説明

受変電設備

【課題】 ハウジングを密閉構造としても、遮断器の切り離しおよび負荷側の接地を容易に実現する。
【解決手段】 系統電源から負荷への電力供給を遮断する遮断器21と、その遮断器21を断接する断接機構部22と、遮断器21の断路時に負荷側を接地する接地機構部23とをハウジング24に収容した受変電設備において、遮断器21をハウジング24内部に固定配置し、断接機構部22を遮断器21の背後でその遮断器21に対して断接可能なようにスライド自在に配置すると共に、接地機構部23を断接機構部22の背後でその断接機構部22に対して接地可能なようにスライド自在に配置し、断接機構部22および接地機構部23の二本のスライド軸39,40をハウジング24前面から外部へ導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや工場などに設置され、遮断器、断路器、変流器、母線や導体などの各種エレメントをハウジングに収容したスイッチギヤなどの受変電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビルや工場などに設置される受変電設備には、系統電源から負荷への電力供給を遮断する遮断器(VCB)を収容したハウジングとその他の機器から構成されたスイッチギヤがある。この種のスイッチギヤは、図9に示すように、系統電源から負荷への電力供給を遮断する遮断器1と、その遮断器1を断接する断接機構部2とからなる主要部をハウジング3に収容した構造を具備する。
【0003】
遮断器1の背面には、系統側接触子4および負荷側接触子5が設けられている。この遮断器1は、台車6上に載置されてハウジング3の前後方向(図示左右方向)に移動可能となっている。一方、遮断器1の背後に配置された断接機構部2は、ハウジング3の底部に起立保持された支持フレーム7に系統側導体8および負荷側導体9が取り付けられている。系統側導体8は遮断器1の系統側接触子4と断接可能に配置され、また同様に、負荷側導体9は遮断器1の負荷側接触子5と断接可能に配置されている。この系統側導体8には系統母線(図示せず)が接続されており、負荷側導体9には各種電気設備からなる負荷(図示せず)が接続されている。
【0004】
図9は、遮断器1を断接機構部2を介して系統電源と負荷との間に接続した状態、つまり、遮断器1の系統側接触子4と断接機構部2の系統側導体8とを電気的に接続すると共に、遮断器1の負荷側接触子5と断接機構部2の負荷側導体9とを電気的に接続した状態を示す。ここで、遮断器1を含む他の電気設備の点検あるいは交換時には、遮断器自体をオフするだけでなく、系統電源と負荷との間を確実に遮断するため、断接機構部2から遮断器1を切り離して断路状態にする必要がある。
【0005】
そこで、図9に示すように先端部が屈曲したクランク棒10を利用することにより、遮断器1を断接機構部2から切り離す(例えば、特許文献1参照)。つまり、遮断器1の台車6に設けられた枠状の係止部11にクランク棒10の屈曲部分を挿通させた上で、その先端部を支点としてクランク棒10を下方へ回動させることにより、「接続位置」にある遮断器1をハウジング3の前方開口部から「断路位置」まで引き出す(図10参照)。このようにして遮断器1を台車6ごと「接続位置」から「断路位置」まで移動させることにより、断接機構部2の系統側導体8から遮断器1の系統側接触子4を引き抜くと共に、断接機構部2の負荷側導体9から遮断器1の負荷側接触子5を引き抜く。これによって、遮断器1を系統電源と負荷との間から分離する。
【0006】
この遮断器1を含む他の電気設備の点検あるいは交換時には、一般的に負荷側を接地するようにしている。この負荷側の接地は、アースフック治具12を利用することにより人手で行われる。このアースフック治具12は、絶縁棒13の先端に導電性クリップ14が設けられ、その導電性クリップ14から延びる導電線15を大地に接続したものである。このアースフック治具12を利用して負荷側を接地するに際しては、作業者が絶縁棒13を把持した状態でハウジング3の後方開口部から挿入し、絶縁棒13の先端の導電性クリップ14を断接機構部2の負荷側導体9に接続する。このようにして、断接機構部2の負荷側導体9がアースフック治具12の導電性クリップ14および導電線15を介して接地される。
【0007】
