説明

受信装置、プログラム、及び受信方法

【課題】受信するビーコンをより効果的に制限することができる技術を提供する。
【解決手段】ビーコンを受信する受信手段を備えた受信装置において、1又は複数のグリッドロケータの設定を受け入れるグリッド設定手段、受信手段により受信したビーコンに含まれる位置情報に対応するグリッドロケータと、グリッド設定手段により設定されたいずれかのグリッドロケータとが一致するか否かを判定する判定手段(ステップ76)、及び判定手段によりいずれかのグリッドロケータと一致すると判定されたグリッドロケータに対応するビーコンの情報のみを記憶する記憶手段(ステップ77)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーコンを受信する受信装置、並びに該受信装置に適したプログラム及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の座標ウェイポイントにおいてメッセージを残し、かつメッセージを取り出すシステムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このシステムにおいて、座標ウェイポイントは、商業移動体無線サービス(CMRS)プロバイダのネットワーク内に存在する。システムのユーザは、ネットワークを介して通信を行うためのインタフェース機器を携行し又は持ち運びながらネットワーク内を移動しているときに、特定座標位置においてメッセージを記憶させたり見たりすることができる。すなわち、ユーザ機器の電源が投入され、ネットワークの物理的な境界内にあるときに、ユーザ機器の位置がユーザ機器、ネットワーク、或いはその双方の組合せによって計算される。そして、ユーザ機器が特定座標位置を中心とする区域内に入ると、メッセージはユーザにより利用可能となる。またユーザは、ネットワーク境界内の任意の座標点において、個人宛てのメッセージを残すことができる。さらに、このシステムを使用し、ユーザが資産に対して物理的な近接閾値内に入ったときにこの資産に関する情報にアクセスできるようにすることもできる。
【0003】
一方、固定局や移動局が、衛星通信等を含む無線通信やインターネットを介して位置座標付き情報の交換及び様々なリアルタイムデータの交換を行うAPRS(Automatic Packet Reporting System:情報報知システム)が知られている。このシステムにおいては、世界中の移動局や固定局(APRS局)から発信された情報が、デジピータと呼ばれる無線中継局を経由し、さらにインターネットを介して、米国のAPRS−ISサーバ(APRSインターネット・サービス・サーバ)に蓄積される。世界各地のAPRS局は、蓄積された情報をインターネットやデジピータを介して取得することができる。
【0004】
このシステムにおいては、受信する位置ビーコンを制限する機能として、ポジションリミット機能及びパケットフィルタ機能の2種類が用意されている。ポジションリミット機能とは、図7に示すように、自局71の位置を中心とする半径rを設定し、半径rの範囲72内の位置ビーコンのみを受信することにより、受信する位置ビーコンを制限する機能である。この場合、自局71が矢印73のように移動すると、受信する位置ビーコンの範囲72も移動する。半径rの設定は1キロメートル単位で行うことができる。たとえば半径rを1[km]に設定した場合には、自局71の位置から半径1[km]までの範囲内からの位置ビーコンのみを受信することができる。半径1[km]を超える範囲からの位置ビーコンは受信しない。
【0005】
パケットフィルタ機能とは、位置ビーコンの種類を規定するフィルタを設定し、該フィルタが規定する種類の位置ビーコンのみを受信することにより、受信する位置ビーコンを制限する機能である。フィルタとしては、「WEATHER」、「MOBILE」、「NAVITRA」、「DIGI」、「OBJECT」、「OTHERS」の6種類が用意されている。「WEATHER」が規定する種類の位置ビーコンのみを受信したい場合には「WEATHER」のみ選択すればよい。また、「MOBILE」、「NAVITRA」等の複数を設定し、これらが規定する種類の位置ビーコンを受信することができるようにすることも可能である。ポジションリミット機能及びパケットフィルタ機能の併用は可能である。たとえば、ポジションリミット機能において半径rを5[km]に設定し、パケットフィルタ機能において「WEATHER」を設定した場合には、自局から半径[5km]以内の気象ビーコンのみを受信することができる。これらの機能における設定は図8に示すような設定画面を介して行うことができる。同図においては、パケットフィルタの設定画面が示されている。ポジションリミット機能がオフであり、パケットフィルタとして、上記6種類がメニュー表示されている様子が示されている。ユーザはこの6種類のうちから選択することにより、パケットフィルタの設定を行うことができる。
