説明

可変パッドおよびその施工方法

【課題】 施工時に樹脂等の混合原料を注入する工程を必要とせず、簡単かつ短時間に施工できる可変パッドおよびその施工方法を提供する。
【解決手段】 可変パッド5は、少なくとも反応硬化型樹脂と硬化剤とが各々遮断されて充填されている複数の袋部50、51と、複数の袋部50、51の連通を一時的に遮断する仮遮断部56と、を備える。複数の袋部50、51は、少なくとも一部がレールからの荷重を受ける受圧域に配置される一つの主袋部50と、該受圧域以外に配置される副袋部51と、に区分けされる。主袋部50は、該受圧域の全面に亘り連続して延在する補強部材53を内包する。施工時には、外部から荷重を加えて仮遮断部56の遮断状態を解除し、複数の袋部50、51の充填物を混合させた状態で該受圧域下の主袋部50に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールとレール支持体との間に介装される可変パッド、およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用のレールをコンクリート基盤上に敷設する際には、タイプレート等のレール支持体をコンクリート基盤上に所定の間隔で設置し、その上にレールを載せてレールを支持、締結する。通常、レールとレール支持体との間には、軌道パッドと可変パッドとが介装されている。軌道パッドは、ゴム等の弾性板からなり、主に列車走行の際の振動、衝撃を緩衝する役割を果たす。また、コンクリート基盤の表面は水平ではなく、軌道パッドの厚みも必ずしも一定ではない。このため、可変パッドは、これら部材の寸法誤差や施工時のずれを補正し、レールを所定の高さに保持する役割を果たす。可変パッドとしては、袋体に反応硬化型樹脂を注入して使用する樹脂注入型可変パッドが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図22に、特許文献1に紹介されている従来の可変パッドを施工したレール締結装置の斜視分解図を示す。図22に示すように、レール締結装置100は、主に、レール101と、タイプレート102と、軌道パッド103と、可変パッド104と、を備えている。
【0004】
タイプレート102は、鋼製であって、矩形板状を呈している。タイプレート102は、コンクリート基盤105上に六角ボルト106により固定されている。タイプレート102とコンクリート基盤105との間には、絶縁板107が介装されている。タイプレート102の上面には、レール101の長手方向に延びる一対のリブ108a、108bが配置されている。一対のリブ108a、108bの間隔は、後述するレール101の底部の幅と略同じである。一対のリブ108a、108bには、板ばね109が、ボルト110とナット111a、111bとにより固定されている。
【0005】
レール101は、断面I字状を呈している。レール101の底部は、一対のリブ108a、108bの間に保持されている。レール101の底部は、板ばね109の自由端により押圧されている。
【0006】
軌道パッド103は、ゴム製であって、矩形板状を呈している。軌道パッド103は、レール101の底部とタイプレート102との間に介装されている。軌道パッド103とレール101との間には、ステンレス鋼製の滑り板112が介装されている。滑り板112は、軌道パッド103の上面に固着されている。
【0007】
可変パッド104は、略矩形状を呈している。可変パッド104は、軌道パッド103とタイプレート102との間に介装されている。可変パッド104は、袋体114と、袋体114の中に収容された樹脂の硬化体(図略)とを備えている。袋体114のレール101の長手方向一端には、袋体114に樹脂、硬化剤等の混合原料を注入するための注入口115が形成されている。
【0008】
可変パッド104は、次のようにして施工される。まず、レール101を所定の高さに配置する。次に、何も充填されていない空の状態の袋体114を、軌道パッド103と共に、レール101とタイプレート102との間に挿入する。この時、空の状態の袋体114はつぶれているので、軌道パッド103とレール101との間には、隙間が生じている。次に、樹脂、硬化剤等の混合原料を、袋体114の注入口115から所定量注入し、袋体114を膨張させて、軌道パッド103とレール101との間の隙間を埋める。その後、袋体114内の混合原料を硬化させて硬化体とする。
【特許文献1】特開2006−28858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の可変パッドによると、施工時に樹脂等の混合原料を袋体へ注入する注入工程が必要となる。具体的には、原料となる樹脂、硬化剤等を各々計量し、これらを混合し、この混合原料を袋体へ注入する作業が必要となる。樹脂や硬化剤等を計量し、所定の比率で混合する作業は、煩雑で時間を要する。また、可変パッドをレール下に挿入した後、その場で作業者がポンプ等により混合原料を注入しなければならない。このため、手間がかかり、施工時間が長くなる。また、混合原料が過不足なく充填されるよう、混合原料の注入量を監視する必要もあることから、注入作業は難しく、長時間を要する。さらに、混合原料を注入する際に、重ねて挿入されている軌道パッドと可変パッドとのずれが生じるという問題もある。
【0010】
本発明はこのような実情を鑑みてなされたものであり、施工時に樹脂等の混合原料を注入する工程を必要とせず、簡単かつ短時間に施工できる可変パッドおよびその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の可変パッドは、レールと、該レールを支持するレール支持体と、の間に介装される可変パッドであって、少なくとも反応硬化型樹脂と硬化剤とが各々遮断されて充填されている複数の袋部と、該複数の袋部の連通を一時的に遮断する仮遮断部と、を備え、該複数の袋部は、少なくとも一部が前記レールからの荷重を受ける受圧域に配置される一つの主袋部と、該受圧域以外に配置される副袋部と、に区分けされ、該主袋部は、該受圧域の全面に亘り連続して延在する補強部材を内包し、該レールと前記レール支持体との間に介装される前に、外部からの荷重により該仮遮断部の遮断状態が解除され、該複数の袋部の充填物が混合した状態で該受圧域下の該主袋部に充填されることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0012】
本発明の可変パッドには、予め、反応硬化型樹脂、硬化剤等の原料が個々の袋部に分かれて充填されている。外部から荷重が加わると、仮遮断部の遮断状態が解除される。これにより、別々の袋部に隔離充填されていた原料が、仮遮断部を介して混合される。したがって、本発明の可変パッドを施工する際には、外部から荷重を加え、各原料を混合した状態で、レールとレール支持体との間に挿入すればよい。このように、本発明の可変パッドによると、従来の注入工程、すなわち、レールとレール支持体との間に空の可変パッドを挿入後、混合原料を注入する工程は必要ない。よって、本発明の可変パッドによると、施工作業が簡単になり、施工時間も短くなる。また、混合原料が充填された状態で、レールとレール支持体との間に挿入されるため、従来生じていた軌道パッドや可変パッドの位置ずれの発生をも抑制することができる。
