説明

可変密度ゴルフクラブ

【課題】 ゴルフクラブヘッドを提供することである。
【解決手段】 本クラブヘッドは、ヒールとトゥとの間のバックに設けられ、ソールに向って延びる凹部をもつ本体を有する。凹部に整合するような形状のインサートは凹部内に位置決めされる。インサートは、クラブヘッド本体より低い比重をもち、クラブヘッドの質量をクラブヘッドの周辺部に向かって偏らせる。インサートは、クラブヘッドのマッスルを形成できる。クラブヘッドは鍛造され、凹部は機械加工によって形成される。凹部内にインサートを位置決めした後、クラブヘッドとインサートとの結合体は付加的な鍛造及び仕上げ工程を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、特に、密度が変化する部分を有するアイアンタイプの鍛造ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
アイアンタイプのゴルフクラブは、一般に、フロントフェースすなわち打球面と、トップラインと、ソールとを有する。フロントフェースはゴルフボールと接触し、該ボールを打つ。このフロントフェースには、ボールにスピンを与えるのに役立つ多数の刻み線又は溝が設けられる。トップラインは一般的には、ゴルファに特定の外観を与え、ウエイトをもたらすように形成される。ゴルフクラブのソールは、スィング中に地面と接触するので、特にゴルフショットに重要である。
【0003】
在来のアイアンタイプのゴルフクラブセットでは、各クラブは、一端にクラブヘッドを取り付け、他端にグリップを取り付けたシャフトを有する。クラブヘッドはゴルフボールを打つフェースを有する。フェースと垂直平面との成す角度はロフト角と呼ばれる。
【0004】
このセットは一般に、2番から9番までのアイアンと、ピッチングウェッジとを有する。ロブウェッジ、ギャップウェッジ、サンドウェッジのようなその他のウェッジも前記セットに任意に含まれることがある。各アイアンは或るシャフトの長さを有し、このシャフト長は、通常、セットを通じて短くなる、というのは、各クラブヘッドのロフト角はロングアイアンからショートアイアンになるにつれて増大するからである。シャフト長は、クラブヘッドのロフト角、慣性モーメント及び重心位置と共に、インパクト時のボールの飛び出し状態に種々の性能特性を与え、ボールの飛距離を決定する。飛距離は、一般に、ロフト角の減少と共に増大する。しかし、ロフト角の減少と共に使用の難しさも増加する。
【0005】
アイアンタイプゴルフクラブは、一般に、三種類、すなわち、ブレイドと、マッスルバックと、キャビティバックとに分けることができる。ブレイドは、伝統的なクラブであり、ソールからトップラインかけて幾分テーパーしているけれども、ソールからトップラインまで実質的に均一な外観を備えている。
【0006】
マッスルバックは、実質的に伝統的な外観を有し、ブレイドと似ているが、バックに追加の材料を備える。リブの形態であっても良いこの追加の材料は、クラブヘッドの重心を下げるのに用いることができる。ゴルフクラブの重心が接触時のボールの重心より低いと、ゴルフショットは容易となる。
【0007】
ブレイド及びマッスルバック構造は、スイートスポット(すなわち、ゴルフボールを打つ際に望ましいゴルフショットをもたらすフェースの面積)が小さいので、これらの構造は使用するのが比較的難しく、従って典型的には熟練したゴルファしか使用しない。しかし、これらのクラブは他の構造のものよりも、より大きな飛距離が得られるという有利を有する。さらに、これらの構造は通常、比較的軟らかい鍛造鋼で作られるので、ゴルファは、所望のように、ボールを操作し、ゴルフショットを形作ることができる。
【0008】
キャビティバックは、打球面と反対側のクラブのバックに中空又はキャビティを設けることによってクラブの質量の幾分かをクラブの周辺部に移動する最近の構造である。これにより、比較的大きなスィートスポットをもつ鍛造クラブを作ることができる。このことはまた、クラブフェースのサイズを増大でき、その結果スィートスポットは比較的大きくなる。キャビティによって得られる周辺部のウエイト付けはまた、トルク、例えばオフセンタヒット(中心からずれて打った場合)に起因して生じるトルクに対するクラブの抵抗の尺度であるクラブの慣性モーメントを増大する。これらのクラブは、ブレイド及びマッスルバックの場合より打ちやすく、未熟なゴルファや初心者でも使用できる。
【0009】
他の公知のゴルフクラブは、ウエイトをクラブに追加することにより所望のバランス又は慣性モーメントを達成する。これらクラブは典型的には、ウエイト部材をソールの底面の中心に追加している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、クラブヘッドの慣性モーメントを増大し及び(又は)クラブヘッドのスィートスポットを拡げるように密度の変化する複数の部分を有するゴルフクラブヘッドに関する。本発明は、従来かかる仕方で高められなかった鍛造ブレイド及びマッスルバッククラブに用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フロント面と、トップラインと、ソールと、バックと、ヒールと、トゥとを構成する本体を有するゴルフクラブヘッドに向けられる。バックはソールに向って延びる凹部を有する。凹部に整合するような形状のインサートは凹部内に位置決めされる。本体は第1の比重をもつ材料で形成され、またインサートは第1の比重より軽い第2の比重をもつ材料で形成される。インサート及び比重の差は、クラブヘッドの質量をクラブヘッドの周辺部に向かって偏らせ、クラブヘッドの慣性モーメントを改善し、スィートスポットを拡大する。
