説明

回線制御方法,サーバクライアントシステム,クライアント端末,サーバ装置,回線制御プログラムおよびそのプログラムの記録媒体

【課題】 ダイヤルアップ中に電話着信があると電話網5からサーバ装置2を経由してクライアント端末1に通知され,クライアント端末1の応答ボタンの操作によりダイヤルアップが切断され,サーバ装置2が電話網5経由でクライアントの通信端末b32に着信させるサービスシステムにおいて,発信者を長い時間待たせることなく,また着信不完了になることなく,着信クライアントのモデム4を含む端末条件に合わせた着信を行うことを可能にする。
【解決手段】 クライアント端末1は,ダイヤルアップ切断時間を測定し,次回の通知まで測定したダイヤルアップ切断時間を保持し,次回の応答時に保持していたダイヤルアップ切断時間をサーバ装置2へ通知する。サーバ装置2では,クライアント端末1からのダイヤルアップ切断時間を受信し,そのダイヤルアップ切断時間分,着信保留を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,音声通話とダイヤルアップによるデータ通信とを同一電話回線で行うクライアントのダイヤルアップ切断契機での電話サービス開始方法に関し,特に,モデム切断時間完了時間の製品などによるばらつきにより呼損となっていたものを,適宜,着信保留時間を調整することを可能とし,呼を成立させる回線制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】音声通話とダイヤルアップによるデータ通信とを同一電話回線で行うクライアントが,ダイヤルアップ切断契機で電話サービスを確実に享受する一つの例としては,回線が「空き」と判断した後でサービスを開始すればよい。これを実現するために,交換機で回線の空塞状況を監視する方式が考えられる。しかしながら,この方式では,サービス提供を行う全ての交換機に空塞管理機能が必要とされる。
【0003】そこで,簡易的にこのサービスを実現する方式として,クライアントがモデムに対して切断指示を行い,その後にクライアントがサーバ装置にモデムの切断を起動したことを通知し,サーバ装置は通知を受け取ると,ダイヤルアップ回線の切断時間を見越したタイマ(着信保留タイマ)をサーバ装置で起動させ,タイマ満了後に通信端末もしくはモデムに対して着信を行い,サービスを開始する方式が考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】クライアント端末で使用するモデムの切断時間には,使用しているハードウェア,ソフトウェアの構成条件によりばらつきがある。このばらつきによってモデムでダイヤルアップ回線の切断処理が行われている途中で,通信端末もしくはモデムに対して着信が行われる可能性があり,この場合には,発信を行った通信端末は話中状態となり,通話が成立しなくなることになる。
【0005】そのため,さまざまなクライアント端末について通話を成立させるために,着信保留タイマを充分に長くする必要がある。しかし,着信保留タイマを長くする分,着信が行われるまでサービスの成立に時間がかかるため,発信者を待たせてしまうという問題があった。
【0006】本発明は上記問題点の解決を図り,発信者を長い時間待たせることなく,また着信不完了になることなく,着信クライアントのモデムを含む端末条件に合わせた着信を行うことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は,上記課題を解決するため,電話網と加入者線で接続されダイヤルアップでIP(Internet Protocol) 網と接続されているクライアント端末と,電話網およびIP網と接続されているサーバ装置とで構成され,ダイヤルアップ中に電話着信があると電話網からサーバ装置を経由してクライアント端末に通知され,クライアント端末の応答ボタンの操作によりダイヤルアップが切断されサーバ装置が電話網経由でクライアントの通信端末に着信させるサービスシステムにおいて,クライアント端末に,ダイヤルアップ切断時間を測定する手段と,次回の通知までダイヤルアップ切断時間を保持する手段とを持たせる。これにより,クライアント端末毎のサービス起動保留時間を決めることができるようにする。
