説明

可変光ディレイライン装置

【課題】 可変な遅延量で光信号を遅延させる可変光ディレイライン装置1を提供する。
【解決手段】 端面と、一端が光信号の入出力端となるとともに他端の断面が前記端面に配置される入出力用の光ファイバと、両端の断面が前記端面に配置される遅延用の光ファイバとをそれぞれ有する一対の光ファイバアレイA1、A2を互いの端面を対向させて配置して構成される。一対の光ファイバアレイの端面の間で光学的に接続される光ファイバの断面の組み合わせが切り替えられて、一対の光ファイバアレイのそれぞれの入出力端の間の光経路の長さが切り替えられることで、当該光経路を伝送する光信号の遅延量が切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号に可変な遅延量を与える可変光ディレイライン装置に関し、特に、効果的に遅延量を与える可変光ディレイライン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号に可変な遅延量を与える可変光ディレイライン装置が検討等されている。
一例として、光ファイバから空間中へ光を出射し、ミラーやプリズムなどの光経路を変化させる機器により空間中で迂回伝播させる光経路を形成することで光路長を変化させ、その後、光を再び空間から光ファイバへ入射させるといったように、エアギャップを可変することで光信号の遅延量を変化させる手法が検討等されている(例えば、特許文献1参照。)。
他の例として、光ファイバ自体の長さ方向に歪を加えることで光路長を変化させ、その結果として光信号の遅延量を変化させる手法が検討等されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−220343号公報
【特許文献2】特開平9−211225号公報
【特許文献3】特開平10−142427号公報
【非特許文献1】瀧澤和宏、外4名、「MT−RJ光コネクタ」、フジクラ技報、1999年10月、第97号、p.10−15
【非特許文献2】徐傑、外2名、「多芯コネクタファイバ端面の新しい突出し研磨方法の開発」、古河電工時報、平成15年7月、第112号、p.31−35
【非特許文献3】藤原康晃、外3名、「4心メカニカルスプライス」、フジクラ技報、1999年10月、第97号、p.16−21
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の可変光ディレイライン装置では、未だに不十分な点があり、更なる開発が要求されていた。
例えば、エアギャップを変化させる手法では、光ファイバから光を空間中へ出射するときに、レンズなどで平行光にしてから可動ミラーなどの光経路を変化させる機器により空間中で迂回伝播させる光経路とし、その後、平行光をレンズなどによって再び光ファイバに結合する。このような構成では、レンズや可動ミラーやプリズムなどの機器が必要となるため構造が複雑になり、且つ、光を伝播させるための空間を必要とするため装置が比較的大型になり、また、光経路の可変範囲が限られるため、調整可能な光遅延量は最大で数ナノ秒と小さくなり、従って、広範囲な遅延量の調整は不可能であった。
また、例えば、光ファイバに歪を加える手法では、長い光ファイバが必要となるため、光挿入損失が大きくなり、また、遅延量の可変範囲よりも光ファイバ自体が有する固定遅延量が大きくなることから、比較的小さい固定遅延量については調整できず、従って、広範囲な遅延量の調整は不可能であった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、光信号に可変な遅延量を効果的に与えることができる可変光ディレイライン装置を提供することを目的とする。
具体的には、本発明に係る可変光ディレイライン装置では、例えば、構造の簡易化や、装置の小型化や、広範囲な遅延量の調整を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る可変光ディレイライン装置では、次のような構成により、可変な遅延量で光信号を遅延させる。
すなわち、一対の光ファイバアレイのそれぞれは、端面と、一端が光信号の入出力端となるとともに他端の断面が前記端面に配置される入出力用の光ファイバと、両端の断面が前記端面に配置される遅延用の光ファイバを有する。可変光ディレイライン装置は、前記一対の光ファイバアレイを、互いの前記端面を対向させて配置して構成される。
そして、可変光ディレイライン装置では、前記一対の光ファイバアレイの前記端面の間で光学的に接続される前記光ファイバの断面の組み合わせが切り替えられて、前記一対の光ファイバアレイのそれぞれの前記入出力端の間の光経路の長さが切り替えられることで、当該光経路を伝送する光信号の遅延量が切り替えられる。
【0007】
