説明

吸収性物品

【課題】 湿疹、あせも、かぶれ等の発生を効果的に防止し得る吸収性物品を提
供すること。
【解決手段】 本発明の吸収性物品1は、吸収体4の端縁から外方へ延出する背側エンドフラップEを有し、該エンドフラップEに、幅方向に高度に配向した長繊維を有する親水性ウエブ10が配されている。ウエブ10は、背側エンドフラップEの肌当接面に配されてることが好ましい。背側エンドフラップEにおける長繊維を有する親水性ウエブ10が配されている部位においては、前記ウエブよりも肌側及び/又は肌側と反対側が、透湿性且つ撥水性のシート材を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿疹、あせも、かぶれ等(以下、あせも等ともいう)の発生を効果的に防止し得る吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつを着用中の着用者の腰回りにはあせも等が発生しやすいことが知られている。特に、背側の腰回りにあせもが発生しやすい。あせも等が発生する原因には様々な説があるが、現時点では明確なメカニズムはわかっていない。しかし、汗があせも等の一因になっていると考えられる。
【0003】
あせも等の発生を防止することを目的とした使い捨ておむつが提案されている。例えば、おむつの背側エンドフラップに、綿製布地シートからなるあせも防止シートを取り付けた使い捨ておむつが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、おむつのウエストフラップの内面に通気性の吸汗シートを接合した使い捨ておむつが提案されている(特許文献2参照)。この使い捨ておむつは、湿疹、あせも、かぶれ等が発生し易いウエストフラップの内面に汗を吸収するシートを配することで、該シートによって着用者の腰回りから発生する汗を吸収させて、あせも等の発生を防止しようとするものである。このおむつによれば、着用者の腰回りから発生する汗は前記吸汗シートに吸収される。しかし、汗を吸収して湿潤した状態となっている前記吸汗シートは、着用者の肌に当接した状態となっているので、着用者の肌は湿潤状態にさらされることになる。従って、あせも等の発生を十分に防止することはできない。
【0005】
【特許文献1】実開平5−41525号公報
【特許文献2】特開2000−189454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吸収体の端縁から外方へ延出する背側エンドフラップを有し、該エンドフラップに、幅方向に高度に配向した長繊維を有する親水性ウエブが配されている吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、前記吸収性物品の好ましい製造方法として、親水性のトウを開繊して開繊ウエブとなし、該開繊ウエブの配向方向が吸収性物品の幅方向に一致するように、該開繊ウエブを、吸収性物品の背側エンドフラップに配する吸収性物品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品によれば、背側エンドフラップに吸水性の高い材料である長繊維を有する親水性ウエブが幅方向に高度に配向した状態で配されているので、着用者の背側の腰回りから発散された汗は該ウエブによって素早く吸収され、且つウエブの配向方向に拡散する。従って着用者の腰回りは低湿度のドライな状態が保たれ、あせも等が発生しづらくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一実施形態としてのパンツ型使い捨ておむつの斜視図が示されている。図2には、図1に示すおむつをサイドシール部で切り離して展開した分解斜視図が示されている。図3には、図1におけるB−B線に沿う断面図が示されている。
【0011】
図1に示すようにおむつ1はパンツ型である。図2に示すように、おむつ1は液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3及び両シート2,3間に介在配置された液保持性の吸収体4を有する。裏面シート3の外面には外装体5が配されている。
【0012】
おむつ1においては、図2に示すように、着用時に着用者の腹側に配される腹側部Aの両側縁と背側に配される背側部Bの両側縁とが、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等の公知の接合手段により互いに接合されて、図1に示すサイドシール部S,Sが形成されている。これにより、図1に示すように、おむつ1にはウエスト開口部7及び一対のレッグ開口部8,8が形成されている。
【0013】
図2に示すように、吸収体4は縦長であり、各側縁の中央部が内方に向かって括れた砂時計状をしている。表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の寸法よりも大きく、吸収体4の周縁から外方に延出している。吸収体4は、その長手方向をおむつ1の長手方向に一致させて、おむつ1の腹側部Aから背側部Bに亘るように配置されている。
【0014】
