回転体を用いた振動エネルギー変換発電システム
【課題】高効率の振動エネルギー変換発電システムを提供する。
【解決手段】本発明は、振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、逆回転を防止するラッチ機構、整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む振動エネルギー変換発電機構である。振動収穫機構は、振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータ、ロータの中心軸部に連結した自在継手および自在継手の出力軸を含み、出力軸方向の力に対して自在継手が回転して、ロータの回転に活用する機構を有する。
【解決手段】本発明は、振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、逆回転を防止するラッチ機構、整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む振動エネルギー変換発電機構である。振動収穫機構は、振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータ、ロータの中心軸部に連結した自在継手および自在継手の出力軸を含み、出力軸方向の力に対して自在継手が回転して、ロータの回転に活用する機構を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギーを、効率的に力学的エネルギーを経由して電気エネルギーに変換する振動エネルギー変換発電システム、特に振動エネルギー変換・伝達装置およびそれを用いた携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は日常活動をしながらも常に情報を得る手段を追求している。たとえば、腕時計、携帯電話、携帯ラジオ、携帯用小型カメラ、携帯ラジオ等種々の携帯機器を身につけている。これらの携帯機器の動力源は電気エネルギーであるため、これらのウエアラブルな装置に通常は乾電池や蓄電池等の小型バッテリーを装着しているが、バッテリーを付加した分装置が重くなるという問題の他に、使用中にエネルギーがなくなる(電池切れ)という問題が発生する。しかし、人間は常に活動しているから、人間の運動からエネルギーを電気エネルギーとして取り出すことができれば、ウエアラブルな装置は電池等の補充なく半永久的に動作する。
【0003】
人間の運動エネルギーの中で振動エネルギーは最も一般的で身近なエネルギーである。振動エネルギーを回転エネルギーに変換する方法は、たとえば自動巻腕時計では古くから使用されている。近年はさらにこれを電気エネルギーに変換する方式も種々提案されている。たとえば、特許文献1には、腕時計等の携帯機器に設けられて、携帯時の振動を受けてロータが回転し、ロータの回転を出力軸から取り出して、出力軸に連結したマグネットを回転させ、ステータに設けた発電用コイルで生じる電流を蓄電(蓄力)することが開示されている。特許文献1では、ロータと出力軸との連結はロータの回転軸に出力軸を同軸に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−257961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、振動がロータの回転面(X−Z方向)の方向の場合には出力軸は振動エネルギーを有効に取出すことができるが、ロータの回転面(X−Z方向)と直交する成分(Y方向)の振動成分は、出力軸の軸線方向の力であるから、出力軸の回転に寄与できないとう不都合がある。更に、Y方向の振動成分は出力軸を軸線方向に押し付ける力を付与することになり、出力軸の回転を阻害するという不都合がある。一方、携帯機器が受ける振動は、X−Z方向の二次元に限らず、Y方向を加えた3次元方向の振動を受けることになるから、上述したようにY方向の振動成分が蓄力に寄与できないので蓄力効率が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、人間の活動をベースとした振動エネルギーを回転エネルギーに変換し、さらには電気エネルギーとして発電する新しいシステムを提供することを目的とし、特に振動エネルギーを蓄力する蓄力効率を高めることができる蓄力装置及び携帯機器の提供を目的とするものであり、以下の特徴を有する。
(1)本発明は、振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、(オプションとして、回転方向の逆回転を防止するラッチ機構)、整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含むことを特徴とする振動エネルギー変換発電機構である。
【0007】
(2)本発明は、上記に加えて、ラッチ機構は配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とし、また第1の変速機構に手巻き機構が付随していること、さらに、第1の変速機構における減速比は1/5であり、および/または第2の変速機構における増速比は5であることを特徴とする。
(3)本発明は、上記に加えて、第2の変速機構にさらに変速制御機構が付加されるとともにゼンマイが完全巻き上げ状態であることを検出してゼンマイを自力解放する機構が付加されており、および/または振動変換発電機構に充放電制御回路を含むことを特徴とする。
(4)本発明は、上記に加えて、充放電制御回路において充放電の状況を監視しながら、変速制御機構によりゼンマイを断続的に解放でき、さらに、第1の変速機構および/または第2の変速機構に配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とする。
【0008】
(5)本発明は、上記に加えて、あるいは独立に、振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータと、ロータの中心軸部に連結した自在継手と、自在継手の出力軸に連結したエネルギー蓄積部とを備え、自在継手はその出力軸に対して互いに軸線が交差するロータ側軸を備え、ロータ側軸の回転により出力軸が回転してロータの運動エネルギーをエネルギー蓄積部に伝達することを特徴とする振動エネルギー変換発電機構である。
(6)本発明は、上記に加えて、ロータは中心軸部に孔が形成してあり、自在継手は、ロータの中心軸部の孔内に配置してあり、球体と球体の半分以上を囲み内面が球面の一部を形成している受部とを備え、ロータ側軸はその軸線が球体の中心を通り球体から突出する一方及び他方の軸部を有し、一方及び他方のロータ側軸部はロータの回転面の面内方向でロータの中心軸部に取付けてあることを特徴とする。
【0009】
(7)本発明は、上記に加えて、自在継手の出力軸方向と垂直面内方向の力に対して、ロータは当該垂直面内方向に回転可能であり、自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータは自在継手と一体で出力軸方向に回転可能であるとともに、出力軸方向と垂直面内方向においてもロータは回転可能であることを特徴とする。
(8)本発明は、上記に加えて、ロータは、ロータの軸受枠部およびロータ錘部の間に可倒部が存在する可倒構造となっており、自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータのロータ錘部側は可倒部を中心として回転可能であり、自在継手の出力軸方向の力を受けたとき、可倒構造によってロータの出力軸方向と垂直面内方向における回転を抑制する作用を軽減できることを特徴とする。
(9)本発明は、上記に加えて、自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構がロータのロータ錘部の出力軸方向の両外側に備わっており、あるいは、ロータのロータ錘部の外周が略U字状に形成され、U字状の空間に自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構が備わっていることを特徴とする。
【0010】
(10)本発明は、上記に加えて、制限機構にベアリング付設され、自在継手の出力軸方向の力に対してロータが動作したときにロータ錘部がベアリングに当たるとともにベアリングが回転して、ロータをロータの出力軸方向と垂直面内方向へ回転させることを特徴とする。
(11)本発明は、上記に加えて、エネルギー蓄積部は、自在継手の出力軸の回転により巻き締めるぜんまいと、ぜんまいの開放により回転する回転用フレームと、回転用フレームに固定されたマグネットと、マグネットに対向するコイルと、コイルに生じた電流を蓄電する蓄電部とを備えることを特徴とする。
(12)本発明は、上記の振動変換発電機構を備え、携帯しているときの振動を受けてロータが回転することを特徴とする携帯機器である。携帯機器とは、たとえば、腕時計、携帯電話、モバイル端末、レコーダ、音楽再生機、電子書籍、ゲーム機器、携帯パソコン等をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明の振動エネルギー変換発電機構は、人間の運動の1つである振動エネルギーを回転エネルギーに変換し、さらにその回転エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー変換発電システムである。小さな振動でも効率的に回転エネルギーに変換する。さらに、その回転エネルギーを蓄力した後電気エネルギーに変換するので、回転エネルギーが小さくても十分な発電をすることができ、振動エネルギーを効率良く回転エネルギーに変換することができるとともに、安定した発電量を得ることができる。また、回転エネルギーが小さい場合でも第1の変速機構で回転速度を減速して通常のゼンマイを巻き上げて力量を蓄積(蓄力)し、その力量を用いて発電することができる。すなわち小さなトルクでゼンマイをどんどん巻き上げて、蓄力機構に充分なトルク量を確保した後で、第2の変速機構で増速することにより充分な回転速度で発電することができる。振動収穫機構の後に一方向回転整列機構を付随することにより、振動の往復運動による二方向の回転も利用できるので、発電効率をさらに向上することができる。さらに、逆回転を防止するラッチ機構を備えているので、エネルギー変換ロスが少ない。またラッチ機構に配向性を有する微細毛を用いることにより、システムを小型化できる。
【0012】
さらに、ロータは自在継手により出力軸に連結されているからロータの回転面(X−Z方向)に限らず、Y方向の振動成分はロータを出力軸の軸線方向に振れさせるので、出力軸に作用するY方向の力による回転の阻害を防止できる。また、Y方向の力により振れたロータが戻るときには、自在継手が回転しているから、そのロータが戻るときの力の一部をX−Z成分の力として取り出すことができる。即ち、三次元の振動エネルギーを出力軸の回転力に変換してエネルギー蓄積部に蓄積できるから、蓄力効率を高めることができる。また、自在継手はロータの中心軸部に形成した孔内に挿入して取付けてあるから、自在継手がロータから突設する寸法を小さくでき、装置の小型化を図ることができる。さらに、自在継手は球体の中心を通る一方側及び他方ロータ側軸をロータの中心軸の孔部に取付けてあるから、ロータ側軸をロータ内に収めることができ、ロータ側軸がロータから突出しないので、この点においても装置の小型化を図ることができる。
【0013】
さらに、ロータは可倒構造を有するので、出力軸に作用するY方向の力による回転の阻害をさらに防止できる。また、ロータのロータ錘部のY方向の動作を制限する制限機構が備わっているので、ロータ錘部の破損や他の機器に及ぼすダメッジを軽減できる。また、この制限機構にはY方向の動きをいなすベアリングが付随するので、Y方向の力成分をX−Z方向のロータ回転力に変換することができる。エネルギー蓄積部は振動エネルギーを簡易な構成で電力として蓄積することができる。
さらに本発明の振動変換発電機構を備えた携帯機器は、振動エネルギー変換効率の良い発電システムを有するので、エネルギー補充の少ない長寿命化の携帯が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の振動エネルギー変換発電機構のシステム構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る蓄力装置の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、ぜんまい部の構成を示す平面図であり、(a)は解放時であり、(b)は蓄力時の作用を示す図である。
【図4】図4は、ロータに自在継手を連結した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施の形態おける作用を示す図であり、ロータと自在継手の部分を示す側面図である。
【図6】図6は、自在継手を抜き出して示す側面図である。
【図7】図7は、自在継手を抜き出して示す斜視図である。
【図8】図8は、自在継手の球体とロータの連結部を抜き出して示す横断面図である。
【図9】図9は、本発明のY方向移動(回転)制限機構を説明する図である。
【図10】図10は、ロータのY方向移動(回転)を抑制するY方向移動(回転)制限機構の別の実施形態を示す図である。
【図11】図11は、本発明の可倒構造を有するロータを示す図である。
【図12】図12は、振り子構造の周波数特性を示すグラフである。
【図13】図13は、振り子(ロータ)構造の違いによるエネルギー発生量を比較する図である。
【図14】図14は、可倒式回転錘(ロータ)および(Y方向)自在継手並びにY方向移動(回転)制限機構を合わせ持つシステムを示す図である。
【図15】図15は、一方向回転整列機構の一例を示す図である。
【図16】図16はラッチ機構の一例を示す図である。
【図17】図17は、微細毛を用いた回転ラッチ機構を示す模式図である。
【図18】図18は、微細毛を用いて逆回転を規制したラッチ機構付き回転体の別の実施形態を示す図である。
【図19】図19は、本発明の振動エネルギー変換発電機構を腕時計に適用した実施例を示す図である。
【図20】図20は、人体が動いているときに受ける振動スペクトルとパワースペクトルの関係を示す図である。
【図21】図21は、S字ぜんまいの(a)解放時および(b)蓄力時の状態を示す模式図である。
【図22】図22は、S字ぜんまいおよび通常のぜんまいのトルクと蓄力量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、振動を回転エネルギーに変換し、さらにその回転エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー変換発電システムに関する。さらに、振動エネルギーのロスを最小化して、効率良く回転エネルギーに変換する機構に関する。
【0016】
