説明

咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ及びその製造方法

【課題】通常の食事に類似した咀嚼運動である、食べ物を噛み砕くという状態を捉えた咀嚼能力を測定することが可能であり、咀嚼能力の測定精度や再現性が高い咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】全重量に対する固形分として、糖アルコール50〜74重量%、ポリデキストロース20〜40重量%、ゼラチン5.5〜10重量%及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類0.05〜1重量%を含有する咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼とは、食べ物を噛み砕き、飲み込むという能力であり、咀嚼が健康に重要であるということは社会的に認知されている。しかし、日本は超高齢化社会を迎え、生活の質(QOL)が強く謳われるなか、咀嚼力の低下が原因で食事が困難な高齢者は増加している。また、咀嚼力が充分に発達しないまま成人となる子供も増加している。その原因の一つは食べやすい硬さに加工された加工食品を好む傾向にあり、摂食に伴う咀嚼の回数を減少させる結果となった。習慣的な咀嚼の回数の減少は、歯や顎骨の発達を妨げるばかりではなく、充分に咀嚼しないまま嚥下し、結果的に、消化器官への過度の負担を招来することとなる。
【0003】
そのため、学校給食や病院の歯科などにおいては、食生活の改善や、摂食における咀嚼の重要性が口頭又は文書により説かれている。このように咀嚼の重要性は社会において認知されているが、咀嚼能力を客観的に評価して、正確に評価するシステムは確立しておらず、歯科医療の基本的な課題として重要視されてきた。咀嚼能力を客観的に評価することが可能となれば、病院の歯科において、一般的歯科治療において咀嚼力の回復状態を判断できることや、学校や施設などにおいて子供の咀嚼能力の発達状態を確認できることなど非常に役に立つ。
【0004】
咀嚼能力を客観的に評価する方法として、従来、ピーナッツを用いた篩分法が世界的に用いられてきた。ピーナッツを用いた篩分法においては、測定対象者に約3gのピーナッツを規定回数だけ咀嚼させた後、ピーナッツの全粉砕片を回収して10メッシュの粗さを有する篩で篩分けする。続いて、篩上に残留したピーナッツ粉砕片を80℃で1時間乾燥させた後、該ピーナッツ粉砕片の重量を測定し、該測定結果から篩を通過したピーナッツ粉砕片の重量を算出する。そして、その算出結果から咀嚼前のピーナッツに対する該ピーナッツ粉砕片の重量%を咀嚼能率評価値として算出する。
【0005】
しかし、ピーナッツを用いた咀嚼能率検査方法においては、ピーナッツは天然食品であり大きさや硬さが均一でないため、咀嚼能率の測定精度が低い問題があった。又、咀嚼後のピーナッツ粉砕片を乾燥させねばならないため、咀嚼能率の測定に長い時間がかかる問題があった。
【0006】
そこで、ピーナッツを用いた篩分法に変わる咀嚼機能検査方法の研究が盛んに行われている。例えば、咀嚼判定として変色チューインガムを用いた方法がある(特許文献1)。キサンテン系ラクトン型色素が配合されたチューインガムベースと、アルカリ剤が配合されたチューインガムベースとから構成されており、咀嚼を行うことでガムベースのpHが変化し色調が緑色からオレンジ色から赤色と変化する。この色調の変化度を色彩色差計で測定を行い数値化し咀嚼力を評価する。この方法は咀嚼で不可欠な、粉砕した食物と唾液との混合における咀嚼機能を判定することには有意義であり、短時間での判定、簡便性については利点が多い。しかしながら、定量性という点に関しては不十分である。また、咀嚼とは食べ物を噛み砕き飲み込むということが目的であり、チューイングガムを使用した場合、咀嚼中に硬度及び粘度が変化するので通常の食物とは共通しない点が多い。また、噛み砕くことは出来ず飲み込む直前の状態を評価することが出来ない問題がある。
【0007】
咀嚼により微細に粉砕、すり潰され、咀嚼されないときは球形の形状を有する微粒子を含有する人工食塊を使用した方法がある(特許文献2)。ガムベースに球形の形状を有する微粒子を含有させ、咀嚼後に球形の形状の残存率を測定し咀嚼力を評価する。この方法においても特許文献1と同様にチューイングガムを使用しており、噛み砕くことは出来ず飲み込む直前の状態を評価することが出来ない問題がある。
【0008】
検出用成分としてアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、および/またはエタノールを含有した試験用食品と前記成分に反応する指示薬とを用いた方法がある(特許文献3)。試験用食品を咀嚼した後で、唾液中に含まれるアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体、またはエタノールの含有量を市販の検査紙で検査を行い、検査紙の色の変化を捉える方法で、簡易ではあるが、検査員の目視による評価のため、定量性という点に関して不十分である。
