説明

吸引車および吸引装置

【課題】 吸引作業時の振動を低減することにより、その振動によって生じる騒音を低減できる吸引車を提供する。
【解決手段】 貯留タンク3内の空気を吸引するルーツブロワ12と、このルーツブロワ12を駆動する走行エンジンとは別に独立して設けた吸引エンジン14と、この吸引エンジン14で前記ルーツブロワ12を駆動する駆動機構とを同一架台15上に設け、この架台15を、車両の車体フレーム2に防振機構18で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管や道路の側溝等における汚泥や泥砂等の回収対象物(以下、回収対象物という。)を回収する吸引車および吸引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水管やマンホール、道路の側溝等における汚泥回収、浄水場の泥砂回収、または一般河川の浚渫作業等において、回収対象物を吸引して回収するために吸引車とか吸引装置が利用されている。この吸引車および吸引装置によれば、回収対象物を貯留タンクに吸引して貯留し、所定の廃棄場所まで搬送して排出される。
【0003】
この種の吸引車の一例として、車体フレームの前側にルーツブロワ(吸引力発生機)が設けられ、車体フレームの後部に傾動可能に貯留タンクが設けられた吸引車がある(例えば、特許文献1参照)。図8は、このような従来の吸引車を示す側面図であり、この吸引車101は、車体フレーム102の後部に貯留タンク103が設けられ、この貯留タンク103の前側には、吸引管104を介して連結されたサイクロン105と第1ウオータスクラバ106とが設けられており、その前側にはルーツブロワ107が設けられている。サイクロン105は、ルーツブロワ107で吸引される貯留タンク103内の空気中から粉塵等を除去し、第1ウオータスクラバ106は、そのサイクロン105を通過した空気中から更に細かい粉塵等を除去している。
【0004】
前記ルーツブロワ107の前側には第2ウオータスクラバ108が設けられており、ルーツブロワ107から排気される空気中の細かい粉塵や水滴を除去している。したがって、排気はこの第2ウオータスクラバ108から大気中に放出されている。
【0005】
そして、この吸引車101では、車両の走行エンジンからPTO機構109(Power Take Off)によって取り出された動力でルーツブロワ107が駆動されている。図示する例では、PTO機構109のドライブシャフト110でVベルト111を駆動し、このVベルト111でルーツブロワ107を駆動している。
【0006】
このように、前記吸引車101は、車両の走行エンジンでルーツブロワ107を駆動し、このルーツブロワ107で貯留タンク103内の空気を吸引することにより、吸引ホース112を介して回収対象物を貯留タンク103内に吸引するように構成されている。
【0007】
なお、この種の従来技術として、吸引車のブロアをブロアフードで覆い、このブロアフードの下端縁に遮音材を設け内周面に吸音材を設けた吸引車のブロアフードもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭58−204240号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】実開昭60−11837号公報(第2頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたような吸引車101は、車両の走行エンジンでルーツブロワ107を駆動しているため、吸引作業時にはこの走行エンジンの音が非常に大きくなり、またルーツブロワ107自身の音も大きく、騒音問題を生じる場合がある。さらに、走行エンジンを高回転で駆動して作業する場合、この走行エンジンからの振動が車両に伝搬して発生する振動音も騒音源になり、この振動音も加わって騒音問題を生じる場合がある。特に、近年、住宅街における道路側溝等における汚泥回収、下水管やマンホール等の汚泥回収作業時に生じる振動や騒音によって騒音問題が生じる場合がある。そのため、近年、この種の吸引車における騒音対策や振動対策が重要視されている。また、この騒音対策や振動対策は、吸引装置においても重要視されている。
