説明

噴霧乾燥装置および顆粒の製造方法

【課題】噴霧乾燥工程により得られる顆粒の粒度分布のバラツキを、単純な構成により効果的に抑制することができる噴霧乾燥装置と、顆粒の製造方法とを提供すること。
【解決手段】回転ディスク30のボス部33が、回転ディスク30の上板34の上部開口部35から回転軸24に沿って上板34の上面から飛び出しており、上板34と下板32との間の隙間を分散隙間αとし、上板34の上面から飛び出しているボス部33の突出高さをγとした場合に、0.5×α<γ<2.5×α、好ましくは0.6×α≦γ<2.5×α、さらに好ましくは0.9×α≦γ≦2.4×α、特に好ましくは0.9×α≦γ≦1.8×αの関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーの噴霧および乾燥を行う噴霧乾燥装置および噴霧乾燥装置を使用した顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
噴霧乾燥装置は、原料粉末、溶媒およびバインダ等により構成されるスラリーを、ノズルや回転ディスク等の噴霧部により噴霧して、熱風で瞬時に乾燥させるための装置である。このような噴霧乾燥装置は、医薬品、ファインセラミックス等において、顆粒を得るために、従来より用いられている。
【0003】
噴霧乾燥装置の噴霧部としては、加圧ノズルや回転ディスク等が主に使用される。噴霧部として回転ディスクを使用した場合においては、加圧ノズルを使用した場合と比較して、より細かい顆粒を得ることができ、そのため、噴霧部としては、回転ディスクが好適に使用されている。
【0004】
上記回転ディスクは、一般に、円板形状を有しており、回転軸により支持される下板、液滴を噴霧するための分散ピン、分散ピン上に形成される上板から構成される。さらに、回転ディスクの上板における上部開口部には、下板上にスラリーを吐出するための吐出ノズルが配置されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
従来の噴霧乾燥装置では、回転軸に固定してある回転ディスクのボス部は、回転ディスクの上板に形成してある上部開口部から保護ケーシング方向に突出させずに、回転ディスクを、保護ケーシングの近くに回転自在に配置することが一般的であった。従来では、噴霧乾燥装置の分散隙間に対する回転ディスクのボス部の軸方向突出高さの比率が、噴霧乾燥工程により得られる顆粒の粒度分布に影響するとは考えられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−61891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、噴霧乾燥工程により得られる顆粒の粒度分布のバラツキを、単純な構成により効果的に抑制することができる噴霧乾燥装置と、顆粒の製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、噴霧乾燥装置の分散隙間に対する回転ディスクのボス部の突出長さの比率が、噴霧乾燥工程により得られる顆粒の粒度分布に大きく影響することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明に係る噴霧乾燥装置は、
スラリーを吐出するための吐出ノズルと、
前記吐出ノズルから吐出されたスラリーを放射状に噴霧する回転ディスクと、
前記吐出ノズルを保持する保持部材が下端に取り付けられ、前記回転ディスクの回転軸が内部に配置してある保護ケーシングと、を有する噴霧乾燥装置であって、
前記回転ディスクが、
前記回転軸に固定してあるボス部と、
前記ボス部と一体に形成された下板と、
上部開口部を持ち、前記下板に対して所定隙間で略平行に固定され、前記回転軸の軸芯方向に沿って上側に位置する上板と、を有し、
前記吐出ノズルの吐出口が、前記上板の上部開口部から前記上板と下板との間の所定隙間内に位置し、
前記ボス部が前記上板の上部開口部から前記回転軸に沿って前記上板の上面から飛び出しており、
前記上板と下板との間の隙間を分散隙間αとし、前記上板の上面から飛び出している前記ボス部の突出高さをγとした場合に、