【0009】
2色の着色ワックスからなる2色格子状ワックスキューブを用いた方法がある(特許文献4)。ワックスキューブは物質の品質に関して安定しているが、ワックスを咀嚼する行為は非日常的であり、日常的に摂取している食品の中で類似した食品がなく日常の咀嚼能力を捉えることが困難である。また、ワックスを主原料として作製しているため、被験者の咀嚼能力に適した硬さや食感に変化させることが困難である。
【0010】
蛍光剤とα化したデンプンを含有する穀物粒子の検査剤を用いた方法がある(特許文献5)。前記検査剤を咀嚼した後の口腔内の唾液などを試料として採取し、この試料の一定量をろ紙にスポットし、紫外線照射を行い、蛍光剤の濃度を測定することで咀嚼力を評価するものである。しかし、使用する穀物粒子は天然食品であり品質に差が出ることや蛍光剤の発光を肉眼で確認し、濃度を決定するため定量性という点に関して不十分である。
【0011】
咀嚼することにより流出する色素等を含んだグミゼリーを咀嚼後に分光光度計を用いた比色法により測定する方法がある(特許文献6)。しかしながら、グミキャンディを使用する測定方法は、グミキャンディの精度が非常に重要であり、特許文献6で示されているグミキャンディでは依然として測定の再現性に問題が残っている。
【0012】
また、特許文献7には、エステル化されたカルボキシル基含有多糖類と、天然アミノ酸に由来するα−アミノ基を2つ以上有する化合物とを反応させてなる水膨潤性高分子ゲルが記載されているが、本発明とは組成や目的とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公平7−102218号公報
【特許文献2】国際公開第2008/020588号公報
【特許文献3】特開2009−47604号公報
【特許文献4】特許第3975204号公報
【特許文献5】特許第2691960号公報
【特許文献6】特開2008−220600号公報
【特許文献7】特許第4044291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
検査に用いる試料は通常の食事に類似した咀嚼運動である、食べ物を噛み砕くという状態を捉えることができ、試料の大きさや硬さが一定であること、更に咀嚼能力の測定精度や再現性が高いことが重要である。更に、う蝕の原因となる糖質を含まないことが望まれている。これらの問題をすべて解決した咀嚼能力検査用試料はなく課題として残っている。
【0015】
そこで、本発明は、前記の咀嚼能力検査における諸問題を解決するためになされたもので、通常の食事に類似した咀嚼運動である、食べ物を噛み砕くという状態を捉えた咀嚼能力を測定することが可能であり、咀嚼能力の測定精度や再現性が高い咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
なお、本発明において、咀嚼能力とは、食べ物を噛断(切断)、粉砕する能力をいう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、特定量の糖アルコール、ポリデキストロース、ゼラチンを主成分とし、特定量のエステル化されたカルボキシル基含有多糖類を含有することで、咀嚼能力測定において測定の再現性が高く精度が向上することを見出し、咀嚼能力検査用のノンシュガーグミキャンディとして、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、
[1]固形分として、糖アルコール、ポリデキストロース、ゼラチン及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の組成比率が次の範囲にある咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ:
糖アルコール:全重量に対し50〜74重量%
ポリデキストロース:全重量に対し20〜40重量%
ゼラチン:全重量に対し5.5〜10重量%
エステル化されたカルボキシル基含有多糖類:全重量に対し0.05〜1重量%、
[2]前記エステル化されたカルボキシル基含有多糖類が、アルギン酸プロピレングリコールエステルまたはヒアルロン酸プロピレングリコールエステルである前記[1]に記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ、
[3]前記アルギン酸プロピレングリコールエステルの1重量%水溶液の粘度が、20℃で60〜250mPa・sであること、または、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルのエステル化度が40〜70%である前記[2]に記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ、