図2に示すように、表面シート上には、その左右両側部に、長手方向へ延びる一対の立体ガード6,6が配されている。各立体ガード6は、その内方側に自由端61を有し且つ外方側に固定端(立ち上がりの基端)を有している。自由端61近傍には、該自由端61に沿って、弾性部材62が伸縮自在に配設されている。
【0015】
外装体5は2枚のシート材から構成されている。具体的には図2に示すように、外装体5は外層シート51と内層シート52との積層体から構成されている。図32においては、理解の助けとするため、外層シート51にドット模様を付して内層シート52と区別してある。外層シート51はおむつ1の最外面をなしている。内層シート52は、外層シート51に隣接しておむつ1の内面側に配されている。外層シート51及び内層シート52は何れも撥水性の不織布から構成されている。外層シート51と内層シート52とは、それらの側縁部の輪郭は同形状となっているが、長手方向に関する形状は異なっている。具体的には図2に示すように、外層シート51は、内層シート52の前後端縁から前後方向に延出した延出部51A,51Bを有している。延出部51A、51Bはそれぞれ表面シート側に折り返される(後述する図3参照)。これによっておむつ1には、吸収体4の前後端縁からそれぞれ前後方向に延出する背側エンドフラップE(図3参照)及び腹側エンドフラップ(図示せず)が形成される。
【0016】
図3に示すように、背側エンドフラップEには、おむつ1の幅方向に延びる複数の弾性部材71が所定間隔をおいて伸長状態で配されている。腹側エンドフラップにも同様の弾性部材が配されている。これによってウエスト開口部7にはその全周に亘って実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成されている。また各レッグ開口部8,8には、その開口縁部に沿って複数の弾性部材81が伸長状態で配されている。これらの弾性部材とは別に、図1及び図2に示すように、ウエスト開口部7とレッグ開口部8,8との間に位置する領域には、おむつ1の幅方向に延びる複数の弾性部材91が所定間隔をおいて配されている。弾性部材91は、少なくとも吸収体4の両側縁よりも幅方向外方の部位に弾性伸縮性が発現されるように伸張状態で配設固定されており、且つ吸収体4が存在する部位の少なくとも幅方向中央部には弾性伸縮性が発現される状態では配設されていない。以上の各弾性部材71,81,91は何れも外装体5を構成する外層シート51と内層シート52との間に挟持固定されている。
【0017】
以上の各部材を構成する材料としては当該技術分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。例えば表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布や、開孔フィルムを用いることができる。裏面シート3としては液不透過性のフィルム等を用いることができる。このフィルムは透湿性を有していることが好ましい。吸収体4としてはフラッフパルプと高吸収性ポリマーの粒子との混合積繊物を用いることができる。各弾性部材としては天然又は合成のエラストマー材料を用いることができる。立体ガードを構成するシート並びに外層シート51及び内層シート52としては撥水性の不織布が用いられる。
【0018】
而して本実施形態においては、図1ないし図3に示すように、背側部Bの背側エンドフラップEの肌当接面に、長繊維を有する親水性ウエブ10が配されている。ウエブ10は、表面シート側へ折り返された外層シート51の延出部51Bと、表面シート2とを連接するように配されている。ウエブ10はその前端縁10aが、外層シート51の延出部51Bの下側で且つエンドフラップEの端縁よりもやや手前(吸収体端縁寄り)の位置にある。一方ウエブ10の後端縁10bは、表面シート2の下側で且つ吸収体4の端縁を越えて吸収体4の上面に達している。ウエブ10は、外層シート51の延出部51B及び表面シート2にそれぞれ接合されている。また、ウエブ10は内層シート52とも一部接着している。
【0019】
背側エンドフラップEにおける親水性連続フィラメントのウエブ10が配されている部位においては、背側エンドフラップEの厚み方向に関して、前記ウエブよりも肌側及び/又は肌側と反対側が、透湿性かつ撥水性のシート(以下、撥水性シートという)から構成されている。本実施形態においては、背側エンドフラップEにおける親水性連続フィラメントのウエブ10が配されている部位に存するシート材である外層シート51及びその延出部51B並びに内層シート52が、すべて撥水性シートから構成されている。
【0020】
これらのシートの透湿性(透湿度)は、好ましくは1.0〜3.5g/(100cm2 ・h)、更に好ましくは1.2〜3.0g/(100cm2 ・h)である。透湿性がこの範囲内であれば、ウエブ10に吸収された液の滲み出しを防止しつつ、十分な水蒸気透過性を確保でき、ムレ感やカブレ、あせも等の発生を防止できる。透湿度はJIS Z0208(カップ法)に準じ、30℃/90%RHの条件下で測定する。透湿性かつ撥水性のシートは、不織布や紙、多孔性シート単独でもよく、或いはこれらを複合化したものでもよい。
