説明

吸着シート

【課題】ガス状有害物質および液状有害物質に対して吸着性があり、はっ水性およびはつ油性に優れる吸着シートを提供する。
【解決手段】ガス吸着層の両面に保護層を積層加工した吸着シートであって、少なくともガス吸着層に対しはっ水剤、水分散系バインダー樹脂、およびウレタン系架橋型樹脂が付与されていることを特徴とする吸着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機リン系化合物のような皮膚から吸収されて人体に悪影響を及ぼすガス状有害物質および液状有害物質を有効に防護でき、さらには耐透過抑制機能(吸着性)、はっ水性、およびはつ油性の優れた、総合的に、ガス状有害物質および液状有害物質の吸着性を向上させた吸着シートに関する。本発明の吸着シートは、特に、シェルター、衣服、手袋、靴下、靴、ヘルメット、およびカバー等の防護材料に好適に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
有害物質などから人体を保護する吸着シートは、従来から様々なものが提案されている。例えば、活性炭シートの脱落、飛散抑制のために、織物や不織布等により活性炭シートを挟んだり、または包み込んだ活性炭シートが提案されているが、吸着性、はっ水性およびはつ油性の優れた加工方法について詳細に研究されていなかった。
【0003】
特許文献1には、繊維状活性炭シートの両面に保護層を積層し、キルティング加工した後に、これを水分散系のバインダー樹脂加工浴中に浸漬し、乾燥・固着処理を施すことにより、繊維状活性炭シートにかかる機械的な力による繊維の破損あるいは粉末化から発生する活性炭粉塵の脱落、飛散を防止した吸着シートが提案されている。この吸着シートは、メラミン系樹脂を使用しており、トルエン吸着性が低下し、ガス状有害物質に対して吸着性が弱い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−10679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み創案されたものであり、その目的は、ガス状有害物質および液状有害物質に対して吸着性があり、はっ水性およびはつ油性に優れる、ガス吸着層の両面に保護層を積層した吸着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる目的を達成するためにガス吸着層のはっ水性およびはつ油性の加工方法について鋭意検討した結果、ガス吸着層を、はっ水剤を併用する水分散系のバインダー樹脂およびウレタン系架橋型の樹脂浴により浸漬処理し、乾燥・固着処理を施すことにより、ガス状有害物質および液状有害物質に対して吸着性と優れた使用感を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)ガス吸着層の両面に保護層を積層加工した吸着シートであって、少なくともガス吸着層に対しはっ水剤、水分散系バインダー樹脂、およびウレタン系架橋型樹脂が付与されていることを特徴とする吸着シート。
(2)ガス吸着層が織物、編物、不織布、またはフェルトのいずれかの形態を有する上記(1)に記載の吸着シート。
(3)上記(1)または(2)に記載の吸着シートを用いた防護材料。
(4)防護材料が防護衣服である上記(3)に記載の防護材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸着シートは、ガス吸着層の両面に保護層を積層加工した吸着シートであって、少なくともガス吸着層に対しはっ水剤、ウレタン系水分散系バインダー樹脂、およびウレタン系架橋型樹脂を付与しているので、ガス状有害物質および液状有害物質に対して吸着性の洗濯耐久性に優れる。従って、防護衣服などの防護材料に使用するのに極めて好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の吸着シートを詳細に説明する。
本発明の吸着シートは、ガス吸着層の両面に保護層を積層したものである。
【0010】
本発明におけるガス吸着層と保護層の積層手段としては、キルティング加工、接着加工等があげられるが、ガス吸着層の吸着性を損なわないこと、積層加工による質量の増加がほとんどないこと、通気性を損なわないこと、加工や補修が容易なこと、あるいは柔軟性に優れること等から、キルティング加工で積層する方法が好ましい。しかし、特に、吸着シートの液状有害物質に対しての吸着性を考慮する場合、接着加工で積層する方法が好ましい。