【0006】
APRSに対応した無線機は、たとえば図1に示すような構成を備える。この構成において、アンテナからの位置ビーコンは、送受信部11を経由して、パネルユニット2に送られる。パネルユニット2に送られた位置ビーコンは、モデム23によってデジタルデータに復調され、さらにTNCマイコン22によってシリアルデータに変換される。シリアルデータは、メインマイコン21に送られ、APRSプロトコルに従って解析される。これにより、位置ビーコンの位置情報や種類が確定する。
【0007】
ポジションリミット機能を実施する場合、メインマイコン21は、受信した位置ビーコンが、設定した半径rの範囲内からのものであるか否かを判定するために、位置ビーコンの位置と、無線機の位置との間の距離を算出する。算出した距離が半径rの設定値以下であれば、位置ビーコンの解析結果を無線機のLCD表示部24上に表示させ、EEPROM26に保存する。半径rの設定値以下でなければ、範囲外である旨をLCD表示部24上に表示する。なお、無線機の位置としては、固定局の場合には設定された自局位置が用いられる。移動局の場合には、位置が変化するので、判定時点でのリアルタイムな位置情報(緯度・経度、進行方向、速度、高度など)が用いられる。
【0008】
このリアルタイムな位置情報は、GPSレシーバ3による測位情報に基づいて得ることができる。すなわち、GPSレシーバ3が取得した測位情報は、シリアルデータとしてTNCマイコン22へ送られ、TNCマイコン22において解析される。解析結果は、シリアルデータとしてメインマイコン21に送られる。メインマイコン21では、そのシリアルデータに基づき、現在の位置情報が求められる。ユーザはこの位置情報をLCD表示部24上に表示させて確認することもできる。
【0009】
パケットフィルタ機能を実施する場合には、メインマイコン21は、受信した位置ビーコンの種類が、予め設定されたパケットフィルタが規定する種類のものに一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合には、位置ビーコンの解析結果を無線機のLCD表示部24上に表示させ、EEPROM26に保存する。一致しないと判定した場合には、パケットフィルタに適合しない旨をLCD表示部24上に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−64763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の座標ウェイポイントにおいてメッセージを残し、取り出すシステムによれば、特定座標位置(座標ウェイポイント)以外の位置においてはメッセージを見ることができない。また、特定座標位置の境界がはっきりしないという問題点もある。また、グリッドロケータを使用し、地図をブロック状に分けて、特定座標位置を、ユーザに分かりやすく示す必要もある。
【0012】
また、上述のAPRSにおいては、利用者は、1つの周波数で情報のやり取りを行うので、非常に多くのビーコンを受信する。その中には不要なビーコンも含まれるので、受信するビーコンを制限するために、上述のポジションリミット機能及びパケットフィルタ機能が用意されている。しかし、APRSは、位置情報の交換以外でも、気象情報、ボランティア活動、レピータ周波数等の情報のやり取りなどに応用され、利用範囲が拡大してきている。このような状況の中で、次のような問題点が顕在化してきている。
【0013】
すなわち、気象情報を重点的に受信する場合、パケットフィルタ機能を利用し、フィルタとして「WEATHER」を設定することにより、気象ビーコンのみの受信が可能となるが、受信するビーコンのエリアを指定していないので、受信した気象ビーコンがどの位置のものであるかを確認する必要が生じ、煩わしい。ポジションリミット機能を併用して受信するビーコンのエリアを限定することもできるが、ポジションリミット機能は、半径rを設定し、自局を中心とする半径rの範囲内のビーコンのみの受信を許容するものであるため、受信するビーコンのエリアを必ずしも効率的に限定することはできない。たとえば、A地点から100[km]離れたB地点に行く場合にB地点の状況を知るためには、半径rを100[km]に設定する必要がある。その場合、半径100[km]以内の気象ビーコンをすべて受信してしまうことになるので、効率的ではない。
