説明

噛合チェーン式ドア開閉装置

【課題】乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースを確保すると同時にプラットホームおよび車両間の隙間への乗降客の落下を回避するとともに電車などの車両への安全な乗り降りを実現し、設置作業の煩雑さを回避する噛合チェーン式ドア開閉装置を提供すること。
【解決手段】相互に噛み合って剛直化するとともに分岐自在となる一対の噛合チェーン110と、チェーン収納用溝121が設けられたチェーン案内手段120と、一対の噛合チェーン110を進退自在に駆動する駆動用スプロケット130と、この駆動用スプロケット130に駆動力を供給する駆動源140と、一対の噛合チェーン110によって駆動されるドア部150とを備えた噛合チェーン式ドア開閉装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームに設置されるとともに電車などの車両への乗降口を開閉するドア部を水平方向に進退自在に駆動するドア開閉装置であって、特に、噛合チェーンを進退動作の駆動媒体として採用した噛合チェーン式ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア開閉装置として、駅構内のプラットホームから線路への転落あるいは走行する車両への接触などの危険から乗降客を防護するもの(例えば、特許文献1参照。)、電車などの車両に設けられたスライドドアを電動で開閉するもの(例えば、特許文献2。)、および乗降客が線路に落下することを防止する足場を提供するもの(例えば、特許文献3参照。)がある。
また、引き戸などのドアを開閉する駆動装置として、ボール螺子を備えてドアを進退自在に駆動するボールシリンダが用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−226568号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開2002−227523号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献3】特表2007−520383号公報(段落[0012]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された腰高式プラットホームドア装置では、駆動装置からドアへ駆動力を伝達する回動伝達手段などの伝達機構の構造が複雑であるとともにその部品点数を低減することが困難であるため、装置をその厚み方向に沿って薄く形成してプラットホームにおける装置設置スペースを狭め、乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースをプラットホーム内に確保することが困難であるという問題点があった。
たとえば、プラットホーム内の階段と電車などの車両に臨むプラットホーム終端との間の通路幅はプラットホーム内の他の領域と比べて狭くなるため、一定の車幅を有する車椅子に乗った乗降客が、ラッシュアワーなどの混雑時においてプラットホーム内の階段とプラットホーム終端との間の通路を通行しようとするとその通行が困難になる場合があるという問題点があった。
【0005】
また、特許文献2に開示された電動スライドドア装置では、電動スライドドア装置自体が電車に設けられているため、プラットホームおよび電車間に形成される隙間へ乗降客が落下することを根本的に回避することができないという問題点があった。
また、特許文献3に開示された鉄道車両用の安全足場装置では、鉄道車両自体に設けられた乗降口への乗客の侵入を防止できないため、足場とプラットホームの段差、あるいは足場と鉄道車両の床面との間の段差の発生を完全に回避して鉄道車両への安全な乗り降りを実現することが困難であるとともにプラットホーム内部に装置を設置する工事が必要となって設置作業の煩雑さを回避することが困難になるという問題点があった。
【0006】
また、ボールシリンダなどの直動機構を介してその長手方向にドアを開閉する場合、乗降口を開いた状態における装置全体の長さが、ドア部の幅すなわち直動機構のストロークと直動機構の端に接続されたモータなどの駆動源の長さとを合わせた長さ以上になるため、水平方向に沿った装置全体の長さを短くして設置作業の負担を軽減することが困難であるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースをプラットホーム内に確保すると同時にプラットホームおよび車両間の隙間への乗降客の落下を回避するとともに電車などの車両への安全な乗り降りを実現し、設置作業の煩雑さを回避する噛合チェーン式ドア開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで水平方向に進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝が設けられたチェーン案内手段と、前記一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、該駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源と、プラットホームに設置されているとともに前記一対の噛合チェーンによって駆動されて車両への乗降口を開閉するドア部とを備えた噛合チェーン式ドア開閉装置であって、前記ドア部が、前記一対の噛合チェーンの先端部に固定接続されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ドア部および一対の噛合チェーンを相互に固定接続する連結ピンが、前記一対の噛合チェーンの先端部に付設されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2に記載の構成に加えて、前記チェーン案内手段が、前記一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられているとともに前記剛直方向を長手方向とする矩形状のチェーン案内プレートであることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項4に係る本発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記駆動用スプロケットが、前記チェーン案内プレートに形成されて前記一対の噛合チェーンの一方の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容された状態で前記仮想平面内にチェーン案内プレートとともに設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項5に係る本発明は、請求項3または請求項4に記載の構成に加えて、前記ドア部に軸着されたガイドローラの周面に接するとともに前記剛直方向に延びるガイドレール面を有するガイドレールが、前記チェーン案内プレートの端面に固定設置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0013】