【0011】
本発明におけるガス吸着層とそれに積層される保護層の数としては、ガス吸着層の両面でそれぞれ少なくとも1層が必要であるが、機械的強度の大幅な向上を目的とするとき、対象ガスが複数にわたるときなどは、ガス吸着層および保護層をそれぞれ必要枚数重ね合わせて使用することも有効である。
【0012】
本発明におけるキルティング加工としては、公知の加工方法により加工することができる。
【0013】
本発明におけるキルティング加工に使用するミシン糸としては、ポリエステル系、ナイロン系、綿系繊維等に限定されるものではない。また、キルティングパターン(柄)、打ち込み密度についても特に限定されるものではない。液状有害物質に対する防護性を考慮すると、はつ油性ミシン糸を使用することが好ましい。
【0014】
本発明における接着加工方法としては、特に限定されないが、不織布状ホットメルト接着剤を積層して加熱溶融させた接着方法や常温固形の1液反応性接着剤を加熱溶融させた接着方法でガス吸着層や保護層を均一に部分的に接着する方法が好ましい。
【0015】
本発明における接着加工に用いるホットメルト接着剤としては、特に限定されないが、柔軟性、接着後の剥離強度、通気性、および吸着性の点で、融点の低い共重合ポリエステル、ポリアミド、またはポリオレフィン等からなる質量の小さい不織布の熱融着繊維を使用することが好ましい。
【0016】
本発明における接着加工に用いる1液反応性接着剤としては、特に限定されないが、柔軟性、接着後の剥離強度、通気性、および吸着性の点で、無溶剤系ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0017】
本発明におけるホットメルト接着剤および1液反応性接着剤の質量としては、5g/m以上50g/m以下であることが好ましい。より好ましくは、10g/m以上40g/m以下である。質量が5g/m未満であると、接着強度の低下の問題が生じ、一方、50g/mを越えると、柔軟性と通気性が低下する原因となる。
【0018】
本発明におけるガス吸着層としては、活性炭やカーボンブラックなどの炭素系吸着材、あるいは、シリカゲル、ゼオライト系吸着材、炭化ケイ素、活性アルミナなどの無機系吸着材等からなるガス吸着層が挙げられるが、対象とする被吸着物質に応じて適宜選択することができる。その中でも広範囲なガスに対応できる活性炭が好ましく、特に吸着速度や吸着容量が大きく少量の使用で効果的なガス状有害物質に対して、吸着性が得られる繊維状活性炭がより好ましい。
【0019】
本発明における被吸着物質のガスとしては、炭素元素を1つ以上持つガス状化合物が挙げられる。例えば、ガス状化合物として、50以上の比較的大きな分子量を持ち、活性炭等のガス吸着層が吸着可能なガス状有害物質が挙げられる。具体的には、農薬、殺虫剤、除草剤に使用される有機リン系化合物や、塗装作業などに使用されるトルエン、塩化メチレン、クロロホルムなどの一般的な有機溶剤が挙げられる。
【0020】
本発明におけるガス吸着層に繊維状活性炭を用いる場合、そのBET比表面積としては、700m/g以上3000m/g以下が好ましく、1000m/g以上2500m/g以下がより好ましい。BET比表面積が700m/g未満であると、十分な防護性を得るために多くの繊維状活性炭が必要となり材料が重くなり、柔軟性が劣ることが懸念される。一方、3000m/gを超えると、吸着したガス状有害物質が脱離する問題が起こりうる。
【0021】
本発明における繊維状活性炭の質量としては、10g/m以上300g/m以下が好ましく、より好ましくは20g/m以上200g/m以下である。質量が10g/m未満であると、吸着できるガス容量が小さくなり使用時間が制限される。一方、300g/mを超えると、シート材料の柔軟性が劣ることが懸念される。
【0022】
本発明における繊維状活性炭の原料としては、綿、麻といった天然セルロース繊維の他、レーヨン、ポリノジック、溶剤紡糸法によるといった再生セルロース繊維、さらにはポリビニルアルコール繊維、アクリル系繊維、芳香族ポリアミド繊維、リグニン繊維、フェノール系繊維、石油ピッチ繊維等の合成繊維が挙げられるが、得られる繊維状活性炭の物性(強度等)や吸着性能から再生セルロース繊維、フェノール系繊維、アクリル系繊維が好ましい。繊維状活性炭は、従来公知の方法によって製造されることができるが、例えばこれらの原料繊維の短繊維あるいは長繊維を用いて製織、製編、不織布化した布帛に必要に応じて適当な耐炎化剤を含有させた後、450℃以下の温度で耐炎化処理を施し、次いで500℃以上1000℃以下の温度で炭化賦活することによって製造されることができる。
