説明

印刷装置

【課題】ユーザーが印刷ヘッドおよびキャリッジに触れることができず、高い安全性を確保することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】記録紙Sに対して幅方向に往復移動するキャリッジ42と、キャリッジ42に搭載されて記録紙Sに印刷を行う印刷ヘッド2とを備えたプリンター1であって、プリンター1の前方カバー7の内側に、キャリッジ42の移動領域を覆うキャリッジカバー44が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復移動するキャリッジに搭載された印刷ヘッドを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙に対して印刷を行うプリンターとして、往復移動するキャリッジに搭載された印刷ヘッドを備え、この印刷ヘッドを往復移動させながら印刷を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−302539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造のプリンターは、外郭をなすカバーによって全体が覆われており、通常の使用状態ではキャリッジに対するユーザーの接触が防がれている。また、カバーを開くとカバーセンサーが作動して、キャリッジの動作を停止させるようになっているものが一般的である。
しかしながら、カバーセンサーに不具合があると、カバーを開いたにも関わらず、キャリッジの動作が継続されるおそれがある。キャリッジが動作している状態では、安全性の観点から、ユーザーがキャリッジに触れることができないようになっていることが好ましい。また、キャリッジに搭載された印刷ヘッドは、精密に構成されたものであり、ユーザーが触れることにより故障するおそれがあり、ユーザーが印刷ヘッドおよびキャリッジに触れることができないようになっていることが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、ユーザーが印刷ヘッドおよびキャリッジに触れることができず、高い安全性を確保することができる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の印刷装置は、媒体に対して幅方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載されて前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備えた印刷装置であって、
当該印刷装置のカバーの内側に、前記キャリッジの移動領域を覆うキャリッジカバーが設けられていることを特徴とする。
【0007】
この構成の印刷装置によれば、キャリッジカバーにより、ユーザーが印刷ヘッドおよびキャリッジに触れることができない。また、カバーを開いてもキャリッジの移動領域がキャリッジカバーによって覆われているので、カバーを開いた状態でキャリッジが移動していたとしても、移動するキャリッジに対するユーザーの接触を防止することができ、高い安全性を確保することができる。
【0008】
また、本発明の印刷装置において、インクリボンを有するリボンカセットが所定位置に着脱可能とされ、前記キャリッジカバーには、前記リボンカセットを所定位置へ案内するガイド面が設けられていることが好ましい。
この構成の印刷装置によれば、印刷ヘッドが熱転写方式やドットインパクト方式などインクリボンを使用するものであり、インクリボンを有するリボンカセットを装着する場合、キャリッジカバーのガイド面によってリボンカセットが所定位置へ案内されるので、リボンカセットを容易かつ円滑に所定位置へ装着することができる。
【0009】
また、本発明の印刷装置において、前記キャリッジカバーは、前記キャリッジの移動方向に沿う軸線を中心として回動可能とされ、前記リボンカセットは、前記キャリッジカバーに装着されて前記キャリッジカバーとともに回動可能であることが好ましい。
この構成の印刷装置によれば、キャリッジカバーを回動させることにより、キャリッジカバーとともにリボンカセットを回動させ、インクリボンの配置を変更させることができる。これにより、複数色のインクを含有したインクリボンを有するリボンカセットを装着させてキャリッジカバーとともにリボンカセットを回動させることにより、印刷する色のインクを含有した箇所を印刷ヘッドによる印刷処理位置へ選択的に配置させることができる。また、同色のインクリボンでも印刷する場所を替えて、長期の使用を可能とすることができる。
【0010】
