッジの移動中に駆動波形データに基づいて印刷を実行し、当該キャリッジの1移動による印刷パス毎に、前記駆動波形データの生成処理及び当該生成したデータの上記印刷に用いるため設定処理を行う、前記印刷パスの移動方向が可変である印刷装置の制御方法であって、
処理中の前記印刷パスである現パスの次に行われる前記印刷パスである次パス用の前記駆動波形データの生成処理を、予測される前記次パスの前記移動方向に基づいて、前記現パスにおける前記キャリッジの停止前であって前記現パスの前記印刷の完了後に実行させる、生成工程と、
前記現パスにおけるキャリッジの停止後に、決定された前記次パスの前記移動方向と前記予測された移動方向が一致している場合には、前記生成工程で生成された駆動波形データの前記設定処理を実行させ、前記決定された移動方向と前記予測された移動方向が一致していない場合には、前記決定された移動方向に基づいて前記次パス用の駆動波形データの前記生成処理と前記設定処理を実行させる、設定工程とを有する
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−39933(P2009−39933A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206787(P2007−206787)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】