説明

双方向に送流可能なバルブ機構およびそれを用いた容積変動型ポンプ構造

【課題】 容易に送流方向を逆流させることを可能としたバルブ機構を有する容積変動型ポンプ構造を提供する
【解決手段】 左右に孔部を設け、さらにその中に一体形成された、円盤状のバルブ部を持つように、弾性材で形成されたバルブシートを剛体であるバルブプレートによって保持し、可動バルブ部を構成し、さらにそのバルブ部間の中央に軸部を設けることによって、バルブシートを保持したバルブプレートがその軸部を支点とし、シーソー動作をすることで、送流方向を自在に変換することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムポンプ等における、双方向に送流可能なバルブ機構を有する容積変動型ポンプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容積変動型ポンプとしては、ピストンやダイアフラム等を用いたものが一般的に知られているが、なかでも、微量な液体を送液するマイクロポンプには数多くの機構原理が存在し、例えば弁機構においてはリードバルブ型、バルブレス型などがあり、又、駆動系では小型モータを用いたダイヤフラム型、ピストン型などの機構を有するマイクロポンプが以前から一般的に知られている(特許文献1)。この種のマイクロポンプは、医療機器及び化学分析機器の微量流体供給装置として、薬液の定量注入や反応混合ガス等の流体物を搬送するために用いられ、現在、より高精度な制御ができる小型で汎用性のあるマイクロポンプの開発が進められている。
【0003】
図3は、本出願人が先に出願した従来タイプのダイヤフラム型マイクロポンプの一例である(特許文献2)。図示したマイクロポンプ10は、駆動部側として、例えばコアレスモータなどの小型モータ11を駆動源とし、前記小型モータ11の駆動軸12と、前記駆動軸11に備えられたエキセントリック13と、前記エキセントリック13と摺動するコネクティングスライダ14からなる前記駆動軸12の回転運動を往復ピストン運動に変換するスライダ・カム機構15と、スライダーケース16より構成され、また、ポンプ部側としては、吸入口17と排出口18を備えるバルブヘッド部19と、吸排出用のバルブ20をそれぞれ1箇所ずつ有するバルブケース21部と、ダイアフラム22と、前記ダイアフラム22を前記バルブケース21部に固定するダイアフラムマウント23から概略構成されている。
【0004】
また、上記マイクロポンプ10の作動原理は次のとおりである。前記ポンプヘッド部25には、図3の正面断面図(a)に示すように、合成ゴムなどの弾性シート材からなる円盤状の前記ダイヤフラム22を用い、その円外周部は前記バルブケース部21の最外郭径の円周部で前記ダイアフラムマウント23に保持されることにより、流体を一時的に溜めるポンプ室26が形成される。また、前記ダイヤフラムフット24は、上下方向に往復運動する前記コネクティングスライダ14の先端にネジ締結され、弾性変形して振幅のある動きが可能となる。
【0005】
以上より、前記マイクロポンプ10は、コネクティングスライダ14によってダイヤフラム22の中央平面部分を上下に変位させて前記ポンプ室26の容積を増減させ、その際に発生する圧力変動を利用して、流体を吸入口17から排出口18まで、一連の動作を繰り返して一方向に流体を送流する事を特徴とするポンプである。
【特許文献1】特開昭62−291484
【特許文献2】特開2001−012356
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来タイプのダイヤフラム型マイクロポンプにおけるバルブ機構では、バルブの向きが固定されており、流路は一方向にしか流れず、またそのバルブは内部に組込まれている為、その構造を交換するのも容易ではなく、逆流させることは不可能であった。
【0007】
したがって、本発明は、上記の問題点を解決し、バルブ機構を簡易化し、容易に送流方向を逆流させることを可能としたバルブ機構を有する容積変動型ポンプ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、吸引口と吐出口を有し、ダイアフラムやピストン等の往復運動によってポンプ室内外に圧力差を発生させることにより、ポンプ機能を有する容積変動型ポンプのバルブ機構において、弾性材からなる、左右対称に2ヵ所のバルブ部を設けたバルブシートを、少なくとも1枚の剛体からなるバルブプレートで保持し、その中心部に軸部を設け、その軸部を支点として、シーソー動作を行うことを特徴とするバルブ機構である。
【0009】
バルブ機構がシーソー動作を行うことにより、流体の送液方向を変換することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のバルブ機構において、前記バルブシートを2枚の前記バルブプレートによって挟み込み、保持することを特徴とするバルブ機構である。
【0011】
2枚のバルブプレートによって、バルブシートを挟み込むことにより、弾性体であるバルブシートにおいて、バルブ部のみがより確実に可動できるようになる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1及び2記載のバルブ機構を有することを特徴とした容積変動型ポンプ構造である。
【0013】
請求項1及び2記載のバルブ機構を有する容積変動型ポンプであるため、容易に送流方向の変換が可能なポンプを構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、バルブ機構において、弾性材であるバルブシートを剛体であるバルブプレートによって保持し、可動バルブ部を構成し、さらにそのバルブ部間の中央に軸部を設けることによって、バルブシートを保持したバルブプレートがその軸部を支点とし、シーソー動作をすることで、送流方向を自在に変換することが可能となる。また、このときのポンプの形式は問わない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の形態に係る容積変動型ポンプのバルブ機構について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