なお、遮断器1を含む他の電気設備の点検あるいは交換が完了した後は、アースフック治具12を断接機構部2の負荷側導体9から取り外した上で、クランク棒10を上方へ回動させることにより、遮断器1を「断路位置」から「接続位置」へ移動させ、遮断器1の系統側接触子4を断接機構部2の系統側導体8に差し込むと共に、遮断器1の負荷側接触子5を断接機構部2の負荷側導体9に差し込む。このようにして、遮断器1の系統側および負荷側接触子4,5と断接機構部2の系統側および負荷側導体8,9とを電気的に接続することにより、遮断器1を接続状態に復帰させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−341813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述した従来のスイッチギヤでは、遮断器1を含む他の電気設備の点検あるいは交換時、ハウジング3に対して前後方向に可動配置された遮断器1をハウジング3の前方へ引き出す必要があるため、ハウジング3はその前方が開放した構造を備えている。また、負荷側の接地に際してアースフック治具10をハウジング3の後方から断接機構部2に接続する必要があるため、ハウジング3はその後方も開放した構造を備えている。
【0010】
しかしながら、前述したスイッチギヤは屋外に設置される場合もある。その場合、粉塵や雨水などの異物がハウジング3内に侵入することにより、接触不良や腐食が発生し易くなり、メンテナンスに手間がかかることになる。そのため、粉塵や雨水などの異物が侵入しないようにハウジング3を密閉構造とすることが要望されている。このハウジング3を密閉構造とした場合、遮断器1を含む他の電気設備の点検あるいは交換時、外部からの操作により遮断器1を断接機構部2から切り離すことが困難である。また、負荷側の接地をアースフック治具10で行うことも困難である。
【0011】
そこで、本発明は前述した課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ハウジングを密閉構造としても、遮断器の切り離しおよび負荷側の接地を容易に実現し得る受変電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、系統電源から負荷への電力供給を遮断する遮断器と、その遮断器を断接する断接機構部と、遮断器の断路時に負荷側を接地する接地機構部とをハウジングに収容した受変電設備において、遮断器をハウジング内部に固定配置し、断接機構部を遮断器の背後でその遮断器に対して断接可能なようにスライド自在に配置すると共に、接地機構部を断接機構部の背後でその断接機構部に対して接地可能なようにスライド自在に配置し、断接機構部および接地機構部の二本のスライド軸をハウジング前面から外部へ導出したことを特徴とする。
【0013】
本発明では、断接機構部のスライド軸をハウジング前面から手前に引き出すことにより、ハウジング内部に固定配置された遮断器に対して断接機構部を近接させて遮断器と断接機構部とを電気的に接続する。この遮断器を系統電源と負荷との間に接続した状態では、接地機構部のスライド軸をハウジング前面側へ押し込むことにより、断接機構部に対して接地機構部を離隔させて負荷側を非接地状態とする。
【0014】
一方、遮断器を含む他の電気設備の点検あるいは交換時には、断接機構部のスライド軸をハウジング前面側へ押し込むことにより、遮断器から断接機構部を離隔させて遮断器と断接機構部とを電気的に遮断する。この遮断器の断路状態では、接地機構部のスライド軸をハウジング前面から手前に引き出すことにより、断接機構部に対して接地機構部を近接させて断接機構部と接地機構部とを電気的に接続して負荷側を接地する。このような構造とすることにより、ハウジング外部からのスライド軸の操作により遮断器の切り離しおよび負荷側の接地を容易に行うことができ、ハウジングの密閉構造化が可能となる。
【0015】
本発明において、断接機構部による遮断器の断路時のみに接地機構部により負荷を接地可能とするインターロック機構部を、断接機構部および接地機構部のスライド軸とハウジングとの間に設けた構造が望ましい。このようにすれば、断接機構部による遮断器の断路時のみに接地機構部により負荷側を接地するために、断接機構部および接地機構部のスライド軸を操作する上で、そのスライド軸の誤操作および短絡事故の発生を未然に防止することができて安全性の向上が図れる。
【0016】
