説明

回転工具

【課題】コンクリート等の作業面に対して、小径で深穴を形成するときに、シャンクの振動を押さえて深穴明作業を行うことができる回転工具を提供することを課題とする。
【解決手段】コンクリート製の作業面に直径が25mm未満で、前記直径の10倍以上の深穴を明ける深穴明機100に接続して使用される回転工具17において、前記回転工具は、前記深穴明機の回転駆動機構16に後端を接続するシャフト部材17Aと、このシャフト部材の先端に接続されコンクリートを切削する削穴工具17aとを備え、前記シャフト部材は、前記削穴工具および前記回転駆動機構の間で継ぎ足して接続されるシャフト17dと、このシャフト間に接続されるガイドボス5とを備え、前記ガイドボスが、前記削穴工具の直径より小さく、かつ、前記シャフトの直径より大きく形成された構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等のビットにより深穴の形成が可能な作業面に対して深穴を明けることができる深穴明機で使用される回転工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリートの建物の耐震強度を向上させるためにフレーム枠をボルトで固定する工事が行われ、コンクリートにナットを埋め込む際や、あるいは、コンクリートの内部を診断するため、コンクリートの穴明作業を行っている。
【0003】
そして、コンクリートの穴明作業には、一般的にはダイヤモンドコアビットが使用されている。この穴明作業で使用されるダイヤモンドコアビットは、直径が45mm〜25mmの大径となるものが標準として使用されている。
【0004】
また、従来のコンクリートへの穴明け技術の具体的な例としては、コンクリート製の枕木の穴明専用機として提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この穴明専用機は、軌道走行台車の枠体に垂直昇降可能なモータドリルを搭載し、この単一のモータドリルの回転軸に穿孔用コアビットまたはアダプターを介して削孔用ドリルビットを装着可能としている。そして、この穴明専用機は、モータドリルの昇降を案内する支柱を立設したスライドテーブルを基台の枠体に回動可能に軸設し、このスライドテーブルの回動によって前記モータドリルの先端に装着する前記穿孔用コアビットまたは前記削孔用ドリルビットの位置を調節し、軌道レールの外側・内側への位置合わせを行うとともに該スライドテーブルが前後左右に移動可能に構成されている。
【0005】
そして、モータドリルは、軌道走行台車の枠体に垂直昇降可能に搭載されている。この単一のモータドリルの回転軸に穿孔用コアビットまたはアダプターを介して削孔用ドリルビットを装着可能とした構成である。
【0006】
また、従来のコンクリートの内部を診断する装置の具体的な例としては、ハンマードリルを使用してコンクリート構造物に穴を明ける装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このハンマードリルを用いた装置は、作業面に固定する装置固定部と、この装置固定部に立設した案内部と、この案内部に沿って移動するハンマードリルと、このハンマードリルで明けるときの打撃による弾性波の反射波および透過波を検知する加速度計等から構成されている。なお、この装置で用いられる回転工具としては中実な棒状で螺旋状に刃が形成されたドリルが使用されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−045832号公報(段落番号0018〜0031、図1〜図8)
【特許文献2】特開2007−198907号公報(段落番号0016〜0054、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のコンクリート等の作業面に穴を明ける装置の構成では、以下に示すような問題点を有していた。
従来の装置では、使用するコアビットの直径が45mm〜25mmと大きいものを使用すると、使用するシャフトも大径となり、また、大きな駆動機構が必要になった。さらに、従来の装置では、コアビットの直径が大きいと、コンクリート内部の鉄筋を切断あるいは損傷してコンクリートの強度を逆に低下させる結果となることがあった。
【0009】
そして、従来の特許文献1,2に示す装置では、形成する穴径は、コンクリート製の床あるいは側壁に形成するために小径の回転工具を使用しているため小さく形成できる。しかし、この装置では、小径の回転工具を使用しているために、回転工具の強度が足りず振動により、回転工具の削穴工具となるドリルの10倍以上の深穴をコンクリート面に形成することは困難であった。
【0010】
特に、深穴を形成していくときに装置の回転駆動機構であるモータでの負荷を小さくしたいので、回転工具の削穴工具であるビットに接続されるシャフトを細い直径ですることが望まれているが、ビットの直径とシャンクの直径の差が所定値以上広がると、シャンクが振動して精度よい深穴を形成することができない。また、シャンクが穴内で大きく振動するとシャンク自体が破損する可能性があった。
【0011】
本発明は、前記した問題点に鑑みて創案されたものであり、コンクリート等の作業面に対して、小径で深穴を形成するときに、シャンクの振動を押さえて深穴明作業を行うことができる回転工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る回転工具は前記課題を解決するため以下のような構成とした。
すなわち、回転工具は、コンクリート製の作業面に直径が25mm未満で、前記直径の10倍以上の深穴を明ける深穴明機に接続して使用される回転工具において、前記回転工具は、前記深穴明機の回転駆動機構に後端を接続するシャフト部材と、このシャフト部材の先端に接続されコンクリートを切削する削穴工具とを備え、前記シャフト部材は、前記削穴工具および前記回転駆動機構の間で継ぎ足して接続されるシャフトと、このシャフト間に配置されるガイドボスとを備え、前記ガイドボスが、前記削穴工具の直径より小さく、かつ、前記シャフトの直径より大きく形成された構成とした。
【0013】
このような構成により、回転工具は、削穴工具でコンクリートの作業面を切削して堀進んで行くと、作業面の開口から掘り進んだ深穴内でシャンクの振動が起こるが、ガイドボスがシャフト間に配置しているために、ガイドボスと穴内壁面とが接触することでガイドしてシャンクの振動が大きくなることはない。
【0014】
また、前記回転工具において、前記ガイドボスは、前記シャフトの後端と接続する第1接続部と、つぎに接続される前記シャフトの前端と接続する第2接続部と、前記削穴工具の直径より小さく、前記シャフトの直径より大きく形成されたボス部とを備え、前記第1接続部が前記ボス部から突出して形成されると共に、前記第2接続部が前記ボス部の内側に形成され、前記第1接続部および前記第2接続部が前記シャフトの軸線方向となる直線方向に沿って配置される構成とした。
【0015】
このような構成により、回転工具は、シャフトを継ぎ足して接続する場合に、削穴工具側のシャフトの後端にガイドボスの第1接続部が接続され、回転駆動機構側のシャフトの前端にガイドボスの第2接続部が接続されて、継ぎ足すシャフトの前端となる位置にガイドボスのボス部が配置される。このように、回転工具では、継ぎ足すシャフトの前端にガイドボスが接続されるために、つぎに継ぎ足すシャフトの長さ分について穴明作業とシャフトの継ぎ足し作業を効率よく行うことができ、かつ、穴明作業時にガイドボスのボス部を、シャフトを振動させないためのガイドとして深穴内に所定間隔で配置することができる。
