説明

可動式キッチンユニット

【課題】シンクに対する給排水設備を固定化した状態にして構造体全体を可動式に編成した可動式キッチンユニットを提供する。
【解決手段】キッチンユニット1を少なくともシンク構造体2と加熱調理構造体3から構成し、シンク構造体2は床6に台座7を固定し、床下から引き入れる排水管38をシンク36に直結し、また給水管40をシンク36に臨む水栓37に接続する。その一方、加熱調理構造体3は台座9にキャスター8を備え、前記シンク構造体2と連結アーム12を介して連結してシンク構造体2の周縁部に沿って移動自由にすると共に、上記連結アーム12を通して加熱調理器47の電源をシンク構造体2から引き入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式のキッチンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
水洗いのためのシンクや加熱調理のためのガス台、電磁加熱器等を備えた加熱調理設備、そして調理台等家庭における調理に要する設備を一連に備えた所謂キッチンユニットの多くはキッチンやダイニングルームにおいて床に固定されているのが普通である。
しかし、床に固定されたキッチンユニットは、これがキッチンの壁面に添って設置された場合も、カウンター形に壁面を離れて部屋の中に持ち出された場合も、安定的である反面、固定的であるがための利用勝手が悪くなることがある。
【0003】
この様なことから、キッチン内を自由に移動できたり、シンクや加熱調理器の向きを変えられるようにしてキッチンのレイアウトを使用勝手に合せて自由に選択できるようにした可動式のキッチンユニットが提案されている。例えば特許文献1ないし3がその例である。
【特許文献1】特開平10−85065号公報。
【特許文献2】実開平6−36435号公報。
【特許文献3】特開2007−61251号公報。
【0004】
特許文献1に記載の可動式キッチン機構は、調理台1、食卓テーブル2、収納棚3、流し台4の全てが下方に備えるキャスター輪11によってキッチンやダイニングルーム内をそれぞれ自由に移動できるものとなっていることから、使用勝手に合せて自由に配置替えして使用することが可能になっている。
【0005】
しかし、ここにおける問題は調理台1に設備する電子調理器に対する電源コードの引き込みであり、また流し台4に対する給水管、排水管の配置である。
文献中の説明では移動を可能にするため、電源コードやパイプ類はフレキシブルなものに構成するのである、とされているが、これらのものを調理台1や流し台4に対して如何に引き込み配置するかについては技術開示がされていない。
【0006】
特許文献2に記載のキッチンは、シンクキャビネット3、調理キャビネット4、レンジキャビネット7を一連に形成してシンクキャビネット3に設ける回転軸12を支点に旋回させることで、キャスタ11を使ってキッチンルーム1内を移動できるようにしたものである。
このキッチンユニットも、各キャビネットに備えるキャスタ11を使って移動できるものとしているが、移動するシンクキャビネット3において水回りの給排水管の処理をどの様にするかの技術的課題については具体的解決策が示されていない。
【0007】
特許文献3に記載のキッチンユニットは、上記各特許文献記載のキッチンユニットの問題点につき、これを改善したものとして提案されている。ここに提案されたキッチンユニットは、回転するカウンター部2に設けるシンク3の排水管10が床部15に対して固定的に設けられる排水用漏斗12に接続されてシンク3が回転することによって回転する排水管10が常に上記排水用漏斗12に臨むことによって水漏れすることなく排水できる設備が組み込まれている。
【0008】
従って、排水においては排水管10にフレキシブル管を使用することなく、回動しても流路断面が変形することのない硬質管材の使用が可能になったとされている。
しかし、ここにおける問題は、シンクの排水のためにシンク3を備えたカウンター部2は、その回転部分に床部15に固定される固定部8bとカウンター部2と共に回転する自転部8aとからなる自転支持部8を備えると共に、その内部に上記排水用漏斗12を組み入れる必要があり、更にはシンク3に接続する排水管10、給水管9の回動を許す空間を用意する等の処置を必要とし、設計的にも、またコスト的にも特別の配慮が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の可動式キッチンシステムにおける問題点に鑑み開発されたもので、移動の自由性を確保した上で、従来最も問題となっていたシンクに対する給排水設備を変更することなく設置できるようにした可動式キッチンシステムを提供しようとするものである。