【0023】
本発明におけるガス吸着層の作成方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えばシート基材にガス吸着材をバインダーにより接着する方法、あるいはガス吸着材を適当なパルプおよびバインダーを含めスラリー状とし、湿式抄紙機により抄造する方法、あるいはガス吸着材の原料繊維をあらかじめ製織、製編、不織布化し、必要に応じて耐炎化処理したのち炭化・賦活する方法等を採用することができる。
【0024】
本発明におけるガス吸着層としては、織物、編物、不織布、またはフェルトのいずれかの形態を有することが好ましい。これらのうち織物または編物の形態が通気性、積層の容易性、柔軟性などの面からより好ましい。
【0025】
本発明における吸着シートに用いる保護層としては、織物、編物、不織布、多孔フィルム、開孔フィルム、膜材料、またはこれらの複合材料等が挙げられるが、使用目的に応じて適宜選択されることができる。保護層の目的は、外部から与えられる機械的な力から吸着シートを保護すること、吸着シートの機械的強度を補うこと、液状有害物質に対して吸着性を確保すること等である。
【0026】
上記のようにガス吸着層と2つの保護層からなる積層体の質量としては、500g/m以下が好ましく、より好ましくは450g/m以下である。積層体の質量が500g/mを越えると、重量が大きくなり柔軟性に乏しい材料にとなりやすい。質量の下限は、特に定めないが、現実的には30g/m以上である。
【0027】
本発明におけるガス吸着層と少なくとも2つの保護層からなる積層体の厚さとしては、5.0mm以下が好ましく、より好ましくは4.0mm以下である。厚さが5.0mmを越えると、積層体のごわつきが大きくなり、吸着シートの加工性が悪くなる。厚さの下限は、特に定めないが、現実的には1.5mm以上である。
【0028】
ガス吸着層と2つの保護層からなる積層体のトルエン吸着性能(トルエンガス平衡吸着量)としては、20g/m以上であることが好ましい。より好ましくは25g/m以上である。トルエン吸着性能が20g/m未満では、吸着性が劣りガスに対する防護性が劣る結果となる。トルエン吸着性能の上限は、特に定めないが、現実的には200g/m以下である。
【0029】
さらには、吸着シートの液状有害物質に対する防護性をより向上させるためには、積層加工を行う前の吸着シートの少なくともガス吸着層に予めはっ水はつ油加工を施したり、後加工により積層後の吸着シートにはっ水性およびはつ油性の加工を施すことにより、ガス吸着層にはっ水性およびはつ油性を付与することが好ましい。はっ水性およびはつ油性の加工方法は従来公知のいかなる方法でもよく、特に限定されるものでない。吸着シートを構成する材料の少なくとも1層がはっ水性2級以上、はつ油性2級以上であることが好ましい。
【0030】
本発明におけるはっ水剤としては、フッ素樹脂系、シリコン樹脂系、ワックス系等の水分散系であれば特に限定されるものではない。
【0031】
本発明における水分散系バインダー樹脂としては、材料の柔軟性を維持するという観点からウレタン系、アクリル系、アクリル系、ビニル系またはシリコン系の樹脂を奨励され、特に、ガス吸着層に対し、均一にはつ油性を付与するためにはウレタン系架橋型樹脂とウレタン系の水分散系バインダー樹脂の組み合わせが好ましい。
【0032】
本発明におけるウレタン系架橋型樹脂としては、はっ水性およびはつ油性の初期性能の向上および水や汗の耐久性についても性能の向上が期待できる。また、ガス吸着性能の低下抑制および維持するためおよび繊維状活性炭の脱落防止性効果を高めることができる。
【0033】
はっ水剤、水分散系バインダー樹脂及びウレタン系架橋型樹脂の付与される合計の樹脂量としては固形分で0.01〜2重量%付与することが好ましい。0.01重量%未満であると十分な脱落防止効果が得られず、2重量%を超えると活性炭の吸着性能が損なわれるとともに材料が硬くなる。はっ水剤とウレタン系架橋型樹脂の配合重量比率としては1/20〜1/4であることが好ましい。1/20未満であると十分なはっ水性及びはつ油性の耐久性能が得られず、1/4を超えると活性炭の吸着性能が損なわれるとともに材料が硬くなる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例および比較例を用いて本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に記載の評価方法は以下の通りである。
