説明

可動ベーンの駆動機構

【課題】省スペース化することができ、かつ軽量化することができる可動ベーンの駆動機構を提供する。
【解決手段】複数のベーン2が配置された支持部材3と、複数のベーン2にそれぞれ設けられ支持部材3に互いに離間して回動可能に軸支された複数のスピンドル5とを備え、複数のスピンドル5を同期して回動させ複数のベーン2を可動させる可動ベーンの駆動機構1において、複数のスピンドル5のうち少なくとも1つを、アクチュエータ6の駆動によって回動させ、複数のスピンドル5を、隣り合うスピンドル5,5同士を互いに線状部材7を介して連結させ、アクチュエータ6の駆動によって線状部材7を介して同期して回動した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジンに適用される可動ベーンの駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のベーンを同期して可動させる可動ベーンの駆動機構としては、複数のベーンが配置されたケーシングと、複数のベーンにそれぞれ固定されケーシングに回動可能に支持されたスピンドルと、各スピンドルに固定されたレバーアームと、スピンドルの配列位置に隣接してケーシングの外周に配置されレバーアームがそれぞれ回動可能に連結されて周方向に駆動されることにより複数のベーンを同期して可動させる同期リングとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の可動ベーンの駆動機構は、レバーアームが剛性の高い繊維強化プラスチックによって構成されており、従来の金属製のレバーアームに比べて重量が軽減され、部品点数を増やさずに重量を軽減できると共に、部品寿命を長期化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−336698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような可動ベーンの駆動機構では、レバーアームの重量を軽減することによって機構全体の重量を軽減させているが、複数のベーンを同期して可動させるために同期リングを採用している。この同期リングは、複数のベーンに連結されたレバーアームが全て連結されるものであり、そのサイズは、複数のベーンが配置されたケーシングよりも大きく設定されている。
【0006】
このため、同期リングを適用した機構では、同期リングが回動できるスペースを確保する必要があり、機構全体の配置スペースが増大していた。また、同期リングは、そのサイズが大きく高重量となるため、同期リング自体を軽量化することが考えられるが、同期リングを軽量化してしまうと、自身の回動によって偏心を引き起こす可能性があった。
【0007】
そこで、この発明は、省スペース化することができ、かつ軽量化することができる可動ベーンの駆動機構の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、複数のベーンが配置された支持部材と、前記複数のベーンにそれぞれ設けられ前記支持部材に互いに離間して回動可能に軸支された複数のスピンドルとを備え、前記複数のスピンドルを同期して回動させ前記複数のベーンを可動させる可動ベーンの駆動機構であって、前記複数のスピンドルのうち少なくとも1つは、アクチュエータの駆動によって回動され、前記複数のスピンドルは、隣り合う前記スピンドル同士が互いに線状部材を介して連結されており、前記アクチュエータの駆動によって前記線状部材を介して同期して回動されることを特徴とする。なお、ここでいうアクチュエータとは、モータ等も含む意で用いている。
【0009】
この可動ベーンの駆動機構では、複数のスピンドルのうち隣り合うスピンドル同士が互いに線状部材を介して連結されているので、複数のベーンを同期して可動させるためのリングやレバーを廃止して、リングとレバーに必要なスペースを削減することができ、省スペース化することができる。加えて、部品点数を削減することができ、軽量化することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の可動ベーンの駆動機構であって、前記隣り合うスピンドル間には、前記線状部材と当接して前記線状部材に引張力を付与するスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0011】
この可動ベーンの駆動機構では、隣り合うスピンドル間に線状部材と当接して線状部材に引張力を付与するスペーサが設けられているので、アクチュエータの駆動によって回動されるスピンドルの回動を全てのスピンドルに確実に伝達することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の可動ベーンの駆動機構であって、前記複数のスピンドルは、少なくとも3つ以上設けられ、前記線状部材は、前記少なくとも3つ以上のスピンドルに跨って連続する一部材で形成されていることを特徴とする。
【0013】