0.5×α<γ<2.5×α、好ましくは0.6×α≦γ<2.5×α、さらに好ましくは0.9×α≦γ≦2.4×α、特に好ましくは0.9×α≦γ≦1.8×αの関係にあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る噴霧乾燥装置を用いて、たとえば顆粒を製造することで、粒度分布がシャープで、そのバラツキが少ない顆粒を製造することができる。その理由としては、必ずしも明らかではないが、分散隙間αと突出高さγとの関係を所定範囲の比率に設定することで、分散隙間αからのスラリー噴霧の脈動が無くなり、安定したスラリーの噴霧が可能になるためではないかと考えられる。また、回転ディスク内部での残存スラリー付着を低減できるためではないかと考えられる。
【0011】
好ましくは、少なくとも前記吐出口から前記吐出ノズルを保持する保持部材までの間で、前記吐出ノズルが、二重管構造を有している。吐出ノズルを二重管構造にすることで、噴霧乾燥処理のための雰囲気温度が吐出ノズルの内部には伝わりにくくなり、吐出ノズルの内部に位置するスラリーの温度上昇を抑制することができる。そのため、吐出ノズルの流路内を流れるスラリーの粘度調節の最適化が容易になり、顆粒粒度のバラツキをさらに低減することができる。
【0012】
好ましくは、前記保護ケーシングの内部には、前記回転軸を回転自在に保持する軸受けと、前記吐出ノズルにスラリーを送り込むスラリーチューブとが配置してあり、
前記保持部材よりも下側に位置する前記回転ディスクが乾燥筒体の内部上方に位置するように、前記保護ケーシングが、前記乾燥筒体の上部に取り付けられている。吐出ノズルとスラリーチューブとは、必ずしも別部材である必要はなく、一体化されたものでも良い。たとえばスラリーチューブの開口端で、吐出ノズルを構成してもよく、吐出ノズルを特別に用意しなくても良い。
【0013】
好ましくは、前記保護ケーシングは、当該保護ケーシングの下端に向けて外径が小さくなる形状を有し、当該保護ケーシングの下端外周は、前記回転ディスクの外径よりも小さい外径を有する。好ましくは、前記保護ケーシングの下端外周は、前記上部開口部の内径よりも大きな外径を有する。そのため、保護ケーシングが乾燥筒体の上部に取り付けられると、ケーシングの下端外周は、乾燥筒体の内部を流れる乾燥用温風を回転ディスクに導くために都合がよい形状を有している。
【0014】
好ましくは、前記下板と上板とは、前記回転ディスクの外周位置に周方向に沿って所定間隔で配置された分散ピンにより一体化されている。
【0015】
本発明の顆粒の製造方法は、
上記のいずれかに記載の噴霧乾燥装置を用い、
前記回転ディスクを回転させながら、前記吐出ノズルから前記回転ディスクの下板へ向けてスラリーを吐出し、前記スラリーを回転ディスクの外周に位置する乾燥雰囲気中へ吹き飛ばして顆粒を製造することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る顆粒の製造方法では、粒度分布がシャープで、そのバラツキが少ない顆粒を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥装置の全体構成図である。
【図2】図2は図1に示す噴霧乾燥装置の噴霧ユニットの要部側面図である。
【図3】図3(A)は図2に示す噴霧乾燥装置の噴霧ユニットの要部拡大概略図、図3(B)は図3(A)に示すIIIB-IIIB線に沿う一部断面平面図である。
【図4】図4は図3(A)に示す回転ディスクと吐出ノズルとの関係を示す概略断面図である。
【図5】図5は本発明の他の実施形態に係る噴霧乾燥装置における回転ディスクと吐出ノズルとの関係を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る噴霧乾燥システムは、噴霧乾燥装置2と、サイクロン10と、バグフィルター12と、回収機用ブロワー14ととを有する。噴霧乾燥装置2は乾燥筒体4を有し、乾燥筒体4の上部中央に、噴霧ユニット20が装着してあり、噴霧ユニット20の回転ディスク30が乾燥筒体4の内部上方に位置するようになっている。
【0020】
また、乾燥筒体4の上部には、乾燥筒体4の内部に乾燥用温風を供給するための供給ノズル6が設置してある。供給ノズル6から供給されるガスとしては、特に限定されず、乾燥する原料に合わせて適宜選択すればよく、たとえば、空気や窒素などが使用できる。また、ガスの温度も、特に限定されないが、100〜350℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは150〜250℃とする。