【0014】
また、ボランティア活動の場合、位置ビーコンやオブジェクトビーコンなどから、地震情報、火災情報、台風情報、竜巻情報などを取得して救助活動に役立てているが、担当エリアの情報を見逃さないようにするためには、やはり、受信ビーコンを制限する機能を用い、担当エリアのビーコンの到来を待機する必要がある。しかし、パケットフィルタ機能により「OBJECT」を設定することによってオブジェクトビーコンのみを受信することはできるが、これにポジションリミット機能を併用し、半径rを設定したとしても、不要なビーコンを受信する可能性が高いので、受信したビーコンのリストを見ながら、各ビーコンの発信位置を確認する必要があり、効率的ではない。つまり、ボランティア活動では、一分一秒でも早く駆けつける必要があるので、現状の受信ビーコンの制限機能は十分ではない。
【0015】
本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、APRS等を利用する際に、受信するビーコンをより効果的に制限することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため、第1の発明に係る受信装置は、ビーコンを受信する受信手段を備えた受信装置であって、1又は複数のグリッドロケータの設定を受け入れるグリッド設定手段、前記受信手段により受信したビーコンに含まれる位置情報に対応するグリッドロケータと、前記グリッド設定手段により設定されたいずれかのグリッドロケータとが一致するか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段によりいずれかのグリッドロケータと一致すると判定されたグリッドロケータに対応するビーコンの情報のみを記憶する記憶手段を具備することを特徴とする。
【0017】
第2の発明に係る受信装置は、第1発明において、前記グリッド設定手段により設定されるグリッドロケータの種類を設定する種類設定手段と、前記ビーコンの位置情報に対応するグリッドロケータを算出する算出手段とを備え、前記算出手段は、前記グリッドロケータの算出を、該グリッドロケータが、前記種類設定手段により設定された種類のグリッドロケータであるものとして行うものであることを特徴とする。
【0018】
第3の発明に係る受信装置は、第1又は第2発明において、前記グリッド設定手段は、前記グリッドロケータの設定を受け入れるに際し、ワイルドカードの使用を許容するものであることを特徴とする。
【0019】
第4の発明に係る受信装置は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記記憶手段により記憶された各ビーコンが有する情報を表示する表示手段を備え、前記グリッド設定手段は、複数のグリッドロケータの設定を受け入れるに際し、各グリッドロケータについての優先順位の設定を併せて受け入れるものであり、前記表示手段は、各ビーコンの情報を表示するに際し、各ビーコンに対応する、前記グリッド設定手段により設定を受け入れたグリッドロケータの優先順位が高いほど、そのビーコンの情報を優先的に又は上位の位置に表示するものであることを特徴とする。
【0020】
第5の発明に係るプログラムは、コンピュータを、第1〜第4のいずれかの発明に係る受信装置におけるグリッド設定手段、判定手段、及び記憶手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
第6の発明に係る受信方法は、ビーコンを受信する受信工程、1又は複数のグリッドロケータの設定を受け入れるグリッド設定工程、前記受信工程により受信したビーコンに含まれる位置情報に対応するグリッドロケータと、前記グリッド設定工程により設定されたいずれかのグリッドロケータとが一致するか否かを判定する判定工程、及び前記判定工程によりいずれかのグリッドロケータと一致すると判定されたグリッドロケータに対応するビーコンの情報のみを記憶する記憶工程を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、APRS等を利用する際に、受信するビーコンを、より効果的に制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線機の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の無線機におけるメニュー設定画面の一例を示す図である。
