説明

合わせガラス及びその製造方法

【課題】積層体を形成させる工程の前後で、ガラスの強度を維持することが可能な合わせガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚のガラスと中間膜とを備え、該複数枚のガラスが該中間膜を介して積層された合わせガラスの製造方法において、前記合わせガラスの最外層に位置することになるガラス31,32のうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することで、該ガラス端部に窒素分子イオンを注入し、端部改質ガラス34,35を得る工程と、前記端部改質ガラス34,35を含む複数枚のガラス間に前記中間膜33を挟み、積層体36を形成させる工程とを含むことを特徴とする合わせガラスの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス及び該合わせガラスの製造方法に関し、特には、積層体を形成させる工程の前後で、ガラスの強度を維持することが可能な合わせガラスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、2枚又はそれ以上のガラスの間にポリビニルブチラール、エチレンビニルアセテート等の合成樹脂層(中間膜)を介在させた構造を有しており、該中間膜の存在により、ガラスが破損した場合にも、その破片が飛散しないため、安全性に優れることが知られている。ここで、合わせガラスの製造方法としては、一般に、複数枚のガラスを中間膜を介して積層し、次いで加熱圧着する手法が挙げられる。
【0003】
一方、耐衝撃性に優れ、割れ難いガラスとして、風冷強化ガラス及び化学強化ガラスが知られており、これら強化ガラスの合わせガラスへの適用が検討されている。しかしながら、風冷強化ガラス間に中間膜を挟んで合わせガラスを作製する場合、加熱圧着時に強化ガラスの強度が低下し、耐衝撃性及び曲げ強度を十分に確保できないおそれがある。また、化学強化ガラスの場合も、同様に加熱圧着時にガラス強度が低下するおそれがある。
【0004】
更に、合わせガラスは、ガラス間に中間膜を備えるため、ガラスの厚みを薄くすることが求められるが、強化ガラスにおいては、ガラスの厚み方向に温度差を与えることが必要であるため、ガラスの厚みを薄くすることは困難であり、また、化学強化ガラスにおいても、ガラスを交換しようとするイオンを含む塩と高温で長時間接触させることが必要であるため、ガラスの厚みを薄くすると、作業上の問題が生じる可能性がある。
【0005】
その上、合わせガラスが曲面合わせガラスである場合、風冷強化ガラス及び化学強化ガラスの使用は、著しく困難なものとなるため、曲面合わせガラスには、通常、該強化ガラスが使用されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山根正之、安井至、和田正道、国分可紀、寺井良平、近藤敬、小川晋永編、「ガラス工学ハンドブック」、初版、株式会社朝倉書店、1999年7月5日、p.410−417、p.444−446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、従来の強化処理と異なる方法によって上記従来技術の問題を解決し、積層体を形成させる工程の前後で、ガラスの強度を維持することが可能な合わせガラスの製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該製造方法によって得た、耐衝撃性及び安全性に優れる合わせガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、合わせガラスの完成時に該合わせガラスの最外層に位置する二枚のガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射して端部改質ガラスを得ることにより、該端部改質ガラスを含む複数枚のガラス間に中間膜を挟んで積層体を形成させる工程の前後で、該端部改質ガラスの強度を維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の合わせガラスの製造方法は、複数枚のガラスと中間膜とを備え、該複数枚のガラスが該中間膜を介して積層された合わせガラスの製造方法において、
前記合わせガラスの最外層に位置することになるガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することで、該ガラス端部に窒素分子イオンを注入し、端部改質ガラスを得る工程と、
前記端部改質ガラスを含む複数枚のガラス間に前記中間膜を挟み、積層体を形成させる工程と