従って、一方の光ファイバアレイが有する入出力用の光ファイバの入出力端から他方の光ファイバアレイが有する入出力用の光ファイバの入出力端への光経路により光信号を伝送するに際して、一方の光ファイバアレイの端面に配置された光ファイバの断面と他方の光ファイバアレイの端面に配置された光ファイバの断面との接続の組み合わせを切り替えることで、前記光経路の長さを切り替えることができ、これにより、当該光経路を伝送する前記光信号に与える遅延量を切り替えることができる。具体的には、例えば、一方の光ファイバアレイが有する入出力用の光ファイバと他方の光ファイバアレイが有する入出力用の光ファイバとを直接的に接続する状態、或いは、これら一対の入出力用の光ファイバの間に複数の遅延用の光ファイバを接続してその分だけ遅延量を大きく(長く)した状態の中から、任意の状態を切り替えることができる。
このような構成により、光信号に可変な遅延量を効果的に与えることができ、例えば、構造の簡易化や、装置の小型化や、広範囲な遅延量の調整を実現することができる。
【0008】
ここで、光ファイバアレイの端面に配置される光ファイバの断面としては、例えば、一対の光ファイバアレイの端面が対向させられたときに、互いに光学的に接続可能な態様で設けられる。一例として、端面の平面上に光ファイバの断面が出るようにし、つまり、端面の平面と光ファイバの断面の平面とが同一平面上となるようにする。
また、光ファイバアレイの端面に配置される光ファイバの断面としては、例えば、一対の光ファイバアレイの端面が対向させられて相対位置が調整されたときに、互いの入出力用の光ファイバを直接的に接続することや、或いは、これら一対の入出力用の光ファイバを複数の遅延用の光ファイバを介して接続することが可能な態様で設けられる。一例として、端面には、複数の光ファイバの断面が等間隔で並べられて配置される。また、一例として、端面には、入出力用の光ファイバの断面と遅延用の光ファイバの断面とが並べられる中で、入出力用の光ファイバの断面が最も端に配置される。
また、例えば、一対の光ファイバアレイとしては、それぞれ同一の構成を有するものを用いることができる。
【0009】
また、1個の光ファイバアレイに設けられる入出力用の光ファイバの数としては、例えば、1本が用いられる。
また、1個の光ファイバアレイに設けられる遅延用の光ファイバの数としては、例えば、1本又は複数本が用いられる。
また、それぞれの光ファイバの長さとしては、種々な長さが用いられてもよい。
例えば、1個の光ファイバアレイに設けられる遅延用の光ファイバの数が多いほど、多くの段階で遅延量を切り替えることが可能であり、また、それぞれの遅延用の光ファイバの長さが短いほど遅延量の細かい切り替えが可能であり、それぞれの遅延用の光ファイバの長さが長いほど遅延量の大きな切り替えが可能である。
【0010】
また、一対の光ファイバアレイの相対的な位置を切り替える態様としては、種々な態様が用いられてもよく、例えば、人(ユーザ)からの指示などに応じて一方又は両方の光ファイバアレイを端面に沿って移動させるような移動手段を可変光ディレイライン装置に備える態様が用いられてもよく、或いは、人(ユーザ)が手動により一方又は両方の光ファイバアレイを移動させるような態様が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る可変光ディレイライン装置によると、端面に入出力用の光ファイバの断面及び遅延用の光ファイバの断面が配置された一対の光ファイバアレイが互いの端面を対向させて配置されて構成され、一対の光ファイバアレイの端面の間で光学的に接続される光ファイバの断面の組み合わせが切り替えられて、一対の光ファイバアレイのそれぞれの入出力端の間の光経路の長さが切り替えられることで、当該光経路を伝送する光信号の遅延量が切り替えられるようにしたため、効率的な構成で効果的に、可変な遅延量で光信号を遅延させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1実施例を説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る可変光ディレイライン装置1の外観の一例を立体的に示してある。
本例の可変光ディレイライン装置1は、同様な構造を有する2個の光ファイバアレイA1、A2の端面(光ファイバ端面)を対向させて接触させて構成される。これらの光ファイバアレイA1、A2は、端面の直線的な配列方向(図示される移動方向)に動くことが可能であり、一方の光ファイバアレイA1の端面の位置と対向する他方の光ファイバアレイA2の端面の位置とが相対的に動く過程で互いに光学的に接続する機構を有している。
なお、これらの対向する光ファイバアレイA1、A2が互いに直線的に動くように誘導するガイド構造が設けられてもよい。
【0014】