【図3】図2のメニュー設定画面においてグリッドロケータを設定する様子を示す図である。
【図4】図1の無線機のグリッドリミット機能におけるグリッドロケータの設定例を示す図である。
【図5】図2のメニュー設定画面によりグリッドロケータの設定を受け入れる処理を示すフローチャートである。
【図6】図1の装置における処理を示すフローチャートである。
【図7】従来のポジションリミット機能を示す図である。
【図8】従来のパケットフィルタ機能における設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線機の構成を示すブロック図である。この無線機は、音声による交信機能及びパケットによるデジタル通信機能を備え、APRSやナビトラにも対応している。ナビトラとは、APRSに類似したシステムであり、移動局からのビーコンによって移動局の位置や、移動速度をリアルタイムで知らせることができるようにしたものである。この無線機は同図に示すように、送受信機能を備えたラジオユニット1、及びラジオユニット1に接続されたパネルユニット2を備える。
【0025】
ラジオユニット1は、アナログ信号及び無線信号相互間での変換を行う送受信部11、ユニット各部を制御するマイクロコントロールユニット(以下、「マイコン」という。)12、送受信部11に接続された内蔵スピーカ13、マイコン12及び送受信部11に対してマイクを接続するためのコネクタ14、送受信部11に対してアンテナを接続するためのコネクタ15、並びにマイコン12及び送受信部11をパネルユニット2に接続するためのコネクタ16を備える。送受信部11はマイクから供給される音声信号やパネルユニット2から供給されるデジタル変調されたアナログ信号を無線波に変換してアンテナから送信するとともに、アンテナを介して受信した無線波を音声信号やアナログ信号に変換して内蔵スピーカ13やパネルユニット2に供給する。
【0026】
パネルユニット2はユニット各部を制御するメインマイコン21、ターミナルノードコントローラ(TNC)として機能するTNCマイコン22、TNCマイコン22及びラジオユニット1間に設けられたモデム23、メインマイコン21及びユーザ間のインタフェースとして機能するLCD表示部24及び操作部25、メインマイコン21に接続されたEEPROM26、メインマイコン21及びモデム23をラジオユニット1に接続するためのコネクタ27、並びにTNCマイコン22をGPSレシーバ3に接続するためのコネクタ28を備える。
【0027】
表示部24は235×65ドットのフルドットマトリクス液晶表示装置を有する。メインマイコン21は所定のプログラムに従い、APRSやナビトラによりサポートされるデータ形式に従ったデータを取り扱う。操作部25は各種操作キー、クリックエンコーダ、アナログボリューム等を備える。
【0028】
TNCマイコン22はメインマイコン21と、GPSレシーバ3やモデム23との間に介在し、パケットの構成、誤り検出、再送信の制御等を行う。モデム23はTNCマイコン22からのデジタル信号に基づいて、デジタル変調したアナログ信号をラジオユニット1に供給するとともに、ラジオユニット1からのアナログ信号をデジタル信号に復調してTNCマイコン22に供給する。メインマイコン21はTNCマイコン22を介してAPRS形式やナビトラ形式のパケットの送受信を行うことができる。
【0029】
メインマイコン21は、不要なビーコンを破棄する機能として、従来のポジションリミット機能及びフィルタ機能に加え、グリッドリミット機能を備える。グリッドリミット機能においては、予めメニュー設定画面で設定したグリッドロケータと、受信したビーコンに基づいて算出したグリッドロケータとを比較し、一致しない場合には、受信したビーコンは不要なビーコンとみなして破棄するようにしている。破棄しなかったビーコンの内容は、LCD表示部24上に表示され、かつEEPROM26に保存される。つまり、ステーションリストに登録される。ステーションリストの各レコードには、そのレコードのビーコンを送信した無線局のコールサイン、メッセージ、緯度・経度、該ビーコンの受信時刻等の項目が含まれる。ステーションリストの内容は、LCD表示部24において表示させることができる。
【0030】