【0010】
キッチンシステムを可動式にすることはキッチンルームやダイニングルームのレイアウトの固定化を回避し、使用勝手に合せた変化を楽しみ、便利に使用することができるが、シンクを始めとするキッチンの設備は給排水設備を除外して設計することはできない。従って、実際問題として可動式キッチンシステムを考える場合、これら建物に密着して設備される給排水設備、更には加熱調理のための熱源となる電源コードの配設等を無視して設計することは困難であり、この課題を解決することが先決となる。
【0011】
本発明は、キッチンシステムを構成する各部の構成体を区分して、固定的に設置するものと、可動的に設置するものとに分け、床に固定することによって給排水設備との接続を容易にして安定したキッチンシステムとすると同時に、移動を自由にすることによってキッチンルーム等における配置位置を変更し、新らたな空間を作って使用勝手、部屋の模様替え等を簡単に行えるようにした可動式キッチンシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、シンク及びシンクに対する給排水設備を備えたシンク構造体を床上に固定し、床下に配設する給排水管と上記給排水設備とを接続する一方、該シンク構造体には加熱調理器を設備する加熱調理構造体を併設して両構造体を連結アームで連結し、加熱調理構造体を下部に備える移動用キャスターによりシンク構造体の周囲に沿って移動自由にすると共に、前記アーム内には調理加熱器用の電源コード及び或いはガス管を配設して前記シンク構造体の床下に設備する電源、ガス管等と接続し、前記加熱調理器に熱源を供給するようにした可動式キッチンユニットを提供することにある。
【0013】
上記シンク構造体を床上に固定することにより、この構造体に設備するシンクに対して床下に配置する給水管、排水管とを直接接続し、給水を受けることができると同時に、排水管を通してそのまま下水道等に排水することができることになる。
その一方、このシンク構造体に併設される加熱調理構造体は、連結アームを介して連結され、シンク構造体の周りを自由に移動することができるため、この移動を通してシンク構造体との位置関係を変更することができ、これによってキッチンユニット全体の形状をキッチンルーム内部で変えることができることになる。
【0014】
このため、本発明キッチンユニットにおいては、シンク構造体が床に固定されているにも拘わらず、相互に組合う加熱調理構造体がこのシンク構造体の周りを移動して形状を変化させ、同時にキッチンルームにおける配置位置を変えることになることから使用勝手に合せた変化を実現することができ、併せて部屋の模様替えも行うことができることになるのである。
【0015】
そして、最も特徴的なことはキッチンユニットを構成するシンク構造体が床に固定されることによって床下に配設させる給水管、排水管とシンクに設備される給水口、排水口とを直結することができ、しかも単なる連結を通して接続ができることから簡単な作業によって漏水の心配のない接合が可能となり、安全な、しかもコスト的に廉価なキッチンユニットを提供することができることになる。
【0016】
また本発明は、シンク構造体の上面に円形の天板を設置し、該天板の中央部にシンクを埋め込み設置すると共に該天板の周縁に沿って近接して加熱調理構造体を配置してなることを特徴とした可動式キッチンユニットを提供することにある。
【0017】
この発明によれば、シンク構造体の上面に円形のテーブルとなる天板を設置し、この周縁に沿って加熱調理構造体を配置したことによってシンク構造体と加熱調理構造体とを常に等距離に保って移動を可能にし、これによって両構造体の組合せ関係、つまり組合せ形状を一定に保持しながらキッチンルームに対する配置位置を変更できるという変化を実現することができる。
【0018】
また、本発明は、加熱調理構造体の上面に電磁ヒーターないしガス台を設置する天板を設備することを特徴とした可動式キッチンユニットを提供することにある。
【0019】
この発明によれば、加熱調理構造体において、天板に設置する加熱調理器、即ち電磁ヒーターないしガス台を使って煮物、焼物等調理を直ちに行うことができる。
尚、ここに設置される電磁ヒーターやガス台に対しては床下や壁部からシンク構造体内部に直接引き込まれた電源コード、ガス管をシンク構造体と加熱調理構造体とを連結する連結アームを通して引き込むことになる。
【0020】