請求項6に係る本発明は、請求項3または請求項4に記載の構成に加えて、前記チェーン案内プレートが、前記ドア部に軸着されたガイドローラの周面に接するとともに前記剛直方向に延びてガイドレール面となる端面を有していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0014】
請求項7に係る本発明は、請求項3ないし請求項6のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記駆動源が、前記仮想平面からずらした状態で前記チェーン案内プレートに固定配置され、前記駆動源の駆動軸が、前記一対の噛合チェーンの分岐方向に沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明の噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで水平方向に進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝が設けられたチェーン案内手段と、一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、この駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源と、プラットホームに設置されているとともに一対の噛合チェーンによって駆動されて車両への乗降口を開閉するドア部とを備えたことによって、ボールシリンダなどの直動機構を配置してドア部を駆動する場合に比べて一対の噛合チェーンの剛直方向すなわちドア部が駆動される水平方向に沿って装置全体の長さを短くして装置の搬送作業を含む装置設置作業の負担を軽減すると同時に乗降口をドア部で閉じることで乗降口への乗降客の不用意な侵入を回避してプラットホームおよび車両間の隙間への乗降客の落下を回避するとともに電車などの車両への安全な乗り降りを実現することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、ドア部が一対の噛合チェーンの先端部に固定接続されていることにより、装置全体の厚みを最小で一対の噛合チェーンの厚みとドア部の厚みとを合わせたサイズまで近づけて装置全体が薄く形成された構造でドア部が一対の噛合チェーンで水平方向に駆動されるため、ドア部による乗降口の開閉を行う装置構成を実現すると同時にプラットホーム内における装置の設置スペースを最小限まで狭めて乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースをプラットホームに確保するとともにプラットホーム内の階段およびプラットホーム終端間の狭い通路幅を広げて一般の乗降客および車椅子に乗った乗降客などの安全な通行を実現し、設置作業の煩雑さを回避することができる。
【0016】
そして、本請求項2に係る噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、請求項1に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置が奏する効果に加えて、ドア部および一対の噛合チェーンを相互に固定接続する連結ピンが一対の噛合チェーンの先端部に付設されていることにより、一対の噛合チェーンと相互に分離された状態で搬送されたドア部がプラットホーム上で一対の噛合チェーンの先端部に取り付けられるため、予めドア部および一対の噛合チェーンの先端部を相互に固定接続した状態で装置を設置する場合に比べて、プラットホーム上において簡便な作業でドア部および一対の噛合チェーンを相互に固定接続して設置作業の煩雑さを回避することができる。
【0017】
そして、本請求項3に係る噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、請求項1または請求項2に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置が奏する効果に加えて、チェーン案内手段が、一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられているとともに剛直方向を長手方向とする矩形状のチェーン案内プレートであることにより、一対の噛合チェーンおよびチェーン案内プレートを厚み方向に相互にずらして配置した場合に比べて装置の厚み方向に沿って装置全体が薄く形成されるため、設置スペースを狭めてプラットホーム内で乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースをより一層広げることができる。
【0018】
そして、本請求項4に係る噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、請求項3に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置が奏する効果に加えて、駆動用スプロケットがチェーン案内プレートに形成されて一対の噛合チェーンの一方の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容された状態で仮想平面内にチェーン案内プレートとともに設けられていることにより、チェーン案内プレートおよび駆動用スプロケットが厚み方向に沿って相互にずれた状態で配置される場合に比べて装置全体の厚みがより一層小さくなるため、装置全体の設置スペース増大を回避してプラットホーム内で乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースをさらに広げることができる。
