説明

可撓性加熱要素を形成する方法

本発明は、所望の抵抗率及び出力を備えた電力損失型(power dissipative)導電性トラックパターンを形成する導電性トラックの所望のパターンを有する加熱要素の製造方法であって、該所望のパターンに従う輻射線又は圧力による像様曝露、そして生じた潜像の現像の際に、該所望のパターンに従う金属画像を提供することができる、支持体の少なくとも一方の側に塗布された感光性又は感圧性層を有して成る支持体を含む、感光性又は感圧性要素を用意すること、該層内に潜像を形成するために、所望の導電性パターンに従って該要素の該層を輻射線又は圧力に像様曝露すること;そして、該支持体上に、該潜像のパターンに対応する導電性金属パターンを形成するために、該要素を現像することを含んで成る方法を提供する。この加熱要素は、可撓性支持体上に形成することができ、加熱されるウィンドウ/ウィンドウスクリーン用途において特に有用性を見出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドウ、フロントガラスなどに形成された結露又は霜を低減し、そして透明性を改善するために、ウィンドウ、フロントガラスなどに熱を提供する目的で、可撓性支持体上に加熱要素を形成することに関する。本発明は具体的には、所望のパターンに従って抵抗金属トラックを形成することに関し、これにより、各トラックパターン端部を適切な電源に接続すると、トラックパターンが、これが物理的に適用されている基板に、好適であり且つ望ましい加熱効果を提供することが可能になる。本発明は、加熱式ウィンドウ/フロントガラス用途において特定の有用性を見いだす。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば、自動車、鉄道機関車、船舶及び航空機は、あらゆる天候においてこれらを操作するためにクリアな視界を必要とする。何らかの形態でバイザーを組み込んだ個人向け屋外機器も、同様の要件を有する。或る特定の光学機器物品、例えば遠隔屋外セキュリティ・カメラ、又はより複雑な屋内機器内に埋め込まれた冷却型光電子倍増管ハウジングは、水滴、結露などがあってはならないウィンドウを備えている。
【0003】
霧及び霜の形成と関連する問題を克服してこれらを防止するように、上記用途のもののようなウィンドウ及びフロントガラスを加熱することが、必要なクリアな視界を提供するために求められる。典型的には、必要な加熱は、フロントガラス又は他の透明基板内の埋込み型回路又アレイの導電線間に、又はフロントガラス/基板上の導電性塗膜間に電圧を印加することにより、達成される。
【0004】
一般に、例えばフロントガラスに加熱効果を提供するために、繊細な線のアレイ又は導電性塗膜を含む加熱要素に電圧を印加する際には、互いに対向する要素エッジに沿って間隔を置いて設けられた一対のバスバーによって、バスバーを通して電気エネルギーを均一に分配するように電位源が加熱要素に接続される。典型的には、要素を保護するために、要素は2つの透明材料シート間にラミネートされるので、塗膜及びバスバーは、2つのシート間に位置決めされ、これらのシートはまた、ラミネーション工程において応力点を回避するように、薄いバスバーを必要とする。自動車業界は、自動車フロントガラス内の加熱要素の種々の埋め込み手段を製造している。
【0005】
米国特許第3612745号明細書には、熱膨張及び収縮に対するフレキシブル性及び反応性を提供するために、横方向波形の形態で配列された導電性金属フォイルの固体ストリップを含む可撓性バスバー集成体が記載されている。ストリップは、中間層フィルム内部に埋め込まれ、そして導電性金属熱可塑性テープでカバーされ、フィルムは続いて、加熱能力を提供するように導電性塗膜に被覆され、そして中間層フィルムは次いで、透明ウィンドウを形成するように2つの透明シート間にラミネートされる。この方法の難点は、高電圧処理用途には適していないこと、及びテープの複雑な製造を含む。
【0006】
米国特許第4057671号明細書には、微粉砕された高導電性金属粒子と、基板上に保持された導電性回路に対する接触状態で融解される低温可融性金属合金粒子との混合物から成る低温可融性バスバー・ペーストが教示されている。この技術は低温基板を使用した場合に効果的であるが、しかし、細長いペースト・ストリップは、塗布された基板を横切る電流分配に影響を及ぼすおそれのある、長さ方向の高い抵抗を有する。
【0007】
米国特許第4361751号明細書には、バスバーを有する透明(非導電性)基板上に導電性パターンが塗布された透明導電性ウィンドウが記載されており、このバスバーは、電位源及び導電性層との接続部を有するワイヤメッシュの形態の通電部材を含み、導電性層は、通電メッシュと導電性塗膜との間に配置される。これは、低い電気抵抗、及び導電性パターンを通して電流を均一に分配する(高い電流密度を回避する)能力を有する薄い可撓性の2成分バスバーを提供する。
【0008】
必要な加熱を可能にするために導電線の電気回路又はアレイに電圧を印加する際に、脆弱な回路を短絡又は物理的損傷から保護するために、基板、例えばガラスの2つの層の間に回路/アレイをラミネートすることが、やはり典型的である。このような回路内に使用される線は、基板が使用者にとって効果的に透明なままであることを可能にするのに十分に細くなければならないので、特に脆弱である。
【0009】
種々異なるタイプの車両に対する最小熱放散所要量は、よく知られている。鉄道機関車、海洋船舶、及び航空機は、典型的には少なくとも4.5 W/dm2を必要とする自動車に対する要件と比較して、特に強い放散の要件を有している。ゴーグル、バイザー、及びカメラを含む他の屋外機器、並びに、冷却型光電子倍増管、及び光学センサーを含む屋内機器は、ウィンドウを結露のない状態で維持するために、このレベルを上回る放散を必要とすることはないと予期される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フロントガラス材料中に真直ぐな電熱線を埋め込むことに関与する透明加熱要素は、不均一に分配された加熱を被り、そして線のうちの1本が破断した場合には、影響を受ける領域に熱が顕著に存在しなくなる。導電性酸化物の連続薄膜は、均一に分配された加熱を可能にすることができるが、しかし、典型的な12 V電源の場合、十分な電力損に所要の導電率は、光吸収が極めて顕著になるほどにフィルムを厚くすることを必要とし、或いは、システムは、より小さなスクリーン成分領域に電流を供給するために二次バスバー・システムを必要とする。いずれの事例においても、製作は高価であり、そして所望の電力損及び光透明性を達成することはない。
【0011】
本発明の目的は、その材料が、最大10 W/dm2又はそれ以上の放散レベルに対して全体的に堅牢であるような、経済的に製造される、効果的に透明な加熱要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、所望の抵抗率及び出力を備えた電力損失型(power dissipative)導電性トラックパターンを形成する導電性トラックの所望のパターンを有する加熱要素の製造方法であって、
該所望のパターンに従う輻射線又は圧力による像様曝露、そして生じた潜像の現像の際に、該所望のパターンに従う金属画像を提供することができる、支持体の少なくとも一方の側に塗布された感光性又は感圧性層を有して成る支持体を含む、感光性又は感圧性要素を用意すること、
該層内に潜像を形成するために、所望の導電性パターンに従って該要素の該層を輻射線又は圧力に像様曝露すること;そして、
該支持体上に、該潜像のパターンに対応する導電性金属パターンを形成するために、該要素を現像すること、
を含んで成る方法が提供される。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、上記方法によって得ることができる加熱要素が提供される。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、車両のフロントガラスのための加熱要素であって、被加熱領域上に、支持基板上の電力損失型導電性トラックパターンを含み、導電性トラックパターンが、光透過率が少なくとも80 %の導電性メッシュである、加熱要素が提供される。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、支持基板上に導電性トラックパターンを含む加熱要素であって、導電性トラックパターンが、幅15 μm以下のトラックを含み、要素が、10オーム/□以下のシート抵抗、及び90 %を上回る光透過率を有する、加熱要素が提供される。
【0016】
本発明の第5の態様によれば、加熱要素の製造に際しての感光性又は感圧性画像形成要素の使用であって、要素が、支持基板と、支持基板によって支持され、そしてバインダー組成物中に分散された感光性又は感圧性金属塩を含む感光性又は感圧性層とを含む、感光性又は感圧性画像形成要素の使用が提供される。
【0017】
本発明の第6の態様によれば、少なくとも2つの透明ガラス材料層を含むガラスと、上記方法に従って形成された導電性金属パターンを一方又は両方の側に有し、ガラス材料層間に広がる少なくとも1つの中間層材料層を含む加熱要素と、加熱要素を電源に接続する接続手段とを含んで成る電気加熱式ウィンドウが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による加熱要素は、周知の従来技術よりも、製造するのに経済的である。本発明による加熱要素は、均一に分配された加熱を提供する周知の従来技術よりも効果的に透明である。本発明による加熱要素は、所望の目的にとって十分に堅牢であり、そしてフロントガラス内に埋め込まれることに限定されない。本発明による加熱要素は、これが加熱効果を提供するように意図されたフロントガラス又はバイザー材料の内面又は外面上に別個に取り付けられた交換可能な層であってよい。