図1は、振動エネルギー変換発電機構のシステム構成を示す図である。本発明の基本は人体の運動に由来する振動エネルギーを機械的エネルギー(特に回転エネルギー)、さらに電気的エネルギーに変換することであり、図1の構成図に示すように、最低限、振動エネルギーを力学的エネルギー(力量、あるいは機械的エネルギー、あるいは回転エネルギー)に変換する振動収穫機構111およびその振動収穫機構111で変換された力量を用いて発電する発電機構116からなる。振動収穫機構111は振動を効率良く力量として利用できる形態に変換するシステムであり、たとえば人体の腕の動作という振動を自動巻腕時計等で使用される回転錘の振り子振動として取り出す機構である。人体の腕の動きは3次元の動作であるが、本発明はこの3次元動作を効率良く回転錘の振り子振動として変換する。
【0017】
振動収穫機構111で得られた力量を、一方向回転整列機構112を通して第1の変速機構により減速して蓄力機構114に移転し蓄積する。振動は周期性がある(たとえば、振り子振動は往復運動なので動作方向が2通りある)ので、そのまま回転運動として取り出して第1の変速機構に伝達すると、回転方向が2方向になりエネルギーロスが大きい。そこで振動収穫機構111で得られた力量を一方向に整列する機構が必要となる。そのシステムが一方向回転整列機構112である。一方向回転整列機構112には従来から種々の方法があり、本発明においてはこれらの方法を適宜選択して採用することができる。たとえば、腕時計の自動巻の巻き上げ機構に採用されている切り換え車方式、マジックレバー方式やペラトン方式を適用することができる。
【0018】
図15は、一方向回転整列機構の一例を示す図である。一方向回転整列機構に切換車408、409およびラチェット車413、423を用いている。振動収穫機構111の振り子振動による回転は、切換かな414、424と同期して切換車408、409に伝達される。切換車408、409のそれぞれは、切換かな414、424と一体になったラチェット車413、423を備えている。切換車408の回転は第1の変速機構410に伝達されるように、たとえば切換車408の歯車および第1の変速機構410の歯車411が噛み合っている。切換車408、409を構成する切換歯車412、422は、回転自在な切換つめ415、425と、切換つめ415、425の一端を押圧し、かつ他端をラチェット車413、423の歯面に対して付勢する付勢ばね416、426を備えている。切換つめ415、425は固定ピン417、427で切換歯車412、422に固定されている。また、付勢ばね416、426も固定ピン429、430で切換歯車412、422に固定されている。これらのラチェット車413、423の回転規制方向(逆回転防止方向)は互いに反対方向であり、振動収穫機構111の振り子振動による回転はがいずれの方向(ある方向とそれの逆方向の2方向しかない)に回転しても、第1の変速機構410は常に一方向に回転する。
【0019】
たとえば図15において、振動収穫機構111の振り子振動の一方向の振動(回転)によって、切換車408では切換かな414を介してラチェット車413が反時計方向に回転すると、ラチェット車413が切換つめ415でロックされないので、ラチェット車413の回転は切換歯車412に伝達しない。一方、振動収穫機構111の振り子振動の他方向(逆方向)の振動よって、切換車409では切換かな424を介してラチェット車423が反時計方向に回転すると、ラチェット車423の規制方向が切換車408と異なるために、ラチェット車423が切換つめ425でロックされるので、ラチェット車423と同期して切換歯車422も反時計方向(R8方向)に回転する。この回転が切換車408側の切換歯車412に伝達され(切換歯車412と切換歯車422はたとえば歯車で噛み合っている)、切換歯車412は時計方向(R7方向)に回転し、さらにこの切換歯車412の回転により第1の変速機構410の歯車411が反時計方向(R9方向)に回転する。
【0020】
次に、振動収穫機構111の振り子振動の逆振動(逆回転)によって、切換車408では切換かな414を介してラチェット車413が時計方向に回転すると、ラチェット車413が切換つめ415でロックされるので、ラチェット車413の回転に従い切換歯車412も時計方向(R7方向)へ回転する。この切換歯車412の回転により第1の変速機構410の歯車411が反時計方向(R方向9)に回転する。一方、振動収穫機構の逆回転によって、切換車409では切換かな424を介してラチェット車423が時計方向に回転すると、ラチェット車423の規制方向が切換車408と異なるために、ラチェット車423が切換つめ425でロックされないので、ラチェット車423の回転は切換歯車422に伝達しない。以上のように、振動収穫機構111がどのように回転しても、第1の変速機構410の歯車411は一定方向{図15では反時計方向(R9方向)}へのみ回転する。
【0021】
さらに、この機構112には逆回転を防止するラッチ機構が配置されている。たとえば、ゼンマイを巻き上げていくとその復元力で巻き戻そうとする力も働き、巻き戻されるとエネルギーが大きくロスしてしまう。これを防止するための機構がラッチ機構である。すなわち、ラッチ機構とは、一方向のみに回転して回転毎に係止し逆回転を防止する機構であり、たとえばつめ車とつめでなるラチェット機構やドーボ機構がある。
【0022】
図16はラッチ機構の一例を示す図である。ゼンマイ(渦巻きバネ)511を内蔵したつめ車512において、ゼンマイ511の外側の一端はつめ車512の内面に固定され、ゼンマイの他端(ゼンマイ中心)は支軸513に固定されている。つめ車512はラチェット様の歯車がついており、支持台に固定ピン513で回転自在に固定された(ラッチ機構の)つめ514がつめ車512のラチェット歯に嵌合できるようになっている。ゼンマイ511がつめ車512の内面に巻かれる(たとえば、図16の矢印R6方向につめ車を回転させてゼンマイ511を巻く場合)と、その復元力でつめ車512は矢印R6とは逆方向への回転力が働くが、ラッチ機構のつめ514がつめ車512の歯に係止しているため逆方向への回転が抑えられている。すなわちゼンマイ511の逆回転が規制されているので、ゼンマイに回転力を蓄積(蓄力)することができる。充分な蓄力が行なわれたら、つめ514をつめ車512の歯からはずせば(ラッチ機構解除)、ゼンマイ511が一気に力を解放できる。このゼンマイ511は、振動収穫機構の振動エネルギーを回転エネルギーとして蓄積したエネルギー形態と考え、解放されたゼンマイの回転力を第1の変速機構を用いて減速すれば良い。また回転方向が2通り存在すればこのようなラッチ機構に一方向回転整列機構を組合せれば良い。S字ゼンマイのようなゼンマイの場合にも回転方向が2通り存在するので、この一方向回転整列機構を使用できる。尚、S字ゼンマイを使用することによって、トルクを一定(フラットトルク)にできるので、S字ゼンマイを巻き上げる力とS字ゼンマイを解放する力をほぼ一定にでき、発電能力を一定に保持できるという利点がある。
【0023】
図16に示すラッチ機構は、ラチェット機構の一例であるが、他の手段を用いても良い。たとえば、ストッパを設けて逆回転を防止することもでき、そのストッパを外せば(ラッチ機構解除)逆回転させることもできる。尚、ラッチ機構は、本発明の蓄力機構にも使用できる。たとえば、蓄力機構で用いるゼンマイが、図16で示すゼンマイ(渦巻きバネ)511であると考えれば良い。
【0024】
一方向回転整列機構112を通して振動収穫機構111の振動エネルギーを回転エネルギーに変換して、第1の変速機構113の輪列(歯車)により減速する。第1の変速機構113の減速によりトルク力を高めて蓄力機構114のゼンマイを巻き上げる。第1の変速機構113は複数の歯車からなる輪列機構で、蓄力機構114のゼンマイを効率良く巻き上げることができるように輪列機構の変速比を調節することができるようになっている。また、蓄力機構114のゼンマイのオーバーチャージを効果的に排除する機構を取り付けても良い。さらに、振動収穫機構111の力量の伝達や第1の変速機構の変速比等の調節やオーバーチャージ等をコントロールする制御機構(たとえば、センサー付きIC)を設けても良い。尚、振動収穫機構11の力量が不足している場合や緊急に発電する必要がある場合などには、自力でゼンマイを回転できるように手動の手巻き機構117を第1の変速機構113や蓄力機構114に備えても良い。この手動の手巻き機構117の方式も手動式腕時計などに使用されている従来方法を採用することができる。
【0025】
蓄力機構114に用いるゼンマイは通常の単一材料(たとえば、高炭素鋼、ステンレス鋼、Co-Ni合金)からなるもので、腕時計や置き時計などに使用されている従来のゼンマイを使用することができる。また、このゼンマイは香箱に収納されても良い。蓄力機構114のゼンマイが充分に巻き上がった後に(完全蓄力状態で)、第2の変速機構115に接続して輪列(歯車)機構を用いて、ゼンマイの解放(巻き戻し)による回転運動を増速させ、発電機構116で発電する。発電機構116は、たとえば磁石とコイルを用いた電磁誘導発電であり、薄さが要求される場合はフラットタイプとすれば良い。発電機構116は充放電制御機構119により発電速度や発電量が制御されている。たとえば、発電機構116において発電された電気により負荷120で仕事をするが、充放電制御機構119はその負荷量に応じて放出する電気量をコントロ−ルできる。また、発電速度を制御するために充放電制御機構119からの信号を変速機制御機構118に送り、第2の変速機構の変速比を変更するなどして、複数の歯車から構成される第2の変速機構の輪列の回転速度を調整することができる。負荷120は末端の電子機器であり、たとえば携帯電話や時計等の携帯機器であるが、電流(電荷)むらを吸収したり、蓄電したりする電気二重層キャパシタや二次電池を備えても良い。充放電制御機構や変速機制御機構として充放電制御回路や変速機制御回路等を組み込んだLSIを搭載しても良い。
【0026】
次に、図1に示す本発明の振動エネルギー変換発電機構のシステム構成の具体的実施形態を説明する。本実施の形態に係る蓄力装置1は、例えば腕時計に搭載されており、蓄積した電気エネルギーを腕時計に内蔵された発振回路等の電源として用いるものである。
【0027】
蓄力装置1は、図2に示すように、ロータ3と、自在継手5と、エネルギー蓄積部7とを備えている。ロータ3は、振動を受けて中心軸Gの回りを回転するものであり、図4に示すように、正面視扇型形状を成し、フレーム(ロータ腕部)9の外周側部に錘11が固定されている。尚、図4においては、ロータを扇型形状としているが、半円形形状や逆扇型形状(円形から扇型形状を抜いた形状)等他の形状を有しても良い。
【0028】
ロータ3のフレーム9にはロータ3の回転中心に正面視円形の孔部13が形成されており、孔部13に自在継手5が挿入されている。
【0029】
自在継手5は、図6〜図8に示すように、球体15と、球体15の受部17と、球体15に固定したロータ側軸部19a、19bと、受部17に固定した出力軸21とを備えている。この自在継手5は、ツエッパ型ジョイント(Rzeppa joint)またはボール式等速ジョイントと呼ばれているものである。
【0030】
球体15は、ロータ3の静止状態における中心軸G(図2参照)に沿って複数のボール溝23が形成されており、ボール溝23には各々ボール25が配置されている。また、球体15には、ロータ3の静止状態における中心軸Gに直交する面内方向には、球体15からロータ側軸部19a、19bが突設されている。ロータ側軸部19a、19bは各軸線が球体の中心を通っている。これらのロータ側軸部19a、19bは、図8に示すように、ロータ3の孔部13の内周面に固定されている。
【0031】
受部17は球体15の半分以上を囲み、内面が球面の一部を形成している。受部17の内面にはボール25を受けるボール溝27が球体15のボール溝25に対応した位置に設けてある。また、受部17には球体15から突設するロータ側軸19a、19bを通す軸溝29a、29bが形成されており、ロータ側軸19a、19bは対応する各軸溝19a、19b内を移動自在になっている。
【0032】
受部17に固定した出力軸21は、図2に示すロータ3の静止状態において、ロータ側軸19a、19bと直交した位置にある。尚、出力軸21は、その位置が固定されており回転のみが可能にしてある。
【0033】
図2に示すように、受部17に固定した出力軸21には、歯車列31を介してエネルギー蓄積部7に連結されている。エネルギー蓄積部7は、出力軸21に歯車列31を介して歯合し、回転する回転軸33と、ケース35と、ぜんまい36(図3参照)と、ケース35内に設けた回転用フレーム37と、回転用フレーム37に固定したマグネット39と、ケース35内でマグネットに対向配置したコイル41と、コイル41に接続された蓄電回路部43とを備えている。蓄電回路部43では、コイル41で生じた発電電流をキャパシタ45に蓄電する。そして、キャパシタ45に接続した負荷に蓄電した電流を供給するようになっている。
【0034】
図3に示すように、回転軸33には、ぜんまい36の内周側端36aが固定されており、ぜんまい36の外周側端36bは回転用フレーム37に固定されている。また、回転用フレーム37にはケース35に係止するストッパ43が設けてあり、ストッパ43は所定以上の力を受けるとケース35に対して引込んでケース35との圧接が外れるようになっている。
【0035】
尚、図3に示すぜんまい36は一方向へ巻き上げるものであるが、図21に示すようなS字状のS字ぜんまいを使用しても良い。図21(a)はS字ぜんまいが解放された状態を示し、図21(b)はS字ぜんまいが蓄力された状態を示す。S字ぜんまい101は解放時、図21(a)に示すように、ゆるんでおりS字形状を示す。またS字ぜんまい101は蓄力時、図21(b)に示すように、回転軸103(または回転軸105)の周りに巻き上げられた状態となる。図22は、S字ぜんまいおよび通常のぜんまいのトルクと解放時間との関係を示す図である。通常のぜんまいは、ぜんまいの蓄力量とともにトルクが増大する(曲線B)が、S字ぜんまいは蓄力開始まもなくトルクが増大しその後ほぼ一定値のトルクが働く(曲線A)。すなわち、S字ゼンマイを使用することによって、トルクを一定(フラットトルク)に保持できるので、蓄力量が最大となっても初期とほぼおなじトルクとなる。従来のぜんまいは蓄力量最大で最大のトルクを示すので、逆回転を防止するラッチ機構、前述のラチェットの切換え車ないし後述する微細毛構造において、最大のトルクに合わせた制動力を有するラッチ機構となる。そうすると、機構の寸法が大きくなり、すなわちラッチピッチが大きくなり例えば微小振動でのエネルギー収穫率が低下する。それに対して、このようにS字ぜんまいを用いると蓄力量が最大となっても初期とほぼおなじトルクとなるので、ラッチ機構が大きくなることはなく、微小振動でのエネルギー収穫率が向上する。また後述するように広範囲な振動スペクトルを収穫することも可能となる。
【0036】
次に、本実施の形態にかかる蓄力装置1の作用及び効果について説明する。携帯により受けた振動が、ロータ3に作用してロータ3を回転させる。