【0009】
なお、前記特許文献2に記載された吸引車のブロアフードは、駆動エンジンも含めた振動対策等がなされていないので、車両周囲の騒音を抑えることは難しい。
【0010】
そこで、本発明は、吸引作業時の振動を低減することにより、その振動によって生じる騒音を低減して低騒音化を図った吸引車および吸引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の吸引車は、車両に搭載した貯留タンクに回収対象物を吸引して貯留する吸引車であって、前記貯留タンク内の空気を吸引する吸引力発生機と、該吸引力発生機を駆動する走行エンジンとは別に独立して設けた吸引エンジンと、該吸引エンジンで前記吸引力発生機を駆動する駆動機構とを同一架台上に設け、該架台を、前記車両の車体フレームに防振機構で支持している。これにより、同一の架台上に設けた走行エンジンとは別に独立した吸引エンジンと、ルーツブロワなどの吸引力発生機と、この吸引力発生機の駆動機構とを一体的に防振機構で支持し、これら大きな振動源から車体フレーム側に振動が伝わるのを抑えて騒音を低減することができる。
【0012】
また、前記同一架台上に設ける前記吸引エンジンと吸引力発生機とを水平方向に並設してもよい。これにより、騒音発生源である吸引エンジンと吸引力発生機とを低い位置に配置して、防振機構による高い防振効果を発揮することができる。
【0013】
さらに、前記貯留タンクと吸引力発生機との間に該吸引力発生機に吸引する空気が通過する上流側集塵機を設けるとともに、該吸引力発生機の下流側に該吸引力発生機の排気が通過する下流側集塵機を設け、該上流側集塵機と下流側集塵機とを前記貯留タンクと吸引力発生機との間に配置してもよい。これにより、貯留タンクから吸引力発生機に吸引される空気中の粉塵等の除去と、吸引力発生機から排気される空気中の粉塵等の除去とを、貯留タンクと吸引力発生機との間で行うコンパクトな吸引車を構成することができる。
【0014】
また、前記上流側集塵機と吸引力発生機との間の流路と、該吸引力発生機と下流側集塵機との間の流路とに、該吸引力発生機の振動が上流側集塵機と下流側集塵機とに伝わるのを抑止する可撓性部材を設けてもよい。これにより、防振機構で支持された吸引力発生機の振動が、流路を介して他の構成に伝わるのを抑止することができる。
【0015】
さらに、前記駆動機構を、前記吸引エンジンで吸引力発生機をベルト駆動するベルト駆動機構で構成し、該ベルト駆動機構にベルト張力調整機構を設けてもよい。これにより、吸引エンジンで吸引力発生機を駆動するための構成を調整が容易なベルト駆動とし、駆動時のベルトの振動は吸引エンジンや吸引力発生機とともに防振機構で防振支持することができる。
【0016】
また、前記防振機構を、前記車体フレームと前記架台とに固定して架台側を防振支持する無方向性の防振ゴムで構成してもよい。この無方向性とは、上下、左右、前後方向のばね常数値がほぼ等しいことをいう。これにより、振動源を効果的に防振支持するための防振機構を、安価で取付が容易な構成とするとともに、容易に製作することができる。
【0017】
さらに、前記架台と、吸引力発生機と、吸引エンジンと、駆動機構とを、防音カバーで覆ってもよい。これにより、振動発生源であり、かつ騒音発生源である吸引力発生機と吸引エンジンと駆動機構とから車両周囲に漏れる騒音をさらに効果的に抑制することができる。
【0018】
一方、本発明の吸引装置は、脱着車両に搭載可能に構成された装置フレームを備えた吸引装置であって、回収対象物を吸引して貯留する貯留タンクを前記装置フレームに設け、該貯留タンク内の空気を吸引する吸引力発生機と、該吸引力発生機を駆動する走行エンジンとは別に独立して設けた吸引エンジンと、該吸引エンジンで前記吸引力発生機を駆動する駆動機構とを同一架台上に設け、該架台を、前記装置フレームに防振機構で支持している。