説明

収量が増加した植物および該植物を作製する方法

【課題】植物における滑膜肉腫転座(SYT)ポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現を調節することにより、植物の収量を増加させる方法の提供。
【解決手段】植物の遺伝子工学的方法により、植物にSYT核酸またはその変異体を導入することを含む。また、導入されたSYT核酸またはその変異体を有するトランスジェニック植物に関し、該植物は対応する野生型植物と比較して収量が増加する。更に該方法に有用な構築物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に分子生物学の分野に関し、対応する野生型植物と比較して、植物の収量を増加させる方法に関する。より具体的には、本発明は、植物において滑膜肉腫転座(SYT;synovial sarcoma translocation)ポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現を調節することを含む、植物の収量を増加させる方法に関する。また本発明は、SYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現が調節された植物に関し、該植物は、対応する野生型植物と比較して増加した収量を有する。また本発明は、本発明の方法に有用な構築物を提供する。
【背景技術】
【0002】
世界の人口は増加の一途を辿り、農業に利用できる耕作地の供給が次第に減少しているために、農業の効率を上げる方向に研究が向かっている。従来の作物の手法及び園芸改良では、望ましい性質を有する植物を特定するために選抜育種技術を利用する。しかしながら、このような選抜育種技術はいくつか欠点があり、すなわちこれらの技術は、一般的に集中的な労働力を必要とし、また、しばしば、親植物から伝えられる望ましい形質をいつももたらすとは限らない異質の遺伝的要素を含む植物が生じる。分子生物学の進歩により、人間は動物及び植物の生殖質を改変できるようになった。植物の遺伝子工学は、(一般的にはDNAまたはRNAの形の)遺伝物質の単離及び操作と、続いて遺伝物質の植物への導入を必要とする。このような技術は、様々に改良された、経済的、作物学的または園芸学的特徴を有する作物または植物を作製する力を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
具体的な経済的利益の特性は収量であり、多くの植物の場合、種子の収量である。収量は、通常、作物から得られる測定可能な生産物の経済上の値と定義される。これは量及び/又は質の点から定義されうる。植物の種子は、ヒトおよび動物の重要な栄養源である。トウモロコシ、イネ、コムギ、アブラナおよびダイズなどの作物は、種子自体の直接的な消費を通じてであろうと、あるいは加工された種子から高度に改質された肉製品の消費を通じてであろうと、いずれにしても、ヒトの全カロリー摂取量の半分以上を占める。また前記作物は、砂糖、油および工業プロセスで使用される多くの種類の代謝産物の源でもある。種子は、発芽後の新しいシュートと根のもととなる胚、発芽の間、及び実生(seedling)の初期の生長の間、胚の成長の栄養源となる胚乳を含む。種子の発達には多くの遺伝子が関与し、根、葉および茎から、生育する種子へ、代謝産物の移動が必要である。胚乳は特に、炭水化物ポリマー、油およびタンパク質の代謝前駆物質を同化し、それらを貯蔵高分子に合成して、子実をいっぱいにする。植物の種子の収量を増加させる能力は、種子の数、種子のバイオマス、種子の発達、種子の充填または他の種子に関連した特性を問わずこれらを通じて、農業において、また医薬、抗体またはワクチンなどの物質の生物工学的生産などにおけるような、多くの非農業的使用においても、多くの適用があるだろう。
【0004】
また収量は、器官の数および大きさ、植物の構造(例えば枝の数)、種子の生産などの要因にもよるであろう。根の発達、栄養の摂取及びストレス耐性も、収量を決定する重要な要因になるであろう。従って、これらの要因の最適化は作物の収量の増加に寄与するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
今回、植物においてSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現を調節することにより、対応する野生型植物と比較して収量が増加した植物が提供されることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】植物および哺乳動物のSYTポリペプチドの一般的なドメイン構造を示す。保存されたSNHドメインは、前記タンパク質のN末端に位置する。前記タンパク質ドメインのC末端の残部は、植物SYTポリペプチドのQG−リッチドメインから、および哺乳動物SYTポリペプチドのQPGY−リッチドメインからなる。Met−リッチドメインは一般的に、植物のQG−リッチ(N末端からC末端まで)または哺乳動物のQPGY−リッチの最初の半分に含まれる。第2のMet−リッチドメインは、植物SYTポリペプチドのSNHドメインの前にあり得る。
【図2】数種のSYTポリペプチドのN末端のマルチプルアラインメントを示し、gap opening penaltyが10、gap extensionが0.05のデフォルト設定で、改変されたClustalWアルゴリズム(InforMax, Bethesda, MD, http://www.informaxinc.com)に基づく、VNTI AlignXマルチプルアラインメントプログラムを用いた。SNHドメインは、植物及びヒトSYTポリペプチドを横断するようにボックスで囲まれている。アラインメントの最後の行は、整列された配列に由来するコンセンサス配列からなる。
【図3−1】数種の植物SYTポリペプチドのマルチプルアラインメントを示し、gap opening penaltyが10、gap extensionが0.05のデフォルト設定で、改変されたClustalWアルゴリズム(InforMax, Bethesda, MD, http://www.informaxinc.com)に基づく、VNTI AlignXマルチプルアラインメントプログラムを用いた。N末端からC末端までの2つの主要ドメインはボックスで囲まれ、SNHドメインとMet−リッチ/QG−リッチドメインと同定される。さらに、N末端のMet−リッチドメインもボックスで囲まれ、配列番号90および配列番号91の位置が太線でアンダーラインされている。
【図3−2】図3−1の続きである。
【図3−3】図3−2の続きである。
【図3−4】図3−3の続きである。
【図3−5】図3−4の続きである。
【図3−6】図3−5の続きである。
【図3−7】図3−6の続きである。
【図4】CLUSTALW 1.83(http://align.genome.jp/sit-bin/clustalw)を用いて複数のSYTポリペプチドのアラインメントから得られた近隣結合系統樹を示す。SYT1及びSYT2/SYT3クレードはブラケットで示される。
【図5】GOS2プロモーター(内部参照PRO0129)の制御下にあるArabidopsis thaliana(シロイヌナズナ) AtSYT1のOryza sativa(イネ)での発現のための、バイナリーベクターp0523を示す。
【図6】GOS2プロモーター(内部参照PRO0129)の制御下にあるArabidopsis thaliana(シロイヌナズナ) AtSYT2のOryza sativa(イネ)での発現のための、バイナリーベクターp0524を示す。
【図7】GOS2プロモーター(内部参照PRO0129)の制御下にあるArabidopsis thaliana(シロイヌナズナ) AtSYT3のOryza sativa(イネ)での発現のための、バイナリーベクターp0767を示す。
【図8−1】本発明の方法を行うのに有用な配列の例を詳述する。SYT核酸配列は、開始から終止まで示される。これらの配列の大部分は、EST配列決定からのものであり、質が低い。従って核酸の置換がありうる。
【図8−2】図8−1の続きである。
【図8−3】図8−2の続きである。
【図8−4】図8−3の続きである。
【図8−5】図8−4の続きである。
【図8−6】図8−5の続きである。
【図8−7】図8−6の続きである。
【図8−8】図8−7の続きである。
【図8−9】図8−8の続きである。
【図8−10】図8−9の続きである。
【図8−11】図8−10の続きである。
【図8−12】図8−11の続きである。
【図8−13】図8−12の続きである。
【図8−14】図8−13の続きである。
【図8−15】図8−14の続きである。
【図8−16】図8−15の続きである。
【図8−17】図8−16の続きである。
【図8−18】図8−17の続きである。
【図8−19】図8−18の続きである。
【図8−20】図8−19の続きである。
【図8−21】図8−20の続きである。
【図8−22】図8−21の続きである。
【図8−23】図8−22の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
SYTは転写共活性化因子(transcriptional co-activator)であり、植物において、タンパク質のGRF(growth-regulating factor)ファミリーの転写活性化因子と機能的複合体を形成する(Kim HJ, Kende H (2004) Proc Nat Acad Sc 101: 13374-9)。またSYTは、GIF(GRF-interacting factor)とも呼ばれる。GRF転写活性化因子は、酵母のクロマチンリモデリング複合体のSWI/SNFタンパク質と(N末端領域の)構造ドメインが共通する(van der Knaap E et al., (2000) Plant Phys 122: 695-704)。これらの複合体の転写共活性化因子は、SWI/SNF複合体をエンハンサー及びプロモーター領域に救済して局所的なクロマチンリモデリングを生じさせることに関係すると提案されている(Naar AM et al., (2001) Annu Rev Biochem 70: 475-501参照)。局所的なクロマチン構造の改変は転写活性化を調節する。さらに正確には、SYTは、植物のSWI/SNF複合体と相互作用してGRF標的遺伝子の転写活性化に影響を及ぼすと提案されている(Kim HJ, Kende H (2004) Proc Nat Acad Sc 101: 13374-9)。
【0008】
SYTはシロイヌナズナ(Arabidopsis)の3つのメンバーのうちの1つの遺伝子ファミリーに属する。SYTポリペプチドは、ヒトSYTとホモロジーを有する。ヒトSYTポリペプチドは、転写共活性化因子であることが示された(Thaete et al. (1999) Hum Molec Genet 8: 585-591)。3つのドメインが、哺乳動物のSYTポリペプチドを特徴付ける:
(i)哺乳動物、植物、線虫および魚に保存された、N末端のSNH(SYT N-terminal homology)ドメイン、
(ii)可変間隔で存在する、グリシン、プロリン、グルタミンおよびチロシンから主に成る、C末端のQPGY−リッチドメイン、
(iii)上記2つのドメイン間に位置する、メチオニンリッチ(Met-rich)ドメイン。
【0009】
植物SYTポリペプチドでは、SNHドメインが良く保存されている。C末端のドメインでは、グリシンおよびグルタミンはリッチであるが、プロリンまたはチロシンはリッチではない。従って、哺乳動物のQPGYドメインとは対照的に、QG−リッチドメインと命名されている。哺乳動物のSYTと同様に、Met−リッチドメインはQGドメインのN末端に同定されうる。QG−リッチドメインは、実質的にタンパク質のC末端の残部(SNHドメインをマイナスする)であると取られるであろう;Met−リッチドメインは、典型的には、QG−リッチ(N末端からC末端まで)の最初の半分の範囲に含まれる。第2のMet−リッチドメインは植物SYTポリペプチドのSNHドメインの前にあるであろう(図1参照)。
【0010】
SYTの発現が低減されたSYT機能欠失突然変異体およびトランスジェニック植物は、細胞が少ない、小さく幅の狭い葉と花弁に発達することが報告された(Kim HJ, Kende H (2004) Proc Nat Acad Sc 101: 13374-9)。
【0011】
本発明により、植物においてSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現を調節することを含む、植物の収量を増加するための方法が提供される。
【0012】
本明細書において「対応する野生型植物」という場合は、適切な対照植物または植物を意味するととられ、その選択は十分に当業者の能力の範囲内であり、例えば、目的の遺伝子を持っていない対応する野生型植物または対応する植物を含んでもよい。本明細書で使用される「対照植物」は、植物全体だけでなく、種子及び種子の一部を含む、植物の部分もいう。
【0013】
有利なことに、本発明による方法を行うことにより、植物において対応する野生型植物と比較して、収量、特に種子が増加する。
【0014】
本明細書で定義される用語「収量の増加」は、対応する野生型植物と各々比較して、以下のいずれか1つまたはそれ以上についての増加を意味するととられる:(i)植物の1つまたはそれ以上の部分、特に地上の(収穫可能な)部分のバイオマス(重量)の増加、根のバイオマスの増加、あるいは他の収穫可能な部分(果実、ナッツ、豆類など)のバイオマスの増加、(ii)種子のバイオマス(種子の重量)の増加を含む、植物当たりまたは個々の種子を基準とした種子の重量の増加でもよい、種子の全収量の増加、(iii)(充実した(filled))種子の数の増加、(iv)種子の大きさ(size)の増加(種子の組成に影響があってもよい)、(v)種子の体積(volume)の増加(種子の組成(油、タンパク質及び炭水化物の全含量および全組成を含む)に影響があってもよい)、(vi)個々の種子の面積(area)の増加、(vii)個々の種子の長さ(length)及び幅(width)の増加、(viii)収穫指数の増加(全バイオマスに対する、種子などの収穫可能な部分の収量の比率として表される)、および(ix)千粒重(thousand kernel weight, TKW)の増加(数えた充実した種子数及びその全重量から外挿される)。TKWの増加は、種子の大きさおよび/または種子の重量の増加で生じうる。TKWの増加は、胚の大きさおよび/または胚乳の大きさの増加で生じうる。種子の大きさ、種子の体積、種子の面積、種子の周囲長(perimeter)、種子の幅および種子の長さの増加は、種子の特定の部分の増加により、例えば胚および/または胚乳および/またはアリューロンおよび/または胚盤、あるいは種子の他の部分の増加によるものであってもよい。
【0015】
トウモロコシを例にとると、収量の増加は、以下の1つまたはそれ以上により表すことができる:ヘクタール又はエーカーあたりの植物数の増加、植物あたりの穂(ear)の数の増加、列の数、列あたりの穀粒数、穀粒重量、千粒重、穂の長さ/直径などの増加、種子の充填率(filling rate)(充実した種子の数を全種子数で割り、100を掛ける)など。イネを例にとると、収量の増加は、以下の1つまたはそれ以上の増加により表すことができる:ヘクタール又はエーカーあたりの植物の数、植物当たりの花序(panicle)の数、花序あたりの小穂(spikelet)の数、花序あたりの花(floret)の数(一次花序の数に対して充実した種子の数の割合として表される)、種子の充填率の増加(充実した種子の数を全種子数で割り、100を掛ける)、千粒重の増加など。
【0016】
また、収量の増加は構造の改変により生じうるし、または構造の改変の結果として生じうる。
【0017】
本発明の好ましい特徴によれば、本発明の方法を行うことにより、種子の収量が増加した植物が得られる。従って本発明によれば、植物において種子の収量を増加させる方法が提供され、該方法は、植物においてSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現を調節することを含む。
【0018】
本発明のトランスジェニック植物は増加した収量を有しているので、該植物は(そのライフサイクルの少なくとも一部の間に)対応する野生型植物のライフサイクルの対応するステージでの生長速度と比較して、生長速度の増加を示すと思われる。生長速度の増加は、植物の1つまたはそれ以上の部位(種子を含む)に特異的であってもよいし、全体的に実質的に植物全体であってもよい。生長速度の増加した植物は早い開花期を示すこともある。生長速度の増加は、植物のライフサイクルの1またはそれ以上のステージ、または実質的に植物体全体のライフサイクルにおいて生じることがある。植物のライフサイクルにおける初期のステージでの生長速度の増加は、活力の増強を反映し得る。生長速度の増加により、植物が、別の可能なものよりももっと遅く播種され、および/またはもっと早く収穫されるように、植物の収穫サイクルを変えることができる。もし生長速度が十分に増加されれば、幾つかの植物種の種子を更に播種することが可能になるだろう(例えば従来の生長期間内に、播種しイネ植物を収穫し、その後、更に播種し、イネ植物全てを収穫する)。同様に、もし生長速度が十分に増加されれば、違う植物種の種子をさらに播種することができるだろう(例えば播種しイネ植物を収穫し、続いて例えばダイズ、ジャガイモまたは他の適切な植物を播種し任意に収穫する)。幾つかの作物の場合、同じ根茎から収穫する回数を追加することも可能であろう。植物の収穫サイクルを変えることにより、エーカーあたりの1年間のバイオマス生産を(特定の植物を生育して収穫する(いわば1年の)回数の増加により)上げることができる。また、作物が生育する地域的限定は、植え付けの時(時期の初め)または収穫の時(時期の終わり)の有害な環境条件によってしばしば決定されることから、生長速度の増加により、野生型の対応する植物よりももっと広い地理的なエリアでトランスジェニック植物を栽培することもできる。そのような有害な条件は、収穫サイクルを短くすれば避けることができる。生長速度は生長曲線から様々なパラメーターを導き出すことにより決定することができ、そのようなパラメーターは、例えばT−Mid(植物が最大の大きさの50%に到達するのにかかる時間)及びT−90(植物が最大の大きさの90%に到達するのにかかる時間)などである。
【0019】
本発明の方法を行うことにより、対応する野生型植物と比較して生長速度が増加した植物が提供される。従って、本発明によれば、植物において生長速度を増加させる方法が提供され、該方法は、植物においてSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現を調節することを含む。
【0020】
植物が非ストレス条件下にあっても、あるいは植物が適切な対照植物と比べて様々なストレスにさらされていても、(種子の)収量および/または生長速度の増加が生じる。一般的に植物は、ストレスの曝露に対して、よりゆっくりとした生長により応答する。強いストレス条件では、植物は完全に生長を停止することもある。一方、軽度のストレスは、本明細書において、植物がストレスにさらされても、生長を再開する能力が無く完全に成長を止めた植物にならないストレスであると定義される。農作業(灌漑、施肥、農薬処理)の進歩により、栽培される作物は強いストレスにあまり遭遇しない。その結果、軽度のストレスにより誘発された障害が起きた生長は、しばしば農業にとって望ましくない特性となる。軽度のストレスは、植物がさらされる可能性のある一般的なストレスである。これらのストレスは、植物がさらされる毎日の生物的および/または非生物的(環境)ストレスでありうる。一般的な非生物的または環境ストレスとして、非一般的な高温または低温/凍結温度により起こる温度ストレス、塩分ストレス、水分ストレス(渇水又は過剰水)が挙げられる。また、化学物質は非生物的ストレスを起こす。生物的ストレスは、一般的に、細菌、ウイルス、真菌および昆虫などの感染因子によって生じるストレスである。
【0021】
有利なことに、どんな植物でも収量を変更できる。
【0022】
本明細書において使用される用語「植物」は、植物全体、植物の原種及びその後代、及び植物の部分を包含し、植物の部分には種子、シュート、茎、葉、根(塊茎を含む)、花、組織及び器官を含み、上記のそれぞれは目的の導入遺伝子を含む。また、用語「植物」は、植物細胞、懸濁培養物、カルス組織、胚、分裂組織領域、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子を包含し、さらに上記のそれぞれは導入遺伝子を含む。
【0023】