この場合、図5に示すように、ロータ3にはロータ3の面内方向(X−Z方向)成分の力と、X−Z面に直交するY方向成分の力とが作用する。換言すれば、ほとんどの振動はX−Z成分と、Y成分の方向の力を持つ。したがって、ロータは図5に示すようにX−Z方向の成分の力によりその中心軸周りを回転する。(ロータ3が静止しているときにおいて、Z方向はロータ3の面内方向で上下方向(鉛直方向)であり、X方向はロータ3の面内方向で水平方向でZ方向に垂直方向であり、Y方向はロータ3面に垂直方向でX方向およびZ方向に垂直方向である)
【0037】
ロータ3は自在継手5を介して出力軸21に連結されているから、Y方向の成分の力を受けると、ロータ3はY方向に振れつつ回転する。この場合、Y方向の力は、ロータ3を振れさせて、逃しているので、Y方向の力がロータ3の回転を阻害するのを防止できる。従来のロータの構造では、自在継手構造の部分はベアリング構造だけであるから、Y方向の力成分がベアリングをY方向に押しつけるために、X−Z方向におけるロータの回転を抑制する。しかし、本発明の自在継手5によって、この抑制は大幅に軽減される。
【0038】
また、ロータ3の振れが戻るときには自在継手5が回転しているからロータ3が戻るときの力の一部をX−Z成分の力として取り出すことができる。すなわち、Y方向の力成分がX−Z方向の成分の力に変換されて、X−Z方向のロータの回転を加速し、ロータ3の回転面(X−Z方向)に限らず、Y方向の振動成分の一部を出力軸21の回転力として取り出すことができ、蓄力効率を高めることができる。
【0039】
本実施の形態では、自在継手5はロータ3の中心軸に形成した孔部13内に挿入して取付けてあるから、自在継手5がロータ3から突設する寸法を小さくでき、装置の小型化を図ることができる。
【0040】
また、自在継手5は、球体15の中心を通る一方側及び他方ロータ側軸19a、19bをロータ3の中心軸の孔部13に取付けてあるから、図8に示すように、ロータ側軸19a、19bはロータ3内に収めることができ、ロータ側軸19a、19gがロータ3から突設しないので、この点においても装置の小型化を図ることができる。
【0041】
自在継ぎ手5はY方向に比較的自由に回転するので、上記のロータ3はY方向に自由に回転する。このロータ3が他の機器に衝突して破損する恐れもあるので、ロータ3のY方向の動きを抑制することが望ましい。また、Y方向の力成分の一部をX−Z成分の力として取りだすことができるが、Y方向の自由な回転はエネルギー的にロスが大きい。そこで、図9(a)に示すようにロータ3の錘部51の端部の両外側にガイド53を設ける。ガイド53には回転自在なベアリング55が備わっている。紙面に垂直方向はX方向、上下方向がZ方向であり、ロータ3はX−Z面で回転し、エネルギーを蓄積する。本発明のロータは上述したようにY方向にも移動(回転)可能であるが、移動が大きすぎると破損やエネルギーロスが発生するので、ガイド53によってロータ3のY方向移動(回転)が抑制される。
【0042】
図9(b)および図9(c)は図9(a)に示すY方向移動(回転)制限機構を説明する図で、上方から見た図でロータ3の錘51がY方向移動(回転)制限機構53に当たる部分で見ている。すなわち、X−Y面の図であり、紙面に垂直方向がZ方向である。ロータ3の錘51がY方向のみにPの力でベアリング55に当たった場合、Y方向のみの力であるからベアリング55は動かない。このときはロータ3の錘51へ及ぼす摩擦が大きい。図9(c)に示すように、Y方向だけではなく他の方向の力も加わった力Sでベアリング55に当たると、ベアリング55はR方向へ回転する。この回転によってロータ3の錘51はT方向(X方向を向いている)へ動く。これはロータ3の錘51がX−Z平面でロータ3が回転することを意味するので、ロータ3のX−Z平面における回転を加速させて、エネルギー蓄積に寄与することになる。通常Y方向だけの力は極めてまれであり、殆どが図9(c)に示すようなY方向よりも傾いた斜め方向の力Sであるから、本発明のガイド機構53を備えることによって、さらにエネルギー蓄積を増大させることができる。
【0043】
図10はロータのY方向移動(回転)を抑制するY方向移動(回転)制限機構の別の実施形態を示す図である。図9では、ロータ3の錘51の両外側に設けたガイドであったが、図10はロータ3の錘51がガイドの両側に配置されたY方向移動(回転)制限機構である。図10(a)に示すように、自在継手5にロータ3はX−Z平面で回転自在に取り付けられている。また、ロータ3は自在継手5を介して出力軸21に連結されており、Y方向の力を受けると、ロータ3はY方向にも振れながら回転する。ロータ3の外周には錘51が備わりロータ3と一体に動作する。この錘51の外端はU字形に外側から巻いた形状をしており。そのU字形の内側にガイド57が入り込んでいる。このU字形錘部の断面形状を図10(b)に示す。錘部51の外端は、両側の平行な板状体51aおよび51b、底部板状体51cでU字形状を形成する。ロータ3がX−Z面で鉛直方向(Z方向)に静止しているとき、ガイド57は、錘部51の平行な板状体51aおよび51bの間に、これらの板状体から離間して略中間位置になるように、またU字形の底部51bからも離間して配置されている。ガイド57の先端部にはベアリング59が回転自在に取り付けられている。
【0044】
ロータ3がX−Z面だけで回転するとき、すなわちY方向の力が働かないときは、ガイド57およびベアリング59には接触しないで、図10(b)に示すようなガイド57とU字形錘部の状態を保持しながら、回転する。図10(a)に示されているように、ロータ3の錘51の先端部は扇形状になっており、ガイド57はその内側に入って中空状の円板形状となっており、固定されている。ガイド57の円板の両平面板にベアリング59が取り付けられている。ロータ3がY方向の力を受けるとロータ3および錘部51はY方向に移動(回転)するので、U字形状の錘部51の先端部51aまたは51bはベアリング59に接触し、ベアリング59をY方向に押すが、ガイド57は固定されているので、ロータ3および錘部51のY方向への移動(回転)が制限される。また、ベアリング59は回転自在なので、図9(c)において説明したように、Y方向から少しでも傾斜した力によってロータ3および錘部51はX−Z平面で回転する。図9および図10に示すような簡単なY方向移動(回転)制限機構によって、Y方向への移動(回転)を制限でき、内部に配置される機器や部品の破損等を防止できるとともに、Y方向の力をX−Z平面におけるロータの回転力へ変換して利用できる。
【0045】
モーションロガーをカバン内に入れて歩行時の加速度周波数スペクトルの時間変化を測定によって、Z軸方向(人体の立ち位置方向)のモーションが加速度・周波数成分とともに大きいことが分かった。従って、Z軸方向の動作によるエネルギーを有効に収穫(エネルギーハーベスト)する必要がある。従来のロータはY方向への力が働くと(X−Z平面における)ロータ芯(回転軸)に配置されるベアリングを回転軸方向に押すため、ロータの回転を抑制してしまうが、さらにZ方向(上下方向)の動きに関してもロータは振り子構造であるため、ロータの重心に対して平衡状態の時にZ方向の純粋な力が加わっても動かない。しかし、本発明の自在継手を有するロータはX方向にもY方向にも動くので一旦X方向またはY方向へ動き始めると、重心がオフセットするので、Z軸方向の力もロータの回転に寄与できる。従って、Z軸方向の動作によるエネルギーも効率良く活用できる。
【0046】
また、従来のロータの場合、力(加速度等による)のY方向成分によってロータ芯(回転軸または出力軸)を押しつける力が作用してロータの回転が抑制される。そこで、図11に示すような可倒式のロータ61を採用すると、従来のロータでもロータ芯(回転軸)に及ぼすY方向への力を大きく低減できる。図11は、本発明の可倒構造を有するロータ61を示す図である。ロータ芯(回転軸)63にロータ芯枠65が一体となっている。また、ロータ芯枠65はロータ腕部(フレーム部)67につながり、ロータ腕部67の外周は回転錘69となり、回転エネルギーが大きくなるように他の部分のロータに比べ重くなっている。
【0047】
ロータ芯枠65とロータ腕部67は可倒構造71で接続している。図11(b)はこの可倒構造71を拡大して示している。すなわち、ロータ芯枠65およびロータ腕部67は蝶番構造73になっており、Y方向(図11(a)および図11(b)では紙面に垂直方向で、図11(c)では図に示すように紙面の左右方向)に回転できるようになっている。しかし、X方向(図11(a)および図11(b)では図に示すように紙面の左右方向で、図11(c)では紙面に垂直方向)やZ方向(図11(a)、図11(b)および図11(c)において、図に示すように紙面の上下方向)には動かない。図11に示す可倒構造71を有するロータ61はX−Z平面の動き(ロータ芯およびロータ軸受75の周りの回転運動)においては、ロータ芯枠65、ロータ腕部67および錘部69は一体物として機能する。従ってロータ61全体が一体に動作する。
【0048】
一方、Y方向の加速度αに対して、ロータ61全体に加速度αが作用するが、ロータ61の質量の大半はロータ腕部67およびロータ回転錘69が占めているので、加速度αにより一体となったロータ腕部67およびロータ回転錘69が可倒部71を中心として移動(回転)する。可倒部71の蝶番構造73はY方向に対しては回転自在(回転面はY−Z平面)なので、このロータ腕部67およびロータ回転錘69の回転はロータ芯枠65の動作には殆ど影響しない。また、加速度αは一体となったロータ芯枠65およびロータ芯63にも作用するが、ロータ芯枠65およびロータ芯63の質量は小さいので、ロータ芯枠65およびロータ芯63のY方向への力の作用は小さい。従って、Y方向の加速度αが作用しても、ロータ芯63がロータ軸受75を押す力は小さいので、ロータ軸受75に配置されるベアリングを押す力も小さく、ロータ芯63のX方向の移動(X−Z面での回転)に対する影響は少ない。
【0049】
図12は、振り子構造の周波数特性を示すグラフである。図12(a)は可倒構造のない従来の振り子(全体が一体のロータ)の周波数特性であり、重心距離を9.46mmとしたときの周波数特性と加速度との関係曲線である。可倒式でない回転錘(ロータ)の場合、周波数特性は加速度による依存性が小さい。図12(b)は可倒構造を有する本発明の振り子の周波数特性であり、加速度を1Gに一定としたときの周波数と重心距離との関係曲線である。可倒式回転錘(ロータ)の場合、周波数依存性が高く広い帯域のエネルギー収穫が可能であることが分かる。
【0050】
可倒構造とすることによって、Y方向の加速度(力)が作用したときに振り子(ロータ)の重心位置の変動が発生する。振り子の振動周期Tは、T=2π(l/g)1/2で表される。従って、重心位置が変化することによって、ロータ(回転錘)の共振周期が変わり、エネルギーハーベスト(収穫)帯域幅が向上する。以上説明したように、回転錘(ロータ)内部を可倒構造とすることによって、Y方向の過渡的な摩擦力を軽減することができる。
【0051】
図13は、振り子(ロータ)構造の違いによるエネルギー発生量を比較する図であり、水平方向の蓄力と上下運動の蓄力との関係を示している。縦軸に上下運動蓄力時動作時間(分)、横軸に水平方向蓄力時動作時間(分)を示す。図13において、菱形印が可倒式回転錘を(腕に)装着した場合、正方形印が従来の可倒構造のない回転錘(未加工回転錘)を(腕に)装着した場合における測定結果である。可倒式回転錘を装着した場合は未加工回転錘を装着した場合と比較して、上下運動時は平均+130%、水平運動時は平均+77%エネルギー収穫能力が優れていることが分かる。さらに水平方向より上下方向(Z軸方向)における効果がより大きいことも分かり、Y方向の力を利用する本発明の可倒式回転錘は3次元の動作に関して効率を向上させることも分かる。
【0052】
図17は、一定角度を持って基板に配置された微細毛を用いた回転ラッチ機構を示す模式図である。図17(a)に示すように、基板321に微細毛322を、一定角度αをつけて成長あるいは植毛させる。たとえば、図17(b)に示すように、基板321上に微細毛322のシーズ膜323を形成した後絶縁膜324を積層する。この絶縁膜324に一定角度αを有する溝(斜溝)325を微細毛322のシーズ膜323に達するまで形成した後、微細毛322の膜を溝325内にシーズ膜323から選択成長させることによって、基板面に対して一定角度αを有する微細毛322を形成できる。この選択成長法としてたとえば、CVD(化学気相成長)法、蒸着法、メッキ法等がある。微細毛322の材料は、たとえば有機系材料、導電体材料、ガラス繊維などがある。図17(c)に示すように、このような一定角度を持って配置(配向)された微細毛を回転円板体326および327の側面に形成し、これらの円板体326および327の側面を合わせて回転伝達系を作ることができる。
【0053】
回転円板体326の側面(回転面)に形成された微細毛331の配向方向に合わせて、配向された微細毛332を有する回転円板体327の側面(回転面)を配置する。(微細毛は回転円板体の側面(回転面)における接面に対して一定角度で傾いて植毛または成長している。)円板体326の側面に配置された微細毛331の配向方向はR3と逆方向で、円板体327の側面に配置された微細毛332の配向方向はR4と逆方向とする。円板体326が回転軸328の周りにR3と逆方向に回転すると、微細毛331と微細毛332は噛み合わないので、円板体326は空回りして円板体327は回転しない。円板体326が回転軸328の周りにR3方向に回転すると、微細毛331と微細毛332は噛み合うので、円板体327はR4の方向に回転する。このときは、円板体326や327は歯車と同じ働きをして互いの回転を伝達することができる。
【0054】
図18は、一定角度を持って配置(配向)された微細毛を用いて逆回転を規制したラッチ機構付き回転体の別の実施形態を示す図である。この実施形態はボルト状回転体とナット状回転体を構成するラッチ機構付き回転体である。ボルト状回転体346は軸348の中心Mの周りに回転できる。ボルト状回転体346の円柱軸347の側面には、多数の微細毛351が一定角度を有して配置されている。また、このボルト状回転体346を受けるナット状回転体349の円筒状内側面350にも多数の微細毛352が一定角度を有して配置されている。このナット状(円筒状)回転体349はその中心Nの周りに回転できる。
【0055】
図18(b)は、この微細毛を用いたボルト・ナット状ラッチ機構付き回転体の側面断面図を示す図である。図18(b)に示すようにボルト状回転体346の円柱軸347はナット状回転体349の内側にはまる。このとき、微細毛351および352は互いに同じ向きに揃うように略対称形で、微細毛351および352は、円柱軸347および円筒状内側面350の円周方向に傾斜して配置されて、組み合わさっている。(図18(b)は回転体347および349の側面断面図であるから、微細毛351および352は回転体側面に垂直方向に揃って噛み合っているが、実際には円周方向に傾斜しながら噛み合っている。)微細毛351および352が同じ向きを向いている方向と逆方向に回転させる場合、すなわちボルト状回転体346をR5の向きに回転させる場合、微細毛351と微細毛352が噛み合って摩擦力が大きくなるため、ナット状回転体349がR6の向きに回転する。逆に微細毛351および352が同じ向きを向いている方向に回転させる場合、すなわちボルト状回転体346をR5と逆向きに回転させる場合、微細毛351と微細毛352の噛み合いは全くなくなり摩擦力が殆どなくなるため、ボルト状回転体346は空回りしてナット状回転体349は回転しない。