また、本発明の印刷装置において、前記インクリボンは、幅方向の上下方向に異なった複数色のインクを含有させたものであり、前記キャリッジカバーが前記軸線を中心として前記リボンカセットとともに回動することにより、前記印刷ヘッドの位置の前記インクリボンのインクの色が切り換わることが好ましい。
この構成の印刷装置によれば、キャリッジカバーとともにリボンカセットを回動させることにより、インクの色を容易に切り換えることができ、印刷ヘッドによる印刷を、インクリボンの上下の何れかの所望の色のインクで印刷させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る印刷装置であるプリンターの斜視図である。
【図2】図1のプリンターの構造を示す断面図である。
【図3】図1のプリンターのプリンター機構の構造を示す斜視図である。
【図4】図1のプリンターのリボンカセットを装着した状態の部分拡大断面図である。
【図5】図1のプリンターのリボンカセットを取り外した状態の部分拡大断面図である。
【図6】図1のプリンターのキャリッジカバー及びリボンカセットの動きを示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る印刷装置の実施形態の例について、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るプリンターの斜視図、図2はプリンターの構造を示す断面図、図3はプリンター機構を示す斜視図、図4はリボンカセットを装着した状態のプリンター機構の部分拡大断面図、図5はリボンカセットを取り外した状態のプリンター機構の部分拡大断面図、図6はキャリッジカバー及びリボンカセットの動きを示すプリンター機構の部分拡大断面図である。
図1から図3に示すように、本発明に係る印刷装置の一例であるプリンター1は、例えば、記録媒体の一つであるロール状の記録紙Sに対してドットインパクト方式の印刷ヘッド2により印刷を行うものである。
【0013】
プリンター1は、そのプリンター機構3が、樹脂からなるケース本体4によって覆われており、プリンター機構3に設けられたロール紙収容部5に記録紙Sが収容可能とされている。
ケース本体4の上部は、上部カバー6及び前方カバー(カバー)7によって覆われており、上部カバー6は、プリンター機構3を構成するカバーフレーム22に取り付けられ、プリンター1の後方側における水平軸線を中心として回動可能とされている。そして、この上部カバー6を回動させることにより、ロール紙収容部5が開閉される。
上部カバー6及び前方カバー7の間には、排紙口8が設けられており、この排紙口8から、印刷された記録紙Sが排出される。
【0014】
プリンター1の上部における一側部側には、オープンレバー11が設けられており、このオープンレバー11をスライドさせると、上部カバー6が取り付けられたカバーフレーム22をロックしているロック機構(図示省略)によるロックが解除され、上部カバー6を開いてロール紙収容部5を露出させることができるようになっている。また、プリンター1の前方側には、動作状況などを表示するLED等の表示ランプを有するインジケータ部12が設けられている。
【0015】
プリンター機構3は、本体フレーム21を備えており、この本体フレーム21に、カバーフレーム22が回動可能に連結されている。この本体フレーム21の上部には、記録紙Sを切断するオートカッター23が設けられている。
【0016】
カバーフレーム22を開いた内部には、ロール紙収容部5の下方側を形成する樹脂製のロール紙ホルダー24が設けられている。カバーフレーム22の先端には、上部カバーを閉じた状態で印刷ヘッド2と対向する位置にプラテン20が設けられている。
【0017】
また、カバーフレーム22には、プラテン20の上部に紙送りローラー25が設けられており、この紙送りローラー26は、駆動機構(図示省略)によって回転駆動される。この紙送りローラー25は、上部カバー6を閉じた状態で、本体フレーム21に設けられた紙押さえローラー26と対向位置に配置されており、紙送りローラー26が回転すると、記録紙Sは、紙押さえローラー25と紙送りローラー26とによって挟持されて紙送りされ、排紙口8から排出される。
【0018】
オートカッター23は、本体フレーム21側に設けられた固定刃33と、カバーフレーム22の先端側に設けられた可動刃34とを備えており、これらの固定刃33及び可動刃34は、その刃筋方向がプリンター1の幅方向に沿うように配置されている。可動刃34は、駆動機構35によって、固定刃33との間に所定の隙間をあけた待機位置と、固定刃33に重なる切断終了位置との間で移動される。
印刷ヘッド2により印刷が行われる印刷処理位置を通過した記録紙Sは、待機位置から切断終了位置へ可動刃34が移動されることにより、可動刃32と固定刃33とによって切断される。
【0019】
本体フレーム21の前側部分には、前方カバー7の内側に、キャリッジガイド軸41が幅方向に架け渡されており、このキャリッジガイド軸41には、印刷ヘッド2を搭載したキャリッジ42が支持されている。このキャリッジ42は、駆動機構(図示省略)によって、キャリッジガイド軸41に沿って記録紙Sに対して幅方向に往復移動される。
【0020】
プリンター1には、前方カバー7の開閉を検知するカバーセンサー(図示省略)が設けられており、前方カバー7が開かれると、このカバーセンサーからの検知信号に基づいて、キャリッジ42の移動が停止されるようになっている。
また、前方カバー7の内側には、キャリッジカバー44が設けられている。このキャリッジカバー44は、キャリッジ42の移動領域を覆うカバー部45と、リボンカセット51が着脱可能なカセット装着部46とを有している。
【0021】
図4及び図5に示すように、キャリッジカバー44のカバー部45は、キャリッジ42の移動領域の上部に配置された天板部45aと、この天板部45aから印刷ヘッド2とプラテン20との印刷処理位置へ向かって傾斜するリボンガイド板部(ガイド面)45bと、天板部45aからカセット装着部46へ向かって傾斜するカセットガイド板部(ガイド面)45cとを有している。
【0022】
キャリッジカバー44のカセット装着部46は、底板部46aと、この底板部46aから屈曲されて上方へ延びる側壁部46b,46cを有しており、カバー部45側の側壁部46bが、カバー部45のカセットガイド板部45cと一体的に連結されている。そして、このキャリッジカバー44のカセット装着部46は、底板部46aと側壁部46b,46cとから形成された断面視凹状のスペースからなる収容スペース46dを有している。
【0023】
キャリッジカバー44に装着されるリボンカセット51は、内部にロール状のインクリボンが収容されるカセット本体52と、このカセット本体52の両端から一側へ向かってそれぞれ延びるアーム部53とを有しており、アーム部53の先端に、カセット本体52内のインクリボン54が引き出されて架け渡されている。インクリボン54は、プリンター1の上下方向であるインクリボン54の幅方向に異なった色のインクを含有させたものであり、例えば、上方側が黒インクを含有させた黒インク帯54aとされ、下方側が赤インクを含有させた赤インク帯54bとされている。
【0024】
そして、このリボンカセット51は、そのカセット本体52が、キャリッジカバー44のカセット装着部46に形成された収容スペース46dに嵌め込まれて収容される。このように収容スペース46dにカセット本体52を収容させると、それぞれのアーム部53(図3参照)が、キャリッジカバー44の両端側に配置され、これらのアーム部53に架け渡されたインクリボン54は、黒インク帯54aが、印刷ヘッド2とプラテン20との間で、キャリッジ42の移動方向に沿って配置される(図4参照)。
【0025】
このリボンカセット51をキャリッジカバー44に装着させる際に、カセット本体52は、カセット装着部46へ向かって傾斜するカバー部45のカセットガイド板部45cによってカセット装着部46の収容スペース46dへ案内される。また、インクリボン54は、印刷ヘッド2とプラテン20との印刷処理位置へ向かって傾斜するリボンガイド板部45bによって印刷処理位置へ案内される。
【0026】
また、キャリッジカバー44は、プリンター1の前方側で、本体フレーム21に対してキャリッジ42の移動方向に沿う支持軸(軸線)47を中心として回動可能に支持されており、図6に示すように、駆動機構(図示省略)によってキャリッジカバー44が支持軸47を中心として回動される。そして、このキャリッジカバー44がリボンカセット51とともに回動されると、その回動に伴いインクリボン54が上下に移動される。これにより、印刷ヘッド2とプラテン20との間には、インクリボン54の黒インク帯54aまたは赤インク帯54bの何れかが選択的に配置され、印刷ヘッド2によって記録紙Sへ印刷する際のインクの色が切り換えられる。なお、図6では、キャリッジカバー44の回動により赤インク帯54bを印刷ヘッド2とプラテン20との間に配置した状態を示している。
【0027】
本実施形態に係るプリンター1によれば、前方カバー7の内側に、キャリッジ42の移動領域を覆うキャリッジカバー44が設けられているので、前方カバー7を開いてもキャリッジ44の移動領域をキャリッジカバー44によって覆った状態に維持することができる。これにより、例えばカバーセンサーに不具合が生じ、上部カバー7を開いた状態でキャリッジ42が動作を継続していたとしても、移動するキャリッジ42にユーザーが触れることを防止することができ、高い安全性を確保することができる。
【0028】
また、キャリッジカバー44には、リボンカセット51のカセット本体52をカセット装着部46へ案内するカセットガイド板部45c及びリボンカセット51の54を印刷処理位置へ案内するリボンガイド板部45bが設けられているので、リボンカセット51を取り付ける際に、容易かつ円滑に所定位置へ装着することができる。
【0029】
また、キャリッジカバー44は、キャリッジ42の移動方向に沿う支持軸47を中心として回動可能とされ、リボンカセット51は、キャリッジカバー55に装着されてキャリッジカバー44とともに回動可能であるので、キャリッジカバー44を回動させることにより、キャリッジカバー44とともにリボンカセット51を回動させ、インクリボン54の配置を変更させることができる。
【0030】
例えば、黒インク帯54a及び赤インク帯54bを含有したインクリボン54を有するリボンカセット51を装着させてキャリッジカバー44とともにリボンカセット51を回動させることにより、黒インク帯54aまたは赤インク帯54bの何れかを印刷ヘッド2による印刷処理位置へ選択的に配置させ、黒または赤の何れかの所望の色のインクで記録紙Sへ印刷させることができる。
黒インク帯54aまたは赤インク帯54bの他の色も含ませ、リボンカセット51の回動位置をそれらに合わせて規定することにより、複数色の印刷ができる。また、黒インクのみなど単色の場合、インクリボン54と印刷ヘッド2の位置を替えることにより、長期の使用が可能となる。
【0031】
なお、キャリッジカバー44をリボンカセット51に一体的に形成し、このキャリッジカバー44が一体化されたリボンカセット51をプリンター1に着脱可能としても良い。このような構造によれば、リボンカセット51をプリンター1にセットすることにより、リボンカセット51に形成されたキャリッジカバー44によってキャリッジ42の移動領域を覆い、安全性を確保することができる。
上述の例では、印刷ヘッド2がドットインパクト方式のものとして説明したが、印刷ヘッド2を熱転写方式とし、インクリボン54を熱転写用のものとすることにより、同様の構成が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:プリンター(印刷装置)、2:印刷ヘッド、7:前方カバー(カバー)、42:キャリッジ、44:キャリッジカバー、45b:リボンガイド板部(ガイド面)、45c:カセットガイド板部(ガイド面)、47:支持軸(軸線)、51:リボンカセット、54:インクリボン、S:記録紙(媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して幅方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載されて前記媒体に印刷を行う印刷ヘッドとを備えた印刷装置であって、
当該印刷装置のカバーの内側に、前記キャリッジの移動領域を覆うキャリッジカバーが設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
インクリボンを有するリボンカセットが所定位置に着脱可能とされ、前記キャリッジカバーには、前記リボンカセットを所定位置へ案内するガイド面が設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記キャリッジカバーは、前記キャリッジの移動方向に沿う軸線を中心として回動可能とされ、前記リボンカセットは、前記キャリッジカバーに装着されて前記キャリッジカバーとともに回動可能であることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記インクリボンは、幅方向の上下方向に異なった複数色のインクを含有させたものであり、前記キャリッジカバーが前記軸線を中心として前記リボンカセットとともに回動することにより、前記印刷ヘッドの位置の前記インクリボンのインクの色が切り換わることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記印刷ヘッドは、熱転写方式またはドットインパクト方式であることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−51113(P2011−51113A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199476(P2009−199476)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】