説明

吊下具

【課題】フックが出没する吊下具において、フックを没した際に、フックを出没させる開口部にて、吊下具の美観を損なわない。
【解決手段】 本願発明では、壁などの取付用部材に固定されるケース本体1と、ケース本体1に設けられて物を吊るすフック2とを備え、フック2が出没自在にケース本体1に収容された吊下具において、ケース本体1は、フックを出没させるための開口部を備え、フック2の一部が、フック2がケース本体1へ没した状態のとき、上記開口部を閉じる蓋部を構成し、開口部を閉じた状態において外部に表れる上記蓋部の表面は、ケース本体1の表面と連続する面をなすものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、吊下具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁、家具の側面等に取り付けたフックへ衣服、鞄のような物品を吊り下げることは通常行われている。
ところが、フックが常に同じ方向へ張り出していると、物品の形状や大きさによっては吊り下げ難い。また、使用していない時でも室内にフックが設置されているのは、通りすがりに引っかかって邪魔になるばかりか、見栄えもよくない。
このため、特許文献1のような提案がなされている。
この特許文献1に示す物品吊下げ具は、下面が開口したケースと、該ケース内に上下方向に沿って収納されたガイド筒と、前記ガイド筒に摺動及び回動可能に挿通されたフック部材と、前記ケース内に設置されたバネ材と、前記ケースを貫通し、押圧操作によって前記バネ材をその付勢力に抗して変形させる操作軸とを備え、前記フック部材の下端にフックを設けると共に、フック部材の摺動に伴って前記フックが前記ケースの下面から出没し、前記バネ材は、常態において前記フック部材をフックが前記ケース内に没した状態で保持可能であり、前記バネ材が変形した時、前記フック部材が前記ガイド筒内を下方へ摺動するものである。
この吊下げ具において、操作軸を押圧操作するだけで、フックをケースから突出させると共に、フックを吊り下げやすい方向へ向けることが可能であり、特に、使用しない時は、フック部材を回動させて押し上げるだけで簡単にフックをケース内に収納できるので、体裁が良く、物や皮膚をフックに引っ掛ける心配が無い。
【0003】
【特許文献1】特開2007−313226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、第1の課題として、吊下げ具は、下面が開口し、見栄えがよくなく、このような開口部の存在がケースに施したデザインを損なうものとなっている。物を吊るす目的上、壁などにおいて比較的高い位置に取り付けられ、下から見上げられるものであるので、下面の開口は、必要以上に目立つものである。
特に、壁などに吊下げ具を取り付けて使用する前には、折角フックを引っ込めて取り扱いやすいものであるが、開口部の存在がより一層目立つものであった。
また、第2の課題として、開口部の存在が、埃やゴミ、虫などの異物がケース内へ侵入するのを許すことになっていた。例えば、長らく使用しなかった吊下げ具からフックを引き出した際、ケース内に積もった綿埃がフックと共に垂れ、フックに吊るした衣服を汚してしまうということがある。
更に、第3の課題として、壁などへの取り付け前、フックを引っ込めていても、開口部の縁で指先を傷つける危惧もある。
本願発明は、上記各課題の解決を図る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願の請求項1の発明は、壁などの取付用部材に固定されるケース本体と、ケース本体に設けられて物を吊るすフックとを備え、フックが出没自在にケース本体に収容された吊下具において、次の構成を採るものを提供する。
即ち、ケース本体は、フックを出没させるための開口部を備え、フックの一部が、フックがケース本体へ没した状態のとき、上記開口部を閉じる蓋部を構成し、開口部を閉じた状態において外部に表れる上記蓋部の表面は、ケース本体の表面と連続する面をなすものである。
本願の請求項2の発明では、本願請求項1の発明にあって、ケース本体には、ケース本体を取付用部材へ着脱自在に固定する固定手段が備えられ、固定手段は、金属製の取付用部材へケース本体を固定する、磁石を有するものであることを特徴とする吊下具を提供する。