【0019】
さらに、本発明による加熱要素は、加熱されるべき基板に対して別個の透明可撓性支持体上に製造し、続いて、加熱されるべき基板、例えばフロントガラスにラミネートすることができる。本発明の方法は、均一に分配された加熱を可能にする周知の従来技術の方法よりも経済的な、好適な加熱要素の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の加熱要素は、可撓性支持体上に形成することができ、加熱されるべき湾曲面への簡便な適用、及び取り扱いやすさを可能にする。本発明の加熱要素はさらに、材料の劣化及び歪みなしに5 W/dm2の電力損を供給することができる。本発明の加熱要素はまた、軽量であることが可能であり、これにより、取り付けコスト及び配送コストを低くする。本発明による加熱要素の製作はまた、比較的シンプルなプロセスであり、そしてコストが比較的低いという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、フロントガラスのような物体のための加熱システムにおいて使用するための、非導電性支持基板上に電力損失型金属トラックパターンを含む加熱要素、及び加熱要素の製造方法を提供する。この加熱システムは典型的には、電源(例えば12V電源)、加熱要素、及び加熱要素と電源とを接続するための少なくとも2つの接続点(例えばバスバー)を含む。
【0022】
本発明の方法は、邪魔のない視界を与えるのに十分な光透過率を理想的に維持しつつ、所望のパターン、及び特定の用途のための放散出力を有する加熱要素を生成することを伴う。この方法は、所望の導電性パターンに従って輻射線又は圧力曝露を、典型的にはバインダー中に金属塩を含む感光性又は感圧性層に施すことにより潜像を生成し、続いて、対応する金属パターンを形成するために現像を行うことを伴う。所望の場合には、現像プロセスの一部として、物理現像(すなわち無電解めっき)及び/又は電気化学現像(電気めっき)によって金属画像をめっきすることにより、金属画像の形態及び導電率を改善することができる。好ましくは、コンベンショナルな現像によって形成された金属画像は、電流を運ぶことができ(すなわち導電性)、そして、無電解めっき工程を必要とすることなしに、電気めっきすることができる。
【0023】
利用される感光性又は感圧性材料を塗布することができる支持基板は、所期の実用性に依存し、そして、加熱効果が望まれる任意の基板、又はフロントガラス又は加熱を必要とするその他の物体にラミネート又はその他の形式で適用することができる任意の好適な支持基板であってよい。支持基板は剛性又は可撓性であってよく、そして透明であるのがよい。好ましくは、支持基板は透明な可撓性基板であり、そして、被加熱対象に適用されるようになっている加熱要素が、対象(例えば車両のフロントガラス又はバイザー)の内面又は外面に適用することができる別個の取り付け可能な交換可能な要素であることを可能にする。
【0024】
好適なこのような基板は、例えばガラス、ガラス強化エポキシ・ラミネート、セルローストリアセテート、アクリル酸エステル、ポリカーボネート、接着剤を塗布されたポリマー基板、ポリマー基板及び複合材料を含む。ポリマー基板として使用するのに適したポリマーは、ポリエチレン、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン、ポリビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びこれらの混合物を含む。基板表面に対するハロゲン化銀乳剤の付着力を改善するように、基板、特にポリマー基板を処理することができる。例えば、基板にポリマー接着剤層を塗布することができ、又は表面に化学処理又はコロナ処理を施すことができる。
【0025】
可撓性電子装置又は構成部分を製造する際に基板上に塗膜を設けるために、支持体は好ましくは可撓性である。このことは迅速なロールツーロール (role-to-role)用途を助ける。
【0026】
Estar(登録商標)PET支持体及びセルローストリアセテート支持体が、可撓性の透明支持体の有用な例である。
【0027】
或いは、支持体は、可撓性ディスプレイ装置内に使用されているのと同じ支持体であってもよく、これは、感光性又は感圧性塗膜をディスプレイ装置のための支持体上に塗布し、そして所望のパターンに従って現場で画像形成し、そして現場で処理することができる、ということを意味する。
【0028】
個別の支持体が利用される(すなわち支持体が、可撓性ディスプレイ装置のための支持体の裏側ではない)場合、支持体のいずれの側にも又は両側に、感光性及び/又は感圧性層を塗布することができ、但しこの場合、両側に同じパターンが望まれること、又は支持体の一方の側における潜像の形成が支持体の他方の側の塗膜にカブリを生じさせないように支持体が形成されていることを条件とする。
【0029】
感光性又は感圧性材料は、光又は圧力曝露を施したときに、所望のパターンに従って潜像(すなわち、各曝露された金属塩粒子における金属の胚又は核)を提供することができ、そして、例えば金属画像を形成するように現像することができる感光性又は感圧性金属塩と、金属塩を分散することができるバインダーとを含む、任意の好適な材料であってよい。
【0030】
好ましくは、バインダーは、親水性コロイド、例えばゼラチン又はゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、又はカゼインであり、そして更なるポリマーを含有することができる。好適な親水性コロイド及びビニルポリマー及びコポリマーは、Kenneth Mason Publications (Emsworth, Hants PO10 7DQ、英国)によって発行されたResearch Disclosure(研究の開示)のセクションIX、第36544項、1994年9月に記載されている。好ましい親水性コロイドは、ゼラチンである。
【0031】
感光性又は感圧性金属塩は、好ましくは、銅、ニッケル、金、白金、及び銀の塩から選択される。+1の酸化状態を有する金属塩が好ましく、そして特に好ましいのは、銀(I)塩、好ましくはハロゲン化銀、又はハロゲン化銀混合物である。
【0032】
ハロゲン化銀は、例えば塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、又はブロモヨウ化銀であってよい。好ましくは、バインダー中のハロゲン化銀分散体(写真分野で呼ばれているところの乳剤)は、高コントラストハロゲン化銀乳剤であり、これは例えばグラフィックアート及びプリント基板(PCB)の製造において使用するのに適している。ハロゲン化銀乳剤は好ましくは、好ましくは少なくとも50モル%の塩化銀、より好ましくは60〜90モル%の塩化銀、及び最も好ましくは60〜80モル%の塩化銀を含む塩臭化物乳剤である。ハロゲン化銀の残余は、好ましくは実質的に、臭化銀から形成されており、そしてより好ましくは小さな比率(例えば最大1又は2 %)のヨウ化銀を含む。
【0033】
感光性層がゼラチン中のハロゲン化銀乳剤を含む場合、銀とゼラチンとの重量比は好ましくは、少なくとも2:1である。
【0034】
好ましくは、感光性又は感圧性材料は、高金属(例えば銀)/低バインダー(例えばゼラチン)材料であるので、コンベンショナルな現像後に、この材料は、形成される金属パターンの直接的な電気メッキを可能にするのに十分な導電性を有し、そして所要のめっき度又は電気めっき度が他の場合よりも低くなる。このことに関連して、感光性又は感圧性材料中の金属に対するバインダーの好ましい比は、0.1〜0.7、より好ましくは0.2〜0.6の範囲内にある。
【0035】
第1の金属は、感光性又は感圧性金属塩の対応金属であり、従って、第1の金属は好ましくは銀である。
好ましくは、材料は感光性材料である。
【0036】
好ましい態様によれば、金属銀が感光性金属塩、好ましくはハロゲン化銀である場合、金属は、所望の通り、曝露用輻射線の任意の好適な波長に対して増感させることができるが、しかし好ましくは、イメージセッター及びフォトプロッターにおいて共通に使用されているソリッドステート・ダイオード赤光源によって発光された波長の光に対して増感させられる。好ましくは、金属塩分散体は、600〜690 nmの範囲の光に対して増感させられたハロゲン化銀乳剤である。
【0037】
ハロゲン化銀乳剤中に使用される増感色素の量は、好ましくは、銀1モル当量当たり50〜1000 mg(mg/Agmol)、より好ましくは100〜600 mg/Agmol、そしてさらに好ましくは150〜500 mg/Agmolの範囲にある。300〜500 mg/Agmolの量でハロゲン化銀乳剤中に増感色素を内蔵することが最も好ましい。
【0038】
本明細書中に記載された材料中に採用された乳剤、及びこれに添加される添加物、バインダーなどは、Kenneth Mason Publications (Emsworth, Hants PO10 7DQ、英国)によって発行されたResearch Disclosure、第36544項、1994年9月に記載されている。
【0039】
本明細書中に記載された感光性材料は、好ましくは、支持体のいずれの側にも、好ましくは支持体の、感光性層とは反対側に設けることができるハレーション防止層を含む。好ましい態様の場合、ハレーション防止色素は、親水性コロイドの下層内に含有される。好適な色素は、上記Research Disclosureに挙げられている。
【0040】