また本発明は、加熱調理構造体の先端を周方向に沿って旋回可能に支持する連結アームを備えて整理棚等の整理格納設備を備えた格納構造体を連結し、該格納構造体を下部に備えるキャスターにより前記加熱調理構造体の周囲に沿って移動自由にしたことを特徴とする可動式キッチンユニットを提供することにある。
【0021】
本発明は、加熱調理構造体に連結アームを介して格納構造体を連結することによって、調理に使用する道具に併せて、食器類や調味料等を格納する空間を確保することができると同時に、この格納構造体を加熱調理構造体と共に、或は、単独に移動させることでユニット全体の構造を変化させることができ、キッチンルームの模様替えを更に発展的に実行することができる。
【0022】
また、本発明は、連結アームの内部の加熱調理構造体に引き入れられた電源コードと接続する延長電源コードを配線し、格納構造体に電源を供給することを特徴とした可動式キッチンユニットを提供することにある。
【0023】
この発明によると、連結アームを通して格納構造体に電源コードを引き入れることができることから、格納構造体自身に電気製品を組み込むことが可能となり、また食器棚等を上面の天板等を通して昇降作動するリフト装置などを装備することができる。
【0024】
また更に本発明は、床に対面する天井に加熱調理構造体の移動範囲に亘る範囲に集煙用天蓋を配置することを特徴とした可動式キッチンユニットを提供することにある。
【0025】
この発明によれば、加熱調理構造体が移動する範囲の上方に集煙用天蓋が付設されることから加熱調理構造体がいかなる位置に移動してもキッチンルーム内に煙が拡散することがなく常に室内を正常に保つことが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
上述の如く構成される本発明によると、キッチンユニットを構成する各構造体のうち、シンク構造体を床に固定することによって、この構造体に引き入れる給水管、そしてシンクから排水を放出する排水管を床下に配設する給水及び排水設備に直接接続して給水を受け、また排水することができるため、工事が頗る容易であり、漏水等の心配がなく、しかもこのシンク構造体に対して併設される加熱調理構造体が、シンク構造体の周りを自由に移動して組合せ位置を変更することができるため、キッチンルーム全体の配置を使用勝手に合せて自由に変更することができ、また部屋の模様替えを簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付する図面は、本発明に係る可動式キッチンユニットの一実施の形態を示したもので、図1は一部断面とした正面図、図2は平面図、図3は図2のA−A線断面図である。ここに示す本発明可動式キッチンユニット1は、シンク構造体2と、移動することができる加熱調理構造体3と、同じく移動が可能な格納構造体4の組合せから構成されている。
【0028】
シンク構造体2は、キッチンルーム5の床6上に台座7を固定して不動のものとして設置され、加熱調理構造体3は下面にキャスター8を備えた移動台座9に支持されて床6上を移動することが可能になっている。また、格納構造体4も同様にキャスター10を備えた移動台座11によって床6上を移動することが可能になっている。
そして、シンク構造体2を加熱調理構造体3とは連結アーム12によって連結され、加熱調理構造体3と格納構造体4とは連結アーム13によって連結されている。
【0029】
図4は、上記各構造体2、3、4のそれぞれを支える支持体の構造を拡大して示した中央縦断面図で、以下この図面に従って詳述すると、シンク構造体2は、台座7の中心部から円筒状の固定脚体14を起立し、この脚体14の上端にシンク構造体2を固定する基盤15を一体に固定する。そして、基盤15と台座7の受板16との間に脚体14を取り巻く環状の上下対をなす滑合リング17、18を装置して脚体14の外周に嵌装する回転筒19の上下両端を滑合支持し、この回転筒19が自由に回転するようにしている。
【0030】
上記回転筒19は、連結アーム12を支持するもので、周面から水平に連結腕20を突き出し、この腕を介して連結アーム12を水平に延し、加熱調理構造体3の支持体に連結するようにしてある。
【0031】
加熱調理構造体3の支持体は、台座9がキャスター8によって移動自由であることを除いて、前記シンク構造体2の支持体と略同様に構成される。即ち、台座9の内部に備える受板21の中央部から円筒状の脚体22を起立し、この脚体22の上端に基盤23を固定して加熱調理構造体3を載置固定している。
【0032】