【0013】
また、本発明の可変パッドでは、複数の袋部が、一つの主袋部と、それ以外の副袋部とに区分けされている。主袋部は、施工時に、その少なくとも一部がレールからの荷重を受ける受圧域に配置される。つまり、本発明の可変パッドを、レールとレール支持体との間に挿入する際、主袋部の少なくとも一部は、レールからレール支持体へ荷重が印加される領域に配置される。レールからの荷重は、軌道パッド等を介して、本発明の可変パッドの主袋部に加えられる。施工時、混合原料は、受圧域に配置される主袋部に充填される。施工後、混合原料は該主袋部内で硬化して硬化体となる。主袋部内の硬化体は、レールを所定の高さに保持する役割に加え、受圧域においてレールを支持する役割も果たす。
【0014】
施工時には、主袋部に、個々の袋部の充填物(原料)が混合した状態で充填される。また、主袋部には、補強部材が内包されている。補強部材は受圧域の全面(受圧域におけるレールからの荷重方向と略垂直方向の面)に亘り連続して延在している。このため、本発明の可変パッドの施工後、混合原料が硬化して硬化体となった時、硬化体と共に補強部材が、受圧域の全面に亘り切れ目なく配置される。したがって、例えば、鉄道車両の通過等により、可変パッドに比較的大きな衝撃が加わった場合でも、補強部材が硬化体を補強しているため、硬化体は割れ難い。仮に、硬化体が割れてしまった場合でも、受圧域全面に亘る補強部材により、破片が飛散するのを抑制することができる。したがって、本発明の可変パッドは耐久性に優れる。
【0015】
(2)好ましくは、前記レールと前記レール支持体との間に介装後、前記主袋部に充填された前記充填物の余剰分は、前記受圧域以外に配置された前記主袋部および前記副袋部の少なくとも一部にリークされる構成とするとよい(請求項2に対応)。
【0016】
本構成によると、施工時に主袋部に充填される充填物(混合原料)の総体積が、レールを所定の高さに保持するのに必要な体積より大きくなるよう、反応硬化型樹脂、硬化剤等の原料が個々の袋部に過剰に充填されている。レールとレール支持体との間に可変パッドが介装された後、受圧域の主袋部から受圧域以外(以下適宜、「非受圧域」と称す。)の主袋部や副袋部等に、主袋部の充填物の余剰分がリークされることで、施工場所ごとに可変パッド自身の厚みが自動的に調整される。その結果、コンクリート基盤や軌道パッドの高さ方向の誤差が補正され、レールとレール支持体との間が適正な厚みとなる。
【0017】
また、本構成によると、充填物の余剰分は、受圧域以外に配置された主袋部および副袋部の少なくとも一部にリークされる。このため、充填物の余剰分を外部に排出することなく、可変パッドの厚みを調整することができる。また、本構成によると、もともと原料が充填されていた袋部を、余剰分の逃がし部として利用する。このため、別途逃がし部を設ける必要がない。また、余剰分は、非受圧域に配置された主袋部および副袋部の少なくとも一部に収容される。非受圧域に配置された部分は、施工後にレールを支持する役割を果たさない。このため、施工後に、余剰分が収容された袋部を切除することも可能である。
【0018】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記複数の袋部は、前記反応硬化型樹脂が充填されている一つの樹脂袋部と、前記硬化剤が充填されている一つの硬化剤袋部と、からなり、前記主袋部は該樹脂袋部であり、前記副袋部は該硬化剤袋部である構成とするとよい(請求項3に対応)。
【0019】
本構成によると、袋部は樹脂袋部と硬化剤袋部との二つからなる。このため、本発明の可変パッドの構成は単純であり、施工時に反応硬化型樹脂と硬化剤とを混合し易い。ところで、主袋部は、その少なくとも一部が受圧域に配置され、レールの高さを調整し、レールを支持する役割を果たすため、少なくとも受圧域の全面に相当する程度の大きさを持つことが望ましい。また、通常の反応硬化型樹脂の硬化反応を考慮した場合、反応硬化型樹脂の充填量は、硬化剤の充填量よりも多くなる。よって、樹脂袋部を硬化剤袋部よりも大きくすることが望ましい。これより本構成では、大きさの観点から、主袋部を樹脂袋部とした。すなわち、本構成によると、硬化剤袋部よりも大きくなりがちな樹脂袋部を、敢えて主袋部に割り当てている。このため、硬化剤袋部を主袋部とした場合(つまり、樹脂袋部を副袋部とした場合)と比較して、施工後にレールを支持しない副袋部の大きさを、小さくすることができる。
【0020】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記樹脂袋部は、その全部が前記受圧域に配置される構成とするとよい(請求項4に対応)。
【0021】
本構成によると、樹脂袋部(主袋部)の全部が、受圧域に配置される。よって、施工時において、樹脂袋部と硬化剤袋部との配置が受圧域と非受圧域とに明確に区分けされる。このため、本発明の可変パッドを挿入する際に、位置決めが簡単になる。なお、施工時に、反応硬化型樹脂および硬化剤が樹脂袋部に過剰に充填された場合、本構成によると、充填物(反応硬化型樹脂+硬化剤)の余剰分は、硬化剤袋部(副袋部)にリークされる。
【0022】
(5)好ましくは、上記(3)の構成において、前記樹脂袋部は、その一部が前記受圧域に配置され、前記硬化剤袋部は、該受圧域以外に配置される該樹脂袋部の他部の内部に二重袋状に配置されている構成とするとよい(請求項5に対応)。
【0023】
本構成によると、樹脂袋部の一部は受圧域に配置され、他部は非受圧域に配置される。硬化剤袋部は、非受圧域に配置される樹脂袋部の内部に二重袋状に配置されている。つまり、本構成によると、硬化剤の周囲に反応硬化型樹脂が充填されている。このため、施工時に両者を混合し易い。また、本構成は、反応硬化型樹脂の充填量を多くしたい場合に好適である。
【0024】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記補強部材はガラスクロスである構成とするとよい(請求項6に対応)。ガラスクロスは、強度が高いため、補強部材として好適である。また、ガラスクロスは安価で入手し易い。このため、本構成によると、可変パッドを安価に提供することができる。
【0025】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記仮遮断部は、前記複数の袋部からの前記充填物の流出を防止する強接着部よりも接着力が弱い弱接着部により形成されている構成とするとよい(請求項7に対応)。
【0026】
本構成によると、仮遮断部が弱接着部により形成されているため、例えば、作業者が手で押圧するだけで弱接着部の接着が剥離して、仮遮断部の遮断状態を簡単に解除することができる。また、強接着部および弱接着部は、共に、例えば、ヒートシール等により簡単に作製することができる。
【0027】
