説明

危険領域で使用するLED照明装置

【課題】危険領域で使用しても爆発事故の発生を防ぐことができるとともに、メンテナンス性の向上を図ることができる危険領域で使用するLED照明装置を提供すること。
【解決手段】金属ベース10上に配置された複数のLED8と該LED8の発光方向に配置された透明レンズ11を有する光源部3と、該光源部3に隣接して配置された液冷式放熱システム5を含んで危険領域で使用するLED照明装置1を構成し、前記液冷式放熱システ5ムによって前記発光部3の到達最高温度を周囲の引火性気体の引火点未満(例えば、95℃以下)に抑えるよう制御する。又、前記液冷式放熱システム5を水冷ジャケット20、ラジエータ21、循環ポンプ23及びファン22を含んで構成するとともに、前記水冷ジャケット20を挟んでこれの両側に前記光源部3と空冷式放熱システム4を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば化学プラントやガソリンスタンド等の危険領域で使用するLED照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば化学プラント、鉱山内の坑道、危険物取扱所、ガソリンスタンド、石油タンク、マンホール、トンネル、花火工場、弾薬庫等の危険領域で使用する照明装置の光源には、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ等の放電型光源ランプが一般的に用いられており、周囲に充満する引火性気体への引火による爆発等の事故を防ぐための種々の工夫がなされている。例えば、特許文献1には、照明器具本体の両端にソケットホルダーを配置し、該ソケットホルダーの間に、ランプ保護筒に装着された直管形ランプを配置して成る防爆型照明装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4099603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、光源として放電型光源ランプを使用する従来の照明装置では、ランプ自体の破裂に起因する爆発事故の発生を完全に防ぐことは難しく、爆発の危険度を少しでも下げるために防爆構造を採用する等の手法が採られているのが実情である。
【0005】
しかし、防爆構造にするために放電型光源ランプに強度を高めた肉厚のガラス部材を使用したり、部材の繋ぎ目を複雑な構造にして密閉性を高める等の構造を採用せざるを得ないため、ランプの重量やボリュームが増加してしまうという問題がある。
【0006】
又、放電型光源ランプは定期的な交換が必要であり、その構造が前述のように複雑であるために交換等のメンテナンスに多大な手間と時間を要するという問題もある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、危険領域で使用しても爆発事故の発生を防ぐことができるとともに、メンテナンス性の向上を図ることができる危険領域で使用するLED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の危険領域で使用するLED照明装置は、金属ベース上に配置された複数のLEDと該LEDの発光方向に配置された透明レンズを有する光源部と、該光源部に隣接して配置された液冷式放熱システムを有し、該液冷式放熱システムによって前記発光部の到達最高温度を周囲の引火性気体の引火点未満に抑えるよう制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記発光部の到達最高温度を95℃以下に抑えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記液冷式放熱システムを水冷ジャケット、ラジエータ、循環ポンプ及びファンを含んで構成するとともに、前記水冷ジャケットを挟んでこれの両側に前記光源部と空冷式放熱システムを配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記光源部を制御する制御回路部を覆う金属製の回路ケースを前記水冷ジャケットに密着配置し、前記空冷式放熱システムを前記回路ケースに形成された大気放熱部によって構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記空冷式放熱システムを前記水冷ジャケットに形成された大気放熱部によって構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明において、前記大気放熱部を放熱ピン又は放熱フィンによって構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項3〜6の何れかに記載の発明において、前記液冷式放熱システムの冷却機能が損なわれた場合、前記光源部のLEDに供給される電流を該LEDが放出する熱量が前記空冷式放熱システムが吸収可能な熱量以下に抑えられる値まで下げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び2記載の発明によれば、LEDを光源とする光源部に隣接して液冷式放熱システムを配置し、該液冷式放熱システムによって発光部の到達最高温度を周囲の引火性気体の引火点未満(例えば、95℃以下)に抑えるよう制御するため、当該LED照明装置を危険領域で使用しても、周囲の引火性気体への引火による爆発事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0016】