[4]前記ゼラチンが300ブルームを超えるゼラチンであり、ゲル強度が20×105〜40×105kg/m2・s、粘着性が5.0×105〜10×105kg/m2・sの範囲である前記[1]〜[3]いずれかに記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ、
[5]糖アルコール、ポリデキストロース及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の成分を含有するキャンディベースを製造する工程、
キャンディベース中にゼラチンを添加した後にグミキャンディ液の温度を70〜80℃に保温する工程、
ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填し、乾燥させずに成形用型を密閉する工程
を有することを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディの製造方法
である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディは、食事を摂取する場合に食べ物を噛み砕き飲み込むという一連の咀嚼運動と同様の咀嚼運動を行い、通常の食事に類似した状態で咀嚼能力を測定することが可能である。本発明により、測定の再現性が高く精度も向上した咀嚼能力測定が実施できる咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディを得ることができる。また、本発明の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディは、ノンシュガー原料で構成されているため、う蝕の原因となりにくいメリットもある。
特に、本発明の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディは、本件出願人が提出している特願2010−190603号に記載の咀嚼能力測定装置に使用することで、極めて精度の高い測定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は実施例1で作製した咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディの形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ(以下、本発明のノンシュガーグミキャンディともいう)は、糖アルコール、ポリデキストロース、ゼラチンおよびエステル化されたカルボキシル基含有多糖類を組成比率が次の範囲:
糖アルコール:全重量に対し50〜74重量%
ポリデキストロース:全重量に対し20〜40重量%
ゼラチン:全重量に対し5.5〜10重量%
エステル化されたカルボキシル基含有多糖類:全重量に対し0.05〜1重量%
とすることを特徴とする。かかる特徴を有することで、測定の再現性が高く精度も向上した咀嚼能力測定ができる咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディを得ることができる。
【0021】
本発明のノンシュガーグミキャンディに使用されるエステル化されたカルボキシル基含有多糖類(以下、「エステル化多糖類」と略称する)とは、カルボキシル基含有多糖類のカルボキシル基のうち、少なくとも1つがアルコール類の水酸基とエステル結合しているものをいい、該カルボキシル基のうち少なくとも2つがエステル結合しているものが好ましい。エステル化多糖類の中では、水溶性であるものが好ましい。
【0022】
エステル化多糖類を構成するアルコール類としては、脂肪族アルコール、芳香性脂肪族アルコール、環状脂肪族アルコールおよび複素環式アルコールが挙げられる。これらの中では、エステル化多糖類の水溶性を考慮すれば、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数が1〜16の脂肪族アルコール、およびエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの2つ以上の水酸基を有する炭素数が2〜16の多価アルコールが挙げられる。
【0023】
エステル化多糖類を構成するカルボキシル基含有多糖類としては、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、ヒアルロン酸などのカルボキシル基含有多糖類およびこれらの生理学的に許容される人工的な誘導体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルプルランなどの通常ではカルボキシル基を含有しない多糖類の人工的な誘導体、部分マレイル化キトサン、部分スクシニル化キトサン、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルキチンなどのカルボキシル基が導入されたキチンまたはキトサンの誘導体などが例示される。これらの中では、アルギン酸およびヒアルロン酸は、人体に対する安全性および人体内での分解性の観点から好ましい。