図2(a)には、P点からQ点へ光ファイバ2を介して光信号を伝送する光伝送システムの一例を示してある。
図2(b)には、このような光伝送システムのP点とQ点との間の光ファイバ中に本例の可変光ディレイライン装置1を設けた構成の一例を示してある。この例では、P点から入力された光信号が光ファイバ3aを介して可変光ディレイライン装置1に入力され、当該光信号に対して可変光ディレイライン装置1により任意の一定時間の遅延量が与えられ、その後、可変光ディレイライン装置1により遅延量が与えられた光信号が光ファイバ3bを介してQ点へ出力される。
【0015】
図3には、光ファイバアレイAの構造の一例を立体的に示してある。なお、図3に示される光ファイバアレイAは、例えば、図1に示されるそれぞれの光ファイバアレイA1、A2として用いることが可能である。
本例の光ファイバアレイAは、光ファイバ部11とアレイ基板12を組み合わせて構成されている。
光ファイバ部11は、複数である本例では7本の光ファイバ21を並列に等間隔で並べて有している。これら複数の光ファイバ21のそれぞれの一端は、光ファイバ21の長さ方向に対して垂直に切断された平面となっており、コア23が表面に出ている。
また、これら複数の光ファイバ21のそれぞれの他端については、これら複数の光ファイバ21のうちの1本が入力或いは出力のための光ファイバ(入出力用の光ファイバ)22となっており、また、入力或いは出力のための1本の光ファイバ22以外の複数である本例では6本の光ファイバ(遅延用の光ファイバ)21は、2本ずつが組となってループを形成するようにつながっている。
【0016】
アレイ基板12は、その上面に、光ファイバ21と同数である本例では7本のV字型の溝(V溝)32を並列に等間隔で並べて有している。それぞれのV溝32の上部にそれぞれの光ファイバ21が載せられており、その上に押え板33が載せられて押えられている。
また、アレイ基板12は、設置される光ファイバ21の長さ方向に対して垂直となる平面状の端面31を有している。この端面31において、複数の光ファイバ21の切断面(端面)がその平面上に並ぶように配置される。
このように、本例の光ファイバアレイAでは、アレイ基板12上に、複数の光ファイバ21のコア23が端面31における直線上に任意の等しい間隔(コアピッチ)で並ぶように配置及び固定された構造を有する。この直線は、アレイ基板12の底面と平行である。
【0017】
また、図1に示されるように2個の光ファイバアレイA1、A2が組み合わされる構成では、一方の光ファイバアレイが有する入力或いは出力のための光ファイバ22が入力のために使用され、他方の光ファイバアレイが有する入力或いは出力のための光ファイバ22が出力のために使用される。
また、これら2個の光ファイバアレイA1、A2の端面31を対向させて接触させた状態で、これらの端面31の相対位置を光ファイバの並び方向に移動させることが可能な機構を有しており、このような移動の過程で、互いに適合する幾つかの位置において互いの光ファイバ21の断面が光学的に接続するようになっている。このとき、入力端から出力端までの間に存在する光ファイバ21の長さが変化するため、これにより、伝送する光信号の遅延量を可変に調整することができる。
【0018】
図4には、本例の可変光ディレイライン装置における、光経路の切り替えの態様の一例を示してある。
具体的には、一方の光ファイバアレイA1及びその7本の光ファイバB1a、B1b、B2a、B2b、B3a、B3b、B4を示してあるとともに、他方の光ファイバアレイA2及びその7本の光ファイバC1a、C1b、C2a、C2b、C3a、C3b、C4を示してある。
これら2個の光ファイバアレイA1、A2は、これらの端面31a、31bで接触させられて配置される。
一方の光ファイバアレイA1では1本の光ファイバB4が出力端Qに接続されて光信号の出力のために使用され、他方の光ファイバアレイA2では1本の光ファイバC4が入力端Pに接続されて光信号の入力のために使用される。
【0019】
図4には、2個の光ファイバアレイA1、A2の初期的な位置状態の一例として、入力のための光ファイバC4と出力のための光ファイバB4とが直接的に接続された状態を示してあり、つまり、入力端Pから出力端Qへ伝送する光信号に与える遅延量が最小となる状態を示してある。この初期状態から、2個の光ファイバアレイA1、A2を端面31a、31bに沿って(2倍のコアピッチ)ずつ移動させることにより、遅延量を調整することができる。
【0020】