【0016】
さらに、前記回転工具において、前記シャフトは、互いに接続する位置から所定範囲でシャフト径が小さくなるように形成した縮径部を備え、前記ガイドボスは、前記シャフトの縮径部に挿入する筒状のボス部を有し、また、前記ボス部の内径は、前記シャフトのシャフト径より小さく、かつ、前記縮径部より大きく形成され、当該ボス部が前記縮径部に回転自在に支持された構成とした。
【0017】
このような構成により、回転工具は、シャフトを継ぎ足して接続するときに、シャフトの縮径部にボス部を挿通させた状態としてガイドボスが設置される。そして、回転工具は形成した深穴にそのボス部を挿入した状態で回転駆動機構により回転が始まると、穴内壁面にボス部が接触したときに、ボス部が縮径部の位置で自在に回転しながらその衝撃による影響を受けてシャフトをガイドすることができる。
【0018】
また、前記回転工具において、前記ガイドボスは、前記シャフトにボス部が一体に固定されて配置され、前記ボス部が、前記削穴工具の直径より小さく、前記シャフトの直径より大きく形成される構成とした。さらに、前記ボス部を、前記シャフトの削穴工具側となる一端に一体に固定されて配置される構成としてもよい。
このような構成により、回転工具は、シャフトを継ぎ足す作業を行うことで、ガイドボスをシャフト間に接続して、穴明作業を行うことができる。また、回転工具は、ボス部がシャフトの削穴工具側に配置されることにより、削穴工具から所定間隔ごとにボス部を配置することができる。
【0019】
また、前記回転工具において、前記シャフト部材は、前記削穴工具に冷却液を供給する貫通孔を、前記シャフトおよびガイドボスに形成した構成とした。
このような構成により、回転工具は、深穴明作業を行うときに、回転工具の削穴工具にシャフト部材の内側から冷却液を供給することができる。また、供給した冷却液は、形成した深穴とシャフトおよびガイドボスとの間から穴外に送られる。
【0020】
そして、前記回転工具において、前記ボス部は、外周縁から中央に向かって縮径されるように形成した面取部を両端面に備える構成とした。
このような構成により、回転工具は、深穴を明けるときにボス部の面取部があることでシャフト部材の送りをスムーズにし、かつ、深穴からシャフト部材を抜き取るときにも、ボス部の面取部がシャフト部材の深穴内での移動をスムーズにする。
【0021】
さらに、前記回転工具において、前記ボス部は、前記削穴工具により穿設される穴内壁面に平行となる周面部において長手方向に沿って切欠いた切欠面を、当該ボス部の周面に少なくとも1面以上備え、前記切欠面は、前記穴側面までの間隔が、前記削穴工具により削られて発生するコンクリート片を通過させる大きさになるように形成された構成とした。
【0022】
このような構成により、回転工具は、深穴を削穴工具により堀進めていくときに、発生するコンクリート片が削穴工具からシャフト側に送り出されたときに、ボス部の切欠面と穴壁面との間からそのコンクリート片を穴開口側に送り出すことができる。
【0023】
そして、前記した回転工具において、前記深穴明機は、作業面に着脱自在に固定する工具ガイド機構と、この工具ガイド機構に隣接して設けた基台と、この基台に支持した支柱と、この支柱に前記回転駆動機構を支持して昇降自在に設けられた案内部材と、前記削穴工具に冷却液を供給すると共に作業面に形成した深穴開口からの冷却液を回収して濾過して前記冷却液として循環させる給排水装置とを備え、前記工具ガイド機構は、前記シャフト部材のシャフトを筒状のガイドブッシュを介して回転自在に支持するように構成した。
【0024】
このような構成により、回転工具は、はじめに深穴明機を、コンクリート製の作業面上に基台を配置して固定手段により固定する。そして、支柱の案内部材に固定される回転駆動機構に回転工具を設置する。さらに、工具ガイド機構にガイドブッシュを介して、シャフト部材のシャフトを支持して地上においてガイドした状態とする。そして、回転駆動機構を駆動させることにより回転工具を回転させ、また、昇降機構により案内部材を支柱に沿って降下させることでコンクリート製の作業面に削穴工具により切削して深穴を明ける穴明作業を行う。回転工具は、穴明作業を行っているときには、シャフト部が穿孔方向において工具ガイド機構にガイドされた状態となる。さらに、回転工具は、深穴内において、ガイドボスが深穴の壁面との距離を小さくすることで、シャフトの振動を抑制する。さらに、穴明作業を行っているときに、削穴工具に冷却液が給排水装置から供給され、供給した冷却液はコンクリートの削り粉と一緒に穴開口から送りだされ、穴開口から送りだされたコンクリートの削り粉の混在した冷却液は回収されて濾過され再び冷却液として削穴工具側に供給される。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る回転工具は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
回転工具は、削穴工具の直径とシャンクの直径との差が大きくなっても、ガイドボスがシャフト間に配置されるため、シャンクの振動を最小限に抑制することができ、深穴を精度よく明けることができる。
【0026】
回転工具は、ガイドボスのボス部から突出した第1接続部に削穴工具側のシャフトを接続し、かつ、ガイドボスのボス部の内側に形成した第2接続部に回転駆動機構側のシャフトを接続してシャフト間に設置している。そのため、回転工具は、継ぎ足してシャフトを長くするときに、容易にガイドボスを設置することができる。
回転工具は、シャフトの縮径部にボス部を回転自在に支持させているため、
回転工具は、ガイドボスおよびシャフトの貫通孔により冷却液を削穴工具に供給して穴明作業を行うことができる。
【0027】
回転工具は、深穴明機の工具ガイド機構により作業面の近傍でシャフトが回転自在に支持されているため、シャフト径を小さくして深穴を作業面に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態について、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、回転工具の全体を示す分解斜視図、図2は、回転工具の一部を省略して各構成における直径の関係を模式的に示す側面図、図3は、回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす斜視図、図4は、回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴を明ける状態を表わす斜視図、図5は、回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす縦断面図、図6は、回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴を明ける状態を表わす縦断面図である。
【0029】
