説明

周波数変換器

【課題】小数点を含んだ自由な変換関係を選択することができる周波数変換器を提供すること。
【解決手段】逓倍器を用いて入力パルス列信号を予め設定した逓倍数Nで逓倍して逓倍パルス列信号に変換する。次に、逓倍パルス列信号を分周器によって分周数mで分周し、入力パルス列信号の周波数Fiと一定の関係を保った周波数Foを有する出力パルス列信号を得る。入力パルス列信号の周波数と出力パルス列信号の周波数の関係を示す周波数変換係数Rは、
R=N/m
により決定される。逓倍数Nと分周数mの値を変えることにより、少数を含んだ値の周波数変換係数Rとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサからの出力信号を計測し、その結果に応じて対象物の制御を行なうような計測や制御の分野において、パルス列信号の周波数を一定の関係を保った別の周波数に変換する周波数変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器の入出力信号形式がパルス列の信号であり、その信号のパルス数や周期が重要な意味を持っている場合がある。このようなパルス列信号を他の機器で利用するには、パルス列信号の周波数を一定の関係を保った別の周波数に変換する必要が生じる。
【0003】
従来から、上記の用途には、パルスを一定の数だけカウントする毎に出力を反転させる分周器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、個々のパルスの立上りエッジと立下りエッジを検出し、その各々のタイミング毎にパルスを発生して2逓倍のパルス列信号を得る2逓倍器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−228812号公報
【特許文献2】特開2001−111347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような分周器では、入力パルス列信号を整数倍に分周することは可能であるが、入力パルス列と出力パルス列との関係が小数を含むような変換関係にすることはできない。
【0005】
特許文献2に記載されたような2逓倍器は、複数組み合わせることで入力パルス数の偶数倍のパルス数を得ることができるが、入力パルス列と出力パルス列との関係が小数を含むような変換関係にすることはできない。
【0006】
また、特許文献2に記載されたような2逓倍器を複数組み合わせると、出力パルスの周期や波形が不連続なものとなるため、例えば、Duty比が50%となるような出力パルス列信号を得ることは困難である。
【0007】
また、DDS(ダイレクトデジタルシンセサイザー)やPLL(フェーズロックループ)等の特殊な技術を用いた周波数逓倍器も実用化されている。ところが、このような周波数逓倍器は、高価で高精度の基準クロック発振素子や複雑な回路構成が必要となり、高速な入力変化に対する応答には適さない。
【0008】
本発明の目的は、小数点を含んだ自由な変換関係を選択することができる周波数変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の周波数変換器は、入力パルス列信号を任意の逓倍数で逓倍して逓倍パルス列信号に変換する逓倍器と、逓倍器により変換された逓倍パルス列信号を任意の分周数で分周して出力パルス列信号に変換する分周器と、を備える。
【0010】
本発明の周波数変換器では、まず、逓倍器を用いて入力パルス列信号を予め設定した逓倍数で逓倍して逓倍パルス列信号に変換する。そして、逓倍パルス列信号を分周器に通すことにより、入力パルス列信号の周波数を一定の関係を保った別の周波数に変換して出力パルス列信号を得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の周波数変換器によれば、逓倍数と分周数を個別に選択することで、入力パルス列信号の周波数と出力パルス列信号の周波数との関係を示す周波数変換係数を、小数点を含んだ値にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の周波数変換器を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
【0013】
[変換器の構成例]
図1は、本発明の周波数変換器の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
この周波数変換器1は、入力パルス列信号を任意の逓倍数で逓倍して逓倍パルス列信号に変換する逓倍器2と、この逓倍器2から出力された逓倍パルス列信号を任意の分周数で分周して出力パルス列信号に変換する分周器3と、逓倍数及び分周数の設定を行うための設定部4とを備えている。
【0014】
逓倍器2は、基準クロック発振器11と、入力周期測定用カウンタ12と、逓倍パルス出力用カウンタ13と、カウンタ制御部14と、を備えている。
【0015】
基準クロック発振器11は、入力周期測定用カウンタ12と逓倍パルス出力用カウンタ13に、入力周波数f0の基準クロックを発信する。入力周期測定用カウンタ12には、入力パルス列信号が入力される。この入力周期測定用カウンタ12は、基準クロック発振器11から発信された基準クロックをカウントすることにより、入力パルス列信号の入力パルス周期を測定する。