【0021】
ウエブ10は、おむつ1の幅方向に高度に配向している。つまりウエブ10は、おむつ1の幅方向に延びるように配されている。本明細書において高度に配向とは、繊維の配向に関して配向度が好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.4以上であることを言う。配向度は、KANZAKI社のMicrowave molecular orientation analyzer MOA-2001Aを用いて測定する。サンプルサイズは長手方向100mm、幅50mmとし、3点の平均値を配向度とする(サンプルサイズがこの大きさに満たない場合は、複数のサンプルを互いに重ならないように配して測定する。)。ウエブ10の両端は、背側部Bにおける外装体5の左右両側縁よりも内側寄りの位置で終端しており、当該位置において外装体5に接合されている。これによって、外装体5における腹側部Aの両側縁と背側部Bの両側縁とをシールしてサイドシール部S(図1参照)を形成する際に、内層シート51どうしが直接対向するようになり、該シールを確実に行うことができる。おむつ1の幅方向におけるウエブ10の長さは、好ましくは50mm以上、更に好ましくは70mm以上、一層好ましくは100mm以上である。上限値は、ベビー、Lサイズパンツおむつにおいては400mm程度である。
【0022】
長繊維を有するウエブ10は親水性を有するものである。長繊維を有する親水性ウエブとして本発明において用いられる長繊維には、本来的に親水性を有する長繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された長繊維の双方が包含される。また、長繊維自体は親水性を有さないが、ウエブ全体として親水性を有するものも包含される。長繊維自体は親水性を有さないが、ウエブ全体として親水性を有するものとしては、例えば親水性を有さない長繊維からなるウエブに親水性を有する材料からなるウエブを一体化させたものが挙げられる。好ましい長繊維は本来的に親水性を有する長繊維である。特にアセテートやレーヨンの長繊維が好ましい。とりわけアセテートは液の蒸発性が良好なので、これを用いることであせも等の発生を効果的に防止することができる。
【0023】
長繊維の繊維径に特に制限はない。一般に1.0〜7.8dtex、特に1.7〜5.6dtexの長繊維を用いることで満足すべき結果が得られる。本明細書において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。
【0024】
本実施形態のおむつ1が以上の構成を備えていることで、おむつ1には以下の有利な効果(1)及び(2)が奏される。
(1)おむつ1の着用中に着用者の背側の腰回りから発散された汗は、背側エンドフラップEの肌当接面に配された長繊維を有する親水性ウエブ10に吸収される。あせも等の発生部位として腰回りが多いことは冒頭に述べた通りである。この場合、ウエブ10は親水性かつ通気性を有し、しかも背側エンドフラップEにおける長繊維を有する親水性ウエブ10が配されている部位においては、前記ウエブよりも肌側及び/又は肌側と反対側が透湿性かつ撥水性を有するので、ウエブ10に吸収された汗は背側エンドフラップE中に保持されにくく、むしろウエブ10から蒸散する。その結果、着用者の腰回りは低湿度のドライな状態が保たれ、あせも等が発生しづらくなる。先に述べた特許文献2に記載のおむつでは、吸汗シートに隣接して親水性の表面シートが配されており、そのような表面シートとしては通常、排泄された尿を素早く透過させ且つ着用者の肌へ戻ることを防止するために、ポリエチレンやポリプロピレン製の合成繊維を界面活性剤で表面処理し、熱風で処理した繊維を溶融結合させたエアスルー方式の不織布が用いられる。そのような表面シートは厚く、クレム吸水性が低いことから(通常、概ね10mm未満)、吸汗シートに吸収された汗が吸汗シート及び表面シートに保持されやすくなってしまい、これが原因で汗の蒸散が起こりにくくなる。
【0025】
(2)長繊維を有する親水性ウエブ10は、おむつ1の幅方向へ延びるように高度に配向しているので、ウエブ10に吸収された汗は、長繊維の配向方向であるおむつ1の幅方向へ優先的に拡散する。その結果、吸収された汗は、着用者の腰回りにおける汗の発生部位から遠ざかるように移動するので、着用者の腰回りが一層低湿度のドライな状態になり、あせも等が一層発生しづらくなる。
【0026】
前述の効果を確実に奏するためには、背側エンドフラップEにおける長繊維を有する親水性ウエブ10が配されている部位に存する撥水性シートはその撥水性の程度が耐水圧で表して1g/cm2以上、特に3g/cm2以上であることが好ましい。耐水圧は次の方法で測定される。垂直に連ねた直径35mmの2つの円筒管の間にサンプルのシートを挟み込み、上側の円筒管に8g/分の速度で生理食塩水を流し込む。生理食塩水がサンプルのシートを突き破り、下側の円筒管に流れ始める時間を測定する。生理食塩水の流速と、サンプルのシートを突き破るまでの時間とから液量を算出する。算出された液量を円筒菅の断面積で除した値を耐水圧とする。