【0024】
カルボキシル基含有多糖類がアルギン酸である場合、エステル化多糖類としては、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)、アルギン酸エチレングリコールエステル、アルギン酸トリメチレングリコールエステル、アルギン酸ブチレングリコールエステル、アルギン酸ペンチレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有多糖類がヒアルロン酸である場合、エステル化多糖類としては、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステル、ヒアルロン酸エチレングリコールエステル、ヒアルロン酸トリメチレングリコールエステル、ヒアルロン酸ブチレングリコールエステル、ヒアルロン酸ペンチレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0026】
エステル化多糖類の中では、PGAおよびヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、人体に対する安全性および人体内での分解性の観点から好ましい。PGAであれば特に限定されるものではないが、1重量%水溶液の粘度が、20℃で60〜250mPa・sであれば、咀嚼能力の測定の再現性や精度の向上の効果が大きい。
また、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルであれば特に限定されるものではないが、エステル化度が40〜70%であれば、咀嚼能力の測定の再現性や精度の向上の効果が大きい。
【0027】
本発明で使用されるエステル化多糖類の含有量としては、本発明のノンシュガーグミキャンディの全量中0.05〜1重量%であり、0.1〜0.5重量%が好ましい。前記エステル化多糖類の含有量は0.05重量%より少ない場合は効果がなく、咀嚼能力の測定の再現性や精度は向上せず、1.0重量%を超えた場合はグミキャンディ液の粘度が高くなりすぎ、成形用型に容易に充填できないという傾向があり、ノンシュガーグミキャンディの個体差が生じ咀嚼能力測定に影響を及ぼす。
【0028】
ポリデキストロースとは、ブドウ糖、ソルビトール、クエン酸を高圧下で重合してつくられる、とうもろこしを原料とした人工の水溶性食物繊維である。
本発明で使用されるポリデキストロースの含有量としては、本発明のノンシュガーグミキャンディの全量中20〜40重量%であり、23〜27重量%が好ましい。前記ポリデキストロースの量が20重量%より少ない場合は本発明のノンシュガーグミキャンディの食感が柔らかくなり、正確な咀嚼能力を測定することができず、40重量%を超えた場合はグミキャンディ液の粘度が高くなりすぎ、成形用型に容易に充填できないという傾向があり、ノンシュガーグミキャンディの個体差が生じ咀嚼能力測定に影響を及ぼす。
【0029】
ゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚類などの皮、骨などを原料としたゼラチンを用いることができる。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理方法の仕方で食感が変わってくる。通常、ゼラチンはその使用される用途に応じて最適なゲル強度のものを選択、使用されている。本発明のグミキャンディは咀嚼能力を測定するためのグミキャンディであり、硬さは重要な要因となる。本発明で使用されるゼラチンはブルーム値が300を超えることが好ましい。
なお、前記ブルーム値とは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mmを4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルーム値として表したものである。
【0030】
本発明で使用されるゼラチンの含有量は、本発明のノンシュガーグミキャンディの全量中5.5〜10重量%であり、6〜8重量%が好ましい。前記ゼラチンの量が5.5重量%より少ない場合は本発明のノンシュガーグミキャンディの食感が柔らかくなり正確な咀嚼能力を測定することができないことや本発明のノンシュガーグミキャンディの表面がベタつくなど品質に問題が起きる。また、製造方法の関係で前記ゼラチンとしては10重量%を越える量は含有できない。
【0031】
本発明の使用される糖アルコールとしては、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元水飴などが挙げられる。グミキャンディ中で糖アルコールの結晶化が起きないように、糖アルコールの種類を選択し1種または2種以上組み合わせて用いることが好ましい。前記糖アルコールの含有量は、本発明のノンシュガーグミキャンディの全量中50〜74重量%であり、60〜70重量%が好ましい。
