説明

収納庫

【課題】必要にして十分な被収納物を昇降させることにより、簡潔かつ容易に日常生活における使用者の負担を低減可能な収納庫を提供する。
【解決手段】代表的な構成は、被収納物を収納する引出134をスライド自在に収容可能な収納庫であって、引出134内に配置され、被収納物を載置可能な載置部材150と、収納庫に収納された引出134が収納庫から引き出されることによって載置部材150を上昇させ、また、引出134が収納庫へ押し込まれることによって載置部材150を下降させる昇降機構170と、載置部材150が上昇して生じる載置部材150の下方の空間161から、引出の内部であって載置部材150の外に収納された被収納物を遮蔽する遮蔽部材160aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチンに備えられた、被収納物を収納する引出を有する収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キッチンには、調理器具や調味料、食器などを収納しておくために、多くの収納スペースが設けられている。このため天板(システムキッチンにおいてはワークトップ)の下には、引出や開き戸が設けられるのが通常である。近年はキッチンの使用態様の研究がすすみ、引出などに収納される被収納物をある程度想定し、引出の大きさや仕切りの形状を工夫することにより、使い勝手の向上を図ることが行われている。そのような例として、コンロを有するコンロキャビネットには鍋などを入れる大きな引出や開き戸を設けたり、調理スペースを有するベースキャビネットには食器や調理器具を入れる浅い引出を多く設けたりしている。
【0003】
ところで、天板の下に収納スペースを設けることから、必然的に引出などは低い位置に配置される。故に、利用者は腰をかがめるか、しゃがみ込むことによって被収納物を出し入れすることになる。このことは、長時間キッチンで立ち仕事をする場合や、高齢により体に自由がきかなくなってきた場合など、使用者によっては負担に感じる場合も想定される。
【0004】
そこで従来より、低い位置の引出に対して、被収納物の出し入れを容易とするための工夫が検討されている。特許文献1には、引出の昇降機構を備えたキャビネットの構成が開示されている。なお特許文献1では、引出を完全に引き出した状態でのみ昇降させることにより、引出とキャビネット本体とが衝突するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−215678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成において、引出を上昇させるには引出の全体を回転させながら持ち上げなければならない。引出は、木製や金属製の前板や、底板、側板などから構成されているので、何も収容していなくてもかなりの重量を有している。まして、引出の中に様々な被収納物を収納するとすれば、これを回転させるために必要な労力は、逐一屈むよりも多大なものとなってしまいかねない。ここで、エアシリンダーや電動モータなどによって持ち上げる力を補助することも考えられるが、機構が複雑となり、キッチンの生産コストの高騰を招いたり、機構が収容スペースを圧迫して本末転倒となるおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に開示された構成においては、キャビネットとの衝突をおそれるあまり、引出を完全に引き出してからでないと上昇させることができない。すると、キッチンで作業している使用者は1歩下がって引出を大きく引き出さなければならないことになり、たび重なれば煩わしく感じられるおそれがある。
【0008】
さらには、引き出す操作と上昇させる操作が別のアクションとなっていると、必然的に収容する場合にも2つのアクションが必要になる。そのため、使用者はその操作自体が面倒になり、せっかくの機能が利用されなくなってしまうおそれもある。
【0009】
一方、引出に収納された被収納物のうち、調理作業中に頻繁に使用する物(以下、繁用物と称する)は限られてくる。すなわち、必ずしも引出のすべてを高い位置に持ち上げる必要はない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、引出全体を上昇させることなく、必要にして十分な繁用物だけを昇降させることにより、簡潔かつ容易に日常生活における使用者の負担を低減可能であり、昇降動作に支障を生じることもない収納庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、引出内に繁用物を載置する載置部材を設け、この載置部材だけを昇降させれば、簡潔かつ容易に使い勝手の向上を図れるのではないかと思量した。しかし、引出内で載置部材を昇降させるとなると、引出内の被収納物のうち、載置部材の外に存在する(引出自体に収容されている)、昇降しない被収納物が、この昇降運動に巻き込まれてしまうおそれがある。そのような事態が生じれば、被収納物の破損ばかりか、引出自体が開かなくなってしまったり、壊れてしまったりする可能性もある。そこで、被収納物を巻き込むおそれのない昇降機構をさらに検討し、本発明を完成するに至った。