本発明の方法で特に有用な植物には、緑色植物(Viridiplantae)スーパーファミリーに属する全ての植物、特に、以下の植物を含むリストから選択される、飼料または飼い葉用マメ科植物、観賞植物、食用作物、樹木または低木を含む、単子葉植物及び双子葉植物が挙げられる:アカシア(Acacia spp.)、カエデ(Acer spp.)アクティニディア(Actinidia spp.)、トチノキ(Aesculus spp.)、アガチス・アウストラリス(Agathis australis)、アルビジア・アマラ(Albizia amara)、アルソフィラ・トリカラー(Alsophila tricolor)、メリケンカルカヤ(Andropogon spp.)、ラッカセイ(Arachis spp.)、アレカ・カテチュ(Areca catechu)、アステリア・フラグランス(Astelia fragrans)、アストラガルス・シサー(Astragalus cicer)、バイキアエア・プルリジュガ(Baikiaea plurijuga)、カバノキ(Betula spp.)、アブラナ(Brassica spp.)、ブルグイエラ・ジムノルヒザ(Bruguiera gymnorrhiza)、ブルケア・アフリカーナ(Burkea africana)、ブテア・フロンドーサ(Butea frondosa)、カダバ・ファリノーサ(Cadaba farinosa)、ネムノキ(Calliandra spp.)、カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)、カンナ・インディカ(Canna indica)、トウガラシ(Capsicum spp.)、桂皮(Cassia spp.)、セントロエマ・プベスケンス(Centroema pubescens)、ボケ(Chaenomeles spp.)、キンナモムム・カシア(Cinnamomum cassia)、コフィア・アラビカ(Coffea arabica)、コロフォスペルムム・モパネ(Colophospermum mopane)、コロニリア・バリア(Coronillia varia)、コトネアスター・セロティナ(Cotoneaster serotina)、クルタエグス(Crtaegus spp.)、キュウリ(Cucumis spp.)、クプレッサス(Cupressus spp.)、サイアセア・デアルバータ(Cyathea dealbata)、サイドニア・オブロンガ(Cydonia oblonga)、クリプトメリア・ジャポニカ(Cryptomeria japonica)、キンボポゴン(Cymbopogon spp.)、シンシア・ディアルバータ(Cynthea dealbata)、キドニア・オブロンガ(Cydonia oblonga)、ダルベルジア・モネタリア(Dalbergia monetaria)、ダバリア・ディバリカータ(Davallia divaricata)、デスモディウム(Desmodium spp.)、ディクソニア・スクアローサ(Dicksonia squarosa)、ディヘテロポゴン・アンプレクテンス(Diheteropogon amplectens)、ディオクレア(Dioclea spp.)、ドリコス(Dolichos spp.)、ドリクニウム・レクタム(Dorycnium rectum)、エチノクロア・ピラミダリス(Echinochloa pyramidalis)、エラルティア(Ehrartia spp.)、エレウシン・コラカナ(Eleusine coracana)、エラグレスティス(Eragrestis spp.)、エリスリナ(Erythrina spp.)、ユーカリ(Eucalyptus spp.)、ユークレア・シンペリー(Euclea schimperi)、ユーラリア・ビローサ(Eulalia villosa)、ファゴピルム(fagopyrum spp.)、フェイジョア・セロウィアナ(Feijoa sellowiana)、イチゴ(Fragaria spp.)、フレミンジア(Flemingia spp.)、フレイシネチア・バンクシイ(Freycinetia banksii)、ゲラニウム・ツンベルギイ(Geranium thunbergii)、ギンゴ・ビロバ(Ginkgo biloba)、グリシン・ジャバニカ(Glycine javanica)、グリリシディア(Gliricidia spp.)、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum)、グレビレア(Grevillea spp.)、グイボウルティア・コレオスペルマ(Guibourtia coleosperma)、ヘディサルム(Hedysarum spp.)、ヘマルチア・アルティッシマ(Hemarthia altissima)、ヘテロポゴン・コントルツス(Heteropogon contortus)、ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare)、ヒパーレニア・ルファ(Hyparrhenia rufa)、ヒペリクム・エレクツム(Hypericum erectum)、ヒペルセリア・ディソルタ(Hyperthelia dissoluta)、インディゴ・インカルナータ(Indigo incarnata)、アイリス(Iris spp.)、レプタルレナ・ピロリフォリア(Leptarrhena pyrolifolia)、レスペディザ(Lespediza spp.)、レチュカ(Lettuca spp.)、レウカエナ・レウコセファラ(Leucaena leucocephala)、ロウデチア・シンプレクス(Loudetia simplex)、ロトヌス・バイネシイ(Lotonus bainesii)、ハス(Lotus spp.)、マクロチローマ・アキシラレ(Macrotyloma axillare)、リンゴ(Malus spp.)、マニホット・エスクレンタ(Manihot esculenta)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)、メタセコイア・グリプトストロボイデス(Metasequoia glyptostroboides)、ムサ・サピエンツム(Musa sapientum)、ニコチアヌム(Nicotianum spp.)、オノブリョチス(Onobrychis spp.)、オルニトプス(Ornithopus spp.)、イネ(Oryza spp.)、ペルトフォルム・アフリカヌム(Peltophorum africanum)、ペニセツム(Pennisetum spp.)、ペルセア・グラテッシマ(Persea gratissima)、ペチュニア(Petunia spp.)、ファセオルス(Phaseolus spp.)、フェニックス・カナリエンシス(Phoenix canariensis)、フォルミウム・クッキアヌム(Phormium cookianum)、フォチニア(Photinia spp.)、ピセア・グラウカ(Picea glauca)、ピヌス(Pinus spp.)、ピスム・サティブム(Pisum sativum)、ポドカルプス・トタラ(Podocarpus totara)、ポゴナルスリア・フレッキイ(Pogonarthria fleckii)、ポゴナルスリア・セクアルローサ(Pogonarthria squarrosa)、ハコヤナギ(Populus spp.)、プロソピス・シネラリア(Prosopis cineraria)、シュードツガ・メンジエシイ(Pseudotsuga menziesii)、プテロロビウム・ステラツム(Pterolobium stellatum)、パイラス・コミュニス(Pyrus communis)、クエルクス(Quercus spp.)、ラフィオレプシス・アンベルラタ(Rhaphiolepsis umbellata)、ロパロスチリス・サピダ(Rhopalostylis sapida)、ルス・ナタレンシス(Rhus natalensis)、リベス・グロッスラリア(Ribes grossularia)、スグリ(Ribes spp.)、ロビニア・シュードアカシア(Robinia pseudoacacia)、バラ(Rosa spp.)、キイチゴ(Rubus spp.)、ヤナギ(Salix spp.)、スキザクリウム・サングイネウム(Schyzachyrium sanguineum)、スシアドピティス・ヴァティシラタ(Sciadopitys verticillata)、セコイア・セムペルビレンス(Sequoia sempervirens)、セコイアデンドロン・ギガンテウム(Sequoiadendron giganteum)、ソルガム・バイカラー(Sorghum bicolor)、ホウレンソウ(Spinacia spp.)、スポロボルス・フィムブリアツス(Sporobolus fimbriatus)、スチブルス・アロペクロイデス(Stiburus alopecuroides)、スチロサントス・フミリス(Stylosanthos humilis)、タデハギ(Tadehagi spp.)、タキソディウム・ディスチクム(Taxodium distichum)、テメダ・トリアンドラ(Themeda triandra)、トリフォリウム(Trifolium spp.)、コムギ(Triticum spp.)、ツガ・ヘテロフィラ(Tsuga heterophylla)、スノキ(Vaccinium spp.)、ビシア(Vicia spp.)、ビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)、ワトソニア・ピラミダタ(Watsonia pyramidata)、ザンテデスキア・アエチオピカ(Zantedeschia aethiopica)、トウモロコシ(Zea mays)、アマランス、チョウセンアザミ、アスパラガス、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、キャノーラ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、コラードの葉(collard greens)、亜麻、ケール、レンティル、アブラナ(oilseed rape)、オクラ、タマネギ、ジャガイモ、イネ、ダイズ、イチゴ、サトウダイコン、サトウキビ、ヒマワリ、トマト、スカッシュ、茶及び藻類など。本発明の好ましい態様によれば、植物は作物である。作物の例として他に、ダイズ、ヒマワリ、キャノーラ、アルファルファ、アブラナ(rapeseed)、綿、トマト、ジャガイモまたはタバコなどが挙げられる。シロイヌナズナは一般的に作物として考えられていない。更に好ましくは、植物は、サトウキビなどの単子葉植物である。より好ましくは、植物は、イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、アワ・キビ(millet)、ライムギ、ソルガムまたはカラスムギなどの穀類である。
【0024】
本明細書で定義される用語「SYTポリペプチドまたはそのホモログ」は、(i)配列番号2に示されるSNHドメインに対して、好適さの増加する順に少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するSNHドメイン、および(ii)Met−リッチドメイン、および(iii)QG−リッチドメインのN末端からC末端を含むポリペプチドをいう。
【0025】
好ましくは、配列番号2に示されるSNHドメインに対して少なくとも40%の同一性を有するSNHドメインは、図2の黒で示された残基を含む。さらに好ましくは、SNHドメインは、配列番号1に示される。
【0026】
従って、SYTポリペプチドまたはそのホモログは、以下の1つまたはそれ以上を含み得る:(a)配列番号90、(b)配列番号91、および(c)SNHドメインの前にあるN末端のMet−リッチドメイン。
【0027】
SYTポリペプチドまたはそのホモログは、一般的に、酵母ツーハイブリッドシステムにおいてGRF(growth-regulating factor、生長調節因子)ポリペプチドと相互作用する。酵母ツーハイブリッド相互作用アッセイは当該技術分野で周知である(Field et al. (1989) Nature 340(6230): 245-246参照)。例えば、配列番号4に示されるSYTポリペプチドはAtGRF5およびAtGRF9と相互作用可能である。SYTポリペプチドとそのホモログは、植物において収量、特に種子の収量を増加させることが、本発明者らによって示された。
【0028】
SYTポリペプチドまたはそのホモログは、SYT核酸/遺伝子によりコードされる。従って、本明細書で定義される用語「SYT核酸/遺伝子」は、上記で定義されたSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸/遺伝子である。
【0029】
SYTポリペプチドまたはそのホモログは、当該技術分野において周知の日常的な技術、例えば配列アラインメントを用いて容易に同定することができる。比較のための配列のアラインメントの方法は当該技術分野で周知であり、そのような方法として、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTAが挙げられる。GAPは、NeedlemanおよびWunsch ((1970) J Mol Biol 48: 443-453)のアルゴリズムを用いて、マッチの数を最大にし、ギャップの数を最小限にする2つの完全な配列のアラインメントを見つける。BLASTアルゴリズム(Altschul et al. (1990) J Mol Biol 215: 403-10)は、パーセント配列同一性を計算し、2つの配列間の類似について統計学的分析を行う。BLAST分析を行うソフトウエアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Centre for Biotechnology Information)から公的に入手可能である。配列番号2のSNHドメインに対して少なくとも40%の配列同一性を有するSNHドメインを含むSYTのホモログ、および/または配列番号90および/または配列番号91を含むSYTホモログは、例えばhttp://clustalw.genome.jp/sit-bin/nph-clustalwで入手可能なClustalWマルチプルシークエンスアラインメントアルゴリズム(version 1.83)を用いて、デフォルトペアワイズアラインメントパラメーターで、パーセンテージでのスコアリング方法を用いて、容易に特定することができる。配列番号2のSNHドメインに対して40%の同一性を有する配列は、SYTとして配列を特定するのに十分である。
【0030】
さらに、Met−リッチドメインまたはQG−リッチドメインの存在も容易に特定することができる。図3に示したように、Met−リッチドメインとQG−リッチドメインはSNHドメインに続く。QG−リッチドメインは実質的にタンパク質のC末端の残部(SNHドメインをマイナスする)であるととることができる;Met−リッチドメインは、一般的に、QG−リッチ(N末端からC末端)の最初の半分の範囲に含まれる。ポリペプチドドメインが、特定のアミノ酸がリッチであるかどうかを決める一次アミノ酸組成(%)は、ExPASyサーバー のソフトウエアプログラム(Gasteiger E et al. (2003) ExPASy:the proteomics server for in-depth protein knowledge and analysis. Nucleic Acids Res 31:3784-3788)、特にProtParamツールを用いて計算できる。次に、目的のタンパク質の組成をSwiss-Protタンパク質配列データバンクの平均アミノ酸組成(%)と比較することができる。このデータバンクでは、平均Met(M)含量が2.37%であり、平均Gln(Q)含量が3.93%であり、平均Gly(G)含量が6.93%である。本明細書で定義したように、Met−リッチドメインまたはQG−リッチドメインは、Swiss−Protタンパク質配列データバンクの平均アミノ酸組成(%)を上回るMet含量(%)、またはGlnおよびGly含量(%)を有する。
【0031】
SYTポリペプチドまたはそのホモログの例として以下が挙げられる(カッコ内のアクセッションナンバーのポリヌクレオチド配列によりコードされる。表1も参照のこと):Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)Arath_SYT1 (AY102639.1) 配列番号4、 Arabidopsis thaliana Arath_SYT2 (AY102640.1) 配列番号6、Arabidopsis thaliana Arath_SYT3 (AY102641.1) 配列番号8、Aspergillus officinalis(アスペルギルス・オフィシナリス)Aspof_SYT (CV287542) 配列番号10、Brassica napus(アブラナ)Brana_SYT (CD823592) 配列番号12、Citrus sinensis(オレンジ)Citsi_SYT (CB290588) 配列番号14、Gossypium arboreum(綿) Gosar_SYT (BM359324) 配列番号16、Medicago trunculata(マメ科植物)Medtr_SYT (CA858507.1) 配列番号18、Oryza sativa(イネ)Orysa_SYT1 (AK058575) 配列番号20、Oryza sativa Orysa_SYT2 (AK105366) 配列番号22、Oryza sativa Orysa_SYT3 (BP185008) 配列番号24、Solanum tuberosum(ジャガイモ)Soltu_SYT (BG590990) 配列番号26、Zea mays(トウモロコシ) Zeama_SYT1 (BG874129.1, CA409022.1) 配列番号28、Zea mays Zeama_SYT2 (AY106697) 配列番号30、Homo sapiens(ヒト)Homsa_SYT (CAG46900) 配列番号32、Allium cepa(タマネギ)Allce_SYT2 (CF437485) 配列番号34、Aquilegia formosa x Aquilegia pubescens(オダマキの交雑種)Aqufo_SYT1 (DT758802) 配列番号36、Brachypodium distachyon(ミナトカモジグサ)Bradi_SYT3 (DV480064) 配列番号38、Brassica napus Brana_SYT2 (CN732814) 配列番号40、Citrus sinensis Citsi_SYT2 (CV717501) 配列番号42、Euphorbia esula(ハギクソウ)Eupes_SYT2 (DV144834) 配列番号44、Glycine max(ダイズ)Glyma_SYT2 (BQ612648) 配列番号46、Glycine soya Glyso_SYT2 (CA799921) 配列番号48、Gossypium hirsutum(綿) Goshi_SYT1 (DT558852) 配列番号50、Gossypium hirsutum Goshi_SYT2 (DT563805) 配列番号52、Hordeum vulgare(オオムギ) Horvu_SYT2 (CA032350) 配列番号54、Lactuca serriola(野生レタス) Lacse_SYT2 (DW110765) 配列番号56、Lycopersicon esculentum(トマト)Lyces_SYT1 (AW934450, BP893155) 配列番号58、Malus domestica(リンゴ)Maldo_SYT2 (CV084230, DR997566) 配列番号60、Medicago trunculata Medtr_SYT2 (CA858743, BI310799, AL382135) 配列番号62、Panicum virgatum(スイッチグラス)Panvi_SYT3 (DN152517) 配列番号64、Picea sitchensis(シトカトウヒ)Picsi_SYT1 (DR484100, DR478464) 配列番号66、Pinus taeda(タエダマツ) Pinta_SYT1 (DT625916) 配列番号68、Populus tremula(ヨーロッパヤマナラシ)Poptr_SYT1 (DT476906) 配列番号70、Saccharum officinarum(サトウキビ)Sacof_SYT1 (CA078249, CA078630, CA082679, CA234526, CA239244, CA083312) 配列番号72、Saccharum officinarum Sac
of_SYT2 (CA110367) 配列番号74、Saccharum officinarum Sacof_SYT3 (CA161933, CA265085) 配列番号76、Solanum tuberosum Soltu_SYT1 (CK265597) 配列番号78、Sorghum bicolor(ソルガム)Sorbi_SYT3 (CX611128) 配列番号80、Triticum aestivum(コムギ) Triae_SYT2 (CD901951)配列番号82、Triticum aestivum Triae_SYT3 (BJ246754, BJ252709) 配列番号84、Vitis vinifera(ブドウ)Vitvi_SYT1 (DV219834) 配列番号86、Zea mays Zeama_SYT3 (CO468901) 配列番号88。
【表1】