【0032】
本発明のノンシュガーグミキャンディは、咀嚼能力を測定するために、カロチノイド色素などの色素を含有させる。咀嚼能力の測定方法について詳しくは後述する。
【0033】
また、本発明のノンシュガーグミキャンディは、所望により、酸味料、香料等を含有してもよい。また、咀嚼能力の測定に影響を及ぼさない程度に食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、高甘味度甘味料(例えばアスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース)等を含有してもよい。
【0034】
本発明のノンシュガーグミキャンディは、咀嚼能力が低い義歯装着者や子供などから咀嚼能力の高い大人まで測定が行うことができるグミキャンディの食感であるという観点から、ゲル強度が20×105〜40×105kg/m2・sの範囲であることが好ましい。本発明のノンシュガーグミキャンディの粘着性は、前記ゲル強度と同じ観点から、5.0×105〜10×105kg/m2・sの範囲であることが好ましい。
前記ゲル強度および粘着性は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0035】
本発明のノンシュガーグミキャンディは咀嚼能力試験に好適に使用されるものであるが、この咀嚼能力測定方法の一例について説明する。
例えば、特開2008−220600号(特許文献6)、特願2010−190603号公報などを基にして咀嚼能力測定を行うことができる。
具体的には、本発明のノンシュガーグミキャンディを被験者に30回自由に咀嚼させたものを咀嚼能力測定対象(グミキャンディ咬断片)とする。グミキャンディ咬断片に付着した唾液や口内残留物などを洗浄し取り除く。洗浄したグミキャンディ咬断片に規定の測定水を注入し、撹拌を行う。グミキャンディ咬断片の表面積から溶出する色素量(色素濃度)を測定することで咀嚼能力が分かるという検査方法が挙げられる。
【0036】
次に、本発明のノンシュガーグミキャンディの製造方法について説明する。
【0037】
グミキャンディの一般的な製造方法としては、スターチモールドに所望の型を抜き、グミキャンディ液を充填し、規定の水分値になるまで乾燥させる。しかし、スターチモールドでは型崩れが起き易く、グミキャンディの形状が一定にならない場合がある。また、乾燥工程を含む場合、全てのグミキャンディの水分値を一定にすることは難しい。市場に流通している菓子としてのグミキャンディであれば問題ないが、本発明のような検査用として測定精度や再現性が求められるグミキャンディの場合、影響を及ぼすことが考えられる。
【0038】
そこで、本発明のノンシュガーグミキャンディの製造方法は、
糖アルコール、ポリデキストロース及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の成分を含有するキャンディベースを製造する工程、
キャンディベース中にゼラチンを添加した後にグミキャンディ液の温度を70〜80℃に保温する工程、
ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填し、乾燥させずに成形用型を密閉する工程、
充填量の誤差が0.1g以内であることを特徴とする。
【0039】
前記製造方法であれば、ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填するため形状は一定となり、乾燥工程を含まないため、水分値や重量にばらつきがない咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディが得られる。
【0040】
まず、糖アルコール、ポリデキストロース及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の成分を混合した後、加熱溶解することでキャンディベースを製造する。各成分の混合の順番については特に限定はなく、加熱方法も従来のグミキャンディの場合と同じであればよい。
【0041】
次に、前記キャンディベース中にゼラチンを添加した後にグミキャンディ液の温度を70〜80℃に保温するが、ゼラチンは予め水で膨潤させておけば取り扱い易く、混合も速やかにできるので好ましい。ゼラチンを混合する際の温度条件としては、ゼラチンが固化しない程度であればよく、例えば、70〜80℃であればよい。
【0042】
次に、ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填し、乾燥させずに成形用型を密閉する。前記ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型は、定法に基づいて作製したものであればよく、例えば、型の形としては特に限定はない。また、成形用型へのグミキャンディ液の充填は、定法に基づいて行えばよい。