本願の請求項3の発明では、本願請求項1または2の発明にあって、ケース本体は係止部を備え、フックは被係止部を備え、被係止部は、没するフックの蓋部がケース本体の開口部に来たとき係止部に係止されるものであり、当該係止により、係止が解除されるまで、蓋部を上記開口部に配置する位置にフックを保持する。
本願の請求項4の発明では、本願請求項3の発明にあって、上記の係止部と被係止部の一方は二股に分かれてフックの出没方向に伸びる2本の枝部を備え、係止部と被係止部の他の一方は、少なくともフックが没した状態のとき上記両枝部の間に配位する介入部を備え、枝部の少なくとも一方は、フックの出没移動により、介入部と当接する干渉部を備え、 枝部の少なくとも何れか一方は、フックが没する際、介入部が干渉部と当接することにより弾性変形し、両部間の間隔を広げて介入部に干渉部を通過させ、介入部が干渉部を通過した後、変形から元の状態に戻り、通過した介入部が後戻りするのを干渉部にて阻む。
【発明の効果】
【0006】
本願の請求項1〜4の各発明では、フックの一部は、上記開口部を閉じる蓋部を構成し、フックがケース本体へ没した状態のとき、当該蓋部にて、開口部を閉鎖することができる。この、開口部を閉じた状態において外部に表れる上記蓋部の表面は、ケース本体の表面と連続する面をなすものであり、ケース本体の表面の一部として、ケース本体と一体にデザインを施すことができる。
従って、開口部により、ケース本体の装飾性を高め、ケース本体のデザインが開口部にて損なわれることを防いだ。更に、開口部を閉鎖することにより、少なくとも吊下げ具の使用中、埃やゴミ、虫などの異物が開口部から侵入するのを防ぐことが出来る。また、開口部が閉鎖されることにより、開口部の縁で、指先を傷つけるとという危惧もない。
特に、本願の請求項2の発明に係る吊下具は、固定手段に磁石を採用することにより、金属製の取付用部材へ着脱自在に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
図1(A)は本願発明の一実施の形態に係る吊下具のフックを露出させた状態の主として正面側を示す斜視図、図1(B)はそのフックを収納した状態を示す斜視図である。図2(A)は図1(B)の主として背面側を示す斜視図、図2(B)は図2(A)に示す状態の吊下具から固定手段を取り除いた斜視図である。図3(A)は図2(B)に示す状態の吊下具においてフックを収納した斜視図、図3(B)は図3(A)に示す状態の本体ケースからフックを外した状態を示す分解斜視図である。
各図において、説明の便宜上、Uは上方、Sは下方、Lは左方、Rは右方、Fは前方、Bは後方を、夫々示している。
この吊下具は、ケース本体1と、フック2と、固定手段3とを備える。
以下、各部の構成について、詳述する。
【0008】
図1(A)(B)及び図2(A)へ示す通り、ケース本体1は、短円筒形であり、軸方向を前後方向として、正面側端部を覆う正面部11と、上下左右を覆う側面部12とを備え、背面側端部は開放されており、吊下具が壁などの取付部材に取り付けられることにより、当該背面は取付部材によって塞がれるものである。このケース本体1は、プラスチック、金属、木材、セラミックなど、何れの素材によっても形成できるが、特にプラスチックを用いて形成するのが、量産に適し、好ましい。
ケース本体1の側面部12の下方を臨む部位には、開口部13が設けられている。
ケース本体1は、内部に、フック2及び固定手段3を収容する。
ケース本体1の内部において、正面部11の背面には、係止部として当該背面から突出する突起状に形成された介入部14と、当該背面から隆起した状態に形成され且つフック2の出没を案内するガイド部15,15とが設けられている。この介入部14とガイド部15については、後のフック2の動作の説明において詳述する。
【0009】
固定手段3は、ケース本体1内に固定され、ケース本体1の背面より後方を臨む。具体的には、固定手段3は、円盤状の磁石31と、当該磁石31の一端面(後端)を露出させた状態に被覆する金属ケース32と、当該磁石を金属ケース32ごとケース本体1内に固定する取付具33とを備える。取付具33には、ネジやピンなどの周知のものを採用することができる。