言及されたハロゲン化銀乳剤は、好ましくは成長反応器内の銀イオン濃度を維持するように構成されたフィードバック・システムを用いた硝酸銀溶液と塩溶液との平衡二重系統を使用して、任意の一般的な粒子成長方法によって調製することができる。ドーパントを、析出の始まりから終わりまで均一に導入することができ、或いは、ハロゲン化銀粒子内部の領域又は帯域内に構造化することができる。ドーパント、例えばオスミウム・ドーパント、ルテニウム・ドーパント、鉄ドーパント、レニウム・ドーパント、又はイリジウム・ドーパント、例えばシアノルテニウム酸ドーパント、好ましくはオスミウム・ドーパントとイリジウム・ドーパントとの組み合わせ、好ましくは(特に赤色増感三核メロシアニン色素と組み合わされた)五塩化オスミウムニトロシルを添加することができる。このような錯体は或いは、米国特許第5385817号明細書に記載されているような粒子表面改質剤として利用することもできる。周知の方法のいずれかによって、例えばチオスルフェート、又はその他の不安定硫黄化合物を用いて、そして金錯体を用いて化学増感を実施することができる。好ましくは、化学増感は、チオスルフェート及び金錯体を用いて実施される。
【0041】
感光性又は感圧性材料の態様中のハロゲン化銀粒子は、立方体状、八面体状、丸みを帯びた八面体状、多形状、平板状、又は薄い平板状の乳剤粒子、好ましくは立方体状、八面体状、又は平板状粒子であってよい。このようなハロゲン化銀粒子は、立方体状又は八面体状の面を有する規則非双晶型、規則双晶型、又は不規則双晶型であってよい。ハロゲン化銀粒子は、混合されたハロゲン化物から成っていてもよい。
【0042】
乳剤組成物が、混合されたハロゲン化物である場合、結晶の形成中又は形成後に増感又は融解の一部として、少量の成分を添加することができる。乳剤は、任意の好適な環境、例えば熟成環境、還元性環境、又は酸化環境において析出することができる。
【0043】
種々異なるハロゲン化物の比及び形態学的特性を有する乳剤の調製に関する具体的な参考文献は、米国特許第3,618,622号明細書(Evans)、同第4,269,927号明細書(Atwell)、同第4,414,306号明細書(Wey)、同第4,400,463号明細書(Maskasky)、同第4,713,323号明細書(Maskasky)、同第4,804,621号明細書(Tufano他)、同第4,738,398号明細書(Takada)、同第4,952,491号明細書(Nishikawa他)、同第4,493,508号明細書(Ishiguro他)、同第4,820,624号明細書(Hasebe他)、同第5,264,337号明細書及び同第5,275,930号明細書(Maskasky)、同第5,320,938号明細書(House他)、及び同第5,550,013号明細書(Chen他)、1994年12月22日付けで出願された米国特許出願第08/362,283号明細書及び米国特許第5,726,005号明細書及び同第5,736,310号明細書(Edwards)である。
【0044】
乳剤に所望の感度を与えるために増感色素を添加した後、当業者には知られているように、適切な場合には、カブリ防止剤及び安定剤を添加することができる。有用であり得るカブリ防止剤は、例えばアザインデン、例えばテトラアザインデン、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、及びベンズイミダゾールを含む。使用することができる具体的なカブリ防止剤は、5-カルボキシ-2-メチルチオ-4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトアアザインデン、1-(3-アセトアミドフェニル)-5-メルカプトテトラゾール、6-ニトロベンズイミダゾール、2-メチルベンズイミダゾール及びベンゾトリアゾールを含む。
【0045】
超高コントラストを付与するために、成核剤、及び好ましくは現像ブースター、例えば米国特許第6573021号明細書に開示されているもののようなヒドラジン成核剤の組み合わせ、又は、米国特許第5512415号明細書第4欄第42行から第7欄第26行に開示されたヒドラジン成核剤を使用することができる。上記明細書の開示内容を参考のため本明細書中に引用する。写真材料中(或いは、使用される現像剤溶液中)に存在し得るブースター化合物は、少なくとも1つの第二又は第三アミノ基を含み、且つn-オクタノール/水分配係数(log P)が少なくとも1、好ましくは少なくとも3であるアミン・ブースターを含む。好適なアミン・ブースターは、米国特許第5512415号明細書第7欄第27行から第8欄第16行に記載されたものを含む。上記明細書を参考のため本明細書中に引用する。好ましいブースターは、ビス-第三アミン及びビス-第二アミンであり、好ましくは、ヒドロキシプロピル・ユニットから成る鎖によって結合されたジプロピルアミノ基、例えば米国特許第6573021号明細書に記載されたジプロピルアミノ基を含む。利用されるいかなる成核剤又はブースター化合物も、ハロゲン化銀乳剤中に内蔵することができ、或いは、好ましくは、成核剤の効果が意図されるハロゲン化銀乳剤を含有する層に隣接した親水性コロイド層内に存在することもできる。しかしこれらは、乳剤層と親水性コロイド層との間、例えば下塗り層、中間層、及び上塗り層に分配することもできる。
【0046】
米国特許第5589318号明細書又は同第5512415号明細書に記載されているような感光性ハロゲン化銀材料を利用することができる。
【0047】
所望のパターンに対応する導電性金属パターンを形成するために、塗布された支持体の曝露から形成された潜像を現像することは、コンベンショナルな現像、物理現像、及び電気化学現像のうちの1種又は2種以上から成ることができる。
【0048】
本発明の方法において形成される潜像は、典型的には、コンベンショナルな現像工程を施され、これにより、潜像に従った第1の金属の現像された画像が形成される。
【0049】
コンベンショナルな現像工程は、現像剤組成物で潜像を処理することを含み、この現像剤組成物は、塗膜内に内蔵することができるが、しかし(例えば加熱、すなわち熱現像、又はpHの変化による)活性化を必要とし、或いは、現像プロセスの一部として溶液として添加することもできる。現像剤組成物は典型的には、例えば、現像プロセス条件下で潜像又は胚画像の素粒子によって触媒されると、金属塩を元素金属に還元することができる還元剤を含む。
【0050】
現像工程はさらに、定着剤組成物で現像された画像を処理することにより画像を定着させること及び/又は洗浄工程を含むことができ、これにより、活性定着剤及び現像剤の成分は除去され、非画像形成領域における未硬化バインダー(例えばゼラチン)の大部分が除去される。
【0051】
形成された金属トラックの望まれない除去を防止するために、感光性又は感圧性層は、硬化剤前駆体を含むことができ、この硬化剤前駆体は、例えば酸化された現像剤、又は現像プロセスの他の副産物との反応時に硬化し、これにより、金属トラックが形成された領域内だけでバインダー材料を硬化させ、ひいては、選択的洗い落としプロセスを可能にする。
【0052】
本発明のプロセスの好ましい態様の場合、非画像形成領域から、望まれない残留ゼラチンを除去するために、現像された要素に、高温定着工程が施される。好ましくは、この態様によれば、潜像は、バインダーとしてのゼラチン中にハロゲン化銀乳剤を含む要素上に形成される。現像後、現像された要素は、曝露された銀トラックだけをレリーフ画像として残すように未曝露領域内のゼラチンの軟化及び融解、これらの溶解又は剥離を引き起こす高い温度(例えば少なくとも30℃、好ましくは35〜45℃)で、定着溶液、例えばKodak RA 3000(登録商標)定着剤中に浸される。高温定着はより効率的であり、そしてまた、さもなければ後続の工程でめっきされるおそれ、及び/又は要素を通した視界を暗くするおそれのある、残留未現像ハロゲン化銀粒子を、現像された要素から取り除く。形成されたトラック内及びトラック下部のゼラチンは、これがアクセスしにくいことから、高温定着/洗浄による影響を及ぼされることはなく、トラック自体によって一緒に保持され、現像工程の副産物によって或る程度硬化される。
【0053】
金属塩が感光性又は感圧性ハロゲン化銀である好ましい態様の場合、これは曝露に続いて、媒体中又は材料それ自体の中に含有された現像主薬の存在において、ハロゲン化銀と水性アルカリ媒体とを組み合わせることによって可視像を形成するように処理することができる。材料は、極めて高いコントラストの画像を得るために、コンベンショナルな現像剤中で処理されてよい。材料が、内蔵された現像主薬を含有するときには、これはアクチベーターの存在において処理することができ、アクチベーターは、組成物中の現像剤と同一であってよいが、しかし現像主薬を欠いている。
【0054】
現像剤は、有機成分の溶解を容易にするために有機溶剤、例えばジエチレングリコールを含むこともできるものの、典型的には水溶液である。現像剤は、コンベンショナルな現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン(例えばジヒドロキシベンゼン)、アミノフェノール、パラフェニレンジアミン、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びその誘導体、ポラゾリドン、ピラゾロン、ピリミジン、亜ジチオン酸塩、及びヒドロキシルアミンのうちの1種又は組み合わせを含有することができる。
【0055】
ハロゲン化銀潜像の現像に際して、ヒドロキノン及び3-ピラゾリドン現像主薬を組み合わせにおいて採用するか、又はアスコルビン酸を主剤とする系を採用することが好ましい。超相加特性を示す補助現像主薬を使用することもできる。現像剤のpHは、アルカリ金属水酸化物及び炭酸塩、ホウ砂及びその他の塩基性塩で調節することができる。本明細書中に記載された成核剤を使用することによって、この現像剤pH中の変化に対する感光性材料の感度を低減することが特に有利である。
