説明

合成ガスの製造方法及び装置

【課題】 原料ガスと酸素とが共存し、自着火の可能性のある前室部位での異常燃焼の発生等を低減し、触媒反応の開始点を安定したものとでき、長期に亘って安定した反応を維持することが可能となる合成ガスの製造技術を得ることである。
【解決手段】 酸素との共存状態で燃焼反応を起こす原料ガスを、酸素との共存状態で前室9より触媒反応室5に導き、触媒反応室で触媒c1と接触させて少なくとも酸化反応を起こさせ、原料ガスから合成ガスを得るに、前室9内での原料ガスの滞留を抑制する滞留抑制ガスpを前室9に吹き込み、酸素との共存状態にある原料ガスを触媒反応室5に導き合成ガスを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオートサーマル改質に見られるような、酸素との共存状態で燃焼反応を起こす原料ガスを、酸素との共存状態で前室より触媒反応室に導き、この触媒反応室で触媒と接触させて少なくとも酸化反応を起こさせ、原料ガスから合成ガスを得る合成ガスの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FT(Fischer Tropsch)合成、メタノール合成又はアンモニア合成の原ガスとして、炭化水素系燃料を触媒反応を利用して改質して水素リッチなガスを得ることが提案されている。
この種の炭化水素系燃料の触媒改質反応としては、部分酸化反応と水蒸気改質反応が知られている。
前記部分酸化反応は、下記化1に示す化学式に従ったものであり、所謂、発熱反応である。
【0003】
【化1】

【0004】
前記水蒸気改質反応は、下記化2に示す化学式に従ったものであり、所謂、吸熱反応である。
【0005】
【化2】

【0006】
ある種の改質触媒(例えばルテニウム触媒)にあっては、上記の水蒸気改質反応と部分酸化反応とが共に発生する。さらに、触媒反応室に収納する改質触媒としては、部分酸化に適した触媒を前段側に、水蒸気改質に適した触媒を後段側に配設することも考えられる。
【0007】
そこで、水蒸気と炭化水素系燃料とが混合された原料ガスに対して、この原料ガスに酸素含有ガス(例えば純酸素)を混合し、得られた混合ガスにおいて、部分酸化反応を触媒層の前段側で発生させ、反応ガスの温度を水蒸気改質反応の必要な温度にまで昇温し、触媒層の後段側で両反応(水蒸気改質反応・部分酸化反応)を起こさせて水素リッチなガスを得ることが提案されている。
この改質技術は、オートサーマル改質とも呼ばれ、一連の反応では、化1と化2に示された反応が同時に起こる。
【0008】
この改質形態では、改質触媒を充填した触媒反応室を単一の反応室とした場合、図4に実線で示すように、触媒反応室5の入口付近から昇温が始まり、下流側に行くに従って温度が上昇し、ピーク温度に到達する。その後、入口温度、入口ガス組成、反応圧力によって決る平衡温度に収束する。
【0009】
オートサーマル反応では、触媒反応室の比較的高温側の部位で、両反応における熱収支が平衡した定常安定反応域を得ることが可能であるが、その上流側の領域にあっては、部分酸化反応を主に発生させ、比較的低温の酸素と共存状態の原料ガスを水蒸気改質が発生する下限温度以上まで昇温させる。
【0010】
しかしながら、触媒反応室の入口部位は、その下流側よりは比較的低温とはいえ、尚、酸素との共存状態において原料ガスが自着火を起こす可能性がある温度域である。
【0011】
さて、オートサーマル技術として、特許文献1に開示される技術が知られている。
特許文献1には、当該明細書の図2に示すように、水蒸気改質反応を行う本触媒ゾーンの上流側に、部分酸化反応を行う前段無触媒反応室を設けた例が示されている。
【0012】
【特許文献1】特開2000−84410号公報(図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、この技術には以下のような問題がある。
この構成にあっては、部分酸化反応を前段無触媒反応室で行うが、触媒反応を利用しないために、部分酸化を確実に得ることが難しく制御性がよくない。
従って、部分酸化も触媒反応室で初めて起こるようにするのが好ましい。
【0014】
以上説明してきたように、触媒反応は、反応触媒が配される部位で起こさせることが好ましいが、先の例からも判るように、その上流側に無触媒の前室を設けることとなる。そして、酸素との共存状態にある原料ガスを、この前室を介して触媒反応室に導いて、酸化反応を含む反応を行わせる。従ってこの形態では、触媒反応室の入口近傍の温度によっては、原料ガスが自着火する可能性がある。
さらに詳細に説明すると、流れ主流においては、前室入口から触媒反応室入口に到達する移流時間が比較的短時間であるにもかかわらず、前室の壁面近傍あるいは流れのよどみ部にあっては、酸素との共存状態にある原料ガスが当該部位に長時間滞留し、自着火に至るおそれがある。自着火が発生すると前室において異常燃焼が生じる不都合である。この状況は、通常運転時のみならず、条件が厳しくなる起動・起動停止時、流量低下時、異常・トラブル時等に発生しやすいが、この状況を積極的に回避する技術の開示は見出せない。
【0015】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、原料ガスと酸素とが共存し、自着火の可能性のある前室部位での異常燃焼の発生等を低減し、触媒反応の開始点を安定したものとでき、長期に亘って安定した反応を維持することが可能となる合成ガスの製造技術を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための、