この実施の形態において、取付具33は、磁石31及び金属ケース32を貫通するネジである。固定手段3は、ガイド部15,15及び介入部14の上(後端)に配置され、取付定具33の、磁石31及び金属ケース32を貫通した先端は、介入部14にねじ込まれて固定手段3を固定する。ガイド部15,15には、固定手段3に沿って後方に突出する突出部16,16が、固定手段3の取付位置の位置決め手段として設けられている。このようにして、固定手段3の磁石31の金属ケースより露出する面は、ケース本体1の後端から後方を臨み、ドアや、ロッカー、書棚など、金属製の取付部材に対して、ケース本体1を着脱自在に固定することができる。
【0010】
図3(B)へ示す通り、フック2は、物を吊るすものであり、ケース本体1と別体に形成され、ケース本体1内から上記開口部13を通じて開放に向け出没する。フック2は、没した際開口部13を閉じる蓋部と、引き出された際開口部13を閉じる副蓋部とを備える。
具体的に説明する。フック2は、ケース本体1から出没するフック部21と、フック部21の基端(上端)側に設けられ且つフック部21の出没に伴ってケース本体1内をスライドするスライド部23とを備える。フック部21はスライド部22と一体に形成されている。フック2は、特に弾性変形が可能なプラスチックにて形成するのが好ましい。
フック部21は、図3(B)へ示す通り、スライド部22の下端から後方へ伸びる基部片23と、基部片23の先端(後端)から下方に伸びる胴部片24と、胴部片24の先端(下端)から前方に伸びる懐片25と、懐片25の先端(前端)から上方に伸びる先端片26とにより構成される。
図1(B)及び図3(A)へ示す通りフック部21の懐片25が上記蓋部を構成し、また、図1(A)及び図2へ示す通り基部片23が上記副蓋部を構成する。
開口部13を閉じた状態において外部に表れる上記蓋部即ち懐片25の表面は、ケース本体1の表面と連続する面をなす。この実施の形態において、当該懐部25の底面は、ケース本体1の側面部12と連続する面をなす。正面視において、円筒の外周面をなすケース本体1の側面部12の表面と同じ半径を有する弧状に懐部25の下面を形成するのが好ましいが、厳密にこのような弧を描く必要はなく、直線状に形成しその左右端の位置が、開口部13の左右の縁と一致するものとしても実施できる。
基部片23の下面についても、上記懐片25と同様である。
尚、胴部片24の背面側には、フックを引き出す際の指掛け部27として凹部が形成されいる。
【0011】
スライド部22は、扁平な板状体であり、フック部21の出没に応じて、ケース本体1の正面部11の背面に沿って上下にスライドできるように配設される。前述のガイド部15,15は、スライド部22の左右両側に配置され、フックの出没方向即ちスライド方向に沿って伸び、スライド部22のスライドを案内する。
製造時、スライド部22が、ガイド部15,15間に配置した後、上記固定手段3を、取り付けることによって、スライド部22は、ガイド部15,15間に保持される。
スライド部22は、二股に分かれてフックの出没方向即ち上方に伸びる2本の枝部28,28を備える。当該枝部28,28が被係止部を構成する。
枝部28,28同士の間隔は、前述の介入部14の左右の幅よりも小さい。但し、枝部28,28同士の対向する面の夫々には、枝部28,28間の間隔を狭める干渉部29,29が設けられている。この干渉部29,2間の幅は、介入部14の左右の幅より小さい。
フック2の没する移動(図1(A)及び図2に示す状態から図1(B)及び図3(A)に示す状態へのフックの移動)に伴いスライド部22が上方にスライドした際、前述の本体ケース1に設けられた介入部14が、両枝部28,28の間に介入し、干渉部29,29を押圧することにより、両枝部28,28を弾性変形させて干渉部29,29が設けられた枝部28,28間の間隔を押し広げ、干渉部29,29を越える。介入部14が干渉部29,29間を通過することによって、両枝部28,28は変形前の状態に戻り、干渉部29,29により、介入部14は後戻りできなくなる。このようにして、係止部に被係止部が係止された状態となる。この係止状態のとき、図1(B)及び図3(A)へ示す通り、開口部13を閉鎖する位置に、上記蓋部即ち懐片25が位置する。
尚、この蓋部による開口部13の閉鎖状態のとき、図3(A)へ示す通り、ケース本体1の側面部11の上部内面が当接部として、枝部28,28の先端(上端)28a,28aと当接し、それ以上フックが没するのを規制するものとするのが好ましい。
【0012】