【0032】
「SYTポリペプチドまたはそのホモログ」の定義に該当する配列は、以下に示される配列に限定されないことは理解されるべきである:配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88。また、(i)配列番号2のSNHドメインに対して少なくとも40%の配列同一性を有するSNHドメイン、および(ii)Met−リッチドメイン、および(iii)QG−リッチドメインのN末端からC末端を含むポリペプチドは、本発明の方法を行うのに、適切であろうことは理解されるべきである。
【0033】
SYT核酸の例として、以下のいずれかに示される核酸が挙げられるが、これらに限定されない:配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87。SYT核酸/遺伝子およびその変異体は本発明の方法を行うのに適切であり得る。変異SYT核酸/遺伝子は、一般的に、天然に生じるSYT核酸/遺伝子と同一の機能を有する核酸/遺伝子であり、その機能は、同一の生物学的機能、または植物において核酸/遺伝子の発現が調節された場合に収量を増加する機能でありうる。そのような変異体は、SYT核酸/遺伝子の一部、および/または以下に定義するSYT核酸/遺伝子とハイブリダイズ可能な核酸を含む。
【0034】
本明細書で定義される用語「一部」は、(i)配列番号2のSNHドメインに対して、好適さの増加する順に、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するSNHドメイン、および(ii)Met−リッチドメイン、および(iii)QG−リッチドメインのN末端からC末端を含むポリペプチドをコードするDNAの断片をいう。例えばSYT核酸に1つまたはそれ以上の欠失を作ることにより、一部を調製することができる。単離された形態で該一部を用い、あるいは例えばいくつかの活性を組合せたタンパク質を作製するために、該一部を他のコード(または非コード)配列と融合させてもよい。他のコード配列と融合させた場合、翻訳で作られたポリペプチドは、SYTフラグメントに対して予測されるものよりも大きいものであり得る。好ましくは、前記一部は、以下のいずれかにより示される核酸の一部である:配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87。最も好ましくは、核酸の一部は、配列番号3、配列番号5または配列番号7に示されるものである。
【0035】
別のSYT核酸/遺伝子の変異体は、低くされたストリンジェンシー条件、好ましくはストリンジェントな条件下で、上記に定義されたSYT核酸/遺伝子とハイブリダイズできる核酸であり、ハイブリダイズする配列は、(i)配列番号2のSNHドメインに対して、好適さの増加する順に、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するSNHドメイン、および(ii)Met−リッチドメイン、および (iii)QG−リッチドメインのN末端からC末端を含むポリペプチドをコードする。好ましくは、ハイブリダイズする配列は、以下のいずれか1つに示される核酸とハイブリダイズ可能な配列である:配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、あるいは上に定義されたように、上記配列のいずれかの一部。最も好ましくは、核酸のハイブリダイズする配列は、配列番号3、配列番号5または配列番号7に示されるものである。
【0036】
本明細書で定義される用語「ハイブリダイゼーション」は、実質的に相同な相補的ヌクレオチド配列が互いにアニールするプロセスである。ハイブリダイゼーションのプロセスは、完全に溶液中で起こり、すなわち両方の相補的核酸は溶液中に存在する。またハイブリダイゼーションのプロセスは、磁性ビーズ、セファロースビーズまたはその他の樹脂などのマトリックスに固定化された相補的核酸の1つとも起こりうる。さらにハイブリダイゼーションのプロセスは、ニトロセルロースまたはナイロン膜などの固体支持体に固定化された、あるいは、例えば石英質ガラス(siliceous glass)支持体に例えばフォトリソグラフィーによって固定化された(後者は核酸アレイ、またはマイクロアレイ、または核酸チップとして知られる)、相補的核酸の1つと起こりうる。ハイブリダイゼーションを起こすようにするため、一般的に、核酸分子を熱的にまたは化学的に変性して、2本鎖を2つの1本鎖に融解し、および/または1本鎖の核酸からヘアピンまたは他の二次構造を除く。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、塩濃度、イオン強度およびハイブリダイゼーション緩衝液の組成などの条件により影響される。
【0037】
サザンおよびノザンハイブリダイゼーションなどの核酸ハイブリダイゼーション実験との関連における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列に依存し、異なる環境パラメーター下で違う。当業者は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄中に変化しうる、またストリンジェンシーな条件を維持するか変える、様々なパラメーターについて知っている。
【0038】
Tmは、標的の配列の50%が完全にマッチするプローブにハイブリダイズする、規定のイオン強度およびpH下での温度である。Tmは、溶液の条件と塩基組成とプローブの長さに依存する。例えば、長い配列は高い温度で特異的にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションの最高率は、Tmより下の約16℃から32℃までに得られる。ハイブリダイゼーション溶液の一価カチオンの存在は、2つの核酸の鎖間の静電反発を低減し、それによりハイブリッド形成が促進する;この効果は0.4Mまでのナトリウム濃度に見られる。ホルムアミドは、パーセントホルムアミドごとにDNA−DNAおよびDNA−RNA2本鎖の融解温度を0.6℃から0.7℃低くし、50%ホルムアミドの添加により、ハイブリダイゼーションの割合は低くなるだろうが、30〜45℃でハイブリダイゼーションが行われるようになる。塩基対のミスマッチは、ハイブリダイゼーション率と2本鎖の熱安定性を低くする。平均して、大きいプローブでは、Tmは%塩基ミスマッチあたり約1℃減少する。Tmは、ハイブリッドのタイプにより、以下の式を用いて計算できる:
1.DNA−DNAハイブリッド(Meinkoth and Wahl, Anal. Biochem., 138: 267-284, 1984):
Tm=81.5℃+16.6xlog[Na+]a+0.41x%[G/Cb]-500x[Lc]-1-0.61x%ホルムアミド
2.DNA−RNAまたはRNA−RNAハイブリッド:
Tm=79.8+18.5(log10[Na+]a)+0.58(%G/Cb)+11.8(%G/Cb)2-820/Lc
3.オリゴ−DNAまたはオリゴ−RNAハイブリッド:
<20ヌクレオチドの場合: Tm=2(ln)
20−35ヌクレオチドの場合: Tm=22+1.46(ln)
または他の一価カチオンの場合、ただし0.01〜0.4Mの範囲での計算のみ。
【0039】
GC%が30%〜75%の範囲での計算のみ。
【0040】
L=塩基対の2本鎖の長さ
オリゴは、オリゴヌクレオチド;lnは、プライマーの有効な長さ=2×(G/Cの数)+(A/Tの数)
(注):1%ホルムアミドごとに、Tmは約0.6〜0.7℃下がり、6M尿素の存在はTmを約30℃下げる。
【0041】
ハイブリダイゼーションの特異性は、一般的に、ハイブリダイゼーション後の洗浄の作用である。非特異的なハイブリダイゼーションの結果生じるバックグラウンドを除去するために、サンプルを希釈塩溶液で洗浄する。そのような洗浄の重要な要素として、イオン強度、最終洗浄液の温度が挙げられる:塩濃度が低く、洗浄温度が高いと、洗浄のストリンジェンシーが高くなる。洗浄条件は、一般的に、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーで、あるいはそれよりも低くして行われる。一般的に、核酸ハイブリダイゼーションアッセイまたは遺伝子増幅検出方法の適切なストリンジェントな条件は上述したとおりである。ストリンジェンシーのより高いまたはより低い条件を選択することもできる。一般的に、低ストリンジェンシー条件は、規定のイオン強度およびpHで特定の配列について熱融解点(Tm)よりも約50℃低いように選択される。中ストリンジェンシー条件は、温度がTmより20℃低い場合であり、高ストリンジェンシー条件はTmより10℃低い場合である。例えば、ストリンジェントな条件は、少なくとも、例えば条件A〜Lと同じくらいのストリンジェントな条件である;低くしたストリンジェンシー条件は、少なくとも、例えば条件M〜Rと同じくらいである。非特異的結合は、例えばタンパク質含有溶液で膜をブロッキングすること、異種RNA、DNAおよびSDSをハイブリダイゼーション緩衝液に添加すること、RNaseで処理することなどの多くの公知技術のいずれかを用いて制御することができる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件の例を以下の表2に挙げる。
【表2】