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる収納庫の代表的な構成は、被収納物を収納する引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、引出内に配置され、被収納物を載置可能な載置部材と、収納庫に収納された引出が収納庫から引き出されることによって載置部材を上昇させ、また、引出が収納庫へ押し込まれることによって載置部材を下降させる昇降機構と、載置部材が上昇して生じる載置部材の下方の空間から、引出の内部であって載置部材の外に収納された被収納物を遮蔽する遮蔽部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、載置部材の外に存在する、引出内の昇降しない被収納物を、載置部材が上昇して生じる載置部材の下方の空間に巻き込むことなく、必要にして十分な繁用物を載置した載置部材を昇降させることができる。故に、引出全体を昇降させることなく、簡潔かつ容易に日常生活における使用者の負担を低減できるし、昇降動作に支障を生じることもない。
【0014】
上記の遮蔽部材は、所定の部分毎に着脱可能に固定されるとよい。これにより、被収納物や載置部材に応じて遮蔽部材を配置することができ、効率的なスペース活用が行なえる。
【0015】
上記の遮蔽部材は、載置部材の背後に固定された仕切板または柵状物であってよい。これにより、載置部材の外に存在する、引出内の昇降しない被収納物を、載置部材の下方の空間から好適に遮蔽できる。
【0016】
上記の遮蔽部材は、載置部材の側面側に固定された仕切板または柵状物であってもよい。これにより、載置部材の下方の空間への巻き込みを防止するだけでなく、側面側に固定された仕切板等と昇降機構の枠体との間にも収納スペースを設けることができ、効率的なスペース活用が行なえる。
【0017】
上記の載置部材は、天面が開放された箱状のポケットであり、着脱可能に配置されるとよい。これにより、繁用物を箱状のポケットに立てた状態で収納でき視認性の向上を図ることができる。さらに、被収納物に応じて、載置部材の個数や形状(深さ)を使い分けることができるので、効率的なスペース活用、使い勝手の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、引出全体を上昇させることなく、必要にして十分な繁用物を昇降させることにより、簡潔かつ容易に日常生活における使用者の負担を低減可能であり、昇降動作に支障を生じることもない収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。
【図2】ベースキャビネットの分解斜視図である。
【図3】載置部材と支持部材とを引出に取り付けた状態を示す図である。
【図4】図3においてさらに遮蔽部材を取り付けた状態を示す図である。
【図5】載置部材を説明する図である。
【図6】遮蔽部材の配置例を示した図である。
【図7】アーム、プーリおよびレールを説明する図である。
【図8】引出を引き出す際の載置部材の昇降機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。キッチン100は一枚の天板110(ワークトップ)の下に複数の収納庫(キャビネット)を備えた、いわゆるシステムキッチンである。天板110は合成樹脂(人工大理石)やステンレスなどからなり、キッチン100の全体の上面を覆っている。
【0022】
天板110には、組込式に取り付けられたコンロ112、調理スペース114、天板110に一体形成されたシンク116が設けられる。シンク116とコンロ112の間に位置する調理スペース114は平坦なテーブル面であり、主に調理を行うのに利用される。
【0023】
天板110の下は、コンロ112本体が設置されているコンロキャビネット120と、調理スペース114に対応したベースキャビネット130と、シンク116が設置されているシンクキャビネット140といった各収納庫で構成される。各収納庫は収納スペースとして機能し、収納庫内の空きスペースには、コンロ112への配線や、シンク116および水栓への給排水管なども収容されている。このように、天板110の下では、天板110の上のシンク116やコンロ112といった各構成に対応した収納庫がその高さおよび奥行きを等しくして複数設けられている。
【0024】
各収納庫は、被収納物を収納するために、様々な大きさの引出をスライド自在に設けている。例えばコンロキャビネット120は、上部にコンロ112のグリル112aおよび操作パネル112bを備え、その脇には調味料などの小物を収納するための小さな引出であるスパイスボックス122が配設されている。コンロキャビネット120の中央部、すなわちグリル112aの下には幅の広い大きな引出124が配設され、鍋やボウルなどの比較的大きな調理器具を収納することが可能になっている。また、コンロキャビネット120の下部の床近傍には、引出式の足元収納であるフロアコンテナ126が配設されている。
【0025】
同様に、ベースキャビネット130には複数の比較的小さな引出132、134およびフロアコンテナ136が備え付けられている。シンクキャビネット140にはフロアコンテナ146から天板110に到る高い前板を備えた引出144が備え付けられている。
【0026】
次に、本実施形態の特徴である収納庫について説明する。上記したコンロキャビネット120、ベースキャビネット130、シンクキャビネット140のうち、ベースキャビネット130を例にとって説明する。