【0019】
そして、本請求項5に係る噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、請求項3または請求項4に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置が奏する効果に加えて、ドア部に軸着されたガイドローラの周面に接するとともに剛直方向に延びるガイドレール面を有するガイドレールがチェーン案内プレートの端面に固定設置されていることにより、チェーン案内プレートを薄く形成した場合であっても装置の厚みが増大することを回避しつつガイドレール面およびガイドローラの接触幅が十分に確保されるため、ドア部の装置の薄く形成するとともに乗降口を円滑に開閉して電車などの車両へのさらに安全な乗り降りを実現することができる。
【0020】
そして、本請求項6に係る噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、請求項3または請求項4に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置が奏する効果に加えて、チェーン案内プレートがドア部に軸着されたガイドローラの周面に接するとともに剛直方向に延びてガイドレール面となる端面を有していることにより、別途ガイドレールを設けてドア部を進退自在に駆動する場合に比べて部品点数の増大が回避されるため、装置全体の厚みの増大を一層回避するとともに乗降口を円滑に開閉して電車などの車両へのより一層安全な乗り降りを実現することができる。
【0021】
そして、本請求項7に係る噛合チェーン式ドア開閉装置によれば、請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の噛合チェーン式ドア開閉装置が奏する効果に加えて、駆動源が仮想平面からずらした状態でチェーン案内プレートに固定配置され、駆動源の駆動軸が一対の噛合チェーンの分岐方向に沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることにより、駆動源の駆動軸が駆動用スプロケットに交差している場合に比べて駆動用スプロケットの厚み方向すなわち装置の厚み方向に沿って駆動源をチェーン案内プレートに近づけて装置全体の厚みが薄く形成されるとともに直動機構を用いてドア部を駆動する場合に比べて装置の長さが短くなるため、設置作業の煩雑さをより一層回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例である噛合チェーン式ドア開閉装置の使用態様図。
【図2】図1に示した噛合チェーン式ドア開閉装置の設置状態図。
【図3】乗降口を開いた噛合チェーン式ドア開閉装置をドア部側から見た斜視図。
【図4】乗降口を閉じた噛合チェーン式ドア開閉装置をドア部設置側から見た斜視図。
【図5】図3の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た斜視図。
【図6】図4の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た斜視図。
【図7】図5の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た正面図。
【図8】図6の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た正面図。
【図9】図7の噛合チェーン式ドア開閉装置の一部を示した拡大図。
【図10】図1の噛合チェーン式ドア開閉装置を乗降口側から見た側面図。
【図11】図1の噛合チェーン式ドア開閉装置を上側から見た平面図(a)、比較例に係るドア開閉装置を上側から見た平面図(b)。
【図12】図1の噛合チェーン式ドア開閉装置が設置されたプラットホームの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の噛合チェーン式ドア開閉装置は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで水平方向に進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝が設けられたチェーン案内手段と一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットとこの駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源とプラットホームに設置されているとともに一対の噛合チェーンによって駆動されて車両への乗降口を開閉するドア部とを備え、ドア部が一対の噛合チェーンの先端部に固定接続され、乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースをプラットホーム内に確保すると同時にプラットホームおよび車両間の隙間への乗降客の落下を回避するとともに電車などの車両への安全な乗り降りを実現し、設置作業の煩雑さを回避することができるものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0024】
また、本発明の噛合チェーン式ドア開閉装置で用いられる一対の噛合チェーンは、例えば、チェーン幅方向に1列の単列であるもの、チェーン幅方向に2列以上の複列であるものなど何れであっても構わないが、チェーン幅方向に2列以上の複列であるものを採用する場合には、一対の噛合チェーンの一方を構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートが、これに対向する他方の噛合チェーンを構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状に多重かつ強固に噛み合うため、噛合チェーンのチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を実現することができるので、より好ましい。