又、当該LED照明装置の光源としてメンテナンスフリーのLEDを使用するため、交換等の手間が不要となってメンテナンス性が高められる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、水冷ジャケットを挟んでこれの両側に光源部と空冷式放熱システムを配置したため、光源部のLEDが発する熱が液冷式放熱システムと空冷式放熱システムの双方によって効率良く吸収されるため、発光部の到達最高温度が周囲の引火性気体の引火点未満に抑えられ、当該LED照明装置を危険領域で使用しても爆発事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0018】
請求項4〜6記載の発明によれば、空冷式放熱システムを回路ケース又は水冷ジャケットに形成された放熱ピンや放熱フィン等の大気放熱部によって構成したため、光源部から水冷ジャケットを経て回路ケースへと伝達される熱は回路ケースに形成された大気放熱部から効率良く大気放熱され、或いは光源部から水冷ジャケットへと伝達される熱は該水冷ジャケットに形成された大気放熱部から効率良く大気放熱されるため、発光部の到達最高温度が周囲の引火性気体の引火点未満に抑えられ、当該LED照明装置を危険領域で使用しても爆発事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、循環ポンプやファン等の稼働部を有する液冷式放熱システムが故障によって冷却機能が損なわれた場合には、光源部のLEDに供給される電流を下げ、LEDが放出する熱量を空冷式放熱システムが吸収可能な熱量以下に抑えるようにしたため、LEDの過熱が防がれ、当該LED照明装置はその光量が低下するものの、光源部の到達最高温度は少なくとも周囲の引火性気体の引火点未満に抑えられため、当該LED照明装置を危険領域で使用しても爆発事故の発生が確実に防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るLED照明装置の斜視図である。
【図2】図1の矢視A方向の図である。
【図3】図1の矢視B方向の図である。
【図4】図3のC−C線断面図である。
【図5】図3のD−D線断面図である。
【図6】図3のE−E線断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るLED照明装置の分解斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るLED照明装置の液冷式放熱システムの基本構成図である。
【図9】LED照明装置の出力200Wでの照度分布を示す図である。
【図10】LED照明装置の出力50Wでの照度分布を示す図である。
【図11】LED照明装置の出力10Wでの照度分布を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るLED照明装置のハウジングを取り外した状態の斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係るLED照明装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係るLED照明装置の斜視図、図2は図1の矢視A方向の図、図3は図1の矢視B方向の図、図4は図3のC−C線断面図、図5は図3のD−D線断面図、図6は図3のE−E線断面図、図7は本発明の実施の形態1に係るLED照明装置の分解斜視図、図8は同LED照明装置の液冷式放熱システムの基本構成図である。
【0023】
本発明の実施の形態1に係るLED照明装置1は化学プラントやガソリンスタンド等の危険領域で使用するものであって、図4〜図7に示すように、矩形ボックス状のハウジング2の内部に光源ユニット3と空冷式放熱システム4及び液冷式放熱システム5を組み込んで構成されている。尚、以下の説明におけるLED照明装置1の上下は図1に示す状態においてのものであって、該LED照明装置1の設置が必ずしも図1に示す状態でなされる訳ではない。
【0024】
上記ハウジング2は、PC等の樹脂或いはアルミニウム等の金属で構成されており、図1に示すように、その周面には縦方向の長い複数のスリットから成る吸気口6が形成され、上面には扇形の複数のスリットから成る排気口7が形成されている。そして、このハウジング2の下面は開口しており、この開口部には前記光源部3が嵌め込まれて固定されている。
【0025】