【0008】また,サーバ装置にクライアント端末で測定されたダイヤルアップ切断時間に応じた着信保留を行う手段を待たせる。これにより,ダイヤルアップ切断前のサービス起動の回避および発信者の無効保留時間を最短にすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を,図面を用いて詳細に説明する。本発明の実施の形態として,すでにインターネットなどにダイヤルアップで接続中の電話回線に電話の着信が割り込んできた場合に,ダイヤルアップ回線を切断し,空き回線に対して着信を行うサービスを例にとり説明する。
【0010】図1は,本発明を適用する通信システムの一例を示す構成図である。クライアント端末1は,モデム4を経由して加入者線b52・交換機53に接続され,ダイヤルアップでISP (Internet Service Provider)6に接続されている。通信端末a31も,加入者線a51を経由して交換機53に接続されており,電話網5を経由して他の通信端末と発着信が可能である。サーバ装置2は,電話網5とIP網7に接続された装置であり,クライアント端末1にサービスを提供している。
【0011】通信端末b32とモデム4とは,同一加入者線b52で接続されているものとする。クライアント端末1からISP6へのダイヤルアップ接続は,PPP(Point to Point Protocol) を用いて行うが,本機能は既存の機能を用いる。
【0012】クライアント端末1は,既存のクライアント端末通信手段14,モデム制御手段11を持ち,さらに本発明に係るモデム4の切断時間測定手段12,切断時間保持手段13を持つ。モデム4を制御するモデム制御手段11は,クライアント端末1のオペレーティング・システム(OS)に搭載しているものを利用してもよいし,モデム専用ドライバであってもよい。
【0013】切断時間測定手段12は,モデム4へのダイヤルアップ切断信号送信から切断完了信号受信までの時間を測定する。切断時間保持手段13は,切断時間測定手段12により得られた切断時間を,次回,サーバ装置2へ通知するまで保持する。また,クライアント端末通信手段14は,サーバ装置2との通信を行う。
【0014】サーバ装置2は,サーバ装置通信手段23,サービス制御手段24,ログイン管理手段22と,本発明に係る着信保留タイマ管理手段21を持つ。サーバ装置通信手段23は,交換機53やクライアント端末1との通信を行う。サービス制御手段24は,電話網5やクライアント端末1のサービス制御を行う。着信保留タイマ管理手段21は,クライアント端末1から受信した着信応答信号に設定された切断時間を着信保留タイマ時間としてタイマに設定し,タイマ設定時間満了後にサービス制御手段24へ通知する。
【0015】図2は,クライアント端末1がサーバ装置2からサービスを受けるためのシーケンス例である。
【0016】クライアントがサーバ装置2で提供するサービスを利用する際には,ISP6に対してPPPを用いてダイヤルアップでの接続を行う。クライアント端末1は,ISP6経由でサーバ装置2にログインし,サーバ装置2は,IPアドレス,ダイヤルアップ回線の電話番号を登録する(ステップS1)。
【0017】ダイヤルアップ接続中に通信端末a31から通信端末b32への着信要求があった場合,交換機53から電話網5経由でサーバ装置2に着信電話番号を含む着信要求を伝達する。サーバ装置2は,着信電話番号からクライアント端末1がログイン時に登録した電話番号があるかを参照する(ステップS2)。
【0018】登録電話番号と着信電話番号とが一致した場合,対応するIPアドレスに対してIP網7およびISP6経由で着信要求をクライアント端末1に送る。クライアント端末1は着信要求を受信し,電話の着信があったことを表示する。クライアントが応答ボタンを操作し,電話のダイヤルアップを切断し,電話の着信を受けることを選択する。クライアント端末1は,クライアント端末通信手段14を用いてサーバ装置2に対して着信応答および前回のモデム切断時間を通知する。なお初回は,モデム切断時間は測定されていないため送信しない。
【0019】その後,モデム制御手段11を用いてモデム4に対してダイヤルアップの切断を行う。同時に切断時間測定手段12を用いてモデムの切断時間の測定を開始し,モデム4からのダイヤルアップの切断完了の通知を受けた時点で測定を終了する。測定結果は,切断時間保持手段13を用いて次回の着信応答の通知まで保持する。なお,モデム4の切断時間は,クライアント端末1のハードディスク等に保存し,次回サービスまで消えないようなデータとして保持する(ステップS3)。
【0020】サーバ装置2は,クライアント端末1から送られた前回のモデム切断時間を含む着信応答を受信すると,着信保留タイマ管理手段21を用いて前回のモデム切断時間分のサービス要求(着信要求)保留タイマを設定し,タイマを起動する(ステップS4)。