(8)本発明の可変パッドの施工方法は、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成の可変パッドの施工方法であって、可変パッドを押圧し前記仮遮断部の遮断状態を解除して、前記複数の袋部の前記充填物を混合し、混合された該充填物を、施工後に前記受圧域に配置される前記主袋部に充填する混合充填工程と、混合された前記充填物が前記主袋部に充填された前記可変パッドと軌道パッドとを、前記レールと前記レール支持体との間に、該軌道パッドを該レール側にして介装する介装工程と、前記軌道パッドの上方から前記レールを所定の位置まで下降させ、前記可変パッドの前記主袋部に該レールの荷重を作用させながら該レールの高さを調整する高さ調整工程と、前記主袋部の前記充填物を反応硬化させる反応硬化工程と、を有することを特徴とする(請求項8に対応)。
【0028】
本発明の可変パッドの施工方法(以下適宜、「本発明の施工方法」と略称する。)は、混合充填工程と、介装工程と、高さ調整工程と、反応硬化工程とを有する。混合充填工程では、個々の袋部の充填物(反応硬化型樹脂、硬化剤等)を混合し、混合された充填物(混合原料)を、施工後に受圧域に配置される主袋部に充填する。介装工程では、混合原料が主袋部に充填された可変パッドを、軌道パッドと共にレールとレール支持体との間に介装する。このように、本発明の施工方法では、予め反応硬化型樹脂等の原料が充填されている本発明の可変パッドを用いる。このため、従来の注入工程、すなわち、レールとレール支持体との間に空の可変パッドを挿入後、混合原料を注入する工程は必要ない。よって、本発明の施工方法によると、施工作業が簡単になり、施工時間も短くなる。また、混合原料を充填した状態で、可変パッドをレールとレール支持体との間に挿入するため、従来生じていた軌道パッドや可変パッドの位置ずれの発生をも抑制することができる。
【0029】
また、高さ調整工程では、軌道パッドの上方からレールを所定の位置まで下降させ、可変パッドの主袋部にレールの荷重を作用させながらレールの高さを調整する。レールからの荷重が加わることで、可変パッドは変形し、厚みが自動的に調整される。厚みが調整された後、可変パッド内の混合原料は、次の反応硬化工程にて反応硬化して硬化体となる。レールの荷重により、可変パッドの厚みが自動的に調整されるため、レールとレール支持体との間を簡単に適正な厚みにすることができる。このように、本発明の施工方法によると、本発明の可変パッドを簡単にかつ短時間で施工することができる。
【0030】
(9)好ましくは、上記(8)の構成において、前記高さ調整工程は、混合された前記充填物の余剰分を、前記受圧域以外に配置された前記主袋部および前記副袋部の少なくとも一部にリークさせるリーク工程を有する構成とするとよい(請求項9に対応)。
【0031】
上記(2)で説明したように、反応硬化型樹脂、硬化剤等の原料が過剰に充填されている場合、施工時に、主袋部に充填された充填物の余剰分を、受圧域以外に配置された主袋部および副袋部の少なくとも一部にリークさせるとよい。本構成によると、高さ調整工程にリーク工程が含まれる。すなわち、主袋部に加えられるレールの荷重を利用して、充填物の余剰分をリークすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の可変パッドの実施形態について説明する。また、本発明の可変パッドの施工方法の実施形態についても併せて説明する。
【0033】
〈第一実施形態〉
まず、本実施形態の可変パッドを施工したレール締結装置の構成について説明する。図1に、本実施形態の可変パッドを施工したレール締結装置の斜視分解図を示す。図2に、同レール締結装置の斜視合体図を示す。図1、図2に示すように、レール締結装置1は、主に、レール2と、タイプレート3と、軌道パッド4と、可変パッド5と、を備えている。
【0034】
タイプレート3は、鋼製であって、矩形板状を呈している。タイプレート3は、コンクリート基盤6上に六角ボルト60により固定されている。タイプレート3とコンクリート基盤6との間には、絶縁板7が介装されている。つまり、タイプレート3は絶縁板7を介してコンクリート基盤6上に固定されている。
【0035】
タイプレート3の上面には、レール2の長手方向に延びる一対のリブ30a、30bが、互いに略平行に配置されている。一対のリブ30a、30bの間隔は、後述するレール2の底部の幅と略同じである。一対のリブ30a、30bの上面には、板ばね31が、ボルト32とナット33a、33bとにより固定されている。詳しくは、一対のリブ30a、30bの対角位置には、各々、台形形状のボルト固定孔300a、300bが形成されている。ボルト固定孔300a、300bには、ボルト32の頭部が係合している。板ばね31には、ボルト32が貫通するボルト貫通孔310が穿設されている。ボルト固定孔300a、300bから上方に延びるボルト32の軸部は、下方から上方に板ばね31のボルト貫通孔310を貫通している。ボルト32の上端には、ナット33a、33bが螺着されている。
【0036】
レール2は、断面I字状を呈している。レール2の底部は、一対のリブ30a、30bの間に保持されている。レール2の短手方向(幅方向)への移動は、一対のリブ30a、30bにより規制されている。また、レール2の底部の短手方向対角端部は、板ばね31の自由端により押圧されている。
【0037】
軌道パッド4は、ゴム製であって、矩形板状を呈している。軌道パッド4は、レール2の底部とタイプレート3との間に介装されている。軌道パッド4の上下両面には、レール2の長手方向に延びる溝部40が、所定の間隔で複数形成されている。軌道パッド4とレール2との間には、ステンレス鋼製の滑り板8が介装されている。滑り板8は、軌道パッド4の上面に接着剤により固着されている。
【0038】
可変パッド5は、矩形状を呈している。可変パッド5は、主袋部50と副袋部51とを備えている。主袋部50は、軌道パッド4とタイプレート3との間に介装されている。副袋部51は、タイプレート3に対してレール2の長手方向にはみ出した状態で配置されている。
【0039】
次に、本実施形態の可変パッドの構成について詳しく説明する。はじめに、上記図1、図2に示したレール締結装置への施工後における本実施形態の可変パッドの構成について説明する。図3に、施工後における本実施形態の可変パッドの平面図を示す。図4に、図3のIII−III方向断面図を示す。なお、図3においては、説明の便宜上、可変パッドが施工されたレール締結装置の他の部材は省略して示す。図3、図4に示すように、可変パッド5は、主袋部50と、副袋部51と、硬化体52と、ガラスクロス53と、通路部54と、を備えている。また、可変パッド5は、後述するように、上下二枚の樹脂シートが貼り合わされることにより形成されている。
【0040】
硬化体52は、エポキシ樹脂の硬化体であり、主袋部50、副袋部51、通路部54の内部に充填されている。
【0041】
主袋部50は、四角形の袋状を呈している。主袋部50は、レール2からの荷重を受ける受圧域に配置されている。図4に示すように、主袋部50は、タイプレート3と軌道パッド4との隙間に、当該隙間の形状に沿った形状で、配置されている。
【0042】