これにより、同一の架台上に設けた走行エンジンとは別に独立した吸引エンジンと、ルーツブロワなどの吸引力発生機と、この吸引力発生機の駆動機構とを一体的に防振機構で支持し、これら大きな振動源から装置フレーム側に振動が伝わるのを抑えて騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明したような手段により、吸引車および吸引装置において、最も振動を発生させる吸引エンジン、吸引力発生機およびその駆動機構の振動が車体フレームに伝播するのを大幅に低減でき、これにより吸引エンジンや吸引力発生機の振動によって発生する騒音を大幅に低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る吸引車を示す側面図であり、図2は、図1に示す吸引車の平面図、図3は、図1に示す吸引車の後面図、図4は、図1に示す吸引車における流路内の空気の流れを示す系統図である。これらの図に基づいて吸引車1の全体構成を説明する。なお、以下の説明における前側、後側、左側、右側とは、車両の前側、後側、左舷側、右舷側をいう。
【0021】
図1,2に示すように、吸引車1の車体フレーム2のサブフレーム17上には、後部に貯留タンク3が傾動自在に設けられている。この貯留タンク3の内部には、吸引ホース4を介して貯留タンク3内に吸引された回収対象物が当接するレシーバゴム5が設けられている。貯留タンク3の前側には、第1吸気管6を介して連結された上流側集塵機たる第1ウオータスクラバ7が設けられている。第1吸気管6の後側には貯留タンク3が傾動してもよいように可撓性部材6Aが使用され、前側には鋼管6Bが使用されている。第1吸気管6の中間部分には、この第1吸気管6を開閉する開閉弁22が設けられている。第1ウオータスクラバ7は、横向きに配置されたタンク8の一部(図2の左側)に設けられている。第1ウオータスクラバ7の前側には第2吸気管9を介してサイレンサ10が設けられており、このサイレンサ10の下側に第3吸気管11を介して吸引力発生機たるルーツブロワ12が設けられている。前記第1ウオータスクラバ7では、ルーツブロワ12で吸引される貯留タンク3内の空気中から粉塵等を除去しており、サイレンサ10では、ルーツブロワ12に吸引される空気の低騒音化を図っている。
【0022】
そして、ルーツブロワ12の前側に、このルーツブロワ12を駆動するための吸引エンジン14が走行エンジンとは別に独立して設けられている。この吸引エンジン14とルーツブロワ12とは、同一の架台15上に並設されている。また、この吸引エンジン14でルーツブロワ12を駆動するための駆動機構13も、架台15上に設けられている。この吸引エンジン14とルーツブロワ12とを架台15上に水平方向に並設することにより、重量物を低く配置して車両重心を低くしている。この架台15は、吸引エンジン14が吸引車1のキャブ16の後側に配置された状態で車体フレーム2の上部に一体的に設けられたサブフレーム17に防振機構18を介して設けられている。この防振機構18の詳細は、後述する。さらに、この実施の形態では、前記サイレンサ10とルーツブロワ12と吸引エンジン14と駆動機構13と、これらを設けた架台15とが防音カバー19によって覆われている。
【0023】
また、前記ルーツブロワ12の後流側には、このルーツブロワ12から排気する第1排気管20と、この第1排気管20から排気される空気中の細かい粉塵や水滴を除去する下流側集塵機たる第2ウオータスクラバ21とが設けられている。この第1排気管20の中間部分には、この第1排気管20を開閉する開閉弁24が設けられている(図1)。第2ウオータスクラバ21は、前記第1ウオータスクラバ7を一部に設けたタンク8の他方(図2の右側)に設けられている。この第2ウオータスクラバ21と第1ウオータスクラバ7とをタンク8として一体的に形成することにより、これら集塵のための構成をコンパクに形成している。また、このタンク8を、貯留タンク3とルーツブロワ12との間に横向き配置することにより、吸引車1としてもコンパクトにしている。この第2ウオータスクラバ21を通過した空気は、第2排気管46によって車両下部まで導かれて大気中に放出されている。なお、この実施の形態における前記ウオータスクラバ7,21は、必ずしも湿式の集塵装置に限定されるものではなく、例えば、複数枚のルーバが並設されたもの等、他の集塵装置であってもよい。
【0024】