図2は上述のメニュー設定画面の一例を示す。図中の31は、画面タイトルの表示であり、グリッドリミット機能の設定画面であることを示す「PACKET FILTER2」が表示されている。32はグリッド形式(GRID FORMAT)、すなわちグリッドロケータの種類を選択するための領域である。種類の選択は、選択領域32において表示内容をスクロールさせることにより、所望の種類のグリッドロケータを選択して表示させ、選択を確定することにより行うことができるようになっている。スクロールや選択の確定は、操作部25におけるキー操作によって行うことができる。
【0031】
選択できるグリッドロケータの種類としては、たとえば、「MAIDENHEAD GRID」(メイデンヘッド・グリッド)、「SAR GRID(CONV)」(サー・グリッド(コンベンショナル))、又は「SAR GRID(CELL)」(サー・グリッド(セル))が該当する。ユーザはこのようなグリッドロケータの種類のうちから、使用用途に適合した種類のものを選択することができる。たとえば、地域に適合したグリッドロケータとして、日本においては「MAIDENHEAD GRID」を選択し、米国においては、「SAR GRID」を選択すると効果的である。図2においては、「MAIDENHEAD GRID」が選択されている様子が示されている。図中の33はグリッドロケータを設定するための入力領域である。図2においては、2つのグリッドロケータ「PM95TO」及び「PM95TP」が設定されている様子が示されている。
【0032】
図3は図2のメニュー設定画面において、グリッドロケータを設定する様子を示す。図3に示すように、グリッドロケータは英数字をキー入力することによって設定される。このキー入力は、操作部25により行うことができ、グリッドロケータの種類の選択を確定したときに可能となる。キー入力に際し、グリッドロケータ毎に入力文字をカンマで区切り、グリッドロケータを複数設定することも可能である。その際、ワイルドカード「*」を用いてもよい。たとえばグリッドロケータの設定値が「PM*」である場合、受信したビーコンに基づいて算出したグリッドロケータの先頭2桁が「PM」であれば、そのビーコンは破棄されることはない。
【0033】
「MAIDENHEAD GRID」はアマチュア無線で一般的に使われているグリッドスクエア(Grid Square)フォーマットである。世界を緯度・経度によって区切り、「PM75MA」(北緯35度、東経135度)のように表現される。たとえばグリッドロケータ「PM75MA」において、最初の2桁「PM」は「フィールド」と呼ばれる項目の内容であり、世界を324分割したうちの1つの領域を表している。次の2桁「75」は「スクエア」と呼ばれる項目の内容であり、フィールドをさらに100分割したうちの1つの領域を表している。次の2桁「MA」は「サブスクエア」と呼ばれる項目の内容であり、スクエアをさらに576分割したうちの1つの領域を表している。
【0034】
「SAR GRID(CONV)」は、緊急災害活動(Search & Rescue)用にアメリカで使用されているフォーマットのコンベンショナル(Conventional)形式(旧形式)である。「CAP(Civil Air Patrol)Grid」(CAP(シビル・エア・パトロール)グリッド)とも呼ばれている。「SAR GRID(CELL)」は、緊急災害活動(Search & Rescue)用にアメリカで使用されているフォーマットのセル(Cell)形式(新形式)である。「CAP(Civil Air Patrol)Grid」とも呼ばれている。
【0035】
図4はグリッドリミット機能におけるグリッドロケータの設定例を示す。図中の41は出発地点、42は到着地点、43(斜線を施した部分)は設定された各グリッドロケータに対応する領域である。同図に示すように、出発地点41から到着地点42までの経路に沿って、複数のグリッドロケータを設定し、対応する各領域43内のビーコンのみを破棄することなく受信することができる。
【0036】
図5は図2のメニュー設定画面によりグリッドロケータの設定を受け入れる処理を示すフローチャートである。この処理は所定のプログラムに従い、メインマイコン21により行われる。このプログラムは、図2のメニュー設定画が表示されている間、所定間隔で繰り返し実行される。すなわち、冒頭のステップ51においては、グリッドロケータの種類の選択が確定するのを監視する。
【0037】