【0056】
現像中の親水性バインダー(例えばゼラチン)の膨潤を低減するために、硫酸ナトリウムのような化合物を現像剤中に内蔵することができる。キレート剤及び金属イオン封鎖剤、例えばエチレンジアミン四酢酸、又はそのナトリウム塩が存在することができる。一般に、本発明の実施においては、いかなるコンベンショナルな現像剤も使用することができる。Handbook of Chemistry and Physics(化学及び物理のハンドブック)第36版に、標題「Photographic Formulae(写真製法)」(第30001頁以下参照)のもとで、そして「processing Chemicals and Formulas (処理用化学物質及び製法)」第6版(Eastman Kodak Company (1963)発行)に、具体的な写真用現像剤の例が開示されている。
【0057】
コンベンショナルな現像後の現像工程は、典型的には、物理的工程及び/又は(好ましくは)電気化学現像工程を含む。
【0058】
物理現像(又は無電解めっき)とは、潜像、又はコンベンショナルな現像によって形成された金属画像が、潜像のコンベンショナルな現像によって形成されるものと同じか又は異なる金属の金属塩又は錯体の溶液で処理されることを意味する。物理現像組成物はさらに、潜像の直接的な物理現像を可能にするために現像剤を含むことができる。しかし、いかなるめっき工程の前にもコンベンショナルな現像工程を実施することが好ましい。
【0059】
任意には無電解めっき後に、現像された要素に電気化学現像(又は電気めっき)を施すことは、コンベンショナルな現像及び/又は物理現像によって形成された導電性金属画像が、被めっき金属画像の金属と同じ又は異なっていてよいめっき用金属の塩又は錯体を含むめっき溶液の存在において、画像を横切るように印加された電圧を有し、これにより導電性金属画像の導電率がより高くされることを意味する。(無電めっき又は電気めっきを通して)第2の金属として使用するのに適した金属は、例えば銅、鉛、ニッケル、クロム、金及び銀、好ましくは銅又は銀、そして最も好ましくは銀を含む。
【0060】
好ましくは、物理現像(すなわち無電解めっき)プロセスにおいて使用されるめっき溶液は、0.01 M〜2 M、より好ましくは0.02 M〜0.1 Mの量でめっき用金属のイオンを含む。
【0061】
曝露された感光性要素の現像が、コンベンショナルな現像工程と電気化学現像工程(すなわち、現像された画像の直接的な電気めっき)とを含む場合、コンベンショナルな現像によって形成された画像は、電圧が画像を横切るように印加されるときに十分に導電性であることが必要である。この場合、「Method of Forming Conductive Tracks(導電性トラックの形成方法)」と題された我々の米国特許出願第11/400,928号明細書に記載された電気めっき技術を用いることが好ましい。上記明細書の内容を参考のため本明細書中に引用する。
【0062】
このプロセスの電気めっき工程は、現像された金属画像と接触した状態でめっき溶液を用意する一方、電気化学セル内で、写真的に発生したパターンを負荷電電極(電気化学においてカソードと呼ばれる)にすることにより、溶液を通して、写真的に発生したパターンを横切るように電圧を印加することにより達成される。本発明のプロセスに従って利用されるめっき溶液は、例えば、銀がメッキ用金属(第2の金属)である場合には、チオ硫酸銀錯体、例えばNa3Ag(S2O3)2の溶液であり、銅がめっき用金属である場合には、任意にはポリエチレングリコールPEG 200を含む又は含まない硫酸銅の溶液であり、ニッケルがめっき用金属である場合には、ホウ酸の存在において硫酸ニッケル、すなわちNiSO3であり、又は亜鉛がめっき用金属である場合には、硫酸亜鉛ZnSO4であってよい。好ましくは、めっき溶液は、0.01〜2モル、より好ましくは0.03〜0.5モル、さらにより好ましくは0.05〜0.2モルの当量濃度のめっき用金属を有する。pHを制御するためのホウ酸、及び/又は均一電着剤としてのPEGを、利用されるめっき溶液のいずれかに任意に添加することができる。
【0063】
上述のように、銀が好ましくはめっき用金属であり、こうして銀塩又は錯体の溶液が好ましく使用される。銀塩は好ましくは、チオ硫酸銀錯体、例えばNa3Ag(S2O3)2であり、そして、塩化銀、亜硫酸ナトリウム、及びチオ硫酸アンモニウムの溶液を作成することにより形成することができる。好ましくは、銀めっき溶液は、0.01〜2モル、より好ましくは0.03〜0.5モル、さらにより好ましくは0.05〜0.2モルの当量濃度の銀を有する。メッキ溶液中の銀の低い当量濃度は、めっきプロセスが制御されるのを可能にし、パターン付き導体全体にわたって均一なめっきを可能にし、そして電子接点に近接しためっき用金属の蓄積を最小限に抑える。
【0064】
めっき溶液中に使用するための金属塩の調製は、任意の好適なめっき溶液配合物、「Modern Electroplating(現代の電気めっき)」第4版、M. Schlesinger、M. Pacinovic編(Wiley発行)を含む周知の有用なめっき溶液配合物源から変化させることができる。
【0065】
本発明のプロセスの好ましい態様の場合、感光性又は感圧性材料中のバインダーは、酵素溶液で処理されると分解及び/又は溶解を被りやすく、また、このプロセスは、めっき工程前及び/又は工程中に、バインダーを分解及び/又は溶解することができる酵素で処理することを含む。酵素処理工程は好ましくは、「Method of Forming Conductive Tracks(導電性トラックの形成方法)」と題された、同日付の我々の英国特許出願第0518613.5号明細書(我々の整理番号:89168GB)に記載されているように実施される。上記明細書の内容を参考のため本明細書中に引用する。
【0066】
使用される酵素は、導電性トラックが形成される要素内のバインダーに応じて選択され、また、或る特定の酵素の、使用中のバインダーに対する活性に応じて選択することもできる。酵素は典型的には、現像された金属画像が浸漬されている溶液として使用される(或いは、薄いプロセス塗膜として提供することもできる)。酵素の選択における別の検討事項が、酵素が作用するpHである。酵素の選択は従って、特に酵素処理工程が別の工程の中で実施されるようになっている場合に、めっき溶液のpH又は洗浄/定着溶液のpHによって影響されることがある。
【0067】
使用される酵素の量及び溶液の濃度は、いくつかのファクター、例えば、使用されるバインダーに対する酵素の活性、バインダーが硬化又は架橋されているか否か、酵素溶液のpH、及び処理継続時間、に依存する。使用される酵素の量、及び処理継続時間は、(トラックパターンはバインダー組成物自体によって支持体に結合されているので)トラックパターンが中断されないことを保証しつつ、残留バインダーの除去プロセスの効果を最大化するように、必要に応じて変えることができる。典型的には、曝露され、現像された高銀/低ゼラチン要素と一緒に使用するために、酵素溶液(めっき溶液の一部として存在するか否かとは無関係に)は、0.5〜20 g/l、好ましくは1〜10 g/lの酵素を含み、そして処理継続時間は、10秒〜10分、好ましくは30秒〜3分である。典型的には、酵素処理は40℃以下で実施される。
【0068】
別の態様の場合、「Method of Forming Conductive Tracks(導電性トラックの形成方法)」と題された、同日付の我々の英国特許出願第0518613.5号明細書(我々の整理番号:89392GB)に記載されているように、より短時間で、解像度が改善された導電性トラックを提供するために、無電解及び/又は電気めっき工程中に、現像された要素に超音波撹拌を施すことができる。引用することにより上記明細書の内容を本明細書の内容とする。
【0069】
めっき工程中に現像された要素に超音波撹拌を施すために、めっき工程は、例えば超音波浴内で、又は、めっき溶液中に入れられた超音波プローブ、或いは、現像された要素自体(例えば要素の裏側)に直接的に取り付けられた超音波パッドによって実施することができる。いずれの場合にも、めっき中に現像された要素に超音波撹拌を施すあらゆる好適な方法が、本発明の範囲内で考えられる。使用される超音波の周波数は典型的には、利用可能なトランスデューサーに依存し、通常は30〜100 kHz、普通は約60 kHzである。
【0070】
所望のトラックパターンに従ってトラックを生成するために、形成された潜像が熱源像される別の態様によれば、感光性又は感圧性材料は、感光性又は感圧性ハロゲン化銀材料と、これに触媒的に近接した第二の被還元性銀イオン源とを含む。
【0071】
好ましくは、本発明のこの態様によれば、ハロゲン化銀材料は、概ね上記のもの、又はより具体的には、1種又は2種以上のハロゲン化銀(フォトサーモグラフィ材料(PTG)画像形成分野では光触媒としばしば呼ばれる)、例えば臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、ブロモヨウ化銀、塩臭ヨウ化銀、塩臭化銀、及び当業者には容易に明らかなその他のハロゲン化銀を含む。臭化銀及びブロモヨウ化銀がより好ましく、後者のハロゲン化銀は最大10モル%のヨウ化銀を含む。
【0072】
この態様において好ましく利用されるハロゲン化銀粒子は、全体にわたってハロゲン化物の均一な比を有していてよく、例えば臭化銀とヨウ化銀との比が連続的に変化する漸変ハロゲン化物含量を有してもよく、又は、1つのハロゲン化物比から成るコアと、別のハロゲン化物比から成るシェルとを有するコア・シェル型から成っていてもよい。PTG材料において有用なコア・シェル型ハロゲン化銀粒子、及びこれらの材料の調製方法は、例えば米国特許第5382504号明細書に記載されている。この開示内容を、イリジウム及び/又は銅でドープされたコア・シェル型及び非コア・シェル型粒子が記載されている米国特許第5434043号明細書、同第5939249号明細書、及び欧州特許第0627660号明細書の該当開示内容と同様に、参考のため本明細書中に引用する。