さらに、前記第1排気管20の開閉弁24よりも上流側と、前記第1吸気管6の開閉弁22よりも上流側との間が加圧管23によって連結されている。加圧管23の中間部分には、この加圧管23を開閉する開閉弁25が設けられている(図1)。加圧管23は、第1排気管20から第2ウオータスクラバ21に排気される空気を第1吸気管6を介して貯留タンク3内に供給し、この貯留タンク3内の回収対象物を排出するための加圧空気として利用できるようにするものである。
【0025】
また、前記第1吸気管6の開閉弁22と第1ウオータスクラバ7との間には負荷開放空気導入口47と開閉弁48とが設けられている。この負荷開放空気導入口47は、開閉弁48を開放することによって第1吸気管6内に外気を導入する入口である。
【0026】
図4の系統図に基いて、これらの流路内の空気の流れを説明する。図示する実線の矢印が回収対象物を貯留タンク3に吸引する時の空気の流れを示し、図示する破線の矢印が貯留タンク3内の回収対象物を排出するときに貯留タンク3内へ空気を供給する時の流れを示している。回収対象物を貯留タンク3に吸引する時は、負荷開放空気導入口47の開閉弁48と、加圧管23の開閉弁25とが閉鎖され、第1吸気管6の開閉弁22と第1排気管20の開閉弁24とが開放される。この状態でルーツブロワ12を駆動すると、実線の矢印で示すように、貯留タンク3内の空気がタンク上部から第1吸気管6を介して第1ウオータスクラバ7に吸入され、この第1ウオータスクラバ7からサイレンサ10を経てルーツブロワ12に吸入される。このルーツブロワ12からの排気は、第1排気管20を介して第2ウオータスクラバ21に排気され、第2排気管46から大気中に排気される。
【0027】
また、回収対象物を貯留タンク3から排出する時は、負荷開放空気導入口47の開閉弁48と、加圧管23の開閉弁25とが開放され、第1吸気管6の開閉弁22と第1排気管20の開閉弁24とが閉鎖される。この状態でルーツブロワ12を駆動すると、破線の矢印で示すように、負荷開放空気導入口47から外部空気が第1吸気管6Bを介して第1ウオータスクラバ7に吸入され、この第1ウオータスクラバ7からサイレンサ10を経てルーツブロワ12に吸入される。ルーツブロワ12からの排気は、第1排気管20から加圧管23と第1吸気管6Aとを介して貯留タンク3内に供給される。このように開閉弁22,24,25,48を切換えることにより、貯留タンク3内への回収対象物の吸引と、その回収対象物の排出とができるように構成されている。
【0028】
さらに、この実施の形態では、前記第1ウオータスクラバ7とルーツブロワ12との間の流路である第2吸気管9の中間部分と、ルーツブロワ12と前記第2ウオータスクラバ21との間の流路である第1排気管20の中間部分とには、可撓性部材たるゴム管49が設けられている。この可撓性部材としては、たわみ金属管やゴム管等が用いられる。このゴム管49を吸気管9と排気管20とに設けることにより、防振機構18で支持されたルーツブロワ12の振動がこれら吸気管9や排気管20を介して第1,第2ウオータスクラバ7,21側に伝わるのを抑えている。
【0029】
一方、図3にも示すように、貯留タンク3の後部には、タンク上部に上部支持部26が設けられ、この上部支持部26を支点にして下部が開閉するように構成されたテールゲート27が設けられている。このテールゲート27は、タンク側面に設けられた開閉シリンダ28を伸ばすことにより上部支持部26を中心に下部が後方へ解放させられる。開閉シリンダ28を縮めるとテールゲート27が閉じられる。
【0030】
また、図1に示すように、この貯留タンク3は、車体フレーム2の後部に設けられた下部支持部29を支点にして、前側が上向きに揺動して傾動可能に構成されている。この貯留タンク3の傾動は、タンク下部に設けられた傾動シリンダ30を伸ばすことによって貯留タンク3の前側が上昇して傾動させられる。傾動シリンダ30を縮めることによって貯留タンク3が水平状態に戻される。また、この実施の形態のテールゲート27には、中央部に吸引口31が設けられ、その左側部に排水口32が設けられている。この吸引口31に吸引ホース4が接続される。これら吸引口31と排水口32とには、それぞれ開閉弁33,34が設けられている。前記開閉弁22,24,25,48を切換えて、第2ウオータスクラバ21から大気中に放出される空気を加圧管23からこの貯留タンク3内に供給し、開閉弁34を開くことによって、その空気圧で貯留タンク3内の回収対象物を確実に排水口32から排出することができる。