【0025】
また、本発明の噛合チェーン式ドア開閉装置で用いられる一対の噛合チェーンは、ガイドローラを有していないもの、すなわち、ブシュのみを有するもの、ガイドローラを有するものなど何れであっても構わないが、ブシュのみを有するものを採用する場合には、チェーン部品点数が低減して、チェーン重量の軽量化を図ることができる。
【0026】
また、本発明の噛合チェーン式ドア開閉装置をプラットホーム上に乗降口に対して各一つ配置して片側から乗降口を開閉してもよいし、本発明の噛合チェーン式ドア開閉装置をプラットホーム上の乗降口に対してその両側に各一つ設置して一つの乗降口をその両側から開閉してもよい。
また、本発明の噛合チェーン式ドア開閉装置は、プラットホーム内の落下防止用の防護壁内に収容されるように取り付けられてもよいし、プラットホーム側から噛合チェーンなどを点検することができるように落下防止柵に取り付けられてもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例である噛合チェーン式ドア開閉装置100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である噛合チェーン式ドア開閉装置の使用態様図であり、図2は、図1に示した噛合チェーン式ドア開閉装置の設置状態図であり、図3は、乗降口を開いた噛合チェーン式ドア開閉装置をドア部側から見た斜視図であり、図4は、乗降口を閉じた噛合チェーン式ドア開閉装置をドア部設置側から見た斜視図であり、図5は、図3の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た斜視図であり、図6は、図4の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た斜視図であり、図7は、図5の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た正面図であり、図8は、図6の噛合チェーン式ドア開閉装置を噛合チェーン設置側から見た正面図であり、図9は、図7の噛合チェーン式ドア開閉装置の一部を示した拡大図であり、図10は、図1の噛合チェーン式ドア開閉装置を乗降口側から見た側面図であり、図11は、図1の噛合チェーン式ドア開閉装置を上側から見た平面図(a)と、比較例に係るドア開閉装置を上側から見た平面図(b)であり、図12は、図1の噛合チェーン式ドア開閉装置が設置されたプラットホームの平面図である。
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施例である噛合チェーン式ドア開閉装置100は、プラットホームHに設けられているとともに電車などの車両Tへの乗降口Eを開閉するドア部150を水平方向に進退自在に駆動するものであり、乗降客Pが線路に転落することを回避するとともにドア部150を収納する防護壁B内に設置されて使用される。
【0029】
そして、本実施例の噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図1乃至図12に示すように、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで水平方向に進退自在に駆動される一対の噛合チェーン110と、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝121が設けられたチェーン案内手段120と、一対の噛合チェーン110の一方に係合して一対の噛合チェーン110を進退自在に駆動する駆動用スプロケット130と、この駆動用スプロケット130に駆動力を供給する駆動源140と、プラットホームHに設置されているとともに一対の噛合チェーン110によって駆動されて車両Tへの乗降口Eを開閉するドア部150とを備えている。
これにより、噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図1および図11に示すように、ボールシリンダなどの直動機構210を駆動源240で駆動してドア部250を水平方向に進退自在に駆動するドア開閉装置200に比べて一対の噛合チェーン110の剛直方向すなわちドア部150が駆動される水平方向に沿って装置全体の長さを短くして装置の搬送作業を含む設置作業の負担を軽減するようになっている。
より具体的には、図11に示すように、本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100のドア部150の長さLa1と比較例に係るドア開閉装置200のドア部250の長さLb1が相互に等しい場合、ドア部250の終端から駆動源240の端までの長さLb2よりドア部150の終端から駆動源140の端までの長さLa2が短くなるため、噛合チェーン式ドア開閉装置100は、比較例に係るドア開閉装置200に比べて小型化されて装置の搬送作業を含む設置作業の負担を軽減するようになっている。
また、本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図9および図11に示すように、駆動用スプロケット130が一対の噛合チェーン110の屈曲部で噛合チェーン110に係合するため、装置全体の長さLaをドア部150の長さLa1と駆動用スプロケット130の直径のサイズとを合わせた長さまで短くなるように形成して装置の設置作業における煩雑さを回避するようになっている。
加えて、近年の電車では電車自体に設けられる乗降口の設置数が増え、それに対応してプラットホーム上に設けられる乗降口の設置数が多くなり、しかも電車の停止精度および乗降の際の利便性向上の問題から電車自体に設けられる乗降口に比べてプラットホーム上に設けられる乗降口の幅を広く設計する必要が生じるが、図2に示すように、噛合チェーン式ドア開閉装置100によれば、上下に配置された2つの噛合チェーン式ドア開閉装置100のそれぞれの全長がドア部150の全長に略等しいため、プラットホーム上における噛合チェーン式ドア開閉装置100の設置スペースの増大を回避してプラットホーム上における乗降口の設置スペースを確保することができる。
