説明

厨房廃水の処理装置

【課題】槽内における曝気による油分の下降により、油分が分解される前に下水道に放流されてしまうことを抑制できる厨房廃水の処理装置を提供する。
【解決手段】厨房廃水の発生源10から厨房廃水導入流路20を介して厨房廃水が流入する浄化槽30と、浄化槽30内を上流から下流にかけて、厨房廃水が流入する第1の領域36と、厨房廃水に含まれる油分を分離させて分解する第2の領域37と、処理された浄化水が流入する第3の領域38とに分ける2枚の堰板32a、32bと、第2の領域37の表層部に配置され、油分を分解する微生物が担持された微生物担持体35が充填される容器33と、容器33内に配置される曝気装置34と、を備える。容器33の上部は油分が通過可能な孔を有する有孔壁で構成されるとともに、下部は油分、微生物及び微生物担持体が通過しない無孔壁で構成される。そして、容器33は有孔壁が厨房廃水の水面を横切るように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、厨房廃水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レストラン等の飲食店舗から排出される厨房廃水には油分が含まれており、環境悪化を抑えるため、厨房廃水を浄化してから下水道に放流する必要がある。このため、厨房内或いは厨房の外に、厨房廃水を浄化処理する所謂グリストラップが設置されている。
【0003】
一般的なグリストラップでは、油分を含む廃水を油分離槽に導き、廃水から比重の小さい油分を浮き上がらせて分離する。そして、油分離槽の水面に溜まった油分を定期的に回収して廃棄処理している。
【0004】
更に、分離した油分をグリストラップ内で分解する装置についても種々開発されている。例えば、特許文献1では、グリストラップの上部位置に微生物フィルターを配置し、この微生物フィルター内で油分を分解している。微生物フィルターには、微生物を担持させた微生物担持体と曝気のためのエアレーションパイプが設置されており、微生物フィルター内を好気性雰囲気下に維持することで、微生物による油分の分解を促している。この微生物フィルターは上面が開口し、底に孔が形成された筺体であり、上部開口部から廃水を流入させ、底面の孔から処理した水を排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−18460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている厨房廃水の処理装置では、微生物フィルターの上部開口部から廃水を流入させ、底面の孔から処理した水を排出している。この水の流れに伴って、油分も微生物フィルターから排出されるおそれがある。また、微生物フィルター内での油分の滞留時間を確保できず、油分の分解が不十分なまま処理した水が下水道に放流されてしまうおそれがある。
【0007】
また、微生物担持体から微生物が徐々に分離していくが、微生物は水中に沈むものゆえ、微生物フィルター底面の孔から流出してしまう。このため、微生物フィルター中の微生物量が減少し、効率的な油分の分解ができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、厨房廃水から分離した油分の滞留時間を確保でき、且つ、油分を分解する微生物や酵素が流れ出ないようにして、効率的に厨房廃水中の油分を分解することができる厨房廃水の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る厨房廃水の処理装置は、
厨房廃水の発生源から厨房廃水導入流路を介して厨房廃水が流入する浄化槽と、
前記浄化槽内を上流から下流にかけて、前記厨房廃水が流入する第1の領域と、前記厨房廃水に含まれる油分を分離させて分解する第2の領域と、処理された浄化水が流入する第3の領域とに分ける2枚の堰板と、
前記第2の領域の表層部に配置され、油分を分解する微生物及び/又は酵素が担持された油分解物質担持体が充填される容器と、
前記容器内に配置される曝気手段と、を備え、
前記容器の上部は前記油分が通過可能な孔を有する有孔壁で構成されるとともに、下部は前記油分、前記油分解物質担持体、前記油分解物質担持体から分離した前記微生物及び前記酵素が通過しない無孔壁で構成され、
前記容器は前記有孔壁が前記厨房廃水の水面を横切るように配置され、
前記厨房廃水から分離した前記油分が前記有孔壁を通過して前記容器内に流入し、前記微生物及び/又は前記酵素が前記油分を分解する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、前記容器の下部は水平断面積が上方に向けて徐々に大きくなるように形成されていることが望ましい。