【0027】
図2は、ベースキャビネット130の分解斜視図、図3は、載置部材150と支持部材180とを引出134に取り付けた状態を示す図、図4は、図3においてさらに遮蔽部材160aを取り付けた状態を示す図である。上述したように、ベースキャビネット130には上段の引出132、中段の引出134、下段のフロアコンテナ136がスライド自在に収容される。
【0028】
そして、中段の引出134は、前板134a、側板134b、背面板134c、底板134d、および前板134aの後面に固定設置される柱部材134eより構成され、載置部材150、遮蔽部材160a、支持部材180を備えている。載置部材150は、支持部材180とレール190とから構成される昇降機構170(後程説明する)によって上下移動可能となっている。なお、引出132、134、136そのものを出し入れするためのレール機構は一般的なものでよいため、図示を省略している。
【0029】
図5は、載置部材150を説明する図である。載置部材150は、天面が開放された箱状であって、いわゆるポケット形状を成している。故に、この載置部材150の内部に、例えば、杓子類、ラップ、菜箸、調味料といった繁用物を立てた状態で収納できる。繁用物を立てた状態で収納することで、視認性の向上、延いては使い勝手の向上を図ることができる。
【0030】
載置部材150の上縁の一辺には、鈎状のL字部152が形成されている。図4に示すように、L字部152を上梁182aに吊下することによって、載置部材150が支持部材180に対して着脱可能に構成されている。これにより、載置部材150が交換可能となるため、形状や容積、取り付ける個数などを選択することができる。また、載置部材150を取り外せることから、清掃も容易となる。
【0031】
また、載置部材150は、前板134aに隣接して設けられる。これにより、昇降機構170にて、引出134を若干引き出すだけで載置部材150を昇降させることができ、繁用物を出し入れできる。
【0032】
遮蔽部材160aは、本実施形態では仕切り板であるが、被収納物を通さない程度に目の細かい柵状物としてもよく、引出134に所定の部分毎に着脱可能に固定される。遮蔽部材160aの具体的な固定方法のとしては、例えば、前板134a、側板134b、底板134dなどの対応する配置箇所にスリットを設け、嵌合させて固定してもよい。また、遮蔽部材160aとその配置箇所に雄部と雌部を形成し、嵌合させて固定してもよい。
【0033】
遮蔽部材160aを設けることで、載置部材150の外に存在する、引出134内の昇降しない被収納物が、載置部材150が上昇して生じる載置部材150の下方の空間161(図4)に巻き込まれることを防止できる。故に、昇降運動により、被収納物が破損してしまったり、収納庫が開かなくなったり、壊れてしまうおそれを排除できる。
【0034】
図6は、複数の遮蔽部材の配置例を示した図である。載置部材150の背後に配置されるのは既に説明した遮蔽部材160aである。以下、載置部材150の側面側に配置される遮蔽部材160bと、梁182の前に配置される遮蔽部材160cとについて説明する。
【0035】
図6(a)では、載置部材150の背後に、底板134dを横断する略平板状の遮蔽部材160aが配置されている。そのため、遮蔽部材160aの背後に形成される収納スペース162(図6においてハッチで示す)に好適に被収納物を収納することができる。
【0036】
図6(b)では、図6(a)の構成に加えて、2つの遮蔽部材160bが梁182に干渉しないように配置されている。これにより、前板134aと、遮蔽部材160bと、梁182とで囲われた前部収納スペース164(図6においてクロスハッチで示す)に被収納物を収納することができる。ボトル等の重量があるものは、載置部材150にて昇降するのに適しているとはいい難く、この前部収納スペース164に収納されると好ましい。なお、包丁等の刃物も、載置部材150にて昇降するのに適しているとはいい難いので、前板134aの内側に包丁差し(図示せず)を備え付けると好ましい。
【0037】
図6(c)では、図6(b)の構成に加えて、さらに遮蔽部材160cが配置されている。これにより、被収納物と梁182との接触を防止し、より好適に前部収納スペース164に被収納物を収納できる。なお、当然ながら、遮蔽部材160b、160cは一体(コの字状)に形成されてもよい。
【0038】
図6(d)では、図6(a)〜(c)と載置部材150の配置箇所および数が異なり、それに応じて、収納スペースを好適に確保するように遮蔽部材160が配置されている。具体的には、底板134dを横断する略平板状の遮蔽部材160aと、載置部材150の側面の両側に設けられた2つの遮蔽部材160bと、一端で遮蔽部材160bに当接し他端で側板134bに当接する遮蔽部材160cとが配置されている。これにより、収納スペース162および前部収納スペース164を好適に確保できる。
【0039】
上記したように、本実施形態において、載置部材150と遮蔽部材160(160a、160b、160c)は、着脱可能にそれぞれ配置されている。そのため、被収納物(特に、載置部材150に関しては繁用物)に応じて、収納庫内の構成を適宜調節することができ、効率的なスペース活用、使い勝手の向上が図られる。なお、遮蔽部材160は、単にレイアウトを行なうための間仕切りとしても使用できる。
【0040】