【0073】
第二の被還元性銀イオン源は、PTG画像形成において使用するのに適したいかなる銀イオン源であってもよく、好ましくは、曝露された感光性又は感圧性ハロゲン化銀材料及び現像剤組成物の存在において、50℃以上に加熱されると銀画像を形成する非感光性銀塩である。第二の銀イオン源は例えば、銀ベンゾトリアゾール、シュウ酸銀、酢酸銀、及びカルボン酸銀、例えばベヘン酸銀のうちの1種又は2種以上、及び欧州特許第1191394号明細書第23頁第17行〜第24頁第14行(引用することにより開示内容を本明細書の内容とする)に記載されたものから選択されたいかなる銀イオン源であってもよい。好ましくは、第二の銀イオン源は、銀ベンゾトリアゾール{好適なこのようなベンゾトリアゾールは、米国特許第3832186号明細書(引用することにより開示内容を本明細書の内容とする)に開示されている}、又は銀石鹸、例えば式[Ag(CO2CxH2x-1)]2(好ましくは式中x=18〜22である)を有するベヘン酸銀である。
【0074】
本発明に従って使用することができる熱現像可能な要素において、感光性又は感圧性ハロゲン化銀が、第二の銀源1モル当たり0.005〜0.5モル、より好ましくは0.01〜0.15モル、そしてさらに好ましくは0.03〜0.12モルの量で存在することが好ましい、また、感光性又は感圧性ハロゲン化銀が、これが含有される乳剤層の0.5〜15 重量%の量、そしてより好ましくは1〜10 重量%の量で存在することも好ましい。
【0075】
潜像が熱現像工程を通して現像されるこの態様の場合、第二の銀イオン源及びハロゲン化銀材料は、触媒的に近接して(すなわち反応するように組み合わされて)いなければならない。
【0076】
ハロゲン化銀材料及び第二の銀イオン源の乳剤は、PTG画像形成において用いるのに好適ないかなる方法によっても調製することができる。ex situ法を用いることが好ましく、この方法では、感光性又は感圧性ハロゲン化銀粒子が予め形成され、次いで銀イオン源に添加され、そしてこれと物理的に混合されるか、或いは、より緊密な混合物を提供するために、銀イオン源は、ex situで調製されたハロゲン化銀の存在において、例えばハロゲン化銀の存在において銀イオン源を共沈させることによって形成される。この方法において利用される、予め形成されたハロゲン化銀乳剤又は分散体は、水性又は有機プロセスによって調製されてよく、そして洗浄せずにおくか、又は可溶性塩を除去するために洗浄することができる。或いは、有機銀塩の銀をハロゲン化銀に部分的に変換するために、ハロゲン化物含有化合物が有機銀塩に添加されるin situプロセスも、効果的であり得る。ハロゲン含有化合物は、無機(例えば臭化亜鉛、又は臭化リチウム)、又は有機(例えばN-ブロモスクシニミド)であってよい。ハロゲン化銀及び有機銀塩の追加の調製方法及びこれらのブレンドの形式は、例えばResearch Disclosure、1978年6月、第17029項、米国特許第3700458号明細書及び同第4076539号明細書に記載されている。この態様に従って使用される感光性又は感圧性ハロゲン化銀材料は、必要に応じて、PTG分野における任意の好適な方法によって化学増感及び分光増感されてよい。
【0077】
塗布された支持体内に内蔵することができる現像剤組成物は、銀イオン源を、PTG画像形成系内の金属銀に還元するのに適したいかなる現像剤であってもよい。好適なこのような現像剤は、欧州特許出願公開第1191394号明細書第24頁第18行〜第24頁第51行に記載されたものを含む。この開示内容を参考のため本明細書中に引用する。特に好ましい現像剤化合物は、PTG現像剤のビスフェノール・クラスである。
【0078】
本発明による潜像の現像において、アルカリ放出剤、塩基放出剤、又はアクチベーター前駆体としても知られる現像前駆体が有用であり得る。現像アクチベーターは、現像主薬が処理温度で画像形成材料中の潜像を現像するのを助ける薬剤又は化合物である。有用な現像アクチベーター又はアクチベーター前駆体が、例えば、1968年2月29日付け発行のベルギー国特許第709,967号明細書、及びResearch Disclosure、第155巻、1977年3月、第15567項に記載されている。有用なアクチベーター前駆体の例は、グアニジニウム化合物、例えばトリクロロ酢酸グアニジニウム、グルタル酸ジグアニジニウム、コハク酸ジグアニジニウム、マロン酸ジグアニジニウムなど、マロン酸第四アンモニウム;アミノ酸、例えば6-アミノ-カプロン酸、及びグリシン;及び2-カルボキシカルボキサミド・アクチベーター前駆体を含む。
【0079】
この態様によるPTG系において使用されるべき塗布された支持体内に内蔵することができる他の添加物は、当業者には容易に明らかなように、例えば、安定剤、トナー、カブリ防止剤、コントラスト増強剤、現像促進剤、処理後安定剤又は安定剤前駆体、及び他の画像改質剤を含む。熱伝導剤を含むこともできる。
無電解めっき工程及び電気めっき工程は概ね上記の通りである。
【0080】
本発明において使用される感光性又は感圧性要素は、支持基板のそれぞれの側に塗布された感光性又は感圧性材料を有していてよい。この場合、要素は、特許出願PCT/GB2006/001099に記載されているような感光性要素であってよい。引用することにより開示内容を本明細書の内容とする。
【0081】
具体的には、この態様によれば、感光性要素は、支持体の一方の側に塗布された、第1スペクトル領域の輻射線に対して感光する第1感光性層と、支持体の他方の側に塗布された、第2スペクトル領域の輻射線に対して感光する第2感光性層とを含み、これにより、所望のパターンに従ってそれぞれ第1及び第2のスペクトル領域の輻射線による曝露を施し、そして曝露された感光性層を現像すると、第1及び第2の感光性層は、所望のパターンに従った導電性トラックパターンを有する現像された金属画像を形成する。第1及び第2のスペクトル領域は、同じであってよいが、しかし好ましくは異なるものであり、或いは少なくとも、異なる最大吸収波長を有しており、またオーバーラップは少ししか有さない。支持体が透明な場合、感光性層は、要素の同じ側から画像形成することができる。化学増感及び分光増感、並びに感光性層の形成は上記の通りである。
【0082】
支持体の一方の側だけに加熱要素の電力損失型金属導電性トラックパターンを形成すれば、ほとんどの用途にとって十分であると考えられ、そしてこのことは、よりシンプルなプロセス及び材料に照らして好ましい。
【0083】
パターンに従って圧力を加えることにより塗布された支持体上に潜像が形成される場合、加えられるべき圧力の程度は、塗布された支持体の感圧性に相応し、この感圧性は、塗布された支持体の正確な性質に依存し、また当業者によって容易に明らかになる。潜像を生成するための圧力付与方法は、任意の好適な加圧装置を使用して所望の画像を付けることができるいかなる好適な方法であってもよい。例えば、潜像は、スタイラス(特に高解像度スタイラス)又はメス、所望のトラックパターンに従って彫刻された彫刻付きスタンプ、又は所望のトラックパターンに従うレリーフ・パターンを保持するローラを使用して圧力を加えることにより、潜像を形成することができるので、一連の塗布された支持体上、特に可撓性の塗布された支持体上に迅速に潜像を形成することができる。所望のトラックパターンがランダムな導電性トラックパターンである場合、潜像は、ランダムなパターンを生成する任意の好適な手段によって、例えばスチールウール又は(プラスチック)研磨パッド又は同等のもので塗布された支持体の表面を擦ることにより、形成することができる。
【0084】
形成された導電性トラックの解像度は、主として光画像形成装置又は加圧装置の解像度に依存する。それというのも、本発明のプロセスは、この制限を受けながら、極めて高い解像度のトラック幅及びギャップ幅が達成され得る(例えば0.1 μm以上)ことを条件としているからである。多くの用途にとって、高解像度導電性トラックを形成することが好ましい。従って好ましくは、形成される導電性トラックの線幅は、50 μm以下、より好ましくは25 μm以下、さらにより好ましくは20 μm以下又は15 μm以下、さらにより好ましくは10 μm以下である。この方法によって、1又は2 μmの線幅でさえ形成することができる。
【0085】
好ましくは、加熱要素の光透過率は少なくとも80 %、より好ましくは少なくとも90 %である。
【0086】
本発明による加熱要素を形成するために生成されたトラックパターンは、事実上任意の所望のパターンであってよい。パターンは、輻射線による露光又は圧力付与によって像様に生成され、そしてこの方法は、高解像度で導電性パターンを生成することができるので、トラックパターン、トラック幅、ギャップ幅、及び配列の多様性は極めて大きく、種々のパターンを容易に採用することができる。
【0087】
従って、トラックパターンは、例えば直線、曲線、ウェーブ状又は波状の線、又は倦縮状又はジグザグ状線のアレイを含むことができ、これらの線は、1つの接続点(電圧供給部に対する)を、対向電荷(典型的にはバスバー配列)に対する別の接続点に接続する。このような線の間のギャップは、一定のサイズを有してよく、又は加熱要素の全幅にわたって変化してもよい。
【0088】
配列は実質的には、非交差線、例えば実質的に並列な線配列(例えばバスバー間接続)、扇形配列(対向電荷を有するバスバーに接続された1つ又は2つ以上の同じ電荷を有する接続点)、又は点間配列(例えば対向電荷のいくつかの点に接続された一方の電荷のいくつかの点)から成っていてよく、この配列は、所望の加熱要素のサイズ及び形状に依存する(加熱要素のサイズ及び形状は通常、例えば加熱されるべきフロントガラスのサイズ及び形状に対応する)。