このように、本例の可変光ディレイライン装置では、一方の光ファイバアレイA1上の光ファイバB4の端面と対向する他方の光ファイバアレイA2上の光ファイバC4の端面とが光学的に接続される位置を初期位置とする。そして、一方の光ファイバアレイA1を光ファイバB4が配置されている方向へ動かすと、初期位置からの移動量がコアピッチの2倍の周期となる位置毎に、光ファイバC4から入力されて光ファイバB4から出力される光信号の光経路が切り替わる。これにより、光ファイバC4から光ファイバB4までの光経路の長さ(光路長)が変化することで、光ファイバC4から入力された光信号が光ファイバB4から出力されるまでの遅延の量(遅延の時間)が変化する。この結果、光ファイバアレイA1、A2の移動量に応じて光信号の遅延量を変化させることが可能になる。
【0021】
図5には、本例の可変光ディレイライン装置における、遅延量の調整の一例を示してある。
この例では、光ファイバC4の端面と光ファイバB2aの端面とが光学的に接続され、光ファイバB2bの端面と光ファイバC3bの端面とが光学的に接続され、光ファイバC3aの端面と光ファイバB3aの端面とが光学的に接続され、光ファイバB3bの端面と光ファイバC2bの端面とが光学的に接続され、光ファイバC2aの端面と光ファイバB4の端面とが光学的に接続されている。この状態では、入力端Pから入力される光信号が、光ファイバC4、光ファイバB2a、光ファイバB2b、光ファイバC3b、光ファイバC3a、光ファイバB3a、光ファイバB3b、光ファイバC2b、光ファイバC2a、光ファイバB4を介して出力端Qへ出力されるように、光経路が切り替えられて、遅延量が調整されている。
【0022】
なお、本例では、光ファイバB1aと光ファイバB1bの組や、光ファイバB2aと光ファイバB2bの組や、光ファイバB3aと光ファイバB3bの組や、光ファイバC1aと光ファイバC1bの組や、光ファイバC2aと光ファイバC2bの組や、光ファイバC3aと光ファイバC3bの組は、片方がループ状に接続されていることから1本の光ファイバとなっているが、本実施例では、説明の便宜上から、それぞれ異なる符号を付して2つの部分があるとみなして(2本とみなして)説明している。これら互いに接続される隣接する2本の光ファイバ(例えば、光ファイバB1aと光ファイバB1bの組など)としては、例えば、もともと単一の光ファイバを用いてもよい。
【0023】
具体的には、例えば、一方の光ファイバアレイA1に配置された光ファイバB1aは隣接する光ファイバB1bと接続されており、光ファイバB1aの端面から入力した光信号が光ファイバB1bの端面へ出力されるように、又は、光ファイバB1bの端面から入力した光信号が光ファイバB1aの端面へ出力されるように構成されている。同様に、光ファイバB2aは光ファイバB2bと接続されており、光ファイバB3aは光ファイバB3bと接続されている。また、光ファイバB4は光入出力用として使用される。
また、他方の光ファイバアレイA2についても、同様な構成を有している。
【0024】
本例では、それぞれの光ファイバアレイA1、A2において、複数の光ファイバが規則的に配置されている。
具体的には、例えば光ファイバB1aと光ファイバB1bのように互いに接続された光ファイバはアレイ基板12上で隣接して配置され、また、光ファイバB4のように光入出力用の光ファイバは、光ファイバアレイA1、A2の端面31a、31bを垂直方向から見て右端又は左端のいずれか一方(本例では、右端)に配置される。
このような配置とすることで、光ファイバアレイA1、A2の芯数(光ファイバの数)を増やすことに容易に対応することが可能となる。
【0025】
ここで、例えば光ファイバB1aと光ファイバB1bの組のように互いに接続された光ファイバ対としては、任意の数の対が光ファイバアレイA1、A2に配置されてもよい。
また、それぞれの光ファイバの長さとしては、例えば、必要とする遅延量などに応じて、任意に設定や変更されてもよい。例えば、波長λに対して、(λ/4)の奇数倍の長さに設定することができる。
また、光ファイバアレイA1、A2の芯数(光ファイバの数)としては、種々な数が用いられてもよい。
【0026】
例えば、使用する光ファイバの長さを長くすることにより、遅延量の可変範囲を大きくすることが容易に可能である。また、光ファイバアレイA1、A2の芯数を増やすことにより、より細かなステップで遅延量を切り替えることが可能になる。
この場合、光ファイバ長を長くしても、光ファイバは非常に細く可撓性があるため、光ファイバを収容するための容積に与える影響は少ない。また、光ファイバアレイA1、A2の芯数を増やしても、アレイピッチを200μm程度とすることが可能であるため、光ファイバアレイA1、A2の大きさに与える影響は少ない。従って、遅延量の可変範囲を大きくしても、装置自体の小型化を維持することが可能である。
【0027】
また、例えば、従来の方式であるエアギャップ方式を使用する光可変ディレイライン装置と同じ装置容積であれば、エアギャップ方式により設定可能な遅延量である数ナノ秒に比べて、本例の可変光ディレイライン装置では、光ファイバ長を容易に10m単位で設定することができるため、少なくとも10倍以上に相当する数十ナノ秒の遅延量を設定することが可能である。