【0016】
カウンタ制御部14は、CPU(Central Processing Unit)で構成されている。このカウンタ制御部14は、入力周期測定用カウンタ12によって測定した入力パルス周期を任意の逓倍数で除算して逓倍パルス周期を算出し、逓倍パルス出力用カウンタ13の出力周期として設定する。逓倍パルス出力用カウンタ13は、基準クロックを逓倍パルス周期に対応する値だけカウントする毎に逓倍パルスを発生させて逓倍パルス列信号を生成する。そして、逓倍パルス出力用カウンタ13は、生成した逓倍パルス列信号を分周器3に出力する。
【0017】
分周器3は、逓倍パルス出力用カウンタ13から出力された逓倍パルス列信号を任意の分周数で分周し、出力パルス信号として出力する。設定部4は、カウンタ制御部14及び分周器3に接続されている。この設定部4を操作することにより、逓倍器2の逓倍数及び分周器3の分周数を任意の値に設定することができる。
【0018】
周波数変換器1では、逓倍器2を用いて入力パルス列信号を逓倍パルス列信号に変換する。逓倍パルス列信号は、入力パルス列信号の周波数よりも大きな周波数を有する。そして、分周器3によって逓倍パルス列信号を分周することにより、入力パルス列信号の周波数に対して小数を含んだ自由な変換関係を持った周波数となる出力パルス列信号に変換する。
【0019】
逓倍器2の逓倍数をNとし、分周器3の分周数をmとすると、入力パルス列信号の周波数から出力パルス列信号の周波数への変換関係を示す周波数変換係数Rは、
R=N/m
により算出される。
そして、入力パルス列信号の周波数をFiとし、出力パルス列信号の周波数をFoとすると、Fi及びFoは次の関係を満たす。
Fo=R×Fi
【0020】
周波数変換係数Rを決定する逓倍数Nと分周数mの値は、設定部4によって自由に選択することが可能である。そのため、周波数変換器1では、周波数変換係数Rを、小数を含む値にすることができる。例えば、逓倍数Nとして5を選択し、分周数mとして2を選択すると、周波数変換係数Rが2.5になる。
【0021】
[周波数変換の説明]
図2は、周波数変換器1により行われる入力パルス列信号から出力パルス列信号への変換を説明する説明図である。
【0022】
上述したように、周波数変換係数Rは、逓倍器2に設定する逓倍数Nと、分周器3に設定する分周数mの組合せで決定される。入力パルス列信号は、逓倍器2によってN逓倍され、逓倍パルス列信号に変換される。そして、逓倍パルス列信号は、分周器3でm分周されることにより、出力パルス列信号に変換される。
【0023】
逓倍器2の入力周期測定用カウンタ12は、入力パルス列信号が入力されると、基準クロック発振器11から発信された基準クロックをカウントして入力パルス列信号の周期(以下、「入力パルス周期」という)を測定する。このとき、基準クロックの周波数をf0とし、入力パルス周期をTとすると、入力周期測定用カウンタ12のカウント数Cは、
=f0×T
となる。
【0024】
カウンタ制御部14は、入力周期測定用カウンタ12のカウント数Cを逓倍数Nで除算して、逓倍パルス周期に対応する基準クロック数を算出し、逓倍パルス出力用カウンタ13の出力周期として設定する。つまり、逓倍パルス周期に対応する基準クロック数を逓倍用カウント数Cとすると、逓倍用カウント数C及び入力周期測定用カウンタ12のカウント数Cは、次の関係を満たす。
=C/N
【0025】
逓倍パルス出力用カウンタ13は、基準クロックを逓倍用カウント数Cだけカウントする毎に、逓倍パルスを出力させて逓倍パルス列信号を生成する。このようにして逓倍パルス列信号を得る場合、逓倍パルス周期Tは、次のような関係を満たす。
=C/f0
=(C/N)/f0
=(f0×T/N)/f0
=T/N
【0026】
このように、カウント数C及び逓倍用カウント数Cは、同一の基準クロックを用いてカウントされるため、逓倍パルス周期Tは、基準クロックの周波数f0の値に関係なく算出することができる。その結果、周波数変換器1では、高精度の高価な基準クロック発振器を用いなくても、逓倍パルス周期Tを測定することができる。
【0027】
分周器3は、逓倍パルス列信号を分周数mで分周して出力パルス列信号に変換する。このとき、分周器3は、逓倍パルス列信号の逓倍パルスをm/2個カウントする毎に出力を反転させる(出力パルス列信号の1周期は、逓倍パルスmカウントに相当する)これにより、入力パルス周期が一定であれば、出力パルス列の波形をDuty比50%にすることができる。
【0028】
ここで、逓倍数Nと分周数mについて説明する。
本発明に係る逓倍数Nは、正の整数だけでなく少数を含む値としてもよい。つまり、逓倍数Nは有理数とする。なぜなら、逓倍数Nは、入力パルス列信号と一定の関係を持った逓倍パルス列信号の周期(以下、「逓倍パルス周期」という)を決めるために使用されるものであり、入力パルス周期から逓倍パルス周期が演算できればよいからである。
また、本発明に係る分周数mは、正の整数とする。なぜなら、分周数mは、逓倍パルスの数をカウントするために使用されるものであり、カウンタでは1個より小さい個数をカウントすることはできないからである。
【0029】