を含むことを特徴とする。
【0010】
なお、ガラス端部とは、ガラスの厚み方向に対応する端面とその近傍を指し、端面からの距離が均等で、ガラス端部の面積がガラス全体の面積の1/3以下である領域を意味する。
【0011】
本発明の合わせガラスの製造方法の好適例においては、前記ガラス端部への窒素分子イオンの注入量が、窒素原子の個数で1.5×1014〜4.0×1016個/cm2の範囲である。
【0012】
また、本発明の合わせガラスは、複数枚のガラスと中間膜とを備え、該複数枚のガラスが該中間膜を介して積層された合わせガラスであって、前記合わせガラスの最外層に位置するガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することで、該ガラス端部に窒素分子イオンが注入されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の合わせガラスの好適例においては、前記ガラス端部への窒素分子イオンの注入量が、窒素原子の個数で1.5×1014〜4.0×1016個/cm2の範囲である。
【0014】
本発明の合わせガラスは、車両ウインドシールド用ガラスとして好適である。
【0015】
本発明の合わせガラスは、太陽電池モジュール用カバーガラスとして好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、合わせガラスの完成時に該合わせガラスの最外層に位置する二枚のガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射して端部改質ガラスを得ることにより、該端部改質ガラスを含む複数枚のガラス間に中間膜を挟んで積層体を形成させる工程の前後で、該端部改質ガラスの強度を維持することが可能な合わせガラスの製造方法を提供することができる。また、かかる製造方法によって得た、耐衝撃性及び安全性に優れる合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の製造方法によって得られる合わせガラスの一例の斜視図である。
【図2】本発明の製造方法によって得られる合わせガラスの他の例の斜視図である。
【図3】本発明の製造方法によって得られる合わせガラスの他の例の斜視図である。
【図4】本発明の合わせガラスの製造方法の概略図である。
【図5】本発明の製造方法によって得られる端部改質ガラスの一例の斜視図である。
【図6】本発明の合わせガラスの一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図を参照しながら、本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法は、合わせガラスの製造方法であって、図1には、本発明の製造方法によって得られる合わせガラスの一例の斜視図を示す。図1に示す合わせガラス1は、二枚のガラス2,3と、中間膜4とを備えており、該二枚のガラス2,3が、該中間膜4を介して積層されている。なお、図示例の合わせガラス1は、ガラス2,3を二枚のみ有するが、本発明の製造方法によって得られる合わせガラスは、ガラスを複数枚有していればよく、例えば、図2に示されるようにガラス11,12,13を三枚以上有することもできる。なお、ガラスは中間膜を介して積層されるため、図2に示す合わせガラス10は、中間膜14,15を2枚有する。また、本発明の製造方法によって得られる合わせガラスにおいて、ガラス間に挿入される中間膜を構成する層の枚数は、特に限定されるものではなく、例えば、図3に示されるように、該中間膜を構成する層の枚数が2枚以上であってもよい。なお、図3に示す合わせガラス20は、二枚のガラス21,22と、三層からなる中間膜23とを備えており、該二枚のガラス21,22が、該中間膜23を介して積層されている。
【0019】
また、本発明の合わせガラスの製造方法においては、図1〜図3に示されるように、窒素分子イオンを含有するイオンビームを、合わせガラスの最外層に位置する二枚のガラスの端部に窒素分子イオンを注入し、該ガラス端部が改質されている。なお、図1〜3では、イオンビームの照射により改質されたガラス端部をドットで示す。また、図1〜3では、合わせガラスの最外層に位置する二枚のガラス両方の端部を改質するが、本発明の製造方法においては、これに限定されず、合わせガラスの最外層に位置する二枚のガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部を改質すればよい。
【0020】