上記光源部3は、図4〜図7に示すように、光源であるLED8(図8参照)を実装して成る複数(図示例では9枚)のメタル基板9と、これらのメタル基板9を取り付ける矩形プレート状の金属ベース10及びハウジング2の下面開口部に嵌め込まれる矩形プレート状の透明レンズ11を含んで構成されている。ここで、透明レンズ11はガラス又は難燃性樹脂材料によって構成されている。尚、図7において、12はケーブルコネクタである。
【0026】
本実施の形態では、LED8を実装して成る9枚のメタル基板9は縦横3列のマトリックス状に配置されており、これに対応してアルミダイキャスト製の金属ベース10にもLED8と同数の台座10a(図4及び図6参照)が縦横3列のマトリックス状に一体に突設されている。そして、各メタル基板9は、矩形の熱伝導性シート13を介して金属ベース10の各台座10aにネジ止めによって固定されている。尚、各熱伝導シート13は、絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等によって構成されている。
【0027】
又、前記空冷式放熱システム4は、図7に示すように、下面が開口する矩形ボックス状の回路ケース14とこれの上面に形成された大気放熱部である多数の放熱ピン17がヒートシンクとして機能しており、回路ケース14の内部には不図示の各種電子部品が実装された回路基板15が組み込まれ、その下面開口部は矩形プレート状のカバー16によって覆われている。ここで、回路ケース14は熱伝導率の高いアルミダイキャスト等によって成形されており、その上面には大気放熱部を構成する多数の前記放熱ピン17が一体に突設されている。そして、この回路ケース14の内部上面には回路基板15が絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等から成る矩形の熱伝導シート18を介して密着されている。尚、回路ケース14とカバー16との接合部にはOリング19が介装されており、このOリング19のシール作用によって回路ケース14内が密封され、外部から回路ケース14内への水等の浸入が防がれている。又、本実施の形態では、回路ケース14に大気放熱部として放熱ピン17を突設したが、この放熱ピン17に代えて放熱フィンを回路ケース14に形成しても良い。
【0028】
他方、前記液冷式放熱システム5は、図4〜図8に示すように、熱交換器である水冷ジャケット20と、該水冷ジャケット20において受熱して温度が高くなった冷却水を外気(冷却風)との熱交換によって冷却するラジエータ21と、該ラジエータ21に冷却風を供給するファン22と、冷却水を閉ループの循環経路内で循環させる循環ポンプ23及び冷却水を貯留するリザーブタンク24を備えており、ファン22はラジエータ21と対向してこれの上方に配置されている。
【0029】
ところで、上記水冷ジャケット20は、中空の矩形板状に成形されており、図4〜図6に示すように、その内部には冷却水通路が形成されている。そして、この冷却ジャケット10の一端上には、図5及び図7に示すように、ラジエータ21において外気(冷却風)との熱交換によって冷却された冷却水が流入する入口パイプ25と、当該水冷ジャケット20において受熱して温度が高くなった冷却水を排出する出口パイプ26が立設されている。
【0030】
而して、本実施の形態では、図4及び図6に示すように、ハウジング2内下部の底部に水冷ジャケット20が水平に配置されており、この水冷ジャケット20を挟んでこれの上下に空冷式放熱システム4と光源部3が配置されている。ここで、水冷ジャケット20の下面側に配された光源部3は、その金属ベース10が矩形の熱伝導シート27を介して水冷ジャケット20の下面に密着している。尚、本実施の形態では、熱伝導シート27は、絶縁性と熱伝導率の高いシリコン等によって構成されている。
【0031】
又、空冷式放熱システム4は、そのカバー16が水冷ジャケット20の上面に密着する状態で該水冷ジャケット20の上面側に配置されている。尚、本実施の形態では、冷却水として水にプロピレングリコールを混合して成る不凍液が使用されている。
【0032】
他方、図4及び図6に示すように、ハウジング2内の水冷ジャケット20から離間した上部には前記ラジエータ21とファン22が配置されており、水冷ジャケット20とラジエータ21との間には空間部Sが形成され、この空間部Sに空冷ユニット4と前記循環ポンプ23及び前記リザーブタンク24が配置されている。具体的には、水冷ジャケット20上には門型のシャーシ28が立設されており、このシャーシ28によって囲まれる空間に空冷ユニット4が配され、シャーシ28上に循環ポンプ23とリザーブタンク24が設置されている。
【0033】
ここで、図5及び図8に示すように、水冷ジャケット20の出口パイプ26から上方へ立ち上がる配管(ゴムホース)29は、ラジエータ21の入口パイプ30に連結されており、ラジエータ21の出口パイプ31から延びる配管(ゴムホース)32は、下方に延びた後に略直角に曲げられて循環ポンプ23の吸入側に接続されている。そして、循環ポンプ23の吐出側から延びる配管(ゴムホース)33は、図8に示すようにリザーブタンク24の入口側に接続されており、リザーブタンク24の出口側から下方に延びる配管(ゴムホース)34は水冷ジャケット20の入口パイプ25に接続されている。このように水冷ジャケット20、ラジエータ21、循環ポンプ23及びリザーブタンク24は配管(ゴムホース)29,32〜34によって連結されて開ループを成す循環経路が形成されており、この循環経路を冷却水が循環することによって所要の冷却作用がなされる。