また、本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図1乃至図8に示すように、噛合チェーン110によって水平方向に進退自在に駆動されるドア部150により乗降口Eを開閉することで乗降口Eへの乗降客Pの不用意な侵入を回避してプラットホームHおよび車両T間の隙間への乗降客Pの落下を回避するとともに電車などの車両Tへの安全な乗り降りを実現するようになっている。
さらに、噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図2乃至図8、図11、図12に示すように、ドア部150が一対の噛合チェーン110の先端部111に固定接続されていることにより、装置全体の厚みTaを最小で一対の噛合チェーン110の厚みとドア部150の厚みとを合わせたサイズまで狭めて装置全体が薄く形成された構造でドア部150が一対の噛合チェーン110で水平方向に駆動されるため、装置全体の厚みTbを有するドア開閉装置200に比べてドア部150による乗降口Eの開閉を行う装置構成を実現すると同時に防護壁Bを含む装置全体の幅W1を最小限まで狭めて乗降客Pが安全に通行することができる十分な通行スペースをプラットホームH上に確保するとともに、プラットホームH内の階段STおよびプラットホームH終端間の狭い通路幅W2が広げられて車椅子に乗った乗降客などの安全な通行を実現するようになっている。
【0030】
さらに、本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図1、図9および図10に示すように、一対の噛合チェーン110およびドア部150を相互に固定接続する連結ピン160が一対の噛合チェーン110の先端部111に付設されていることにより、ドア部150がプラットホームH上で一対の噛合チェーン110の先端部111に取り付けられるため、予め一対の噛合チェーン110の先端部111およびドア部150を相互に固定接続した状態で装置を設置する場合に比べて、プラットホームH上で簡便な作業で一対の噛合チェーン110およびドア部150を相互に固定接続して設置作業の煩雑さを一層回避するようになっている。
【0031】
本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図7乃至図9および図10に示すように、チェーン案内手段120が、一対の噛合チェーン110の剛直方向および分岐方向を含む仮想平面S内に設けられているとともに剛直方向を長手方向とする矩形状のチェーン案内プレートであることにより、一対の噛合チェーン110およびチェーン案内手段120をそれらの厚み方向に相互にずらして配置した場合に比べて装置の厚み方向に沿って一対の噛合チェーン110およびチェーン案内手段120全体の厚みが薄く形成されるため、設置スペースをより一層狭めてプラットホームH内で乗降客が安全に通行することができる十分な通行スペースをより一層広げるようになっている。
【0032】
さらに、本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図9乃至図11に示すように、駆動用スプロケット130が、チェーン案内手段120に形成されて一対の噛合チェーン110の一方の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝122に収容された状態で仮想平面S内にチェーン案内手段120とともに設けられていることにより、チェーン案内手段120および駆動用スプロケット130が厚み方向に沿って相互にずれた状態で配置されることで生じる装置全体の厚みの増大が回避されるため、装置全体のスペースをより一層狭めてプラットホームH内で乗降客Pが安全に通行することができる十分な通行スペースをさらに広げるようになっている。
【0033】
そして、本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図7乃至図10に示すように、ドア部150に軸着されたガイドローラ170の周面に接するとともに剛直方向に延びるガイドレール面181を有するガイドレール180が、チェーン案内手段120の端面に固定設置されていることにより、チェーン案内手段120を薄く形成した場合であっても装置の厚みが増大することを回避しつつガイドレール面181およびガイドローラ170の接触幅が十分に確保されるため、ドア部150を含む装置全体を薄く形成するとともに乗降口Eを円滑に開閉して電車などの車両Tへのさらに安全な乗り降りを実現するようになっている。
【0034】
また、本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100では、チェーン案内手段120の端面が、ドア部150に軸着されたガイドローラ170の周面に接するとともに剛直方向に延びてガイドレール面として兼用されてもよい。
この場合、噛合チェーン式ドア開閉装置100は、別途ガイドレール180を設けてドア部150を進退自在に駆動する場合に比べて部品点数の増大が回避されるため、装置全体の厚みの増大を一層回避するとともに乗降口Eを円滑に開閉して電車などの車両Tへのより一層安全な乗り降りを実現するようになっている。
【0035】
本実施例に係る噛合チェーン式ドア開閉装置100は、図3、図4、図10および図11に示すように、駆動源140が仮想平面Sからずらした状態でチェーン案内手段120に固定配置され、駆動源140の駆動軸141が一対の噛合チェーン110の分岐方向に沿って配置されているとともに直交ギア190を介して駆動用スプロケット130に接続されていることにより、駆動源140の駆動軸141が駆動用スプロケット130に交差している場合に比べて駆動用スプロケット130の厚み方向すなわち装置の厚み方向に沿って駆動源140をチェーン案内手段120に近づけて装置全体の厚みが薄く形成されるとともにボールシリンダなどの直動機構210を駆動源240によって駆動してドア部250を駆動する場合に比べて装置の長さLaが比較例に係るドア開閉装置200の長さLbより短くなるため、設置作業の煩雑さをより一層回避するようになっている。