【0027】
着用者の背側の腰回りから発散された汗を確実に吸収する観点及び着用感を良好にする観点から、ウエブ10はその坪量が5〜100g/m2、特に10〜50g/m2となるように背側エンドフラップEに配されていることが好ましい。同様の理由により、ウエブ10は、背側エンドフラップEの面積の20〜100%、特に40〜80%を占めるように、肌当接面に露出していることが好ましい。
【0028】
本明細書において親水性ウエブとは、その配向方向について測定されたクレム吸水高さが好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であるものを言う。これによりウエブ10に吸収された汗を、ウエブ10の配向方向に素早く拡散させることが期待される。クレム吸水高さは、JIS P8141に準じて測定される。吸水開始から30秒後の値を読み取り、サンプル3点の平均値をもって測定値とする。サンプルによっては幅方向でクレム吸水高さにばらつきが出るが、その場合は幅方向で略平均(目視)した値を測定値とする。
【0029】
クレム吸水高さはウエブ10の密度に関係している。ウエブ10の密度が高いほど繊維間距離が短くなりクレム吸水高さは大きくなる。逆にウエブ10の密度が低いほど繊維間距離が大きくなりクレム吸水高さは小さくなる。これらを考慮すると、ウエブ10の密度は0.005〜0.2g/cm3、特に0.01〜0.1g/cm3であることが好ましい。
【0030】
ウエブ10を構成する長繊維は、捲縮を有するものであってもよい。このようなウエブ10を用いることで、繊維間に微小な連続空間が形成され、それに起因して毛細管現象が顕著となる。その結果、肌表面の汗が素早く吸収され且つ拡散するという有利な効果が奏される。捲縮とは、JISL0208における「繊維の縮れ(crimp)」をいう。
【0031】
長繊維が捲縮している場合、その捲縮率(JIS L0208)は好ましくは20〜90%であり、更に好ましくは40〜90%である。長繊維を捲縮させる手段に特に制限はない。また、捲縮は二次元的でもよく或いは三次元的でもよい。捲縮率は、長繊維をまっすぐに、かつ繊維自身を伸張させずに引き伸ばしたときの長さ(A)と、自然状態における繊維の始点と終点との間に結んだ直線の長さ(B)との差の、伸ばしたときの長さに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=(A−B)/A × 100 (%)
【0032】
連続フィラメントの捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ8〜18個であることが好ましい。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について図4ないし図9を参照しながら説明する。これらの実施形態に関し特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図4ないし図9において、図1ないし図3と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0034】
図4に示す実施形態においては、長繊維を有する親水性ウエブ10はその前端縁10aが、外層シート51の延出部51Bの下側で且つエンドフラップEの端縁よりもやや手前の位置にある。一方ウエブ10の後端縁10bは、吸収体4の端縁を越えて吸収体4の上面に達しており且つ表面シート2の端縁とほぼ突き合わせ状態になっている。ウエブ10は、外層シート51の延出部51B及び吸収体4にそれぞれ接合されている。本実施形態においては、ウエブ10は、背側エンドフラップEの肌当接面に位置している。
【0035】
図5に示す実施形態においては、長繊維を有する親水性ウエブ10はその前端縁10aが、外層シート51の延出部51Bの下側で且つエンドフラップEの端縁よりもやや手前の位置にある。一方ウエブ10の後端縁10bは、吸収体4の端縁近傍まで達しているが、吸収体4の上面にまでは達していない。ウエブ10の後端縁10bは、表面シート2の端縁とほぼ突き合わせ状態になっている。本実施形態においては、ウエブ10は、背側エンドフラップEの肌当接面に位置している。
【0036】
図6に示す実施形態においては、外層シート51の延出部51Bが、他の実施形態の場合よりも大きく折り返されており、吸収体4の端縁近傍まで延びている。長繊維を有する親水性ウエブ10は、折り返された延出部51B上に配されている。更にウエブ10における後端縁10b寄りの部分が表面シート2によって被覆されている。本実施形態においては、ウエブ10はその一部である前端縁10a寄りの部分が背側エンドフラップEの肌当接面に位置している。
【0037】
図7に示す実施形態は、これまでの実施形態と異なり、長繊維を有する親水性ウエブ10は、背側エンドフラップEの肌当接面に位置していない。具体的には、ウエブ10はその前端縁10aが、外層シート51の延出部51Bの下側で且つエンドフラップEの端縁よりもやや手前の位置にある。一方ウエブ10の後端縁10bは、吸収体4の端縁と突き合わせ状態になっており、その上を表面シート2が被覆している。つまり、ウエブ10は、その前端縁10a寄りの部分が外層シート51の延出部51Bによって被覆されており、後端縁10b寄りの部分が表面シート2によって被覆されている。その結果、ウエブ10は、背側エンドフラップEの肌当接面に露出していない。