【0056】
このようにして微細毛を用いて、逆回転を規制した(逆回転に対して他方が回転しない)ラッチ機構付き回転体を作製できる。この微細毛を用いたラッチ機構付き回転体は微細毛のピッチを細かくできるので、微細な回転体も形成でき、本発明の振動発電機構を小型化することが可能となる。また、微細毛を用いたラッチ機構付き回転体は接触形態が面接触なので、強度が大きく耐久性に優れている。微細毛の各々が数十μmとしても、ラッチはランダムに行なわれるので、数μm程度の分解能ラッチすることが可能となり、微細化の点でも利点がある。さらに、ラッチ機構付き回転体を2つ組み合わせることによって、どちらの方向の回転に関しても一方向の回転に変換できるので、切換え車として使用することもできる。このラッチ機構は、第1の変速機構、第2の変速機構に適用することができる。
【0057】
図12に示す本発明の可倒式回転錘(ロータ)を本発明の(Y方向)自在継手と組み合わせることによって、Y方向の力またはY方向の力成分を利用してさらに効率の良いエネルギー収穫機構(エネルギーハーベスト)を構築することができる。また、図9および図10に示すようなY方向の過度な移動(回転)を制限したY方向移動(回転)制限機構と組み合わせることによって、Y方向の過度な移動(回転)によるロータや他のシステムの破損を防止することが可能となる。図14は、可倒式回転錘(ロータ)および(Y方向)自在継手並びにY方向移動(回転)制限機構を合わせ持つシステムを示す図である。図14に示すロータは自在継手5に取り付けられておりY方向の力に対してもロータがX−Z方向に力のロスがなく回転できるようになっている。
【0058】
ロータ77は自在継手5と連結したロータ芯枠65とロータ腕部67の間において可倒構造71を有している。従ってY方向成分の加速度を受けても可倒構造71を中心としてロータ腕部67およびロータ回転錘69が往復矢印R方向に回転するだけで、ロータ芯枠65および自動継手5にこの回転力は殆ど伝達しない。従って自動継手5においてY方向へ押しつけられる力はロータ芯枠65および自動継手5自身に対する加速度が与える力だけなので非常に小さい。本発明の自動継手5は既に説明した様にY方向の力を受けてもX−Z方向における発電に有効なロータ71の回転に対する影響は殆どないが、図14に示す可倒構造71を取り入れることによって、Y方向の力がロータ71の回転へ及ぼす影響をさらに軽減することができる。またロータ71の回転半径が可倒構造71により小さくなるのでその変位量も小さくなる。
【0059】
さらに図14(a)に示す構造は、図9に示すようなY方向移動(回転)制限機構53を備えているので、回転錘69の過度な回転を防止するとともに、ベアリング55によってY方向の回転錘69の力がX−Z方向への力へ変換されるので、発電に有効なロータ77の回転にY方向の力を活用することができる。また、図14(b)に示す構造は、図10に示すようなY方向移動(回転)制限機構58(ガイド57、ベアリング59を含む)を備えているので、回転錘51(51a、b、cを含む)の過度な回転を防止するとともにベアリング59によってY方向の回転錘69の力がX−Z方向への力へ変換されるので、発電に有効なロータ77の回転にY方向の力を活用することができる。このように図11に示すような可倒構造およびY方向移動(回転)制限機構を本発明の振動エネルギー変換発電機構に付加することができ、Y方向の力がX−Z方向の移動(回転)に及ぼす影響(阻害効果)を軽減できるとともに、逆にY方向の力をX−Z方向の移動(回転)を加速する効果を高めることができる。
【0060】
図19は、本発明の振動エネルギー変換発電機構を腕時計に適用した実施例を示す図である。自在継手を有するジョイント部84、Y方向移動(回転)制限機構であるガイド83、ベアリング部85、回転錘部81を含む振動収穫機構の振動エネルギーを1番車から各穴車の輪列歯車(一方向回転整列機構+第1の変速機構)86によって回転エネルギーが伝達され、香箱(蓄力機構)88内のぜんまいに蓄力される。輪列歯車86は一番受け等の各種受け87でカバーされ、これらは字板89に組み付けられる。香箱88内の巻き上げられたぜんまいからの回転エネルギーを発電機用輪列(第2の変速機構)90で増速回転させて、発電機構91で発電させる。得られた電気で内蔵したLSIや表示素子を表示させる。あるいは、このような本発明のシステムを用いた腕時計用自動巻き機構を用いて発電させ、各種の携帯機器を動作させることもできる。
【0061】
本発明の振動エネルギー変換発電システムの変換効率は30%以上であり、取り出せるエネルギー総量は10μW〜1mWであり、効率の点では他のエネルギー変換発電システム(たとえば、光/電気変換(太陽電池)システムは10%程度)に比較すると非常に高く、取り出せるエネルギー量(たとえば、光/電気変換(太陽電池)システムは2〜10μW程度)も非常に大きい。
【0062】
図20は、人体が動いているときに受ける振動スペクトルとパワースペクトルの関係を示す図である。人間が歩行しているときは、20Hz以下の振動のパワー密度が多く、車中内にいるときは、100Hz程度までの振動エネルギーが多い。従来の振動発電(振動→発電→充電)システムで収穫可能な周波数スペクトルは20〜50Hzの間であるから、歩行時は殆どエネルギーを収穫できないし、低周波および高周波帯の振動には対応できない。これに対して本発明の振動エネルギー変換発電システムは1Hz以下(0.2Hz程度)〜300Hz程度までの広範囲な振動スペクトルに追随できるので、広いスペクトルの振動エネルギーを収穫できる。従って、本発明の振動エネルギー変換発電システムは高効率で高収穫の発電システムである。
【0063】
本発明を概要すると、本発明は、高効率の振動エネルギー変換発電システムを提供するもので、振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、逆回転を防止するラッチ機構、整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む振動エネルギー変換発電機構である。特に、振動収穫機構は、振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータ、ロータの中心軸部に連結した自在継手および自在継手の出力軸を含み、出力軸方向の力に対して自在継手が回転して、ロータの回転に活用する機構を有することを特徴とするものである。
【0064】
尚、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。たとえば、エネルギー蓄積部7は、電流の蓄電に限らず、出力軸21がぜんまい36を締め付けた状態で運動エネルギーとして保持し、運動エネルギーの取り出し時に、ぜんまい36を開放して、回転用フレーム37の回転力を駆動力として取り出すものであっても良い。蓄力装置は、携帯機器に限らず、海洋の波等による振動をロータが受けるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の振動エネルギー変換発電システムは、各種の携帯用機器だけでなく、車体等の振動を発生する装置に付随する機器に適用することができ、振動を発生している限りは常に充電される状態になっている。また、図1に示す各機構は独立して使用し、または他のシステムに組み合わせることも可能である。特に、自在継手を有するロータは振動エネルギーを回転エネルギーに変換するシステムに組み込むことができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・蓄力装置、3・・・ロータ、5・・・自在継手、
7・・・エネルギー蓄積部、13・・・ロータ軸の孔部、15・・・球体、
17・・・受部、19a、19b・・・ロータ側軸、21・・・出力軸、
111・・・振動収穫機構、112・・・一方向回転整列機構、
113・・・第1の変速機構、114・・・蓄力機構、115・・・第2の変速機構、
116・・・発電機構、117・・・手巻き機構、118・・・変速機制御機構、
119・・・充放電制御機構、120・・・負荷、
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギーを、効率的に力学的エネルギーを経由して電気エネルギーに変換する振動エネルギー変換発電システム、特に振動エネルギー変換・伝達装置およびそれを用いた携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は日常活動をしながらも常に情報を得る手段を追求している。たとえば、腕時計、携帯電話、携帯ラジオ、携帯用小型カメラ、携帯ラジオ等種々の携帯機器を身につけている。これらの携帯機器の動力源は電気エネルギーであるため、これらのウエアラブルな装置に通常は乾電池や蓄電池等の小型バッテリーを装着しているが、バッテリーを付加した分装置が重くなるという問題の他に、使用中にエネルギーがなくなる(電池切れ)という問題が発生する。しかし、人間は常に活動しているから、人間の運動からエネルギーを電気エネルギーとして取り出すことができれば、ウエアラブルな装置は電池等の補充なく半永久的に動作する。
【0003】
人間の運動エネルギーの中で振動エネルギーは最も一般的で身近なエネルギーである。振動エネルギーを回転エネルギーに変換する方法は、たとえば自動巻腕時計では古くから使用されている。近年はさらにこれを電気エネルギーに変換する方式も種々提案されている。たとえば、特許文献1には、腕時計等の携帯機器に設けられて、携帯時の振動を受けてロータが回転し、ロータの回転を出力軸から取り出して、出力軸に連結したマグネットを回転させ、ステータに設けた発電用コイルで生じる電流を蓄電(蓄力)することが開示されている。特許文献1では、ロータと出力軸との連結はロータの回転軸に出力軸を同軸に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−257961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、振動がロータの回転面(X−Z方向)の方向の場合には出力軸は振動エネルギーを有効に取出すことができるが、ロータの回転面(X−Z方向)と直交する成分(Y方向)の振動成分は、出力軸の軸線方向の力であるから、出力軸の回転に寄与できないとう不都合がある。更に、Y方向の振動成分は出力軸を軸線方向に押し付ける力を付与することになり、出力軸の回転を阻害するという不都合がある。一方、携帯機器が受ける振動は、X−Z方向の二次元に限らず、Y方向を加えた3次元方向の振動を受けることになるから、上述したようにY方向の振動成分が蓄力に寄与できないので蓄力効率が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、人間の活動をベースとした振動エネルギーを回転エネルギーに変換し、さらには電気エネルギーとして発電する新しいシステムを提供することを目的とし、特に振動エネルギーを蓄力する蓄力効率を高めることができる蓄力装置及び携帯機器の提供を目的とするものであり、以下の特徴を有する。
(1)本発明は、振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、(オプションとして、回転方向の逆回転を防止するラッチ機構)、整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含むことを特徴とする振動エネルギー変換発電機構である。
【0007】
(2)本発明は、上記に加えて、ラッチ機構は配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とし、また第1の変速機構に手巻き機構が付随していること、さらに、第1の変速機構における減速比は1/5であり、および/または第2の変速機構における増速比は5であることを特徴とする。
(3)本発明は、上記に加えて、第2の変速機構にさらに変速制御機構が付加されるとともにゼンマイが完全巻き上げ状態であることを検出してゼンマイを自力解放する機構が付加されており、および/または振動変換発電機構に充放電制御回路を含むことを特徴とする。
(4)本発明は、上記に加えて、充放電制御回路において充放電の状況を監視しながら、変速制御機構によりゼンマイを断続的に解放でき、さらに、第1の変速機構および/または第2の変速機構に配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とする。
【0008】
(5)本発明は、上記に加えて、あるいは独立に、振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータと、ロータの中心軸部に連結した自在継手と、自在継手の出力軸に連結したエネルギー蓄積部とを備え、自在継手はその出力軸に対して互いに軸線が交差するロータ側軸を備え、ロータ側軸の回転により出力軸が回転してロータの運動エネルギーをエネルギー蓄積部に伝達することを特徴とする振動エネルギー変換発電機構である。
(6)本発明は、上記に加えて、ロータは中心軸部に孔が形成してあり、自在継手は、ロータの中心軸部の孔内に配置してあり、球体と球体の半分以上を囲み内面が球面の一部を形成している受部とを備え、ロータ側軸はその軸線が球体の中心を通り球体から突出する一方及び他方の軸部を有し、一方及び他方のロータ側軸部はロータの回転面の面内方向でロータの中心軸部に取付けてあることを特徴とする。
【0009】
(7)本発明は、上記に加えて、自在継手の出力軸方向と垂直面内方向の力に対して、ロータは当該垂直面内方向に回転可能であり、自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータは自在継手と一体で出力軸方向に回転可能であるとともに、出力軸方向と垂直面内方向においてもロータは回転可能であることを特徴とする。
(8)本発明は、上記に加えて、ロータは、ロータの軸受枠部およびロータ錘部の間に可倒部が存在する可倒構造となっており、自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータのロータ錘部側は可倒部を中心として回転可能であり、自在継手の出力軸方向の力を受けたとき、可倒構造によってロータの出力軸方向と垂直面内方向における回転を抑制する作用を軽減できることを特徴とする。