【0089】
しかしながら、好ましくは、トラックパターンは、メッシュ配列を成すように生成される。
【0090】
メッシュとは、トラックが他のトラックと交差する接続点を繋ぐトラック又は線の間で(すなわち接続点を分離する領域において)、複数の内部接続(又はトラック交差)が発生するようなトラックパターンを意味し、このようなトラックパターンにおいて、メッシュは、異方性表面抵抗率を有する傾向 (一次元的である傾向)がある、実質的に並列な線又は導電線の配列と比較して、等方性表面抵抗率を有する傾向がある。
【0091】
メッシュパターンの具体的な利点は、等方性表面抵抗率を提供し、ひいては極めて均一な熱分配をもたらすことができることを含む。メッシュパターンはまた、断線が発生するか又はトラック接続が故障した場合、加熱を行うことができるメッシュを通るいくつかの他の経路があるので、加熱効果は大部分維持されるという利点も有する。これはまた、ホットスポットの発生を防止する上で効果的である。
【0092】
メッシュは、例えばメッシュ直径2 mm以下の規則的なパターン、又は不規則又はランダムなパターンであってよい。例えば、スチールウール又はプラスチックの同等のもの、又は硬いブラシを使用して、感圧性要素に圧力を加えることにより、ランダムなパターンを生成することもできる。
【0093】
好ましくは、メッシュは規則的なパターンから形成される。このような規則的なメッシュは、例えば三角形、正方形、又は菱形、方形又は六角形ユニットセルを含んでいてよい。
【0094】
メッシュのサイズは一定であってよく、或いは、要素全幅にわたって変化してもよい(例えば視界がより重要な領域のメッシュはより小さい)。
【0095】
本発明のいかなる具体的な実施例においても有用なメッシュサイズ、線幅(及びトラック導電率)は、いくつかのファクターに依存する。主要なファクターは、電圧源のサイズ(多くの自動車用途の場合、電源は通常12V電源である)、所望の放散出力(例えば自動車のフロントガラス・ヒーターの場合、少なくとも4.5 W/dm2が好適である)、所望の透明度(少なくとも80 %、好ましくは少なくとも90 %)、及びスクリーンのサイズ及び形状である。
【0096】
本明細書中に記載された種々の態様は、12 V電源、少なくとも4.5 W/dm2の放散熱出力、少なくとも80 %の光透過率、及び最大0.5 m2の要素サイズ(すなわち、自動車フロントガラス要素としての使用に適している)と共に使用するのに適したメッシュサイズ、線幅、及び導電率/表面抵抗率(シート抵抗)を表すことが多い。当業者には明らかなように、これらのファクターが異なる場合の要素に対応する線幅、ギャップ、及び導電率は容易に決定することができ、また本発明の範囲内に含まれる。
【0097】
好ましくは、メッシュパターン、特に規則的なメッシュパターンを利用する本発明の態様において、メッシュサイズは所望の有用性に従った任意の好適なサイズであり、そして好ましくは、メッシュ直径は5 mm以下、より好ましくは2 mm以下、そしてさらにより好ましくは1 mm以下である。さらにより小さなメッシュサイズ、例えば0.1〜0.5 mmが、本発明の方法を用いて達成可能であり、このようなサイズは、或る特定の用途、例えばバイザー、又は観察者に比較的近接して配置される他の光学機器において有用性を見いだすことができる。
【0098】
本発明の加熱要素において有用な線幅はやはり、加熱要素の所望の光透過率、メッシュサイズ/ギャップ幅、及び導電率を含む種々のファクターに依存する。いかなる場合においても、線の幅は、100 μm以下、より好ましくは50 μm以下、最も好ましくは25 μm以下であることが好ましい。いくつかの用途のために、そしていくつかの環境において、これよりも著しく小さな線幅、例えば20 μm、15 μm、又は10 μmを有することも好ましい。
【0099】
本発明の方法によって形成された熱要素は、好ましくは、要素(ひいては、任意の物体、例えば要素が適用される自動車フロントガラス)の領域全体にわたって均一な(そしていずれの場合にも、少なくとも所望の最小限の)熱放散を提供する。このレベルは、自動車フロントガラスに関してよく知られており、工業基準として使用されており、また4.5 W/dm2であることが一般に受け入れられている。本発明の加熱要素は、12 V電源に接続されると、最大0.5 m2の面積に少なくとも4.5 W/dm2の出力を提供することができる。
【0100】
(本発明の好ましい態様として)ここで使用される導電メッシュの主要な電気的特性は、表面抵抗率(オーム/□)であり、これに対して主要な光学的特性は、可視スペクトル全体を通した透過率である。本質的には、この透過率は、非透明導体によって占められないメッシュの表面積の比率である。重要な視覚的アクセス手段の寸法は典型的には、80×40 cm以下であり、またこの寸法は、デザインを考える上での検討事項を例示するために下記議論中に使用する。
【0101】
方形領域80×40 cmにわたって4.5 W/dm2を供給するために、最もシンプルな実用的な態様において、2つの長辺、すなわち上記領域の80 cmの辺の各エッジに沿って、コンタクトとして2つの高導電性バスバーが配置される。80×40 cmの面積全体にわたって4.5 W/dm2を放散するために、総放散142 Wが必要となる。12 V電源の場合、この値は、1オームを僅かに上回る総負荷抵抗になる。典型的には、80 cm×40 cmの面積は、並列な負荷として供給される2つの40×40 cm正方形を含む。こうして、この典型的な例において、より複雑なバスバーのルーティングを用いることなしに、メッシュの所要表面抵抗は、2オーム/□となる。この値は、本明細書中に記載されたメッシュの製造方法によって実証されている。
【0102】
本明細書中に記載された銀メッシュ像様製造方法は、種々異なる形状(例えば三角形、正方形、菱形、又は六角形)のユニットセルを提供することができる。本発明の好ましい態様に従って形成されたメッシュは、典型的には10 μm以上のトラック幅を有するとともに、その典型的なベタ金属表面抵抗値は0.1 Ω/□以下である。4辺(正方形)ユニットセルを一例として採用すると、光透過率(T)の関数としてのメッシュ(Rmesh)の表面抵抗率と、同じ厚さの連続した金属表面の表面抵抗率(Rsolid)との関係は次のようになる。
【0103】
Rmesh=Rsolid{[1/(1−√T)]−√T}
【0104】
表1は、0.1 Ω/□のRsolid値に基づいて、有用且つ達成可能な表面抵抗率及び光透過率のいくつかの代表的な値を示す。
【0105】
【表1】

【0106】
上記構成例において、線厚がメッシュピッチの20分の1であると共に、光透過率が90 %以上であるときに、2 Ω/□が達成される。ピッチの絶対値はこのように、観察者に対するウィンドウ/フロントガラスの固有の光学的設置にとって適切であるように選択することができる。
【0107】
メッシュサイズと線幅との望ましい組み合わせは、例えば、直径1 mmのメッシュサイズと、50 μm以下の線幅(正方形メッシュの場合約90 %の透過率を可能にする)、又は25 μm以下の線幅(約95 %の透過率を可能にする)との組み合わせであってよい。
【0108】
上述のように、利用される線幅及びギャップ幅/メッシュサイズは、他のファクター、例えば任意の具体的な態様において必要となる電力損、要素のサイズ、及び要素の表面抵抗率に依存する。大抵の態様の場合、要素の導電率は、50オーム/□以下、好ましくは少なくとも1オーム/□であることが望ましい。約50オーム/□の導電率は、より小さな用途、例えばサイドミラー又はバックミラー又はポータブル・バイザーにとって有用であり得る。大抵の用途、例えば自動車フロントガラス・ヒーターの場合、表面抵抗率は、10オーム/□以下であることが好ましく、より好ましくは2〜2.5オーム/□である。極めて大型の用途にとっては、さらに低い抵抗率が望ましいことがある。
【0109】
本発明の方法は、このような表面抵抗率、例えば10オーム/□以下、典型的には約2オーム/□の表面抵抗率と、少なくとも80 %、一般には少なくとも90 %の光透過率とを有する金属パターンを提供することができる。従って、本発明の方法は、大抵の用途にとって、そして具体的には、車両のフロントガラスを加熱するのに有用な加熱要素を効果的且つ効率的に提供することができる。本発明はまた、ことのほか用途が広く、製造プロセスに大きな変更を加えることなしに、任意の所望の要素形状で、そして可撓性基板上に、事実上あらゆるトラックパターンを提供することができる。
【0110】
導電性トラックパターンは、2つ又は3つ以上の接続点、例えばバスバーを介してその電源に接続することができる。バスバーは、導電性金属ストリップ、例えば米国特許第6185812号明細書に記載されているストリップとして形成することができ、又は、通電メッシュ(例えば米国特許第4361751号明細書)を使用して形成することができ、又は、導電性インクを使用して支持基板上にプリントすることができる。或いはそして好ましくは、本発明の加熱要素の場合、加熱要素の導電性パターンと同じ感光性又は感圧性要素上に(必要に応じて輻射線に当てるか又は圧力を加えることにより)画像を形成することにより、加熱要素の電力損失型金属パターンと一体的に形成される。こうしてバスバーは、例えば固体通電バスバー、又は厚い通電メッシュ(電力損失型加熱要素と比べて著しく大きい線幅及びメッシュピッチを有する)として形成することができる。
【0111】