酸素との共存状態で燃焼反応を起こす原料ガスを、酸素との共存状態で前室より触媒反応室に導き、前記触媒反応室で触媒と接触させて少なくとも酸化反応を起こさせ、前記原料ガスから合成ガスを得る合成ガスの製造方法の特徴構成は、
前記前室内での原料ガスの滞留を抑制する滞留抑制ガスを前記前室に吹き込み、酸素との共存状態にある前記原料ガスを前記触媒反応室に導き前記合成ガスを得ることにある。
【0017】
この方法を使用する、酸素との共存状態で燃焼反応を起こす原料ガスを、酸素との共存状態で前室より触媒反応室に導き、前記触媒反応室で触媒と接触させて少なくとも酸化反応を起こさせ、前記原料ガスから合成ガスを得る合成ガスの製造装置の特徴構成は、
前記前室に、前記前室内での原料ガスの滞留を抑制する滞留抑制ガスを吹き込む滞留抑制ガス吹き込み手段を設け、前記滞留抑制ガス吹き込み手段を作動させた前記滞留抑制ガスの吹き込み状態で、酸素との共存状態にある前記原料ガスを前記触媒反応室に導き前記合成ガスを得る合成ガスの製造装置とすることができる。
【0018】
この合成ガスの製造方法にあっては、酸素との共存状態にある原料ガスを、前室から触媒反応室に向けて流す。ここで、この流れに対して、原料ガスの滞留を抑制する滞留抑制ガスを吹き込む。この種の滞留抑制ガスとしては、不活性ガスや原料ガスそれ自体、あるいはそれらの成分ガスを使用することができるが、このようなガスを吹き込むことで、前室における原料ガスの滞留を防止でき、前室での滞留が長引き原料ガスが自着火を起こすことを抑制するこができる。結果、異常燃焼の発生を抑制することができ、通常運転状態のみならず、条件が厳しくなる起動・起動停止時、流量低下時、異常(自着火による異常燃焼を除く)・トラブル時等に前室側で問題が発生する可能性を低減することができる。
合成ガスの製造装置としては、装置に滞留抑制ガス吹き込み手段を備えることで、上記方法を使用し、安定した合成ガスの製造を行える。
【0019】
異常燃焼の発生原因としては、前室から触媒反応室に至る流路壁近傍に滞留するガス、或いは前室内に形成されているよどみ部が、ガスの滞留時間を長くする要因となる。
以下、これらの箇所に関する具体的な対策を説明する。
1 前室流路壁近傍での滞留に関する処理
この場合、滞留抑制ガスの吹き込み形態としては、前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れに対して、流路壁側に前記滞留抑制ガスを流し、前記燃焼反応の発生を抑制するようにすることができる。
【0020】
この方法にあっては、滞留抑制ガスを流路壁側に吹き込むため、酸素との共存状態にある原料ガスが流路壁近傍に滞留して、その滞留時間が長くなり、このガスが自着火等を起こして前室内で異常燃焼が発生することを避けることができる。
この方法を使用する合成ガスの製造装置としては、前記滞留抑制ガス吹き込み手段が、前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れに対して、流路壁側に前記滞留抑制ガスを流すこととなる。
【0021】
2 前室よどみ部に対する処理
この場合、滞留抑制ガスを吹き込み形態としては、前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れのよどみ部に、前記滞留抑制ガスを流し、前記燃焼反応の発生を抑制する。
よどみ部にあっても、酸素と共存状態にある原料ガスが長期間、この部位に滞留し、その滞留時間に起因して、自着火し、異常燃焼に繋がる可能性があるが、この部位へ滞留抑制ガスを流すことで滞留を抑制し、上記問題を低減できる。
この方法を使用する合成ガスの製造装置としては、滞留抑制ガス吹き込み手段が、前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れのよどみ部に、前記滞留抑制ガスを流すものとしておけばよい。
【0022】
さらに、合成ガスの製造装置としては、前室において、酸素との共存状態にある原料ガスの流れの流路壁表面あるいはよどみ部に対する壁表面に燃焼反応の誘起抑制処理が施されていることが好ましい。
この種の処理としては、ガスと接触する面を金塗覆等により処理することとすることで、表面との相互作用による燃焼反応の誘起を抑制し、燃焼反応を抑制することができる。
【0023】
以上は、ガスがほぼ一定部位に留まることがある場合に対する対策であるが、酸素と共存する原料ガスの流れに関しても、自着火、異常燃焼を避ける意味からは、以下の対策を施しておくのがよい。
【0024】
酸素と共存する原料ガスの流れ主流側の安定化
この主流側に対する対策としては、前記酸素との共存状態にある原料ガスの流れが前室入口から触媒反応室入口に到達するまでの移流時間で自着火する自着火温度未満の温度で、前記酸化反応が起こる下限温度以上の温度に、前記前室の温度を設定する。
ここで、移流時間としては、流れの代表速度(例えば、平均流速、・・・・)を選択する。そして、その代表流速で前室入口から触媒反応室入口に到達するに要する時間を割り出し、その時間で前室内のガスが自着火しないように、上記下限温度以下の温度に前室を保つ。従って、主流側での異常燃焼の発生の確率が低下する。一方、この前室の温度を触媒との関係で酸化反応を起こす以上の温度とする。
このようにすることで、前室での自着火を伴った異常燃焼を回避しながら、触媒反応室への流入に伴って酸化反応を起こさせることが可能となる。
【0025】