(9)本発明は、上記に加えて、自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構がロータのロータ錘部の出力軸方向の両外側に備わっており、あるいは、ロータのロータ錘部の外周が略U字状に形成され、U字状の空間に自在継手の出力軸方向の力に対して、ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構が備わっていることを特徴とする。
【0010】
(10)本発明は、上記に加えて、制限機構にベアリング付設され、自在継手の出力軸方向の力に対してロータが動作したときにロータ錘部がベアリングに当たるとともにベアリングが回転して、ロータをロータの出力軸方向と垂直面内方向へ回転させることを特徴とする。
(11)本発明は、上記に加えて、エネルギー蓄積部は、自在継手の出力軸の回転により巻き締めるぜんまいと、ぜんまいの開放により回転する回転用フレームと、回転用フレームに固定されたマグネットと、マグネットに対向するコイルと、コイルに生じた電流を蓄電する蓄電部とを備えることを特徴とする。
(12)本発明は、上記の振動変換発電機構を備え、携帯しているときの振動を受けてロータが回転することを特徴とする携帯機器である。携帯機器とは、たとえば、腕時計、携帯電話、モバイル端末、レコーダ、音楽再生機、電子書籍、ゲーム機器、携帯パソコン等をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明の振動エネルギー変換発電機構は、人間の運動の1つである振動エネルギーを回転エネルギーに変換し、さらにその回転エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー変換発電システムである。小さな振動でも効率的に回転エネルギーに変換する。さらに、その回転エネルギーを蓄力した後電気エネルギーに変換するので、回転エネルギーが小さくても十分な発電をすることができ、振動エネルギーを効率良く回転エネルギーに変換することができるとともに、安定した発電量を得ることができる。また、回転エネルギーが小さい場合でも第1の変速機構で回転速度を減速して通常のゼンマイを巻き上げて力量を蓄積(蓄力)し、その力量を用いて発電することができる。すなわち小さなトルクでゼンマイをどんどん巻き上げて、蓄力機構に充分なトルク量を確保した後で、第2の変速機構で増速することにより充分な回転速度で発電することができる。振動収穫機構の後に一方向回転整列機構を付随することにより、振動の往復運動による二方向の回転も利用できるので、発電効率をさらに向上することができる。さらに、逆回転を防止するラッチ機構を備えているので、エネルギー変換ロスが少ない。またラッチ機構に配向性を有する微細毛を用いることにより、システムを小型化できる。
【0012】
さらに、ロータは自在継手により出力軸に連結されているからロータの回転面(X−Z方向)に限らず、Y方向の振動成分はロータを出力軸の軸線方向に振れさせるので、出力軸に作用するY方向の力による回転の阻害を防止できる。また、Y方向の力により振れたロータが戻るときには、自在継手が回転しているから、そのロータが戻るときの力の一部をX−Z成分の力として取り出すことができる。即ち、三次元の振動エネルギーを出力軸の回転力に変換してエネルギー蓄積部に蓄積できるから、蓄力効率を高めることができる。また、自在継手はロータの中心軸部に形成した孔内に挿入して取付けてあるから、自在継手がロータから突設する寸法を小さくでき、装置の小型化を図ることができる。さらに、自在継手は球体の中心を通る一方側及び他方ロータ側軸をロータの中心軸の孔部に取付けてあるから、ロータ側軸をロータ内に収めることができ、ロータ側軸がロータから突出しないので、この点においても装置の小型化を図ることができる。
【0013】
さらに、ロータは可倒構造を有するので、出力軸に作用するY方向の力による回転の阻害をさらに防止できる。また、ロータのロータ錘部のY方向の動作を制限する制限機構が備わっているので、ロータ錘部の破損や他の機器に及ぼすダメッジを軽減できる。また、この制限機構にはY方向の動きをいなすベアリングが付随するので、Y方向の力成分をX−Z方向のロータ回転力に変換することができる。エネルギー蓄積部は振動エネルギーを簡易な構成で電力として蓄積することができる。
さらに本発明の振動変換発電機構を備えた携帯機器は、振動エネルギー変換効率の良い発電システムを有するので、エネルギー補充の少ない長寿命化の携帯が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の振動エネルギー変換発電機構のシステム構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る蓄力装置の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、ぜんまい部の構成を示す平面図であり、(a)は解放時であり、(b)は蓄力時の作用を示す図である。
【図4】図4は、ロータに自在継手を連結した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施の形態おける作用を示す図であり、ロータと自在継手の部分を示す側面図である。
【図6】図6は、自在継手を抜き出して示す側面図である。
【図7】図7は、自在継手を抜き出して示す斜視図である。
【図8】図8は、自在継手の球体とロータの連結部を抜き出して示す横断面図である。
【図9】図9は、本発明のY方向移動(回転)制限機構を説明する図である。
【図10】図10は、ロータのY方向移動(回転)を抑制するY方向移動(回転)制限機構の別の実施形態を示す図である。
【図11】図11は、本発明の可倒構造を有するロータを示す図である。
【図12】図12は、振り子構造の周波数特性を示すグラフである。
【図13】図13は、振り子(ロータ)構造の違いによるエネルギー発生量を比較する図である。
【図14】図14は、可倒式回転錘(ロータ)および(Y方向)自在継手並びにY方向移動(回転)制限機構を合わせ持つシステムを示す図である。
【図15】図15は、一方向回転整列機構の一例を示す図である。
【図16】図16はラッチ機構の一例を示す図である。
【図17】図17は、微細毛を用いた回転ラッチ機構を示す模式図である。
【図18】図18は、微細毛を用いて逆回転を規制したラッチ機構付き回転体の別の実施形態を示す図である。
【図19】図19は、本発明の振動エネルギー変換発電機構を腕時計に適用した実施例を示す図である。
【図20】図20は、人体が動いているときに受ける振動スペクトルとパワースペクトルの関係を示す図である。
【図21】図21は、S字ぜんまいの(a)解放時および(b)蓄力時の状態を示す模式図である。
【図22】図22は、S字ぜんまいおよび通常のぜんまいのトルクと蓄力量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、振動を回転エネルギーに変換し、さらにその回転エネルギーを電気エネルギーに変換する振動エネルギー変換発電システムに関する。さらに、振動エネルギーのロスを最小化して、効率良く回転エネルギーに変換する機構に関する。
【0016】
図1は、振動エネルギー変換発電機構のシステム構成を示す図である。本発明の基本は人体の運動に由来する振動エネルギーを機械的エネルギー(特に回転エネルギー)、さらに電気的エネルギーに変換することであり、図1の構成図に示すように、最低限、振動エネルギーを力学的エネルギー(力量、あるいは機械的エネルギー、あるいは回転エネルギー)に変換する振動収穫機構111およびその振動収穫機構111で変換された力量を用いて発電する発電機構116からなる。振動収穫機構111は振動を効率良く力量として利用できる形態に変換するシステムであり、たとえば人体の腕の動作という振動を自動巻腕時計等で使用される回転錘の振り子振動として取り出す機構である。人体の腕の動きは3次元の動作であるが、本発明はこの3次元動作を効率良く回転錘の振り子振動として変換する。
【0017】
振動収穫機構111で得られた力量を、一方向回転整列機構112を通して第1の変速機構により減速して蓄力機構114に移転し蓄積する。振動は周期性がある(たとえば、振り子振動は往復運動なので動作方向が2通りある)ので、そのまま回転運動として取り出して第1の変速機構に伝達すると、回転方向が2方向になりエネルギーロスが大きい。そこで振動収穫機構111で得られた力量を一方向に整列する機構が必要となる。そのシステムが一方向回転整列機構112である。一方向回転整列機構112には従来から種々の方法があり、本発明においてはこれらの方法を適宜選択して採用することができる。たとえば、腕時計の自動巻の巻き上げ機構に採用されている切り換え車方式、マジックレバー方式やペラトン方式を適用することができる。
【0018】
図15は、一方向回転整列機構の一例を示す図である。一方向回転整列機構に切換車408、409およびラチェット車413、423を用いている。振動収穫機構111の振り子振動による回転は、切換かな414、424と同期して切換車408、409に伝達される。切換車408、409のそれぞれは、切換かな414、424と一体になったラチェット車413、423を備えている。切換車408の回転は第1の変速機構410に伝達されるように、たとえば切換車408の歯車および第1の変速機構410の歯車411が噛み合っている。切換車408、409を構成する切換歯車412、422は、回転自在な切換つめ415、425と、切換つめ415、425の一端を押圧し、かつ他端をラチェット車413、423の歯面に対して付勢する付勢ばね416、426を備えている。切換つめ415、425は固定ピン417、427で切換歯車412、422に固定されている。また、付勢ばね416、426も固定ピン429、430で切換歯車412、422に固定されている。これらのラチェット車413、423の回転規制方向(逆回転防止方向)は互いに反対方向であり、振動収穫機構111の振り子振動による回転はがいずれの方向(ある方向とそれの逆方向の2方向しかない)に回転しても、第1の変速機構410は常に一方向に回転する。
【0019】
たとえば図15において、振動収穫機構111の振り子振動の一方向の振動(回転)によって、切換車408では切換かな414を介してラチェット車413が反時計方向に回転すると、ラチェット車413が切換つめ415でロックされないので、ラチェット車413の回転は切換歯車412に伝達しない。一方、振動収穫機構111の振り子振動の他方向(逆方向)の振動よって、切換車409では切換かな424を介してラチェット車423が反時計方向に回転すると、ラチェット車423の規制方向が切換車408と異なるために、ラチェット車423が切換つめ425でロックされるので、ラチェット車423と同期して切換歯車422も反時計方向(R8方向)に回転する。この回転が切換車408側の切換歯車412に伝達され(切換歯車412と切換歯車422はたとえば歯車で噛み合っている)、切換歯車412は時計方向(R7方向)に回転し、さらにこの切換歯車412の回転により第1の変速機構410の歯車411が反時計方向(R9方向)に回転する。
【0020】
次に、振動収穫機構111の振り子振動の逆振動(逆回転)によって、切換車408では切換かな414を介してラチェット車413が時計方向に回転すると、ラチェット車413が切換つめ415でロックされるので、ラチェット車413の回転に従い切換歯車412も時計方向(R7方向)へ回転する。この切換歯車412の回転により第1の変速機構410の歯車411が反時計方向(R方向9)に回転する。一方、振動収穫機構の逆回転によって、切換車409では切換かな424を介してラチェット車423が時計方向に回転すると、ラチェット車423の規制方向が切換車408と異なるために、ラチェット車423が切換つめ425でロックされないので、ラチェット車423の回転は切換歯車422に伝達しない。以上のように、振動収穫機構111がどのように回転しても、第1の変速機構410の歯車411は一定方向{図15では反時計方向(R9方向)}へのみ回転する。
【0021】
さらに、この機構112には逆回転を防止するラッチ機構が配置されている。たとえば、ゼンマイを巻き上げていくとその復元力で巻き戻そうとする力も働き、巻き戻されるとエネルギーが大きくロスしてしまう。これを防止するための機構がラッチ機構である。すなわち、ラッチ機構とは、一方向のみに回転して回転毎に係止し逆回転を防止する機構であり、たとえばつめ車とつめでなるラチェット機構やドーボ機構がある。
【0022】
図16はラッチ機構の一例を示す図である。ゼンマイ(渦巻きバネ)511を内蔵したつめ車512において、ゼンマイ511の外側の一端はつめ車512の内面に固定され、ゼンマイの他端(ゼンマイ中心)は支軸513に固定されている。つめ車512はラチェット様の歯車がついており、支持台に固定ピン513で回転自在に固定された(ラッチ機構の)つめ514がつめ車512のラチェット歯に嵌合できるようになっている。ゼンマイ511がつめ車512の内面に巻かれる(たとえば、図16の矢印R6方向につめ車を回転させてゼンマイ511を巻く場合)と、その復元力でつめ車512は矢印R6とは逆方向への回転力が働くが、ラッチ機構のつめ514がつめ車512の歯に係止しているため逆方向への回転が抑えられている。すなわちゼンマイ511の逆回転が規制されているので、ゼンマイに回転力を蓄積(蓄力)することができる。充分な蓄力が行なわれたら、つめ514をつめ車512の歯からはずせば(ラッチ機構解除)、ゼンマイ511が一気に力を解放できる。このゼンマイ511は、振動収穫機構の振動エネルギーを回転エネルギーとして蓄積したエネルギー形態と考え、解放されたゼンマイの回転力を第1の変速機構を用いて減速すれば良い。また回転方向が2通り存在すればこのようなラッチ機構に一方向回転整列機構を組合せれば良い。S字ゼンマイのようなゼンマイの場合にも回転方向が2通り存在するので、この一方向回転整列機構を使用できる。尚、S字ゼンマイを使用することによって、トルクを一定(フラットトルク)にできるので、S字ゼンマイを巻き上げる力とS字ゼンマイを解放する力をほぼ一定にでき、発電能力を一定に保持できるという利点がある。
【0023】
図16に示すラッチ機構は、ラチェット機構の一例であるが、他の手段を用いても良い。たとえば、ストッパを設けて逆回転を防止することもでき、そのストッパを外せば(ラッチ機構解除)逆回転させることもできる。尚、ラッチ機構は、本発明の蓄力機構にも使用できる。たとえば、蓄力機構で用いるゼンマイが、図16で示すゼンマイ(渦巻きバネ)511であると考えれば良い。
【0024】