【0031】
このように、吸引車1に設けられた走行エンジンとは別体の吸引エンジン14によってルーツブロワ12が駆動され、このルーツブロワ12で貯留タンク3内の空気を吸引することによって、テールゲート27の吸引口31に接続された吸引ホース4から回収対象物が貯留タンク3内に吸引され、また、ルーツブロワ12で吸引した空気は、第2ウオータスクラバ21を介して大気放出されるか、貯留タンク3内の回収対象物を排出するための加圧空気として利用できるように構成されている。
【0032】
図5は、図1に示す吸引車に設けた吸引エンジンとルーツブロワとその駆動機構とを設けた架台と、その架台を支持する防振機構の配置を示す平面図であり、図6は、図5に示す矢視VIから見た架台の矢視図である。
【0033】
図5,6に示すように、前記吸引エンジン14とルーツブロワ12とが水平方向に並設された架台15は枠状で一体的に形成されており、この枠状の架台15には、吸引エンジン14でルーツブロワ12を駆動するための駆動機構13も設けられている。この駆動機構13は、Vベルト式の駆動機構で構成されており、吸引エンジン14に設けられた駆動プーリ36と、ルーツブロワ12に設けられた従動プーリ37との間にVベルト35が掛けられている。このVベルト35は、駆動機構13に設けられた張力調節機構38によって所定の張力に調節可能に構成されている。ベルト駆動機構としては、タイミングベルト等でもよい。
【0034】
張力調節機構38は、架台15に立設された枠状の案内部材39と、この案内部材39に沿って昇降する調節プーリ40とによって構成されている。この調節プーリ40は、案内部材39の上部に設けられた調節軸41を回転させることにより、案内部材39に沿って昇降する。この調節プーリ40を位置調節することにより、Vベルト35の張力調節が行われる。この実施の形態では、駆動機構13をVベルト式の駆動機構13で構成しているが、この駆動機構13は、例えば、チェーンやドライブシャフト等の他の駆動機構であってもよく、この実施の形態に限定されるものではない。
【0035】
そして、前記したように、これら同一架台15の上部に設けられて一体的に構成された吸引エンジン14とルーツブロワ12と駆動機構13とが、前記した車体フレーム2(図1)と一体的に構成されたサブフレーム17に防振機構18を介して支持されている。
【0036】
この実施の形態における防振機構18は、架台15の下部に設けられた複数個の防振ゴム42によって構成されている。この実施の形態の防振ゴム42は、図6に断面で示すように、頂部に空間を設けた椀型傾斜状にゴムを加硫接着したものが用いられており、上下、左右、前後方向のばね常数値がほぼ等しい無方向性のものが採用されている。この防振ゴム42は、中央部がボルト・ナット43で架台15に固定され、取付板44がボルト・ナット45でサブフレーム17に固定されている。なお、防振ゴム42としては、他の種類であってもよい。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「防振機構」は、防振ゴム以外の防振機能を発揮できる構成でもよい。
【0037】
防振ゴム42の配置としては、重量物である吸引エンジン14側に6個が配置され、ルーツブロワ12側には2個が配置されている。このように、この実施の形態では、8個の防振ゴム42で吸引エンジン14とルーツブロワ12と、このルーツブロワ12の駆動機構13とを設けた架台15を防振支持している。この実施の形態における防振ゴム42の配置は一例であり、これらの配置や個数は吸引エンジン14やルーツブロワ12の重量や回転数、防振ゴム42のばね常数値等を考慮して好ましい配置と個数を決定すればよく、この実施の形態に限定されるものではない。また、防振ゴムの種類も、この実施の形態に限定されるものではない。
【0038】
以上のように構成された吸引車1によれば、吸引車1において最も大きな振動源となる走行エンジンとは別に独立して設けられた吸引エンジン14と、この吸引エンジン14で駆動するルーツブロワ12と、このルーツブロワ12を駆動する駆動機構13とを、架台15とともに一体的に防振支持することができるので、これらの構成から車体フレーム2側に伝わる振動を大幅に低減することができ、この振動によって生じる騒音を低減させることができる。