【0036】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式ドア開閉装置100は、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで水平方向に進退自在に駆動される一対の噛合チェーン110と、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝121が設けられたチェーン案内手段120と、一対の噛合チェーン110の一方に係合して一対の噛合チェーン110を進退自在に駆動する駆動用スプロケット130と、この駆動用スプロケット130に駆動力を供給する駆動源140と、プラットホームHに設置されているとともに一対の噛合チェーン110によって駆動されて車両Tへの乗降口Eを開閉するドア部150とを備え、ドア部150が一対の噛合チェーン110の先端部111に固定接続されていることにより、装置全体の厚みを最小で一対の噛合チェーン110の厚みとドア部150の厚みとを合わせたサイズまで狭めて装置全体が薄く形成された構造でドア部150が一対の噛合チェーン110で水平方向に駆動されるため、ドア部150による乗降口Eの開閉する装置構成を実現すると同時にプラットホームH内における装置の設置スペースを最小限まで狭めて乗降客Pが安全に通行することができる十分な通行スペースを確保するとともに、プラットホームH内の階段およびプラットホームH終端間の狭い通路幅が広げられて車椅子に乗った乗降客などの安全な通行を実現し、予め一対の噛合チェーン110の先端部111およびドア部150を相互に固定接続した状態で装置を設置する場合に比べて、プラットホームH上で簡便な作業で一対の噛合チェーン110およびドア部150を相互に固定接続して設置作業の煩雑さを一層回避することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0037】
100 ・・・ 噛合チェーン式ドア開閉装置
110 ・・・ 一対の噛合チェーン
111 ・・・ 噛合チェーンの先端部
120 ・・・ チェーン案内手段
121 ・・・ チェーン収納用溝
122 ・・・駆動用スプロケット収容溝
130 ・・・ 駆動用スプロケット
140、240 ・・・ 駆動源
141 ・・・駆動源の駆動軸
150、250 ・・・ ドア部
160 ・・・ 連結ピン
170 ・・・ ガイドローラ
180 ・・・ ガイドレール面を有するガイドレール
181 ・・・ ガイドレール面
190 ・・・直交ギア
200 ・・・ドア開閉装置
210 ・・・直動機構
B ・・・ 防護壁
E ・・・ 乗降口
H ・・・プラットホーム
La、Lb ・・・ 装置長さ
La1、Lb1 ・・・ ドア部の長さ
La2、Lb2 ・・・ ドア部の終端から駆動源の端までの長さ
P ・・・乗降客
S ・・・仮想面
T ・・・車両
ST ・・・階段
Ta、Tb・・・ 装置厚み
W1 ・・・ 防護壁の幅
W2 ・・・ 防護壁から階段までの通路幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となることで水平方向に進退自在に駆動される一対の噛合チェーンと、相互に分岐した噛合チェーンを案内して収納するチェーン収納用溝が設けられたチェーン案内手段と、前記一対の噛合チェーンの一方に係合して一対の噛合チェーンを進退自在に駆動する駆動用スプロケットと、該駆動用スプロケットに駆動力を供給する駆動源と、プラットホームに設置されているとともに前記一対の噛合チェーンによって駆動されて車両への乗降口を開閉するドア部とを備えた噛合チェーン式ドア開閉装置であって、
前記ドア部が、前記一対の噛合チェーンの先端部に固定接続されていることを特徴とする噛合チェーン式ドア開閉装置。
【請求項2】
前記ドア部および一対の噛合チェーンを相互に固定接続する連結ピンが、前記一対の噛合チェーンの先端部に付設されていることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置。
【請求項3】
前記チェーン案内手段が、前記一対の噛合チェーンの剛直方向および分岐方向を含む仮想平面内に設けられているとともに前記剛直方向を長手方向とする矩形状のチェーン案内プレートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置。
【請求項4】
前記駆動用スプロケットが、前記チェーン案内プレートに形成されて前記一対の噛合チェーンの一方の側方に開口する凹状の駆動用スプロケット収容溝に収容された状態で前記仮想平面内にチェーン案内プレートとともに設けられていることを特徴とする請求項3に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置。
【請求項5】
前記ドア部に軸着されたガイドローラの周面に接するとともに前記剛直方向に延びるガイドレール面を有するガイドレールが、前記チェーン案内プレートの端面に固定設置されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置。
【請求項6】
前記チェーン案内プレートが、前記ドア部に軸着されたガイドローラの周面に接するとともに前記剛直方向に延びてガイドレール面となる端面を有していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の噛合チェーン式ドア開閉装置。
【請求項7】
前記駆動源が、前記仮想平面からずらした状態で前記チェーン案内プレートに固定配置され、
前記駆動源の駆動軸が、前記一対の噛合チェーンの分岐方向に沿って配置されているとともに直交ギアを介して駆動用スプロケットに接続されていることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか一つに記載の噛合チェーン式ドア開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−246094(P2011−246094A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124152(P2010−124152)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(391004241)大阪車輌工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】