この手法を使用する合成ガスの製造装置は、
前記酸素との共存状態にある原料ガスの流れが前室入口から触媒反応室入口に到達するまでの移流時間で自着火する自着火温度未満の温度で、前記酸化反応が起こる下限温度以上の温度に、前記前室の温度を設定する前室温度維持手段を備えて、装置を実現できる。
【0026】
さて、前室内の圧力を常圧より高く設定することが好ましい。このようにしておくと、外部からの空気の流入により前室が影響を受けるのを避けることができる。
【0027】
さて、本願方法の適応例としては、前記原料ガスが水蒸気と炭化水素系燃料が混合したガスであり、前記触媒反応室で、部分酸化反応及び水蒸気改質反応を実行して、前記合成ガスとしての水素含有ガスを得るものとすることができる。
この場合、合成ガスの製造装置は、前記原料ガスが水蒸気と炭化水素系燃料が混合したガスであり、前記触媒反応室で、部分酸化反応及び水蒸気改質反応を実行して、前記合成ガスとしての水素含有ガスを得るものとなる。
【0028】
部分酸化反応と水蒸気改質反応とを起こさせて、水素含有ガスを得ることができるが、この反応形態における触媒反応室内の反応は、触媒反応室入口における温度に大きく依存する。そして、上記前室において自着火を伴って異常燃焼が起こると前室におけるガス状態が不安定となり、触媒反応室入口の温度が上昇しすぎ、触媒反応室内の最高温度が内部を流れる原料ガスの熱分解温度を上回り、触媒反応にとって問題となるカーボンの発生を起こすことともなりかねない。
【0029】
しかしながら、これまで説明してきたように、前室におけるガス状態を自着火等を起こさない安定したものとすることで、結果的に水素含有ガスを継続的に安定的に得ることができる。
【0030】
さて、合成ガスの製造装置は、
前記酸素との共存関係にある原料ガスが、前記前室と前記触媒反応室とに渡って直線状の主流を形成して移流可能であり、
前記主流に直交する横断面に関して、前記前室の横断面の流路断面積が前記触媒反応室の横断面の流路断面積より小さいものとすることが、好ましい。
【0031】
この構成の場合、前室と触媒反応室との関係を直線的な位置関係に配設することで、ガスのスムーズな移流を起こさせることができる。そして、触媒反応室に関しては、合成ガスの製造量に見合うだけの触媒量を確保し、その部位の流路断面積を設定する。その状態で触媒反応室におけるガス流速は決定するが、この流速に対して前室のガス流速は流路断面積との関係で上昇する。結果、前室内をガスは高速で通過することとなり、その部位での移流時間を短くでき、本願が目的とする前室での自着火の抑制と、触媒反応室の反応の安定に寄与することができる。
【0032】
また、このように構成する場合に、前記前室と前記触媒反応室とが単一の直線筒状の反応筒形成体内に連続形成され、前記前室の前記流路断面積が、前記前室内に収納される中実の流路確定部材で確定してあることが好ましい。
この構成の合成ガスの製造装置では、直線筒状の反応筒形成体内に流路格納部材を収納するだけの簡単な構成で、容易且つ安価に本願の目的を達成することができる合成ガスの製造装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面に基づいて本願に係る合成ガスの製造方法を使用する合成ガスの製造装置の一例としての水素含有ガス製造装置1を説明する。
〔GTL製造プロセス〕
図1は、水素含有ガス製造装置1を、水素含有ガスを一方の原ガスとするGTL反応器2の上流側に備えたGTL製造プロセス3の構成を示したものである。同図に示すように、このシステム3は、水素含有ガス製造装置1をGTL反応器2の上流側に備えて構成されており、水素含有ガス製造装置1には、天然ガス等の炭化水素系燃料f、水蒸気s及び酸素含有ガスである酸素oが供給され、改質の後、水素リッチガスhがGTL反応器2に送られる。
炭化水素系燃料としては、前記天然ガスの他、ガス状態にあるアルコール、エーテル、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油、アスファルテン油、オイルサンド油、石炭液化油、シェールオイル、GTL、廃プラスチック油及びバイオフューエル等を採用できる。
【0034】
炭化水素系燃料fに対する処理系統を説明すると、炭化水素系燃料fは脱硫装置4により1ppb以下まで脱硫された後、水蒸気sが添加され本願にいう原料ガスf1とされる。この原料ガスf1に対して、同図に示すように酸素oがさらに混合されて、単一の触媒反応室5に導入される。この触媒反応室5には、前記炭化水素系燃料f、水蒸気s及び酸素oが混合された混合ガスf2に対して、オートサーマル改質反応を発生可能な改質触媒c1が配置されている。この触媒反応室5にあっては、その入口側部位で主に部分酸化反応が発生し、その下流側において主に水蒸気改質反応が起こる。
【0035】
この種の改質触媒としては、具体的には、ロジウム、イリジウム、白金、パラジウム、ルテニウムなどの貴金属系触媒が好ましく用いられ、その他、ニッケル系、コバルト系などの触媒も適用することができる。また、金属は1種類のみを用いてもよく、また、必要に応じて2種類以上を併用することもできる。これらの触媒はどのような形状でもよく、担体の制限も特にないが、望ましくはアルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、マグネシア、カルシアから選ばれる1種を主成分とする担体が好ましく、この担体に担持して、タブレット状、球状、リング状の成型品の形で使用するか、ハニカム状に成型して使用するのが好ましい。