副袋部51は、四角形の袋状を呈している。副袋部51の容積は、主袋部50の容積よりも、小さく設定されている。副袋部51は、レール2からの荷重を受けない非受圧域に配置されている。図4に示すように、副袋部51には、主袋部50からはみ出した余剰分の硬化体52が充填されている。
【0043】
主袋部50と副袋部51との間には、両袋部50、51を互いに連通させる通路部54が配置されている。通路部54を介して、主袋部50と副袋部51とが連通することにより、上方から見てC字形状の一つの大袋部が形成されている。当該大袋部は、気密性、液密性を確保するために、周縁部55(説明の便宜上、図3中、交差点線ハッチングで示す。以下同じ。)により封止されている。
【0044】
ガラスクロス53(説明の便宜上、図3中、点線で示す。以下同じ。)は、四角形状を呈しており、主袋部50の内部に一枚配置されている。ガラスクロス53の大きさは、主袋部50の受圧面の大きさと略同じである。ガラスクロス53の四隅は、主袋部50のタイプレート3側内面(つまり、下側の樹脂シートの上面)に溶着されている。ガラスクロス53は、主袋部50の受圧面全域に亘り切れ目なく延在している。
【0045】
次に、本実施形態の可変パッドの施工前(使用前)の構成について説明する。図5に、施工前における本実施形態の可変パッドの平面図を示す。図6に、図5のV−V方向断面図を示す。図5、図6に示すように、可変パッド5は、主袋部50と、副袋部51と、ガラスクロス53と、仮遮断部56と、を備えている。
【0046】
主袋部50の内部には、液状のエポキシ樹脂500が充填されている。つまり、主袋部50は樹脂袋部に相当する。主袋部50は、施工後に、レール2からの荷重を受ける受圧域に配置される(前出図4参照)。
【0047】
副袋部51の内部には、液状のアミン系硬化剤510が充填されている。つまり、副袋部51は硬化剤袋部に相当する。副袋部51は、施工後に、レール2からの荷重を受けない非受圧域に配置される(前出図4参照)。充填されているエポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510との重量比は、100:60である。エポキシ樹脂500およびアミン系硬化剤510の総重量は、施工後にレール2を所定の高さに保持するのに必要な容積を確保可能な重量に対して、大きく設定されている。
【0048】
主袋部50と副袋部51との間には、両袋部50、51を一時的に遮断する仮遮断部56(説明の便宜上、図5中、平行点線ハッチングで示す。以下同じ。)が配置されている。仮遮断部56は、比較的弱い接着力で接着されている(弱接着部)。仮遮断部56は、外部から所定の荷重が加えられると開口する。例えば、人の手による押圧力で、仮遮断部56を開口させることができる。これに対して、仮遮断部56を除く、主袋部50および副袋部51を区画する周縁部55は、比較的強い接着力で接着されている(強接着部)。周縁部55は、外部からレール等による荷重が加わった場合でも、両袋部50、51から充填物が流出するのを抑制する。
【0049】
次に、本実施形態の可変パッドの製造方法について説明する。図7に、本実施形態の可変パッドの製造過程を示す。図7に示すように、本実施形態の可変パッドは、以下1)〜3)の工程を経て製造することができる。1)まず、二枚の長方形の樹脂シート5a、5bをE字状にヒートシールにより貼り合わせ、一方が開口した二つの袋部(主袋部50、副袋部51)を作製する。ヒートシールする際、仮遮断部56の接着力は、人の手による押圧力が可変パッドに加えられた場合に剥離するよう弱くしておく。一方、周縁部55の接着力は、荷重が加わっても充填物が流出しないよう強くしておく。2)次に、主袋部50にガラスクロス53を挿入し、ガラスクロス53の四隅と、樹脂シート5bの内面とを溶着する。3)次に、主袋部50へエポキシ樹脂を充填し、開口部をヒートシールにより封止する。また、副袋部51へアミン系硬化剤を充填し、開口部をヒートシールにより封止する。
【0050】
次に、本実施形態の可変パッドの施工方法について説明する。本実施形態の可変パッドの施工方法は、混合工程と、充填工程と、レールつり上げ工程と、介装工程と、高さ調整工程(リーク工程を含む)と、反応硬化工程と、を有する。ここで、混合工程と充填工程とは、本発明の混合充填工程に含まれる。図8〜図13に、本実施形態の可変パッドの施工方法における各工程を順に示す。
【0051】
図8に、混合工程における本実施形態の可変パッドの平面図を示す。図9に、図8のVIII−VIII方向断面図を示す。本工程では、作業者が可変パッド5を手で揉む。この時の押圧力により、前出図5に示した仮遮断部56の接着が剥離し、仮遮断部56が開口する。すなわち、通路部54が形成される。これにより、主袋部50と副袋部51とが、通路部54を介して連通する(図8中、白抜き矢印で示す。)。さらに、可変パッド5の全体を手で揉むことにより、エポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510とが、主袋部50および副袋部51内を相互に拡散し、互いに混ざり合い、混合原料520となる。
【0052】
図10に、充填工程における本実施形態の可変パッドの断面図を示す。図10は、図8のVIII−VIII方向断面図に相当する。本工程では、副袋部51を押圧し、副袋部51側にあった混合原料520を、主袋部50側へ片寄せする。これにより、混合原料520は、主袋部50内に充填される。可変パッド5は、この状態で次の介装工程に供される。
【0053】
図11に、レールつり上げ工程を示す。本工程の準備として、予め、タイプレート3を、絶縁板7を介してコンクリート基盤6上に固定しておく。また、一対のスペーサ20a、20bを、コンクリート基盤6の上面に配置しておく。一対のスペーサ20a、20bは、タイプレート3を挟んで、レール2の長手方向(図11中、左右方向)に所定の間隔で配置する。一対のスペーサ20a、20bの高さが、レール2の最終設置高さとなる。本工程では、このような状態で、レール2を、タイプレート3の上方であって、最終設置高さ(スペーサ20a、20bの高さ)よりも高い位置につり上げた状態で配置する。
【0054】
図12に介装工程を示す。本工程では、レール2とタイプレート3との間に、下から順に、可変パッド5と軌道パッド4と滑り板8とを重ねて挿入する。この際、可変パッド5は、主袋部50がレール2から荷重が加わる受圧域と対応するよう配置される。つまり、主袋部50の全部が、受圧域に配置される。したがって、可変パッド5の主袋部50と軌道パッド4と滑り板8とが、タイプレート3の上面に配置された一対のリブ30a、30bの間に配置される。これらの積層高さは、スペーサ20a、20bの高さよりも高くなっている。なお、副袋部51は、タイプレート3からスペーサ20b側にはみ出した状態で配置される。
【0055】
図13に高さ調整工程、リーク工程、および反応硬化工程を示す。本工程では、まず、レール2を下降させ、スペーサ20a、20b上に載置する。レール2を下降させると、レール2の底部は、最初に滑り板8の上面に接触する。ここで、前述したように、可変パッド5、軌道パッド4、滑り板8の積層高さは、スペーサ20a、20bの高さよりも高い。このため、その後さらにレール2を下降させると、レール2は、滑り板8、軌道パッド4を介して可変パッド5の主袋部50を押圧しながら、スペーサ20a、20b上に着座することになる。主袋部50にレール2からの荷重が加わると、主袋部50は、軌道パッド4とタイプレート3との間隔に応じて押しつぶされるように変形する。この際、主袋部50に充填されていた混合原料520の余剰分は、連通する副袋部51へリークされる(リーク工程)。このようにして、主袋部50は、最終的には、軌道パッド4とタイプレート3との間隔に応じた厚みになる。その結果、レール2とタイプレート3との間が適正な厚みとなり、レール2は所定の高さに調整される(高さ調整工程)。次に、この状態を所定時間保持することで、主袋部50内の混合原料520、およびリークした副袋部51内の混合原料520を反応硬化させ、硬化体52とする(反応硬化工程)。最後に、スペーサ20a、20bをそれぞれ撤去する。このようにして、可変パッド5の施工が完了し、前出図4の状態になる。
【0056】
次に、本実施形態の可変パッドおよびその施工方法の作用効果について説明する。本実施形態の可変パッド5によると、予め、反応硬化型樹脂、硬化剤等の原料を混合した状態で施工することができる。このため、従来の注入工程を省略することができる。よって、施工作業が簡単になり、施工時間も短くなる。また、注入工程で生じていた軌道パッド4や可変パッド5の位置ずれの発生をも抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態の可変パッド5の袋部は、エポキシ樹脂500が充填されている樹脂袋部(主袋部50)と、アミン系硬化剤510が充填されている硬化剤袋部(副袋部51)と、の二つで構成される。このため、可変パッド5を簡単に作製することができ、施工時において、エポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510との混合も容易である。また、主袋部50を樹脂袋部としたため、主袋部50を硬化剤袋部とした場合(つまり、副袋部51を樹脂袋部とした場合)と比較して、施工後にレール2を支持しない副袋部51の大きさを、小さくすることができる。また、樹脂袋部の全部が受圧域に配置される。このため、施工時には、樹脂袋部と硬化剤袋部との境界を基準にして、可変パッド5を容易に位置決めすることができる。
【0058】
また、本実施形態の可変パッド5によると、エポキシ樹脂500およびアミン系硬化剤510が過剰に充填されている。このため、施工時に、混合原料520(エポキシ樹脂500+アミン系硬化剤510)の余剰分は、通路部54を介して副袋部51にリークされる。余剰分がリークされることで、主袋部50の厚みが自動的に調整される。このため、レール2とタイプレート3との間を容易に適正厚みとすることができる。また、混合原料520の余剰分は、副袋部51にリークされるため、余剰分を外部に排出することなく、可変パッド5の厚みを調整することができる。また、硬化剤袋部であった副袋部51を、余剰分の逃がし部として利用するため、別途逃がし部を設ける必要はない。
【0059】
また、本実施形態の可変パッド5の仮遮断部56は、比較的接着力が弱い弱接着部により形成されている。よって、施工時に、作業者が可変パッド5を手で揉むだけで、仮遮断部56を開口させることができる。このように、本実施形態の可変パッド5によると、エポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510とを容易に混合することができる。
【0060】
また、主袋部50には、ガラスクロス53が一枚内包されている。ガラスクロス53の大きさは、主袋部50の受圧面の大きさと略同じである。よって、施工後に、主袋部50内の受圧面の全面に亘り、ガラスクロス53が切れ目なく配置される。このため、例えば、鉄道車両の通過等により、可変パッド5に比較的大きな衝撃が加わった場合でも、ガラスクロス53が硬化体52を補強しているため、硬化体52は割れ難い。仮に、硬化体52が割れてしまった場合でも、受圧域全面に亘るガラスクロス53により、破片が飛散するのを抑制することができる。したがって、本実施形態の可変パッド5の耐久性は高い。また、ガラスクロス53の四隅は、主袋部50の片側内面に溶着されている。このため、施工時に、エポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510とが混合され流動しても、ガラスクロス53がずれ難い。
【0061】
また、本実施形態の可変パッド5を施工したレール締結装置1では、軌道パッド4とレール2との間に滑り板8を配置している。このため、レール2が温度変化により膨張、収縮した場合でも、レール2を滑り板8の上面で滑らせることができる。よって、レール2の変形に追従した軌道パッド4および可変パッド5の位置ずれを少なくすることができる。
【0062】
また、本実施形態の可変パッド5の施工方法によると、レール2を下降させるだけで、可変パッド5に荷重が加わり、可変パッド5の厚みが自動的に調整される。これより、本実施形態の可変パッド5を簡単にかつ短時間で施工することができる。また、一対のスペーサ20a、20bを使用するため、レール2の最終設置高さを簡単に調整することができる。
【0063】
〈第二実施形態〉
本実施形態と第一実施形態との相違点は、樹脂袋部の内側に硬化剤袋部を配置した点である。したがって、ここでは相違点を中心に説明する。まず、前出図1、図2に示したレール締結装置への施工後における本実施形態の可変パッドの構成について説明する。図14に、施工後における本実施形態の可変パッドの平面図を示す。図15に、図14のXIV−XIV方向断面図を示す。なお、図14においては、説明の便宜上、可変パッドが施工されたレール締結装置の他の部材は省略して示す。また、前出図3、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図14、図15に示すように、可変パッド5は、主袋部50Aと、副袋部51Aと、硬化体52と、ガラスクロス53と、通路部54Aと、を備えている。
【0064】
硬化体52は、エポキシ樹脂の硬化体であり、主袋部50Aおよび副袋部51Aの内部に充填されている。
【0065】
主袋部50Aは、長方形の袋状を呈している。主袋部50Aは、受圧域と非受圧域とに対応して、中央付近で、後述する周縁部55の一部により、左右(レール2の長手方向に対応)に一部区画されている。このため、主袋部50Aは、上方から見るとC字形状を呈している。主袋部50A(可変パッド5)は、後述するように、上下二枚の樹脂シートが貼り合わされることにより形成されている。主袋部50Aの周縁は、気密性、液密性を確保するために、周縁部55(説明の便宜上、図14中、交差点線ハッチングで示す。以下同じ。)により封止されている。主袋部50Aの左側に区画された左主袋部50ALは、レール2からの荷重を受ける受圧域に配置されている。図15に示すように、左主袋部50ALは、タイプレート3と軌道パッド4との隙間に、当該隙間の形状に沿った形状で、配置されている。主袋部50Aの右側に区画された右主袋部50ARは、レール2からの荷重を受けない非受圧域に配置されている。このように、主袋部50Aは、その一部が受圧域に配置されている。
【0066】
副袋部51A(説明の便宜上、図14中、一点鎖線で示す。以下同じ。)は、長方形の袋状を呈している。副袋部51Aは、右主袋部50ARの内部に二重袋状に配置されている。つまり、副袋部51Aは、レール2からの荷重を受けない非受圧域に配置されている。副袋部51Aの右縁は、主袋部50Aの右縁に挟着されており、周縁部55により封止されている。副袋部51Aの残りの三縁には、主袋部50A、副袋部51Aを互いに連通させる通路部54Aが配置されている。図15に示すように、右主袋部50ARおよび副袋部51Aには、左主袋部50ALからはみ出した余剰分の硬化体52が充填されている。
【0067】
ガラスクロス53(説明の便宜上、図14中、点線で示す。以下同じ。)は、四角形状を呈しており、左主袋部50ALの内部に一枚配置されている。ガラスクロス53の大きさは、主袋部50Aの受圧面の大きさ(左主袋部50ALの大きさ)と略同じである。ガラスクロス53の一縁は、主袋部50Aの左縁に挟着されている。ガラスクロス53は、主袋部50Aの受圧面全域に亘り切れ目なく延在している。
【0068】
次に、本実施形態の可変パッドの施工前(使用前)の構成について説明する。図16に、施工前における本実施形態の可変パッドの平面図を示す。図17に、図16のXVI−XVI方向断面図を示す。図16、図17に示すように、可変パッド5は、主袋部50Aと、副袋部51Aと、ガラスクロス53と、仮遮断部56Aと、を備えている。
【0069】
主袋部50A(左主袋部50AL+右主袋部50AR)の内部には、液状のエポキシ樹脂500が充填されている。つまり、主袋部50Aは樹脂袋部に相当する。主袋部50Aのうち左主袋部50ALは、施工後に、レール2からの荷重を受ける受圧域に配置される。また、右主袋部50ARは、施工後に、レール2からの荷重を受けない非受圧域に配置される(前出図15参照)。主袋部50Aの周縁部55は、比較的強い接着力で接着されている(強接着部)。周縁部55は、外部からレール等による荷重が加わった場合でも、主袋部50Aから充填物が流出するのを抑制する。
【0070】
副袋部51Aの内部には、液状のアミン系硬化剤510が充填されている。つまり、副袋部51Aは硬化剤袋部に相当する。副袋部51Aの周縁(説明の便宜上、図16中、平行点線ハッチングで示す。以下同じ。)は、比較的弱い接着力で封止されている(弱接着部)。周縁を構成する四縁のうち右縁は、主袋部50Aの右縁に挟着されており、周縁部55により(つまり強接着部により)封止されている。つまり、副袋部51Aの右縁は、二重封止されている。周縁を構成する四縁のうち残りの三縁には、主袋部50Aと副袋部51Aとの連通を一時的に遮断する仮遮断部56Aが配置されている。仮遮断部56Aは、外部から所定の荷重が加えられると開口する。例えば、人の手による押圧力で、仮遮断部56Aを開口させることができる。副袋部51Aは、施工後に、レール2からの荷重を受けない非受圧域に配置される(前出図15参照)。充填されているエポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510との重量比は、100:60である。エポキシ樹脂500およびアミン系硬化剤510の総重量は、施工後にレール2を所定の高さに保持するのに必要な容積を確保可能な重量に対して、大きく設定されている。
【0071】
次に、本実施形態の可変パッドの製造方法について説明する。図18に、本実施形態の可変パッドの製造過程を示す。図18に示すように、本実施形態の可変パッドは、以下1)〜3)の工程を経て製造することができる。1)第一に、副袋部51Aを作製する。まず、二枚の長方形の樹脂シートの三方をヒートシールにより貼り合わせ、一方が開口した袋部を作製する。次に、作製した袋部へアミン系硬化剤を充填する。次に、開口した一方を、先の三方と同様にヒートシールにより貼り合わせ、副袋部51Aとする。ここで、副袋部51Aの周縁は、人の手による押圧力が可変パッドに加えられた場合に剥離するよう、比較的弱い接着力で封止されている(弱接着部)。2)第二に、二枚の長方形の樹脂シート5a、5bをE字状にヒートシールにより貼り合わせ、一方が開口した袋部(主袋部50A)を作製する。この際、予め、樹脂シート5bの上面(樹脂シート5a側の表面)に、ガラスクロス53と副袋部51Aとを配置しておく。ガラスクロス53は、左主袋部50AL(前出図16参照)に相当する位置に配置しておく。副袋部51Aは、右主袋部50AR(前出図16参照)の内部に収容されるよう配置しておく。そして、樹脂シート5a、5bを貼り合わせる際、ガラスクロス53の左縁を、樹脂シート5a、5bの左縁に挟装してヒートシールする。また、副袋部51Aの右縁を、樹脂シート5a、5bの右縁に挟装してヒートシールする。ヒートシールする際、周縁部55の接着力は、外部から荷重が加わっても充填物が流出しないよう強くしておく(強接着部)。周縁部55により(つまり強接着部により)、副袋部51Aの右縁は二重封止される。また、残りの三縁には、弱接着部により仮遮断部56Aが形成される。3)第三に、主袋部50Aへエポキシ樹脂を充填し、開口部をヒートシールにより封止する。
【0072】
次に、本実施形態の可変パッドの施工方法について説明する。本実施形態の可変パッドの施工方法は、混合工程と、充填工程と、レールつり上げ工程と、介装工程と、高さ調整工程(リーク工程を含む)と、反応硬化工程と、を有する。ここで、混合工程と充填工程とは、本発明の混合充填工程に含まれる。なお、レールつり上げ工程以降は、第一実施形態と同様である。よって、ここではレールつり上げ工程以降の説明を割愛し、混合工程、充填工程のみを説明する。
【0073】
図19に、混合工程における本実施形態の可変パッドの平面図を示す。図20に、図19のXIX−XIX方向断面図を示す。本工程では、作業者が可変パッド5を手で揉む。この時の押圧力により、前出図16に示した仮遮断部56Aの接着が剥離し、仮遮断部56Aが開口する。すなわち、通路部54Aが形成される。これにより、主袋部50Aと副袋部51Aとが、通路部54を介して連通する(図19中、白抜き矢印で示す。)。さらに、可変パッド5の全体を手で揉むことにより、エポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510とが、主袋部50Aおよび副袋部51A内を相互に拡散し、互いに混ざり合い、混合原料520となる。
【0074】
図21に、充填工程における本実施形態の可変パッドの断面図を示す。図21は、図19のXIX−XIX方向断面図に相当する。本工程では、非受圧域に配置される右主袋部50ARおよび副袋部51Aを押圧し、右主袋部50AR側にあった混合原料520を、左主袋部50AL側へ片寄せする。これにより、混合原料520は、左主袋部50AL内に充填される。可変パッド5は、この状態で次の介装工程に供される。
【0075】
次に、本実施形態の可変パッドおよびその施工方法の作用効果について説明する。本実施形態の可変パッド5およびその施工方法は、第一実施形態の可変パッドおよびその施工方法と共通する部分については、第一実施形態と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の可変パッド5によると、副袋部51Aが、主袋部50Aの内部に二重袋状に配置されている。よって、主袋部50Aの容積を大きくすることができる。このため、主袋部50Aを樹脂袋部とすれば、反応硬化型樹脂の充填量を多くしたい場合に好適である。
【0076】
また、副袋部51Aの一縁は主袋部50Aの一縁に挟着され、残りの三縁には仮遮断部56Aが配置されている。施工時に、仮遮断部56Aが開口すると、副袋部51Aの三方において主袋部50Aに対する仕切りが無くなる。このため、本実施形態の可変パッド5によると、主袋部50A内のエポキシ樹脂500と、副袋部51A内のアミン系硬化剤510とを、容易に混合することができる。また、副袋部51Aの一縁が、主袋部50Aの一縁に挟着されているため、施工時に可変パッド5を押圧しても、副袋部51Aは移動しない。このため、エポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510とを確実に混合することができる。
【0077】
また、本実施形態の可変パッド5によると、ガラスクロス53の一縁は、主袋部50Aの一縁に挟着されている。このため、施工時に、エポキシ樹脂500とアミン系硬化剤510とが主袋部50A内を流動しても、ガラスクロス53の位置ずれが抑制される。
【0078】
また、前出図18に示すように、可変パッド5の製造方法において、樹脂シート5a、5bを貼り合わせることにより、ガラスクロス53の固定と副袋部51Aの固定とを、同時に行うことができる。このため、可変パッド5の製造工数が少なくて済む。
【0079】
また、本実施形態の可変パッド5によると、主袋部50Aは、受圧域と非受圧域とに対応して、中央付近で左右に一部区画されている。このため、施工時には、その区画位置(周縁部55)を基準にして、可変パッド5を容易に位置決めすることができる。
【0080】
〈その他〉
以上、本発明の可変パッドおよびその施工方法の実施形態について説明した。しかしながら、実施形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態では、可変パッドを一つの主袋部と一つの副袋部とから構成した。しかし、本発明の可変パッドは、主袋部を一つ備えていれば、他に二つ以上の副袋部を備えていてもよい。この場合、上記第二実施形態のように、一方の袋部を他方の袋部に二重袋状に配置してもよく、上記第一実施形態のように、各袋部を各々独立して配置してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、主袋部を樹脂袋部、副袋部を硬化剤袋部とした。しかし、主袋部、副袋部の充填物は、特に限定されるものではない。例えば、主袋部を硬化剤袋部、副袋部を樹脂袋部としてもよい。また、袋部には、反応硬化型樹脂、硬化剤の他に、硬化促進剤、着色剤、安定剤、保存剤、補強剤等を充填してもよい。また、反応硬化型樹脂と硬化剤とが別々の袋部に充填されていれば、一つの袋部の中に、複数の材料を充填しておいても構わない。例えば、反応硬化型樹脂または硬化剤に加えて、着色剤等を充填してもよい。
【0083】
上記第一実施形態では、隣り合う袋部(樹脂袋部、硬化剤袋部)を区画する周縁部に、一つの仮遮断部を配置した。また、第二実施形態では、二重袋状に配置された内側の袋部(硬化剤袋部)の三縁に仮遮断部を配置した。このように、仮遮断部の配置の仕方は特に限定されるものではなく、可変パッドの袋部の構成に応じて適宜決定すればよい。例えば、袋部を区画する周縁部に、仮遮断部を二ヶ所以上、間欠的に配置してもよい。
【0084】
ところで、受圧域において、可変パッドの厚み(主袋部の厚み)を適正な厚みにするためには、施工時に混合原料が必要以上に非受圧域へリークしないようにすることが望ましい。このため、可変パッドの袋部を、受圧域と非受圧域との間で、ある程度区画しておくことが望ましい。
【0085】
例えば、受圧域と非受圧域とに対応して別々の袋部が形成されている場合には、隣り合う袋部を区画する周縁部の一部のみを仮遮断部とすることが望ましい(第一実施形態参照)。施工時には、仮遮断部が、隣り合う袋部を連通させる通路部となる。通路部の通路断面積は、混合原料のリーク量に関係する。一方、通路断面積は、個々の原料の混合し易さにも関係する。よって、周縁部に対する仮遮断部の長さや配置の仕方は、混合原料の粘性等を考慮して、適宜調整されることが望ましい。
【0086】
また、例えば、主袋部が受圧域と非受圧域とにまたがる場合には、受圧域と非受圧域とに対応させて、主袋部の一部を区画しておくことが望ましい(第二実施形態参照)。施工時には、区画されていない主袋部の他部を介して、混合原料がリークする。当該他部の通路断面積は、混合原料のリーク量に関係する。よって、主袋部の区画の仕方は、混合原料の粘性等を考慮して、適宜調整されることが望ましい。
【0087】
上記実施形態では、反応硬化型樹脂として、エポキシ樹脂を使用した。エポキシ樹脂は、発泡し難く、硬化剤との混合性が良い。また、混合した後の硬化も速いため好適である。しかし、反応硬化型樹脂はエポキシ樹脂に限定されない。例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂等を使用してもよい。
【0088】
上記実施形態では、エポキシ樹脂の硬化剤として、アミン系硬化剤を使用した。硬化剤は、使用する反応硬化型樹脂の種類に応じて、適宜選択すればよい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、アミン系硬化剤の他に、酸無水物、ポリアミド樹脂、ポリメルカプタン系硬化剤、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0089】
上記実施形態では、補強部材として、ガラスクロスを使用した。しかし、補強部材はこれに限定されない。例えば、カーボンクロスや、アラミド繊維等の高強度繊維製クロス等を使用してもよい。また、シート状の補強部材を使用する場合、補強部材の枚数は特に限定されるものではない。受圧域の全面に亘り連続して延在する限り、複数枚を積層して主袋部に配置してもよい。
【0090】
また、本発明の可変パッドの製造方法は、上記実施形態の製造方法に限定されるものではない。可変パッドの構成に応じて、種々の工程により製造すればよい。また、上記実施形態では、可変パッドを形成する樹脂シートとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との複合樹脂シートを使用した。しかし、これ以外にも、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂シートを使用することができる。また、上記実施形態では、樹脂シートをヒートシールにより貼り合わせたが、例えば、超音波溶着、振動溶着等により樹脂シートを貼り合わせてもよい。
【0091】