【0012】
金属で良いインサートは、鍛造されたブレイド、マッスルバックのアイアンタイプゴルフクラブのフィーリングに合致したソリッドなフィーリングをゴルフクラブに提供する。インサートは、クラブヘッドのバックに沿って凹部上に延び、クラブヘッドのマッスルを形成しても良い。バックは、実質的にキャビティがないのが好ましい。従って、本発明は、ユーザーがボールを所望のように扱うことができ、ゴルフショットを所望のような形態にできる能力を保持しながら、慣性モーメントを改善し、スィートスポットサイズを拡大する。
【0013】
鍛造は、本発明のゴルフクラブヘッドを形成する好ましい方法である。一例として本発明のゴルフクラブヘッドを鍛造する方法は、インゴットの形態のような予定の量の第1の材料を設けることを有する。インゴットは、高温に加熱されそして主型に入れられ、一回以上の鍛造圧搾又は衝撃を受けるようにできる。不要な押退け材料又はフラッシュは結果としてのクラブヘッド前駆体から取り除くことができる。
【0014】
凹部は前駆体クラブヘッドの一部を取り除くことにより形成される。これは、コンピュータ数値制御フライス盤によるような機械加工によって行われるのが好ましい。これらの形式の機械は、結果としての加工品の機械加工処理及び許容誤差にわたって正確に制御できる。その後、インサートは凹部内に位置決めされ、実質的に凹部を充填し、第2のクラブヘッド前駆体を形成する。この第2のクラブヘッド前駆体はその後、付加的な鍛造及び仕上げ工程を受けて本発明のゴルフクラブヘッドを形成できる。インサートは、ロック溝及び任意にはリブを有するのが好ましい。これらの特徴は、凹部内にインサートを固定保持するために鍛造中に本体材料と圧伸成形される。
【0015】
ゴルフクラブヘッドは種々の密度の複数の材料で形成してもよい。ゴルフスイング中にクラブヘッドを容易に閉じれるようにしかつ慣性モーメントを増大させるために、トゥの下方部分及び(又は)ホーゼルの上方部分はクラブヘッドの主要部分より大きな密度をもつ。
【0016】
同じ符号が同じ要素を示している添付図面を参照して本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
動作例以外は、または特に述べない限り、あらゆる数値範囲、量、値および百分率、例えば材料の量、慣性モーメント、重心の位置、ロフト角、および本明細書の以下の部分における他の物は、「約」なる用語が、値、量または範囲に表現上現れない場合においてさえ、「約」なる用語が先行するものとして読むべきである。従って、逆に指定されていない場合には、以下の本明細書および添付した特許請求の範囲に示された数値パラメータは、本発明により得られたと考えられる所定の性質に依存して可変可能性のある、近似値である。少なくとも、および特許請求の範囲に等価な原理の適用範囲を限定する意図なしに、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有意な数値の値に照らして、また通常の切り上げ、切捨て技術の適用によって、解釈されるべきである。
【0018】
本発明の広義の範囲を示す数値範囲およびパラメータが、近似値であるにも拘らず、特定の実施例に示された数値は、できる限り正確であるように報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、必然的に、各テスト測定に見られる標準偏差に起因する、ある程度の誤差を、元々含んでいる。更に、可変範囲を備える数値範囲が、ここに示された場合には、表示された数値を備える、これら数値のあらゆる組合せが、使用可能であることを意図している。
【0019】
図1は本発明のゴルフクラブヘッド1のフロント側を示している。ゴルフクラブヘッド1は本体10を有し、本体10は、フロント面11と、トップライン12と、ソール13と、バック14と、ヒール15と、トゥ16と、ホーゼル17とを構成する。フロント面11の打球面は溝18を有するのが好ましく、ソール13は本体10と一体でもよく、或いは、ヘッドに接合される、インサートのような、別体でもよい。クラブヘッド1は鍛造アイアンタイプゴルフクラブヘッドであるのが好ましい。
【0020】
図2はゴルフクラブヘッド1の横断面を示す。図2でわかるように、バック14は凹部20を有し、凹部20は、ヒール15とトゥ16との間に配置され、ソール13に向って延びる。凹部20は、クラブヘッド1から材料を除去し、クラブヘッド1の周辺部に向けてクラブヘッドの質量の多くを本質的に設け、このことは、クラブヘッドの重心を通って延びる垂直軸線を中心に測定された比較的大きな慣性モーメント(MOI)を生成し、クラブヘッドのスィートスポットのサイズを増大し、クラブヘッドの重心を下げる。慣性は、何らかの外力が作用しない限り、本体を静止させたままにするか、或いは一様な運動をさせたままにする特性事項である。MOIは、或る軸線を中心とする角加速度に対する本体の抵抗の度合い又は値であり、本体における各要素の質量の積と軸線からの要素の距離の二乗との和に等しい。従って、軸線から距離が増大するにつれて、MOIは増大し、このことはクラブを、オフセンターヒットに対してより寛容にする。クラブヘッドの周辺部に質量を移動し、或いは、配置し直すことにより、スィートスポットが拡大し、クラブの寛容性が高くなる。