ステップ51において選択の確定を検出すると、ステップ52〜54において、選択されたグリッドロケータの種類が、「MAIDENHEAD GRID」、「SAR GRID(CONV)」、及び「SAR GRID(CELL)」のうちのいずれであるかを判定する。「MAIDENHEAD GRID」が選択されたと判定した場合には、ステップ55において、「MAIDENHEAD GRID」の形式に従ったグリッドロケータの設定を受け入れる。「SAR GRID(CONV)」が選択されたと判定した場合には、ステップ56において、「SAR GRID(CONV)」の形式に従ったグリッドロケータの設定を受け入れる。「SAR GRID(CELL)」が選択されたと判定した場合には、ステップ57において、「SAR GRID(CELL)」の形式に従ったグリッドロケータの設定を受け入れる。これにより、図5の処理を終了する。
【0038】
ところで、APRS又はナビトラ形式のビーコンをアンテナを介して受信すると、ビーコン信号は送受信部11により信号レベルが調節され、パネルユニット2に供給される。パネルユニット2に供給された信号は、モデム23においてパケットデータに復調され、TNCマイコン21及びメインマイコン22によって処理される。
【0039】
図6はTNCマイコン21及びパネルマイコン22における処理を示すフローチャートである。TNCマイコン22は、モデム23により復調されたパケットデータを受信し(ステップ61)、シリアルデータに変換し、汎用非同期送受信回路(UART)を経てメインマイコン21に出力する(ステップ62)。
【0040】
メインマイコン21はこのシリアルデータを受信して解析し(ステップ63、64)、シリアルデータがAPRS形式のものであるか又はナビトラ形式のものであるかを確認するとともに(ステップ65)、確認した形式に応じてシリアルデータをさらに解析し(ステップ66、67)、受信したビーコンの種類を確定する(ステップ68)。ビーコンの種類としては、上述のように「WEATHER」等の6種類が該当する。これによりビーコンの位置情報も定まる。
【0041】
次に、ビーコンを送信した相手局と自局との距離を算出する(ステップ69)。その際に、自局の位置はGPSレシーバ3からのGPS信号に基づいて、TNCマイコン22を介して得ることができる。次に、ビーコンの位置情報に含まれる緯度経度情報に基づき、グリッドロケータの計算を行う(ステップ70)。グリッドロケータの計算は、図5のステップ51において予め設定されているグリッドロケータの種類に応じて行われる。
【0042】
次に、ポジションリミット機能を実行するように設定されている場合には、ステップ69で求めた距離が、ポジションリミット機能を実行するために予め設定されている半径rの範囲内であるかどうかを判定する(ステップ71、72)。半径rの範囲内でないと判定した場合には、そのまま図6の処理を終了する。すなわち、受信したビーコンは破棄される。
【0043】
ポジションリミット機能を実行するように設定されていない場合や、半径rの範囲内であると判定した場合において、パケットフィルタ機能を実行するように設定されている場合には、ステップ68において確定したビーコンの種類が、パケットフィルタ機能の実行のために予め設定されているビーコンの種類に一致するかどうかを判定する(ステップ73、74)。一致しないと判定した場合には、そのまま図6の処理を終了する。すなわち受信したビーコンは破棄される。
【0044】
パケットフィルタ機能を実行するように設定されていない場合や、設定されているビーコンの種類に一致すると判定した場合において、グリッドリミット機能を実行するように設定されている場合には、ステップ70において計算したグリッドロケータが、グリッドリミット機能の実行のために予め設定されているグリッドロケータに一致するかどうかを判定する(ステップ75、76)。一致すると判定した場合には、受信したビーコンの内容を、ディスプレイ24上に表示し、EEPROM26に保存する。すなわちビーコンのデータがステーションリストに登録される。一致しないと判定した場合には、そのまま図6の処理を終了する。すなわち、受信したビーコンは破棄される。
【0045】