一方向回転整列機構112を通して振動収穫機構111の振動エネルギーを回転エネルギーに変換して、第1の変速機構113の輪列(歯車)により減速する。第1の変速機構113の減速によりトルク力を高めて蓄力機構114のゼンマイを巻き上げる。第1の変速機構113は複数の歯車からなる輪列機構で、蓄力機構114のゼンマイを効率良く巻き上げることができるように輪列機構の変速比を調節することができるようになっている。また、蓄力機構114のゼンマイのオーバーチャージを効果的に排除する機構を取り付けても良い。さらに、振動収穫機構111の力量の伝達や第1の変速機構の変速比等の調節やオーバーチャージ等をコントロールする制御機構(たとえば、センサー付きIC)を設けても良い。尚、振動収穫機構11の力量が不足している場合や緊急に発電する必要がある場合などには、自力でゼンマイを回転できるように手動の手巻き機構117を第1の変速機構113や蓄力機構114に備えても良い。この手動の手巻き機構117の方式も手動式腕時計などに使用されている従来方法を採用することができる。
【0025】
蓄力機構114に用いるゼンマイは通常の単一材料(たとえば、高炭素鋼、ステンレス鋼、Co-Ni合金)からなるもので、腕時計や置き時計などに使用されている従来のゼンマイを使用することができる。また、このゼンマイは香箱に収納されても良い。蓄力機構114のゼンマイが充分に巻き上がった後に(完全蓄力状態で)、第2の変速機構115に接続して輪列(歯車)機構を用いて、ゼンマイの解放(巻き戻し)による回転運動を増速させ、発電機構116で発電する。発電機構116は、たとえば磁石とコイルを用いた電磁誘導発電であり、薄さが要求される場合はフラットタイプとすれば良い。発電機構116は充放電制御機構119により発電速度や発電量が制御されている。たとえば、発電機構116において発電された電気により負荷120で仕事をするが、充放電制御機構119はその負荷量に応じて放出する電気量をコントロ−ルできる。また、発電速度を制御するために充放電制御機構119からの信号を変速機制御機構118に送り、第2の変速機構の変速比を変更するなどして、複数の歯車から構成される第2の変速機構の輪列の回転速度を調整することができる。負荷120は末端の電子機器であり、たとえば携帯電話や時計等の携帯機器であるが、電流(電荷)むらを吸収したり、蓄電したりする電気二重層キャパシタや二次電池を備えても良い。充放電制御機構や変速機制御機構として充放電制御回路や変速機制御回路等を組み込んだLSIを搭載しても良い。
【0026】
次に、図1に示す本発明の振動エネルギー変換発電機構のシステム構成の具体的実施形態を説明する。本実施の形態に係る蓄力装置1は、例えば腕時計に搭載されており、蓄積した電気エネルギーを腕時計に内蔵された発振回路等の電源として用いるものである。
【0027】
蓄力装置1は、図2に示すように、ロータ3と、自在継手5と、エネルギー蓄積部7とを備えている。ロータ3は、振動を受けて中心軸Gの回りを回転するものであり、図4に示すように、正面視扇型形状を成し、フレーム(ロータ腕部)9の外周側部に錘11が固定されている。尚、図4においては、ロータを扇型形状としているが、半円形形状や逆扇型形状(円形から扇型形状を抜いた形状)等他の形状を有しても良い。
【0028】
ロータ3のフレーム9にはロータ3の回転中心に正面視円形の孔部13が形成されており、孔部13に自在継手5が挿入されている。
【0029】
自在継手5は、図6〜図8に示すように、球体15と、球体15の受部17と、球体15に固定したロータ側軸部19a、19bと、受部17に固定した出力軸21とを備えている。この自在継手5は、ツエッパ型ジョイント(Rzeppa joint)またはボール式等速ジョイントと呼ばれているものである。
【0030】
球体15は、ロータ3の静止状態における中心軸G(図2参照)に沿って複数のボール溝23が形成されており、ボール溝23には各々ボール25が配置されている。また、球体15には、ロータ3の静止状態における中心軸Gに直交する面内方向には、球体15からロータ側軸部19a、19bが突設されている。ロータ側軸部19a、19bは各軸線が球体の中心を通っている。これらのロータ側軸部19a、19bは、図8に示すように、ロータ3の孔部13の内周面に固定されている。
【0031】
受部17は球体15の半分以上を囲み、内面が球面の一部を形成している。受部17の内面にはボール25を受けるボール溝27が球体15のボール溝25に対応した位置に設けてある。また、受部17には球体15から突設するロータ側軸19a、19bを通す軸溝29a、29bが形成されており、ロータ側軸19a、19bは対応する各軸溝19a、19b内を移動自在になっている。
【0032】
受部17に固定した出力軸21は、図2に示すロータ3の静止状態において、ロータ側軸19a、19bと直交した位置にある。尚、出力軸21は、その位置が固定されており回転のみが可能にしてある。
【0033】
図2に示すように、受部17に固定した出力軸21には、歯車列31を介してエネルギー蓄積部7に連結されている。エネルギー蓄積部7は、出力軸21に歯車列31を介して歯合し、回転する回転軸33と、ケース35と、ぜんまい36(図3参照)と、ケース35内に設けた回転用フレーム37と、回転用フレーム37に固定したマグネット39と、ケース35内でマグネットに対向配置したコイル41と、コイル41に接続された蓄電回路部43とを備えている。蓄電回路部43では、コイル41で生じた発電電流をキャパシタ45に蓄電する。そして、キャパシタ45に接続した負荷に蓄電した電流を供給するようになっている。
【0034】
図3に示すように、回転軸33には、ぜんまい36の内周側端36aが固定されており、ぜんまい36の外周側端36bは回転用フレーム37に固定されている。また、回転用フレーム37にはケース35に係止するストッパ43が設けてあり、ストッパ43は所定以上の力を受けるとケース35に対して引込んでケース35との圧接が外れるようになっている。
【0035】
尚、図3に示すぜんまい36は一方向へ巻き上げるものであるが、図21に示すようなS字状のS字ぜんまいを使用しても良い。図21(a)はS字ぜんまいが解放された状態を示し、図21(b)はS字ぜんまいが蓄力された状態を示す。S字ぜんまい101は解放時、図21(a)に示すように、ゆるんでおりS字形状を示す。またS字ぜんまい101は蓄力時、図21(b)に示すように、回転軸103(または回転軸105)の周りに巻き上げられた状態となる。図22は、S字ぜんまいおよび通常のぜんまいのトルクと解放時間との関係を示す図である。通常のぜんまいは、ぜんまいの蓄力量とともにトルクが増大する(曲線B)が、S字ぜんまいは蓄力開始まもなくトルクが増大しその後ほぼ一定値のトルクが働く(曲線A)。すなわち、S字ゼンマイを使用することによって、トルクを一定(フラットトルク)に保持できるので、蓄力量が最大となっても初期とほぼおなじトルクとなる。従来のぜんまいは蓄力量最大で最大のトルクを示すので、逆回転を防止するラッチ機構、前述のラチェットの切換え車ないし後述する微細毛構造において、最大のトルクに合わせた制動力を有するラッチ機構となる。そうすると、機構の寸法が大きくなり、すなわちラッチピッチが大きくなり例えば微小振動でのエネルギー収穫率が低下する。それに対して、このようにS字ぜんまいを用いると蓄力量が最大となっても初期とほぼおなじトルクとなるので、ラッチ機構が大きくなることはなく、微小振動でのエネルギー収穫率が向上する。また後述するように広範囲な振動スペクトルを収穫することも可能となる。
【0036】
次に、本実施の形態にかかる蓄力装置1の作用及び効果について説明する。携帯により受けた振動が、ロータ3に作用してロータ3を回転させる。
この場合、図5に示すように、ロータ3にはロータ3の面内方向(X−Z方向)成分の力と、X−Z面に直交するY方向成分の力とが作用する。換言すれば、ほとんどの振動はX−Z成分と、Y成分の方向の力を持つ。したがって、ロータは図5に示すようにX−Z方向の成分の力によりその中心軸周りを回転する。(ロータ3が静止しているときにおいて、Z方向はロータ3の面内方向で上下方向(鉛直方向)であり、X方向はロータ3の面内方向で水平方向でZ方向に垂直方向であり、Y方向はロータ3面に垂直方向でX方向およびZ方向に垂直方向である)
【0037】
ロータ3は自在継手5を介して出力軸21に連結されているから、Y方向の成分の力を受けると、ロータ3はY方向に振れつつ回転する。この場合、Y方向の力は、ロータ3を振れさせて、逃しているので、Y方向の力がロータ3の回転を阻害するのを防止できる。従来のロータの構造では、自在継手構造の部分はベアリング構造だけであるから、Y方向の力成分がベアリングをY方向に押しつけるために、X−Z方向におけるロータの回転を抑制する。しかし、本発明の自在継手5によって、この抑制は大幅に軽減される。
【0038】
また、ロータ3の振れが戻るときには自在継手5が回転しているからロータ3が戻るときの力の一部をX−Z成分の力として取り出すことができる。すなわち、Y方向の力成分がX−Z方向の成分の力に変換されて、X−Z方向のロータの回転を加速し、ロータ3の回転面(X−Z方向)に限らず、Y方向の振動成分の一部を出力軸21の回転力として取り出すことができ、蓄力効率を高めることができる。
【0039】
本実施の形態では、自在継手5はロータ3の中心軸に形成した孔部13内に挿入して取付けてあるから、自在継手5がロータ3から突設する寸法を小さくでき、装置の小型化を図ることができる。
【0040】
また、自在継手5は、球体15の中心を通る一方側及び他方ロータ側軸19a、19bをロータ3の中心軸の孔部13に取付けてあるから、図8に示すように、ロータ側軸19a、19bはロータ3内に収めることができ、ロータ側軸19a、19gがロータ3から突設しないので、この点においても装置の小型化を図ることができる。
【0041】
自在継ぎ手5はY方向に比較的自由に回転するので、上記のロータ3はY方向に自由に回転する。このロータ3が他の機器に衝突して破損する恐れもあるので、ロータ3のY方向の動きを抑制することが望ましい。また、Y方向の力成分の一部をX−Z成分の力として取りだすことができるが、Y方向の自由な回転はエネルギー的にロスが大きい。そこで、図9(a)に示すようにロータ3の錘部51の端部の両外側にガイド53を設ける。ガイド53には回転自在なベアリング55が備わっている。紙面に垂直方向はX方向、上下方向がZ方向であり、ロータ3はX−Z面で回転し、エネルギーを蓄積する。本発明のロータは上述したようにY方向にも移動(回転)可能であるが、移動が大きすぎると破損やエネルギーロスが発生するので、ガイド53によってロータ3のY方向移動(回転)が抑制される。
【0042】
図9(b)および図9(c)は図9(a)に示すY方向移動(回転)制限機構を説明する図で、上方から見た図でロータ3の錘51がY方向移動(回転)制限機構53に当たる部分で見ている。すなわち、X−Y面の図であり、紙面に垂直方向がZ方向である。ロータ3の錘51がY方向のみにPの力でベアリング55に当たった場合、Y方向のみの力であるからベアリング55は動かない。このときはロータ3の錘51へ及ぼす摩擦が大きい。図9(c)に示すように、Y方向だけではなく他の方向の力も加わった力Sでベアリング55に当たると、ベアリング55はR方向へ回転する。この回転によってロータ3の錘51はT方向(X方向を向いている)へ動く。これはロータ3の錘51がX−Z平面でロータ3が回転することを意味するので、ロータ3のX−Z平面における回転を加速させて、エネルギー蓄積に寄与することになる。通常Y方向だけの力は極めてまれであり、殆どが図9(c)に示すようなY方向よりも傾いた斜め方向の力Sであるから、本発明のガイド機構53を備えることによって、さらにエネルギー蓄積を増大させることができる。
【0043】
図10はロータのY方向移動(回転)を抑制するY方向移動(回転)制限機構の別の実施形態を示す図である。図9では、ロータ3の錘51の両外側に設けたガイドであったが、図10はロータ3の錘51がガイドの両側に配置されたY方向移動(回転)制限機構である。図10(a)に示すように、自在継手5にロータ3はX−Z平面で回転自在に取り付けられている。また、ロータ3は自在継手5を介して出力軸21に連結されており、Y方向の力を受けると、ロータ3はY方向にも振れながら回転する。ロータ3の外周には錘51が備わりロータ3と一体に動作する。この錘51の外端はU字形に外側から巻いた形状をしており。そのU字形の内側にガイド57が入り込んでいる。このU字形錘部の断面形状を図10(b)に示す。錘部51の外端は、両側の平行な板状体51aおよび51b、底部板状体51cでU字形状を形成する。ロータ3がX−Z面で鉛直方向(Z方向)に静止しているとき、ガイド57は、錘部51の平行な板状体51aおよび51bの間に、これらの板状体から離間して略中間位置になるように、またU字形の底部51bからも離間して配置されている。ガイド57の先端部にはベアリング59が回転自在に取り付けられている。
【0044】
ロータ3がX−Z面だけで回転するとき、すなわちY方向の力が働かないときは、ガイド57およびベアリング59には接触しないで、図10(b)に示すようなガイド57とU字形錘部の状態を保持しながら、回転する。図10(a)に示されているように、ロータ3の錘51の先端部は扇形状になっており、ガイド57はその内側に入って中空状の円板形状となっており、固定されている。ガイド57の円板の両平面板にベアリング59が取り付けられている。ロータ3がY方向の力を受けるとロータ3および錘部51はY方向に移動(回転)するので、U字形状の錘部51の先端部51aまたは51bはベアリング59に接触し、ベアリング59をY方向に押すが、ガイド57は固定されているので、ロータ3および錘部51のY方向への移動(回転)が制限される。また、ベアリング59は回転自在なので、図9(c)において説明したように、Y方向から少しでも傾斜した力によってロータ3および錘部51はX−Z平面で回転する。図9および図10に示すような簡単なY方向移動(回転)制限機構によって、Y方向への移動(回転)を制限でき、内部に配置される機器や部品の破損等を防止できるとともに、Y方向の力をX−Z平面におけるロータの回転力へ変換して利用できる。
【0045】
モーションロガーをカバン内に入れて歩行時の加速度周波数スペクトルの時間変化を測定によって、Z軸方向(人体の立ち位置方向)のモーションが加速度・周波数成分とともに大きいことが分かった。従って、Z軸方向の動作によるエネルギーを有効に収穫(エネルギーハーベスト)する必要がある。従来のロータはY方向への力が働くと(X−Z平面における)ロータ芯(回転軸)に配置されるベアリングを回転軸方向に押すため、ロータの回転を抑制してしまうが、さらにZ方向(上下方向)の動きに関してもロータは振り子構造であるため、ロータの重心に対して平衡状態の時にZ方向の純粋な力が加わっても動かない。しかし、本発明の自在継手を有するロータはX方向にもY方向にも動くので一旦X方向またはY方向へ動き始めると、重心がオフセットするので、Z軸方向の力もロータの回転に寄与できる。従って、Z軸方向の動作によるエネルギーも効率良く活用できる。
【0046】
また、従来のロータの場合、力(加速度等による)のY方向成分によってロータ芯(回転軸または出力軸)を押しつける力が作用してロータの回転が抑制される。そこで、図11に示すような可倒式のロータ61を採用すると、従来のロータでもロータ芯(回転軸)に及ぼすY方向への力を大きく低減できる。図11は、本発明の可倒構造を有するロータ61を示す図である。ロータ芯(回転軸)63にロータ芯枠65が一体となっている。また、ロータ芯枠65はロータ腕部(フレーム部)67につながり、ロータ腕部67の外周は回転錘69となり、回転エネルギーが大きくなるように他の部分のロータに比べ重くなっている。