次に行う前記成形用型を密閉は、成形用型充填したグミキャンディ液の表面からの水分の蒸発を抑えることを目的としており、密閉方法としては、例えば、成形用型を密閉容器に入れたり、グミキャンディ液が充填された成型用型の上部の開口部を別のシート材で覆うことなどが挙げられるが、特に限定はない。
密閉後に、成形用型を冷却することで、グミキャンディ液を冷却固化して所望の形状のノンシュガーグミキャンディを得ることができる。
【0043】
上記のように成形用型を密閉した後、グミキャンディ液を冷却固化することで、得られるノンシュガーグミキャンディの品質が均一になり易いという利点に加えて、成形用型への充填量に対して得られるノンシュガーグミキャンディの重量の誤差を顕著に低減することができるという利点がある。
例えば、本発明におけるノンシュガーグミキャンディの誤差としては、0.1g以内というレベルで調整することができる。
なお、前記誤差は、グミキャンディ液を所定の型に充填した後、グミキャンディ液がゲル化し固まると型から取り出し、重量を測定することで所望の重量からの誤差として算出することができる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0045】
(実施例1)
表1に示す配合割合で、咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディを作製した。具体的には、マルチトール45重量部、キシリトール17重量部、ソルビトール12重量部、ポリデキストロース25重量部、アルギン酸プロピレングリコールエステル0.2重量部(キミカ社製)を加熱溶解しキャンディベースを作製した。320ブルームゼラチン7重量部に水10重量部を入れて膨潤させたのち加温溶解したゼラチン溶液を前記キャンディベースに加えグミキャンディ液を調整して75℃に保温した。さらに、グミキャンディ液にカロチノイド色素0.2重量部(三栄源FFI社製)、酸味料1.2重量部、適量のオレンジ香料を添加し、均一になるように撹拌混合した後、水分値が18.0%になるように水にて調整した。図1に示すポリプロピレン樹脂成型用型にグミキャンディ液を5.5g充填した後、すぐにアルミニウム製の包装用シートで成形用型のシールを行った。
なお、充填量の誤差は、0.04gであった。
【0046】
実施例1で得られたグミキャンディの物性を調査するためにテクスチャー・アナライザー(「Te xtureAnalyzerTA.XT.plus」、StableMicroSyste ms社製)を使用し、貫入距離200% 、測定速度1mm/s、測定温度20℃で直径2mmの円柱プローブを用いて測定を行った。ゲル強度としてグミの硬さの指標を明らかにすることが可能であり、粘着性としてチューイング性の指標を示すことが可能である。具体的な測定については添付のマニュアルに準じた。本方法で測定した結果、ゲル強度は37×105kg/m2・sで、粘着性8.8×105kg/m2・sであった。
【0047】
<咀嚼能力測定方法>
特願2010−190603号公報で記載された咀嚼能力測定装置を用いて測定を行った。具体的には、実施例1で得られたグミキャンディを縦に4等分、横に2等分する方法で8分割に切断して、擬似的にグミキャンディ咬断片を作製した。そのグミキャンディ咬断片を上記測定装置で測定することでグミキャンディの測定精度と再現性を検証した。
【0048】
<測定精度について>
実施例1で得られたグミキャンディをランダムに30個選択し、全て8分割に切断して前記測定方法を用いて測定を行った。得られた結果から測定のばらつき(測定誤差率)を下記式から導き、測定誤差率が小さい程測定精度が高いとした。
測定誤差率(%)=(A)30個の吸光度の標準偏差/(B)測定水のみの吸光度
(A):グミキャンディ咬断片の受光素子の出力電圧(吸光度)の標準偏差
(B):測定水のみの受光素子の出力電圧(吸光度)
本方法で測定した結果、測定誤差率は0.53%であった。
【0049】
<測定の再現性について>
実施例1のグミキャンディの作製を5回繰り返し、各1回につき30個のグミキャンディを選択し、前記測定条件と同様の方法で測定を行った。得られた結果から測定のばらつき(再現性誤差率)を下記式から導き、再現性誤差率が小さい程測定の再現性が高いとした。
再現性誤差率(%)=(C)平均値の吸光度の標準偏差/(B)の測定水のみの吸光度
(C):各1回につきそれぞれの吸光度の平均値を算出し、5回分の吸光度の平均値から標準偏差を求めた
本方法で測定した結果、再現性誤差率は1.25%であった。
【0050】
(実施例2〜6、比較例1〜4、参考例1)
表1に示す配合割合となるようにした以外は、実施例2〜6、比較例1〜4、参考例1を実施例1と同様の方法でグミキャンディを作製した。参考例1では特開2008−220600号(特許文献6)を基に実施例1と同様に水分値を18.0%に設定し、カロチノイド色素入りグミキャンディを作製した。
【0051】