【0035】
(1)はっ水性:ガス吸着層(繊維状活性炭)について、JIS−L−1092により測定した。
【0036】
(2)はつ油性:ガス吸着層(繊維状活性炭)について、AATCC Test Method 118により測定した。
【0037】
(3)ガス平衡吸着量:1/10飽和度のトルエン蒸気に対する吸着量をJIS−K−1477に記載の方法により測定した(なお、ここでは、吸着量の単位としてwt%を割りかえして、g/mを用いた)。
【0038】
(4)質量:JIS−L−1096により測定した。
【0039】
(5)厚さ:JIS−L−1096により測定した。
【0040】
(6)はっ水耐久性:JIS−L−1096 C法を10回繰返し、脱水、乾燥後、180℃の温度で5分間加熱し、ガス吸着層(繊維状活性炭)について、JIS−L−1092により測定した。
【0041】
(7)はつ油耐久性:JIS−L−1096 C法を10回繰返し、脱水、乾燥後、180℃の温度で5分間加熱し、ガス吸着層(繊維状活性炭)について、AATCC Test Method 118により測定した。
【0042】
ガス吸着層の作製
ガス吸着層として、編物の形態の繊維状活性炭を以下の方法で作製した。単糸繊度2.2dtex、20番手のノボラック系フェノール樹脂繊維紡績糸からなる質量220g/mの丸編物を410℃の不活性雰囲気中で30分間加熱し、次に不活性雰囲気中で880℃まで20分間加熱して炭化を進行させ、次に水蒸気を12容量%含有する雰囲気中で890℃の温度で2時間賦活した。得られたガス吸着層は、質量が125g/m、比表面積が1400m/g、厚さが0.80mm、通気性が水位計1.27cmの圧力差で200cm/cm・s、ガス平衡吸着量が59g/mであった。
【0043】
保護層の作製
保護層として、トリコット編地を以下の方法で作製した。28ゲージ2枚筬トリコット機により、フロント筬にポリエステルフィラメント(82.5dtex、36フィラメント)を、またバック筬にポリエステルフィラメント(22dtex、モノフィラメント)を各々セットして、フロント1−2/1−0、バック1−0/2−3の組織で経編地を編成した後、定法により精練し、更に分散染料により染色した。得られた保護層は、厚さが0.28mm、質量が80g/m、通気性が水位計1.27cmの圧力差で500cm/cm・sであった。
【0044】
はつ油性ミシン糸の作製
上糸はポリエステルフィラメントミシン糸#50(83.3dtex/1×3)を7.0wt%のフッ素系はっ水剤(旭硝子(株)、アサヒガードAG970)、0.7wt%のウレタン系架橋型樹脂(明成化学工業(株)、メイカネートWEB)の加工浴に浸漬後、脱水、乾燥し、180℃で固着処理し、樹脂固形分で0.35wt%付着させた後、シリコン系オイルを浸漬法により1.1wt%付着させた。一方、下糸は、ポリエステルスパン糸#130(80s/1×2)を7.0wt%のフッ素系はっ水剤(旭硝子(株)、アサヒガードAG970)、0.7wt%のウレタン系架橋型樹脂(明成化学工業(株)、メイカネートWEB)の加工浴に浸漬後、脱水、乾燥し、180℃で固着処理し、樹脂固形分で0.48wt%付着させた後、パラフィン系ワックスを浸漬法により0.83wt%付着させた。
【0045】
(実施例1)
上記ガス吸着層の両面に上記保護層を積層した後、はつ油性ミシン糸を用いて、2inch(5.08cm)ピッチでダイヤ柄にキルティング縫合し、3層構造の積層体とした。そして、さらに積層体を3.0wt%のフッ素系はっ水剤(旭硝子(株)、アサヒガードAG970)、2.5wt%のウレタン系バインダー樹脂(明成化学工業(株)、G3233)、0.3wt%のウレタン系架橋型樹脂(明成化学工業(株)、メイカネートWEB)の加工浴に浸漬して乾燥した後、170℃で固着処理を施し、はっ水剤をバインダー樹脂固形分で0.54wt%付着させた。得られた吸着シート(ガス吸着層)のガス平衡吸着量、はっ水性、はつ油性、はっ水耐久性およびはつ油耐久性の評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