【0047】
ロータ芯枠65とロータ腕部67は可倒構造71で接続している。図11(b)はこの可倒構造71を拡大して示している。すなわち、ロータ芯枠65およびロータ腕部67は蝶番構造73になっており、Y方向(図11(a)および図11(b)では紙面に垂直方向で、図11(c)では図に示すように紙面の左右方向)に回転できるようになっている。しかし、X方向(図11(a)および図11(b)では図に示すように紙面の左右方向で、図11(c)では紙面に垂直方向)やZ方向(図11(a)、図11(b)および図11(c)において、図に示すように紙面の上下方向)には動かない。図11に示す可倒構造71を有するロータ61はX−Z平面の動き(ロータ芯およびロータ軸受75の周りの回転運動)においては、ロータ芯枠65、ロータ腕部67および錘部69は一体物として機能する。従ってロータ61全体が一体に動作する。
【0048】
一方、Y方向の加速度αに対して、ロータ61全体に加速度αが作用するが、ロータ61の質量の大半はロータ腕部67およびロータ回転錘69が占めているので、加速度αにより一体となったロータ腕部67およびロータ回転錘69が可倒部71を中心として移動(回転)する。可倒部71の蝶番構造73はY方向に対しては回転自在(回転面はY−Z平面)なので、このロータ腕部67およびロータ回転錘69の回転はロータ芯枠65の動作には殆ど影響しない。また、加速度αは一体となったロータ芯枠65およびロータ芯63にも作用するが、ロータ芯枠65およびロータ芯63の質量は小さいので、ロータ芯枠65およびロータ芯63のY方向への力の作用は小さい。従って、Y方向の加速度αが作用しても、ロータ芯63がロータ軸受75を押す力は小さいので、ロータ軸受75に配置されるベアリングを押す力も小さく、ロータ芯63のX方向の移動(X−Z面での回転)に対する影響は少ない。
【0049】
図12は、振り子構造の周波数特性を示すグラフである。図12(a)は可倒構造のない従来の振り子(全体が一体のロータ)の周波数特性であり、重心距離を9.46mmとしたときの周波数特性と加速度との関係曲線である。可倒式でない回転錘(ロータ)の場合、周波数特性は加速度による依存性が小さい。図12(b)は可倒構造を有する本発明の振り子の周波数特性であり、加速度を1Gに一定としたときの周波数と重心距離との関係曲線である。可倒式回転錘(ロータ)の場合、周波数依存性が高く広い帯域のエネルギー収穫が可能であることが分かる。
【0050】
可倒構造とすることによって、Y方向の加速度(力)が作用したときに振り子(ロータ)の重心位置の変動が発生する。振り子の振動周期Tは、T=2π(l/g)1/2で表される。従って、重心位置が変化することによって、ロータ(回転錘)の共振周期が変わり、エネルギーハーベスト(収穫)帯域幅が向上する。以上説明したように、回転錘(ロータ)内部を可倒構造とすることによって、Y方向の過渡的な摩擦力を軽減することができる。
【0051】
図13は、振り子(ロータ)構造の違いによるエネルギー発生量を比較する図であり、水平方向の蓄力と上下運動の蓄力との関係を示している。縦軸に上下運動蓄力時動作時間(分)、横軸に水平方向蓄力時動作時間(分)を示す。図13において、菱形印が可倒式回転錘を(腕に)装着した場合、正方形印が従来の可倒構造のない回転錘(未加工回転錘)を(腕に)装着した場合における測定結果である。可倒式回転錘を装着した場合は未加工回転錘を装着した場合と比較して、上下運動時は平均+130%、水平運動時は平均+77%エネルギー収穫能力が優れていることが分かる。さらに水平方向より上下方向(Z軸方向)における効果がより大きいことも分かり、Y方向の力を利用する本発明の可倒式回転錘は3次元の動作に関して効率を向上させることも分かる。
【0052】
図17は、一定角度を持って基板に配置された微細毛を用いた回転ラッチ機構を示す模式図である。図17(a)に示すように、基板321に微細毛322を、一定角度αをつけて成長あるいは植毛させる。たとえば、図17(b)に示すように、基板321上に微細毛322のシーズ膜323を形成した後絶縁膜324を積層する。この絶縁膜324に一定角度αを有する溝(斜溝)325を微細毛322のシーズ膜323に達するまで形成した後、微細毛322の膜を溝325内にシーズ膜323から選択成長させることによって、基板面に対して一定角度αを有する微細毛322を形成できる。この選択成長法としてたとえば、CVD(化学気相成長)法、蒸着法、メッキ法等がある。微細毛322の材料は、たとえば有機系材料、導電体材料、ガラス繊維などがある。図17(c)に示すように、このような一定角度を持って配置(配向)された微細毛を回転円板体326および327の側面に形成し、これらの円板体326および327の側面を合わせて回転伝達系を作ることができる。
【0053】
回転円板体326の側面(回転面)に形成された微細毛331の配向方向に合わせて、配向された微細毛332を有する回転円板体327の側面(回転面)を配置する。(微細毛は回転円板体の側面(回転面)における接面に対して一定角度で傾いて植毛または成長している。)円板体326の側面に配置された微細毛331の配向方向はR3と逆方向で、円板体327の側面に配置された微細毛332の配向方向はR4と逆方向とする。円板体326が回転軸328の周りにR3と逆方向に回転すると、微細毛331と微細毛332は噛み合わないので、円板体326は空回りして円板体327は回転しない。円板体326が回転軸328の周りにR3方向に回転すると、微細毛331と微細毛332は噛み合うので、円板体327はR4の方向に回転する。このときは、円板体326や327は歯車と同じ働きをして互いの回転を伝達することができる。
【0054】
図18は、一定角度を持って配置(配向)された微細毛を用いて逆回転を規制したラッチ機構付き回転体の別の実施形態を示す図である。この実施形態はボルト状回転体とナット状回転体を構成するラッチ機構付き回転体である。ボルト状回転体346は軸348の中心Mの周りに回転できる。ボルト状回転体346の円柱軸347の側面には、多数の微細毛351が一定角度を有して配置されている。また、このボルト状回転体346を受けるナット状回転体349の円筒状内側面350にも多数の微細毛352が一定角度を有して配置されている。このナット状(円筒状)回転体349はその中心Nの周りに回転できる。
【0055】
図18(b)は、この微細毛を用いたボルト・ナット状ラッチ機構付き回転体の側面断面図を示す図である。図18(b)に示すようにボルト状回転体346の円柱軸347はナット状回転体349の内側にはまる。このとき、微細毛351および352は互いに同じ向きに揃うように略対称形で、微細毛351および352は、円柱軸347および円筒状内側面350の円周方向に傾斜して配置されて、組み合わさっている。(図18(b)は回転体347および349の側面断面図であるから、微細毛351および352は回転体側面に垂直方向に揃って噛み合っているが、実際には円周方向に傾斜しながら噛み合っている。)微細毛351および352が同じ向きを向いている方向と逆方向に回転させる場合、すなわちボルト状回転体346をR5の向きに回転させる場合、微細毛351と微細毛352が噛み合って摩擦力が大きくなるため、ナット状回転体349がR6の向きに回転する。逆に微細毛351および352が同じ向きを向いている方向に回転させる場合、すなわちボルト状回転体346をR5と逆向きに回転させる場合、微細毛351と微細毛352の噛み合いは全くなくなり摩擦力が殆どなくなるため、ボルト状回転体346は空回りしてナット状回転体349は回転しない。
【0056】
このようにして微細毛を用いて、逆回転を規制した(逆回転に対して他方が回転しない)ラッチ機構付き回転体を作製できる。この微細毛を用いたラッチ機構付き回転体は微細毛のピッチを細かくできるので、微細な回転体も形成でき、本発明の振動発電機構を小型化することが可能となる。また、微細毛を用いたラッチ機構付き回転体は接触形態が面接触なので、強度が大きく耐久性に優れている。微細毛の各々が数十μmとしても、ラッチはランダムに行なわれるので、数μm程度の分解能ラッチすることが可能となり、微細化の点でも利点がある。さらに、ラッチ機構付き回転体を2つ組み合わせることによって、どちらの方向の回転に関しても一方向の回転に変換できるので、切換え車として使用することもできる。このラッチ機構は、第1の変速機構、第2の変速機構に適用することができる。
【0057】
図12に示す本発明の可倒式回転錘(ロータ)を本発明の(Y方向)自在継手と組み合わせることによって、Y方向の力またはY方向の力成分を利用してさらに効率の良いエネルギー収穫機構(エネルギーハーベスト)を構築することができる。また、図9および図10に示すようなY方向の過度な移動(回転)を制限したY方向移動(回転)制限機構と組み合わせることによって、Y方向の過度な移動(回転)によるロータや他のシステムの破損を防止することが可能となる。図14は、可倒式回転錘(ロータ)および(Y方向)自在継手並びにY方向移動(回転)制限機構を合わせ持つシステムを示す図である。図14に示すロータは自在継手5に取り付けられておりY方向の力に対してもロータがX−Z方向に力のロスがなく回転できるようになっている。
【0058】
ロータ77は自在継手5と連結したロータ芯枠65とロータ腕部67の間において可倒構造71を有している。従ってY方向成分の加速度を受けても可倒構造71を中心としてロータ腕部67およびロータ回転錘69が往復矢印R方向に回転するだけで、ロータ芯枠65および自動継手5にこの回転力は殆ど伝達しない。従って自動継手5においてY方向へ押しつけられる力はロータ芯枠65および自動継手5自身に対する加速度が与える力だけなので非常に小さい。本発明の自動継手5は既に説明した様にY方向の力を受けてもX−Z方向における発電に有効なロータ71の回転に対する影響は殆どないが、図14に示す可倒構造71を取り入れることによって、Y方向の力がロータ71の回転へ及ぼす影響をさらに軽減することができる。またロータ71の回転半径が可倒構造71により小さくなるのでその変位量も小さくなる。
【0059】
さらに図14(a)に示す構造は、図9に示すようなY方向移動(回転)制限機構53を備えているので、回転錘69の過度な回転を防止するとともに、ベアリング55によってY方向の回転錘69の力がX−Z方向への力へ変換されるので、発電に有効なロータ77の回転にY方向の力を活用することができる。また、図14(b)に示す構造は、図10に示すようなY方向移動(回転)制限機構58(ガイド57、ベアリング59を含む)を備えているので、回転錘51(51a、b、cを含む)の過度な回転を防止するとともにベアリング59によってY方向の回転錘69の力がX−Z方向への力へ変換されるので、発電に有効なロータ77の回転にY方向の力を活用することができる。このように図11に示すような可倒構造およびY方向移動(回転)制限機構を本発明の振動エネルギー変換発電機構に付加することができ、Y方向の力がX−Z方向の移動(回転)に及ぼす影響(阻害効果)を軽減できるとともに、逆にY方向の力をX−Z方向の移動(回転)を加速する効果を高めることができる。
【0060】
図19は、本発明の振動エネルギー変換発電機構を腕時計に適用した実施例を示す図である。自在継手を有するジョイント部84、Y方向移動(回転)制限機構であるガイド83、ベアリング部85、回転錘部81を含む振動収穫機構の振動エネルギーを1番車から各穴車の輪列歯車(一方向回転整列機構+第1の変速機構)86によって回転エネルギーが伝達され、香箱(蓄力機構)88内のぜんまいに蓄力される。輪列歯車86は一番受け等の各種受け87でカバーされ、これらは字板89に組み付けられる。香箱88内の巻き上げられたぜんまいからの回転エネルギーを発電機用輪列(第2の変速機構)90で増速回転させて、発電機構91で発電させる。得られた電気で内蔵したLSIや表示素子を表示させる。あるいは、このような本発明のシステムを用いた腕時計用自動巻き機構を用いて発電させ、各種の携帯機器を動作させることもできる。
【0061】
本発明の振動エネルギー変換発電システムの変換効率は30%以上であり、取り出せるエネルギー総量は10μW〜1mWであり、効率の点では他のエネルギー変換発電システム(たとえば、光/電気変換(太陽電池)システムは10%程度)に比較すると非常に高く、取り出せるエネルギー量(たとえば、光/電気変換(太陽電池)システムは2〜10μW程度)も非常に大きい。
【0062】
図20は、人体が動いているときに受ける振動スペクトルとパワースペクトルの関係を示す図である。人間が歩行しているときは、20Hz以下の振動のパワー密度が多く、車中内にいるときは、100Hz程度までの振動エネルギーが多い。従来の振動発電(振動→発電→充電)システムで収穫可能な周波数スペクトルは20〜50Hzの間であるから、歩行時は殆どエネルギーを収穫できないし、低周波および高周波帯の振動には対応できない。これに対して本発明の振動エネルギー変換発電システムは1Hz以下(0.2Hz程度)〜300Hz程度までの広範囲な振動スペクトルに追随できるので、広いスペクトルの振動エネルギーを収穫できる。従って、本発明の振動エネルギー変換発電システムは高効率で高収穫の発電システムである。
【0063】
本発明を概要すると、本発明は、高効率の振動エネルギー変換発電システムを提供するもので、振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、逆回転を防止するラッチ機構、整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む振動エネルギー変換発電機構である。特に、振動収穫機構は、振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータ、ロータの中心軸部に連結した自在継手および自在継手の出力軸を含み、出力軸方向の力に対して自在継手が回転して、ロータの回転に活用する機構を有することを特徴とするものである。
【0064】
尚、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。たとえば、エネルギー蓄積部7は、電流の蓄電に限らず、出力軸21がぜんまい36を締め付けた状態で運動エネルギーとして保持し、運動エネルギーの取り出し時に、ぜんまい36を開放して、回転用フレーム37の回転力を駆動力として取り出すものであっても良い。蓄力装置は、携帯機器に限らず、海洋の波等による振動をロータが受けるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の振動エネルギー変換発電システムは、各種の携帯用機器だけでなく、車体等の振動を発生する装置に付随する機器に適用することができ、振動を発生している限りは常に充電される状態になっている。また、図1に示す各機構は独立して使用し、または他のシステムに組み合わせることも可能である。特に、自在継手を有するロータは振動エネルギーを回転エネルギーに変換するシステムに組み込むことができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・蓄力装置、3・・・ロータ、5・・・自在継手、