前記実施例2〜6、比較例1〜4、参考例1のグミキャンディの物性を実施例1と同様の方法で測定し、結果を表2に示した。
表2の結果より、実施例1〜6と比較例1、比較例3は咀嚼能力を測定するために必要なグミキャンディの硬さとチューイング性を有する食感を兼ね備えていた。一方、本発明の条件を満たしていない、比較例2は食感に硬さもチューイング性がなく咀嚼能力を測定することに不適格な物性となっていた。
【0052】
前記実施例2〜6、比較例1〜4、参考例1の咀嚼能力測定を行い、測定誤差率と再現性誤差率を実施例1と同様の方法で測定し、結果を表3に示した。
表3の結果より、本発明の条件に適した実施例1〜6について測定誤差率は1.0%より小さく、再現性誤差率は1.5%より小さい。参考例1は測定誤差率1.73%、再現性誤差率3.94%となっており、実施例1〜6は参考例1と比較して明らかに測定精度や再現性は高いと言える。
中でも、ブルーム値が300を超えているゼラチンを用いた実施例1〜5のグミキャンディは、測定誤差率が0.9%未満であり、かつ再現性誤差率が1.5%未満であり、極めて測定精度や再現性が高いものであった。
また、比較例1、4は参考例1より測定誤差率が高く測定精度が悪い。比較例3は参考例1と比較すると測定誤差率と再現性誤差率が小さく、測定精度や再現性は参考例1よりも高いが充填前のグミキャンディ液の粘度が高く作業性が悪い。比較例2については、前述した通り食感に問題があり不適格であった。
【0053】
表2、3の結果から、咀嚼能力を測定することに適した食感を有し、測定精度と再現性が高い咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディは本発明の条件が適していると言える。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディは、食事を摂取する場合に食べ物を噛み砕き飲み込むという一連の咀嚼運動と同様の咀嚼運動を行い、通常の食事に類似した状態で咀嚼能力を測定することが可能である。本発明により、測定の再現性が高く精度も向上した咀嚼能力測定が実施できる咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディを得ることができる。また、本発明の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディは、う蝕の原因となりにくいメリットもある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分として、糖アルコール、ポリデキストロース、ゼラチン及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の組成比率が次の範囲にある咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。
糖アルコール:全重量に対し50〜74重量%
ポリデキストロース:全重量に対し20〜40重量%
ゼラチン:全重量に対し5.5〜10重量%
エステル化されたカルボキシル基含有多糖類:全重量に対し0.05〜1重量%
【請求項2】
前記エステル化されたカルボキシル基含有多糖類が、アルギン酸プロピレングリコールエステルまたはヒアルロン酸プロピレングリコールエステルである請求項1に記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。
【請求項3】
前記アルギン酸プロピレングリコールエステルの1重量%水溶液の粘度が、20℃で60〜250mPa・sであること、または、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルのエステル化度が40〜70%である請求項2に記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。
【請求項4】
前記ゼラチンが300ブルームを超えるゼラチンであり、ゲル強度が20×105〜40×105kg/m2・s、粘着性が5.0×105〜10×105kg/m2・sの範囲である請求項1〜3いずれかに記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディ。
【請求項5】
糖アルコール、ポリデキストロース及びエステル化されたカルボキシル基含有多糖類の成分を含有するキャンディベースを製造する工程、
キャンディベース中にゼラチンを添加した後にグミキャンディ液の温度を70〜80℃に保温する工程、
ポリプロピレン樹脂で作製した成形用型にグミキャンディ液を充填し、乾燥させずに成形用型を密閉する工程
を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の咀嚼能力検査用ノンシュガーグミキャンディの製造方法。

【図1】
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