【0021】
本実施形態の噴霧乾燥システムにおいては、原料粉末、溶媒およびバインダ等により構成されるスラリーを、スラリーポンプなどを介して噴霧ユニット20に供給し、回転ディスク30から遠心力で乾燥筒体4の内壁に向けて放射状に噴霧する。その噴霧状のスラリーは、熱風供給ノズル6から送られる乾燥用熱風により、乾燥筒体4内にて乾燥され、顆粒状の原料粒(顆粒)が排出口8から取り出される。なお、排出口8からは、排気手段であるサイクロン10、バグフィルター12および回収機用ブロワー14により、顆粒は、噴霧乾燥により気化した溶媒と共に回収される。
【0022】
図2および図3に示すように、噴霧ユニット20は、保護ケーシング22を有し、保護ケーシング22の内部に、回転軸24が軸受け26により回転自在に装着してあり、回転軸24の下端が保護ケーシング22の下端22aから飛び出している。回転軸24の下端には、回転ディスク30が固定してあり、回転軸24の回転により回転軸24の軸芯回りに回転可能になっている。
【0023】
図3(A)に示すように、保護ケーシング22の内部には、複数(図では二つ)のスラリーチューブ44が、回転軸24の回りに所定間隔(図では180度対称位置)で配置してあり、それぞれのチューブ44の下端開口部が吐出ノズル40の吐出口42を構成してある。
【0024】
チューブ44の下端開口部である吐出ノズル40は、保護ケーシング22の下端22aに装着してある保持部材23により保持される。保護ケーシング22の下端22aでは、回転軸24の下端と吐出ノズル40の下端がケーシング22の外部に露出する以外は、保持部材23により保護ケーシング22の内部が密閉されている。
【0025】
チューブ44は、たとえばステンレス、銅、アルミニウム、鉄、真鍮などの金属製チューブ、あるいはテフロン(登録商標)、ビニル系樹脂、ナイロン、シリコーン、フッ素樹脂、ポリプロピレンなどの合成樹脂チューブで構成される。チューブ44の内径は、好ましくは2〜12mmであり、チューブ44の厚みは、好ましくは0.3〜3mmである。
【0026】
図3(A)および図3(B)に示すように、回転ディスク30は、下板32と、上板34と、分散ピン36とを有する。下板32は、円盤形状を有し、その中央部に、ボス部33が軸方向に突出して一体に形成してある。ボス部33は、回転軸24に対してナットなどで着脱自在に固定される。ボス部33の軸方向高さγに関しては、後述する。
【0027】
上板34は、薄板リング形状であり、中央部には、回転軸24よりも十分に大きい内径を有する上部開口部35が形成してある。上板34と下板32との間に位置する複数の分散ピン36は、ディスク30の外周に沿って略等間隔に配置してあり、上板34と下板32とを連結している。後述するように、吐出ノズル40の吐出口42から吐出されたスラリーは、回転する回転ディスク30の遠心力により、上板34と下板32との間で、分散ピン36の間の隙間から放射状に吐出(噴霧)される。回転ディスク30の回転速度は、特に限定されないが、好ましくは回転速度3000〜8000rpmである。
【0028】
保護ケーシング22の下端22aに具備してある保持部材23により保持してある一対の吐出ノズル40は、図4に示すように、その吐出口42が、上板34の上部開口部35から上板34と下板32との間の所定隙間38内に位置するようになっている。しかも、各吐出ノズル40は、その吐出口42の近傍に位置する吐出ノズル40の流路の軸線X2が、回転軸24の軸線X1に対して平行になっている。
【0029】
なお、本実施形態において、吐出口42の近傍とは、たとえば図4に示す吐出口42から吐出ノズル40の流路の軸線X2方向に沿って、0mmより大きく40mm以下、好ましくは6〜24mmである。
【0030】
図4に示すように、吐出ノズル40の吐出口42は、上板34と下板32との間の所定隙間38内に位置し、しかも、下板32の内底面32aからの隙間C1が、好ましくは1〜20mm、さらに好ましくは3〜7mmと成る位置に配置される。また、吐出ノズル40の吐出口42の外周とボス部33の外周との隙間C2は、好ましくは0.1〜21mm、さらに好ましくは5〜15mmである。このような関係とすることにより、ボス部33の外周位置にスラリーが貯留することなどを、より効果的に防止することができる。