本発明におけるインターロック機構部は、断接機構部による遮断器の断路時に断接機構部のスライド軸に設けられた孔に嵌入する第一のロックピンと、接地機構部による負荷側の接地時に接地機構部のスライド軸に設けられた孔に嵌入する第二のロックピンとを、ハウジング側に設けた構造が望ましい。このようにすれば、遮断器を含む他の電気設備の点検あるいは交換に際して、第一のロックピンを断接機構部のスライド軸の孔に嵌入させることにより断接機構部による遮断器の断路状態を維持することができる。この時、第二のロックピンを接地機構部のスライド軸の孔に嵌入させることにより、接地機構部による負荷側の接地状態を維持することができる。このような簡単な構造により、スライド軸の誤操作および短絡事故の発生を確実に防止できる。
【0017】
本発明におけるハウジングを密閉筐体で構成した場合、スライド軸は、密閉筐体前面にOリングを介して固着した取り付け板により気密的に封止された状態で密閉筐体前面に対して突出退入自在に支持されている構造が望ましい。このようにすれば、ハウジング外部からのスライド軸の操作を可能とした上でハウジングの気密性をOリングで確保することが容易となる。
【0018】
本発明において、遮断器の前面に設けられた入切用押しボタンスイッチと対応する密閉筐体の前面部位に、押え板によりOリングを介して気密的に封止された状態で押圧部材を押しボタンスイッチに当接可能に取り付けた構造が望ましい。このようにすれば、ハウジング外部から遮断器の入切用押しボタンスイッチの操作を可能とした上でハウジングの気密性をOリングで確保することが容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、遮断器をハウジング内部に固定配置し、断接機構部を遮断器の背後でその遮断器に対して断接可能なようにスライド自在に配置すると共に、接地機構部を断接機構部の背後でその断接機構部に対して接地可能なようにスライド自在に配置し、断接機構部および接地機構部の二本のスライド軸をハウジング前面から外部へ導出したことにより、ハウジング外部からのスライド軸の操作により遮断器の切り離しおよび負荷側の接地を容易に行うことができ、ハウジングの密閉構造化が可能となる。その結果、粉塵や雨水等に晒される悪環境でも受変電設備を設置することができ、信頼性の高い長寿命の受変電設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態で、(A)は密閉形スイッチギヤの主要な構成を示す断面図、(B)は遮断器の接続状態でのインターロック機構部およびスライド軸を示す平面図である。
【図2】(A)は遮断器の系統側および負荷側接触子から断接機構部の系統側および負荷側導体を引き抜いた後の状態を示す断面図、(B)は(A)の状態でのインターロック機構部およびスライド軸を示す平面図である。
【図3】(A)は遮断器の断路状態を示す断面図、(B)は(A)の状態でのインターロック機構部およびスライド軸を示す平面図である。
【図4】(A)は接地機構部の接地接触子を断接機構部の接地導体に差し込む前の状態を示す断面図、(B)は(A)の状態でのインターロック機構部およびスライド軸を示す平面図である。
【図5】(A)は接地機構部の接地接触子を断接機構部の接地導体に差し込んだ後の状態を示す断面図、(B)は(A)の状態でのインターロック機構部およびスライド軸を示す平面図である。
【図6】図1のX部の拡大断面図である。
【図7】図1の密閉形スイッチギヤのハウジングを示す左側面図である。
【図8】図1のY部の拡大断面図で、(A)は押圧部材を押し込んだ状態を示す断面図、(B)は押圧部材の押し込み力を解除した状態を示す断面図である。
【図9】従来のスイッチギヤで、遮断器の接続状態を示す断面図である。
【図10】従来のスイッチギヤで、遮断器の断路状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る受変電設備の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、ビルや工場などに設置され、系統電源から負荷への電力供給を遮断する遮断器(VCB)をハウジングに収容したスイッチギヤを例示するが、スイッチギヤ以外の他の受変電設備にも適用可能である。
【0022】