【0011】
更に、前記厨房廃水導入流路に油分を分解可能な微生物及び/又は酵素を含有する油分解溶液を供給する油分解溶液供給装置を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る厨房廃水の処理装置は、油分を分解する第2の領域に、上部が有孔壁で構成されるとともに下部が無孔壁で構成された容器が配置され、容器内に油分解物質担持体及び曝気装置が配置されている。厨房廃水から分離した油分は有孔壁を通過して容器内に流入し、容器内にて分解される。容器の下部は無孔壁であるため、油分が分解される前に容器から流出することが抑制され、油分を分解するための十分な滞留時間を確保できる。更に、容器から油分解物質担持体及び油分解物質担持体から分離した微生物・酵素の流出も抑制される。これにより、効率的に厨房廃水を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る厨房廃水の処理装置の概略構成図である。
【図2】容器の斜視図である。
【図3】他の形態に係る容器の側面図である。
【図4】他の形態に係る厨房廃水の処理装置の部分構成図である。
【図5】実施例1で用いた装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、本実施の形態に係る厨房廃水の処理装置の構成、並びに、浄化処理について説明する。本実施の形態に係る厨房廃水の処理装置1は、図1に示すように、主として、厨房廃水の発生源10から浄化槽30と、浄化槽30内に配置された堰板32a〜32cと、容器33と、容器33内に配置された曝気装置34と、容器33内に充填される微生物担持体35とから構成される。
【0015】
厨房廃水の発生源10は、食器洗浄機やシンク等、厨房において油分を含有する廃水を排出する設備である。
【0016】
厨房廃水導入流路20は発生源10から排出された厨房廃水が流れるU字溝等である。
【0017】
浄化槽30は流入した厨房廃水を排水と油分とに分離させるとともに、油分を分解し浄化する槽である。浄化槽30には上流から下流にかけて浄化槽30内を第1の領域36、第2の領域37、第3の領域38に分ける堰板32a、32bが配置されている。第1の領域36は、生ゴミ等が分離された厨房廃水が流入する槽である。また、第2の領域37は、厨房廃水を油分と排水とに分離し分解する槽である。また、第3の領域38は、排水を貯留する槽である。
【0018】
堰板32a、32bは浄化槽30の底面まで達しておらず、厨房廃水は堰板32a、32bの下方を流れて移動するよう構成されている。また、第2の領域37には、浄化槽30の底面から容器33付近にかけて、堰板32cが立設して配置されている。
【0019】
第1の領域36、即ち、厨房廃水が浄化槽30に流入してくる箇所に、厨房廃水とともに流れてくる生ゴミ等の固形物を捕捉するための網籠31が配置されている。
【0020】
第2の領域37の表層部には、容器33が配置されている。容器33は図2の斜視図に示すように、下部の無孔壁33aと上部の有孔壁33bとフック33cから構成されている。
【0021】
無孔壁33aは、孔が設けられておらず流体や固体等の通過ができない構造である。また、無孔壁33aは上方に向けて水平断面が徐々に大きくなるように形成されている。
【0022】
一方、上部の有孔壁33bは、油分が通過可能な孔が複数設けられている。有孔壁33bは、複数の円形や矩形等の孔が形成された板や網等、油分が通過可能であれば特に制限されることはない。
【0023】
フック33cは容器33を浄化槽30に設置する際に用いられるものであり、堰板32a、32bの上端から紐等で吊すようにして容器33が設置される。
【0024】
そして、容器33は図1に示すように有孔壁33bが厨房廃水の水面を横切るように、表層部へ設置される。
【0025】
容器33内の底部には曝気装置34が配置されている。曝気装置34は、容器33内を曝気し好気性雰囲気にする装置である。曝気装置34は、空気(酸素)を供給し得るものであれば、特に制限はない。例えば、内部が空洞であるチューブに孔が設けられ、このチューブにポンプで空気を送り込み、孔から空気を容器33内に供給するものや、液中に配置すると酸素等の気体を放出する素材であってもよい。
【0026】
また、容器33の中には油分解物質担持体として、油分を分解可能な微生物が担持された微生物担持体35が充填される。
【0027】
浄化槽30の第3の領域38には、排水を排出するための浄化水導出流路40が設けられている。
【0028】
続いて、浄化処理について説明する。