この種の触媒の製造に関して代表例を、アルミナ担体にルテニウムを担持させる場合に関して説明すると、例えば、球状のアルミナ担体(直径4〜6mm)を塩化ルテニウム(RuCl・3HO)水溶液に浸漬し、空気中80℃で2時間乾燥した後、固定化(NaOH水溶液による処理)、水素還元することにより調製できる。
【0036】
図1に示すように、前記触媒反応室5は鉛直上下方向に配設されており、上部側から原料ガスf1(炭化水素系燃料fに水蒸気sを混ぜられたガス)が供給され、酸素oが混合された混合ガスf2が、触媒反応室5の上側に設けられた入口5aから導入され、改質反応を終えて、触媒反応室5の下方からGTL反応器2側へ水素リッチガスhが送られる。以下、本願に係る水素含有ガス製造装置1の具体的構成を、図1、2、3を参照しながら説明する。
【0037】
〔水素含有ガス製造装置〕
水素含有ガス製造装置1は、先に説明した炭化水素系燃料fに対する、脱硫、水蒸気添加、酸素混合及び改質までの工程を受持つように構成されている。
前記脱硫は脱硫室6において実行され、脱硫室6から送出される炭化水素系燃料fに水蒸気sを混合した原料ガスf1が生成される。図2は、この装置1における、原料ガス室7、混合室8、前室9及び触媒反応室5の具体的構成を示したものである。本願は、前室9の構成及びその使用形態に特徴があるため、同図には触媒反応室5の上部側のみを示している。触媒反応室5の下部側に設けられる出側は、出口5bを介して接続管5cでGTL反応器2の水素導入口2aに接続されている。図3は、前室9の詳細構造及び、その部位の流れ状態を示す図である。
【0038】
脱硫
前記脱硫室6には酸化銅、酸化亜鉛等を混合した銅亜鉛系高次脱硫触媒等の脱硫触媒c2が配設され、この室6で、硫黄化合物濃度を1ppb以下にする。
上記した銅亜鉛系高次脱硫触媒の他、銀系触媒、さらには、ニッケル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、金等を含む脱硫触媒も採用可能である。
【0039】
水蒸気混合
脱硫を経た炭化水素系燃料fは、別途水蒸気供給管10を経て供給される水蒸気sを添加される。ここで、炭化水素系燃料fに対する水蒸気s量は、燃料中に含まれる炭素Cに対する水蒸気HOの割合をモル比で〔HO/C〕として、0.1〜3.0(好ましくは0.1〜1.0)とされる。また、この部位での温度は200〜400℃(好ましくは200〜300℃)程度である。このようにして得られるガスを本願にあっては、原料ガスf1と呼ぶ。
【0040】
一方、本願の水素含有ガスの製造装置1には、図1、2、3に示すように、炭化水素系燃料fあるいは水蒸気s(原料ガスf1に対しては成分ガスとなる)、あるいは原料ガスf1あるいは不活性ガス等であるパージガスpが供給されるとともに、これまで説明してきたように、酸素oも供給される。そして、これらのガスが、下記に詳述する改質ユニット11で適切に反応処理される。
【0041】
改質ユニット11
図2、3に示すように、改質ユニット11は、ユニットの上部側に、原料ガス室7、混合室8及び前室9を備えて構成されており、その下側に触媒反応室5を備えている。
改質ユニット11の上部側は概略二重管構造とされており、その内管11a内を介して前記パージガスpが前記前室9の下部域に供給できるように構成されている。さらに、図2に示すように、この内管11a内には温度計測用の熱電対t1が前室概中間部位まで延出して配設されており、前室9の代表温度(入口温度)を計測可能に構成されている。
【0042】
原料ガス室7
図2に示すように、原料ガス室7は水蒸気sが混合された原料ガスf1が導入される導入口7aと、この導入口7aが開口する中間路部7bと、この中間路部7bより流路断面が大きな流路拡大部7cを備えて構成されている。この流路拡大部7cの下手側に、混合室8が設けられている。
【0043】
混合室8
混合室8は、所謂、シェルアンドチューブ型の混合構造が採用されており、前記流路拡大部7cから原料ガスf1が流入するチューブ8a内の流路に、その外側に設けられる酸素室8bから、酸素oが流入するように構成されている。従って、原料ガスf1に対して酸素oが流入することで、このチューブ8a内で原料ガスf1と酸素oとが混合した(共存状態にある)混合ガスf2を形成できる。
同図に示すように、前記チューブ8aは、混合室8を区画する仕切り板8c,8cの離間距離を越えて下部側の延出されており、この流路を流下することで、充分な混合状態が得られるように構成されている。
ここで、炭化水素系燃料fに対する酸素o量は、燃料中に含まれる炭素Cに対する酸素Oの割合をモル比で〔O/C〕として、0.05〜1.0(好ましくは0.3〜0.7)とされる。また、この部位での温度は200〜400℃(好ましくは200〜300℃)程度である。このようにして得られるガスを本願にあっては、混合ガスf2と呼ぶ。
【0044】
前室9
前室9は、触媒反応室5に対する調整室としての役割を果たすように設けられており、先に説明したチューブ8aが延出される導入部9aと、この導入部9aと触媒反応室5との間に設けられる調整部9bとを備えて構成されている。
前記導入部9aには、図示するようにチューブ8aが下方に侵入・延出されており、これらチューブ8aの先端から混合ガスf2が放出される。前記チューブ8aの外周部位9cは中実とされており、ガスが滞留することはない。さらに、前記内管11aを介して先に説明したパージガスpが導入部9aの先端に供給される構造が採用されており、上記パージガスpの供給及びチューブ8a外側の中実構造により、混合ガスf2の上側への上昇及び滞留は起こらない。