7・・・エネルギー蓄積部、13・・・ロータ軸の孔部、15・・・球体、
17・・・受部、19a、19b・・・ロータ側軸、21・・・出力軸、
111・・・振動収穫機構、112・・・一方向回転整列機構、
113・・・第1の変速機構、114・・・蓄力機構、115・・・第2の変速機構、
116・・・発電機構、117・・・手巻き機構、118・・・変速機制御機構、
119・・・充放電制御機構、120・・・負荷、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含むことを特徴とする振動エネルギー変換発電機構。
【請求項2】
前記一方向回転整列機構と前記第1の変速機構の間に、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構をさらに含むことを特徴とする振動エネルギー変換発電機構。
【請求項3】
前記ラッチ機構は配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項4】
前記第1の変速機構に手巻き機構が付随していることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項5】
前記第1の変速機構における減速比は1/5であり、および/または第2の変速機構における増速比は5であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項6】
前記第2の変速機構にさらに変速制御機構が付加されるとともにゼンマイが完全巻き上げ状態であることを検出してゼンマイを自力解放する機構が付加されており、および/または前記振動エネルギー変換発電機構に充放電制御回路を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項7】
前記充放電制御回路において充放電の状況を監視しながら、前記変速制御機構によりゼンマイを断続的に解放することを特徴とする、請求項6に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項8】
前記第1の変速機構および/または前記第2の変速機構に配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項9】
振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータと、ロータの中心軸部に連結した自在継手と、自在継手の出力軸に連結したエネルギー蓄積部とを備え、自在継手はその出力軸に対して互いに軸線が交差するロータ側軸を備え、ロータ側軸の回転により出力軸が回転してロータの運動エネルギーをエネルギー蓄積部に伝達することを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項10】
振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータと、ロータの中心軸部に連結した自在継手と、自在継手の出力軸に連結したエネルギー蓄積部とを備え、自在継手はその出力軸に対して互いに軸線が交差するロータ側軸を備え、ロータ側軸の回転により出力軸が回転してロータの運動エネルギーをエネルギー蓄積部に伝達することを特徴とする振動エネルギー変換発電機構。
【請求項11】
前記ロータは中心軸部に孔が形成してあり、前記自在継手は、ロータの中心軸部の孔内に配置してあり、球体と球体の半分以上を囲み内面が球面の一部を形成している受部とを備え、ロータ側軸はその軸線が球体の中心を通り球体から突出する一方及び他方の軸部を有し、一方及び他方のロータ側軸部はロータの回転面の面内方向でロータの中心軸部に取付けてあることを特徴とする請求項9または10に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項12】
前記自在継手の出力軸方向と垂直面内方向の力に対して、前記ロータは当該垂直面内方向に回転可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項13】
前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータは自在継手と一体で出力軸方向に回転可能であるとともに、出力軸方向と垂直面内方向においても前記ロータは回転可能であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項14】
前記ロータは、前記ロータの軸受枠部およびロータ錘部の間に可倒部が存在する可倒構造となっており、前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータのロータ錘部側は前記可倒部を中心として回転可能であり、前記自在継手の出力軸方向の力を受けたとき、前記可倒構造によって前記ロータの出力軸方向と垂直面内方向における回転を抑制する作用を軽減できることを特徴とする請求項9〜13のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項15】
前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構が前記ロータのロータ錘部の出力軸方向の両外側に備わっていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項16】
前記ロータのロータ錘部の外周が略U字状に形成され、前記U字状の空間に前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構が備わっていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項17】
前記制限機構にベアリング付設され、前記自在継手の出力軸方向の力に対して前記ロータが動作したときに前記ロータ錘部が前記ベアリングに当たるとともにベアリングが回転して、前記ロータを前記ロータの出力軸方向と垂直面内方向へ回転させることを特徴とする請求項15又は16に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項18】
前記エネルギー蓄積部は、前記自在継手の出力軸の回転により巻き締めるぜんまいと、前記ぜんまいの開放により回転する回転用フレームと、前記回転用フレームに固定されたマグネットと、前記マグネットに対向するコイルと、前記コイルに生じた電流を蓄電する蓄電部とを備えることを特徴とする請求項9〜17のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項19】
請求項9〜18のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構を備え、携帯しているときの振動を受けてロータが回転することを特徴とする携帯機器。
【請求項1】
振動エネルギーを回転エネルギーに変換する振動収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含むことを特徴とする振動エネルギー変換発電機構。
【請求項2】
前記一方向回転整列機構と前記第1の変速機構の間に、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構をさらに含むことを特徴とする振動エネルギー変換発電機構。
【請求項3】
前記ラッチ機構は配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項4】
前記第1の変速機構に手巻き機構が付随していることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項5】
前記第1の変速機構における減速比は1/5であり、および/または第2の変速機構における増速比は5であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項6】
前記第2の変速機構にさらに変速制御機構が付加されるとともにゼンマイが完全巻き上げ状態であることを検出してゼンマイを自力解放する機構が付加されており、および/または前記振動エネルギー変換発電機構に充放電制御回路を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項7】
前記充放電制御回路において充放電の状況を監視しながら、前記変速制御機構によりゼンマイを断続的に解放することを特徴とする、請求項6に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項8】
前記第1の変速機構および/または前記第2の変速機構に配向性を有する微細毛を側面に用いた回転円板体を使用していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項9】
振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータと、ロータの中心軸部に連結した自在継手と、自在継手の出力軸に連結したエネルギー蓄積部とを備え、自在継手はその出力軸に対して互いに軸線が交差するロータ側軸を備え、ロータ側軸の回転により出力軸が回転してロータの運動エネルギーをエネルギー蓄積部に伝達することを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項10】
振動を受けて中心軸部の周りを回転するロータと、ロータの中心軸部に連結した自在継手と、自在継手の出力軸に連結したエネルギー蓄積部とを備え、自在継手はその出力軸に対して互いに軸線が交差するロータ側軸を備え、ロータ側軸の回転により出力軸が回転してロータの運動エネルギーをエネルギー蓄積部に伝達することを特徴とする振動エネルギー変換発電機構。
【請求項11】
前記ロータは中心軸部に孔が形成してあり、前記自在継手は、ロータの中心軸部の孔内に配置してあり、球体と球体の半分以上を囲み内面が球面の一部を形成している受部とを備え、ロータ側軸はその軸線が球体の中心を通り球体から突出する一方及び他方の軸部を有し、一方及び他方のロータ側軸部はロータの回転面の面内方向でロータの中心軸部に取付けてあることを特徴とする請求項9または10に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項12】
前記自在継手の出力軸方向と垂直面内方向の力に対して、前記ロータは当該垂直面内方向に回転可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項13】
前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータは自在継手と一体で出力軸方向に回転可能であるとともに、出力軸方向と垂直面内方向においても前記ロータは回転可能であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項14】
前記ロータは、前記ロータの軸受枠部およびロータ錘部の間に可倒部が存在する可倒構造となっており、前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータのロータ錘部側は前記可倒部を中心として回転可能であり、前記自在継手の出力軸方向の力を受けたとき、前記可倒構造によって前記ロータの出力軸方向と垂直面内方向における回転を抑制する作用を軽減できることを特徴とする請求項9〜13のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項15】
前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構が前記ロータのロータ錘部の出力軸方向の両外側に備わっていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項16】
前記ロータのロータ錘部の外周が略U字状に形成され、前記U字状の空間に前記自在継手の出力軸方向の力に対して、前記ロータのロータ錘部の動作を制限する制限機構が備わっていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項17】
前記制限機構にベアリング付設され、前記自在継手の出力軸方向の力に対して前記ロータが動作したときに前記ロータ錘部が前記ベアリングに当たるとともにベアリングが回転して、前記ロータを前記ロータの出力軸方向と垂直面内方向へ回転させることを特徴とする請求項15又は16に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項18】
前記エネルギー蓄積部は、前記自在継手の出力軸の回転により巻き締めるぜんまいと、前記ぜんまいの開放により回転する回転用フレームと、前記回転用フレームに固定されたマグネットと、前記マグネットに対向するコイルと、前記コイルに生じた電流を蓄電する蓄電部とを備えることを特徴とする請求項9〜17のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構。
【請求項19】
請求項9〜18のいずれかの項に記載の振動エネルギー変換発電機構を備え、携帯しているときの振動を受けてロータが回転することを特徴とする携帯機器。
【図4】
【図7】
【図8】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図7】
【図8】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−198203(P2012−198203A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49862(P2012−49862)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、新エネルギーベンチャー技術革新事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(399039731)株式会社タキオン (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、新エネルギーベンチャー技術革新事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(399039731)株式会社タキオン (15)
【Fターム(参考)】
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