【0029】
まず、厨房廃水の発生源10から排出された厨房廃水は、厨房廃水導入流路20を通って浄化槽30に流入する。
【0030】
流入した厨房廃水は、浄化槽30の第1の領域36に配置された網籠31に生ゴミ等の固形物が捕捉された後、堰板32aの下方を通過して第2の領域37に流入する。
【0031】
第2の領域37に流入した厨房廃水は、浄化槽30の底から立設された堰板32cによって流れが上向きに変えられるとともに、比重により油分と排水とに分離される。排水より比重の小さい油分は第2の領域37の表層部へと上昇し、有孔壁33bの孔を通過して容器33内に流入する。
【0032】
容器33の下部は、上方に向けて水平断面が大きくなるように形成されているので、容器33の底面によって分離した油分の上昇が妨げられず、油分はスムーズに上昇する。これによりに、油分が速やかに、且つ、効率的に容器33内に流入することになる。
【0033】
容器33内に流入した油分は、微生物によって分解される。曝気により、微生物担持体35と油分が攪拌混合され、微生物担持体35と油分との接触効率が高く、微生物による油分の分解が効率的に行われる。
【0034】
微生物によって油分が分解されるまでには相応の時間を要するが、容器33の下部は、流入した油分及び微生物担持体35が流出する孔がない無孔壁であるため、容器33内に流入した油分が容器33から流出することがない。したがって、油分は分解されるまで容器33内に滞留する。
【0035】
また、上記と同様の理由から、微生物担持体35及び微生物担持体35から分離した水よりも比重の大きい微生物が容器33の下方へ流出することも抑制される。容器33内に微生物が留まることにより、容器33内の微生物の濃度を高く保つことができ、多数の微生物によって油分の分解が効率的に行われる。
【0036】
更に、容器33の下部は、下方に向けて水平断面が小さくなるように形成されているので、曝気による攪拌で微生物担持体35が容器33の隅に溜まってしまうことが抑えられる。これにより、微生物担持体35は容器33内に分散して行き渡り、油分との接触効率が高められ、微生物による油分の分解効率が促進される。
【0037】
そして、油分が分離し、堰板32bの下方を通過して第3の領域38に流入した排水は、浄化水導出流路40を経由して下水道へ排出される。
【0038】
厨房内に設置できるグリストラップは、屋外に設置されるグリストラップに比べて小型であり、特に浄化槽の深さが浅い。特に、建物の2階以上に厨房がある場合、厨房に設置されるグリストラップは、槽の深さが30cm程度と浅く、更に、滞留させられる排水の嵩高さは20cm程度である。このような小型で槽の浅いグリストラップの場合では、浄化槽の底部から空気を導入して曝気すると、浄化槽内の廃水が攪拌され、分離して浮き上がった油分が下方に流れ、油分が第3領域に侵入してそのまま下水道に流れ出てしまうといった問題がある。
【0039】
しかしながら、本実施の形態に係る処理装置1では、容器33内で曝気していること、更に、容器33の底部は油分が通過しない構造であるため、曝気による攪拌で油分が浄化槽の下方に流れていくことが抑えられる。このように、本実施の形態に係る処理装置1は、厨房内に設置される場合に特に有効である。
【0040】
用いる微生物として、光合成細菌であることが好ましい。光合成細菌は安全性の高い菌であるため、下水に放流されたとしても環境問題を引き起こすおそれはないからである。
【0041】
また、厨房廃水は45℃以上の高温廃水である場合があるので、このような高温域でも生存可能な光合成細菌を用いることが好ましい。45℃以上でも生存でき、油分を分解可能な菌として、Rhodobacter sphaeroides NATが挙げられる。
【0042】
また、微生物担持体35は、光合成細菌をアルギン酸塩で固定化したアルギン酸ビーズであることが好ましい。無機物質に微生物を担持させて用いた場合、無機物質は水に不溶であり、微生物は視認できないため、長時間用いた場合に油分の分解に資する微生物が存在しているか否か分からない。アルギン酸ビーズの場合、アルギン酸は徐々に水に溶解し消失するので、アルギン酸ビーズの消失度合いを視認することで容易に微生物が存在しているか否かを判断できる。アルギン酸ビーズの消失度合いにより、適宜アルギン酸ビーズを容器33内に補充することで、油分の分解が滞りなく行われる。また、アルギン酸ビーズでは、光合成細菌が一つ一つ分散した形態で固定化されるため、油分に接触する光合成細菌の表面積を大きくでき、効率的で迅速に油分の分解をすることができる。
【0043】