【0021】
図3はゴルフクラブヘッド1用のインサート30を示す。インサート30は凹部20にぴったり対応するように形作られる。すなわち、インサート30は凹部20の輪郭に合致し、凹部20を実質的に満たすように形成され、形作られる。インサート30を凹部20内に位置決めしたときに、図4に示すように、インサート30及び本体10が実質的に中実の統一体を形成するのが好ましい。インサート30は、凹部20の上縁部上で、バック14に沿って延び、クラブヘッド1のマッスルを形成する。バック14は実質的にいかなるキャビティもないのが好ましい。かくして、本発明は非キャビティバックアイアンタイプゴルフクラブに、向上させたMOIと、拡大したスィートスポットを提供することができる。
【0022】
インサート30は、本体10の材料の比重より軽い比重をもつ材料で形成される。本体10の比重とインサート30の比重との差は少なくとも3であるのが好ましい。本体10は少なくとも8の比重を有してもよい。金属でも又はプラスチックでもよいインサート30は多くても8の比重を有してもよく、或いは、多くても5の比重を有するのがより好ましい。従って、インサート30は、クラブヘッドの質量を周辺部に向って偏らせ、これにより、クラブヘッドのMOIを増大させ、スィートスポットを拡大し、鍛造アイアンタイプゴルフクラブと一致したソリッドな感触をもたらし、ユーザーはボールを意のままに扱い、ゴルフショットを所望のように形作ることができる。
【0023】
クラブヘッド1は種々の仕方で形成することができる。ゴルフクラブヘッド1を形成する好ましい方法は、所定量の第1の材料を準備することを含む。この第1の材料で種々の製造技術又は工程を行い、第1のゴルフクラブ前駆体を形成する。例えば、所定量の第1の材料はインゴットの形態で提供されても良い。インゴットは、高温に加熱され、主型に配置され、一回又は二回以上の鍛造圧搾又は衝撃を受ける。押退けられた不要な材料、すなわち、フラッシュ(ばり)をクラブヘッド前駆体から取り除く。
【0024】
凹部20はクラブヘッド前駆体の一部を取り除くことにより形成される。この除去は、前駆体を機械加工することによって、好ましくは、CNCフライス盤のようなコンピュータ数値制御(CNC)機械を用いて行う。これらの形式の機械は、機械加工処理に対する高度の正確性とコントロール、並びに、加工品の厳密な許容誤差を可能とする。かくして、凹部20は正確な寸法形状に作られる。
【0025】
正確な寸法形状に作られ、凹部20にぴったり対応するように形作られたインサート30は、次に、凹部20内に位置決めされる。凹部20及びインサート30の両方は厳密な許容誤差に形成されるので、本体・インサート結合体によって形成された第2のゴルフクラブヘッド前駆体は、実質的に中実であり、通常、ブレイド及びマッスルバックゴルフクラブと関連した属性を持つ。第2の前駆体は、その後、加熱処理及び付加的な鍛造衝撃のような付加的な製造工程、並びに、ホーゼル孔及び溝形成、研磨、バフ磨き及び洗浄のようなクラブヘッド仕上げ工程を受け、図4の完成したゴルフクラブヘッドが形成される。
【0026】
インサート30はロック溝32と、任意にリブ34とを有するのが好ましい。インサート30を凹部20内に位置決めし、第2の前駆体を鍛造衝撃処理した後、ロック溝32に対向した本体10はロック溝32にスエージングし、インサート30を適所に係止し、本体10とインサート30とを結合する。同様に、リブ34は本体10にスエージングすることになる。リブ34はまた本体10に予荷重を与える。
【0027】
インサート30と関連して又は独立して、ゴルフクラブヘッド1のゴルフプレー特性を高める別の仕方として、本体10は変化する密度のものでも良い。例えば、図5に示すように、クラブヘッド1の本体10は、密度の異なる複数の材料で構成しても良い。本体10の主要部分42は、第1の密度をもつ第1の材料で構成するのが好ましい。本体10の第2の部分44は、クラブヘッド1のトゥ領域16、好ましくはトゥ領域の下方部分に、配置される。本体10の第2の部分44は、主要部分42の密度より大きな密度をもつのが好ましい。下方トゥ領域44により稠密な材料を設けることにより、ゴルフスィング中、クラブヘッド1を閉じ易くなり、これにより所望のゴルフショットを容易にできる。特に、ハンデキャップが中程度から高いゴルファにとって共通するスィングの問題は、インパクト時のクラブヘッドの閉じ損ないである。このスィング欠陥は、通常、右方に詰まったショットとなり、すなわちボールにスライススピン(すなわち右利きのゴルファの場合には時計まわり回転)が加わることになる。
【0028】
本体10のホーゼル部分46は、本体の主要部分42とは異なる材料で提供することができる。ホーゼル部分、好ましくはホーゼルの上部は、クラブヘッドの重心から比較的離れている。従って、ホーゼル部分46に、比較的多くの質量又は少量でも比較的稠密な材料を配置することにより、クラブヘッドのMOIは著しく増大し、ゴルフクラブの使い勝手が増す。
【0029】