【0038】
図8及び図9は、これまでの図面と異なり、図1に示すおむつにおけるA−A線に沿う断面図である。図8に示す実施形態においては、腹側部Aにおける吸収体4が配されている領域において、吸収体4と裏面シート3との間に長繊維を有する親水性ウエブ10が配されている。ウエブ10はおむつ1の幅方向に延びるように配向している。図9に示す実施形態においては、腹側部Aにおける吸収体4が配されている領域において、吸収体4と表面シート2との間に長繊維を有する親水性ウエブ10が配されている。図8に示す実施形態と同様に、ウエブ10はおむつ1の幅方向に延びるように配向している。図8及び図9に示す実施形態によれば、着用者の腹周りから発生した汗がウエブ10によって吸収され、腹周りは低湿度のドライな状態が保たれ、あせも等が発生しづらくなる。
【0039】
ウエブ10には、高吸収性ポリマーや、他の粒子、例えば、活性炭やシリカ、アルミナ、酸化チタン、各種粘度鉱物(ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、カンクリナイト等)等の有機、無機粒子(消臭剤や抗菌剤)を共存させることができる。無機粒子は一部金属サイトを置換したものを用いることができる。或いは、各種有機及び無機緩衝剤、例えば酢酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸若しくは乳酸又はこれらの塩を単独で又は組み合わせて用いたり、各種アミノ酸を用いることができる。これら成分の働きは、ウエブ10の吸収性をさらに向上させこと、あるいはウエブ10近傍の湿度を下げることである。更に、ウエブ10に吸収された汗のにおいを抑制することである。各種有機及び無機緩衝剤は、汗中のアンモニアを中和しウエブ10を中性ないし弱酸性に保つ効果もある。それによって、万一ウエブ10から肌へ汗が戻っても、肌への影響を少なくすることができる。或いは、ウエブ10にアセテート繊維など、分子構造内にエステルを有する繊維を用いると、アルカリによって繊維が損傷を受けることを防ぐ効果が期待できる。
【0040】
ウエブ10に高吸収性ポリマーを共存させる場合、高吸収性ポリマーはウエブ10中に埋没担持されていることが好ましい。埋没担持とは、高吸収性ポリマーがウエブ10を形成する長繊維によって形成される空間内に入り込んで、着用者の激しい動作によっても該ポリマーの極端な移動や脱落が起こりにくくなっている状態を言う。埋没担持された状態では、高吸収性ポリマーが長繊維に絡みつき又は引っ掛かりによって付着している。或いは高吸収ポリマー自身の粘着性によって長繊維に付着している。長繊維が形成する空間は、外部から応力を受けると変形しやすい。しかし長繊維全体で応力を吸収することができるので、当該空間が破壊されることが防止される。高吸収性ポリマーは、その一部がウエブ10中に埋没担持されている。ウエブ10の製造条件によっては高吸収性ポリマーのほぼ全部がウエブ10中に均一に埋没担持される場合もある。
【0041】
「均一」とは、ウエブ10の厚み方向あるいは幅方向において、高吸収性ポリマーが完全に一様に配されている場合、及びウエブ10の一部を取り出した時に、高吸収性ポリマーの存在量のばらつきが、坪量で2倍以内の分布を持つ場合をいう。このようなばらつきは、ウエブ10を製造する上で、まれに高吸収性ポリマーが過剰に供給され、部分的に散布量が極端に高い部分が生じることに起因して生ずるものである。つまり前記の「均一」は、不可避的にばらつきが生ずる場合を包含するものであり、意図的にばらつきが生じるように高吸収性ポリマーを分布させた場合は含まれない。
【0042】
高吸収性ポリマーが埋没担持される程度の評価法として、次の方法を用いることができる。100×200mmに作製したウエブ10の長手方向中央部を切断し、100×100mmの試験片を得る。この切断面を真下にして、振幅5cmで1回/1秒の速度で左右に往復20回振動を与える。切断面からの落下したポリマーの重量を測定する。脱落した高吸収性ポリマーの重量が、試験片中に存在していた高吸収性ポリマーの全量に対して、25重量%以下、特に20重量%以下、とりわけ10重量%以下である場合、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
【0043】
前記の脱落評価の試験を行った試験片に対して、次の評価法を行うこともできる。脱落評価の試験を行った試験片に対して、生理食塩水(0.9重量%NaCl)を50g均等に散布して、試験片の膨らみ方を目視観察する。試験片の厚みのばらつきが2倍以内の場合、高吸収性ポリマーの極端な移動や脱落が起こり難くなっている状態であると言える。
【0044】
前記の各評価法においては、ウエブ10を水平方向で見たときに、高吸収ポリマーが同一坪量で散布してある領域から試験片をサンプリングする。
【0045】