また、本例の可変光ディレイライン装置では、例えば、従来の方式で必須となるレンズやミラーやプリズムを必ずしも必要としないため、装置をより簡易化や安価にすることが可能である。
【0028】
また、光ファイバアレイA1、A2を動かして光経路を切り替える機構としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、電子制御のアクチュエータを備えて当該アクチュエータを使用して自動的に光ファイバアレイA1、A2を移動させるような構成が用いられてもよく、或いは、人が手動で光ファイバアレイA1、A2を移動させるような構成が用いられてもよい。その際、光ファイバの軸のずれによる光パワーの減衰を利用して、光可変アッテネータとしての機能を併せ持たせる構成とすることもできる。
また、本例では、一対の光ファイバアレイA1、A2をスライドさせて移動させる構成を示したが、移動に関して他の構成が用いられてもよく、例えば、一対の光ファイバアレイA1、A2がV溝32と同様なV溝を別途備えて、抜き差しにより種々な配置で結合される構造とし、一度抜いてから再び差し込むことで移動させられるような構成を用いることもできる。このような構成では、可変光ディレイラインとしての機能と、コネクタとしての機能を併せ持つことができる。
【0029】
また、例えば、一対の光ファイバアレイA1、A2の相対的な位置決め機構や固定機構が設けられてもよい。
また、一対の光ファイバアレイA1、A2の対向している端面31a、31bは、例えば、圧力をかけて物理的に接触させられているような構成が用いられてもよく、或いは、これらの端面31a、31bの間に空隙が設けられるような構成が用いられてもよい。このような空隙が設けられる場合には、例えば、その空隙に屈折率調整用の液体が塗布や充填などされてもよい。
【0030】
また、光ファイバアレイA1、A2の端面31a、31bの間に空隙が設けられる場合には、上記のように反射減衰特性を維持するために屈折率整合液で空隙を満たす構成のほかに、一例として、端面31a、31bに反射防止膜(ARコート)を施す構成を用いることができ、他の一例として、端面31a、31bを傾斜角8度に研磨加工する構成を用いることができる。端面31a、31bを傾斜角8度に研磨加工する構成では、例えば、光ファイバアレイA1、A2の側面から見た場合に、複数の光ファイバの並び方向に平行な2つの端面31a、31bの一方が傾斜角8度で傾斜されるとともに、他方がこれと平行になるように傾斜角8度で傾斜される。
また、光ファイバアレイA1、A2の端面31a、31bの間に空隙が設けられる場合には、光ファイバアレイA1、A2(図6の例では、例えば、光ファイバアレイ部(光経路切り替え部)43)を気密容器に入れて、空隙を防塵防湿するのが好ましい。例えば、空隙を屈折率整合液で満たす場合には、気密容器に不活性ガスを充填して、屈折率整合液の劣化を防止することができる。
【0031】
以上のように、本例の可変光ディレイライン装置では、光ファイバ21及び当該光ファイバ21を固定して配置するアレイ基板12を有する2個の光ファイバアレイA1、A2を組み合わせた構成において、光ファイバアレイA1、A2を動かして、対向させた光ファイバアレイA1、A2の接合位置を変化させることで、光経路を切り替えて光路長を可変し、これにより、対応する量の遅延を光信号に与える。一例として、インライン状の光多芯コネクタをスライドさせて、ケーブル長を調整することで遅延量を調整する。
【0032】
従って、本例の可変光ディレイライン装置では、例えば、光経路として光ファイバのみを使用するため、レンズやミラーやプリズムを必ずしも必要とせず、装置構造の簡易化が可能であり、且つ、光を伝播させるための空間を必ずしも必要としないため、装置の小型化が可能であり、且つ、使用する光ファイバ長を容易に調整することが可能であるため、光信号に与える遅延量を広範囲に任意に変えることが可能である。このように、効率的な構成で効果的に、光信号に対して可変な遅延量を与えることができる。
【実施例2】
【0033】
本発明の第2実施例を説明する。
図6(a)、(b)には、本発明の他の一実施例に係る可変光ディレイライン装置の構成例を示してある。
図示されるように、本例の可変光ディレイライン装置は、2つの光ファイバ遅延部41、42の間に光ファイバアレイ部(光経路切り替え部)43が設けられて構成される。それぞれの光ファイバアレイF1、F2はV溝基板とテープ型光ファイバ44、45から構成されており、それぞれのテープ型光ファイバ44、45により光ファイバアレイ部43とそれぞれの光ファイバ遅延部41、42との間が接続される。
なお、本例では、被覆されたテープ型の光ファイバ44、45を用いた場合を示したが、テープ型以外の光ファイバが用いられてもよい。