【0042】
ストリンジェンシーのレベルを決めるには、Sambrook et al. (2001) Molecular Cloning: a laboratory manual, 3rd Edition Cold Spring Harbor Laboratory Press, CSH, New York or to Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989)を参照することができる。
【0043】
SYT核酸またはその変異体は、人工源または天然原由来、例えば植物、藻類あるいは動物由来でもよい。該核酸は、意図的な人間の操作を介して、組成および/またはゲノム環境におけるその天然の形から改変されてもよい。該核酸は、(例えば核酸が導入される植物種と)同一の植物種由来であろうが、または異なる植物種由来であろうが、植物起源が好ましい。好ましくは、植物起源の核酸はSYT1をコードする。あるいは該核酸は、ポリペプチドレベルで互いに近縁関係にあるSYT2またはSYT3をコードしてもよい。該核酸は、双子葉植物種から、好ましくはアブラナ科(Brassicaceae)から、さらに好ましくはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)から単離されてもよい。さらに好ましくは、シロイヌナズナから単離された上記3つのSYT核酸は、配列番号3、配列番号5および配列番号7に示され、上記3つのSYTアミノ酸配列は、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示される。
【0044】
SYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現は、遺伝子改変を(好ましくはSYT遺伝子の遺伝子座に)導入することにより調節することができる。本明細書で定義される遺伝子座は、目的の遺伝子およびコード領域の10kb上流または下流を含む、ゲノム領域を意味するととられる。
【0045】
遺伝子改変は、例えば以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の方法により、導入することができる:T−DNA活性化、TILLING、部位特異的突然変異誘発、定向進化(directed evolution)および相同遺伝子組換え、またはSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸を植物に導入し発現させる。遺伝子改変を導入した後、SYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の調節された発現(発現の調節により収量が増加し、好ましくは種子の収量が増加した植物が提供される)について選択するステップが続く。
【0046】
T−DNA活性化タグ化 (Hayashi et al. Science (1992) 1350-1353)は、通常プロモーター(翻訳エンハンサーまたはイントロンでもよい)を含むT−DNAを、プロモーターが標的の遺伝子の発現を導くように目的の遺伝子のゲノム領域または立体構造の遺伝子のコード領域の10kb上流または下流に挿入することを含む。一般的に、天然のプロモーターによる標的遺伝子の発現の調節が乱されて、該遺伝子は新しく導入されたプロモーターの制御下に置かれる。プロモーターは一般的にT−DNAに組み込まれる。該T−DNAは、例えばアグロバクテリウム感染を介して、植物ゲノムにランダムに挿入され、挿入されたT−DNAに近い遺伝子の過剰発現を誘導する。得られた形質転換植物は、導入されたプロモーターに近い遺伝子の過剰発現により優性表現型を示す。導入されるプロモーターは、所望の生物(本発明の場合は植物)において、遺伝子の発現を導くことができるプロモーターであればよい。例えば、構成的、組織に好適な、細胞型に好適な、および誘導可能なプロモーターは、T−DNA活性化での使用にすべて適切である。
【0047】
また、遺伝子改変は、TILLING(Targeted Induced Local Lesions In Genomes)の技術を用いてSYT遺伝子の遺伝子座に導入することもできる。これは、増強されたSYT活性を有するタンパク質をコードするSYT核酸の突然変異誘発された変異体を作製しおよび/または同定するため、また該変異体を最終的に単離するために有用な技術である。またTILLIGは、そのような突然変異の変異体を保有する植物を選択することも可能にする。これらの突然変異の変異体は、その天然の形の遺伝子により示されるSYT活性よりも高い活性を示すこともありうる。TILLINGは、高密度突然変異誘発とハイスループットスクリーニング方法を組合せる。TILLINGでの一般的な後のステップは以下のとおりである:(a)EMSによる突然変異誘発(Redei GP and Koncz C (1992) In Methods in Arabidopsis Research, Koncz C, Chua NH, Schell J, eds. Singapore, World Scientific Publishing Co, pp. 16-82; Feldmann et al., (1994) In Meyerowitz EM, Somerville CR, eds, Arabidopsis. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, pp 137-172; Lightner J and Caspar T (1998) In J Martinez-Zapater, J Salinas, eds, Methods on Molecular Biology, Vol. 82. Humana Press, Totowa, NJ, pp 91-104);(b)DNA調製および個体のプール;(c)目的の領域のPCR増幅;(d)ヘテロ2本鎖を形成させる変性とアニーリング;(e)DHPLC、この手法では、プールのヘテロ2本鎖の存在はクロマトグラムの余分なピークとして検出される;(f)突然変異個体の同定;および(g)突然変異PCR産物の配列の決定。TILLINGの方法は当該技術分野で周知である(McCallum et al., (2000) Nat Biotechnol 18: 455-457; reviewed by Stemple (2004) Nat Rev Genet 5(2): 145-50)。
【0048】
部位特異的突然変異誘発もSYT核酸の変異体を作製するために用いることができる。幾つかの方法が部位特異的突然変異誘発を行うために利用可能であり、最も一般的なものはPCRをベースとした方法である(current protocols in molecular biology. Wiley Eds. http://www.4ulr.com/products/currentprotocols/index.html)。
【0049】
また、定向進化もSYT核酸の変異体を作製するのに用いることができる。これは、改変された生物活性を有するSYTポリペプチドまたはそのホモログもしくは一部をコードするSYT核酸またはその一部の突然変異体を作製するため、DNAシャッフリングに続く適切なスクリーニングおよび/または選択の反復からなる(Castle et al., (2004) Science 304(5674): 1151-4;米国特許第5,811,238号および第6,395,547号)。
【0050】
T−DNA活性、TILLING、部位特異的突然変異誘発および定向進化は、新規SYTアレルおよび変異体を作製することができる技術の例である。
【0051】
相同遺伝子組換えは、選択された核酸のゲノムに、規定され選択された位置に導入を可能にする。相同遺伝子組換えは、酵母または蘚類のニセツリガネゴケ(Physcomitrella)などの下等生物に対し、生物科学において日常的に用いられる標準的な技術である。植物で相同遺伝子組換えを行う方法は、モデル植物(Offringa et al. (1990) EMBO J 9(10): 3077-84)についてだけでなく、作物、例えばイネ(Terada et al. (2002) Nat Biotech 20(10): 1030-4; Iida and Terada (2004) Curr Opin Biotech 15(2): 132-8)についても述べられている。標的化される核酸(前述のように定義されたSYT核酸またはその変異体であり得る)は、SYT遺伝子の遺伝子座に標的化される。標的化される核酸は内生の遺伝子を置換するために用いられる改良されたアレルであってもよいし、内生の遺伝子の他に導入されてもよい。
【0052】
遺伝子改変を導入するための好ましい方法(この場合、SYT遺伝子の遺伝子座である必要はない)は、SYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸を植物に導入して発現させることである。SYTポリペプチドまたはそのホモログは、以下のN末端からC末端までを含むポリペプチドとして定義される;(i)配列番号2のSNHドメインに対して、好適さの増加する順に、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するSNHドメイン;および(ii)Met−リッチドメイン;および(iii)QG−リッチドメイン。
【0053】
好ましくは、配列番号2のSNHドメインに対して少なくとも40%の同一性を有するSNHドメインは、図2で黒く示された残基を含む。さらに好ましくは、SNHドメインは配列番号1に示される。
【0054】
植物に導入される核酸は、完全長の核酸でもよいし、前述で定義されたように、一部あるいはハイブリダイズする配列でもよい。
【0055】
タンパク質の「ホモログ」は、当の未改変のタンパク質と比べて、アミノ酸置換、欠失および/または挿入を有し、かつ由来する未改変のタンパク質と同等の生物活性および機能活性を有する、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質および酵素を含む。そのようなホモログを作製するため、タンパク質のアミノ酸を類似の性質(例えば類似の疎水性、親水性、抗原性、α−ヘリックス構造またはβ−シート構造を形成あるいは壊す性質)を有する他のアミノ酸で置換してもよい。保存的置換の表は、当該技術分野で周知である(例えばCreighton (1984) Proteins. W.H. Freeman and Companyおよび以下の表3を参照)。
【0056】
ホモログは、遺伝子の先祖の関係を説明するのに使用される進化の概念を含有する、オルソログおよびパラログを含む。パラログは、先祖遺伝子の重複を通じて生じた同種内の遺伝子であり、オルソログは、種分化を通じて生じた異なる生物からの遺伝子である。
【0057】
例えば単子葉植物種におけるオルソログは、いわゆる相互のブラスト(blast)サーチを行うことにより容易に見つけることができる。これは、http://www.ncbi.nlm.nih.govで見つけることができる、公的に入手可能なNCBIデータベースなどの配列データベースに対して、照会配列(例えば配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6.配列番号7または配列番号8)をブラストすることを含むファーストブラストにより行うことができる。ヌクレオチド配列から開始する場合は、BLASTNまたはTBLASTX(標準のデフォルト値を用いる)を使用することができ、タンパク質の配列から開始する場合は、BLASTPまたはTBLASTN(標準のデフォルト値を用いる)を使用することができる。BLASTの結果は任意にフィルタリングしてもよい。つぎに、フィルタリングした結果またはフィルタリングしなかった結果のいずれの完全長配列も、照会配列が由来する生物の配列に対して再度ブラスト(セカンドブラスト)する(従って、クエリ配列が配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8の場合、セカンドブラストはシロイヌナズナの配列に対して行う)。次に、ファーストおよびセカンドブラストの結果を比較する。セカンドブラストからのハイランキングのヒットが、照会配列が由来する種と同一の種からのものであれば、パラログが同定される;ハイランキングのヒットが、照会配列が由来する種と同一の種からのものでなければ、オルソログが同定される。ハイランキングのヒットは、低いE−値を有するヒットである。E−値が低いと、スコアはより有意である(言い換えれば、ヒットが偶然に見出された可能性が低い)。コンピュータによるE−値の計算は、当該技術分野で周知である。大きなファミリーの場合、ClustalWを使用して、続いて近接結合法による系統樹により、関連遺伝子のクラスタリングの視覚化を援助し、オルソログおよびパラログを同定することができる。
【0058】
ホモログは、タンパク質の「置換変異体」の形であってもよく、すなわち、アミノ酸配列の少なくとも1つの残基が除去されて、違う残基がその位置に挿入される。アミノ酸置換は、一般的に単一の残基の置換であるが、そのポリペプチド上に配置された機能的な束縛に応じてクラスターに分けられてもよい;また、挿入は、通常約1〜10アミノ酸残基程度の挿入である。好ましくは、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換を含む。保存的置換の表は、当該技術分野で容易に入手できる。以下の表は、保存アミノ酸の置換の例である。
【表3】