ここで、パージガスpは、図2、3からも判明するように、チューブ8aの先端下手側の周部に噴出す構成が採用されており、混合ガスf2に対する流路の壁面側を流れる。さらに、後述するように、調整部9bのガス流路9dには通気性を有する断熱材料9hが配設され、これがその先端部位及びその周部でよどみ部を形成することとなるが、混合ガスf2の流れとは異なった流れとしてパージガスpを流すことで、上記壁面9dw及びよどみ部9dsでのガス滞留の確率を低減できる。本願にあっては、前室9内での原料ガスの滞留を抑制する滞留抑制ガスを吹き込む構成を滞留抑制ガス吹き込み手段と称する。
【0045】
前記調整部9bは、この部位において前室9の温度を適切に調整するとともに、比較的細い流路であるチューブ8a内を流れてきた混合ガスf2を、僅かに流路拡大しつつさらに混合し、触媒反応室5への導入をスムーズに行う。従って、図2、3に示すように、調整部9bにおいて混合ガスf2が流れるガス流路9dでは、その断面積が僅かに増加されて、ガス流速が低下する。
【0046】
同図に示すように調整部9bの上部側及び下部側には、前記調整部9bのガス流路9dを形成する状態で、それぞれアルミナブロック9e及び窒化珪素からなる多孔性のブロック9fが設けられている。これら材料を設ける理由は、触媒反応室5からの熱が上流側へ伝播するのを防止し断熱を良好に行うことを目的とする。同図において、前記ブロック9fの外径側部位にはセラミックロープ9gを設置し、ブロック9fと耐火材のすき間にガスが流れないようにしている。
さらに図2に示す例では、前記調整部9bのガス流路9d内に通気性を有する断熱材料9hが配設され、触媒反応室5と前室9との境界における断熱と混合未反応ガスの対流防止が確保されている。
【0047】
以上説明し、図2、3からも判明するように、本願構成にあっては、酸素との共存状態にある原料ガスが、前室9と触媒反応室5とに渡って直線状の主流を形成して移流可能であり、この主流に直交する横断面(図2において横方向の断面)に関して、前室9の横断面の流路断面積が触媒反応室5の横断面の流路断面積より小さく設定される。結果、流れは、触媒反応室5に流入する段階で、拡大し、流速が急速に低下する。
さらに、これら図からも明らかなように、前室9と触媒反応室5とは単一の直線筒状の反応筒形成体内に連続形成されており、この前室9の流路断面積が、前室9内に収納される中実の流路確定部材(上記したアルミナブロック9e、ブロック9f)で確定してある。
【0048】
触媒反応室5
触媒反応室5は、本願に係る水素含有ガス製造装置1の主要部となる部位であり、これまでも示したように改質触媒c1が配設される部位である。
また、触媒反応室5に供給する総ガス流量を時間あたりの気体空間速度(但し、標準状態換算の値)で750h−1〜300000h−1(好ましくは10000h−1〜300000h−1、より好ましくは50000h−1〜300000h−1)の範囲としている。
【0049】
反応時の圧力についての制限は特にはない。用途により、反応圧力を変更することが可能である。実施例に示すように、GTL等の液体燃料合成用途に用いる場合は2〜7MPaで使用する。一方燃料電池の原ガスとする場合は常圧付近(例えば、1MPa以下)で使用することとなる。
【0050】
以上が、本願に係る水素含有ガス製造装置1のハード側の構成であるが、この装置構成に対して、本願装置にあっては、前室9及び触媒反応室5における反応状態を適正なものとすべく構成されている。
即ち、本願装置1では、触媒反応室5への混合ガスf2の入口温度を適正化すべく工夫が成されている。例えば、これまで説明してきた構成において、混合ガスf2のガス流路9dを比較的小として、この流路9dにおける流速を上げることで、混合ガスf2の前室9内での滞留時間を一定時間以下としている。又、触媒反応室5と前室9との境界における断熱を高いものとして、触媒反応室5の温度が前室9に影響しないようにしている。さらには、パージガスpを前室9に導入して混合ガスf2の逆流及び滞留を防止している等が、本願におけるハード側の工夫点である。
【0051】
本願の水素含有ガス製造装置1にあっては、図1に示すように、その反応状態を制御するための制御装置13が備えられており、炭化水素系燃料fの種類、系内への投入量及び温度、水蒸気sの系内への投入量及び温度さらには、酸素oの系内への投入量及び温度が、この制御装置13でモニター可能に構成されている。
一方、図2に示すように、先に説明した改質ユニット11の上部及び下部側からユニット11内に挿入される熱電対t1,t2により、前室9の調整部9bの入口及び出口(触媒反応室の入口5a)における温度、及び触媒反応室5内の流れ方向における温度もモニター可能に構成されている。
そして、制御装置13からの制御指令に従って、水素含有ガス製造装置1内への炭化水素系燃料投入量、水蒸気投入量、酸素投入量を調整可能とされている。
【0052】
さて、制御装置13の構成に関して説明すると、図1,4に示すように、この制御装置13には、改質触媒c1が部分酸化反応を起こす下限温度を部分酸化下限温度T1、水蒸気改質反応を起こす下限温度を水蒸気改質下限温度T2として、部分酸化下限温度T1以上、水蒸気改質下限温度T2未満の温度で、混合室8から触媒反応室5に混合ガスf2が到達するのに要する移流時間で混合ガスf2が自着火する温度である自着火温度T3に対して、当該自着火温度未満の温度に、混合室8及び前室9の温度を設定する温度設定手段13aが備えられている。