図1および図3に示すように、回転工具17は、後記する回転駆動機構16に接続してこの回転駆動を支柱14に沿って案内部材15により昇降させ使用する深穴明機100において使用される。この回転工具17は、シャフト部材17Aと、このシャフト部材17Aに接続する削穴工具17aとを備えている。そして、シャフト部材17Aは、シャフト(シャンク)17cと、このシャフト17cに接続する接続シャフト(ロッド棒)17dと、シャフト17cと接続シャフト17dとの間、または、接続シャフト17d間に配置されるガイドボス5を備えている。なお、ここでは、接続シャフト17dは、削穴工具17aと他の接続シャフト17dとの間、あるいは、削穴工具17aとシャフト17cとの間において、ジョイント部6を介して接続するように構成されている。
【0030】
図1に示すように、シャフト17cは、回転駆動機構16の駆動軸側に接続するためのものであり、当該シャフトの一端側に回転駆動機構16の駆動軸側に接続する軸接続部17cと、当該シャフトの他端側に接続シャフト17dの接続後部17dを接続するロッド接続部17cと、を備えている。このシャフト17cは、筒状に形成され、内部に冷却液(冷却水あるいは潤滑水)を通す貫通孔17kを備えるように構成されている。
【0031】
接続シャフト17dは、回転駆動機構16と削穴工具17aとの間で接続して継ぎ足されて使用されるものであり、一端側に接続後部17dが形成されると共に、他端側に接続前部17dが形成されている。この接続シャフト17dは、筒状に形成され、内部に冷却液を通すことができるように構成されている。また、接続シャフト17dは、その外径が6〜15mmの範囲で形成され、6〜10mmの範囲の寸法でここでは使用している。そして、接続シャフト17dは、その長さ寸法を30cmが最長となるように設定しており、ここでは20cmの長さとして使用している。接続シャフト17dは、その直径を最小である6mmとしたときには、長さが25cmを超えると、シャフトに使用される一般的な素材で形成された場合には強度を保つことが難しくなる。なお、接続シャフト17dには、工具により接続分離作業を行うときに扱いやすいように円筒の一部に平面部(スパナカット面)が形成されている。
【0032】
ジョイント部6は、削穴工具17aと接続シャフト17dとの間に設置されるものであり、筒状に形成されて内部に冷却液を通すことができるように構成されている。このジョイント部6は、一端側に接続前部6bが形成され、他端側に接続後部6aが形成されている。ジョイント部6の接続後部6aは、接続シャフト17dの接続前部17dを着脱自在に螺合することができる雌ネジが形成されている。また、ジョイント部6の接続前部6bは、削穴工具17aの雌ネジに着脱自在に螺合するネジが形成されている。このジョイント部6は、削穴工具17aの雌ネジの部分が十分長く形成できない場合に有効に利用されることになる。なお、ジョイント部6には、工具により接続分離作業を行うときに扱いやすいように円筒の一部に平面部(スパナカット面)が形成されている。
【0033】
図1に示すように、ガイドボス5は、穴明作業において接続シャフト17dの振動を最小限に抑制するものであり、振動をボス部5aと、第1接続部5bと、第2接続部5cとを備えている。このガイドボス5は、接続シャフト17dを継ぎ足すときに併せて接続させている。ガイドボス5は、第1接続部5b、ボス部5a、第2接続部5cに連通するように貫通孔が形成されており、冷却液を通すように構成されている。
【0034】
ボス部5aは、接続シャフト17dの直径(外径)より大きく形成されており、削穴工具17aの直径より小さくなるように構成されている。このボス部5aは、その両端面に形成した面取部5a,5aと、その面取部5a,5aの間に形成された周面部5aと、を備えている。そして、ボス部5aは、その周面部5aの外径(ボス部5aの直径)を、例えば、接続シャフト17dの直径が6mmで、削穴工具17aの直径が15mmであった場合には、14〜10mmの範囲で設定されている。
【0035】
なお、ボス部5aの直径は、その上限として削穴工具17aの直径より1mm小さな値までとして設定されている。この上限の値は、ボス部5aの直径がそれ以上大きくなると、削穴工具17aの直径に近づきすぎるため、ボス部5aの表面が内壁面に接触する時間が長くなり、穴明作業に影響を及ぼす可能性が高くなるからである。また、ボス部5aの直径は、その下限の値は、削穴工具の直径より7mm以上小さくならない大きさとなるように設定されている。この下限の値としているのは、ボス部5aの直径が削穴工具の直径より7mmを超えて小さくなると、穴径とボス部5aの間隔が広がり振動が大きくなるため、接続シャフト17dを破損する可能性が高くなるからである。
【0036】
また、ボス部5aの設置長さ範囲は、接続シャフト17dの長さの(20/100)以下の範囲で設定されている。特に、ボス部5aの周面部5aの幅長さ(軸方向の長さ)が(20/100)を超えると、ボス部5aの重量が増えることと、穴内壁面に接触したときの抵抗が大きくなり、また、回転駆動機構16のモータの負担を大きくする。そして、より好ましくは、ボス部5aの周面部5aの幅長さは、(15/100〜1/100)の範囲で形成されることが望ましい。ボス部5aの周面部5aの幅長さが、(15/100〜1/100)の範囲で形成されると、穴内壁面に対して接触したときに抵抗が大きくなりすぎることがなく都合よく、また、回転駆動機構16のモータに対する負担も大きくなりすぎることはない。なお、ボス部5aの周面部5aは、図面では、穴内壁面に平行となる周面になるように示しているが、面取部5a,5aから連続する曲面に形成する構成としても構わない。
【0037】
面取部5a,5aは、削穴工具17aで削られたコア片の流れをスムーズにすることと、接続シャフト17dを穴内から抜き出すあるいは差し込むときに、ボス部5aを上下方向(左右方向:前後方向)においてスムーズに移動させるために形成されている。この面取部5a,5aは、外周縁から中央に向かって縮径されるように形成されている。この面取部5a,5aは、ここでは、直線的に形成されているが、曲面として形成しても構わない。また、面取部5a,5aは、その傾斜角度については、特に限定されるものではなくボス部5aの設置長さおよび周面部5aの幅長さによって設定される。
【0038】
第1接続部5bは、図1に示すように、削穴工具17a側の接続シャフト17dの接続後部17dに接続できるように構成されている。この第1接続部5bは、ここでは、ボス部5aから突出した円筒部分の先端側から基端側に向かって所定範囲まで外周面にネジが形成されている。また、円筒部分のネジが形成されていない部分には、工具により回転させやすいように円筒の一部に平面部(スパナカット面)が形成されている。
【0039】
第2接続部5cは、図1に示すように、回転駆動機構16側の接続シャフト17dの接続前部17dに接続できるように構成されている。この第2接続部5cは、ここでは、ボス部5aの内側に雌ネジが形成されている。
【0040】
削穴工具17aは、溝部17aが軸線方向に沿って形成された研削部17aと、この研削部に連続して形成された軸部17aと、この軸部17aの内側に形成された接続後部17aとを備えている。この削穴工具17aは、接続後部17aおよび軸部17aに冷却液を通し、さらに溝部17aにその冷却液を送る連通孔が形成されている(接続後部17aは雌ネジに形成されることが連通孔となる)。そして、溝部17a内には、凸部17a(図11(a)参照)が形成されている。この凸部17aは、冷却液を穴内側面側に導くと共に、削穴作業を行うときに発生するコア片Kが連通孔に入り込むことを防止している。この削穴工具17aは、ダイヤモンド粒等の砥石粒を用いるいわゆるビット工具であり、例えば、特開2004−330551号公報に記載のもの等が使用される。