【0059】
またホモログは、タンパク質の「挿入変異体」の形でもよく、すなわち、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基がタンパク質の予定された部位に挿入される。挿入は、1つのまたは複数のアミノ酸の配列内挿入だけでなく、N末端および/またはC末端の融合を含んでもよい。一般的に、アミノ酸配列内での挿入はNまたはC末端の融合よりも小さく、約1〜10残基程度の挿入であろう。NまたはC末端の融合タンパク質またはペプチドの例として、酵母ツーハイブリッドシステムで使用される転写活性化因子の活性化ドメインまたは結合ドメイン、ファージコートタンパク質、(ヒスチジン)−6−タグ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ−タグ、プロテインA、マルトース結合タンパク質、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、タグ・100エピトープ、c-mycエピトープ、FLAG(登録商標)−エピトープ、lacZ、CMP(カルモジュリン−結合ペプチド)、HAエピトープ、プロテインCエピトープおよびVSVエピトープが挙げられる。
【0060】
タンパク質の「欠失変異体」の形のホモログは、タンパク質から1つまたはそれ以上のアミノ酸の除去によって特徴づけられる。
【0061】
タンパク質のアミノ酸変異体は、固相ペプチド合成などの当該技術分野で周知のペプチド合成技術を用いて、あるいは組換えDNA操作によって、容易に作製することができる。タンパク質の置換、挿入または欠失変異体を作製するDNA配列の操作のための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、DNAの予定された部位に置換の変異を作る技術は当業者に周知であり、M13突然変異誘発、T7−Gen in vitro突然変異誘発(USB, Cleveland, OH)、QuickChange部位特異的突然変異誘発(Stratagene, San Diego, CA)、PCRを用いた部位特異的突然変異誘発または他の部位特異的突然変異誘発のプロトコールなどが挙げられる。
【0062】
SYTポリペプチドまたはそのホモログは、誘導体であってもよい。「誘導体」とは、タンパク質の天然形のアミノ酸配列、例えば配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86および配列番号88と比較して、非天然のアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含みうる、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質および酵素が挙げられる。
【0063】
タンパク質の「誘導体」は、ポリペプチドの天然形のアミノ酸配列と比較して、自然に生じる変更された、グルコシル化された、アシル化された、プレニル化された、あるいは非天然アミノ酸残基を含みうる、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質および酵素を含有する。また誘導体は、それが由来するアミノ酸配列と比較して、1つまたはそれ以上の非アミノ酸置換基、例えば、その検出を容易にするために結合されるレポーター分子などの、アミノ酸配列に共有または非共有結合されたレポーター分子または他のリガンド、および天然のタンパク質のアミノ酸配列に対して非天然のアミノ酸残基を含んでもよい。
【0064】
SYTポリペプチドまたはそのホモログは、SYT核酸/遺伝子の代替的なスプライス変異体によりコードされてもよい。本明細書で使用される用語「代替的なスプライス変異体」は、選択されたイントロンおよび/またはエクソンが切除、置換または付加された、あるいはイントロンが短くまたは長くなった核酸配列の変異体を含む。そのような変異体は、タンパク質の生物活性を保持する変異体であり、タンパク質の機能的セグメントを選択的に保持することにより達成しうる。そのようなスプライス変異体は天然に見られるものでもよいし、人為的なものでもよい。そのようなスプライス変異を作製する方法は、当該技術分野で周知である。好ましいスプライス変異体は、以下のN末端からC末端を含むポリペプチドをコードする核酸のスプライス変異体である:(i)配列番号2のSNHドメインに対して、好適さの増加する順に、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するSNHドメイン;および(ii)Met−リッチドメイン;および(iii)GQ−リッチドメイン。好ましくは、配列番号2のSNHドメインに対して少なくとも40%の同一性を有するSNHドメインは、図2に黒で示される残基を含む。さらに好ましくは、SNHドメインは配列番号1によって示される。
【0065】
さらに、SYTポリペプチドまたはそのホモログは、以下の1つまたはそれ以上を含んでもよい:(i)配列番号90;および/または(ii)配列番号91;および/または(iii)SNHドメインの前にあるN末端のMet−リッチドメイン。
【0066】
さらに好ましくは、核酸のスプライス変異体は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85および配列番号87によって示される。最も好ましくは配列番号3、配列番号5および配列番号7によって示されるSYT核酸/遺伝子のスプライス変異体である。
【0067】
またホモログは、SYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸のアレル変異体、好ましくは以下のN末端からC末端までを含むポリペプチドをコードする核酸のアレル変異体によりコードされてもよい:(i)配列番号2のSNHドメインに対して、好適さの増加する順に、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するSNHドメイン;および(ii)Met−リッチドメイン;および(iii)GQ−リッチドメイン。好ましくは、配列番号2のSNHドメインに対して少なくとも40%の同一性を有するSNHドメインは、図2の黒で示された残基を含む。さらに好ましくは、SNHドメインは配列番号1によって示される。さらに、SYTポリペプチドまたはそのホモログは、以下の1つまたはそれ以上を含んでもよい:(i)配列番号90;および/または(ii)配列番号91;および/または(iii)SNHドメインの前にあるN末端のMet−リッチドメイン。
【0068】
さらに好ましくは、アレル変異体は、以下のいずれか1つによって示される核酸のアレル変異体である:配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85および配列番号87。最も好ましくは、アレル変異体は、配列番号3、配列番号5および配列番号7のいずれか1つによって示される核酸のアレル変異体である。
【0069】
アレル変異体は天然に存在し、これらの天然のアレルの使用は、本発明の方法の範囲内に含まれる。アレル変異体は、小さい挿入/欠失多型(INDEL)だけでなく、一塩基多型(SNP)も含有する。INDELの大きさは、通常、100bp以下である。SNPおよびINDELは、ほとんどの生物の天然多型系統において、配列の変異体の最も大きいセットを形成する。
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、SYT核酸またはその変異体の調節された発現は、増加された発現である。発現の増加により、SYT mRNAまたはポリペプチドのレベルの上昇を誘導することができ、SYTポリペプチドの上昇された活性と同一視できる;あるいはポリペプチドレベルに変化がない場合、またはポリペプチドのレベルが下がった場合であっても、活性が上がることもある。これは、ポリペプチドの固有の性質が変わった場合、例えば野生型ポリペプチドよりももっと活性がある突然変異体型を作製することによりに起こり得る。遺伝子の発現または遺伝子産物を増加させる方法は、当該技術分野で十分に実証されており、例えば、適切なプロモーターの作動による過剰発現、転写エンハンサーまたは翻訳エンハンサーの使用が挙げられる。プロモーターまたはエンハンサーエレメントとして働く単離された核酸を、SYT核酸またはその変異体の発現をアップレギュレーションするように、ポリヌクレオチドの非異種形態の適切な位置(一般的に上流)に導入することができる。例えば、内生のプロモーターをin vivoで、突然変異、欠失、および/または置換により変化させてもよいし(Kmiec, US 5,565,350; Zarling et al., PCT/US93/03868参照)、または単離されたプロモーターを、遺伝子の発現を制御するように、本発明の遺伝子の適切な配向および距離で、植物細胞に導入してもよい。遺伝子の発現または遺伝子産物を減少させる方法は、当該技術分野で十分に開示されている。
【0071】
ポリペプチドの発現が望まれる場合、一般的に、ポリヌクレオチドコード領域の3’末端にポリアデニル化領域を含むことが望ましい。ポリアデニレーション領域は、天然の遺伝子、他の植物遺伝子の種類、またはT−DNAに由来し得る。付加される3’末端配列は、例えばノパリン合成酵素またはオクトピン合成酵素遺伝子、あるいは別の植物遺伝子、または好ましさは少し低いが他の真核生物遺伝子に由来してもよい。
【0072】
また、イントロン配列を5’非翻訳領域または部分コード配列のコード配列に付加して、サイトゾルに蓄積する成熟したメッセージの量を増加させてもよい。植物および動物の両方の発現構築物の転写ユニットにスプライス可能なイントロンを包含することにより、mRNAおよびタンパク質の両方のレベルが1000倍まで遺伝子発現を増加させたことが示されている(Buchman and Berg, Mol. Cell biol. 8:4395-4405 (1988); Callis et al., Genes Dev. 1:1183-1200 (1987))。そのような遺伝子発現のイントロンの増強は、一般的に、転写ユニットの5’末端の近くに配置されると最も大きくなる。トウモロコシのイントロンAdh1−Sイントロン1、2および6、Bronze−1イントロンの使用は当該技術分野で公知である。一般的には、The Maize Handbook, Chapter 116, Freeling and Walbot, Eds., Springer, N.Y. (1994)を参照されたい。
【0073】
また本発明は、本発明による方法に有用な前記ヌクレオチド配列の導入及び/又は発現を容易にする遺伝子構築物及びベクターを提供する。
【0074】
従って、
(i)上記に定義された、SYT核酸またはその変異体、
(ii)(i)の核酸配列の発現を駆動することができる1つまたはそれ以上の制御配列;および任意に、
(iii)転写終結配列
を含む遺伝子構築物が提供される。
【0075】
好ましい構築物は、制御配列が植物由来、好ましくは単子葉植物由来のプロモーターの構築物である。
【0076】
本発明による方法に有用な構築物は、当業者に周知の組換えDNA技術を用いて構築することができる。遺伝子構築物は、市販されており、植物に形質転換するのに適切で、形質転換された細胞で目的の遺伝子を発現させるのに適切なベクターに挿入することができる。
【0077】
植物は、目的の配列(すなわちSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸)を含むベクターで形質転換される。目的の配列は、1つまたはそれ以上の制御配列に(少なくともプロモーターに)機能的に結合される。用語「調節エレメント」、「制御配列」および「プロモーター」は、本明細書において全て交換可能に用いられ、結合された配列の発現を生じさせることができる調節核酸配列を指す広い意味でとられるべきである。古典的な真核生物のゲノム遺伝子に由来する転写調節配列(CCAATボックス配列の有無にかかわらず、正確な転写開始に必要とされるTATAボックスを含む)、および発生的および/または外的刺激に応答して、または組織特異的な方法で、遺伝子発現を変化させる追加の調節エレメント(すなわち上流活性化配列、エンハンサーおよびサイレンサー)は、前述した用語に包含される。また古典的な原核生物遺伝子の転写調節配列も上記用語の範囲に含まれ、この場合、−35ボックス配列および/または−10ボックス転写調節配列を含んでもよい。また、用語「調節エレメント」は、細胞、組織または器官で核酸分子を発現させ、発現を活性化または増強する合成融合分子または誘導体も包含する。本明細書で使用される用語「機能的に(operably)結合された」は、プロモーター配列及び目的の遺伝子間の機能的な結合をいい、それによりプロモーター配列は目的の遺伝子の転写を開始することができる。
【0078】
有利なことに、プロモーターのどんなタイプも核酸配列の発現を駆動するのに用いられ得る。プロモーターは誘導性プロモーター、すなわち発生的、化学的、環境または物理的刺激に応答して転写の開始が誘導されまたは増大されるプロモーターであればよい。誘導性プロモーターの例は、ストレス誘導性プロモーター、すなわち植物が様々なストレス条件にさらされた場合に活性化されるプロモーターである。さらにまたはそれとは別に、プロモーターは組織選択プロモーター、すなわち葉、根、種子組織などの特定の組織で転写を選択的に開始できるプロモーターでもよい。特定の組織で転写を開始できるプロモーターのみを本明細書で「組織特異的」と言う。
【0079】
好ましくは、SYT核酸またはその変異体は構成的プロモーターと機能的に結合される。構成的プロモーターは殆どの間、しかし必ずしも全てではないが、生長および発達の段階で転写活性があり、実質的に普遍的に発現される。好ましくはプロモーターは植物由来、さらに好ましくは単子葉植物由来である。最も好ましくはGOS2プロモーター(イネ由来)(配列番号89)の使用である。本発明の適用は、配列番号3、配列番号5または配列番号7に示されるSYT核酸に限定されず、また本発明の適用は、GOS2プロモーターにより駆動される場合、SYT核酸の発現に限定されない。またSYT核酸の発現を駆動するために使用され得る他の構成的プロモーターの例を、以下の表4に示す。
【表4】