本発明の具体的な用途において、加熱要素は、車両のフロントガラス、特に自動車のフロントガラスに熱を提供するために使用される。この用途の場合、本発明の加熱要素は、例えば、任意には必要ならば要素を取り外して交換できるように、フロントガラスの内側又は外側に要素をラミネート又は適用することにより、又は、フロントガラスを形成するために使用される2つの透明ガラス材料層の間に要素をラミネートすることにより、フロントガラス内に組み込むことができる。2つ又は3つ以上のガラス材料層を使用したフロントガラスの製造方法はよく知られており、特許明細書、例えば米国特許第6185812号及びその他に記載されており、本発明に従って形成された加熱要素を内蔵するように、これらの方法を適合させることができる。
【0112】
従って、本発明の別の態様において、少なくとも2つの透明ガラス材料層と、ガラス材料層間に広がる少なくとも1つの中間層材料層とからラミネートされた電気加熱式ウィンドウが提供され、このウィンドウは、ガラス材料層間に広がる電気抵抗電力損失型加熱手段と、加熱要素からウィンドウの周縁を超えて延び、そしてウィンドウの外側で終わっている細長い電気的な接続手段とを含み、この電気抵抗電力損失型加熱手段は、本明細書に記載された加熱要素によって提供される。好ましくは、中間層材料は、可撓性の透明支持体上に形成された加熱要素である。
【実施例】
【0113】
下記例及び図面を参照しながら、本発明をここでより詳細に、限定することなしに説明する
例1
裏側に保護トップ塗膜を有するハレーション防止層を含有し、そして表側に保護トップ塗膜を有する、赤光に対して感光する乳剤層を含有する感光性フィルムを調製した。
【0114】
ハレーション防止層:
13.3 kgの水を705 gの石灰処理型骨質(LPO)ゼラチンに添加することにより、分散体を調製した。ソーキングの後、ゼラチンを49℃で溶解させ、そして希硫酸を使用してpHを5.3に調節した。239 gの2-(3-アセチル-4-(5-(3-アセチル-1-(2,5-ジスルホフェニル)-1,5-ジヒドロ-5-オキソ-4H-ピラゾル-4-イリデン)-1,3-ペンタジエニル)-5-ヒドロキシ-1H-ピラゾル-1-イル)-1,4-ベンゼンジスルホン酸、五ナトリウム塩[CAS No 127093-24-7]を10 %水性分散体として添加し、続いて4-(4,5-ジヒドロ-4-(5-(5-ヒドロキシ-3-メチル-1-(4-スルホフェニル)-1H-ピラゾル-4-イル)-2,4-ペンタジエニリデン)-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾル-1-イル)-ベンゼンスルホン酸[CAS No 27969-56-8]を13 %水性分散体として添加し、続いてW. R. Graceから入手可能な30 %シリカ分散体である1.1 kgのLudox(登録商標)AMを添加し、続いて63.4 gのグリセロール[CAS No 56-81-5]を63 %水性分散体として添加し、続いて70.5 gのポリスチレンスルホネート[CAS No 25704-18-1]を10 %水溶液として添加した。全体は15.75 kgに形成された。
【0115】
ハレーション防止層保護トップ塗膜:
3.8 kgの水を519 gのLPOゼラチンに添加することにより、分散体を調製し、そしてソーキングの後、ゼラチンを49℃で溶解させた。ポリメタクリレート艶消しビード(4〜10 μm)の8 %水性分散体465 gを添加し、続いて0.5 kgのオクタメチルシクロテトラシロキサン[CAS No 556-67-2]を9.3 %水性分散体として添加し、続いて良好な塗膜品質を保証するために界面活性剤を添加し、PHを5.3に調節し、そして全体は6 kgになった。
【0116】
次いで、Kodak(登録商標)から入手可能な7000の透明サビング処理されたEstar(登録商標)ポリエステルベース上に、ハレーション防止層内のゼラチンが2 g/m2の量で、そして保護トップ塗膜内のゼラチンが0.488 g/m2の量で形成されるように、2つの層を同時塗布した。
【0117】
赤感性層
この層内には、バインダー系中の硫黄増感及び金増感された0.2 μmの立方体状ブロモ塩化銀(AgBr0.3Cl0.7)から成る高コントラスト乳剤を使用した。ヨウ化カリウム及び増感色素:5-[3-(カルボキシメチル)-5-[2-メチル-1-[(3-メチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]プロピリデン]-4-オキソ-2-チアゾリジニリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-3-チアゾリジン酢酸[CAS No 253869-55-5]を使用して、ハロゲン化銀を赤光に対して増感した。
【0118】
【化1】

【0119】
銀レイダウン率は3.6 g/m2であった。バインダー系は、1.6 g/m2のLPOゼラチンから成った。テトラアザインデン:7-ヒドロキシ-5-メチル-2-(メチルチオ)-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン-6-カルボン酸、フェニルメルカプトテトラゾール:N-(3-(2,5-ジヒドロ-5-チオキソ-1H-テトラゾル-1-イル)フェニル)-アセトアミド、及び2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-4-チアゾール酢酸を使用することにより、カブリに対して乳剤を保護した。pH 5.1のポリスチレンスルホン酸を使用することにより、粘度をほぼ6 cPに調節した。
【0120】
乳剤トップ塗膜
1528 gの水を64.5 gのLPOゼラチンに添加することにより、溶液を調製した。ソーキングの後、ゼラチンを49℃で溶解させた。酸性化ヒドロキノンの4.7 %水溶液390 gを添加し、続いて、ゼラチン中のDC-200(登録商標)[CAS No 63148-62-9]の分散体41 gを、このポリジメチルシロキサン(Dow Chemicalから入手可能)が45 mg/m2の被覆率になるように添加した。Tiron(登録商標)[CAS No 149-45-1]の20 %の水溶液113 gを添加し、続いてブースター(コントラスト促進剤)
【0121】
【化2】

【0122】
の10 %水溶液137 g、続いて塗布を補助するために少量の界面活性剤及びポリスチレンスルホン酸を添加した。pHを5.1に調節した。この層のためのゼラチン・レイダウン率は0.3 g/m2であった。
【0123】
ハレーション防止層を含有する予め調製された基板上に、赤感性層及びトップ塗膜を同時塗布した。
【0124】
次いで、Orbotech(登録商標)7008mレーザープロッター上で、メッシュパターン、この例の場合には事実上、各端部にコネクタ・パッドを備えたハニカム配列を用いて、各フィルムに露光を施した。メッシュは、1732 μmの間隔によって分離された微細な線から成った。
【0125】
使用直前に1:1の比(すなわち100 ml + 100 ml)で混合される溶液AとBとから成るタンニング現像液中で、フィルムを現像した。
【0126】
溶液A
ピロガロール 10 g
亜硫酸ナトリウム 0.5 g
臭化カリウム 0.5 g
水を加えて500 mlとする
【0127】
溶液B
炭酸カリウム 50 g
水を加えて500 mlとする
【0128】
現像を約7分間にわたって室温(21℃)で行った。現像からの酸化生成物は、露光された領域におけるゼラチンを硬化させた。
【0129】
次いでフィルムに高温定着(「ホット・フィックス」)を施した。フィルムを40℃で10分間にわたってKodak RA 3000(登録商標)定着剤中に浸漬した。未露光領域内のゼラチンは、軟化され、そして融解、溶解、又は単に剥離され、露光された銀だけをレリーフ画像として残した。「ホット・フィックス」は、冷水又は温水洗浄よりも効率的であっただけでなく、いくつかの残留未現像ハロゲン化銀粒子を、画像から取り除くこともした。これらの粒子はさもなければ、後続のめっき浴内で銀になり、そして最終的なトラックの解像度を制限した可能性がある。
【0130】
全ての望まれないゼラチンが除去されることを保証するために、レリーフ画像に、希釈酵素浴による洗浄を施した。1.3 lの脱塩水中に溶解されたTakamine粉末6.3 gを採用することにより、酵素浴を調製した。1時間の撹拌後、材料を3.0μmフィルターを通して、次いで0.45 μmフィルターを通して濾過した。最終浴は脱塩水で600 gまで希釈された3 ml濃縮物から形成された。酵素性分解は、室温で約1分間かかった。次いでフィルムを5分間、冷水中ですすぎ、次いで乾燥させた。
【0131】
次いでフィルムを、10分間にわたって室温で無電解銀メッキ浴内に浸した。浴の組成物は、使用直前に混合された部分Aと部分Bとを含んだ。
【0132】
部分A
硝酸鉄九水和物 20 g
クエン酸 10.5 g
水を加えて250 gとする
>25℃に暖める
硫酸第一鉄アンモニウム12H2O 39.2 g
水 367.5 g
DDA** 10 % 2.5 g
100 ml中Lissapol(登録商標)1 ml 2.5 g
【0133】
**DDA 10 %
水 90 ml
ドデシルアミン 7.5 g
氷酢酸 2.5 g
【0134】
部分B
硝酸銀 5 g
水を加えて125 gとする
【0135】
次いでメッシュの光透過率及びシート抵抗率を測定し、そして表2に示す。
【0136】
【表2】

【0137】
この方法は、光透過率が90 %を上回る極めて微細な導電線を製造することができる。このような装置はヒーターとして使用することができる。競合技術、例えばシルクスクリーン印刷は、このような微細な線を達成することができず、そして他の技術は、この導電率及び光透過率を達成することができない。
【0138】
例2