【0021】サーバ装置2は,サービス要求保留タイマの設定時間が満了となった時点で交換機53に対して通信端末a31から通信端末b32への着呼を指示する(ステップS5)。これにより,通信端末b32から通信端末a31への通話が開始される。
【0022】上記のとおり,本発明では,ダイヤルアップ切断直後に電話の着信が受けることが可能となるように,クライアント端末1ではモデムの切断時間を測定し,次回のサービス起動時に通知するステップS3を特徴とする。またサーバ装置2は,クライアント端末1から通知されたモデム切断時間分だけのタイマを設定しモデム切断直後に交換機53に対してサービス(着信)要求するステップS4,ステップS5を特徴とする。
【0023】以上のクライアント端末1およびサーバ装置2における処理は,コンピュータとソフトウェアプログラムとによって実現することができ,そのプログラムは,コンピュータが読み取り可能な可搬媒体メモリ,半導体メモリ,ハードディスク等の適当な記録媒体に格納して,そこから読み出すことによりコンピュータに実行させることができる。また,そのプログラムは通信回線を経由して他のコンピュータからダウンロードすることができ,それをインストールして実行させることもできる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように,電話網と加入者線で接続されダイヤルアップでIP網と接続されているクライアント端末と,電話網およびIP綱と接続されているサーバ装置で構成され,ダイヤルアップ中に電話着信があると電話網からサーバ装置を経由してクライアント端末に通知・表示され,クライアント端末の応答ボタンの操作によりダイヤルアップが切断されてサーバ装置が電話網経由で通信端末に着信させるサービスシステムにおいて,クライアント端末がダイヤルアップ切断時間を測定し,次回の通知までダイヤルアップ切断時間を保持してサーバ装置へ通知し,サーバ装置がクライアント端末から通知されたモデム切断時間分着信保留を行うことにより,ダイヤルアップ切断前に着信が行われて話中状態になることを回避し,発信者には着信者のモデム切断時間分のみ着呼まで待機させればよくなり,無効保留の削減と着信完了率を上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した通信サービスの一例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明を適用した通信サービスの一例を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
1 クライアント端末
11 モデム制御手段
12 切断時間測定手段
13 切断時間保持手段
14 クライアント端末通信手段
2 サーバ装置
21 着信保留タイマ管理手段
22 ログイン管理手段
23 サーバ装置通信手段
24 サービス制御手段
31 通信端末a
32 通信端末b
4 モデム
5 電話網
51 加入者線a
52 加入者線b
53 交換機
6 ISP
7 IP網

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電話網と加入者線で接続され,ダイヤルアップで通信網と接続されているクライアント端末と,前記電話網および前記通信網と接続されているサーバ装置とで構成されるサービスシステムであって,ダイヤルアップ中に電話着信があると前記電話網から前記サーバ装置を経由して前記クライアント端末に通知・表示され,前記クライアント端末の応答操作によりダイヤルアップが切断され,前記サーバ装置が前記電話網経由でクライアントの通信端末に着信させるサービスシステムにおける回線制御方法において,前記クライアント端末がダイヤルアップ切断時間を測定する過程と,次回の通知まで前記測定したダイヤルアップ切断時間を保持する過程と,前記保持したダイヤルアップ切断時間を前記サーバ装置へ通知する過程と,前記サーバ装置が前記クライアント端末から通知されたダイヤルアップ切断時間を受信する過程と,受信したダイヤルアップ切断時間分,着信保留を行う過程とを有することを特徴とする回線制御方法。