【0031】
図3(A)および図4に示すように、本実施形態では、ボス部33が上板34の上部開口部35から回転軸24に沿って上板34の上面から飛び出している。上板34の上面から飛び出しているボス部33の突出高さをγとした場合には、0.5×α<γ<2.5×α、好ましくは0.6×α≦γ<2.5×α、さらに好ましくは0.9×α≦γ≦2.4×α、特に好ましくは0.9×α≦γ≦1.8×αの関係にある。
【0032】
ボス部33の突出高さγは、小さすぎても大きすぎても、噴霧乾燥工程により得られる顆粒の粒度分布に悪影響を与えることが本発明者等の実験により明らかになった。γ/αが小さすぎても大きすぎても、粗粒が多くなり、しかも粒度のバラツキが大きくなる。なお、γ/αが大きすぎる場合に、粗粒が出来やすく粒度のバラツキが大きくなるのは、おそらく、回転ディスク30が乾燥筒体4の内部における熱風に曝され、回転ディスク内部でスラリーが固まりやすくなるためではないかと考えられる。
【0033】
分散隙間αは、特に限定されないが、フェライト顆粒などを製造する場合には、好ましくは5〜40mmである。また、ボス部33の上端と、保持部23の仮面との隙間δ(図3(A)参照)は、好ましくは5〜40mm、さらに好ましくは6〜25mmである。
【0034】
また、図2および図3(A)に示すように、保護ケーシング22は、当該保護ケーシング22の下端22aに向けて外径が小さくなる形状を有する。すなわち、保護ケーシング22は、比較的に外径が大きなケーシング本体22bの下方に小径部22cを有し、それらをテーパ部22dで連結してある。
【0035】
この小径部22cの外径は、回転ディスク30の上部開口部35の内径よりも大きな外径を有し、回転ディスク30の外径よりも小さい外径を有する。その結果、図1に示すように、保護ケーシング22が乾燥筒体4の上部に取り付けられると、ケーシング22の下端外周は、乾燥筒体4の内部を流れる乾燥用温風を回転ディスク30に導くために都合がよい形状を有している。ケーシング22の下端外周は、整流特性に優れた形状を有している。
【0036】
噴霧ユニット20によるスラリーの具体的な噴霧方法を次に示す。まず、図4に示す吐出ノズル40の吐出口42から、回転ディスク30の下板32の内底面32aにスラリー50が液滴の状態で滴下される。次いで、回転ディスク30の回転による遠心力により、このスラリー液滴が、下板32の内底面32a上を外周側に移動していき、分散ピン36の下部周面に付着する。そして、分散ピン36に付着したスラリー液滴は、遠心力により、分散ピン36の表面上を上昇していき、分散ピン36の上端付近において分散ピン36を離れ噴霧されると考えられる。
【0037】
分散ピン36の上方に形成されている上板34は、スラリー液滴の噴霧を安定化させる機能を有しており、上板34を形成することにより、得られる顆粒の粒度分布をシャープにすることができる。
【0038】
噴霧ユニット20より噴霧されたスラリーの液滴は、図1に示す乾燥筒体4の内部で、たとえば螺旋状に浮遊回転し、その間に、供給ノズル6から供給されるガスにより乾燥されて顆粒となり、最終的に、乾燥材料排出口8より取り出される。本実施形態によると、良好な粒度分布を有し、かつ、不純物の混入が極めて少ない顆粒を得ることができる。
【0039】
本実施形態に係る噴霧乾燥装置2を用いて、たとえば顆粒を製造することで、粒度分布がシャープで、そのバラツキが少ない顆粒を製造することができる。
【0040】
なお、本実施形態に用いられる顆粒としては、セラミック顆粒、フェライト顆粒、食品類、医薬品類、有機化合物類などが好ましく用いられる。
第2実施形態
【0041】
図5に示す本実施形態の噴霧乾燥装置は、第1実施形態の噴霧乾燥装置と以下に示す以外は、同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0042】
図5に示すように、本実施形態では、吐出口42の近傍に位置する吐出ノズル40の流路の軸芯X2と、回転軸24の軸芯X1との交差角度θ1は、0度より大きく、好ましくは3度以上90度以下、さらに好ましくは5〜90度である。本実施形態では、吐出口42の近傍に位置する吐出ノズル40の流路の軸芯X2と、下板32の内底面32aとの交差角度θ2は、内底面32aの平面が回転軸X1に対して垂直であれば、交差角度θ1から一義的に決定される。ただし、本発明では、内底面32aの平面が回転軸X1に対して垂直である必要はなく、交差角度θ2は、特に限定されない。