そして、上記受板21と基盤23との間に脚体22の外周面を取り囲むように上下の滑合リング24、25を設けて脚体22の外周に嵌装する回転筒26の上下両端を滑合支持し、これを回転自由に支えると共に、この回転筒26から突出する接続腕27に前記連続アーム13を接続して格納構造体4に連続している。
【0033】
そして、前記基盤23の下面には連結アーム12の自由端を接続する接続腕28を設け、この接続腕28を介してシンク構造体2と連結するようにしているのである。
【0034】
尚、前記移動用のキャスター8は、台座9の内部に設けられる受板21の下面に脚体22の下端を中心にして6個等間隔をおいて設置しており、更にこの受板21にはキャスター8による移動を停止するボルト型のストッパー部材29を3個同様に等間隔をおいて設置している。
【0035】
格納構造体4の支持体は、回転筒を備えない事を除いて前記加熱調理構造体3の支持体と略同様の構造になっている。つまり、台座11の内部に一体に備える受板30の中央部から円筒形の脚体31を起立してその上端に備える基盤32に格納構造体4を載置固定するようにしてあり、更に上記基盤32の下面から接続腕33を延して前記連結アーム13の支端部を接続し、これによって加熱調理構造体3と連結しているのである。
【0036】
そして、上記受板32の下面には6個のキャスター10を等間隔に配置すると共に、このキャスター10を外した位置に等間隔をおいて3個のストッパー部材29を配置して移動時にはストッパー部材29を床6から上げて移動が出来るようにしてある。
【0037】
さて、本発明キッチンユニットを更に説明すると、シンク構造体2は、箱形に形成する本体部2aの底板34を前記支持体の基盤15上に載置して固定し、円形に形成した天板35の中央部にシンク36を嵌め込んで組付け、更に、天板35の一側縁部から起立させる水栓37を上記シンク36に臨ませるようにしてある。
【0038】
そして、シンク36は底板の中央部に接続する排水管38を本体部2aの中心部を縦に貫いて底板34に穿つ透孔(図示せず)に通し、円筒形をなす脚体14の内部を通して床6の下に配管する排水本管39に接続するのである。
これと同時に、前記水栓37に接続する給水管40を本体部2aを通して底板34の透孔(図示せず)から排水管38に並行させて脚体14の内部に通し、床6を貫いて床下の水道管に接続するのである。
【0039】
シンク構造体2における本体部2aは、ここでは図2、図5に示したように8面体の箱形に形成して前後の2面41、42の各一側縁をヒンジで支持して開放自由にしてあり、内部に洗剤等を収容できるようにしてある。
【0040】
一方、加熱調理構造体3は、その本体部3aをシンク構造体2と同様に8面体の箱形に形成して前後の2面43、44を前記同様に一側縁をヒンジで支持し、開放できるようにしてある。そして、本体部3aの底板45を脚体22の基盤23上に載置固定し、上面の天板46の中央部には加熱調理器たるIHヒーター47を天板上面と面一となるように埋め込み設けてある。
【0041】
IHヒーター47の電源となるコード48は、前記シンク構造体2の脚体14の内部を通して床下から引き出され、脚体14の側面に開設する孔(図示せず)から連結アーム12の中空内部を通して接続腕28から基板23、更に底板45を貫いて本体部3aの内部に引き入れ、IHヒーター47に接続される。
【0042】
格納構造体4は、図示するようにシンク構造体2や加熱調理構造体3より小振りに形成してあり、円筒形に形成した本体部4aの内部に同じく外形を円形に形成した食器棚等になる棚枠4bを上方に向けて抜き差し自由に収め、この棚枠4bの上端に円形の天板49を固定する構造に形成している。
【0043】
この格納構造体4は、図示しないが本体部4a内にリフト装置を組み入れ、動力によって前記棚枠4bを昇降自由にして内部を収めた食器類を取り出す場合は上昇させて(図1参照)その出し入れを行い、不使用時には下降させて本体部内に格納する構造としている。
尚、上記リフト装置を駆動するための動力電源は、加熱調理構造体3に引き入れた電源コード48に併せ引き入れる電源コード50を連結アーム13を通して本体部4a内部に引き込むことになる。
【0044】
ところで、上記説明のシンク構造体2、加熱調理構造体3、格納構造体4は、各天板35、46、49の高さを揃えて各構造体が一連に組み合う構造にしてあり、ユニットを構成するようにしてある。勿論、デザインや、使用勝手の都合により高さに差を付けることを制限するものではないが、ここでは使用勝手に合せて高さを揃えている。
【0045】
上記構成に係る本発明キッチンユニット1はキッチンルーム5の壁際を離れて設置されることになるが、通常の配置としては図2に示したように床6に固定されるシンク構造体2を中心にして加熱調理構造体3、格納構造体4が一列に並んだ状態で配置使用される。