周波数変換器1において、逓倍パルスが出力される期間は入力パルス周期に対応する。つまり、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスは、次回の入力パルス周期に対応する出力期間に出力される。したがって、入力パルス周期が一定で安定していれば逓倍パルスが出力される期間も一定で安定し、問題が生じることはない。
【0030】
しかしながら、入力パルス列信号の周期が変化する場合には、以下の問題が発生する。
【0031】
(1)今回の入力パルス周期が前回の入力パルス周期より短くなった場合
今回の入力パルス周期が前回の入力パルス周期より短くなると、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了するまでに新たな入力パルスが検出される。このとき、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了するまで、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力を待つと、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了する時刻がずれてしまう。その結果、逓倍パルスの出力を開始する時刻をそれぞれ記憶する必要が生じるため、出力制御の負荷が増大すると共に出力パルス列信号の応答性が悪くなってしまう。
【0032】
(2)今回の入力パルス周期が前回の入力パルス周期より長くなった場合
今回の入力パルス周期が前回の入力パルス周期より長くなると、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了しても、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力の出力期間が決まらない。そのため、逓倍パルス及び出力パルスが連続して出力されなくなり、応答性が悪くなってしまう。
【0033】
そこで、周波数変換器1では、入力パルスを検出する毎に、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスのパルス数とその逓倍パルス周期を見直し、入力パルス周期の変動による影響が長期に残らないような逓倍パルス列信号を得る。
【0034】
図3は、入力パルス列信号の入力パルス周期が一定の場合の入力パルスと逓倍パルスとの出力関係を示した説明図である。
【0035】
周波数変換器1の逓倍器2では、今回の入力パルスを検出した時刻tと、次回の入力パルスを検出した時刻tk+1から今回の入力パルス周期Tを算出する。そして、今回の入力パルス周期Tと前回の入力パルス周期Tk−1とを比較した結果に応じて逓倍パルス周期Tを決定し、迅速な応答特性を実現している。
【0036】
逓倍器2のカウンタ制御部14は、まず、前回の入力パルスに基づいて出力される逓倍パルスの逓倍パルス周期TN−1を算出する。逓倍パルス周期TN−1は、
N−1=(Tk−1)/N
により算出される。
【0037】
次に、カウンタ制御部14は、次回の入力パルスを検出し、今回の入力パルス周期Tを算出する。このとき、前回の入力パルス周期Tk−1と今回の入力パルス周期Tが等しければ、今回の入力パルス周期Tに対応する出力期間に、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスが、逓倍パルス周期TN−1で逓倍数N(本例では4つ)だけ出力される。
【0038】
図4は、入力パルス列信号の入力パルス周期が短くなるように変化した場合の入力パルスと逓倍パルスとの出力関係を示した説明図である。
【0039】
図4に示すように、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力を完了する前に、次回の入力パルスが検出されると、今回の入力パルス周期Tが前回の入力パルス周期Tk−1よりも短くなる。その場合、カウンタ制御部14は、まず、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに、前回の入力パルスに基づいて出力された逓倍パルス数を検出する。つまり、カウンタ制御部14は、次回の入力パルスを検出するまでに、前回の入力パルスに基づいて出力された逓倍パルス数を検出する。
【0040】
次に、カウンタ制御部14は、検出した逓倍パルス数を逓倍数Nから差し引き、その値を逓倍数Nに加算して逓倍パルス変更数を算出する。つまり、入力パルス周期が短くなるように変化した場合の逓倍パルス変更数は、前回の入力パルスに基づいて出力すべきパルス数から既に出力したパルス数を差し引いて、その値を今回の入力パルスに基づいて出力すべきパルス数に加算したものである。
【0041】
次に、カウンタ制御部14は、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間に、逓倍パルス変更数の逓倍パルスが出力されるように逓倍パルス周期Tを変更する。今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに出力された前回の入力パルスに基づく逓倍パルスのパルス数をbとすると、変更する逓倍パルス周期Tは、
=T/(2N−b)