本実施形態によれば、無線機が受信したビーコンの位置を示すグリッドロケータが、予め設定したグリッドロケータに一致しない場合にはそのビーコンを破棄するようにしたため、破棄せずに受信するビーコンが存在する受信エリアを、グリッドロケータ単位で設定することができる。受信エリアは、連続的ではない場合であっても、設定することができる。たとえばA地域とB地域とが離れていても、A地域及びB地域を受信エリアに設定することができる。これにより、多くのビーコンが送信されている状況においても、グリッドロケータで受信エリアに設定した所望のエリアからのビーコンのみを受信することができる。したがって、ステーションリストにも、所望のエリアのビーコン情報のみが登録される。その際、ステーションリストに登録できるビーコン情報の数には上限(たとえば100件)が存在し、ファーストインファーストアウト形式で古いビーコン情報からさ駆除される仕様となっているが、不要なビーコン情報が保存されないので、後でリストを検索する際には直ちに検索を行うことができるとともに、不要なビーコン情報による古い有用なビーコン情報の消去を極力減少させ、有用なビーコン情報がステーションリスト中に存在する期間を長期化し、ステーションリストの有効活用を図ることができる。
【0046】
また、APRSでは1つの周波数を使用しており、かつ現在、ユーザ数の増加によりビーコン数が増加し、非常に多くのビーコン情報がやり取りされているので、すべてのビーコン情報を受信していると、目的の情報を見逃してしまう可能性があるが、本実施形態によれば、ビーコンの受信制限を、グリッドロケータ単位で行うようにしているので、必要最小限のビーコン情報を取得し、最新の気象情報や、ボランティア活動などの展開に必要な目的の情報をスムーズに取得することが可能となる。
【0047】
また、従来のポジションリミット機能によれば、受信するビーコンの位置を、現在の自局位置からの半径rで限定するようにしているので、受信したいビーコンのエリアがある場合には、自局位置からそのエリアまでの距離を計算し、そのエリアが含まれるように半径rを設定する必要がある。これによれば、半径rに含まれる所望のエリア以外のビーコンをすべて受信してしまうという欠点がある。たとえば、出発地点から到着地点までの気象データを受信したい場合、到着地点までの距離を半径rとして設定する必要があるが、出発地点から到着地点までの直線ルートに沿ったエリア以外の不要なエリアのビーコンも受信してしまう。また、自局が車両などによる移動局である場合には、常に自局と相手局の距離は変化するので、その都度半径rの再設定を行う必要がある。また、従来のパケットフィルタ機能によれば、ビーコンの種類を指定して受信制限を行うことができるが、指定された種類のビーコンであれば、すべてのエリアのビーコンを受信するので、この場合も不要なビーコンを受信してしまうという不都合がある。これに対し、本実施形態のグリッドリミット機能によれば、グリットロケータ単位で受信エリアを設定するようにしているので、自局が移動した場合でも、自局の位置に関係なく、設定した受信エリアからのビーコン情報を確実にモニタすることができる。たとえば、自宅付近のグリッドロケータを設定しておくことにより、自局がどこに移動した場合においても、自宅周辺のビーコンを受信することができる。
【0048】
また、グリッドロケータを複数設定できるようにしたため、出発地点及び到着地点間における複数のエリアからのビーコン情報のみを受信することも可能である。これにより、ポジションリミット機能の弱点であった不要なエリアからのビーコンの受信を低減させることができる。たとえば、図4のように、直線的に受信エリア43を設定することによって、出発地点41から到着地点42までの経路上のビーコンを、無駄無く効率的に受信することができる。また、出発地点から目的地までの経路が直線的でない場合であっても、その経路に沿った受信エリアを設定することができる。
【0049】
また、従来のAPRS受信制限機能(ポジションリミット機能、パケットフィルタ機能)と併用することができるようにしたため、より、適切かつ効果的な受信制限を行うことができる。さらに、グリッドロケータの設定に際し、ワイルドカードを使用することができるようにしたため、広範囲に渡るグリッドロケータの設定も容易に行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上述実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては言及しなかったが、グリッドロケータの指定に際し、優先順位を設け、より優先順位の高いグリッドロケータに一致するビーコン情報を、より優先度の高いものとしてステーションリストに登録することによって、ユーザがステーションリストの表示を見るときに、たとえばより自局に近い、優先度の高い情報なのかどうかを区別することができるようにすることもできる。具体的には、各ビーコン情報のレコードの表示に直接優先順位を付したり、優先順位の高いビーコン情報のレコードほど優先的に又はリストの上位に表示したりすることにより区別できるようにすることができる。
【0051】