【0080】
また任意に、1つ以上のターミネーター配列を、植物に導入された構築物に使用してもよい。用語「ターミネーター」は、一次転写産物の3’プロセシング及びポリアデニル化並びに転写の終結を知らせる、転写単位の末端のDNA配列である制御配列を包含する。追加の調節エレメントは、翻訳エンハンサーだけでなく転写エンハンサーも含んでもよい。当業者であれば、本発明の実施で使用するのに適切でありうるターミネーター及びエンハンサー配列を認識しているであろう。このような配列は当業者に知られており、または容易に得ることができる。
【0081】
更に、本発明の遺伝子構築物は、特定の細胞型において維持及び/又は複製に必要とされる複製配列の開始点を含んでもよい。1つの例は、遺伝子構築物がエピソームの遺伝子エレメント(例えばプラスミドまたはコスミド分子)として細菌細胞に維持されることが必要とされる場合である。複製の好ましい開始点としてf1−ori及びcolE1が挙げられるが、これに限定されない。
【0082】
遺伝子構築物は、任意に、選択マーカー遺伝子を含んでもよい。本明細書で使用されるように、用語「選択マーカー遺伝子」は、本発明の核酸構築物でトランスフェクトまたは形質転換された細胞の同定及び/又は選択を容易にするように発現される細胞に表現型を付与する遺伝子を含む。適切なマーカーは、抗生物質抵抗性または除草剤抵抗性を付与するマーカー、新しい代謝特性を導入するマーカー、或いは可視選択できるようにするマーカーから選択することができる。選択マーカー遺伝子の例として、抗生物質に対する抵抗性を与える遺伝子(例えばネオマイシン及びカナマイシンをリン酸化するnptII、またはハイグロマイシンをリン酸化するhpt)、除草剤に対して耐性を与える遺伝子(たとえばBastaに対する耐性を与えるbar、グリホセートに対する耐性を与えるaroAまたはgox)、または代謝特性を与える遺伝子(例えば植物が単一炭素源としてマンノースを使用できるようにするmanA)が挙げられる。可視マーカー遺伝子は、色(例えばβ−グルクロニダーゼ、GUS)、発光(例えばルシフェラーゼ)または蛍光(緑色蛍光タンパク質、GFP及びその誘導体)の形成をもたらす。
【0083】
また本発明は、本発明による方法で得ることができる植物を包含する。従って本発明は、本発明による方法で得ることができる植物、植物の部分および植物細胞を提供し、植物は、SYT核酸またはその変異体をその中に導入され、また植物、植物の部分および植物細胞は、好ましくは作物由来、さらに好ましくは単子葉植物由来である。
【0084】
また本発明は、植物におけるSYT核酸またはその変異体の導入および発現を含む、収量の増加したトランスジェニック植物の作製方法を提供する。
【0085】
さらに具体的には、本発明は、好ましくは単子葉植物であって、収量が増加したトランスジェニック植物の作製方法を提供し、該方法は、
(i)植物または植物細胞にSYT核酸またはその変異体を導入し、発現させること、および
(ii)植物の生長(growth)および発達(development)を促進する条件下で植物細胞を培養すること
を含む。
【0086】
培養のステップ(ii)で得られた植物の次の世代(後代)は、例えばクローン増殖または古典的繁殖技術などの様々な方法によって繁殖させることができる。例えば、第1世代(またはT1)の形質転換された植物は、自家受粉してホモ接合性の第2世代(またはT2)の形質転換体を生じさせることができ、T2植物は古典的繁殖技術を介してさらに増殖される。
【0087】
核酸は、植物細胞または植物自体に直接導入されてもよい(組織、器官または植物の他の部分への導入を含む)。本発明の好ましい特徴によれば、核酸は形質転換により植物に導入される。
【0088】
本明細書で言及される用語「形質転換」は、宿主細胞への外来性のポリヌクレオチドの移入を包含し、移入に用いられる方法によらない。次のクローン増殖が可能な植物組織は、器官形成または胚形成のいずれによってもよいが、本発明の遺伝子構築物で形質転換されて、そこから完全な植物体に再生され得る。選択される具体的な組織は、形質転換される特定の種に用いることができ、かつその種に最も適しているクローン増殖システムに応じて変わるであろう。例えば標的となる組織として、葉片、花粉、胚、子葉、胚軸、大配偶体、カルス組織、現存の分裂組織(たとえば頂端分裂組織、腋芽分裂組織及び根分裂組織)及び誘発された分裂組織(たとえば子葉分裂組織及び胚軸分裂組織)が挙げられる。ポリヌクレオチドは、宿主細胞に過渡的に又は安定して導入することができ、ゲノムに組み込まれずに、例えばプラスミドとして、維持され得る。あるいは、宿主ゲノムに組み込まれてもよい。得られた形質転換植物細胞は、次に、当業者に公知の方法で形質転換植物に再生するのに使用することができる。
【0089】
植物種の形質転換は、今や完全に日常的な技術である。有利なことに、幾つかの形質転換の方法のいずれも、適切な始祖細胞に目的の遺伝子を導入するのに有利に使用できる。形質転換の方法として、リポソーム、エレクトロポレーション、遊離DNAの取り込みを増加させる化学物質、植物への直接的なDNA注入、パーティクルガンボンバードメント、ウイルスまたは花粉を使った形質転換及びマイクロプロジェクションの使用が挙げられる。方法は、プロトプラストのカルシウム/ポリエチレングリコール法((Krens, F.A. et al., (1982) Nature 296, 72-74; Negrutiu I et al. (1987) Plant Mol Biol 8: 363-373);プロトプラストのエレクトロポレーション(Shillito R.D. et al., 1985 Bio/Technol 3, 1099-1102);植物材料へのマイクロインジェクション(Crossway A et al., (1986) Mol. Gen Genet 202: 179-185);DNAまたはRNA被覆パーティクルボンバードメント(Klein TM et al., (1987) Nature 327: 70);(非組み込みの)ウイルスの感染などから選択することができる。SYT核酸/遺伝子を発現する形質転換イネ植物は、好ましくは、例えば以下のいずれかに説明される、イネの形質転換の周知の方法のいずれかを用いたアグロバクテリウムを介した形質転換を経由して作製される:公開欧州特許出願 EP 1198985 A1、AldemitaおよびHodges (Planta, 199, 612-617, 1996); Chanら、(Plant Mol. Biol. 22 (3) 491-506, 1993)、Hieiら(Plant J. 6 (2) 271-282, 1994)(これらの開示は、完全に記載されているように本明細書に参照により組み込まれる)。トウモロコシの形質転換の場合、好ましい方法は、Ishidaら(Nat. Biotechnol 14(6): 745-50, 1996)、またはFrameら(Plant Physiol 129(1): 13-22, 2002)のいずれかに記載されており、これらの開示は、完全に記載されているように本明細書に参照により組み込まれる。
【0090】
一般的に形質転換後は、植物細胞または細胞集団は、目的の遺伝子と同時に移入された植物で発現可能な遺伝子によりコードされる1つ以上のマーカーの存在について選択され、続いて形質転換された材料は完全な植物体に再生される。
【0091】
DNAの移入及び再生後、形質転換されたと推定される植物を例えばサザン法を使って、目的の遺伝子の存在、コピー数および/またはゲノム組織について評価することができる。それとは別に又は追加して、新たに導入されたDNAの発現レベルをノザンおよび/またはウエスタン法、定量的PCRを使ってモニターすることができ、そのような技術は当業者に周知である。
【0092】
作製された形質転換植物は、様々な方法、例えばクローン増殖または古典的繁殖方法で増殖することができる。例えば、第1世代(またはT1)の形質転換された植物を自家受粉させて、ホモ接合性の第2世代(またはT2)形質転換体を得ることができ、更にT2植物を古典的繁殖技術によって増やすことができる。
【0093】
作製された形質転換生物は多様な形をとることができる。例えば形質転換生物は、形質転換細胞と非形質転換細胞のキメラ、クローン形質転換体(例えば発現カセットを含むように形質転換された全ての細胞)、形質転換組織と非形質転換組織の移植片(例えば植物において、非形質転換の枝と接ぎ木された形質転換された台木)でもよい。
【0094】
本発明は、明確に、本明細書で説明されたいずれかの方法で作製されたあらゆる植物細胞または植物、全ての植物部分及びその栄養繁殖体にまで拡張する。本発明は更に、上述のいずれかの方法で作製された、最初に形質転換又はトランスフェクトされた細胞、組織、器官または全植物体の後代を包含するよう拡張するが、ただ必要なのは、後代が、本発明の方法において親により作られたものと同じ遺伝子型及び/又は表現型の特徴を示すことである。また本発明は、単離されたSYT核酸またはその変異体を含む宿主細胞を含む。本発明の好ましい宿主細胞は植物細胞である。また本発明は、植物の収穫可能な部分、例えば種子、葉、果実、花、茎栽培物(stem culture)、根茎、塊茎、及び鱗茎に拡張するが、これらに限定されない。さらに、本発明はそのような植物の収穫可能な部分に由来する、好ましくは直接的に由来する生産物、例えば乾燥ペレットまたは粉末、穀粉、油、脂質および脂肪酸、デンプンまたはタンパク質などに関する。
【0095】
また本発明は、SYT核酸またはその変異体の使用、およびSYTポリペプチドまたはそのホモログの使用、および植物の収量の増加、特に種子の収量の増加について上記に定義された構築物の使用を含有する。種子の収量は、上記に定義されたとおりであり、好ましくは全体的な種子の収量の増加またはTKWの増加を含む。
【0096】
SYT核酸またはその変異体、あるいはSYTポリペプチドまたはそのホモログは、育種計画での使用を見出すことができ、SYT遺伝子またはその変異体に遺伝的に関係し得るDNAマーカーが同定される。SYT核酸/遺伝子またはその変異体、あるいはSYTポリペプチドまたはそのホモログは、分子マーカーを決定するために使用することができる。そして該DNAまたはタンパク質マーカーは、収量が増加した植物を選択する育種計画に使用することができる。SYT遺伝子またはその変異体は、例えば以下のいずれかに示される核酸であり得る:配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85および配列番号87。
【0097】
SYT核酸/遺伝子のアレル変異体も、マーカーを使った育種計画での使用を見出すことができる。そのような育種計画は、場合によっては、例えばEMSによる突然変異誘発を用いる植物の変異原性処理によるアレル変異の導入が必要である;あるいは上記計画は、意図せずに起こるいわゆる「天然」起源のアレル変異体を集めることから始めてもよい。次にアレル変異体の同定を例えばPCRで行う。この後、問題となっている収量が増加した、配列の優れたアレル変異体を選択するステップが続く。選択は、一般的に、問題となる配列の異なるアレル変異体、例えば以下のいずれか1つの異なるアレル変異体を含む植物の生長パフォーマンスをモニタリングすることにより行われる:配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85および配列番号87。生長パフォーマンスは温室または野外でモニタリングできる。さらに任意のステップとして、優れたアレル変異体が同定された植物を他の植物と交雑することを含む。これは、例えば興味ある表現型の特徴の組み合わせを作るために用いることができるであろう。
【0098】
また、SYT核酸またはその変異体は、遺伝子を遺伝的および物理的マッピングするためのプローブとして(プローブは前記遺伝子の一部である)、また前記遺伝子に関連した形質のためのマーカーとしても使用し得る。そのような情報は、所望の表現型を有する系統を開発するため、植物の育種に有用であり得る。そのようなSYT核酸またはその変異体の使用は、少なくとも15ヌクレオチドの長さの核酸配列のみを必要とする。SYT核酸またはその変異体は、制限断片長多型(RFLP)マーカーとして使用できる。制限酵素で消化された植物ゲノムDNAのサザンブロット(Sambrook J, Fritsch EF and Maniatis T (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual)は、SYT核酸またはその変異体を用いて精査することができる。そして得られたバンドパターンは、遺伝子マップを構築するため、MapMaker(Lander et al. (1987) Genomics 1: 174-181)などのコンピュータープログラムを使った遺伝学的分析に掛けられる。さらに、前記核酸は、確定された遺伝的交雑の親および後代を代表する個体のセットの、制限酵素エンドヌクレアーゼで処理されたゲノムDNAを含むサザンブロットを精査するために使用できる。DNA多型の分離が注目され、該集団を用いて先に得られた遺伝子マップでのSYT核酸またはその変異体の位置を計算するために使用される(Botstein et al. (1980) Am. J. Hum. Genet. 32:314-331)。
【0099】
遺伝子マッピングに用いるための植物遺伝子由来のプローブの作製と使用は、Bematzky and Tanksley (1986) Plant Mol. Biol. Reporter 4: 37-41に説明されている。多数の刊行物が、上記に概略が説明された方法またはその変形を用いた具体的なcDNAクローンの遺伝子マッピングを説明している。例えば、F2交雑雑種の集団、戻し交雑の集団、ランダムに交雑した集団、ほぼ同質な遺伝子の系統、および他の個体のセットをマッピングに使用することができる。そのような方法は、当業者に周知である。
【0100】
上記核酸は、物理マッピングに使用することもできる(すなわち物理的マップでの配列の配置;Hoheisel et al. In: Non-mammalian Genomic Analysis: A Practical Guide, Academic press 1996, pp. 319-346, およびそれに引用される文献を参照)。
【0101】
別の実施形態において、核酸プローブは直接蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)マッピング(Trask (1991) Trends Genet. 7:149-154)に使用することができる。FISHマッピングの従来法では大きいクローンの使用が好ましいが(数kbから数百kb;Laan et al. (1995) Genome Res. 5:13-20を参照)、感度の向上により、短いプローブを使ったFISHマッピングの実施が可能になるだろう。
【0102】
遺伝子および物理マッピングのための核酸増幅をベースにした様々な方法を、上記核酸を用いて行うことができる。例えば、アレル特異的増幅(Kazazian (1989) J. Lab. Clin. Med 11:95-96)、PCR−増幅フラグメントの多型(CAPS; Sheffield et al. (1993) Genomics 16:325-332)、アレル特異的ライゲーション(Landegren et al. (1988) Science 241:1077-1080)、ヌクレオチド伸長反応(Sokolov (1990) Nucleic Acid Res. 18:3671)、放射線ハイブリッドマッピング(Walter et al. (1997) Nat. Genet. 7:22-28)、Happyマッピング(Dear and Cook (1989) Nucleic Acid Res. 17:6795-6807)が挙げられる。これらの方法において、核酸の配列は、増幅反応またはプライマー伸長反応に用いるためのプライマーペアを設計及び作製するために使用することができる。そのようなプライマーの設計は当業者に周知である。PCRをベースにした遺伝子マッピングを行う方法では、本願の核酸配列に対応する領域における、マッピング交差(mapping cross)の親間のDNA配列の違いを同定する必要があろう。しかしながら、これはマッピング法において一般的に必要ではない。
【0103】
本発明の方法によれば、上述したように、収量が増加した植物が得られる。これらの収量増加の特性は、他の経済的に有利な特性、例えば更なる収量増加の特性や、様々なストレスに対する耐性、様々な構造上の特徴および/または生化学的および/または生理的特徴を改変する特性などと組合せてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0104】
本発明は、添付の図面を参照して説明される。
【実施例】
【0105】
本発明を以下の実施例を参照して説明するが、説明のみを目的とする。
【0106】
DNA操作:特に明記しない限り、組換えDNA技術はSambrook(2001) Molecular Cloning:a laboratory manual,3rd Edition Cold Spring Harbor Laboratory Press,CSH,New York、またはAusubelら(1994),Volumes 1及び2,Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocolsに記載される標準的なプロトコルに従って行う。標準的な材料と植物分子研究の方法は、R.D.D. CroyのPlant Molecular Biology Labfase(1993)、BIOS Scientific Publications Ltd(UK)及びBlackwell Scientific Publications(UK)出版に説明されている。
【0107】
実施例1:AtSYT1, AtSYT2およびAtSYT3の遺伝子クローニング
Arabidopsis thaliana AtSYT1遺伝子をシロイヌナズナシードリングcDNAライブラリー(Invitrogen, Paisley,英国)をテンプレートとして用いてPCRで増幅した。実生から抽出したRNAを逆転写後、cDNAをpCMV Sport 6.0にクローニングした。バンクの平均挿入体サイズは1.5kbであり、クローンの最初の数は1.59×10cfu程度であった。最初の力価は9.6×10cfu/mlと測定され、最初の増幅後は6×1011cfu/mlと測定された。プラスミド抽出後、テンプレート200ngを50μlのPCRミックスに使用した。プライマーprm06681 (配列番号92; センス、開始コドンは太字、AttB1部位はイタリックで示す):
【化1】