により算出される。
【0042】
図4に示すように、逓倍数Nが4であり、既に出力したパルス数bが3である場合、逓倍パルス変更数が5となり、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間に、5つの逓倍パルスが出力される。そして、このときの逓倍パルス周期TがT/5となる。
【0043】
このように、周波数変換器1では、今回の入力パルス周期Tが前回の入力パルス周期Tk−1よりも短くなった場合、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間における逓倍パル数及び逓倍パルス周期Tを変更する。これにより、入力パルス列信号の入力パルスに対して逓倍パルス列信号の逓倍パルスが遅れてしまうことを防止ことができる。その結果、逓倍パルス列信号から変換される出力パルス列信号を、入力パルス周期の変動による影響が長期に残らないものにすることができる。
【0044】
図5は、入力パルス列信号の入力パルス周期が長くなるように変化した場合の入力パルスと逓倍パルスとの出力関係を示した説明図である。
【0045】
図5に示すように、今回の入力パルス周期Tが前回の入力パルス周期Tk−1よりも長くなると、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力を完了しても、次回の入力パルスが検出されない。そのため、逓倍パルスが連続して出力されなくなり、入力パルス列信号に対する出力パルス列信号の応答性が悪くなってしまう。
【0046】
そこで、カウンタ制御部14は、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了してから今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまで、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルス周期TN−1で逓倍パルスを出力させる。つまり、カウンタ制御部14は、逓倍パルス出力用カウンタ13を制御し、次回の入力パルスが検出されるまで、逓倍パルス周期TN−1で逓倍パルスを出力させる。
【0047】
その後、次回の入力パルスが検出されると、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始される。このとき、カウンタ制御部14は、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了してから今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに出力された逓倍パルス数を検出する。
【0048】
次に、カウンタ制御部14は、検出した逓倍パルス数を逓倍数Nから差し引いて逓倍パルス変更数を算出する。つまり、入力パルス周期が長くなるように変化した場合の逓倍パルス変更数は、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに出力された余分な逓倍パルス数を今回の入力パルスに基づいて出力すべき逓倍パルス数から差し引いたものである。
【0049】
次に、カウンタ制御部14は、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間に、逓倍パルス変更数の逓倍パルスが出力されるように逓倍パルス周期Tを変更する。前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了してから今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに出力された逓倍パルス数をcとすると、変更する逓倍パルス周期Tは、
=T/(N−c)
により算出される。
【0050】
図5に示すように、逓倍数Nが4であり、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに出力された逓倍パルス数cが1である場合、逓倍パルス変更数が3となり、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間に、3つの逓倍パルスが出力される。そして、このときの逓倍パルス周期TがT/3となる。
【0051】
このように、周波数変換器1では、今回の入力パルス周期Tが前回の入力パルス周期Tk−1よりも長くなった場合、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間における逓倍パル数及び逓倍パルス周期Tを変更する。これにより、逓倍パルス列信号の逓倍パルスを連続して出力させることができ、入力パルス列信号に対して出力パルス列信号を迅速に応答させることができる。
【0052】
例えば、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了してから逓倍パルス周期TN−1で逓倍数Nの逓倍パルスを出力しても、次回の入力パルスが検出されない、つまり、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されないこともある。その場合、カウンタ制御部14は、入力パルス列信号の入力パルスが停止状態であると判定し、逓倍パルス出力用カウンタ13を制御して逓倍パルス列信号の逓倍パルスの発生を停止させる。その後、入力パルスが検出されると、カウンタ制御部14は、逓倍パルス出力用カウンタ13を制御して、逓倍パルス列信号の逓倍パルスの発生を再び開始させる。