この状態における配置は、壁際に沿って配置される固定型キッチンユニット、或はルーム内中間位置に配置されるカウンター型ないし対面型キッチンユニットと略同一形態となる。
【0046】
本発明キッチンユニット1は、上記一列形態から前記説明において明らかにしたように、加熱調理構造体3が移動自由に構成されていることから、固定のシンク構造体2を中心にしてその周囲に沿って移動することができ、これによりシンク構造体2との位置関係を変え、使用勝手を変更することができることになる。
【0047】
図6は、このシンク構造体2に対する加熱調理構造体3の移動状態を示したもので、このとき加熱調理構造体3は円形に形成したシンク構造体2の天板35の周縁に沿って連結アーム12に誘導されて旋回移動することになる。
尚、連結アーム12は、前記した如くシンク構造体2を支持する脚体14に嵌装する回転筒19を回転させて旋回することからシンク構造体2と加熱調理構造体3との距離を常に一定に保つことになる。
【0048】
上記加熱調理構造体3の移動はキャスター8によって自由に行われ、料理人の使用勝手に合せて位置を移動し、適宜の位置においてストッパー29を床6に押し当てることで固定される。
この加熱調理構造体3の移動に伴って連結アーム13を介して連結された格納構造体4も追随移動することになるが、同時にこの格納構造体4は連結アーム13を旋回させることで加熱調理構造体3の周囲を移動し(図6参照)、この加熱調理構造体3との位置関係を変更することができる。
【0049】
従って、シンク構造体2を中心とした加熱調理構造体3、格納構造体4は一列の姿勢を保ったまま旋回移動し、キッチンルーム5内における位置移動を行って部屋の模様替えをしながら使い勝手の良い配置替えを実行することができる一方、格納構造体4を連結した当該実施の形態においては、加熱調理構造体3の移動方向とは逆の旋回移動によってシンク構造体2側に接近させることもできることから3つの構造体2、3、4をV字形に配置して料理人がこのV字形の谷の部分、つまり中心に位置して各構造体と等距離に立って調理作業を行うこともできる。
【0050】
この様に、連結アーム12、13で連結された3つの構造体2、3、4はキャスター8、10を使って加熱調理構造体3、格納構造体4をそれぞれ旋回移動させることで様々な形態に変更し、料理人の使用し易い形に、また部屋の模様替えに対応することができるものとなっている。
【0051】
そして、本発明に係るキッチンユニット1は、上述したように加熱調理構造体3を移動させることにより、シンク構造体2との位置関係を変えてキッチンユニットの全体形状を変化させ、模様替えが行える中で、シンク構造体2は定位置にあって床6からの給排水管40、38、電源コード48等との接続を全く変えることがなく直接接続することができるため、固定式キッチンユニットと変りない安定した接続方法を採ることができるものとなる。
【0052】
特に、前述した通り、従来の可動式キッチンユニットにおいては、ユニット全体が移動変化する構造に係ることから、この移動に伴って水回りの給排水管につき、目詰りを起し易いフレキシブル管にしたり、固定式の管と可動式の管との組合せにしてその相互の接続部分を離して可動に対する予裕を確保する特別な構造、例えば、漏斗形の接続手段を採用する等の方法を構ずる必要があったが、本発明キッチンユニットはこれらの手段を用いることなく直付けが可能であるため構造を簡潔にすることができ、信頼性の高い設備を提供することが可能となる。
【0053】
尚、前記説明では、加熱調理構造体3において加熱調理器としてIHヒーター47としたが、これに換えてガス台とした場合は、電源コード48に代えてガス管を連結アーム12に通し、加熱調理構造体3に引き入れることになる。
この様にする場合を含み、連結アーム12、そして連結アーム13は電源コード類の引き込み手段となり、これらを外観されないものとするため纏りの良いキッチンユニットとすることができると共に、安全に配置することができるものとなる。
【0054】
ところで、図中51はキッチンルーム5の天井52に装備した集煙用の天蓋である。
この天蓋51はIHヒーター47で調理することによって発生する煙、湯気を収集するもので、図7に示したようにシンク構造体2を中心にして旋回移動する加熱調理構造体3の移動範囲の全域をカバーできるように天井52に沿って円弧状に形成される。
【0055】
従って、上記天蓋51の設置によって加熱調理構造体3は自由な位置において調理することができ、部屋内に煙を充満させるようなことがない。