【0108】
およびprm06682 (配列番号93; リバース、相補的、AttB2部位はイタリックで示す)
【化2】

【0109】
(Gateway組換えの上記AttB部位を含む)をPCR増幅に用いた。PCRはHifi Taq DNAポリメラーゼを使って標準的な条件下で行った。727bp(attB部位を含む)のPCRフラグメントを増幅し、標準的な方法を用いて精製した。次に、Gateway用語による「エントリークローン」p07466を作製するため、PCRフラグメントをin vivoでpDONR201プラスミドを用いて組換える間、Gatewayの手順の最初のステップのBP反応を行なった。プラスミドpDONR201はGateway(登録商標)技術の一部として、Invitrogenから購入した。
【0110】
Arabidopsis thaliana AtSYT2遺伝子は、Arabidopsis thaliana AtSYT1遺伝子と同じ方法を用いてPCRで増幅した。プライマーprm06685(配列番号94;センス、開始コドンは太字、AttB1部位はイタリックで示す)
【化3】

【0111】
およびprm06686(配列番号95);リバース、終止コドンは太字、相補的、AttB2部位はイタリックで示す)
【化4】

【0112】
(Gateway組換えの上記AttB部位を含む)をPCR増幅に用いた。PCRはHifi Taq DNAポリメラーゼを使って標準的な条件下で行った。666bpのPCRフラグメント(attB部位を含む)を上述のように増幅し、精製した。エントリークローンはp07467とした。
【0113】
Arabidopsis thaliana AtSYT3遺伝子は、Arabidopsis thaliana AtSYT1およびAtSYT2遺伝子と同じ方法を用いてPCRで増幅した。プライマーprm06683(配列番号96;センス、開始コドンは太字、AttB1部位はイタリックで示す)
【化5】