【0053】
また、前回の入力パルスに基づく最後の逓倍パルスの出力が完了してから今回の入力パルスに基づく逓倍パルスの出力期間が開始されるまでの時間Ta(図4及び図5を参照)が、逓倍パルス周期TN−1よりも短くなる場合がある。その場合、カウンタ制御部14は、逓倍パルス出力用カウンタ13を介して、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間の開始時刻を制御する。つまり、カウンタ制御部14は、逓倍パルス出力の間隔が短過ぎることがないように、今回の入力パルスに基づいて出力される逓倍パルスの出力期間の開始を遅らせる。
【0054】
この出力期間の開始を遅らせる時間Tdは、
Td=TN−1−Ta
により算出する。
そして、出力期間の開始が時間Tdだけ遅れることにより、今回の入力パルスに基づいて出力される逓倍パルスの出力期間(入力パルス周期Tに相当する)は、出力期間Teに変更される。この出力期間Teは、次式により算出される。
Te=T−Td
=T+Ta−TN−1
【0055】
今回の入力パルスに基づいて出力される逓倍パルスの出力期間が出力期間Teに変更されると、カウンタ制御部14は、出力期間Teに基づいて今回の入力パルスに基づいて出力される逓倍パルスの逓倍パルス周期Tを決定する。
【0056】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の周波数変換器1によれば、まず、逓倍器2を用いて入力パルス列信号を逓倍して逓倍パルス列信号に変換する。そして、逓倍パルス列信号を分周器3で分周することにより、入力パルス列信号の周波数と所定の関係を保ちながら異なった周波数を持つ出力パルス列信号を得る。そのため、特別な切替え操作等を必要とせずに、逓倍数N及び分周数mを変更するだけで小数点を含んだ周波数変換計数Rを設定することができる。
【0057】
上述した実施の形態の周波数変換器1によれば、入力周期測定用カウンタ12による入力パルス周期の測定及び逓倍パルス出力用カウンタ13による逓倍パルス周期の測定を、同一の基準クロックを用いてカウントする。そのため、逓倍パルス周期Tは、基準クロックの周波数f0の値に関係なく算出することができ、高価で高精度の基準クロック発振器や複雑な回路を用いずに高精度な周波数変換を行うことができる。
【0058】
上述した実施の形態の周波数変換器1によれば、前回の入力パルス周期Tk−1に対して今回の入力パルス周期Tが変化すると、前回の入力パルスに基づいて出力する逓倍パルス数及び今回の入力パルスに基づいて出力する逓倍パルス数を変更する。そして、今回の入力パルスに基づいて出力する逓倍パルスの逓倍パルス周期Tを変更する。そのため、入力パルス列信号の入力パルス周期が変化しても、その変化に対して出力パルス列信号を迅速且つ滑らかに応答させることができる。
【0059】
上述した実施の形態の周波数変換器1によれば、分周器3によって逓倍パルス列信号を分周数mで分周するとき、逓倍パルスをm/2個カウントする毎に出力を反転させる。その結果、入力パルス周期が一定であれば、出力パルス列の波形をDuty比50%にすることができる。
【0060】
[実施の形態の変形例]
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。前記実施の形態では、逓倍数Nと分周数mの設定を設定部4によって個別に設定する構成としたが、設定部4によって周波数変換計数Rを設定する構成としてもよい。その場合、CPU(カウンタ制御部14)が、周波数変換計数Rから逓倍数Nと分周数mを決定し、それらの値を逓倍パルス出力用カウンタ13と分周器3に設定する。
【0061】
また、本実施の形態では、ハードウェアとしての設定部を設ける構成としたが、CPU(カウンタ制御部14)の通信機能を利用し、内蔵する不揮発性メモリの値を書き換える構成としてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、分周器を独立したハードウェアとして構成したが、CPU(カウンタ制御部14)に内蔵されたカウンタやソフトウェアによって逓倍パルス列信号の逓倍パルス数をカウントして出力パルス列信号を生成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の周波数変換器の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の周波数変換器の第1の実施の形態により行われる入力パルス列信号から出力パルス列信号への変換を説明する説明図である。
【図3】本発明の周波数変換器の第1の実施の形態に係る入力パルスの周期が一定の場合の入力パルスと逓倍パルスの出力関係を示す説明図である。
【図4】本発明の周波数変換器の第1の実施の形態に係る入力パルスの周期が短くなった場合の入力パルスと逓倍パルスの出力関係を示す説明図である。