【0041】
つぎに、図2を参照して、回転工具17の削穴工具17aとガイドボス5と、深穴明作業で使用するときの工具ガイド機構30におけるガイドブッシュ52と、ブッシュ穴33との大きさの関係を説明する。なお、工具ガイド機構30の工具ガイド基台31は、球面軸受けに工具ガイド部材32を支持しており、その工具ガイド部材32の中央にブッシュ穴33が形成され、そのブッシュ穴33にガイドブッシュ52を支持するように構成されている。そして、工具ガイド基台31のガイドブッシュ52に回転工具17の接続シャフト17dが支持された状態で穴明作業が行われる。また、ここで使用される削穴工具17aの直径は、25mm以下となるものが使用される。
【0042】
回転工具17の削穴工具17aの外径L3と、ガイドボス5のボス部5aの外径L4は、L3>L4の関係があり、削穴工具17aの外径L3と、ガイドブッシュ52の外径L1とはL1>L4の関係がある。また、ガイドブッシュ52を設置するブッシュ穴33の最小となる内径L2と、削穴工具17aの外径L3とは、L2>L3の関係がある。したがて、回転工具17の削穴工具17aとガイドボス5と、ガイドブッシュ52とブッシュ穴33とは、L1>L2>L3>L4の関係となるように構成されている。
【0043】
つぎに、前記した回転工具17を使用する深穴明機100の一例の構成を説明する。図3および図4に示すように、深穴明機100は、コンクリート床面(作業面)10上に配置された基台11と、支柱14と、固定機構40と、案内部材15と、回転工具17を取り付ける回転駆動機構16と、昇降機構50と、ガイド基台60と、工具ガイド機構30とを基本構成としている。なお、ここでは、回転駆動機構16を案内部材15から取り外した構成を深穴明ガイド装置90とする。
【0044】
図3および図5に示すように、基台11は、その底面に凹状に形成された凹部11aと、この凹部11aの上部に取り付けられるフレーム11bと、凹部11aを囲むように設けた弾性変形自在なバキュームパット12とを備えている。そして、凹部11aは、基台11を貫通して穴明けされた導通孔12aに、フレキシブルホース12bを介して真空吸引装置13に接続されている。そのため、基台11は、コンクリートのように表面に凹凸のある加工対象物にも気密性を保持して固定することができる。また、凹部11aは、そのほぼ中央の上面に上方に立設した固定ボルト11dを有している。
【0045】
フレーム11bは、その上面に支柱14の下端部をピン14aで軸支し傾斜自在に支持する固定機構40を一体に備えている。このフレーム11bは、凹部11aに対して、移動可能に載置されている。すなわち、フレーム11bは、凹部11aに立設した固定ボルト11dに対応する位置に長穴11cを形成しており、長穴11cに固定ボルト11dが係合したときに、その長穴11cに沿って移動できるように構成されている。そして、凹部11aとフレーム11bは、ナット11eと固定ボルト11dが締結されることで固定されている。したがって、図示省略するが、コンクリート面にヒビ割れ等があり、真空吸引装置13を用いることができない場合、コンクリートに予めアンカーボルトを打ち込み、凹部11aを外した状態で、フレーム11bの長穴11cにアンカーボルトを差し込みナット11eで締結することで、フレーム11bを基台11として固定している。したがって、凹部11aを用いない場合は、フレーム11bおよび長穴11cがアンカーボルトに対する固定手段となる。
【0046】
固定機構40は、一対の扇形の角度割出板41,41と、この角度割出板41,41に形成した円弧状の円弧溝42に設けた固定ボルト43とを備えている。
そして、支柱14は、フレーム11b上に設けた角度割出板41,41の間に配置され、角度割出板41,41に貫通して軸支するピン(支軸)14aにより所定傾斜角度に自在に設定できるように支持されており、かつ、固定ボルト43により所定傾斜角度の位置で固定されるように構成されている。この支柱14は、金属製の中空な角中空体形状に形成され、柱面に昇降機構50の一部であるラック14cが設けられ、後記する回転駆動機構16を搭載した案内部材15が移動自在に摺動(移動)するように構成されている。
【0047】
図5および図6に示すように、案内部材15の内側には、支柱14に設けたラック14cに噛合するピニオン51を昇降機構50の一部として設けている。なお、昇降機構50は、ここでは、支柱14に設けたラック14cと、このラック14cに噛合するピニオン51と、このピニオン51を操作するためのハンドル21とを備えている。
【0048】
案内部材15は、ピニオン51を収納する空間を有すると共に、ラック14cが形成されていない支柱14の他の柱面に当接してスライドするように形成された筐体部分と、この筐体部分に連続して回転駆動機構16を着脱自在に設置する設置部分とを備えている。また、図3ないし図6に示すように、案内部材15で回転駆動機構16を保持している所定位置には、後記する給排水装置20の給水室18が設置可能に設けられている。なお、案内部材15には図示省略した蝶ボルトを螺合し、支柱14に対して押圧し、案内部材15の移動を固定することができる。
【0049】
回転駆動機構16は、モータ16aと、このモータ16aの回転軸16bに接続された駆動シャフト19とを備えている。そして、駆動シャフト19の先端(前端)には、シャフト17cの軸接続部17cが接続できるように構成されている。さらに、駆動シャフト19は、その側面に貫通する給水用の孔17eが形成されており、駆動シャフト19の孔17eが形成されている部分が、給水室18内に位置するように配置されている。
【0050】
したがって、給水室18に冷却液が供給されると、回転している駆動シャフト19の孔17eから回転工具17の貫通孔17kを介して削穴工具17aの作業部位まで冷却液を供給することが可能となる。なお、削穴工具17aは、例えば、ダイヤモンドドリルビットまたは超硬金属をロウ付けしたロングドリル等が用いられる。
【0051】
図3および図4に示すように、ガイド基台60は、基台11に設けたアリ溝14dに沿って垂直方向に移動可能に設けられている。このガイド基台60は、その中央にガイド基台60の水平(作業面に平行)なガイド面に沿って水平移動可能な工具ガイド機構30を備えている。また、図5に示すように、工具ガイド機構30は、ガイド基台60の下方に突出する高さに形成されており、下端部分が床上面に当接するように形成されている。なお、ガイド基台60がアリ溝14dにより上下に移動できることで、作業床面に段差があっても作業できるように構成されている。
【0052】
図7(a)、(b)および図3に示すように、工具ガイド基台31の上部には、その円筒部に、矩形のガイドプレート30fを載せ、このガイドプレート30fと工具ガイド基台31をボルト30gで4箇所締結できるように構成されている。そして、ガイドプレート30fは、その左右の上面にそれぞれ、ボルト付きのボルト付ガイドピン30cが2箇所固定されている。ボルト付ガイドピン30c、30cは図7(a)、(b)に示すようにガイド基台60に設けた直線案内溝38,38(図1参照)にそれぞれ挿入され、直線ガイドされる。工具ガイド基台31を取付けたガイドプレート30fをガイド基台60に固定する場合は、蝶ナット30dを締め上げることにより行われる。したがって、蝶ナット30d,30dを締め上げることにより、当該工具ガイド機構30が、ガイド基台60に固定される。