本体10は一体の本体でもよい。すなわち、密度の異なる複数の材料を有する本体10は、インサートを備えることにより密度を変えることで達成する代わりに、全体として設けてもよい。本体10は、例えば粉末冶金又は鋳造を含む種々の方法で形成してもよい。
【0030】
クラブヘッド1に好適な材料は、本体の主要部分42にはチタン又はチタン合金、トゥ部分44及び(又は)ホーゼル部分46にはタングステン又はタングステン合金である。クラブヘッド1、トゥ部分44及び(又は)ホーゼル部分46の一つ又は複数の稠密(比較的高密度の)材料は、本体の主要部分42の比重の二倍以上の比重をもつのが好ましい。より好ましくは、本体の主要部分42の比重はトゥ部分44の比重の数倍であり、そして(又は)ホーゼル部分46の比重は本体の主要部分42の比重の数倍である。絶対値において、本体の主要部分42の比重は2.5〜7であるのが好ましく、3.5〜5.5であるのがより好ましく、また、トゥ部分44及び(又は)ホーゼル部分46の比重は10〜20であるのが好ましく、15〜20であるのがより好ましい。
【0031】
図6は本発明の別のゴルフクラブヘッド2の正面を示す。上述したゴルフクラブヘッド1と同様に、ゴルフクラブヘッド2はフロント面(図示していない)と、トップライン12と、ソール13と、バック14と、ヒール15と、トゥ16と、ホーゼル17とを構成している本体10を有する。本体10はチタン又はチタン合金を有する。ゴルフクラブヘッド2はさらに、ホーゼルインサート50及びトゥインサート60を有する。ホーゼルインサート50は高いホーゼルインサートであり、トゥインサート60は低いトゥインサートであるのが、好ましい。
【0032】
ホーゼルインサート50はホーゼル17上に位置するように形成されたスリーブである。ホーゼルインサート50は圧嵌め、接合、又はろう付けによってホーゼルに接合される。ホーゼルインサート50はタングステン又タングステン合金を含んでもよい。図6Aはホーゼルインサート50を示す。
【0033】
本体10はクラブヘッド2のトゥ領域16に又はその近くに凹部19を備える。トゥインサート60は凹部19内に位置決めされる。トゥインサート60は凹部19を実質的に満たすような形作られるのが好ましい。トゥインサート60はタングステン又はタングステン合金を含むことができる。図6Bはトゥインサート60を示す。
【0034】
本体10は第1の比重をもつ第1の材料を有する。ホーゼルインサート50は第2の比重をもつ第2の材料を有する。トゥインサート60は第3の比重をもつ第3の材料を有する。第2、第3の比重は第1の比重より大きい。第2、第3の比重は実質的に等しいか、或いは異なってもよい。第2、第3の比重を実質的に等しくすることにより、クラブヘッド2に対して等しいバランスが得られる。第2の比重を第3の比重より大きくすることにより、クラブヘッド2のヒール15の質量が多くなり、クラブヘッドの重心をヒール15に向って偏らせる。これは、ボールをスライスさせる傾向があるゴルファに望ましい。というのは、クラブヘッドの重心をヒール15に向かって偏らせることにより、クラブを容易に閉じさせ、インパクト時にクラブヘッドが開いたままになる可能性が低減するからである。代わりに、第3の比重を第2の比重より大きくすることにより、クラブヘッド2のトゥ16の質量が多くなり、クラブヘッドの重心をトゥ16側に偏らせる。これは、ボールをフックさせる傾向があるゴルファに望ましい。というのは、クラブヘッドの重心をトゥ16側に偏らせることにより、クラブは閉じ難くなり、インパクト時にクラブヘッドがあまりにすぐに又はあまりに大きく閉じる可能性が低減するからである。
【0035】
クラブヘッドのMOIが大きければ大きいほど、クラブヘッドが有する、ショット時の回転に対するクラブヘッドの抵抗が大きくなる。言い換えれば、クラブヘッドのMOIが大きければ大きいほど、ゴルフクラブの寛容性及び扱い易さは大きくなる。大きなMOIでは、ゴルフクラブは、クラブヘッドの重心に合わせて正確に打ててないショットでもボールを真っ直ぐに飛ばせる。大きなMOIを有することに関する重要な軸線には、クラブヘッドの重心を通って延びる垂直軸線と、水平軸線とがを含まれる。インサート50、60をクラブヘッドの重心からさらに離すように移動させることによりMOIは増大する。高いホーゼルインサート50及び低いトゥインサート60を設けると、垂直軸線及び水平軸線の両方の軸線を中心とするMOIは増大する。
【0036】
クラブヘッド2は、重心を通って延びる垂直軸線を中心として測ったMOIが250kgmm2以上であるのが好ましい。この垂直軸線MOIは250kgmm2〜300kgmm2であるのが好ましい。クラブヘッド2は、重心を通って延びる水平軸線を中心として測ったMOIが55kgmm2以上であるのが好ましい。この水平軸線MOIは55kgmm2〜65kgmm2であるのが好ましい。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、これらの実施形態は例示目的でのみ提供されたものであり、限定する目的で提供されたものでないことを理解すべきである。形態及び細部における種々の変更を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、できることは当業者にとって明らかになろう。かくして、本発明は上述した例示の実施形態によって限定されるべきでなく、特許請求の範囲及びその均等物に従ってのみ構成されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のゴルフクラブヘッドのフロント側を示す。
【図2】図1のゴルフクラブヘッドの横断面図示す。
【図3】図1のゴルフクラブヘッドに使用するインサートの横断面図を示す。
【図4】図3のインサートを取り付けた図2の横断面図を示す。
【図5】本発明の別のゴルフクラブヘッドの正面図を示す。
【図6】本発明の別のゴルフクラブヘッドの正面図を示す。
【図6A】図6のゴルフクラブヘッドのホーゼルインサートを示す。
【図6B】図6のゴルフクラブヘッドのトゥインサートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打球面と、トップラインと、ソールと、バックと、ヒールと、トゥとを構成する本体を有し、前記バックが前記ソールに向って延びる凹部を有し、前記本体が第1の比重を有する材料で形成され、
前記凹部内に位置決めされたインサートを有し、前記インサートが前記凹部にぴったり対応するように形作られ、前記インサートが前記第1の比重よりも軽い第2の比重を有する、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記インサートが、クラブヘッドのマッスルを形成するように、前記バックに沿って前記凹部上に延びる、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記バックに実質的にキャビティがない、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記インサートが、前記インサートを前記凹部内に保持するように前記本体と係合するロック溝を備える、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記インサートが、前記本体に予荷重を加えるリムを備える、請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記インサートが、スエージ加工によって前記凹部内に保持される、請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第1の比重が少なくとも8である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第2の比重が多くても8である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記第1の比重が少なくとも8である、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記第2の比重が多くても5である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記第1と第2の比重の差が少なくとも3である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記本体が鋳造された、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記インサートが金属である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記凹部が前記インサートによってほぼ満たされている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
打球面と、トップラインと、ソールと、バックと、ヒールと、トゥと、ホーゼルとを構成する一体の本体を有し、前記本体が、第1の比重をもつ第1の材料と、前記第1の比重よりも大きな第2の比重をもつ第2の材料とを有する、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記第1の比重が2.5〜7であり、前記第2の比重が10〜20である、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記第1の比重が3.5〜5.5であり、前記第2の比重が15〜20である、請求項16に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
前記第2の比重が前記第1の比重の少なくとも二倍である、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
前記第2の比重が前記第1の比重の少なくとも三倍である、請求項18に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
前記トゥの少なくとも一部分が前記第2の材料を含む、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項21】
前記ホーゼルの少なくとも一部分が前記第2の材料を含む、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項22】
前記トゥの少なくとも一部及び前記ホーゼルの少なくとも一部が前記第2の材料を含む、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項23】
前記バックが、前記ソールに向って延びる凹部を含み、前記凹部内に位置決めされたインサートを有する、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項24】
前記インサートが前記第1の比重及び第2の比重よりも小さい第3の比重をもつ、請求項23に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項25】
前記第3の比重が多くても8である、請求項23に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項26】
前記第3の比重が多くても5である、請求項25に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項27】
前記インサートが金属である、請求項23に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項28】
打球面と、トップラインと、ソールと、バックと、ヒールと、トゥと、ホーゼルとを備える本体と、
第2の比重をもつ第2の材料を含むホーゼルインサートと、
第3の比重をもつ第3の材料を含むトゥインサートとを有する、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項29】
前記第2、第3の比重が前記第1の比重より大きい、請求項28に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項30】
前記第2、第3の比重がほぼ等しい、請求項29に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項31】
前記第2の比重が前記第3の比重よりも大きい、請求項29に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項32】
前記第3の比重が前記第2の比重よりも大きい、請求項29に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項33】
前記本体がチタン又はチタン合金を含み、前記インサートがタングステン又はタングステン合金を含む、請求項28に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項34】
重心を有し、
クラブヘッドが、前記重心を通って延びる垂直軸線を中心に測定された、250kg・mm2よりも大きな慣性モーメントを有する、
請求項28に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項35】
前記慣性モーメントが250kgmm2〜300kgmm2である、請求項34に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項36】
重心を有し、
クラブヘッドが、前記重心を通って延びる水平軸線を中心に測定された、55kg・mm2よりも大きな慣性モーメントを有する、
請求項28に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項37】
前記慣性モーメントが55kgmm2〜65kgmm2である、請求項36に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項38】
前記ホーゼルインサートが、前記ホーゼルに位置するように形作られたスリーブである、請求項28に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項39】
前記スリーブが、圧入、接着、又は、ろう付けによって前記ホーゼルに結合される、請求項38に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項40】
前記本体が凹部を有し、
前記トゥインサートが前記凹部内に嵌合するように形作られた、
請求項28に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項41】
前記凹部を実質的に満たすように前記トゥインサートが形作られている、請求項40に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項42】
所定量の第1の材料を準備することが、少なくとも8の比重をもつ材料を準備することを含み、第2の材料のインサートを準備することが、多くても8の比重をもつ材料のインサートを準備することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項43】
前記インサートを準備することが、金属インサートを準備することを含む、請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2006−51366(P2006−51366A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233529(P2005−233529)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】