また、容器33は、図3の側面図に示す形態であってもよい。容器33の下部の無孔壁33aは、水平方向に張り出すように形成されており、曝気によって容器33の開口部から微生物担持体35が流出することを、より抑えることができる。
【0044】
また、上記では油分解物質担持体として、微生物を担持した微生物担持体35を用いた例について説明したが、油分を分解可能な酵素を担持した酵素担持体を用いてもよい。微生物は産生した酵素を放出し、この酵素によって油分が分解される。このため、酵素を担持させた酵素担持体を用いると、より速やかに油分の分解が可能になる。
【0045】
用いる酵素として、脂質を構成するエステル結合を分解するリパーゼが挙げられる。例えば、上記Rhodobacter sphaeroides NATが産生するトリアシルグリセリドリパーゼを用いるとよい。
【0046】
また、酵素担持体及び微生物担持体35を混合して用いても、いずれか一方だけを用いてもよい。更に、酵素及び微生物を担持させたものを用いてもよい。
【0047】
更に、図4に示すように、厨房廃水導入流路20に油分解溶液供給装置50が備えられていてもよい。
【0048】
厨房における自動食器洗浄機等の厨房廃水の発生源10から浄化槽30までの厨房廃水導入流路20は、鉄製グレーチングを被覆したコンクリート製溝であることが多く、溝内壁に油分が付着し雑菌が繁殖しやすい。油分解溶液供給装置50から厨房廃水導入流路20に液状の分解菌を流すことによって、厨房廃水導入流路20の内壁に付着した油分を分解し、雑菌の繁殖を抑制することができる。
【0049】
これにより、厨房廃水導入流路20の浄化も行え、厨房廃水導入流路20からの悪臭等を抑制でき、また、厨房廃水導入流路20を清掃する回数も低減することができる。
【0050】
ここで、油分解溶液とは、油分を分解可能な微生物及び/又は酵素が介在する液体であり、例えば、微生物を培養した培養液等が用いられる。微生物の一例として、上述した光合成細菌であるRhodobacter sphaeroides NATが挙げられ、このRhodobacter sphaeroides NATを培養した培養液が油分解溶液として用いられる。また、酵素としては脂質を構成するエステル結合を分解するリパーゼが挙げられる。具体的なリパーゼとして、Rhodobacter sphaeroides NATが産生するトリアシルグリセリドリパーゼが挙げられる。
【0051】
油分解溶液は常時供給する形態であっても、排出される厨房廃水の量や頻度に合わせ、間歇的に一定量ずつ供給する形態であってもよい。
【0052】
また、油分解溶液供給装置50は、油分解溶液が充填されたタンクから、その自重により落下させて供給する形態でも、ポンプ等を用いて強制的に供給する形態であってもよい。
【0053】
油分解溶液が充填されたタンク内で、微生物や酵素が沈殿する場合、例えば、微生物を培養した培養液を水で希釈して用いる場合、タンク内に攪拌装置を設けるとよい。微生物や酵素の濃度が一定の油分解溶液を供給することができる。
【0054】
また、油分解溶液供給装置50は、厨房廃水導入流路20の上流側や厨房廃水の発生源10の出口付近に配置されることが好ましい。
【実施例1】
【0055】
上部が有孔壁で下部が無孔壁で構成された容器(以下、容器Aと記す)と、底部に複数の孔を設けた容器(以下、容器Bと記す)をそれぞれ作成した。そして、それぞれの容器を用い、図5に示す装置を構成し、容器内の菌体濃度を経時的に測定した。
【0056】
容器A内にRhodobacter sphaeroides NATを固定化したアルギン酸ビーズを500g充填した。
【0057】
そして、ポンプ52を駆動させ、水タンク51に充填した水道水を、チューブ53を介して浄化槽30に流入させた。水道水は1日5回(1回につき1L)、3日間流した。なお、容器A内に曝気装置34にて、常時、曝気を行った。3日後に容器A内の水を採取し、菌体濃度を測定した。
【0058】
また、容器Bを用いて、上記と同様に実験を行い、菌体濃度を測定した。
【0059】
その結果を表1に示す。
【表1】


【0060】
底部に孔を有する容器Bでは、菌体濃度が1.0mg/Lに対し、底部に孔がない容器Aでは、菌体濃度が6.0mg/Lであった。アルギン酸ビーズから分離した菌が、容器Bでは底部の孔から流出して菌体濃度が低いのに対し、一方の容器Aでは底部から菌が流出することが抑えられ、菌体濃度が高くなっていることがわかる。
【0061】
菌体濃度が高いほど油分の分解能力は高くなるので、底部に孔がない容器を用いることで油分の分解能力を向上させられることを立証した。そして、油分も同様に容器から流出することが抑えられるので、高い菌体濃度の維持、及び、油分の滞留時間の確保によって、効率的な処理ができることがわかる。