【0043】
ただし、内底面32aの平面は、回転軸X1に対して90度、あるいは90度以上に傾斜していることが好ましい。すなわち、交差角度θ1が0度より大きく、好ましくは3度以上90度以下、さらに好ましくは5〜90度であることを前提として、交差角度θ2は、90度、あるいは90度よりも大きいことが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る噴霧乾燥装置では、吐出ノズル40から吐出されたスラリーが、回転ディスク30の外周から良好に飛び出し、粒度分布がさらにシャープで、よりバラツキが少ない顆粒を製造することができる。
その他の実施形態
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0046】
たとえば上述した実施形態において、吐出ノズル40の吐出口42から吐出ノズル40を保持する保持部材23までの間で、吐出ノズル40が、二重管構造を有していてもよい。すなわち、吐出ノズル40は、保護ケーシング22の内部から連続してあるスラリーチューブ44の外周を保護チューブで覆うことにより構成しても良い。
【0047】
保護チューブとしては、特に限定されないが、たとえば合成樹脂製チューブ、金属製チューブ、セラミック製チューブなどで構成してある。保護チューブと内側チューブとの間には、空気層を設けて断熱性を向上させても良い。なお、保護チューブは、吐出ノズル40aの部分のみでなく、スラリーチューブ44の全長にわたり形成しても良い。
【0048】
少なくとも吐出ノズル40を二重管構造にすることで、噴霧乾燥処理のための雰囲気温度が吐出ノズル40の内部には伝わりにくくなり、吐出ノズル40の内部に位置するスラリーの温度上昇を抑制することができる。そのため、吐出ノズル40aの流路内を流れるスラリーの粘度調節の最適化が容易になり、顆粒粒度のバラツキをさらに低減することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
【0050】
まず、出発原料として、セラミック原料を用意し、セラミック原料とバインダーと純水とを撹拌・混合し、次いで、配合粉砕機を使用して配合・粉砕を行い、セラミックスラリーを作製した。
【0051】
次いで、得られたセラミックスラリーについて、図1〜4に示す噴霧ユニット20を有する噴霧乾燥装置2を使用して噴霧乾燥を行った。なお、噴霧乾燥の条件としては、回転ディスク30の回転数を3500rpm、乾燥用熱風の温度を190℃とした。
【0052】
また、本実施例においては、図4に示す隙間C1は5mmであり、隙間C2は7mmであった。図3(A)に示す分散隙間αを10mm、隙間δを10mmと一定に設定し、ボス部33の突出高さγを変化させ、γ/αを0.5、0.6、0.9、1.8、2.4、2.5と設定した場合に、図1に示す排出口8から得られた顆粒の粒度分布を調べた結果を表1および表2に示す。
【0053】
なお、表1および表2において、#325、#250、#200、#145、#100、#70は、それぞれ、粒度メッシュを示し、篩い目開きの0.045mm、0.063mm、0.075mm、0.109mm、0.150mm、0.201mmに対応する。また、表1において、#325下、#250下、#200下、#145下、#100下、#70下の下欄に示す数字は、それぞれのγ/αの噴霧乾燥装置において、対応する粒度メッシュを通過した粉体の重量%を示してある。
【0054】
また、表1において、#325下から#70下までの下欄に示す数字は、積算値を示し、#70上の下欄に示す数字は、#70の粒度メッシュを通過せずに残った粉体(粗粒)の重量%を示し、#70下の下欄に示す数字と、#70上の下欄に示す数字とを足すと100重量%になる。さらに、表1における数字は、対応するγ/αの装置を用いて、それぞれ5回、噴霧乾燥を行って得られた顆粒の粒度分布の平均値である。
【0055】
同様に、表2における数字は、対応するγ/αの装置を用いて、それぞれ5回、噴霧乾燥を行って得られた顆粒の粒度分布のバラツキを示す標準偏差σの平均値である。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