【0034】
光ファイバアレイ部43では、2つの光ファイバアレイF1、F2の端面51a、51bが対向させられており、一方の端面51aに複数の光ファイバD1a、D1b、D2a、D2b、D3a、D3b、D4(光ファイバ45)の断面が並べられて設けられているとともに、他方の端面51bに複数の光ファイバE1a、E1b、E2a、E2b、E3a、E3b、E4(光ファイバ44)の断面が並べられて設けられている。例えば、上記した第1実施例の場合と同様に、これら2つの光ファイバアレイF1、F2の相対位置をずらすことにより、光経路を切り替えて、光信号に与える遅延量を変更することができる。
また、本例では、それぞれの光ファイバ遅延部41、42において、光ファイバのループが形成されており、これにより光信号の遅延が実現されている。
【0035】
ここで、本発明に係る可変光ディレイライン装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。
例えば、特許文献1に記載されるのと同様に、一対の光ファイバアレイ間で光ファイバを1列ずらして接続してもよい。この場合、コネクタとしての機能はなくなるが、光ファイバへの加工が少なくて済む。
具体的には、一例として、一方の光ファイバアレイの端面に設けられる光ファイバP1、P2、・・・、Pn(並び順通り)と、これに対応して他方の光ファイバアレイの端面に設けられる光ファイバQ1、Q2、・・・、Qn(並び順通りで、2つの光ファイバアレイがずらされずに対向させられたときにそれぞれP1、P2、・・・、Pnに対向する)について、端面とは反対の側で、光ファイバQ1、P2間を接続し、光ファイバQ2、P3間を接続し、・・・、光ファイバQ(n−1)、Pn間を接続し、光ファイバP1、Qnを入出力端とする。この構成では、これら一対の光ファイバアレイがずらされずに対向させられると、P1、Q1、P2、Q2、・・・、Q(n−1)、Pn、Qnの順で光ファイバが接続されて遅延量が最大となり、また、端面において、光ファイバP1、Q2の断面を接続する状態や、光ファイバP1、Q3の断面を接続する状態や、・・・、光ファイバP1、Qnの断面を接続する状態へずらすことで、遅延量を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施例に係る可変光ディレイライン装置の構成例を示す図である。
【図2】光伝送システムの例を示す図である。
【図3】光ファイバアレイの構成例を示す図である。
【図4】可変光ディレイライン装置における光経路の切り替えの態様の例を示す図である。
【図5】可変光ディレイライン装置における遅延量の調整を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る可変光ディレイライン装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1・・可変光ディレイライン装置、 2、3a、3b、21、22、B1a〜B3a、B1b〜B3b、B4、C1a〜C3a、C1b〜C3b、C4、D1a〜D3a、D1b〜D3b、D4、E1a〜E3a、E1b〜E3b、E4・・光ファイバ、 11・・光ファイバ部、 12・・アレイ基板、 23・・コア、 31、31a、31b、51a、51b・・端面、 32・・V溝、 33・・押え板、 A、A1、A2、F1、F2・・光ファイバアレイ、 41、42・・光ファイバ遅延部、 43・・光ファイバアレイ部(光経路切り替え部)、 44、45・・テープ型光ファイバ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変な遅延量で光信号を遅延させる可変光ディレイライン装置において、
端面と、一端が光信号の入出力端となるとともに他端の断面が前記端面に配置される入出力用の光ファイバと、両端の断面が前記端面に配置される遅延用の光ファイバとをそれぞれ有する一対の光ファイバアレイを互いの前記端面を対向させて配置して構成され、
前記一対の光ファイバアレイの前記端面の間で光学的に接続される前記光ファイバの断面の組み合わせが切り替えられて、前記一対の光ファイバアレイのそれぞれの前記入出力端の間の光経路の長さが切り替えられることで、当該光経路を伝送する光信号の遅延量が切り替えられる、
ことを特徴とする可変光ディレイライン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−301502(P2006−301502A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126372(P2005−126372)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】