【実施例2】
【0062】
(厨房廃水導入流路の浄化実験)
U字溝に厨房廃水と同様の植物性の油分を主成分とするマーガリンを塗布し、厨房廃水導入流路に油分解溶液供給装置を設けた場合の効果を検証した。
【0063】
幅38mm、長さ900mmのU字溝を用意し、このU字溝の両端の高さを異ならせ、一方の端部(上流部)から他方の端部(下流部)に向けて液体が流れるよう、傾斜させて配置した。そして、U字溝の底面にマーガリンを塗布し、マーガリン層を形成した。マーガリン層は上流部から下流部にかけて、均一の幅で形成した。
【0064】
そして、上流部から油分解溶液を1日につき2時間おきに6回(14:00,16:00,18:00,20:00,22:00,24:00)滴下した。1回の油分解溶液の滴下量は100mLとした。
【0065】
油分解溶液として、Rhodobacter sphaeroides NATを培養した培養液を用いた。
【0066】
なお、通常の厨房内の室温に合わせ、試験温度を30℃に維持して行った。
【0067】
そして、1日後、3日後、7日後の13:00に、5mm幅のマーガリン層を採取し、油分量を測定した。マーガリン層の採取は、U字溝の上流部、中流部、下流部の3ヶ所から行い、採取したマーガリンを溶媒に溶解させて測定検液とした。この測定検液をホリバ製油分濃度計OCMA−305(測定方式:H−997抽出赤外線吸収法)にて測定した。
【0068】
また、参考例として、油分解溶液の代わりに水道水を用いた以外は、上記と同様にして実験を行った。
【0069】
その結果を表2に示す。
【表2】


【0070】
表2をみると、油分解溶液を滴下した場合、水道水を滴下した場合に比べ、明らかに油分量が減少していることがわかる。以上の結果から、油分解溶液を厨房廃水導入流路に供給することで、厨房廃水導入流路の雑菌等の分解や繁殖の抑制が可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0071】
1 処理装置
10 発生源
20 厨房廃水導入流路
30 浄化槽
31 網籠
32a 堰板
32b 堰板
32c 堰板
33 容器
33a 無孔壁
33b 有孔壁
33c フック
34 曝気装置
35 微生物担持体
36 第1の領域
37 第2の領域
38 第3の領域
40 浄化水導出流路
50 油分解溶液供給装置
51 水タンク
52 ポンプ
53 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厨房廃水の発生源から厨房廃水導入流路を介して厨房廃水が流入する浄化槽と、
前記浄化槽内を上流から下流にかけて、前記厨房廃水が流入する第1の領域と、前記厨房廃水に含まれる油分を分離させて分解する第2の領域と、処理された浄化水が流入する第3の領域とに分ける2枚の堰板と、
前記第2の領域の表層部に配置され、油分を分解する微生物及び/又は酵素が担持された油分解物質担持体が充填される容器と、
前記容器内に配置される曝気手段と、を備え、
前記容器の上部は前記油分が通過可能な孔を有する有孔壁で構成されるとともに、下部は前記油分、前記油分解物質担持体、前記油分解物質担持体から分離した前記微生物及び前記酵素が通過しない無孔壁で構成され、
前記容器は前記有孔壁が前記厨房廃水の水面を横切るように配置され、
前記厨房廃水から分離した前記油分が前記有孔壁を通過して前記容器内に流入し、前記微生物及び/又は前記酵素が前記油分を分解する、
ことを特徴とする厨房廃水の処理装置。
【請求項2】
前記容器の下部は水平断面積が上方に向けて徐々に大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の厨房廃水の処理装置。
【請求項3】
更に、前記厨房廃水導入流路に油分を分解可能な微生物及び/又は酵素を含有する油分解溶液を供給する油分解溶液供給装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の厨房廃水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−189330(P2011−189330A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76253(P2010−76253)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(309043768)テクノ環境機器株式会社 (6)
【出願人】(592157098)ラボテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】