【請求項2】 電話網と加入者線で接続され,ダイヤルアップで通信網と接続されているクライアント端末と,前記電話網および前記通信網と接続されているサーバ装置とで構成されるサービスシステムであって,ダイヤルアップ中に電話着信があると前記電話網から前記サーバ装置を経由して前記クライアント端末に通知・表示され,前記クライアント端末の応答操作によりダイヤルアップが切断され,前記サーバ装置が前記電話網経由でクライアントの通信端末に着信させるサービスシステムにおいて,前記クライアント端末は,ダイヤルアップ切断時間を測定する手段と,次回の通知まで前記測定したダイヤルアップ切断時間を保持する手段と,前記保持したダイヤルアップ切断時間を前記サーバ装置へ通知する手段とを備え,前記サーバ装置は,前記サーバ装置が前記クライアント端末から通知されたダイヤルアップ切断時間を受信する手段と,受信したダイヤルアップ切断時間分,着信保留を行う手段とを備えることを特徴とするサーバクライアントシステム。
【請求項3】 電話網と加入者線で接続され,ダイヤルアップで通信網と接続されているクライアント端末と,前記電話網および前記通信網と接続されているサーバ装置とで構成されるサービスシステムであって,ダイヤルアップ中に電話着信があると前記電話網から前記サーバ装置を経由して前記クライアント端末に通知・表示され,前記クライアント端末の応答操作によりダイヤルアップが切断され,前記サーバ装置が前記電話網経由でクライアントの通信端末に着信させるサービスシステムにおけるクライアント端末において,ダイヤルアップ切断時間を測定する手段と,次回の通知まで前記測定したダイヤルアップ切断時間を保持する手段と,前記保持したダイヤルアップ切断時間を前記サーバ装置へ通知する手段とを備えることを特徴とするクライアント端末。
【請求項4】 電話網と加入者線で接続され,ダイヤルアップで通信網と接続されているクライアント端末と,前記電話網および前記通信網と接続されているサーバ装置とで構成されるサービスシステムであって,ダイヤルアップ中に電話着信があると前記電話網から前記サーバ装置を経由して前記クライアント端末に通知・表示され,前記クライアント端末の応答操作によりダイヤルアップが切断され,前記サーバ装置が前記電話網経由でクライアントの通信端末に着信させるサービスシステムにおけるサーバ装置において,前記サーバ装置が前記クライアント端末から通知されたダイヤルアップ切断時間を受信する手段と,受信したダイヤルアップ切断時間分,着信保留を行う手段とを備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項5】 電話網と加入者線で接続され,ダイヤルアップで通信網と接続されているクライアント端末と,前記電話網および前記通信網と接続されているサーバ装置とで構成されるサービスシステムであって,ダイヤルアップ中に電話着信があると前記電話網から前記サーバ装置を経由して前記クライアント端末に通知・表示され,前記クライアント端末の応答操作によりダイヤルアップが切断され,前記サーバ装置が前記電話網経由でクライアントの通信端末に着信させるサービスシステムにおけるクライアント端末のコンピュータに実行させるためのプログラムであって,ダイヤルアップ切断時間を測定する処理と,次回の通知まで前記測定したダイヤルアップ切断時間を保持する処理と,前記保持したダイヤルアップ切断時間を前記サーバ装置へ通知する処理とを,コンピュータに実行させるための回線制御プログラム。
【請求項6】 電話網と加入者線で接続され,ダイヤルアップで通信網と接続されているクライアント端末と,前記電話網および前記通信網と接続されているサーバ装置とで構成されるサービスシステムであって,ダイヤルアップ中に電話着信があると前記電話網から前記サーバ装置を経由して前記クライアント端末に通知・表示され,前記クライアント端末の応答操作によりダイヤルアップが切断され,前記サーバ装置が前記電話網経由でクライアントの通信端末に着信させるサービスシステムにおけるサーバ装置のコンピュータに実行させるためのプログラムであって,前記サーバ装置が前記クライアント端末から通知されたダイヤルアップ切断時間を受信する処理と,受信したダイヤルアップ切断時間分,着信保留を行う処理とを,コンピュータに実行させるための回線制御プログラム。
【請求項7】 請求項5または請求項6記載の回線制御プログラムを記録したことを特徴とする回線制御プログラムの記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−304325(P2003−304325A)
【公開日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−107245(P2002−107245)
【出願日】平成14年4月10日(2002.4.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】