ウエブ10への高吸収性ポリマーの埋没担持性が十分でない時は、ホットメルト、各種バインダー(例えばアクリル系エマルジョン粘着剤など)、カルボキシメチルセルロースやエチルセルロースなどの糖誘導体、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂等をウエブ10に適宜添加できる。さらに、凹凸加工や植毛を施したシートなどを併用しても良い。
【0046】
本実施形態に用いられるウエブ10は、まず、トウを用意し、このトウを所定手段、例えば圧縮空気を利用した空気開繊装置を用いて開繊して得ることができる。こうして得られた開繊ウエブを、該開繊ウエブの配向方向が吸収性物品の幅方向に一致するように、吸収性物品の背側エンドフラップに配する。これよって本発明の吸収性物品を得ることができる。
【0047】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず種々の変更が可能である。例えば前記実施形態においては、背側エンドフラップEを構成するシート材はすべて不織布であったが、該シート材としては不織布に限られず透湿性で且つ撥水性であればどのようなシート材を用いてもよい。例えば透湿性で且つ撥水性の不織布に代えて透湿性で且つ撥水性のフィルムを用いることができる。また両者を併用することもできる。
【0048】
また前記実施形態においては、長繊維を有する親水性ウエブ10は背側エンドフラップEにのみ配されていたが、これに加えて腹側エンドフラップEに長繊維を有する親水性ウエブを配してもよい。
【0049】
更に前記実施形態においては、本発明の吸収性物品の一実施形態としてパンツ型の使い捨ておむつを例にとり説明したが、本発明はこれ以外の吸収性物品、例えば展開型の使い捨ておむつ、ウエストバンド部を有する使い捨ておむつ、おむつカバー、ショーツ型の生理用ナプキン等にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の吸収性物品の一実施形態としてのパンツ型使い捨ておむつを示す斜視図である。
【図2】図1に示すおむつをサイドシール部で切り離して展開した分解斜視図である。
【図3】図1におけるB−B線に沿う断面図である。
【図4】本発明の吸収性物品の他の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
【図5】本発明の吸収性物品の他の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
【図6】本発明の吸収性物品の他の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
【図7】本発明の吸収性物品の他の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
【図8】本発明の吸収性物品の他の実施形態を示す、図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【図9】本発明の吸収性物品の他の実施形態を示す、図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 パンツ型使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 外装体
51 外層シート
52 内層シート
10 長繊維を有する親水性ウエブ
E 背側エンドフラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体の端縁から外方へ延出する背側エンドフラップを有し、該エンドフラップに、幅方向に高度に配向した長繊維を有する親水性ウエブが配されている吸収性物品。
【請求項2】
背側エンドフラップの肌当接面に前記長繊維を有する親水性ウエブが配されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記長繊維が捲縮を有するものである請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
背側エンドフラップにおける長繊維を有する親水性ウエブが配されている部位においては、前記ウエブよりも肌側及び/又は肌側と反対側に、透湿性且つ撥水性のシート材を有する請求項1ないし3の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
請求項1記載の吸収性物品の製造方法であって、親水性のトウを開繊して開繊ウエブとなし、該開繊ウエブの配向方向が吸収性物品の幅方向に一致するように、該開繊ウエブを、吸収性物品の背側エンドフラップに配する吸収性物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−141549(P2006−141549A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333292(P2004−333292)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】