【0034】
而して、以上のように構成されたLED照明装置1が起動されて光源部3と回路ケース14内の回路基板15及び液冷式放熱システム5に電源が供給されると、光源部3の複数(本実施の形態では9個)のLED8が発光し、その光は透明レンズ11を透過して図1の下方に向かって照射されることによって前方を照明するが、光源部3の点灯制御は回路ケース14内の回路基板15によってなされ、駆動中において光源部3のLED8及び回路基板15の各種電子部品(不図示)が発熱し、そのままでは光源部3と回路基板15が過熱されて温度が上昇する。
【0035】
然るに、本実施の形態では、液冷式放熱システム5が同時に駆動され、光源部3と空冷式放熱システム4のヒートシンクとしての回路ケース14は、前述のように図8に示す循環経路を循環する冷却水によって強制冷却されてその温度上昇が抑えられる。又、光源部3と回路基板15において発生した熱は回路ケース14へと伝導し、空冷放熱システム4を構成する回路ケース14の表面及び多数の放熱ピン17から放熱し、この放熱はファン22によって吸気口6からハウジング2内に導入されて排気口7へと向かって流れる冷却風によって促進される。
【0036】
液冷式放熱システム5において、循環ポンプ23によって循環経路を循環する冷却水は、水冷ジャケット20において光源部3及び回路基板15において発生する熱を受熱して光源部3及び回路ケース14とその内部の回路基板15を冷却し、受熱して温度の高くなった冷却水は、配管29を通ってラジエータ21へと導入される。
【0037】
他方、ファン22が不図示のモータによって回転駆動されると、外気がハウジング2の周面に形成された吸気口6から冷却風としてハウジング2内に側方から吸引され、この冷却風は水冷ジャケット20とラジエータ21との間に形成された空間部Sを上方に向かって流れ、その過程でラジエータ21を通過し、ハウジング2の上面に開口する排気口7から外部に排出される。そして、ラジエータ21においては、ここを通過する冷却風によって冷却水の熱が外部に放熱されて該冷却水が冷却され、温度の下がった冷却液水は、配管32を通って循環ポンプ23に吸引される。
【0038】
循環ポンプ23に吸引された冷却水は昇圧された後に循環ポンプ23から配管33を通ってリザーブタンク24へと送り出され、その一部はリザーブタンク24に貯留され、残りの冷却水はリザーブタンク24から配管34を通って水冷ジャケット20へと導入されて光源部3と回路ケース14とその内部の回路基板15の冷却に供される。そして、以上の作用(冷却サイクル)が連続的に繰り返されて光源部3と回路ケース14及び回路基板15が水冷ジャケット20を流れる冷却水によって強制冷却され、それらの温度上昇が一定値以下に抑えられる。
【0039】
而して、本実施の形態では、水冷ジャケット20を挟んでこれの上下に制御回路ユニット4と光源部3を配置したため、循環ポンプ23によって冷却水が閉ループの循環経路を循環することによって、水冷ジャケット20の両側に配された光源部3と回路ケース14及び回路基板15が冷却水によって同時に強制冷却されるが、危険領域で使用する本実施の形態に係るLED照明装置1においては、液冷式放熱システム5によって発光部3の到達最高温度が周囲の引火性気体の引火点未満(本実施の形態では、95℃以下)となるように抑える制御がなされる。
【0040】
そして、本実施の形態では、液冷式放熱システム5に加えて空冷式放熱システム4によっても光源部3のLED8が発する熱が効率良く吸収されるため、発光部3の到達最高温度を周囲の引火性気体の引火点未満に抑えることができ、当該LED照明装置1を危険領域で使用しても爆発事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0041】
又、本実施の形態では、回路ケース14の下面を水冷ジャケット20に密着させ、上面に空冷式放熱システム4を構成する多数の放熱ピン17を突設したため、つまり、液冷式放熱システム5に加えて空冷式放熱システム4を設けたため、光源部3のLED8が発する熱が効率良く吸収される。この結果、発光部3の到達最高温度を周囲の引火性気体の引火点未満に抑えることができ、当該LED照明装置1を危険領域で使用しても爆発事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0042】
更に、本発明においては、LED照明装置1の光源としてメンテナンスフリーのLED8を使用するため、交換等の手間が不要となってメンテナンス性が高められるという効果も得られる。
【0043】
ところで、本実施の形態では、光源部3はその全面が熱伝導率の高い熱伝導シート27を介して水冷ジャケット20の下面に密着するため、光源部3の全面が伝熱面となって該光源部3が冷却ジャケット20を流れる冷却水によって効率良く冷却される。因に、熱伝導シート27を用いないで光源部3の全面を水冷ジャケット20に密着させることは困難であり、実際には光源部3は水冷ジャケット20に部分的にしか接触しないため、その冷却効率を高めることは不可能となる。或いは、熱伝導シート27を用いないで光源部3の全面を水冷ジャケット20に密着させるには、光源部3の金属製のベース10と同じく金属製の水冷ジャケット20の接合面を研磨加工等によって平滑に仕上げ加工すれば良いが、このような仕上げ加工には多大な工数と時間及びコストを要するために現実的ではない。
【0044】
又、本実施の形態では、液冷式放熱システム5の水冷ジャケット20とラジエータ21との間に形成された空間部Sに空冷式放熱システム4を配置したため、ファン22によってハウジング2内に導入された冷却風が空間部Sを流れることによって回路ケース14と回路基板15が強制空冷され、冷却水によっても強制冷却される回路ケース14と回路基板15が一層効率良く冷却されてそれらの温度上昇が効果的に抑えられるという効果も得られる。
【0045】
ところで、本発明に係るLED装置1は、液冷式放熱システム5の稼働部であるファン22や循環ポンプ23の故障等によって該液冷式放熱システム5の冷却機能が損なわれた場合、光源部3のLED8に供給される電流を該LED8が放出する熱量が液冷式放熱システム4が吸収可能な熱量以下に抑えられる値まで下げるようにしたことを特徴とする。
【0046】
従って、液冷式放熱システム5が故障によってその冷却機能が損なわれた場合には、光源部3のLED8に供給される電流が下げられ、LED8が放出する熱量が空冷式放熱システム4が吸収可能な熱量、つまり回路ケース14及び放熱ピン17からの大気放熱によって放出される熱量以下に抑えられるためにLED8の過熱が防がれ、当該LED照明装置1はその光量が低下するものの、光源部3の到達最高温度は少なくとも周囲の引火性気体の引火点未満に抑えられ、当該LED照明装置1を危険領域で使用しても爆発事故の発生が確実に防がれるとともに、例えばガソリンスタンドや化学プラント等のような危険な作業を伴う場所での故障による消灯が避けられて高い安全が確保される。
【0047】
本実施の形態に係るLED照明装置1においては、空冷式放熱システム4と液冷式放熱システム5が正常に機能している場合にLED8のジャンクション温度が100℃を超えない範囲での出力は200Wとなる。このときの照度分布を図9に示すが、同図より明らかなように、8m四方を照度5lx以上で照らすことができる。尚、この場合の照度は、LED照明装置を6mの高さに設置した場合の値である(図10及び図11に示す照度分布も同じ)。又、図9において、縦軸は地面上の左右方向の距離、横軸は地面上の前後方向の距離であり、図中の数字は照度(lx)を示す(図10及び図11についても同じ)。
【0048】
そして、液冷放熱システム5に故障が発生してその冷却機能が損なわれた場合、光源部3のLED8への供給電流を前述のように下げれば、出力の低下を正常値200Wの1/4の50Wに抑えることができる。この場合、暗くなるものの、照明としての機能が損なわれることはなく、又、周囲に充満する引火性気体への引火による爆発事故が発生することもない。このときの照度分布を図10に示すが、同図より明らかなように、6m四方を照度5lx以上で照らすことができる。
【0049】
因に、空冷ユニット4を備えず、液冷式放熱システム5のみを備えたLED照明装置では、液冷式放熱システム5が故障した場合には、水冷ジャケット20の表面からの自然放熱のみとなるため、LED8のジャンクション温度が100℃を超えない範囲での出力は正常値200Wの1/20の10Wとなる。このときの照度分布を図11に示すが、同図より明らかなように、照度5lxの照明範囲は3m以内に狭められる。
【0050】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図12及び図13に基づいて説明する。
【0051】
図12は本発明の実施の形態2に係るLED照明装置のハウジングを取り外した状態の斜視図、図13は同LED照明装置の縦断面図である。
【0052】
本実施の形態に係るLED照明装置1’も危険領域で使用するものであって、空冷式放熱システム4のヒートシンクを水冷ユニット5の水冷ジャケット20に形成された多数の放熱ピン17で構成したことを特徴としており、他の構成は前記実施の形態1に係るLEDユニット1のそれと同じである。従って、図12及び図14においては、図1〜図8に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0053】
而して、本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様に、空冷式放熱システム4と液冷式放熱システム5によって発光部3の到達最高温度が周囲の引火性気体の引火点未満(本実施の形態では、95℃以下)となるように抑える制御がなされる。
【0054】
又、液冷式放熱システム5の稼働部であるファン22や循環ポンプ23の故障等によって該液冷式放熱システム5の冷却機能が損なわれた場合、光源部3のLED8に供給される電流を該LED8が放出する熱量が空冷式放熱システム4が吸収可能な熱量以下に抑えられる値まで下げるようにしている。