【0053】
そして、工具ガイド機構30は、工具ガイド基台31と、この工具ガイド基台31に嵌合した球面ガイド部材32bと、この球面ガイド部材32bの球面部に回動自在に嵌挿される球面軸受32aと、この球面軸受32aに嵌合し、中心部にブッシュ穴33を設けた工具ガイド部材32と、この工具ガイド部材32のブッシュ穴33に着脱自在に取付けられ、回転工具17のシャフト17cまたは接続シャフト17dをガイドするガイドブッシュ52と、このガイドブッシュ52を固定する固定具39bとを備えている。この工具ガイド機構30は、回転工具17のシャフト17cまたは接続シャフト17dを作業面10の近傍で回動自在に支持することで穿孔方向にガイドするものである。
【0054】
工具ガイド基台31は、中央部に凹部31aを設けている。そのため、切削を終えたコンクリート粉の混ざった汚水は穴開口から排出され、この凹部31aにより形成される排水室37に一時プールされ、排水ホース22bを経て給排水装置20に戻される。戻された汚水は、給排水装置20内のフィルタで濾過され、再び冷却液として使用されるように構成されている。
【0055】
図7(a)、(b)に示すように、工具ガイド基台31には、工具ガイド基台31の中央に設けた球面ガイド部材32bが設置され、この球面ガイド部材32bの球面部に回動自在に嵌挿される球面軸受32aを傾斜自在に支持している。そして、球面軸受32aは、中心部にブッシュ穴33を設けた工具ガイド部材32を嵌合して支持している。また工具ガイド部材32のブッシュ穴33には、回転工具17のシャフト17cまたは接続シャフト17d(図1参照)をガイドするガイド穴52aを形成したガイドブッシュ52が着脱自在に取付けられている。さらに、図1に示すように、ガイドブッシュ52は、その一部に切り欠いて段差を形成した切欠部52bを備え、側面(上面)から固定具39bにより押圧されて工具ガイド部材32に固定するように設置されている。固定具39bは、例えば、長穴39cを形成した板片であり、長穴39cに支持される支持ボルト39aにより工具ガイド基台31に固定され、固定具39bの一部がガイドブッシュ52に形成した切欠部52bに係合して押圧することで、ガイドブッシュ52を支持するように構成されている。
【0056】
ガイドブッシュ52が工具ガイド部材32のブッシュ穴33に嵌合されて支持されることで、ガイドブッシュ52を介してシャフト17cまたは接続シャフト17dを回転自在に工具ガイド部材32に支持している。
【0057】
また、工具ガイド部材32は、図7(a)、(b)に示すように、ここでは、径の異なる環状部材が同心円状に形成されており、中央に設けた貫通穴の部分でその貫通穴の外側から内側に向かって球面ガイド部材32b、球面軸受32a、および、ガイドブッシュ52が設置されるように構成されている。そして球面軸受32aは、左右からボルト35,35により軸支されて傾斜できるように設置されている。また、ボルト35,35の周囲には、リング35a,35aが設けられており、リング35a,35aの周面には、角度を示す目盛35bが設けられている。リング35aの上面には、ボルト36を介して移動レバー34が掛け渡すように設けられている。
【0058】
このような構成により、図7(a)、(b)に示すように、球面軸受32aは、ボルト35,35のネジで押圧して傾斜角度を固定できる。工具ガイド機構30は移動レバー34を手で持ち上げ、水平方向に移動するとき、および球面軸受32aの角度を調整する場合に用いられる。球面軸受32aの角度を調整する場合には、ボルト35を緩め、移動レバー34を持ち上げ、リング35aに付した目盛35bを指針35cに合わせるようにして行う。工具ガイド基台31は、工具ガイド部材32が所定傾斜角度で設定されたときに、ボルト35によりその傾斜位置を固定している。
なお、ボルト35の設置位置は、工具ガイド基台31がガイド基台60の直線案内溝38,38に沿って移動したいずれの位置であっても外部から操作できる位置であることが好ましい。
【0059】
工具ガイド基台31は、図7(a)、(b)に示すように、その底面に凹状に形成された凹部31aと、この凹部31aを囲むように設けた弾性変形自在なリング状のスポンジ31gとを備えている。そして、凹部31aは、工具ガイド基台31を貫通した導通孔22cに、フレキシブルホースである排水ホース22bを介して接続されている。そのため、工具ガイド基台31は、コンクリートのように表面に凹凸のある加工対象物にも気密性を保持できる。
【0060】
図3ないし図6に示すように、給排水装置20は、供給ホース22aおよび給水室18を介して冷却液を回転工具17に供給し、かつ、工具ガイド基台31の排水室37に溜まった汚水を、排水ホース22bを介して給排水装置20に戻し、濾過して再度冷却液にして循環させるものである。この給排水装置20は、その装置本体内にポンプ24および図示しないフィルタ等の濾過機構を備えており、作業現場を水浸しにすることなく、冷却液を供給して排水を濾過することが可能となる。なお、この給排水装置20は、給水室18に冷却液を供給すると共に、排水室37から強制的に吸引している。そのため、冷却液は、給排水装置20から供給ホース22a、給水室18、孔17e、回転工具17の貫通孔17k、削穴工具17a、深穴、排水室37、排水ホース22bの間を循環することとなり、削穴工具17aにより削られたコンクリート粉は、冷却液に混ざった混濁水として、形成されている深穴から排水室37に吸引されて引き上げられ排水ホース22bを介して給排水装置20に送られ、図示しないフィルタ等により濾過される。
【0061】
なお、深穴明機100において、支柱14を回動自在に搭載した基台11と工具ガイド機構30を案内(支持)するガイド基台60の配置は、垂直方向の穴明の状態のときに、支柱14の回動中心線と工具ガイド機構30の傾斜中心線が異なる垂直平面上に平行に位置するように構成されている。
そして、工具ガイド機構30は作業面10上面に対して平行に基台11に支持され、中央部にガイド面を形成したガイド基台60と、ガイド基台60のガイド面に沿って水平移動可能とし、かつ、回転工具17の傾斜角度に合わせて、回転工具17のシャフト17cまたは接続シャフト17dを支持するようにしている。
【0062】
次に、この回転工具17の使用方法について深穴明機100に設置した場合についての手順を手順(1)〜(13)として述べる。なお、下記の作業方法は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
<垂直穴の加工手順>(図1、図3、図8参照)
(1)作業面10上の指定された穴位置に、工具先端が合うように深穴明機100を仮置きする。
(2)真空吸引装置13を作動して、基台11を作業面10に固定する。
【0063】
(3)基台11上のフレーム11bに設けた固定ボルト11dを緩めて、フレーム11bを移動し、工具先端位置を調整する。
(4)指定された穴位置に、回転工具17をセットして、工具ガイド機構30の芯出しを行う。