【0114】
およびprm06684(配列番号97;リバース、終止コドンは太字、相補的、AttB2部位はイタリックで示す)
【化6】

【0115】
(Gateway組換えのAttB部位を含む)をPCR増幅に用いた。PCRはHifi Taq DNAポリメラーゼを使って標準的な条件下で行った。745bpのPCRフラグメント(attB部位を含む)を上述のように増幅し、精製した。エントリークローンはp07604とした。
【0116】
実施例2:ベクターの構築
続いて、エントリークローンp07466、p07467およびp07604を、p00640(Oryza sativa(イネ)の形質転換に使用されるディスティネーションベクター)とのLR反応に使用した。このベクターは、T−DNAボーダー内に機能的エレメントとして、植物選択マーカー、植物スクリーナブルマーカー発現カセット及びエントリークローンにすでにクローニングされた目的の配列を有するLR in vivo組換え用のGatewayカセットを含む。構成的発現(PRO0129)のためのイネGOS2プロモーター(配列番号89)を該Gatewayカセットの上流に配置した。
【0117】
LR組換えステップ後、得られた発現ベクターを、それぞれAtSYT1についてはp0523、AtSYT2についてはp0524、AtSYT3についてはp0767とし(図5〜7参照)、アグロバクテリウム株LBA4044に形質転換し、続いてOriza sativa(イネ)植物に形質転換した。形質転換されたイネ植物は生長することができ、次に実施例3で説明するパラメーターについて試験した。
【0118】
実施例3:GOS2プロモーターの制御下でのAtSYT1、AtSYT2およびAtSYT3の評価及び結果
約15〜20の独立したT0イネ形質転換体を作製した。初代の形質転換体を、生長させてT1種子を収穫するため、組織培養チャンバーから温室に移した。T1後代が3:1で導入遺伝子の存在/不存在に分離した、6つの事象が保持された。これらの各事象について、導入遺伝子(ヘテロ−及びホモ−接合体)を含む約10本のT1実生、及び導入遺伝子を欠く(無接合体(nullizygote))約10本のT1実生を、可視マーカーの発現をモニタリングすることにより選択した。
【0119】
統計学的分析:F−テスト
2つのファクターANOVA(変異体の分析)を、植物の表現型の特性を全体的に評価するための統計学的モデルとして使用した。F−テストを、本発明の遺伝子で形質転換した全ての事象の全ての植物を測定する全てのパラメーターについて行った。F−テストは、全ての形質転換事象にわたって遺伝子の効果をチェックするため、及びグローバルな遺伝子効果としても知られる遺伝子の全体的な効果を証明するために行った。真のグローバルな遺伝子効果についての有意性の閾値は、F−テストについて5%確率レベルに設定した。有意なF−テスト値は遺伝子の効果を示し、表現型の違いを起こしている遺伝子の存在または位置のみだけではないことを意味する。
【0120】
種子に関連するパラメーターの測定
熟した初代の花序を収穫し、袋に入れ、バーコードを貼り、37℃のオーブンで3日間乾燥させた。次に花序を脱穀し、全ての種子を集めて数えた。空気を吹き付ける装置を使って、充実した外皮(husk)を空の外皮と分離した。空の外皮は廃棄し、残りの画分を再び数えた。充実した外皮を化学天秤で秤量した。充実した種子の数を、分離ステップ後に残った充実した外皮の数を数えることにより決定した。全体的な種子の収量を、植物から収穫された全ての充実した外皮を秤量することにより測定した。植物当たりの全種子の数を、植物から収穫された外皮の数を数えることにより測定した。千粒重(TKW)を、数えた充実した種子の数とそれらの全重量から推定する。
【0121】
個々の種子のパラメーター(幅、長さ、面積、重量を含む)を2つの主要な構成要素、すなわち画像分析用のソフトウエアを連結した撮像装置および秤量装置からなるオーダーメイドの装置を使って測定した。
【0122】
3.1 温室で生長した形質転換植物の全体的な種子の収量およびTKW測定の結果
T1世代のAtSYT1、AtSYT2およびAtSYT3のトランスジェニック植物における全種子収量およびTKW測定の結果を表5〜7にそれぞれ示す。いずれかのパラメーターで増加した系統の数を示す。トランスジェック体と、対応する無接合体(nullizygote)との間のパーセンテージの差と、FテストからのP値を示す。
【0123】
全体的な種子の収量およびTKWの両方が、AtSYT1、AtSYT2およびATSYT3のトランスジェニック植物のT1世代で有意に増加する(それぞれ表5〜7を参照)。
【表5】

【表6】

【表7】

【0124】
3.2 T2世代のAtSYT1トランスジェニック植物の種子の大きさの測定結果
個々の種子パラメーター(幅、長さおよび面積)を、T2植物の種子について、2つの主要な構成要素、すなわち画像分析用のソフトウエアを連結した撮像装置および秤量装置からなるオーダーメイドの装置を使って、測定した。測定は、外皮を除去および除去しない種子の両方について行った。
【0125】
Oryza sativa AtSYT1トランスジェニック植物のT3種子(T2植物から収穫)の個々の種子面積、長さおよび幅の測定(平均)の結果を、表8に示す。トランスジェニック体と、対応する無接合体との間のパーセンテージの差と、特定のパラメーターで増加した事象の数とFテストからのp値を示す。
【0126】
T3の外皮を除去および除去しない種子(T2の形質転換Oryza sativa AtSYT1植物から収穫)の個々の種子の面積、長さおよび幅の平均は、そのヌル対応物と比較して、全て有意に増加した。
【表8】

【0127】
3.3 T2世代のAtSYT1トランスジェニック植物の種子の胚および胚乳の大きさの測定結果
胚および胚乳の大きさも、外被を除去しない種子を縦方向に半分に切り、着色料の塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムで35℃、2〜3時間染色することにより、測定した。染色後、2個の半分に切った種子を画像用に準備したペトリ皿のアガロースゲル上に置いた。3つの独立した事象を選び、各事象から導入遺伝子のホモ接合の120個の種子と導入遺伝子の無い120個の種子を分析した。種子のデジタル写真を撮り、画像をImageProソフトウエアで分析した。3つの事象の結果を以下に示す。
【0128】
3つの全ての事象について、導入遺伝子のホモ接合性の種子の胚は、導入遺伝子無しの種子の胚よりも大きかった。3つの事象のそれぞれの種子の胚の平均面積に有意な増加があり、t−テストのp値は0.0325、<0.0001および<0.0001であった。同様に、3つの事象のそれぞれの種子の胚の平均周囲長に有意な増加があり、t−テストのp値は0.0176、<0.0001および<0.0001であった。さらに、3つの事象のそれぞれの種子における胚乳の平均面積および周囲長に有意な増加があり、すべてにおいてp値は<0.0001であった。
【0129】
3.4 野外で生長したAtSYT1トランスジェニック植物のTKWの測定結果
AtSYT1ホモ接合性トランスジェニック植物とそれに対応する対照植物を9月に野外に移植し、12月に収穫した。各項目(4つの事象)について1回あたり104本の植物を、4回反復して植えた。植物の間隔は20cm×20cmにした。地面を冠水させ灌注させた。種子の収穫後、上述のようにTKWについて種子を測定した。これらの測定結果を表9に示す。
【表9】

【0130】
TKWは野外で評価されたすべての遺伝子導入事象で増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する野生型植物と比較して植物の収量を増加させる方法であって、植物において滑膜肉腫転座(SYT)ポリペプチドまたはそのホモログをコードする核酸の発現を調節すること、および任意に、収量が増加した植物を選択することを含み、前記SYTポリペプチドまたはホモログは、(i)配列番号2に示されるSNHドメインに対して少なくとも40%の配列同一性を有するSNHドメイン、および(ii)Met−リッチドメイン、および(iii)QG−リッチドメインのN末端からC末端を含む、前記方法。
【請求項2】
前記SNHドメインが図2の黒で示される残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SNHドメインが配列番号1に示されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記SYTポリペプチドまたはそのホモログが、(i)配列番号90、(ii)配列番号91、(iii)SNHドメインの前にあるN末端のMet−リッチドメインの1つまたは複数をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記調節された発現が、好ましくはSYTポリペプチドまたはそのホモログをコードする遺伝子の遺伝子座に、遺伝子改変を導入することにより生じる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子改変が、T−DNAアクチベーション、TILLING、部位特異的突然変異誘発または定向進化の1つにより生じる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
対応する野生型植物と比較して、収量、特に種子の収量を増加させる方法であって、SYT核酸またはその変異体を、植物、植物の部分または植物細胞に導入し、発現させることを含む、前記方法。
【請求項8】
前記変異体が、SYT核酸の一部またはSYT核酸とハイブリダイズ可能な配列であり、前記一部またはハイブリダイズ可能な配列が、(i)配列番号2に示されるSNHドメインに対して少なくとも40%の配列同一性を有するSNHドメイン;および(ii)Met−リッチドメイン;および(iii)QG−リッチドメインのN末端からC末端を含むポリペプチドをコードする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記SNHドメインが、図2の黒で示される残基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記SNHドメインが、配列番号1で示されるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記SYTポリペプチドまたはそのホモログが、(i)配列番号90;(ii)配列番号91;(iii)SNHドメインの前にあるN末端のMet−リッチドメインの1つまたはそれ以上をさらに含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記SYT核酸またはその変異体が、植物で過剰発現される、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記SYT核酸またはその変異体が、植物起源、好ましくは双子葉植物由来、さらに好ましくはアブラナ科由来であり、より好ましくは前記核酸がシロイヌナズナ由来である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記変異体が、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるSYTタンパク質のオルソログまたはパラログをコードする、請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記SYT核酸またはその変異体が、構成的プロモーターと機能的に結合される、請求項7〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記構成的プロモーターが、植物由来、好ましくは単子葉植物由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記構成的プロモーターが、GOS2プロモーターである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記収量の増加が、種子の収量の増加である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記収量の増加が、種子の全収量の増加および/またはTKWの増加である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法により得ることができる植物、植物の部分または植物細胞。
【請求項21】
(i)SYT核酸またはその変異体、
(ii)(a)の核酸配列の発現を駆動できる1つまたはそれ以上の制御配列、および任意に、
(iii)転写終結配列
を含む構築物。
【請求項22】
前記制御配列が、単子葉植物由来の構成的プロモーターである、請求項21に記載の構築物。
【請求項23】
前記構成的プロモーターがGOS2プロモーターである、請求項22に記載の構築物。
【請求項24】
前記GOS2プロモーターが、配列番号89に示されるものである、請求項23に記載の構築物。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか1項に記載の構築物で形質転換された植物、植物の部分または植物細胞。
【請求項26】
収量が増加、特に種子の収量が増加する、好ましくは単子葉植物の、形質転換植物の作製方法であって、
(i)植物または植物細胞にSYT核酸またはその変異体を導入し、発現させること、
(ii)植物の生長および発達を促進する条件下で植物細胞を培養すること、
を含む前記方法。
【請求項27】
前記培養工程(ii)により得られた植物を交雑することにより、種子を含む植物またはその部分の1またはそれ以上の後代を作製することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
植物または植物の部分に導入されたSYT核酸またはその変異体から生じる、収量が増加、特に種子の収量が増加したトランスジェニック植物またはその部分であって、前記収量が、対応する野生型植物と比較して増加する、前記トランスジェニック植物またはその部分。
【請求項29】
前記植物が、サトウキビなどの単子葉植物であり、またはイネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、キビ・アワ、ライムギ、オートムギまたはソルガムなどの穀類である、請求項20、25または28に記載のトランスジェニック植物。
【請求項30】
請求項20、25、28または29のいずれか1項に記載の植物の収穫可能な部分。
【請求項31】
前記収穫可能な部分が種子である、請求項30に記載の植物の収穫可能な部分。
【請求項32】
請求項29に記載の植物、および/または請求項30または31に記載の植物の収穫可能な部分に由来する、好ましくは直接由来する、生産物。
【請求項33】
対応する野生型植物と比較して、収量、特に種子の収量の向上における、SYT核酸/遺伝子またはその変異体の使用、あるいはSYTポリペプチドまたはそのホモログの使用、あるいは請求項21〜24のいずれか1項に記載の構築物の使用。
【請求項34】
前記種子の収量が、種子の全収量の増加およびTKWの増加である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
分子マーカーとしての、SYT核酸/遺伝子またはその変異体の使用、あるいはSYTポリペプチドまたはそのホモログの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図8−6】
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【図8−7】
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【図8−8】
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【図8−9】
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【図8−10】
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【図8−11】
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【図8−12】
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【図8−13】
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【図8−14】
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【図8−15】
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【図8−16】
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【図8−17】
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【図8−18】
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【図8−19】
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【図8−20】
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【図8−21】
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【図8−22】
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【図8−23】
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【公開番号】特開2013−55943(P2013−55943A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230978(P2012−230978)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2007−552650(P2007−552650)の分割
【原出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(505283555)クロップデザイン エヌ.ブイ. (13)
【Fターム(参考)】