この可動ベーンの駆動機構では、線状部材が少なくとも3つ以上のスピンドルに跨って連続する一部材で形成されているので、1本のベルトなどの部材で複数のスピンドルを連結することができ、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、省スペース化することができ、かつ軽量化することができる可動ベーンの駆動機構を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構の斜視図である。
【図2】(a)本発明の実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構におけるスピンドルの初期位置の模式図である。(b)本発明の実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構におけるスピンドルが時計回り方向に回動したときの模式図である。(c)本発明の実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構におけるスピンドルが反時計回り方向に回動したときの模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構の線状部材としてベルトを適用したときの斜視図である。
【図4】図1に示す可動ベーンの駆動機構のアクチュエータをモータ式のアクチュエータとしたときの斜視図である。
【図5】図3に示す可動ベーンの駆動機構のアクチュエータをモータ式のアクチュエータとしたときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図5を用いて本発明の実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構について説明する。
【0017】
本実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構1は、複数のベーン2が配置された支持部材3と、複数のベーン2にそれぞれ設けられ支持部材3に互いに離間して回動可能に軸支された複数のスピンドル5とを備え、複数のスピンドル5を同期して回動させ複数のベーン2を可動させる。
【0018】
そして、複数のスピンドル5のうち少なくとも1つは、アクチュエータ6の駆動によって回動され、複数のスピンドル5は、隣り合うスピンドル5,5同士が互いに線状部材としてのワイヤ7を介して連結されており、アクチュエータ6の駆動によってワイヤ7を介して同期して回動される。
【0019】
また、隣り合うスピンドル5,5間には、ワイヤ7と当接してワイヤ7に引張力を付与するスペーサ9が設けられている。
【0020】
図1,図2に示すように、支持部材3は、環状に形成され、内周側に複数のベーン2が周方向等間隔に配置されている。この複数のベーン2は、支持部材3の外周側に突出された複数のスピンドル5を介して支持部材3に回動可能に支持されている。
【0021】
複数のスピンドル5は、複数のベーン2にそれぞれ円柱状に一体的に設けられ、支持部材3の外周側に周方向等間隔に互いに離間して支持部材3に回動可能に軸支されている。この複数のスピンドル5のうち少なくとも1つのスピンドル5には、従動ギヤ11が設けられている。
【0022】
従動ギヤ11は、支持部材3の外周に配置されたアクチュエータ6によって駆動される駆動ギヤ13と噛み合っている。この従動ギヤ11と駆動ギヤ13との噛み合いにより、1つのスピンドル5が回動され、複数のワイヤ7を介して他のスピンドル5が同期して回動される。なお、支持部材3の周方向に位置をずらした複数箇所のスピンドル5にそれぞれ従動ギヤ11を設け、各従動ギヤ11に、個別のアクチュエータによってそれぞれ駆動される駆動ギヤ13を噛み合わせてもよい。この場合、従動ギヤ11は、例えば、支持部材3の中心を挟んで対向する箇所(支持部材3の周方向に180度位置をずらした箇所)の各スピンドル5に設けることとしてもよい。また、この場合、各アクチュエータは同期して駆動するものとする。
【0023】
複数のワイヤ7は、金属材料からなり、隣り合うスピンドル5,5間にそれぞれ端部が固定され、隣り合うスピンドル5,5同士を互いに連結させている。なお、ワイヤ7のスピンドル5に対する固定方法としては、例えば、スピンドル5を径方向に貫通する孔部を設け、この孔部にワイヤ7を通した後、スピンドル5の孔部を覆うキャップをスピンドル5の先端に被せてワイヤ7の端部をカシメる方法が好ましいが、ワイヤ7の端部を直接スピンドル5に対して圧入や溶接などの固定手段によって固定してもよく、その方法は種々の形態を採ることができる。このワイヤ7には、スペーサ9によって引張力が付与される。
【0024】
スペーサ9は、支持部材3の外周側において、隣り合うスピンドル5,5間にそれぞれ支持部材3と一体的に設けられ、ワイヤ7と当接してワイヤ7に引張力を付与している。このスペーサ9によって引張力が付与された複数のワイヤ7は、アクチュエータ6によって駆動されるスピンドル5の回動を他のスピンドル5に対して確実に伝達させることができる。
【0025】