(5)工具ガイド機構30を蝶ナット30dで固定する。
【0064】
(6)シャフト17cの先端の削穴工具17aを外し、ガイドブッシュ52をシャフト17cに挿通した状態で削穴工具17aを取り付ける。なお、ガイドブッシュ52は、固定具39bの長穴39cに支持している支持ボルト39aを緩めた状態として長穴39cに沿って固定具39bを移動して、ガイドブッシュ52の切欠部52bに係合した状態とする。そして、ガイドブッシュ52は、支持ボルト39aを締めることで、工具ガイド部材32の上面に取り付けられている。したがって、ガイドブッシュ52を固定具39bの一部で押圧して工具ガイド部材32に固定し、ガイドブッシュ52によりシャフト17cを回転自在に工具ガイド部材32に支持している。
【0065】
(7)ハンドル21を操作して、工具ガイド部材32の真上に位置させ、回転駆動機構16のモータ16aを駆動し、回転工具17を回転させる。
(8)給排水装置20のポンプ24を作動し、回転工具17に冷却液を供給する。
(9)冷却液は、ポンプ24により供給ホース22aから給水室18に送られ、給水室18内に送られた冷却液は、駆動シャフト19の孔17e、貫通孔17kから削穴工具17aまで送られ、作業位置に冷却液を供給する。
(10)ハンドル21を操作して送りをかけながら、削穴工具17aを送り込む。
(11)初めに取り付けたシャフト17cの長さに対応する深穴を形成したら、図8(a)、(b)に示すように、回転駆動機構16のモータ16aを一旦停止して、ガイドブッシュ52の固定を解除して、回転工具17を深穴から抜き出す。
【0066】
(12)ガイドボス5と接続シャフト17dをシャフト17cおよび削穴工具17aの間に接続した状態で(図8(b)、(c)参照)、ガイドブッシュ52を再度、固定具39bで固定して穴明作業を再開する(図8(c)参照)。接続シャフト17dを接続して回転工具17の全体が長くなった場合、接続シャフト17dと削穴工具17aの外径との差が大きいと接続シャフト17dの振動が大きくなってしまうが、ここでは、ガイドボス5が所定間隔で配置されているため、ガイドボス5の周面部5aが振動を大きくしないように、内壁に対して接触してガイドしている。
【0067】
したがって、回転工具17は、接続シャフト17dを継ぎ足して長くなっても、接続シャフト17dあるいはシャフト17cがガイドブッシュ52によりガイドされていることと、所定間隔ごとにガイドボス5が配置されるために、振動を抑制して穴明作業を行うことができる。このような図8(b)〜(d)の動作を繰り返して、所定の深さまで削穴工具17aにより深穴を掘っている。なお、一例として、削穴工具17aの外径が15〜21mmであった場合、接続シャフト17dの外径は、6〜8mmであり、ガイドボス5の外径は、14〜20mmであると、6mの水平穴、水平穴あるいは垂直穴の深穴を形成したときに、数ミリの誤差内で形成することができる。
【0068】
また、穴明作業を行う場合には、削穴工具17aで削穴されることにより排出されるコンクリート粉の混ざった汚水は、工具ガイド基台31の排水室37から給排水装置20のポンプ24により排水ホース22bを介して再び給排水装置20に送り戻される。そして、給排水装置20に、回収された排水は、フィルタで濾過され、再び冷却液として再循環して使用される。
【0069】
なお、傾斜穴の穴明け手順については、前記した手順(4)の前に、つぎのような作業を行っている。すなわち、図1、図4および図6に示すように、支柱14を所定の角度に傾斜させて固定ボルト43を締めて支柱14を角度割出板41に固定する。なお、支柱14は、角度割出板41に形成されている目盛りに、支柱14に設けられた矢印に合わせることで正確な傾斜角度に設定することができる。そして、工具ガイド部材32を所定の角度に傾斜させてボルト35で固定する。なお、工具ガイド部材32は、目盛35bを指針35cに合わせることで、正確な傾斜角度を設定することができる。
【0070】
穴明作業は、傾斜角度が決まっているので、予め、支柱14と工具ガイド部材32の角度を設定して固定し、正確な角度を設定して穴明作業を簡単にすることができる。
【0071】
また、回転工具17は、接続シャフト17dとガイドボス5とを別体に形成して接続して使用する構成について説明したが、図9に示すような構成にしても構わない。図9(a)〜(d)は、回転工具の他の形態を示し、穴明作業を模式的に示す模式図である。なお、接続シャフトとガイドボスが一体に形成したボス付接続シャフト以外の構成は、図1と同じ構成であるため、同じ符号を付して説明を省略する。
【0072】
図9(b)に示すように、回転工具47は、回転駆動機構16に接続されるシャフト部材47Aと、このシャフト部材47Aに接続される削穴工具17aとを備えている。シャフト部材47Aは、シャフト17cと、このシャフト17cに接続されるボス付接続シャフト4と、このボス付接続シャフト4またはシャフト17cに接続される削穴工具17aとを備えている。なお、削穴工具17aは、ジョイント部6を介して接続される構成として説明する。
【0073】
ボス付接続シャフト4は、シャフト部4aの一端側に形成された接続後部4bと、シャフト部4aの他端側に形成された接続前部4cと、この接続前部4cに連続してシャフト部4aに形成されたボス部3とを備えている。そして、ボス部3は、シャフト径より大径に形成された周面部3aと、この周面部3aの両端からそれぞれシャフト部4aの外径まで傾斜して連続して形成された面取部3b、3cとを備えている。さらに、ボス付接続シャフト4は、そのボス部3が削穴工具17a側となる他端側にシャフト部4aと一体に形成されている。
【0074】
このボス付接続シャフト4は、シャフト17cまたは他のボス付接続シャフト4と、ジョイント部6または他のボス付接続シャフト4との間に接続されて使用される。ボス付接続シャフト4は、ボス部3が前記したガイドボス5と同等の機能を有し、ボス付接続シャフト4の回転によるシャフト部4aの振動を抑制する。このボス付接続シャフト4は、ボス部3がシャフトに一体に形成されていることから、ガイドボス5が接続シャフト17dと別体で形成されているものと比較して部品点数が少なく接続作業を容易にしている。
【0075】
つぎに、図9(a)〜(d)を参照してボス付接続シャフト4を用いる回転工具47を使用して穴明作業を行う手順を説明する。
はじめに、前記した手順(1)〜(11)までを行い、図9(a)に示すように、穴明作業を行う。そして、図9(b)に示すように、回転駆動機構16を停止して、ガイドブッシュ52の固定を解除して、回転工具47の削穴工具17aを工具ガイド部材32のブッシュ穴33から抜き取る。さらに、シャフト17cとジョイント部6との接続を解除してボス付接続シャフト4を、シャフト17cとジョイント部6との間に接続する。
【0076】
そして、ボス部3をガイドブッシュ52より先にブッシュ穴33を通過させて、すでに形成した穴内に削穴工具17a,ボス部3を挿入して、ガイドブッシュ52を、シャフト部4aを挿通した状態で工具ガイド部材32に固定する。そして、図9(c)に示すように、接続したボス付接続シャフト4の長さ分において穴明作業を行い、図9(d)に示すように、再度、明けた穴から削穴工具17aを抜き取り(図9(b)、(c)参照)、さらに別のボス付接続シャフト4を接続して、穴明作業を行うことを繰り返し所定の深穴となるまで穴明作業を行う。