上記実施形態では、施工時に可変パッドを手で揉んで押圧した。しかし、必要に応じて、器具を使用して押圧してもよい。また、上記実施形態では、袋部の全体を使って、各原料(反応硬化型樹脂、硬化剤)を混合した後、その混合原料を受圧域に配置される主袋部に片寄せした。しかし、受圧域に配置される主袋部に、すべての原料を移動させた後、当該主袋部にて各原料を混合してもよい。
【0092】
上記実施形態では、可変パッドの施工方法を、充填工程と介装工程との間にレールつり上げ工程を含めて構成した。しかし、レールつり上げ工程は、混合工程または充填工程の前に行ってもよい。また、混合工程、充填工程と並行して行ってもよい。また、上記実施形態では、施工後に、非受圧域に配置した副袋部等を切除していない。しかし、必要に応じて、非受圧域に配置した主袋部および副袋部を切除してもよい。
【0093】
また、可変パッドを施工したレール締結装置の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、滑り板を省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第一実施形態の可変パッドを施工したレール締結装置の斜視分解図である。
【図2】同レール締結装置の斜視合体図である。
【図3】施工後における第一実施形態の可変パッドの平面図である。
【図4】図3のIII−III方向断面図である。
【図5】施工前における第一実施形態の可変パッドの平面図である。
【図6】図5のV−V方向断面図である。
【図7】第一実施形態の可変パッドの製造過程を示す斜視図である。
【図8】施工時の混合工程における第一実施形態の可変パッドの平面図である。
【図9】図8のVIII−VIII方向断面図である。
【図10】施工時の充填工程における第一実施形態の可変パッドの断面図である。
【図11】施工時のレールつり上げ工程を示す図である。
【図12】施工時の介装工程を示す図である。
【図13】施工時の高さ調整工程、リーク工程、および反応硬化工程を示す図である。
【図14】施工後における第二実施形態の可変パッドの平面図である。
【図15】図14のXIV−XIV方向断面図である。
【図16】施工前における第二実施形態の可変パッドの平面図である。
【図17】図16のXVI−XVI方向断面図である。
【図18】第二実施形態の可変パッドの製造過程を示す斜視分解図である。
【図19】施工時の混合工程における第二実施形態の可変パッドの平面図である。
【図20】図19のXIX−XIX方向断面図である。
【図21】施工時の充填工程における第二実施形態の可変パッドの断面図である。
【図22】従来の可変パッドを施工したレール締結装置の斜視分解図である。
【符号の説明】
【0095】
1:レール締結装置
2:レール 20a、20b:スペーサ
3:タイプレート(レール支持体) 300a、300b:ボルト固定孔
30a、30b:リブ 31:板ばね 32:ボルト 33a、33b:ナット
310:ボルト貫通孔
4:軌道パッド 40:溝部
5:可変パッド 5a、5b:樹脂シート
50、50A:主袋部 50AL:左主袋部 50AR:右主袋部
51、51A:副袋部 52:硬化体 53:ガラスクロス 54、54A:通路部
55:周縁部 56、56A:仮遮断部
500:エポキシ樹脂(反応硬化型樹脂) 510:アミン系硬化剤(硬化剤)
520:混合原料
6:コンクリート基盤 60:六角ボルト
7:絶縁板
8:滑り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、該レールを支持するレール支持体と、の間に介装される可変パッドであって、
少なくとも反応硬化型樹脂と硬化剤とが各々遮断されて充填されている複数の袋部と、
該複数の袋部の連通を一時的に遮断する仮遮断部と、を備え、
該複数の袋部は、少なくとも一部が前記レールからの荷重を受ける受圧域に配置される一つの主袋部と、該受圧域以外に配置される副袋部と、に区分けされ、
該主袋部は、該受圧域の全面に亘り連続して延在する補強部材を内包し、
該レールと前記レール支持体との間に介装される前に、外部からの荷重により該仮遮断部の遮断状態が解除され、該複数の袋部の充填物が混合した状態で該受圧域下の該主袋部に充填されることを特徴とする可変パッド。
【請求項2】
前記レールと前記レール支持体との間に介装後、前記主袋部に充填された前記充填物の余剰分は、前記受圧域以外に配置された前記主袋部および前記副袋部の少なくとも一部にリークされる請求項1に記載の可変パッド。
【請求項3】
前記複数の袋部は、前記反応硬化型樹脂が充填されている一つの樹脂袋部と、前記硬化剤が充填されている一つの硬化剤袋部と、からなり、
前記主袋部は該樹脂袋部であり、前記副袋部は該硬化剤袋部である請求項1または請求項2に記載の可変パッド。
【請求項4】
前記樹脂袋部は、その全部が前記受圧域に配置される請求項3に記載の可変パッド。
【請求項5】
前記樹脂袋部は、その一部が前記受圧域に配置され、
前記硬化剤袋部は、該受圧域以外に配置される該樹脂袋部の他部の内部に二重袋状に配置されている請求項3に記載の可変パッド。
【請求項6】
前記補強部材はガラスクロスである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の可変パッド。
【請求項7】
前記仮遮断部は、前記複数の袋部からの前記充填物の流出を防止する強接着部よりも接着力が弱い弱接着部により形成されている請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の可変パッド。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の可変パッドの施工方法であって、
可変パッドを押圧し前記仮遮断部の遮断状態を解除して、前記複数の袋部の前記充填物を混合し、混合された該充填物を、施工後に前記受圧域に配置される前記主袋部に充填する混合充填工程と、
混合された前記充填物が前記主袋部に充填された前記可変パッドと、軌道パッドとを、前記レールと前記レール支持体との間に、該軌道パッドを該レール側にして介装する介装工程と、
前記軌道パッドの上方から前記レールを所定の位置まで下降させ、前記可変パッドの前記主袋部に該レールの荷重を作用させながら該レールの高さを調整する高さ調整工程と、
前記主袋部の前記充填物を反応硬化させる反応硬化工程と、
を有することを特徴とする可変パッドの施工方法。
【請求項9】
前記高さ調整工程は、混合された前記充填物の余剰分を、前記受圧域以外に配置された前記主袋部および前記副袋部の少なくとも一部にリークさせるリーク工程を有する請求項8に記載の可変パッドの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−262830(P2007−262830A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92065(P2006−92065)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000162995)興和化成株式会社 (15)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】