この実施形態におけるスイッチギヤは、図1(A)に示すように、系統電源から負荷への電力供給を遮断する遮断器(VCB)21と、その遮断器21を断接する断接機構部22と、遮断器21の断路時に負荷側を接地する接地機構部23とからなる主要部を密閉形ハウジング24に収容した構造を具備する。
【0023】
遮断器21は、ハウジング24の内部に固定配置され、その背面に系統側接触子25および負荷側接触子26が設けられている。この遮断器21が収容されたハウジング24は密閉筐体で構成されているが、遮断器21の点検あるいは交換が可能なように前面開口部27が設けられ、その前面開口部27を気密的に閉塞するカバー28が着脱自在に取り付けられている(図7参照)。
【0024】
また、断接機構部22は、遮断器21の背後でその遮断器21に対して断接可能なように台車29によりスライド自在に配置されている。この断接機構部22は、台車29上に起立保持された絶縁性の支持フレーム30に系統側導体31および負荷側導体32が取り付けられている。系統側導体31は遮断器21の系統側接触子25と断接可能に配置され、また同様に、負荷側導体32は遮断器21の負荷側接触子26と断接可能に配置されている。この系統側導体31には、断接機構部22がスライド可能なように可撓性導体33を介して系統母線(図示せず)が接続されており、負荷側導体32には、断接機構部22がスライド可能なように可撓性導体34を介して各種電気設備からなる負荷(図示せず)が接続されている。
【0025】
さらに、接地機構部23は、断接機構部22の背後でその断接機構部22に対して断接可能なように台車35によりスライド自在に配置されている。この接地機構部23は、台車35上に起立保持された絶縁性の支持フレーム36に接地接触子37が設けられている。これに対して、前述の断接機構部22の負荷側導体32には、接地機構部23の接地接触子37と断接可能な接地導体38が設けられている。なお、この台車35上に設けられた接地接触子37は、大地と電気的に接続されている。
【0026】
前述した断接機構部22および接地機構部23は、台車29,35の前端部からハウジング24の前方に向けて延びるスライド軸39,40を備えている。この断接機構部22および接地機構部23の二本のスライド軸39,40は、スライドブッシュ41で支持された状態でハウジング24の前面底部から水平方向で平行して外部へ導出される(図7参照)。スライド軸39,40のそれぞれは、図1(B)および図6に示すように、ハウジング24の前面底部に形成された孔に挿通され、Oリング42を介してボルト43で固着した取り付け板44により気密的に封止された状態でハウジング24の前面底部に対して突出退入自在に支持されている。
【0027】
このような構造により、ハウジング24の外部からのスライド軸39,40の操作を可能とした上でハウジング24の気密性をOリング42で確保している。また、このような構造でスライド軸39,40をハウジング24の外部へ導出したことにより、ハウジング24の外部からのスライド軸39,40の操作により遮断器21の切り離しおよび負荷側の接地を容易に行うことができ、ハウジング24の密閉構造化が可能となる。
【0028】
このスイッチギヤでは、図1(B)に示すように、断接機構部22による遮断器21の断路時のみに接地機構部23により負荷側を接地可能とするインターロック機構部46を、断接機構部22および接地機構部23のスライド軸39,40とハウジング24との間に設けている。
【0029】
このインターロック機構部46は、図1(B)に示すように、ハウジング24の前面底部で二本のスライド軸39,40間に位置する部位から前方へスライド軸39,40と平行して延びる支持ロッド47を備え、その支持ロッド47の基端部および先端部の二箇所に、支持ロッド47が延びる方向と直交するように第一のロックピン48および第二のロックピン49が水平方向に貫挿されている。第一のロックピン48および第二のロックピン49は、支持ロッド47との間に張設されたばね50,51により接地機構部23のスライド軸40側へ弾性力が付勢されている。
【0030】
なお、断接機構部22のスライド軸39の先端部には、第一のロックピン48が嵌入可能な孔52が軸線と直交するように水平方向に形成されている。また、接地機構部23のスライド軸40の先端部には、第一のロックピン48あるいは第二のロックピン49が嵌入可能な孔53が軸線と直交するように水平方向に形成されている。さらに、断接機構部22のスライド軸39および接地機構部23のスライド軸40の最先端部には、後述するクランク棒61を挿通させるための孔54,55が垂直方向に貫通形成されている。これに対して、ハウジング24が載置されたベース56上の二箇所(「接続位置」と「接地位置」)に、クランク棒61を挿入して支点として回動させるための凹部57,58が形成された支持台59,60が設置されている。
【0031】
また、このスイッチギヤでは、ハウジング24を密閉筐体で構成していることから、図1および図8(A)(B)に示すように、遮断器21の前面に設けられた入切用押しボタンスイッチ62と対応するハウジング24の前面部位であるカバー28に、押え板63によりOリング64を介して気密的に封止された状態で押圧部材65を押しボタンスイッチ62に当接可能に取り付けた構造を具備する。この押圧部材65は、ハウジング24のカバー28に貫通されたロッド部66と、そのロッド部66のハウジング内部側端部に設けられた大径部67と、ロッド部66のハウジング外部側端部に設けられたフランジ部68とで構成され、Oリング64の押え板63とフランジ部68との間にばね69が介挿されている。
【0032】
図8(A)に示すように、この押圧部材65のフランジ部68をばね69の弾性力に抗して押し込むことにより、その押圧部材65の先端部を遮断器21の入切用押しボタンスイッチ62に当接させることで遮断器21をオンオフすることができる。なお、図8(B)に示すように、押圧部材65の押し込み力を解除すれば、ばね69の弾性力により押圧部材65の大径部67がカバー28の内面に係止されることで初期状態に自動復帰する。このような構造により、ハウジング24の外部から遮断器21の入切用押しボタンスイッチ62の操作を可能とした上でハウジング24の気密性をOリング64で確保している。
【0033】
図1は、遮断器21を断接機構部22を介して系統電源と負荷との間に接続した状態、つまり、遮断器21の系統側接触子25と断接機構部22の系統側導体31とを電気的に接続すると共に、遮断器21の負荷側接触子26と断接機構部22の負荷側導体32とを電気的に接続した状態を示す。この遮断器21の接続状態では、断接機構部22の系統側導体31および負荷側導体32が「接続位置」にある。この時、接地機構部23の接地接触子37は、「接地解除位置」にあって負荷側が非接地状態である。
【0034】
インターロック機構部46では、図1(B)に示すように、断接機構部22のスライド軸39はその孔52が第二のロックピン49と並ぶ「接続位置」にある。一方、接地機構部23のスライド軸40はその孔53に第一のロックピン48が挿入された「接地解除位置」にある。この第一のロックピン48はばね50の弾性力によりスライド軸40の孔53に挿入された状態を保持する。この第一のロックピン48により接地機構部23のスライド軸40を「接地解除位置」に維持できることから、遮断器21の接続状態で負荷側を接地するようなスライド軸40の誤操作および短絡事故の発生を防止することができるので安全性の向上が図れる。
【0035】
遮断器21を含む他の電気設備の点検あるいは交換時には、遮断器21自体をオフするだけでなく、系統電源と負荷との間を確実に遮断するため、遮断器21から断接機構部22を切り離して断路状態にする。また、この遮断器21を断路状態にすると共に負荷側を接地状態にする。遮断器21を接続状態から断路状態に移行させ、負荷側を非接地状態から接地状態に移行させる操作は以下のとおりである。なお、この操作に先立って、ハウジング24のカバー28にある押圧部材65のフランジ部68をばね69の弾性力に抗して押し込むことにより、その押圧部材65の先端部を遮断器21の入切用押しボタンスイッチ62に当接させることで遮断器21をオフする〔図8(A)(B)参照〕。
【0036】
このように遮断器21自体をオフした上で、直状のクランク棒61を利用することにより遮断器21から断接機構部22を切り離す。つまり、図2(A)(B)に示すように、クランク棒61の先端を断接機構部22のスライド軸39の孔54に挿通させて「接続位置」にある支持台59の凹部57に差し込む〔図2(A)破線参照〕。そして、クランク棒61の先端を支点としてそのクランク棒61をハウジング側へ回動させることにより〔図2(A)実線参照〕、遮断器21の系統側接触子25から断接機構部22の系統側導体31を引き抜くと共に遮断器21の負荷側接触子26から断接機構部22の負荷側導体32を引き抜く。
【0037】
このようにして遮断器21の系統側および負荷側接触子25,26から断接機構部22の系統側および負荷側導体31,32を引き抜いた後は、断接機構部22が台車29上に載置されていることから容易に移動可能であるため、図3(A)(B)に示すように、断接機構部22のスライド軸39を手でハウジング側に押し込むことにより、断接機構部22を「接続位置」から「断路位置」まで移動させる。これによって、遮断器21を系統電源と負荷との間から分離する。このようなスライド軸39の操作により断接機構部22を遮断器21から引き離して「断路位置」に配置した上で、断接機構部22の接地導体38と接地機構部23の接地接触子37とを電気的に接続することにより負荷側を接地する。この負荷側の接地操作は次のとおりである。
【0038】
まず、図4(A)(B)に示すように、インターロック機構部46の第一のロックピン48を、ばね50の弾性力に抗して支持ロッド47に押し込むことにより接地機構部23のスライド軸40の孔53から抜脱すると共に断接機構部22のスライド軸39の孔52に挿入する。このスライド軸40のロック解除により、接地機構部23が移動可能となるので「接地解除位置」にあるスライド軸40を手でハウジング24の前方へ引き出し、そのスライド軸40の孔53を第二のロックピン49の手前に配置する。ここで、断接機構部22のスライド軸39の孔52に挿入された第一のロックピン48は、引き出された接地機構部23のスライド軸40に当接して規制されるので、第一のロックピン48がばね50の弾性力に抗して断接機構部22のスライド軸39の孔52に挿入される。
【0039】
その上で、図5(A)(B)に示すように、クランク棒61の先端を接地機構部23のスライド軸40の孔55に挿通させて「接地位置」にある支持台60の凹部58に差し込む〔図5(A)破線参照〕。そして、クランク棒61の先端を支点としてそのクランク棒61をハウジングと反対側へ回動させることにより〔図5(A)実線参照〕、断接機構部22の接地導体38に接地機構部23の接地接触子37を差し込む。このようにして、接地機構部23を「接地解除位置」から「接地位置」まで移動させることにより、断接機構部22の接地導体38と接地機構部23の接地接触子37とを電気的に接続することで負荷側を接地する。
【0040】
インターロック機構部46では、第二のロックピン49をばね51の弾性力に抗して支持ロッド47に押し込んでおけば、スライド軸40が「接地位置」に達した時点で、図5(B)に示すように、第二のロックピン49がばね51の弾性復元力によりスライド軸40の孔53に自動的に挿入される。この時、第一のロックピン48は接地機構部23のスライド軸40に当接していることによりばね50の弾性力に抗して断接機構部22のスライド軸39の孔52に挿入された状態を維持していることから、この第一のロックピン48により断接機構部22のスライド軸39を「断路位置」にロックする。これにより、負荷側の接地状態で遮断器21を接続するようなスライド軸39の誤操作および短絡事故の発生を防止することができるので安全性の向上が図れる。
【0041】
遮断器21を含む他の電気設備の点検あるいは交換が完了した後は、インターロック機構部46の第二のロックピン49をばね51の弾性力に抗して支持ロッド47に押し込むことにより接地機構部23のスライド軸40の孔53から抜脱する。このスライド軸40のロック解除により、接地機構部23が移動可能となるので接地位置にあるスライド軸40の孔55にクランク棒61の先端を挿通させてその「接地位置」にある支持台60の凹部58に差し込む〔図5(A)実線参照〕。そして、クランク棒61の先端を支点としてそのクランク棒61をハウジング側へ回動させることにより〔図5(A)破線参照〕、断接機構部22の接地導体38から接地機構部23の接地接触子37を引き抜く〔図4(A)参照〕。
【0042】
このようにして断接機構部22の接地導体38から接地機構部23の接地接触子37を引き抜いた後は、接地機構部23が台車35上に載置されていることから容易に移動可能であるため、接地機構部23のスライド軸40を手でハウジング24に押し込むことにより、接地機構部23の接地接触子37を「接地位置」から「接地解除位置」まで移動させる。これによって、負荷側を非接地状態となる。インターロック機構部46では、接地機構部23のスライド軸40の孔53が「接地解除位置」に達すると、そのスライド軸40に当接していた第一のロックピン48がばね50の弾性復元力により断接機構部22のスライド軸39の孔52から抜脱して接地機構部23のスライド軸40の孔53に自動的に挿入される〔図3(B)参照〕。このスライド軸40のロックにより、接地機構部23を「接地解除位置」に保持する。
【0043】
このようにして第一のロックピン48が断接機構部22のスライド軸39の孔52から抜脱されると、その第一のロックピン48によるロック状態が解除されて断接機構部22が移動可能となるので「断路位置」にあるスライド軸39を手でハウジング24の前方へ引き出す。一方、第一のロックピン48がばね50の弾性力により接地機構部23のスライド軸40の孔53に挿入されているので、そのスライド軸40はロック状態を維持する〔図2(B)参照〕。
【0044】
その上で、クランク棒61の先端を断接機構部22のスライド軸39の孔54に挿通させて「接続位置」にある支持台59の凹部57に差し込む〔図2(A)実線参照〕。そして、クランク棒61の先端を支点としてそのクランク棒61をハウジングと反対側へ回動させることにより〔図2(A)破線参照〕、遮断器21の系統側接触子25に断接機構部22の系統側導体31を差し込むと共に遮断器21の負荷側接触子26に断接機構部22の負荷側導体32を差し込む。このようにして、断接機構部22が「断路位置」から「接続位置」まで移動させることによって、遮断器21の系統側および負荷側接触子25,26と断接機構部22の系統側および負荷側導体31,32とを電気的に接続する。これにより、遮断器21を系統電源と負荷との間に接続した状態に復帰させる。
【0045】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0046】
21 遮断器
22 断接機構部
23 接地機構部
24 ハウジング
39,40 スライド軸
42 Oリング
45 取り付け板
46 インターロック機構部
48 第一のロックピン
49 第二のロックピン
62 入切用押しボタンスイッチ
63 押え板
64 Oリング
65 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から負荷への電力供給を遮断する遮断器と、前記遮断器を断接する断接機構部と、前記遮断器の断路時に負荷側を接地する接地機構部とをハウジングに収容した受変電設備において、前記遮断器をハウジング内部に固定配置し、前記断接機構部を遮断器の背後でその遮断器に対して断接可能なようにスライド自在に配置すると共に、前記接地機構部を断接機構部の背後でその断接機構部に対して接地可能なようにスライド自在に配置し、前記断接機構部および接地機構部の二本のスライド軸をハウジング前面から外部へ導出したことを特徴とする受変電設備。
【請求項2】
前記断接機構部による遮断器の断路時のみに前記接地機構部により負荷側を接地可能とするインターロック機構部を、断接機構部および接地機構部の前記スライド軸とハウジングとの間に設けた請求項1に記載の受変電設備。
【請求項3】
前記インターロック機構部は、断接機構部による遮断器の断路時に前記断接機構部のスライド軸に設けられた孔に嵌入する第一のロックピンと、接地機構部による負荷側の接地時に前記接地機構部のスライド軸に設けられた孔に嵌入する第二のロックピンとを、ハウジング側に設けた請求項2に記載の受変電設備。
【請求項4】
前記ハウジングは密閉筐体で構成され、前記スライド軸は、密閉筐体前面にOリングを介して固着した取り付け板により気密的に封止された状態で密閉筐体前面に対して突出退入自在に支持されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の受変電設備。
【請求項5】
前記遮断器の前面に設けられた入切用押しボタンスイッチと対応する密閉筐体の前面部位に、押え板によりOリングを介して気密的に封止された状態で押圧部材を前記押しボタンスイッチに当接可能に取り付けた請求項4に記載の受変電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−19650(P2012−19650A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156597(P2010−156597)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】