【0056】
尚、前記説明したようにシンク構造体2の天板35を円形にしたことにより、旋回移動する加熱調理構造体3の天板46との距離を常に一定に保つことができるが、このとき両天板35、46は共に円形であることから両者はその周縁部を点接触的に向い合わせ、やや天板相互の一体性を欠くことになる。
【0057】
このときの一つの解決策として、例えば加熱調理構造体3の天板46の天板35に向き合う側縁部を凹孤状に切欠き形成して天板35の円形の周縁部をこの凹孤状の切欠き縁部に受け入れるようにすると、天板同士の縁部の嵌め合せ関係が生まれることから周縁部が長い範囲で衝き合うことになり、従って天板35、46同士が一枚板の状態となるので一体感を高めることできる。
【0058】
このことは格納構造体4の天板49についても同様であり、加熱調理構造体3の天板46との一体感を高めて、その結果、3枚の天板35、46、49が連続して形状を変化させられる一枚板を構成し、これによって新らたな外観を作ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一部断面とした正面図。
【図2】平面図。
【図3】要部を断面とした正面図。
【図4】図2のA−A線の位置で断面とした各構造体相互の連結構造を説明する拡大断面図。
【図5】図1のB−B線の位置で断面とした平面図。
【図6】シンク構造体を中心に加熱調理構造体、そして格納構造体のそれぞれの移動を説明する平面図。
【図7】加熱調理構造体と天蓋との位置関係を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 キッチンユニット
2 シンク構造体
3 加熱調理構造体
4 格納構造体
5 キッチンルーム
6 床
7 台座
8、10 キャスター
9、11 移動台座
12、13 連結アーム
14、22、31 脚体
15、23、32 基板
17、18、24、25 滑合リング
29 ストッパー部材
35、46、49 天板
36 シンク
37 水栓
38 排水管
39 排水本管
40 給水管
47 IHヒーター
4b 棚枠
51 天蓋
52 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンク及びシンクに対する給排水設備を備えたシンク構造体を床上に固定し、床下に配設する給排水管と上記給排水設備とを接続する一方、該シンク構造体には加熱調理器を設備する加熱調理構造体を併設して両構造体を連結アームで連結し、加熱調理構造体を下部に備える移動用キャスターによりシンク構造体の周囲に沿って移動自由にすると共に、前記アーム内には調理加熱器用の電源コード及び或いはガス管を配設して前記シンク構造体の床下に設備する電源、ガス管等と接続し、前記加熱調理器に熱源を供給するようにした可動式キッチンユニット。
【請求項2】
シンク構造体の上面には円形の天板を設置し、該天板の中央部にシンクを埋め込み設置すると共に該天板の周縁に沿って近接して加熱調理構造体を配置してなることを特徴とした請求項1に記載の可動式キッチンユニット。
【請求項3】
加熱調理構造体は上面に電磁ヒーターないしガス台を設置する天板を設備することを特徴とした請求項1又は2に記載の可動式キッチンユニット。
【請求項4】
加熱調理構造体には先端を周方向に沿って旋回可能に支持する連結アームを備えて整理棚等の整理格納設備を備えた格納構造体を連結し、該格納構造体を下部に備えるキャスターにより前記加熱調理構造体の周囲に沿って移動自由にしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可動式キッチンユニット。
【請求項5】
連結アームの内部には加熱調理構造体に引き入れられた電源コードと接続する延長電源コードが配線され格納構造体に電源が供給されることを特徴とした請求項4に記載の可動式キッチンユニット。
【請求項6】
床に対面する天井に加熱調理構造体の移動範囲に亘る範囲に集煙用天蓋を配置することを特徴とした請求項1ないし5に記載の可動式キッチンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22541(P2010−22541A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186494(P2008−186494)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000169329)アトムリビンテック株式会社 (81)
【Fターム(参考)】