また、上述においては、受信したビーコンの位置情報に基づいてグリッドロケータを算出するようにしているが(図6のステップ70)、該ビーコン中に、設定されているグリッドロケータの種類と同じ種類のグリッドロケータが含まれている場合には、そのグリッドロケータを用いるようにしてもよい。すなわち、そのグリッドロケータと、設定されているグリッドロケータとを比較し、合致した場合には、受信したビーコンを破棄しないようにしてもよい。
【0052】
また、上述においては、キー入力によってグリッドロケータの設定を行うようにしているが、この代わりに、カーナビゲーション装置において設定された出発地から目的地までのルートのデータに基づき、該ルートに沿って、複数のグリッドロケータを自動的に設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1:ラジオユニット、2:パネルユニット、3:GPSレシーバ、11:送受信部、12:マイコン、13:内蔵スピーカ、14:コネクタ、15:コネクタ、16:コネクタ、21:メインマイコン、22:TNCマイコン、23:モデム、24:LCD表示部、25:操作部、26:EEPROM、27:コネクタ、28:コネクタ、31:画面タイトル、32:選択領域、33:入力領域、41:出発地点、42:到着地点、43:領域、71:自局、72:範囲、73:矢印。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーコンを受信する受信手段を備えた受信装置であって、
1又は複数のグリッドロケータの設定を受け入れるグリッド設定手段、
前記受信手段により受信したビーコンに含まれる位置情報に対応するグリッドロケータと、前記グリッド設定手段により設定されたいずれかのグリッドロケータとが一致するか否かを判定する判定手段、及び
前記判定手段によりいずれかのグリッドロケータと一致すると判定されたグリッドロケータに対応するビーコンの情報のみを記憶する記憶手段を具備することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記グリッド設定手段により設定されるグリッドロケータの種類を設定する種類設定手段と、
前記ビーコンの位置情報に対応するグリッドロケータを算出する算出手段とを備え、
前記算出手段は、前記グリッドロケータの算出を、該グリッドロケータが前記種類設定手段により設定された種類のグリッドロケータであるものとして行うものであることを特徴とする請求項1に記載意の受信装置。
【請求項3】
前記グリッド設定手段は、前記グリッドロケータの設定を受け入れるに際し、ワイルドカードの使用を許容するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記記憶手段により記憶された各ビーコンが有する情報を表示する表示手段を備え、
前記グリッド設定手段は、複数のグリッドロケータの設定を受け入れるに際し、各グリッドロケータについての優先順位の設定を併せて受け入れるものであり、
前記表示手段は、各ビーコンの情報を表示するに際し、各ビーコンに対応する、前記グリッド設定手段により設定を受け入れたグリッドロケータの優先順位が高いほど、そのビーコンの情報を優先的に又は上位の位置に表示するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1〜4のいずれかの受信装置におけるグリッド設定手段、判定手段、及び記憶手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
ビーコンを受信する受信工程、
1又は複数のグリッドロケータの設定を受け入れるグリッド設定工程、
前記受信工程により受信したビーコンに含まれる位置情報に対応するグリッドロケータと、前記グリッド設定工程により設定されたいずれかのグリッドロケータとが一致するか否かを判定する判定工程、及び
前記判定工程によりいずれかのグリッドロケータと一致すると判定されたグリッドロケータに対応するビーコンの情報のみを記憶する記憶工程を具備することを特徴とする受信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−278796(P2010−278796A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129796(P2009−129796)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】