【0077】
また、さらに、図10に示すように、回転工具57を以下の構成としてもよい。図10(a)、(b)は回転工具の他の構成において一部を切欠いて示す分解斜視図および斜視図である。なお、すでに説明した構成はその説明を省略する。
図10(a)に示すように、回転工具57は、接続シャフト56に縮径部56bを備えると共に、その縮径部56bにガイドボスのボス部55を回転自在に支持するように構成されている。この接続シャフト56は、一端側に形成した接続後部56c(図1の17dと同等)と、他端側に形成した接続前部56d(図1の17dと同等)と、この接続前部56dから軸方向に所定範囲において形成された縮径部56bを有するシャフト本体56aと、を備えている。なお、接続シャフト56は、筒状に形成され、その軸線方向における内部に冷却液を削穴工具17aに供給するための貫通孔56kが形成されている。
【0078】
縮径部56bは、シャフト本体56aの外径よりも小さくなるように形成されている。この縮径部56bは、ここでは、ボス部55の全長とほぼ同じ長さとなる寸法でシャフト本体56aに形成されている。この縮径部56bが形成されていることで、後記するボス部55は、接続シャフト56に取り付けられたときに、軸線方向に大きく移動することなく、接続シャフト56の間に一定の間隔を保ってそれぞれ配置することができる。つまり、縮径部56bは、ボス部55に対して軸線方向に移動を制御するストッパの役割としても機能する。この縮径部56bの軸線方向における形成範囲としては、接続シャフト56の強度および振動に対する抑制を考慮して、ボス部55の長さの2倍以内になることが好ましい。
【0079】
ボス部55は、筒状に形成されており、接続シャフト56の縮径部56bに挿通させて使用され接続シャフト56の作動時の振動が大きくならないようにガイドするものである。このボス部55は、縮径部56bに回転自在に支持されるように、その内壁面55dが形成されている。そして、ボス部55は、その両端面に外周側から中央に向かって肉厚が徐々に小さくなるように形成した面取部55b,55cと、その面取部55b,55cの間に形成された周面部55aと、を備えている。このボス部55の幅長さおよび外径はすでに説明したものと同じ構成である。
【0080】
図10(b)に示すように、接続シャフト56にボス部55を挿通させた状態で回転工具57として使用する場合には、以下のような動作により接続シャフト56の振動を抑制することになる。すなわち、深穴明機100は回転駆動機構16(図3,4参照)に接続した接続シャフト56を回転させて穴明作業を行う場合、接続シャフト56が振動してボス部55が穴内壁面に接触する。そうすると、接続シャフト56の回転に伴って回転しているボス部55は、穴内壁面に接触したことによる衝撃を受けるが、接続シャフト56の縮径部56bに対して回転自在に支持されていることから、接続シャフト56の回転とは異なる回転数あるは回転方向となって、その衝撃を吸収すると共に接続シャフト56の振動を抑制することができる。
【0081】
また、図11(a)、(b)、(c)に示すように、回転工具67においては、ボス部65を次の構成としても構わない。
図11(a)は他の構成を示すボス部の動作状態を模式的に示す側面図、図11(b)はボス部の断面を示す断面図、図11(c)は削穴工具で削られたコンクリート片の状態を模式的に示す断面図である。なお、ボス部65は、その切欠面65e以外は、ボス部55と同じ構成であるため、その説明を省略する。
図11(a)、(b)に示すように、ボス部65は、筒状に形成され、その両端面に形成した面取部65b,65cと、この面取部65b,65cの間に形成された周面部65aと、この周面部65aに長手方向に沿って肉厚を小さく形成された切欠面65e,65e(図上は2面)とを備えている。
【0082】
ボス部65の切欠面65eは、削穴工具17aによりコンクリート面が削られたときに発生するコンクリート片K1を通過させることができるように、円筒円周面より肉厚を切欠いた面の状態に形成されている。削穴工具17aによる穴明作業では、コンクリートのほとんどが粉状となるが、図11(a)に示すように、コンクリートのコア片Kが発生し、削穴工具17aの溝部17aの内側でさらに削られて小さくなったコンクリート片K1として、削穴工具17aと穴内壁面との隙間から後方に送られることがある。特に、削穴工具17aの直径が15mm以上となった場合には、コンクリート片K1の発生する割合が多くなる可能性が高い。コンクリート片K1が発生する場合には、後方に送り出されてくるときの大きさが、削穴工具17aと穴内壁面との(削穴工具17aの最外径と軸部17a外径との)隙間W1を通過できる状態であるため、切欠面65eは、円筒円周面からの距離W2が、隙間W1より大きくなるように構成されている。
【0083】
なお、ボス部65を取り付けた回転工具67と穴内壁面との間の空間には、回転工具67の貫通孔67kを介して削穴工具17aに供給された冷却液が、コンクリート粉等と混ざって穴開口から排出する流れを形成するように充満した状態となっている。回転工具67で穴明作業を行っているときには、ボス部65の周面部65aが穴内壁面に当接して回転による振動を抑制し、かつ、ボス部65の切欠面65eと穴内壁面の間から図11(b)に示すように、コンクリート片K1を穴開口側に通過させることができ、コンクリート片K1の蓄積による穴明作業の効率悪化を防止することができる。
【0084】
以上説明したように、回転工具17,47,57,67では、深穴明機100が工具ガイド機構30に作業面の近傍で支持されることと、ボス部5a,3,55,65が設けられていることにより、振動を抑制して深穴を精度よく明けることができる。また、支柱14が傾斜することで、垂直穴から傾斜穴まで傾斜角度を自在に設定して穴明作業を行うことができる。
【0085】
なお、深穴明機100は、支柱14の傾斜する方向に対面する位置に工具ガイド機構30を配置した構成として説明したが、支柱14が傾斜する方向に対して平行となる位置に工具ガイド機構30を配置する構成としても構わない。
また、ボス付接続シャフト4は、継ぎ足したときに、そのボス部3がガイドブッシュ52の位置より下方になるように設定されていれば、シャフト部4aの一端側より中央側に配置される構成であっても構わない。
【0086】
また、図11では、切欠面65eとして、ボス部65の対向する2箇所に2面形成した例として説明したが、どちらか一箇所であってもよく、また、ボス部65の円周方向を三等分したそれぞれの箇所に切欠面65eを設けて3面としても構わない。さらに、図1、図9、図10に示す回転工具17,47,57でも、切欠面65eを備える構成としても構わない。そして、前記した説明ではジョイント部6を介して接続する構成として説明したが、ジョイント部6を使用しないでも接続できる構造にはじめから形成されるように構成してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る回転工具の全体を示す分解斜視図、
【図2】本発明に係る回転工具の一部を省略して各構成における直径の関係を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明に係る回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす斜視図である。