【0039】
しかも、この実施の形態の吸引車1によれば、車両の走行エンジンを停止した状態で、防振ゴム42によって防振支持された吸引エンジン14で防振支持されたルーツブロワ12を駆動して吸引作業を行うので、これら吸引エンジン14とルーツブロワ12との振動を効果的に防振して騒音を抑止することができるので、住宅街等における回収対象物の回収作業等を、満足できるレベルの作業音で行うことができ、環境に良い吸引車1を構成することができる。
【0040】
図7は、本発明の一実施の形態に係る吸引装置を示す側面図である。この実施の形態の吸引装置50は、脱着車両51に搭載して目的地まで搬送し、その場で車両から降ろして定置した吸引装置50として回収対象物を回収することができるようにしたものである。吸引装置50は脱着車両51と別体で構成され、この吸引装置50を全体的に支持する装置フレーム52が脱着車両51に搭載可能なように構成されている。この吸引装置50としては、前記吸引車1のサブフレーム17上に設けられた構成と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図示するように、吸引装置50には装置フレーム52が設けられており、脱着車両51に支持軸53で支持された荷役アーム58のフック部57をこの装置フレーム52の係止部56に引っ掛け、この荷役アーム58を荷役シリンダ59で傾動させることによって、装置フレーム52を脱着車両51のサブフレーム54後端部に設けられたガイドローラ55に載せて前後方向にスライドさせることができるように構成されている。これにより、この吸引装置50をサブフレーム54に載せたり、サブフレーム54から降ろしたりすることができる。この吸引装置50をサブフレーム54に載せたり降ろしたりする構成は一例であり、他の構成であってもよい。
【0042】
このように構成された吸引装置50によれば、前記吸引車1と同様に、吸引装置50において最も大きな振動源となる走行エンジンとは別に独立して設けられた吸引エンジン14と、この吸引エンジン14で駆動するルーツブロワ12と、このルーツブロワ12を駆動する駆動機構13とを、架台15とともに一体的に防振支持しているので、これらの構成から装置フレーム52に伝わる振動を大幅に低減して、この振動によって生じる騒音を低減させることができる。従って、住宅街等における回収対象物の回収作業等を、満足できるレベルの作業音で行うことができ、環境に良い吸引装置50を構成することができる。
【0043】
しかも、この吸引装置50によれば、吸引作業が必要となる場所まで脱着車両51によって搬送して所定の位置に定置すれば、車両から離れた場所で必要に応じて吸引作業を行うことができる。また、貯留タンク3内に所定量の回収対象物が貯留されたら、脱着車両51で吸引装置50を定置した場所へ行き、その吸引装置50を脱着車両51に載せて廃棄場所まで搬送して貯留された回収対象物を廃棄した後、再び吸引作業が必要となる場所まで脱着車両51によって搬送して定置しておけば、その場所で必要に応じて効率良く吸引作業を行うことができ、脱着車両51の効率的な使用も可能である。
【0044】
なお、前述した実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る吸引車および吸引装置は、吸引作業時に振動や騒音を低減したい汚泥回収作業等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る吸引車を示す側面図である。
【図2】図1に示す吸引車の平面図である。
【図3】図1に示す吸引車の後面図である。
【図4】図1に示す吸引車における流路内の空気の流れを示す系統図である。
【図5】図1に示す吸引車に設けた吸引エンジンとルーツブロワとその駆動機構とを設けた架台と、その架台を支持する防振機構の配置を示す平面図である。
【図6】図5に示す矢視VIから見た架台の矢視図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る吸引装置を示す側面図である。