このように構成された可動ベーンの駆動機構1は、隣り合うスピンドル5,5が、図2(a)に示す初期位置から時計回り方向に回動する場合はワイヤ7とスペーサ9とによって図2(b)に示すように回動され、反時計回り方向に回動する場合はワイヤ7とスペーサ9とによって図2(c)に示すように回動される。このような回動が隣り合う全てのスピンドル5,5間で行われることにより、全てのスピンドル5が同期して回動され、複数のベーン2を同期して回動させることができる。
【0026】
このような可動ベーンの駆動機構1では、複数のスピンドル5のうち隣り合うスピンドル5,5同士が互いにワイヤ7を介して連結されているので、複数のベーン2を同期して可動させるためのリングやレバーを廃止して、リングとレバーに必要なスペースを削減することができ、省スペース化することができる。加えて、部品点数を削減することができ、軽量化することができる。
【0027】
また、リングとレバーで構成された機構では、例えば、リングが老朽化した場合にリングを交換して全てのレバーを新しいリングに組付けなければならなかったが、可動ベーンの駆動機構1では、複数のスピンドル5の隣り合うスピンドル5,5間が複数のワイヤ7によって連結されているので、1つのワイヤ7が老朽化した場合にその部分の部品交換を行えばよく、メンテナンスに掛かるコストを低コスト化することができる。
【0028】
さらに、隣り合うスピンドル5,5間にワイヤ7と当接してワイヤ7に引張力を付与するスペーサ9が設けられているので、アクチュエータ6の駆動によって回動されるスピンドル5の回動を全てのスピンドル5に確実に伝達することができる。
【0029】
なお、本発明の実施の形態に係る可動ベーンの駆動機構1では、隣り合うスピンドル5,5間をワイヤ7によって連結しているが、図3に示す可動ベーンの駆動機構101のように、線状部材としてのベルト103としてもよい。このベルト103は、複数の線状部材が連続する一部材で形成された部材として機能している。このベルト103の表面は、スピンドル5と当接したときの摩擦力を強化するようにされており、ベルト103を複数のスピンドル5に当接させることによって、ベルト103を介して複数のスピンドル5に動力を伝達することができる。このため、スピンドル5に対して上記のような固定手段を用いてベルト103を固定する必要がない。なお、ベルト103による複数のスピンドル5への動力の伝達は、摩擦の他に、歯車と歯の噛み合いで行うように構成してもよい。
【0030】
また、アクチュエータ6を、図4,図5に示すように、モータ式のアクチュエータ105とすることもできる。このアクチュエータ105では、アクチュエータの構造を簡素化することができ、さらに省スペース化を図ることができる。このとき、アクチュエータ105のモータは電動モータでもよいし、油圧モータでもよい。
【0031】
さらに、支持部材を環状としているが、これに限らず、平らな平面を有する支持部材の平面上に軸支された複数のスピンドル(ベーン)の隣り合うスピンドル間を線状部材によって連結し、複数のベーンを同期して回動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…可動ベーンの駆動機構
2…ベーン
3…支持部材
5…スピンドル
6…アクチュエータ
7,103…ワイヤ,ベルト(線状部材)
9…スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベーンが配置された支持部材と、前記複数のベーンにそれぞれ設けられ前記支持部材に互いに離間して回動可能に軸支された複数のスピンドルとを備え、前記複数のスピンドルを同期して回動させ前記複数のベーンを可動させる可動ベーンの駆動機構であって、
前記複数のスピンドルのうち少なくとも1つは、アクチュエータの駆動によって回動され、前記複数のスピンドルは、隣り合う前記スピンドル同士が互いに線状部材を介して連結されており、前記アクチュエータの駆動によって前記線状部材を介して同期して回動されることを特徴とする可動ベーンの駆動機構。
【請求項2】
請求項1記載の可動ベーンの駆動機構であって、
前記隣り合うスピンドル間には、前記線状部材と当接して前記線状部材に引張力を付与するスペーサが設けられていることを特徴とする可動ベーンの駆動機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の可動ベーンの駆動機構であって、
前記複数のスピンドルは、少なくとも3つ以上設けられ、前記線状部材は、前記少なくとも3つ以上のスピンドルに跨って連続する一部材で形成されていることを特徴とする可動ベーンの駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41825(P2012−41825A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181545(P2010−181545)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】