支持部材180は、摺動部材184と、梁182(上梁182a、下梁182b)と、摺動部材184から奥側に向かって連結されたアーム186と、アーム186の奥側に設けられた複数のプーリ188(上プーリ188a、下プーリ188b)とから構成される。
【0041】
摺動部材184は引出134の両側に配置され、これらを2つの梁182で接続することによって、載置部材150を収容する枠体を形成している。下梁182bは、枠体の剛性を高めると共に、載置部材150の後面を支持して、回転してしまうことを防止している。
【0042】
摺動部材184は、引出134に固定設置される柱部材134eに沿って上下方向に摺動可能に構成されている。これにより支持部材180および載置部材150が、柱部材134eに対して上下方向に摺動可能である。なお、特に図示しないが、載置部材150を容易に昇降させるためのアシスト機構を設けてもよい。アシスト機構の具体的な例としては、柱部材134eと摺動部材164を弾性部材(例えばバネ)で係合させることが挙げられる。
【0043】
図7はアーム186、プーリ188およびレール190を説明する図である。図7(a)に示すように、アーム186は摺動部材184から奥側に向かって延長するように接続されている。本実施形態においてアーム186は樹脂部186aと金属部186bとからなり、樹脂部186aの奥側先端に下プーリ188bと金属部186bを固定している。金属部186bの奥側先端は上方にL字状に屈曲していて、上プーリ188aを高い位置に設置している。なお、樹脂部186aと金属部186bを一体の樹脂または金属で形成してもよい。
【0044】
図7(b)に示すレール190は、ベースキャビネット130内の壁板に配置されていて、プーリ188a、188bを案内する。レール190は、その中央部に前側に向かって上昇する傾斜部190bを有している。傾斜部190bより前側には、略水平にプーリ188a、188bを案内する前側水平部190cを有している。傾斜部190bより奥側には、略水平にプーリを案内する奥側水平部190aを有している。
【0045】
本実施形態において奥側水平部190a、傾斜部190b、前側水平部190cは概ね直線であり、その交点はアールが付けられている。アールの曲率半径は、プーリ188a、188bの半径よりも大きい(曲がりが緩やかである)ことが好ましい。ただし、さらに傾斜部190bをS字を描くような滑らかな曲線としたり、奥側水平部190aや前側水平部190cも傾斜、屈曲、ないしは湾曲させたりすることを除外するものではない。
【0046】
複数のプーリ188a、188bは、アーム186が略水平の姿勢となるように、レール190を挟むように配置されている。詳しくは、上プーリ188aはレール190の上側かつ奥側よりに配置され、下プーリ188bはレール190の下側且つ前側よりに配置されている。上プーリ188aと下プーリ188bの水平方向の間隔D1は、レール190の傾斜部の水平方向の幅W1とほぼ等しい。また、上プーリ188aと下プーリ188bの高さ方向の間隔D2は、レール190の奥側水平部190aまたは前側水平部190cの高さ方向の幅W2とほぼ等しい。
【0047】
このようにプーリ188a、188bとレール190の配置と形状を構成したことにより、2つのプーリ188を同時に上下に案内することができると共に、アーム186の水平を保ったまま昇降させることができる。なおアーム186の水平を保つためには、プーリ188a、188bの水平方向の間隔D1を広く取ることが好ましく、これに応じてレール190の傾斜部190bの水平方向の幅W1も広くなる。この場合において、図7などに示すように、傾斜部190bは中抜きした平行レールとすることができる。これによりレール190の重量および材料コストを低減することができる。
【0048】
図8は、引出134を引き出す際の載置部材150の昇降機構170を説明する図である。以下、ベースキャビネット130を例として、引出134を出し入れした場合の載置部材150の昇降機構170について説明する。なお、図8においては、理解を容易にするために側板134bの図示を省略する。
【0049】
図8(a)は引出134が収容されている状態を示している。このときプーリ188a、188bはレール190の奥側水平部190aにある。
【0050】
図8(b)は引出134が少し引き出された状態を示している。上プーリ188aがレール190の奥側水平部190aと傾斜部190bとの交点である上昇起点にあり、下プーリ188bも奥側水平部194aと傾斜部190bとの交点である下側角部にある。これによりさらに引出134を引き出すことにより、支持部材180は上昇を開始する。
【0051】
図8(c)は引出134をさらに引き出した状態を示している。上プーリ188aはおよび下プーリ188bは、傾斜部190bにあるため、引出134を引き出すに伴ってアーム186が上昇し、支持部材180および載置部材150も上昇する。すなわち、引出134を引き出す力が、載置部材150を上昇させる力に変換される。載置部材150が上昇することにより下方の空間161を生じるが、遮蔽部材160aが被収納物を遮蔽しているので、この空間への侵入は防止される。
【0052】