図4は、本発明の合わせガラスの製造方法の概略図である。本発明の合わせガラスの製造方法においては、まず、合わせガラスの最外層に位置することになるガラス31,32のうち少なくとも一方のガラス(図4では、両方のガラス31,32)の端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することで、該ガラス端部に窒素分子イオンを注入し、端部改質ガラス(図4では、二枚の端部改質ガラス34,35)を得る。これにより、イオンビームの照射部分において、ケイ素と窒素の結合を形成させ、ガラス31,32を改質し、得られる端部改質ガラス34,35の強度を向上させることができる。なお、上述のように、図1〜3に示す合わせガラスは、該合わせガラスの最外層に位置する二枚のガラス双方の端部をイオンビームの照射によって改質するが、本発明の製造方法においては、これに限定されず、少なくとも一枚のガラスの端部を改質すれば、合わせガラスの強度を十分に向上させることができる。また、図2に示されるように、合わせガラスの完成時に該合わせガラスの内層に位置するガラス12が存在する場合、該ガラス12の端部へのイオンビームの照射は、任意であるが、本発明の製造方法においては、合わせガラスの内層に位置することになるガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することにより、該ガラス端部に窒素分子イオンを注入し、端部改質ガラスを得ることで、合わせガラスの強度を大幅に向上させることができる。
【0021】
また、本発明者らがガラスの破壊について検討したところ、ガラスはガラス端部のクラックを起点に破壊が起こる場合が多いため、上述のようにガラスの端部さえ改質すれば、合わせガラスの強度を十分に向上でき、また、ガラスの表面は強化されていない生ガラスと同様な特徴を示すため、風冷強化ガラス等の強化ガラスと異なり、破壊が起きた際の破片が小さいことも無く、破壊時の視野を悪化させることがない。更に、ガラスの端部の一部又は全部に上記イオンビームを照射するだけで、合わせガラスの強度を十分に向上できるため、合わせガラスの強化、特には曲面合わせガラスの強化が容易である。
【0022】
ここで、本発明の製造方法においては、イオンビームの照射によりケイ素−酸素結合をケイ素−窒素結合に改質するため、本発明の製造方法に用いるガラスとして特に限定がないことは明らかであり、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス等の各種ガラスが好適に使用される。また、結晶化ガラスであっても、同様に使用できる。なお、本発明の製造方法によって得られる合わせガラスは、複数枚のガラスを備えるが、それらのガラスは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、本発明の製造方法においては、イオンビームの照射によりガラスを改質するため、ガラスの厚みに制限は無く、例えば、2mm未満の厚みを有するガラスを用いることもできる。また、特に限定されるものではないが、ガラスの厚みは、0.1mm以上であることが好ましい。
【0023】
図5は、本発明の製造方法によって得られる端部改質ガラスの一例の斜視図である。図5に示す端部改質ガラス40は、窒素分子イオンを含有するイオンビームをガラス端部の一部又は全部に照射することで、該ガラス端部が改質されている。なお、図5では、イオンビームの照射により改質されたガラス端部をドットで示す。上述の通り、本発明において、ガラス端部とは、ガラスの厚み方向に対応する端面Eとその近傍を指し、端面Eからの距離が均等で、ガラス端部の面積がガラス全体の面積の1/3以下である領域を意味する。
【0024】
本発明の製造方法において、イオンビームは、窒素分子イオン(N2+)を含有することを要する。このように、イオンビームが、窒素分子イオンを含有することで、ガラスに窒素分子を注入でき、ケイ素−窒素結合を形成することが可能となる。また、窒素分子イオンは、分子の形態であり、窒素イオンより大きいため、ガラスの強度を向上させる効果が大きく、また、改質に必要なイオン注入量を低減したり、改質に必要な処理時間を短縮したりすることができる。なお、上記イオンビームは、窒素分子イオン(N2+)以外のイオンを含有してもよく、窒素分子イオン(N2+)以外のイオンとしては、例えば、窒素イオン(N+)、炭素イオン、ホウ素イオン、リンイオン、ケイ素イオン、酸素イオン、ヒ素イオン等のケイ素原子と親和性を有するイオン(ケイ素原子と反応し得るイオン)や、アルゴンイオン等の希ガスイオン(ケイ素原子に対して不活性なイオン)が挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法においては、ガラス端部への窒素分子イオンの注入量が、窒素原子の個数で1.5×1014〜4.0×1016個/cm2の範囲であることが好ましい。