さらに、この温度設定手段13aに対して、部分酸化下限温度と混合ガスf2の露点温度T4とに関して高い側の温度を前室下限温度とし、混合ガスf2の自着火温度を前室上限温度として、前室9を流れる混合ガスf2の温度を、前室上限温度未満、前室下限温度より高い温度に維持する前室混合ガス温度維持手段(図1に単に温度維持手段と記載)13bが備えられている。
ここで、本願にいう混合ガスの露点温度とは、その部位における水蒸気の分圧が飽和水蒸気圧となる温度であり、その環境下で温度のみが低下した場合に結露が生じる温度である

【0053】
以下、制御装置13内における下限温度と上限温度とに関して説明する。
下限温度
部分酸化下限温度は混合ガスf2が改質触媒c1に接触して部分酸化反応を起こす下限温度T1であり、触媒反応室5に収納される改質触媒c1によって、この下限温度T1は決まる。例えば、改質触媒c1が上述のようなルテニウム系触媒である場合は200℃程度であり、改質触媒c1がロジウム系触媒である場合は300℃程度である。従って、制御装置13に設けられる記憶手段13c内には、この部分酸化下限温度が記憶格納されており、制御装置13側でこの部分酸化下限温度T1を適宜読み出し利用可能に構成されている。
【0054】
一方、混合ガスf2に関しては、前記炭化水素系燃料f、水蒸気s及び酸素oの混合比に従った混合ガスの露点温度T4が決まる。そこで、前記記憶手段13cには各ガスの混合比に従った露点温度データが記憶されており、このデータを利用して現状で前記前室9内に存在する混合ガスf2の露点温度T4を、各ガスの投入量から推定可能としている。
【0055】
従って、制御装置13にあっては、改質触媒c1の種類に基づく部分酸化下限温度T1及び前室内に存在すると推定される混合ガスf2の投入量・温度から推定される混合ガスf2の露点温度T4に従って、両者の高い側の温度として下限温度(前室下限温度)を求める。
【0056】
上限温度
水蒸気改質下限温度は混合ガスf2が改質触媒c1に接触して水蒸気改質反応を起こす下限温度T2であり、触媒反応室5に収納される改質触媒c1によって、この水蒸気改質下限温度T2は決まる。例えば、改質触媒c1が上述のようなルテニウム系触媒である場合は400℃程度であり、改質触媒c1がニッケル系触媒である場合は400℃程度である。従って、制御装置13に設けられる記憶手段13c内には、この水蒸気改質下限温度T2が記憶格納されており、制御装置13側でこの水蒸気改質下限温度T2を適宜読み出し利用可能に構成されている。
【0057】
この水蒸気改質下限温度T2に対して、前室9内に存在する混合ガスf2の自着火温度T3も考慮される。即ち、自着火温度T3は、前室9内の混合ガスf2の組成及びその前室9内における滞留時間(この滞留時間とは、混合室8において酸素oを混合された後、混合室8を出てから触媒反応室5の入口5aに至るまでの時間であり、本願の場合、混合室8出側のチューブ8a内を経て触媒反応室5の入口5aに至るまでの混合ガスf2の移流時間を意味する)に依存する。
そこで、記憶手段13cに、滞留時間において、初めて着火する混合ガスf2の組成状態に従った自着火温度T3が記憶されており、この温度と、上記水蒸気改質下限温度T2との関係で上限温度を得る。このような、滞留時間(図上「着火遅れ時間」と表示)と自着火温度T3(図上「混合ガス温度」と表示)との関係を混合ガスf2に関して示したのが図5である。同図は、混合ガスf2が、炭化水素系燃料が天然ガスで、〔N/C〕
、〔O/C〕が、それぞれ(0.6〜1.0)と、(0.1あるいは0.4)である場合を示している。この状態における混合ガスの圧力は4MPaである。燃焼反応は混合ガスの衝突頻度に律速され、実際の頻度因子は分子の直径や自由度によるが、HOの衝突頻度を1とするとNは0.7から0.8程度と同等になるので、同図の実施例では水蒸気に代えてN2を導入している。
【0058】
制御装置13にあっては、前記温度設定手段13a、さらに具体的には前記前室混合ガス温度維持手段13bが、先に説明した手法に従って、炭化水素系燃料投入量、水蒸気投入量、酸素投入量等を調整して良好な運転状態を確保する。
【0059】
さて、上記前室混合ガスf2の温度を、前室上限温度と下限温度との間に維持することは、結局、触媒反応室5の入口5aでの混合ガス温度を適切に調整することを意味する。そして、この温度は、触媒反応室5内での反応温度を適切に制御することに繋がる。
そこで、前記温度設定手段13a,前記前室混合ガス温度維持手段13bが、上記前室上限温度及び下限温度に関する要件を満たした状態で触媒反応室5の代表温度に従って、前室9における混合ガスf2の温度を調整する構成が採用されている。例えば、触媒反応室5内に収納されている触媒c1の劣化に伴い、部分酸化反応が遅れ、触媒反応室5の温度が水蒸気改質反応を起こすのに遅れが生じる(結果的には触媒反応室5におけるピーク温度位置が下流側へ移動したり、ピーク温度が上がったりする)。そこで、前記前室の温度を調整可能に構成されているのである。
この種の温度調整に関しては、炭化水素系燃料に対する水蒸気量あるいは酸素量の調整によりこれを実行することができる。
【0060】
以下、制御装置13による本願に係る水素含有ガス製造装置1の運転状態に関して説明する。
前室9内の混合ガス温度が前室上限温度(自着火温度)及び前室下限温度(部分酸化下限おんと露点温度の高い方)内にある状況下での制御