図8(d)は引出134を概ね引き出した状態を示している。このときプーリ188a、188bはレール190の前側水平部190cにある。これにより、引出134を引き出した状態において載置部材150の重量を前側水平部190cが支持することとなり、引出134が戻ってしまうことを防ぐことができる。なお、前側水平部190cの前側先端は、下面に滑らかな傾斜面を有している。これは下プーリ188bがレール190より突出した後に戻る際に、レール190の下側に入りやすくするためである。
【0053】
引出134をベースキャビネット130に収容する場合は、上記の逆の動作となる。引出134を引き出された状態から押し込むと、図8(c)に示すようにプーリ188a、188bが傾斜部190bにさしかかる。すると、プーリ188a、188bが傾斜部190bに案内されて下降するため、アーム186が水平の姿勢を保ったまま引き下げられる。これにより、単に引出134を押し込む操作によって、支持部材180、延いては載置部材150が下降する。なお、遮蔽部材160aが下方の空間161から被収納物を遮蔽していたため、載置部材150が下降して被収納物と接触するおそれはない。
【0054】
さらに引出134を押し込んで、図8(b)に示すようにプーリ188a、188bが上昇起点まで到達すると、この時点で載置部材150は最も下降した状態となる。このように、引出134を完全に収容させる前に載置部材150は可動範囲の下端に到達し、載置部材150に載置した被収納物が上段の引出132や壁面等に衝突することを防ぐことができる。
【0055】
故に、上記構成によれば、レール190とプーリ188a、188bを用いた簡易な機構で、引出134の内部に配置された載置部材150を昇降させることができ、載置部材150に収納した被収納物を上昇させて取り出しやすくすることができる。このとき、引出134を出し入れする操作に伴って載置部材150が昇降するため、操作が簡潔かつ容易である。また、被収納物を屈まずに取り出すために必要にして十分な高さに上昇させることにより、低い位置にある引出の使い勝手を向上させることができる。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態によれば、被収納物を巻き込むことなく、必要にして十分な繁用物を載置した載置部材150を昇降させることができる。故に、引出全体を昇降させることなく、簡潔かつ容易に日常生活における使用者の負担を低減できる。また、遮蔽部材は着脱可能に設けられているので、被収納物や載置部材150に応じて遮蔽部材160を配置することができ、効率的なスペース活用が行なえる。更に、載置部材150をポケット形状とする事で、杓子類、ラップ、調味料など様々なものを立てた状態で収納することができ、視認性の向上、延いては使い勝手の向上が図れる。
【0057】
なお、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、システムキッチンに備えられた、被収納物を収納する引出を有する収納庫に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
100…システムキッチン、110…天板、112…コンロ、112a…グリル、112b…操作パネル、114…調理スペース、116…シンク、120…コンロキャビネット、122…スパイスボックス、124…引出、126…足下収納庫、130…ベースキャビネット、132、134…引出、134a…前板、134b…側板134c…背面板、134d…底板134、136…足下収納庫、140…シンクキャビネット、144…引出、146…足下収納庫、150…載置部材、152…L字部、160…遮蔽部材、161…下方の空間、162…収納スペース、164…前部収納スペース、170…昇降機構、180…支持部材、182…梁、182a…上梁、182b…下梁、184…摺動部材、186…アーム、186a…樹脂部、186b…金属部、188…プーリ、188a…上プーリ、188b…下プーリ、190…レール、190a…奥側水平部、190b…傾斜部、190c…前側水平部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収納物を収納する引出をスライド自在に収容可能な収納庫であって、
前記引出内に配置され、被収納物を載置可能な載置部材と、
当該収納庫に収容された前記引出が当該収納庫から引き出されることによって前記載置部材を上昇させ、また、該引出が当該収納庫へ押し込まれることによって該載置部材を下降させる昇降機構と、
前記載置部材が上昇して生じる該載置部材の下方の空間から、前記引出の内部であって前記載置部材の外に収納された前記被収納物を遮蔽する遮蔽部材と、
を備えることを特徴とする収納庫。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、所定の部分毎に着脱可能に固定されることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記載置部材の背後に固定された仕切板または柵状物であることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記載置部材の側面側に固定された仕切板または柵状物であることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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