【図4】本発明に係る回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴を明ける状態を表わす斜視図である。
【図5】本発明に係る回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす縦断面図である。
【図6】本発明に係る回転工具を使用する深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴を明ける状態を表わす縦断面図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明に係る回転工具を使用する深穴明機の工具ガイド機構を示す1図のA−A縦断面図、B−B断面図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明に係る回転工具による穴明作業を模式的に示す模式図である。
【図9】(a)〜(d)は、本発明に係る回転工具の他の形態を示し、回転工具による穴明作業を模式的に示す模式図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明に係る回転工具の他の構成において一部を切欠いて示す分解斜視図および斜視図である。
【図11】(a)は本発明に係る他の構成を示すボス部の動作状態を模式的に示す側面図、(b)は本発明に係るボス部の断面を示す断面図、(c)は本発明に係る削穴工具で削られたコンクリート片の状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
3 ボス部 4 ボス付接続シャフト
3a 周面部 4a シャフト部
3b 面取部 4b 接続後部
4c 接続前部
5 ガイドボス 6 ジョイント部
5a 面取部 6a 接続後部
5a 周面部 6b 接続前部
5a ボス部
5b 第1接続部 10 作業面(コンクリート床面)
5c 第2接続部
11 基台 13 真空吸引装置
11a 凹部 14 支柱
11b フレーム 14a ピン
11c 長穴 14c ラック
11d 固定ボルト 14d アリ溝
11e ナット 15 案内部材
12 バキュームパット
12a 導通孔 16 回転駆動機構
12b フレキシブルホース 16a モータ
17 回転工具 16b 回転軸
17A シャフト部材 18 給水室
17a 削穴工具 19 駆動シャフト
17a 接続後部 20 給排水装置
17a 研削部 21 ハンドル
17a 溝部 22a 供給ホース
17a 軸部 22b 排水ホース
17c シャフト(シャンク) 22c 導通孔
17c 軸接続部 24 ポンプ
17c ロッド接続部
17d 接続シャフト(ロッド棒)
17d 接続後部 30 工具ガイド機構
17d 接続前部 30c ボルト付ガイドピン
17e 孔 30d 蝶ナット
17k 貫通孔 30f ガイドプレート
30g ボルト
31 工具ガイド基台 32 工具ガイド部材
31a 凹部 32a 球面軸受
31g スポンジ 32b 球面ガイド部材
33 ブッシュ穴
34 移動レバー 40 固定機構
35 ボルト 41 角度割出板
35a リング 42 円弧溝
35b 目盛 43 固定ボルト
35c 指針 43 固定ボルト
36 ボルト 47 回転工具
37 排水室 50 昇降機構
38 直線案内溝 51 ピニオン
39a 支持ボルト 52 ガイドブッシュ
39b 固定具 52a ガイド穴
39c 長穴 52b 切欠部
60 ガイド基台 L1 外径
90 深穴明ガイド装置 L2 内径
100 深穴明機 L3 外径
L4 外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の作業面に直径が25mm未満で、前記直径の10倍以上の深穴を明ける深穴明機に接続して使用される回転工具において、
前記回転工具は、前記深穴明機の回転駆動機構に後端を接続するシャフト部材と、このシャフト部材の先端に接続されコンクリートを切削する削穴工具とを備え、
前記シャフト部材は、前記削穴工具および前記回転駆動機構の間で継ぎ足して接続されるシャフトと、このシャフト間に配置されるガイドボスとを備え、
前記ガイドボスが、前記削穴工具の直径より小さく、かつ、前記シャフトの直径より大きく形成されたことを特徴とする回転工具。
【請求項2】
前記ガイドボスは、前記シャフトの後端と接続する第1接続部と、つぎに接続される前記シャフトの前端と接続する第2接続部と、前記削穴工具の直径より小さく、前記シャフトの直径より大きく形成されたボス部とを備え、
前記第1接続部が前記ボス部から突出して形成されると共に、前記第2接続部が前記ボス部の内側に形成され、前記第1接続部および前記第2接続部が前記シャフトの軸線方向となる直線方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転工具。
【請求項3】
前記シャフトは、互いに接続する位置から所定範囲でシャフト径が小さくなるように形成した縮径部を備え、
前記ガイドボスは、前記シャフトの縮径部に挿入する筒状のボス部を有し、
前記ボス部の内径は、前記シャフトのシャフト径より小さく、かつ、前記縮径部より大きく形成され、当該ボス部が前記縮径部に回転自在に支持されたことを特徴とする請求項1に記載の回転工具。
【請求項4】
前記ガイドボスは、前記シャフトにボス部が一体に固定されて配置され、前記ボス部が、前記削穴工具の直径より小さく、前記シャフトの直径より大きく形成されたことを特徴とする請求項1に記載の回転工具。
【請求項5】
前記ボス部は、前記シャフトの削穴工具側となる一端に一体に固定されて配置されることを特徴とする請求項4に記載の回転工具。
【請求項6】
前記シャフト部材は、前記削穴工具に冷却液を供給する貫通孔を、前記シャフトおよびガイドボスに形成したことを特徴とする請求項1に記載の回転工具。
【請求項7】
前記ボス部は、外周縁から中央に向かって縮径されるように形成した面取部を両端面に備えることを特徴とする請求項2ないしは請求項4のいずれか一項に記載の回転工具。
【請求項8】
前記ボス部は、前記削穴工具により穿設される穴内壁面に平行となる周面部において長手方向に沿って切欠いた切欠面を、当該ボス部の周面に少なくとも1面以上備え、
前記切欠面は、前記穴側面までの間隔が、前記削穴工具により削られて発生するコンクリート片を通過させる大きさになるように形成されたことを特徴とする請求項2ないしは請求項4のいずれか一項に記載の回転工具。
【請求項9】
前記深穴明機は、作業面に着脱自在に固定する工具ガイド機構と、この工具ガイド機構に隣接して設けた基台と、この基台に支持した支柱と、この支柱に前記回転駆動機構を支持して昇降自在に設けられた案内部材と、前記削穴工具に冷却液を供給すると共に作業面に形成した深穴開口からの冷却液を回収して濾過して前記冷却液として循環させる給排水装置とを備え、前記工具ガイド機構は、前記シャフト部材のシャフトを筒状のガイドブッシュを介して回転自在に支持することを特徴とする請求項1に記載の回転工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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