この状況は、触媒反応室5における反応は一応適切な状態にあると推定される。但し、このような適正な状態にあっても、触媒反応室5の状態を安定した状態に保つため、前室9に於ける混合ガスf2の温度を、前記前室上限温度及び前室下限温度との範囲内で、前記触媒反応室5の代表温度(例えばピーク温度)に従って制御する。このようにすることで、安定且つ適正な作動状態を維持できる。
【0061】
〔別実施の形態〕
本願の別実施の形態に関して説明する。
(1) 上記の実施の形態にあっては、オートサーマル改質反応の例を示したが、本願に係る技術思想は、酸素との共存状態で長期滞留が発生した場合に燃焼が起こるおそれがある反応に適応できる。この種の反応としては、エチレンのオキソ反応等の多くの気相酸化反応がある。
(2) 上記の実施の形態にあっては、混合室から延出されるチューブとほぼ同径のガス流路を前室の調整部内に設け、チューブ、ガス流路を介して混合ガスの流速を比較的高く維持して滞留時間を短くし、触媒反応室に混合ガスを導く例を示したが、図6に示すように、チューブ8aの出口より下流側に合流路90を設け、この合流路90を介して触媒反応室5に混合ガスf2を流入させるようにしてもよい。但し、この合流路90の断面積は、この部位で実現する流速が原料ガス室7の最低流速より高くなるようにする。このようにすると、混合ガスf2の性状を均一化し、触媒反応室5の入口近傍における混合ガスf2の触媒反応室断面方向への拡散を良好なものとできる。
(3) 上記の実施の形態にあっては、水素含有ガス製造装置に、前記温度設定手段13a,前室混合ガス温度維持手段13bを設け、積極的に炭化水素系燃料に対する水蒸気、酸素の投入量を制御して、触媒反応部の反応を適正な状態に維持したが、通常運転状態がほぼ確定している場合は、先に説明した改質ユニット11における各室7,8,9での流速がほぼ決定することから、前室9における混合ガスの温度が適切となるようにその流路断面構成を構成してもよい。
即ち、改質触媒c1によって部分酸化下限温度が決り、混合ガスf2のガス組成が決まると、その露点温度は決まることから、本願にいう前室下限温度は決まる。
一方、前室上限温度に関しては、改質触媒c1によって水蒸気改質下限温度が決り、混合ガスf2が流れるチューブ8a内および、その下流側の調整部9bのガス流路9dの形状により、混合ガスf2が混合室8から触媒反応室5に到達するまでの最大の滞留時間が決まる。そこで、先に説明したような図5に示す混合ガスの温度と滞留時間との関係を予め求めておき、上記最大の滞留時間分だけ混合ガスf2が前室に留まった場合にも、混合ガスf2が自着火しない温度を、前室上限温度とすることができる。
(4) 上記の実施の形態にあっては、前室における混合ガスの温度を、触媒反応室の代表温度に従って制御する例を示したが、基本的には、触媒反応部の入口で部分酸化反応を発生できればよいため、先に説明した、温度設定手段13a,前室混合ガスの温度維持手段13bの制御を構成するに、前室における混合ガスの温度を、前室下限温度側に導くように構成することもできる。
この場合、改質に必要となる部分酸化反応の発生を確保しながら、触媒反応部で問題となり易いカーボンの発生を回避する方向に反応を制御できる。
(5) 上記の実施の形態にあっては、前室における混合ガスの滞留時間と、その滞留時間分だけ混合ガスが前室に留まった場合に、混合ガスが自着火を起こさない温度に前室を設定して改質を行う例を示したが、前室内に積極的に火炎伝播を阻止する手段を設けてもよい。図7は、このような例を示したものであり、チューブ8aの先端にフレームアレスタ60を配設するとともに、ガス流路9dの内壁61及びよどみを発生する部位62に燃焼反応防止用に金塗覆処理wを施している。このようにしても、前室9での火炎形成・伝播を防止することができる。この処理を燃焼反応の誘起抑制処理と呼ぶ。
(6) これまで説明してきた実施の形態にあっては、オートサーマル反応としては、炭化水素系燃料に対して水蒸気を添加し、部分酸化反応を経た後、水蒸気改質反応を起こさせる例を示したが、所謂、二酸化炭素改質反応を起こさせてもよい。この二酸化炭素改質反応も吸熱反応であり、反応形態は以下に示す化3に従うものとなる。
【0062】
【化3】

【0063】
図8に、化2に従った水蒸気改質及び化3に従った二酸化炭素改質を行わせるGTL製造プロセスの構成例を図1に対応して示した。設備構成は、図1に示すものと同様であるが、図1に示す例では、炭化水素系燃料fに水蒸気sのみを添加して原料ガスf1を得ていたのに対して、この例では、水蒸気s及び二酸化炭素COも添加して原料ガスf1を得ている。このGTL製造プロセスでは、水蒸気改質反応と二酸化炭素改質反応との両者の反応を進行させることができる。
このような反応形態にあっても、本願に係る水素含有ガスの製造方法及び装置では、前室、それに続く触媒反応室での状態を所望の良好なものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る水素含有ガスの製造装置を備えたGTL製造プロセスの構成を示す図
【図2】改質ユニットの上部構成を示す図
【図3】改質ユニットの前室の詳細を示す図
【図4】触媒反応室における入口温度を触媒反応室内温度との関係を示す図
【図5】混合ガス温度と着火遅れ時間との関係を示す図
【図6】前室の別構成例を示す図
【図7】図2に対応する前室構成において火炎伝播抑制処理を行った例を示す図
【図8】水蒸気改質と二酸化炭素改質とを共に行う例を示す図1に対応する構成例を示す図
【符号の説明】
【0065】
1 水素含有ガスの製造装置(合成ガスの製造装置)
2 GTL反応器
5 触媒反応室
7 原料ガス室
8 混合室