ダイアフラム形式の容積変動型ポンプのバルブ機構を図1に示す。この容積変動型ポンプ1は、2つの流体出入口としてのノズル2、ノズル3を形成するバルブヘッド部7、バルブAss’y4を固定するバルブケース部8、ダイアフラム5を固定するダイアフラムマウント9より構成される。また、前記ダイアフラム5と前記バルブケース部8によりポンプ室6が区画される。
【0017】
バルブAss’y4は、図2に示すように、バルブプレート4a、4c、バルブシート4bを組合わせたもので形成される。図示のとおり、前記バルブプレート4a、4cは左右対称に孔が開けられた形状をしており、さらに中央に軸部4d、4eを形成する。また前記軸部4d、4eは前記バルブシート4bを挟み込むことが可能なように軸形状をしている。また前記バルブシート4bは剛体によって形成されるため、前記バルブシート4bを固定することができる。
【0018】
また、前記バルブシート4bは、図示のとおり、左右に孔部を設け、さらにその中に一体形成された、円盤状のバルブ部4f、4gを持つように、弾性材にて形成される。以上より、バルブプレート4a、4cの間にバルブシート4bを挟み込むように固着し、バルブAss’y4を構成する。これにより、組み合わされた軸部4d、4eを支点とし、シーソー動作が可能となる。
【0019】
次に流体の流れについて、説明する。まず、本発明の容積変動型ポンプ構造は、図1に示すように、ダイアフラム5が変位することにより、ダイアフラム5とバルブAss’y4によって隔てられたポンプ室6に圧力差が生じ、ポンプとして機能する。またこの時、バルブAss’y4自体は固定されている。
【0020】
可動するバルブAss’y4を図1(a)の状態とした時、ポンプ室6に減圧が生じると、バルブ部4fはポンプ室6につながっている流路を閉塞させ、バルブ部4gはノズル2へと続く流路を開放し、ノズル2から流体を吸引させる。
【0021】
その後、ポンプ室6に加圧力が生じると、バルブ部4gはノズル2へと続く流路を閉塞させ、バルブ部4fはポンプ室につながっている流路を開放させ、流体をノズル3へと吐出させる。この繰り返しにより流体はノズル2からノズル3へと送流される。
【0022】
また、図1(b)のバルブAss’y4の状態では、ポンプ室6に減圧が生じると、バルブ部4gはポンプ室6につながっている流路を閉塞させ、バルブ部4fはノズル3へと続く流路を開放し、ノズル3から流体を吸引させる。
【0023】
その後、ポンプ室6に加圧力が生じると、バルブ部4fはノズル3へと続く流路を閉塞させ、バルブ部4gはポンプ室につながっている流路を開放させ、流体をノズル2へと吐出させる。この繰り返しにより流体はノズル3からノズル2へと送流される。
【0024】
また、このときのバルブAss’y4の動作原理としては、図4に示すような形態が考えられる。これはバルブプレート4aの中央に設けられた軸部4dに磁気吸引部材4hを形成する。この両側に、電磁石26となるような、鉄心にコイルを巻回したものを含む回路を2つ用意し、どちらか片方の回路に電流を流すことにより、バルブAss’y4が、図1(a)もしくは図1(b)の位置にて固定される。
【0025】
以上のような仕組で、双方向に送流可能なポンプ構造を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、バルブ機構がシーソー動作し、双方向に送液可能となるため、医療機器や化学分析機器等に用いる為の小型微量流体供給装置として、利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)本発明におけるダイアフラム形式の容積変動型ポンプのバルブ機構を示す模式断面図である。 (b)本発明におけるダイアフラム形式の容積変動型ポンプのバルブ機構を示す模式断面図である。
【図2】本発明におけるバルブ機構の実施の一例を示す分解斜視図
【図3】(a)従来の容積変動型ポンプの構造を示す正面断面図 (b)従来の容積変動型ポンプの構造を示す側面断面図
【図4】本発明におけるバルブ機構の動作原理の一例を示す模式図
【符号の説明】
【0028】
1 容積変動型ポンプ
2,3 ノズル
4, バルブAss’y
4a,4c バルブプレート
4b バルブシート
4d,4e 軸部
4f,4g バルブ部
4h 磁気吸引部材
5,22 ダイアフラム
6,26 ポンプ室
7,19 バルブヘッド部
8,21 バルブケース部
9,23 ダイアフラムマウント
10 マイクロポンプ
11 小型モータ
12 駆動軸
13 エキセントリック
14 コネクティングスライダ
15 スライダ・カム機構
16 スライダーケース
17 吸入口
18 吐出口
20 バルブ
24 ダイアフラムフット
25 ポンプヘッド部
27 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引口と吐出口を有し、ダイアフラムやピストン等の往復運動によってポンプ室内外に圧力差を発生させることにより、ポンプ機能を有する容積変動型ポンプのバルブ機構において、
弾性材からなる、左右対称に2ヵ所のバルブ部を設けたバルブシートを、少なくとも1枚の剛体からなるバルブプレートで保持し、その中心部に軸部を設け、その軸部を支点として、シーソー動作を行うことを特徴とするバルブ機構。
【請求項2】
請求項1記載のバルブ機構において、前記バルブシートを2枚の前記バルブプレートによって挟み込み、保持することを特徴とするバルブ機構。
【請求項3】
請求項1及び2記載のバルブ機構を有することを特徴とした容積変動型ポンプ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−97600(P2006−97600A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285716(P2004−285716)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】