【図5】本発明の周波数変換器の第1の実施の形態に係る入力パルスの周期が長くなった場合の入力パルスと逓倍パルスの出力関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1…周波数変換装置、 2…逓倍器、 3…分周器、 4…設定部、 11…基準クロック発振器、 12…入力周期測定用カウンタ、 13…逓倍パルス出力用カウンタ、 14…カウンタ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力パルス列信号を任意の逓倍数で逓倍して逓倍パルス列信号に変換する逓倍器と、
前記逓倍器により変換された逓倍パルス列信号を任意の分周数で分周して出力パルス列信号に変換する分周器と、を備える
ことを特徴とする周波数変換器。
【請求項2】
前記逓倍器は、
前記入力パルス列信号の入力パルス周期を測定する入力周期測定用カウンタと、
前記入力周期測定用カウンタによって測定した入力パルス周期を前記逓倍数で除算して逓倍パルス周期を算出するカウンタ制御部と、
前記カウンタ制御部によって算出された前記逓倍パルス周期毎に逓倍パルスを発生させて逓倍パルス列信号を出力する逓倍パルス出力用カウンタと、を有する
ことを特徴とする請求項1記載の周波数変換器。
【請求項3】
前記逓倍器は、所定の周波数の基準クロックを出力する基準クロック発振器を有し、
前記入力周期測定用カウンタ及び前記逓倍パルス出力用カウンタは、それぞれ前記基準クロックをカウントすることにより、前記入力パルス周期及び前記逓倍パルス周期を測定する
ことを特徴とする請求項2記載の周波数変換器。
【請求項4】
前記入力パルスに基づいた逓倍パルスが出力される出力期間は、次回の入力パルス周期に対応し、
前回の入力パルス周期より今回の入力パルス周期が短くなった場合、前記カウンタ制御部は、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに前回の入力パルスに基づいて出力した逓倍パルス数を前記逓倍数から差し引き、その値を前記逓倍数に加算して逓倍パルス変更数を算出し、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間に前記逓倍パルス変更数だけ逓倍パルスが発生するように逓倍パルス周期を変更する
ことを特徴とする請求項2記載の周波数変換器。
【請求項5】
前記入力パルスに基づいた逓倍パルスが出力される出力期間は、次回の入力パルス周期に対応し、
前回の入力パルス周期より今回の入力パルス周期が長くなった場合、前記カウンタ制御部は、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が完了してから今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでに、前回の入力パルスに基づいた逓倍パルス周期で逓倍パルスを出力し、この出力した逓倍パルス数を前記逓倍数から差し引いて逓倍パルス変更数を算出し、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間に前記逓倍パルス変更数だけ逓倍パルスが発生するように逓倍パルス周期を変更する
ことを特徴とする請求項2記載の周波数変換器。
【請求項6】
前回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力が終了してから前回の入力パルスに基づいた逓倍パルス周期で前記逓倍数の逓倍パルスを出力しても、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されないと、前記カウンタ制御部は、入力パルスが停止状態であると判定し、前記逓倍パルス出力用カウンタを制御して逓倍パルス列信号の逓倍パルスの発生を停止させる
ことを特徴とする請求項5記載の周波数変換器。
【請求項7】
前回の入力パレス周期に対して今回の入力パレス周期が変化した場合、前記カウンタ制御部は、前回の入力パルスに基づく最後の逓倍パルスの出力が完了してから今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間が開始されるまでの時間が、前回の入力パルスに基づいて算出された逓倍パルス周期以上となるように、今回の入力パルスに基づいた逓倍パルスの出力期間の開始時刻を制御する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の周波数変換器。
【請求項8】
前記分周期は、逓倍パルス列信号の逓倍パルス数が前記分周数を2で除算した値に到達する毎に出力を反転させる
ことを特徴とする請求項1記載の周波数変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−303034(P2009−303034A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156832(P2008−156832)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000105501)ココリサーチ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】