【0055】
従って、本実施の形態においても、液冷式放熱システム5に加えて空冷式放熱システム4によっても光源部3のLED8が発する熱が効率良く吸収されるため、発光部3の到達最高温度を周囲の引火性気体の引火点未満に抑えることができ、当該LED照明装置1’を危険領域で使用しても爆発事故の発生を確実に防ぐことができる。
【0056】
又、液冷式放熱システム5が故障によってその冷却機能が損なわれた場合には、光源部3のLED8に供給される電流が下げられ、LED8が放出する熱量が空冷式放熱システム4が吸収可能な熱量、つまり水冷ジャケット20及び放熱ピン17からの大気放熱によって放出される熱量以下に抑えられるためにLED8の過熱が防がれ、当該LED照明装置1’はその光量が低下するものの、消灯するまでもなく照明装置として機能するとともに、爆発事故の発生を防ぐことができるという前記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0057】
尚、本実施の形態では、水冷ジャケット20に放熱ピン17を形成したが、この放熱ピン17に代えて放熱フィンを水冷ジャケット20に形成しても良い。又、放熱ピン17や放熱フィンは水冷ジャケット20に一体に形成しても良く、或は別体の放熱ピン17や放熱フィンをロウ付けやカシメ、ネジ締結等によって水冷ジャケット20に固定しても良い。ロウ付け等によって別体の放熱ピン17や放熱フィンを水冷ジャケット20に固定する場合には、ピンやフィンはバネ状の細い金属や蛇腹状の薄い金属であっても良く、大気放熱部の形状としては一般的に使用されるヒートシンクのものをそのまま使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1’ 危険領域で使用するLED照明装置
2 ハウジング
3 光源部
4 空冷式放熱システム
5 液冷式放熱システム
6 吸気口
7 排気口
8 LED
9 メタル基板
10 金属ベース
10a 金属ベースの台座
11 透明レンズ
12 ケーブルコネクタ
13 熱伝導シート
14 回路ケース
15 回路基板
16 カバー
17 放熱ピン(大気放熱部)
18 熱伝導シート
19 Oリング
20 水冷ジャケット
21 ラジエータ
22 ファン
23 循環ポンプ
24 リザーブタンク
25 水冷ジャケットの入口パイプ
26 水冷ジャケットの出口パイプ
27 熱伝導シート
28 シャーシ
29 配管(ゴムホース)
30 ラジエータの入口パイプ
31 ラジエータの出口パイプ
32〜34 配管(ゴムホース)
S 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベース上に配置された複数のLEDと該LEDの発光方向に配置された透明レンズを有する光源部と、該光源部に隣接して配置された液冷式放熱システムを有し、該液冷式放熱システムによって前記発光部の到達最高温度を周囲の引火性気体の引火点未満に抑えるよう制御することを特徴とする危険領域で使用するLED照明装置。
【請求項2】
前記発光部の到達最高温度を95℃以下に抑えることを特徴とする請求項1記載の危険領域で使用するLED照明装置。
【請求項3】
前記液冷式放熱システムを水冷ジャケット、ラジエータ、循環ポンプ及びファンを含んで構成するとともに、前記水冷ジャケットを挟んでこれの両側に前記光源部と空冷式放熱システムを配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の危険領域で使用するLED照明装置。
【請求項4】
前記光源部を制御する制御回路部を覆う金属製の回路ケースを前記水冷ジャケットに密着配置し、前記空冷式放熱システムを前記回路ケースに形成された大気放熱部によって構成したことを特徴とする請求項3記載の危険領域で使用するLED照明装置。
【請求項5】
前記空冷式放熱システムを前記水冷ジャケットに形成された大気放熱部によって構成したことを特徴とする請求項3記載の危険領域で使用するLED照明装置。
【請求項6】
前記大気放熱部を放熱ピン又は放熱フィンによって構成したことを特徴とする請求項4又は5記載の危険領域で使用するLED照明装置。
【請求項7】
前記液冷式放熱システムの冷却機能が損なわれた場合、前記光源部のLEDに供給される電流を該LEDが放出する熱量が前記空冷式放熱システムが吸収可能な熱量以下に抑えられる値まで下げることを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載の危険領域で使用するLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−272438(P2010−272438A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124948(P2009−124948)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】