フック部21を引き出す際には、壁に取付前の吊下具において、前述の指掛け部27に指を掛けてフック部21を引き出せばよい。このとき、スライド部22は、開口部側に移動し、干渉部29,29が再び、介入部14に押圧されて、枝部28,28の間隔が押し広げられて、介入部14は、干渉部29,29間を後戻りすることができる。そして、介入部14,14が干渉部29,29を後戻りすることにより、係止部と被係止部との係止は解除され、フック部21は、ケース本体1より下方に突出する。
フック部21を完全に引き出した際、図1(A)及び図2へ示す通り、副蓋部である基部片23が、開口部13を閉鎖する位置よりも下方に露出しないように、ケース本体1の側面部11の下部内側が副当接部として、スライド部22の下端22aと当接して、それ以上フックが下方へ突出するのを規制するものとするのが好ましい。
【0013】
上記において、ケース本体1側の係止部を介入部14とし、フック2側の被係止部を枝部28,28としたが、係止部即ちケース本体1側が枝部を備えるものとし、被係止部即ちフック2側が介入部14を備えるものとしても実施できる。
また、上記において、本体ケース1は、正面視において円形のものとしたが、楕円であっても、卵形であっても、或いは、円と直線とが複合したものであっても実施できる。この他、本体ケース1を正面視した形状として、三角形や、四角形、五角形以上の多角形、或いは、他の形状を採用して実施することができる。
固定手段3には、磁石の他、壁に突き刺すことができる鋲を備えるものとしても実施できる。
【0014】
図4(A)(B)へ示す通り、開口部13は、ケース本体1の側面部12にとどまらず、正面部11に及ぶものであってもよく、この場合、フック2の一部(先端部26)は、開口部13のケース本体1正面部11側の部分を覆うように設けておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本願発明の一実施の形態に係る吊下具のフックを露出させた状態の主として正面側を示す斜視図、(B)はそのフックを収納した状態を示す斜視図。
【図2】(A)は図1(B)の主として背面側を示す斜視図、(B)は(A)に示す状態の吊下具から固定手段を取り除いた斜視図。
【図3】(A)は図2(B)に示す状態の吊下具においてフックを収納した斜視図、(B)は(A)に示す状態の本体ケースからフックを外した状態を示す分解斜視図。
【図4】(A)は他の実施の形態の斜視図、(B)は更に他の実施の形態の斜視図。
【符号の説明】
【0016】
1 ケース本体
2 フック
3 固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁などの取付用部材に固定されるケース本体と、ケース本体に設けられて物を吊るすフックとを備え、フックが出没自在にケース本体に収容された吊下具において、
ケース本体は、フックを出没させるための開口部を備え、
フックの一部が、フックがケース本体へ没した状態のとき、上記開口部を閉じる蓋部を構成し、
開口部を閉じた状態において外部に表れる上記蓋部の表面は、ケース本体の表面と連続する面をなすものであることを特徴とする吊下具。
【請求項2】
ケース本体には、ケース本体を取付用部材へ着脱自在に固定する固定手段が備えられ、
固定手段は、金属製の取付用部材へケース本体を固定する、磁石を有するものであることを特徴とする請求項1記載の吊下具。
【請求項3】
ケース本体は係止部を備え、フックは被係止部を備え、
被係止部は、没するフックの蓋部がケース本体の開口部に来たとき係止部に係止されるものであり、当該係止により、係止が解除されるまで、蓋部を上記開口部に配置する位置にフックを保持するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の吊下具。
【請求項4】
上記の係止部と被係止部の一方は二股に分かれてフックの出没方向に伸びる2本の枝部を備え、係止部と被係止部の他の一方は、少なくともフックが没した状態のとき上記両枝部の間に配位する介入部を備え、
枝部の少なくとも一方は、フックの出没移動により、介入部と当接する干渉部を備え、
フックが没する際、介入部が干渉部と当接することにより、枝部の少なくとも何れか一方は、弾性変形し、両部間の間隔を広げて介入部に干渉部を通過させ、介入部が干渉部を通過した後、変形から元の状態に戻り、通過した介入部が後戻りするのを干渉部にて阻むものであることを特徴とする請求項3記載の吊下具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate