説明

収穫玉葱処理装置

【課題】収穫玉葱を下流側に向けて搬送する過程で、収穫玉葱に複数の処理を施す処理装置において、特定の処理を行わないで収穫玉葱を下流側で回収することができる。
【解決手段】収穫玉葱処理装置1は、第1の搬送手段2と、第1の搬送手段2によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送しながら第1の処理を施す第1の処理手段3と、第1の処理手段3によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送する第2の搬送手段4と、第2の搬送手段4によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送しながら第2の処理を施す第2の処理手段5と、第2の処理手段5によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送する第3の搬送手段6とを備え、第1の処理手段3又は第2の処理手段5上に、当該処理手段の上流側の搬送手段によって搬送された収穫玉葱を当該処理手段の下流側の搬送手段に供給するバイパス搬送経路9(9’)を着脱自在に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫された玉葱に各種処理を施す収穫作物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫された玉葱には、茎葉や根の切り落とし処理、選別処理などが施される。従来、このような収穫玉葱に対する処理作業は、搬送手段と処理手段を備えた定置型の処理装置によって行われている。従来の処理装置は、搬入用コンテナ(未処理玉葱が収容されるコンテナ)から供給された収穫玉葱を疎らに搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送された個々の収穫玉葱を茎葉部が下になるように姿勢を整え、茎葉部を切断処理する切断処理手段と、茎葉部が切断された収穫玉葱を更に搬送しながら根切り処理を行う根切り処理手段と、根切り処理が施された収穫玉葱を選別処理するための選別用搬送手段を備えている。そして、選別用搬送手段を通過する過程で選別された収穫玉葱が搬出用コンテナ(処理済み玉葱が収容されるコンテナ)内に集められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−159871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の処理装置によると、搬入用コンテナから供給される未処理の収穫玉葱を搬出用コンテナまで搬送する過程で各種の処理が施されている。したがって、従来の処理手段は、各種の処理を行う過程で処理対象の収穫玉葱を下流側へ向けて搬送することが必要になり、各種の処理手段が搬送手段を兼ねる構造になっている。
【0005】
一方、処理装置のユーザからは、収穫玉葱に施すべき複数種類の処理を全て処理装置によって行わず、特定の処理は最終的に手作業で行うか、或いは未処理のままで出荷したいという要求がある。これに対して、従来の処理装置は、特定の処理を行う処理手段が収穫玉葱を下流側に搬送する搬送手段を兼ねているので、特定の処理を行わないで収穫玉葱を下流側に搬送することができず、前述したユーザの要求に応えることができない問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、収穫玉葱を下流側に向けて搬送する過程で、収穫玉葱に複数の処理を施す処理装置において、特定の処理を行わないで収穫玉葱を下流側で回収することができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明による収穫玉葱処理装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
供給された未処理の収穫玉葱を下流側に向けて搬送する第1の搬送手段と、前記第1の搬送手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送しながら第1の処理を施す第1の処理手段と、前記第1の処理手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送する第2の搬送手段と、前記第2の搬送手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送しながら第2の処理を施す第2の処理手段と、前記第2の処理手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送する第3の搬送手段とを備え、前記第1の処理手段又は前記第2の処理手段上に、当該処理手段の上流側の搬送手段によって搬送された収穫玉葱を当該処理手段の下流側の搬送手段に供給するバイパス搬送経路を着脱自在に設けたことを特徴とする収穫玉葱処理装置。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する収穫玉葱処理装置によると、バイパス搬送経路を取り外した状態では、第1の搬送手段に供給された未処理の収穫玉葱は、第1の搬送手段、第1の処理手段、第2の搬送手段、第2の処理手段、第3の搬送手段を経て搬送され、その搬送の過程で第1の処理手段によって第1の処理が施され、第2の処理手段によって第2の処理が施される。これに対して、第1の処理手段上にバイパス搬送経路を配設した場合には、第1の搬送手段に供給された未処理の収穫玉葱は、第1の搬送手段、バイパス搬送経路、第2の搬送手段、第2の処理手段、第3の搬送手段を経て搬送され、第1の処理手段による第1の処理を施すことなく収穫玉葱を下流側で回収することができる。また、第2の処理手段上にバイパス搬送経路を配設した場合には、第1の搬送手段に供給された未処理の収穫玉葱は、第1の搬送手段、第1の処理手段、第2の搬送手段、バイパス搬送経路、第3の搬送手段を経て搬送され、第2の処理手段による第2の処理を施すことなく収穫玉葱を下流側で回収することができる。
【0009】
これによると、収穫玉葱を下流側に向けて搬送する過程で、収穫玉葱に複数の処理を施す処理装置において、特定の処理を行わないで収穫玉葱を下流側で回収することができ、収穫玉葱の品種や収穫状態などに応じて、処理装置の複数の処理の一つを選択的に行わないことをユーザが選択することができる。これによって収穫玉葱処理装置の汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る収穫玉葱処理装置の全体構成を示した説明図。
【図2】本発明の一実施形態に係る収穫玉葱処理装置における玉葱の流れを示した説明図。
【図3】第2の処理手段に着脱自在に設けられるバイパス搬送経路の具体的な構成例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る収穫玉葱処理装置の全体構成を示した説明図であり、図2は収穫玉葱処理装置における収穫玉葱の流れを示した説明図である。収穫玉葱処理装置1は、第1の搬送手段2、第1の処理手段3、第2の搬送手段4、第2の処理手段5、第3の搬送手段6を備えている。第1の搬送手段2の上流側には、第1の搬送手段2に未処理の収穫玉葱Mを供給するための搬入用コンテナ7が載置可能になっており、第3の搬送手段6の下流側には、処理済みの収穫玉葱Mを収容する搬出用コンテナ8が載置可能になっている。
【0012】
第1の搬送手段2は、図示の例では、搬入用コンテナ7から未処理の収穫玉葱Mを引き出して搬送する引出搬送コンベヤ2Aと第1昇降機2Bと反転コンベヤ2Cを備え、供給された未処理の収穫玉葱Mを下流側の第1の処理手段3に向けて搬送するものである。
【0013】
第1の処理手段3は、図示の例では、茎葉巻き込みローラ3Aと茎葉カッター3Bを備えて、第1の搬送手段2によって搬送された収穫玉葱Mを更に下流側に搬送しながら第1の処理を施すものである。ここでは、第1の処理手段3は収穫玉葱Mの茎葉を切断処理する手段である。
【0014】
第2の搬送手段4は、図示の例では、第2昇降機4Aを備えており、第1の処理手段3によって搬送された収穫玉葱Mを更に下流側に搬送するものである。第2の処理手段5は、図示の例では、根切りカッター5Aを備えており、第2の搬送手段4によって搬送された収穫玉葱Mを更に下流側に搬送しながら第2の処理を施すものである。ここでは、第2の処理手段5は、収穫玉葱Mの根を切断処理する手段である。
【0015】
図示の例では、第1の処理手段3と第2の処理手段5は、互いに逆向きの搬送方向を有して上下に平行配置されている。第1の処理手段3と第2の処理手段5を含む搬送経路をこのように立体化することで、収穫玉葱処理装置1の全長を短くすることが可能になる。この場合、第2の搬送手段4は、上下に配置された第1の処理手段3と第2の処理手段5の搬送経路を連結するために第2昇降機4Aを備えている。
【0016】
第3の搬送手段6は、図示の例では、小玉抜き装置6A、選別用コンベヤ6B、スライドコンベヤ6Cなどを備えており、第2の処理手段5によって搬送された収穫玉葱Mを更に下流側に搬送するものである。また、第1の処理手段3の下方には、処理物を排出する処理物排出コンベヤ10が配備されている。
【0017】
より具体的には、収穫玉葱処理機1の機台1Aには、収穫玉葱Mの搬送方向の上流側に、搬入用コンテナ7が載置される搬入用コンテナ載置部11が備えられている。搬入用コンテナ載置部11は、機台1Aの一端部に軸着され、シリンダーロッド機構11Aの伸縮動により回動して、載置された搬入用コンテナ7内の収穫玉葱Mを、第1の搬送手段2の引出搬送コンベヤ2A上へ送出する。この搬入用コンテナ載置部11の回動操作は、機台1A上の作業者が図示省略の操作部を操作して行う。搬入用コンテナ載置部11の回動角度を徐々に大きくして、搬入用コンテナ7を徐々に傾け、全ての収穫玉葱Mが引出搬送コンベヤ2A上に送出されて搬入用コンテナ7が空になると、搬入用コンテナ載置部11は元の水平な状態に戻される。
【0018】
一方、選別用コンベヤ6Bの送出先に、搬出用のスライドコンベヤ6Cが設けられている。スライドコンベヤ6Cは、選別用コンベヤ6Bが収穫玉葱Mを搬送する方向に対し略直交する方向に配置されるとともに、長手方向の両端各々から収穫玉葱Mを交互に送出すべく正逆回転可能に構成されている。
【0019】
スライドコンベヤ6Cは、ローラーコンベヤやベルトコンベヤ等の周知のコンベヤ機構を、正逆回転可能、かつ搬送方向へスライド可能に構成したものであり、正逆回転制御されることで、収穫玉葱Mを選択された一方の端部から送出するとともに、スライドすることによって、収穫玉葱Mを搬出用コンテナ8内へ偏りなく蓄積する。スライドコンベヤ6Cの両送出先の各々には、図示省略した搬出用コンテナ載置部が具備され、搬出用コンテナ載置部には搬出用コンテナ8が載置される。
【0020】
そして、本発明の実施形態に係る収穫玉葱処理装置1は、第1の処理手段3又は第2の処理手段5上に、これらの処理手段の上流側の搬送手段によって搬送された収穫玉葱Mをこれらの処理手段の下流側の搬送手段に供給するバイパス搬送経路9(9’)を着脱自在に設けている。以下の説明では、第2の処理手段5の上にバイパス搬送経路9を着脱自在に設ける例を説明するが、第1の処理手段3上にバイパス搬送経路9’を着脱自在に設けてもよい。
【0021】
このような収穫玉葱処理装置1によると、バイパス搬送経路9を取り外した場合には、搬入用コンテナ7から第1の搬送手段2に供給された収穫玉葱Mは、第1の搬送手段2によって搬送されて第1の処理手段3に送られ、ここで第1の処理が施される。その後、第2の搬送手段4によって搬送されて第2の処理手段5に送られ、ここで第2の処理が施され、その後第3の搬送手段6で更に下流側に搬送される。すなわち、収穫玉葱Mは、搬入用コンテナ7から搬出用コンテナ8に向かって搬送される過程で、第1の処理と第2の処理の両方が施されることになる。
【0022】
一方、第2の処理手段5上にバイパス搬送経路9を取り付けた場合には、搬入用コンテナ7から第1の搬送手段2に供給された収穫玉葱Mは、第1の搬送手段2によって搬送されて第1の処理手段3に送られ、ここで第1の処理が施される。その後、第2の搬送手段4によって搬送されて第2の処理手段5上に取り付けられたバイパス搬送経路9に送られ、第2の処理が施されることなく、その後第3の搬送手段6で更に下流側に搬送される。すなわち、収穫玉葱Mは、搬入用コンテナ7から搬出用コンテナ8に向かって搬送される過程で、第2の処理を回避することが可能になる。これにより、収穫玉葱処理装置1のユーザは、品種や収穫状態などといった収穫玉葱Mの状態により、第2の処理手段5(根切りカッター5A)を使用する場合と使用しない場合を切り替えることができ、収穫玉葱処理装置1の汎用性を向上させることが可能になる。
【0023】
図3は、第2の処理手段に着脱自在に設けられるバイパス搬送経路9の具体的な構成例を示した説明図である。同図(a)が側面図であり、同図(b)がバイパス搬送経路9を取り付けた状態の斜視図、同図(c)がバイパス搬送経路9を取り外した状態の斜視図を夫々示している。
【0024】
図示の例では、バイパス搬送経路9は、上流側が高く下流側が低い傾斜搬送面9Aを備えている。傾斜搬送面9Aは板状部材で第2の処理手段5(根切りカッター5A)上を覆うことで形成することができる。傾斜搬送面9A上に搬送された収穫玉葱Mは、その傾斜によって上流側から下流側に向けて搬送される。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1:収穫玉葱処理装置,1A:機台,
2:第1の搬送手段,
2A:引出搬送コンベヤ,2B:第1昇降機,2C:反転コンベヤ,
3:第1の処理手段,3A:茎葉巻き込みローラ,3B:茎葉カッター,
4:第2の搬送手段,4A:第2昇降機,
5:第2の処理手段,5A:根切りカッター,
6:第3の搬送手段,
6A:小玉抜き装置,6B:選別用コンベヤ,6C:スライドコンベヤ,
7:搬入用コンテナ,8:搬出用コンテナ,
9(9’):バイパス搬送経路,9A:傾斜搬送面,
10:処理物排出コンベヤ,
11:搬入用コンテナ載置部,11A:シリンダーロッド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された未処理の収穫玉葱を下流側に向けて搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送しながら第1の処理を施す第1の処理手段と、
前記第1の処理手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送する第2の搬送手段と、
前記第2の搬送手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送しながら第2の処理を施す第2の処理手段と、
前記第2の処理手段によって搬送された収穫玉葱を更に下流側に搬送する第3の搬送手段とを備え、
前記第1の処理手段又は前記第2の処理手段上に、当該処理手段の上流側の搬送手段によって搬送された収穫玉葱を当該処理手段の下流側の搬送手段に供給するバイパス搬送経路を着脱自在に設けたことを特徴とする収穫玉葱処理装置。
【請求項2】
前記第1の処理手段が収穫玉葱の茎葉を切断処理する手段であり、前記第2の処理手段が収穫玉葱の根を切断処理する手段であることを特徴とする請求項1記載の収穫玉葱処理装置。
【請求項3】
前記第3の搬送手段は、収穫玉葱に選別処理を施すための選別用コンベヤを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の収穫玉葱処理装置。
【請求項4】
前記第1の処理手段と前記第2の処理手段は互いに逆向きの搬送方向を有して上下に平行配置され、前記第2の搬送手段は昇降機を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の収穫玉葱処理装置。
【請求項5】
前記第1の搬送手段に未処理の収穫玉葱を供給するための搬入用コンテナと、前記第3の搬送手段の下流側で処理済みの収穫玉葱を収容する搬出用コンテナが載置可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の収穫玉葱処理装置。
【請求項6】
前記バイパス搬送経路は、上流側が高く下流側が低い傾斜搬送面を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の収穫玉葱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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