【図8】従来の吸引車の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…吸引車
2…車体フレーム
3…貯留タンク
4…吸引ホース
5…レシーバゴム
6…第1吸気管
7…第1ウオータスクラバ(上流側集塵機)
8…タンク
9…第2吸引管
10…サイレンサ
11…第3吸気管
12…ルーツブロワ(吸引力発生機)
13…駆動機構
14…吸引エンジン
15…架台
17…サブフレーム
18…防振機構
19…防音カバー
20…第1排気管
21…第2ウオータスクラバ(下流側集塵機)
22…開閉弁
23…加圧管
24,25…開閉弁
26…上部支持部
27…テールゲート
28…開閉シリンダ
29…下部支持部
30…傾動シリンダ
31…吸引口
32…排水口
33,34…開閉弁
35…Vベルト
36…駆動プーリ
37…従動プーリ
38…張力調節機構
39…案内部材
40…調節プーリ
41…調節軸
42…防振ゴム
45…ボルト・ナット
46…第2排気管
47…負荷開放空気導入口
48…開閉弁
49…ゴム管(可撓性部材)
50…吸引装置
51…脱着車両
52…装置フレーム
53…支持軸
54…サブフレーム
55…ガイドローラ
56…係止部
57…フック部
58…荷役アーム
59…荷役シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載した貯留タンクに回収対象物を吸引して貯留する吸引車であって、
前記貯留タンク内の空気を吸引する吸引力発生機と、該吸引力発生機を駆動する走行エンジンとは別に独立して設けた吸引エンジンと、該吸引エンジンで前記吸引力発生機を駆動する駆動機構とを同一架台上に設け、該架台を、前記車両の車体フレームに防振機構で支持した吸引車。
【請求項2】
前記同一架台上に設ける前記吸引エンジンと吸引力発生機とを水平方向に並設した請求項1に記載の吸引車。
【請求項3】
前記貯留タンクと吸引力発生機との間に該吸引力発生機に吸引する空気が通過する上流側集塵機を設けるとともに、該吸引力発生機の下流側に該吸引力発生機の排気が通過する下流側集塵機を設け、該上流側集塵機と下流側集塵機とを前記貯留タンクと吸引力発生機との間に配置した請求項1又は請求項2に記載の吸引車。
【請求項4】
前記上流側集塵機と吸引力発生機との間の流路と、該吸引力発生機と下流側集塵機との間の流路とに、該吸引力発生機の振動が上流側集塵機と下流側集塵機とに伝わるのを抑止する可撓性部材を設けた請求項3に記載の吸引車。
【請求項5】
前記駆動機構を、前記吸引エンジンで吸引力発生機をベルト駆動するベルト駆動機構で構成し、該ベルト駆動機構にベルト張力調整機構を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸引車。
【請求項6】
前記防振機構を、前記車体フレームと前記架台とに固定して架台側を防振支持する無方向性の防振ゴムで構成した請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸引車。
【請求項7】
前記架台と、吸引力発生機と、吸引エンジンと、駆動機構とを、防音カバーで覆った請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸引車。
【請求項8】
脱着車両に搭載可能に構成された装置フレームを備えた吸引装置であって、
回収対象物を吸引して貯留する貯留タンクを前記装置フレームに設け、該貯留タンク内の空気を吸引する吸引力発生機と、該吸引力発生機を駆動する走行エンジンとは別に独立して設けた吸引エンジンと、該吸引エンジンで前記吸引力発生機を駆動する駆動機構とを同一架台上に設け、該架台を、前記装置フレームに防振機構で支持した吸引装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−255095(P2007−255095A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82172(P2006−82172)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】