ここで、窒素分子イオンの注入量は、ガラスの強化の度合いを示す指標であり、該注入量が上記特定した範囲内にあれば、ガラスの強度を大幅に向上でき、特に曲げ強度や耐衝撃性を大幅に向上させることが可能である。なお、上記窒素分子イオンの注入量が窒素原子の個数で1.5×1014個/cm2未満では、ガラスを十分に改質できないおそれがあり、一方、4.0×1016個/cm2を超えると、窒素分子イオンが必要以上に注入されるおそれがあり、ガラスに傷を付け、ガラスの強度を低下させるおそれもある。なお、窒素分子イオンの注入量は、イオン注入装置の注入条件及び注入時間を適宜選択することで調整することができる。
【0026】
なお、イオンビームの照射には、特に制限は無く、様々なイオン注入装置を使用することができる。また、イオンビームの照射は、1回に限定されず、複数回に分けて行うことも可能である。更に、イオンビームの照射は、例えばイオンビーム照射時の加速電圧を適宜選択することで、イオン注入深さを調整することもできる。
【0027】
本発明の製造方法においては、例えば、イオンビームの電流密度が0.1〜50μA/cm2で、加速電圧が10〜250kVのイオン注入条件の範囲で適宜選択して、ガラス端部へのイオンビーム照射を行うことができる。また、イオンビーム照射時の温度は、ガラスの軟化点未満の温度である限り、特に制限されるものではない。更に、本発明の製造方法によれば、ガラス端部へのイオンビーム照射を室温で行うことも可能である。なお、ここでいう室温とは、イオンビーム照射前のガラスの温度で10℃〜40℃の範囲である。また、イオンビームの照射時間は、窒素分子イオンの注入量によって適宜選択される。
【0028】
また、上記イオンビームが窒素分子イオンを含有するため、イオン源では、窒素ガスの他、アンモニア等の含窒素化合物をイオン化物質として使用することが好ましい。また、アルゴン等の希釈ガスと混合して使用することも可能である。なお、該含窒素化合物は、気体、液体、固体のいずれの状態であっても使用可能である。また、窒素分子イオンを窒素イオンと分離して注入することも、分離せずに窒素分子イオンを窒素イオンと混合して注入することも可能である。更に、窒素分子イオンを窒素イオンと分離するには、イオン注入装置内の加速管に質量分離手段を備えることで可能となる。
【0029】
次に、本発明の製造方法においては、端部改質ガラス34,35を含む複数枚のガラス間に中間膜33を挟み、積層体36を形成させる。これにより、本発明の合わせガラスが得られるが、上述のように、ガラスの間に中間膜を挟んで積層させることにより、ガラスが破損した場合であっても、その破片が飛散しないため、安全性を向上させることができる。
【0030】
また、本発明の合わせガラスの製造方法においては、得られた積層体を圧着(好ましくは加熱圧着)することが好ましい。該積層体を圧着することで、積層体を構成するガラス(部分改質ガラスを含む)と中間膜とを強固に接着することが可能となる。ここで、圧着工程は、通常予備圧着工程と本圧着工程とに分かれている。予備圧着工程は、積層したガラス間を脱気し、ガラス端部をシールする工程であって、例えば、ニッパロール法、真空袋法等が挙げられる。また、本圧着工程は、予備圧着物を焼成する工程であって、例えば、オートクレーブ法、オーブン法等が挙げられる。なお、予備圧着工程での処理温度は、通常、70〜120℃であり、また、本圧着工程での処理温度は、通常、120〜160℃である。
【0031】
なお、本発明の製造方法に用いる中間膜は、特に限定されるものではなく、合わせガラスに通常使用される中間膜を適用することができ、該中間膜の材料としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリカーボネート(PC)、アイオノマー等の合成樹脂が挙げられる。なお、特に限定されるものではないが、中間膜の厚みは、0.7〜3.0mmの範囲が好ましい。
【0032】
次に、本発明の合わせガラスについて詳細に説明する。本発明の合わせガラスは、複数枚のガラスと中間膜とを備え、該複数枚のガラスが該中間膜を介して積層された合わせガラスであって、上記合わせガラスの最外層に位置するガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することで、該ガラス端部に窒素分子イオンが注入されたことを特徴とし、上述の製造方法によって得られることができ、耐衝撃性及び安全性に優れる。なお、図1〜3に示される合わせガラスは、本発明の合わせガラスの実施態様である。