8a チューブ
8b 酸素室
9 前室
11 改質ユニット
13 制御装置
13a 温度設定手段
13b 温度維持手段
13c 記憶手段
c1 改質触媒
c2 脱硫触媒
f 炭化水素系燃料
f1 原料ガス
f2 混合ガス
h 水素リッチガス
o 酸素
p パージガス
s 水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素との共存状態で燃焼反応を起こす原料ガスを、酸素との共存状態で前室より触媒反応室に導き、前記触媒反応室で触媒と接触させて少なくとも酸化反応を起こさせ、前記原料ガスから合成ガスを得る合成ガスの製造方法であって、
前記前室内での原料ガスの滞留を抑制する滞留抑制ガスを前記前室に吹き込み、酸素との共存状態にある前記原料ガスを前記触媒反応室に導き前記合成ガスを得る合成ガスの製造方法。
【請求項2】
前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れに対して、流路壁側に前記滞留抑制ガスを流し、前記燃焼反応の発生を抑制する請求項1記載の合成ガスの製造方法。
【請求項3】
前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れのよどみ部に、前記滞留抑制ガスを流し、前記燃焼反応の発生を抑制する請求項1又は2記載の合成ガスの製造方法。
【請求項4】
前記酸素との共存状態にある原料ガスの流れが前室入口から触媒反応室入口に到達するまでの移流時間で自着火する自着火温度未満の温度で、前記酸化反応が起こる下限温度以上の温度に、前記前室の温度を設定する請求項1〜3のいずれか1項記載の合成ガスの製造方法。
【請求項5】
前記滞留抑制ガスが、不活性ガス若しくは前記原料ガスあるいはその成分ガスである請求項1〜4のいずれか1項記載の合成ガスの製造方法。
【請求項6】
前記前室内の圧力を常圧より高く設定する請求項1〜5のいずれか1項記載の合成ガスの製造方法。
【請求項7】
前記原料ガスが水蒸気と炭化水素系燃料が混合したガスであり、前記触媒反応室で、部分酸化反応及び水蒸気改質反応を実行して、前記合成ガスとしての水素含有ガスを得る請求項1〜6のいずれか1項記載の合成ガスの製造方法。
【請求項8】
酸素との共存状態で燃焼反応を起こす原料ガスを、酸素との共存状態で前室より触媒反応室に導き、前記触媒反応室で触媒と接触させて少なくとも酸化反応を起こさせ、前記原料ガスから合成ガスを得る合成ガスの製造装置であって、
前記前室に、前記前室内での原料ガスの滞留を抑制する滞留抑制ガスを吹き込む滞留抑制ガス吹き込み手段を設け、前記滞留抑制ガス吹き込み手段を作動させた前記滞留抑制ガスの吹き込み状態で、酸素との共存状態にある前記原料ガスを前記触媒反応室に導き前記合成ガスを得る合成ガスの製造装置。
【請求項9】
前記滞留抑制ガス吹き込み手段が、前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れに対して、流路壁側に前記滞留抑制ガスを流す請求項8記載の合成ガスの製造装置。
【請求項10】
前記滞留抑制ガス吹き込み手段が、前記前室における前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れのよどみ部に、前記滞留抑制ガスを流す請求項8又は9記載の合成ガスの製造装置。
【請求項11】
前記酸素との共存状態にある原料ガスの流れが前室入口から触媒反応室入口に到達するまでの移流時間で自着火する自着火温度未満の温度で、前記酸化反応が起こる下限温度以上の温度に、前記前室の温度を設定する前室温度維持手段を備えた請求項8〜10のいずれか1項記載の合成ガスの製造装置。
【請求項12】
前記酸素との共存状態にある前記原料ガスの流れの流路壁表面あるいはよどみ部に対する前室壁表面に燃焼反応の誘起抑制処理が施されている請求項8〜11のいずれか1項記載の合成ガスの製造装置。
【請求項13】
前記滞留抑制ガスが、不活性ガス若しくは前記原料ガスあるいはその成分ガスである請求項8〜12のいずれか1項記載の合成ガスの製造装置。
【請求項14】
前記前室内の圧力が常圧より高く設定される請求項8〜13のいずれか1項記載の合成ガスの製造装置。
【請求項15】
前記酸素との共存状態にある原料ガスが、前記前室と前記触媒反応室とに渡って直線状の主流を形成して移流可能であり、
前記主流に直交する横断面に関して、前記前室の横断面の流路断面積が前記触媒反応室の横断面の流路断面積より小さい請求項8〜14のいずれか1項記載の合成ガスの製造装置。
【請求項16】
前記前室と前記触媒反応室とが単一の直線筒状の反応筒形成体内に連続形成され、前記主流に直交する断面積に関して、前記前室の横断面の流路断面積が、前記前室内に収納される中実の流路確定部材で確定してある請求項8〜15記載の合成ガスの製造装置。
【請求項17】
前記原料ガスが水蒸気と炭化水素系燃料が混合したガスであり、前記触媒反応室で、部分酸化反応及び水蒸気改質反応を実行して、前記合成ガスとしての水素含有ガスを得る請求項8〜16のいずれか1項記載の合成ガスの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−282454(P2006−282454A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104660(P2005−104660)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】