この例において、試料は、例1の方法によって形成された6.8 cm×0.5 cmのハニカム・メッシュであった。各側の、深さ0.15 cmまでの周囲面積は、総面積6.4 cm2を形成した。この試料の全シート抵抗率は、7.83オーム/□と測定され、メッシュ領域は、ベース及び背景の写真カブリを含めて光透過率92 %を有した。図1に示すように、支持体(1)上のメッシュを、顕微鏡スライド(3)(メッシュ側と接触)と、2つの温度センサーを含有するアルミニウム・ベース(5)(裸の支持体と接触)との間にクランプ固定した。可撓性支持体とガラス面及びアルミニウム面との間に良好な熱接触を提供するために、1滴又は2滴のシリコーン油を使用した。
【0139】
温度及び導電率のプロフィール、並びに絶縁破壊電力を測定することによって、メッシュの性能を加熱要素としてモニタリングするために、図2に示したような回路を使用した。
【0140】
自動車フロントガラス用途の場合、熱放散がほぼ5 W/dm2に達するべきであることがよく知られている。従って、試料の面積に必要とされるメディアン電力=(6.4/100)×5、つまり、ほぼ0.32 Wであった。一定電流モードで測定(下記表3参照)を行い、各点は、60秒の継続時間の終了時に測定された。次いで、温度59℃で44 W/dm2において絶縁破壊(図3のグラフ参照)が発生するまで、導電率(=V1/V2)対電力(V1・V2)をプロットした。追加の試験において、ヒーターは、物理的又は電気的な特性を劣化させることなしに、2時間の連続時間にわたって、10 W/dm2の放散速度で維持された。
【0141】
【表3】

【0142】
250 μmの間隔を置いた公称10 μmの線を有するように、例1の方法によって2つのメッシュを製造した。めっき浴内で同じ長さの時間(1時間)にわたって両方を成長させたが、しかし試料1には、超音波処理を施した。試料1のメッシュ(図4参照)のシート抵抗は5.5 Ω/□であった。トラックのシート抵抗は0.14Ω/□であり、そしてメッシュの透明度は>85 %であった。
【0143】
試料2を同様に処理し、容器内に鉛直方向に保持したが、しかし超音波撹拌は施さなかった。試料2のメッシュ(図5参照)は、シート抵抗0.19 Ω/□のトラックから成り、メッシュ自体のシート抵抗は5.5 Ω/□であった。このメッシュの透過率は<70 %であった。
【0144】
図4及び図5から判るように、超音波撹拌は、線の側方又は背景領域における、望まれない銀の小さな塊の付着を阻害した。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1は、下記例2に従って製造されたメッシュの性能をモニタリングするために使用される装置を示す概略図である。
【図2】図2は、下記例2に従って製造されたメッシュの性能をモニタリングする際に使用される回路を示す回路図である。
【図3】図3は、下記例2に基づくメッシュに対応する、放散電力対表面導電率を示すグラフである。
【図4】図4は、下記例3に基づいて超音波撹拌工程を伴って製造されたメッシュの走査電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、超音波撹拌工程を伴わずに製造されたことを除けば、図4の写真に対応する走査電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の抵抗率及び出力を備えた電力損失型導電性トラックパターンを形成する導電性トラックの所望のパターンを有する加熱要素の製造方法であって、該方法は、
該所望のパターンに従う輻射線又は圧力による像様曝露、そして生じた潜像の現像の際に、該所望のパターンに従う金属画像を提供することができる、支持体の少なくとも一方の側に塗布された感光性又は感圧性層を有して成る支持体を含む、感光性又は感圧性要素を用意すること、
該層内に潜像を形成するために、所望の導電性パターンに従って該要素の該層を輻射線又は圧力に像様曝露すること;そして、
該支持体上に、該潜像のパターンに対応する導電性金属パターンを形成するために、該要素を現像すること、
を含んで成る。
【請求項2】
該塗布された支持体が、キャリヤ組成物中に分散された感光性又は感圧性金属塩を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該感光性又は感圧性金属塩が銀塩である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該銀塩が、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、及び塩臭ヨウ化銀のうちの1種又は2種以上である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリヤ組成物がゼラチンを含む請求項2から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記感光性又は感圧性層が、親水性バインダー又はポリマー中のハロゲン化銀乳剤である請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
導電性金属トラックパターンを形成するための該潜像を現像する該工程が、コンベンショナルな現像、熱現像、物理現像、及び電気化学現像のうちの1つ又は2つ以上を含む請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該塗布された支持体が、感圧性ハロゲン化銀、該ハロゲン化銀と触媒的に近接する第二の銀イオン源、及び内蔵された現像剤組成物を含み、これにより、圧力曝露そして加熱の際に、該所望のトラックパターンに従って導電性金属トラックが形成される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該導電性トラックの線幅が25 μm以下である請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該塗布された支持体が、可撓性の透明な塗布された支持体である請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該感光性又は感圧性層の曝露されていない領域が、該現像工程時に除去される請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該支持体が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、ガラス、ポリカーボネート、アクリル酸エステル、ポリビニルアセタール、及びポリウレタンから成る群から選択される請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該パターンが、メッシュ直径2 mm以下の規則的なメッシュパターンである請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該加熱要素の光透過率が少なくとも90 %である請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、加熱要素。
【請求項16】
被加熱領域上に、支持基板上の電力損失型導電性トラックパターンを含み、該導電性トラックパターンが、光透過率が少なくとも80 %の導電性メッシュである、車両のフロントガラスのための加熱要素。
【請求項17】
12V電源に接続されると、最大0.5 m2の面積に少なくとも4.5 W/dm2の出力を提供することができる請求項16に記載の加熱要素。
【請求項18】
該メッシュのメッシュ直径が、2 mm以下である請求項17に記載の加熱要素。
【請求項19】
該メッシュの線幅が25 μm以下である請求項17に記載の加熱要素。
【請求項20】
表面抵抗率が10オーム/□以下である請求項16から19までのいずれか一項に記載の加熱要素。
【請求項21】
支持基板上に導電性トラックパターンを含む加熱要素であって、該導電性トラックパターンは、幅15 μm以下のトラックを含み、該要素は、10オーム/□以下のシート抵抗、及び90 %を上回る光透過率を有する。
【請求項22】
加熱要素の製造に際しての感光性又は感圧性画像形成要素の使用であって、該感光性又は感圧性要素は、支持基板と、該支持基板によって支持され、バインダー組成物中に分散された感光性又は感圧性金属塩を含む感光性又は感圧性層とを含む。
【請求項23】
少なくとも2つの透明ガラス材料層を含むガラスと、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法に従って形成された導電性金属パターンを一方又は両方の側に有し、該ガラス材料層間に広がる少なくとも1つの中間層材料層を含む加熱要素と、該加熱要素を電源に接続する接続手段とを含んで成る電気加熱式ウィンドウ。
【請求項24】
該接続手段が、該加熱要素から該ウィンドウの周縁を超えて延び、そして該ウィンドウの外側で終わっている細長い電気的な接続手段である請求項23に記載のウィンドウ。
【請求項25】
車両のフロントガラスである請求項23又は24に記載のウィンドウ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−509292(P2009−509292A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530596(P2008−530596)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003290
【国際公開番号】WO2007/031710
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】