【0033】
また、本発明の合わせガラスにおいては、該合わせガラスの最外層に位置するガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部のみが改質されており、そのガラス表面(ガラス端部以外の部分)は、強化処理されていない生ガラスと同様な特徴を示すため、風冷強化ガラス等の強化ガラスと異なり、破壊が起きた際の破片が小さいことも無く、破壊時の視野を悪化させることがない。
【0034】
更に、本発明の合わせガラスは、図2に示されるように、該合わせガラスの内層に位置するガラス12を有することがあり、この場合、該ガラス12の端部へのイオンビームの照射は、任意であるが、本発明の合わせガラスにおいては、合わせガラスの内層に位置するガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することにより、該ガラス端部に窒素分子イオンを注入し、端部改質ガラスとすることで、合わせガラスの強度を大幅に向上させることができる。
【0035】
また更に、本発明の合わせガラスは、上記ガラス端部への窒素分子イオンの注入量が、窒素原子の個数で1.5×1014〜4.0×1016個/cm2の範囲であることが好ましい。該注入量が上記特定した範囲内にあれば、合わせガラスの強度を大幅に向上でき、特に曲げ強度や耐衝撃性を大幅に向上させることが可能である。なお、上記ガラス端部への窒素分子イオンの注入量とは、ガラス一枚当たりのイオン注入量を意味する。
【0036】
本発明の合わせガラスは、安全性に優れる上、強度が向上し、ガラスを薄くしても耐チッピング性に優れるため、車両ウインドシールド用ガラス(特には、自動車ウインドシールドガラス)として好適であり、また、本発明の合わせガラスは、破壊時の視野を悪化させることもないため、特に車両前面ガラスとして好適である。図6は、本発明の合わせガラスの一例の斜視図であって、自動車前面ガラスを示しており、図1と同じ符号は同じ部分であることを示す。また、本発明の合わせガラスは、ガラスを薄くしても割れ難く、雹等にも強いことから、太陽電池モジュール用カバーガラスとしても好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 合わせガラス
2,3 ガラス
4 中間膜
10 合わせガラス
11,12,13 ガラス
14,15 中間膜
20 合わせガラス
21,22 ガラス
23 中間膜
31,32 ガラス
33 中間膜
34,35 端部改質ガラス
36 積層体
40 端部改質ガラス
E ガラスの厚み方向に対応する端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラスと中間膜とを備え、該複数枚のガラスが該中間膜を介して積層された合わせガラスの製造方法において、
前記合わせガラスの最外層に位置することになるガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することで、該ガラス端部に窒素分子イオンを注入し、端部改質ガラスを得る工程と、
前記端部改質ガラスを含む複数枚のガラス間に前記中間膜を挟み、積層体を形成させる工程と
を含むことを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項2】
前記ガラス端部への窒素分子イオンの注入量が、窒素原子の個数で1.5×1014〜4.0×1016個/cm2の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項3】
複数枚のガラスと中間膜とを備え、該複数枚のガラスが該中間膜を介して積層された合わせガラスであって、前記合わせガラスの最外層に位置するガラスのうち少なくとも一方のガラスの端部の一部又は全部に、窒素分子イオンを含有するイオンビームを照射することで、該ガラス端部に窒素分子イオンが注入されたことを特徴とする合わせガラス。
【請求項4】
前記ガラス端部への窒素分子イオンの注入量が、窒素原子の個数で1.5×1014〜4.0×1016個/cm2の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の合わせガラス。
【請求項5】
車両ウインドシールド用ガラスであることを特徴とする請求項3に記載の合わせガラス。
【請求項6】
太陽電池モジュール用カバーガラスであることを特徴とする請求項3に記載の合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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