上記ガス吸着層の両面に上記保護層を積層した後、はつ油性ミシン糸を用いて、2inch(5.08cm)ピッチでダイヤ柄にキルティング縫合し、2層構造の積層体とした。一方、別の上記の保護層に20g/mの不織布状ホットメルト接着剤(呉羽テック(株)、ダイナック)を積層した後、上記の2層構造のガス吸着層の他方の面に保護層の接着剤面を重ね合わせて、全材料をロールにて圧着させた。その後、3層構造の積層体を120℃の加熱炉に5分間放置し、接着剤を溶融させた。そして、さらに、積層体を3.0wt%のフッ素系はっ水剤(旭硝子(株)、アサヒガードAG970)、2.5wt%のウレタン系バインダー樹脂(明成化学工業(株)、G3233)、0.3wt%のウレタン系架橋型樹脂(明成化学工業(株)、メイカネートWEB)の加工浴に浸漬して乾燥した後、170℃で固着処理を施し、はっ水剤をバインダー樹脂固形分で0.53wt%付着させた。得られた吸着シート(ガス吸着層)のガス平衡吸着量、はっ水性、はつ油性、はっ水耐久性およびはつ油耐久性の評価結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
上記ガス吸着層の両面に上記保護層を積層した後、はつ油性ミシン糸を用いて、2inch(5.08cm)ピッチでダイヤ柄にキルティング縫合し、3層構造の積層体とした。そして、さらに積層体を3.0wt%のフッ素系はっ水剤(旭硝子(株)、アサヒガードAG970)、2.5wt%のウレタン系バインダー樹脂(明成化学工業(株)、G3233)、0.3wt%のメラミン系架橋型樹脂(住友化学工業(株)、スミテックスレジンM−3)、0.1wt%の反応促進剤(住友化学工業(株)、スミテックスアクセラレータACX)の加工浴に浸漬して乾燥した後、170℃で固着処理を施し、はっ水剤をバインダー樹脂固形分で0.54wt%付着させた。得られた吸着シート(ガス吸着層)のガス平衡吸着量、はっ水性、はつ油性、はっ水耐久性およびはつ油耐久性の評価結果を表1に示す。
【0048】
(比較例2)
上記ガス吸着層の両面に上記保護層を積層した後、はつ油性ミシン糸を用いて、2inch(5.08cm)ピッチでダイヤ柄にキルティング縫合し、3層構造の積層体とした。そして、さらに積層体を3.0wt%のフッ素系はっ水剤(旭硝子(株)、アサヒガードAG970)、2.5wt%のウレタン系バインダー樹脂(明成化学工業(株)、G3233)の加工浴に浸漬して乾燥した後、170℃で固着処理を施し、はっ水剤をバインダー樹脂固形分で0.54wt%付着させた。得られた吸着シート(ガス吸着層)のガス平衡吸着量、はっ水性、はつ油性、はっ水耐久性およびはつ油耐久性の評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜2の吸着シートは、ガス平衡吸着量、はっ水性、はつ油性、はっ水耐久性およびはつ油耐久性の全てにおいて良好であるのに対して、比較例1の吸着シートは、ガス平衡吸着量、比較例2の吸着シートは、はっ水耐久性およびはつ油耐久性、比較例1〜2の吸着シートは、いずれかの評価項目で実施例のものよりも劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の吸着シートは、ガス状有害物質および液状有害物質に対して吸着性の洗濯耐久性に優れるので、防護衣料等の防護材料の業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス吸着層の両面に保護層を積層加工した吸着シートであって、少なくともガス吸着層に対しはっ水剤、水分散系バインダー樹脂、およびウレタン系架橋型樹脂が付与されていることを特徴とする吸着シート。
【請求項2】
ガス吸着層が織物、編物、不織布、またはフェルトのいずれかの形態を有する請求項1に記載の吸着シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸着シートを用いた防護材料。
【請求項4】
防護材料が防護衣服である請求項3に記載の防護材料。


【公開番号】特開2012−139975(P2012−139975A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1038(P2011−1038)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】