評価1
【0058】
表1および表2より、γ/αが0.5または2.5では、#70上の粗粒の割合(重量%)が多いと共に、標準偏差σが大きく、粒度分布のバラツキが大きいことが確認された。すなわち、表1および表2に示す結果より、γ/αは、0.5超2.5未満、好ましくは0.6以上2.5未満、さらに好ましくは0.9以上2.4以下、特に好ましくは0.9以上1.8以下である場合に、粗粒の割合を少なくできると共に、粒度分布のバラツキを抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0059】
2… 噴霧乾燥装置
4… 乾燥筒体
6… 供給ノズル
10… サイクロン
12… バグフィルター
14… 回収機用ブロアー
20… 噴霧ユニット
22… 保護ケーシング
22a… 下端
22b… ケーシング本体
22c… 小径部
22d… テーパ部
23… 保持部材
24… 回転軸
30… 回転ディスク
32… 下板
33… ボス部
34… 上板
35… 上部開口部
36… 分散ピン
38… 所定隙間
40… 吐出ノズル
42… 吐出口
44… スラリーチューブ
50… スラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを吐出するための吐出ノズルと、
前記吐出ノズルから吐出されたスラリーを放射状に噴霧する回転ディスクと、
前記吐出ノズルを保持する保持部材が下端に取り付けられ、前記回転ディスクの回転軸が内部に配置してある保護ケーシングと、を有する噴霧乾燥装置であって、
前記回転ディスクが、
前記回転軸に固定してあるボス部と、
前記ボス部と一体に形成された下板と、
上部開口部を持ち、前記下板に対して所定隙間で略平行に固定され、前記回転軸の軸芯方向に沿って上側に位置する上板と、を有し、
前記吐出ノズルの吐出口が、前記上板の上部開口部から前記上板と下板との間の所定隙間内に位置し、
前記ボス部が前記上板の上部開口部から前記回転軸に沿って前記上板の上面から飛び出しており、
前記上板と下板との間の隙間を分散隙間αとし、前記上板の上面から飛び出している前記ボス部の突出高さをγとした場合に、
0.5×α<γ<2.5×αの関係にあることを特徴とする噴霧乾燥装置。
【請求項2】
少なくとも前記吐出口から前記吐出ノズルを保持する保持部材までの間で、前記吐出ノズルが、二重管構造を有している請求項1に記載の噴霧乾燥装置。
【請求項3】
前記保護ケーシングの内部には、前記回転軸を回転自在に保持する軸受けと、前記吐出ノズルにスラリーを送り込むスラリーチューブとが配置してあり、
前記保持部材よりも下側に位置する前記回転ディスクが乾燥筒体の内部上方に位置するように、前記保護ケーシングが、前記乾燥筒体の上部に取り付けられている請求項1または2に記載の噴霧乾燥装置。
【請求項4】
前記保護ケーシングは、当該保護ケーシングの下端に向けて外径が小さくなる形状を有し、当該保護ケーシングの下端外周は、前記回転ディスクの外径よりも小さい外径を有する請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧乾燥装置。
【請求項5】
前記保護ケーシングの下端外周は、前記上部開口部の内径よりも大きな外径を有する請求項4に記載の噴霧乾燥装置。
【請求項6】
前記下板と上板とは、前記回転ディスクの外周位置に周方向に沿って所定間隔で配置された分散ピンにより一体化されている請求項1〜5のいずれかに記載の噴霧乾燥装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の噴霧乾燥装置を用い、
前記回転ディスクを回転させながら、前記吐出ノズルから前記回転ディスクの下板へ向けてスラリーを吐出し、前記スラリーを回転ディスクの外周に位置する乾燥雰囲気中へ吹き飛ばして顆粒を製造することを特徴とする顆粒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33269(P2011−33269A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179701(P2009−179701)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】