説明

回転工具

【課題】グリップを握った手でモードの切り替えを行うことができる回転工具を提供する。
【解決手段】グリップ13近傍に配置された切替レバー20は、モータ31を正転させる正転状態、モータ31を逆転させる逆転状態、又は、前記正転状態及び前記逆転状態のいずれでもない中立状態に操作されるものであって、前記切替レバー20が前記中立状態に操作され、かつ、トリガ19が所定の位置まで引かれて電源スイッチ21から信号を受信したときに、モード切り替えを実行するか、または、切替レバー20が中立状態に操作され、かつ、トリガ19が所定の位置を超えて引かれて回転制御スイッチ22から信号を受信したときに、モード切り替えを実行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モード切り替え可能な回転工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インパクトドライバ等の回転工具には回転モードを切り替えるためのスイッチが設けられており、ネジの種類やネジ締めを行う部材によって回転モードを使い分けできるようになっている。
【0003】
この回転モードを切り替えるためのスイッチは、例えば特許文献1に開示されているように、本体グリップ下部の基板などに設けられている。このようなスイッチを操作する場合には、グリップを握った手でスイッチの操作を行うことができないため、グリップを握っていない方の手でスイッチの操作を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−136378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常のインパクトドライバ等の使用時には、グリップを握っていない方の手はネジ締めを行う部材などを押さえている。このため、グリップを握っていない方の手でスイッチの操作を行うとすると、押さえている部材から手を離さなければならないため、作業の中断が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、グリップを握った手でモードの切り替えを行うことができる回転工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0008】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の回転工具は、モード切り替え可能な回転工具であって、モータと、前記回転工具を作動させるためのトリガと、前記トリガが所定の位置まで引かれたときに、前記回転工具の電源を入れる電源スイッチと、前記トリガが前記所定の位置を超えて引かれたときに前記モータを回転させる回転制御スイッチと、前記モータの回転方向を決定するためにグリップ近傍に配置された切替レバーと、を備え、前記切替レバーは、前記モータを正転させる正転状態、前記モータを逆転させる逆転状態、または、前記正転状態及び前記逆転状態のいずれでもない中立状態に操作されるものであって、前記切替レバーが前記中立状態に操作され、かつ、前記トリガが前記所定の位置まで引かれて前記電源スイッチから信号を受信したときに、前記モード切り替えを実行するか、または、前記切替レバーが前記中立状態に操作され、かつ、前記トリガが前記所定の位置を超えて引かれて前記回転制御スイッチから信号を受信したときに、前記モード切り替えを実行することを特徴とする。
【0010】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、前記モード切り替えによって前記モータの回転モードを変更することを特徴とする。
【0012】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、打ち込み位置を照らすための照明手段を備え、前記モード切り替えによって前記照明手段の照射輝度を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記の通りであり、グリップ近傍に配置された切替レバーが中立状態に操作され、かつ、トリガが前記所定の位置まで引かれて電源スイッチから信号を受信したときに、モード切り替えを実行するか、または、切替レバーが中立状態に操作され、かつ、トリガが前記所定の位置を超えて引かれて回転制御スイッチから信号を受信したときに、モード切り替えを実行するため、グリップを握った手でモードの切り替えを行うことができる。すなわち、通常、モータの回転方向を決定するための切替レバーはグリップ近傍に配置されているため、この切替レバーとトリガとにモード切り替えの機能を持たせることで、グリップを握った手でモードの切り替えを行うことができるようになっている。
【0015】
なお、モード切り替えの対象は、モータの回転モードとしてもよい。
【0016】
また、モード切り替えの対象を、照明手段の照射輝度としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】回転工具の斜視図である。
【図2】回転工具に内蔵された制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図3】回転工具の正面図であって、切替レバーが正転状態に操作された状態を示す図である。
【図4】回転工具の正面図であって、切替レバーが中立状態に操作された状態を示す図である。
【図5】回転工具の正面図であって、切替レバーが逆転状態に操作された状態を示す図である。
【図6】切替レバー周辺の内部機構を示す図である。
【図7】揺動部材とトリガとの関係を示す図であって、切替レバーが正転状態に操作された状態においてトリガが引かれる前の図である。
【図8】揺動部材とトリガとの関係を示す図であって、切替レバーが正転状態に操作された状態においてトリガが引かれた後の図である。
【図9】揺動部材とトリガとの関係を示す図であって、切替レバーが中立状態に操作された状態においてトリガが引かれる前の図である。
【図10】揺動部材とトリガとの関係を示す図であって、切替レバーが中立状態に操作された状態においてトリガが引かれた後の図である。
【図11】揺動部材とトリガとの関係を示す図であって、切替レバーが逆転状態に操作された状態においてトリガが引かれる前の図である。
【図12】揺動部材とトリガとの関係を示す図であって、切替レバーが逆転状態に操作された状態においてトリガが引かれた後の図である。
【図13】回転方向決定スイッチが出力する信号の種類を示すテーブルである。
【図14】回転工具の回転モードの種類を示すテーブルである。
【図15】回転工具のメイン処理のフロー図である。
【図16】回転工具のモード変更処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態に係る回転工具10は、モータ31を搭載したインパクトドライバであり、図1に示すように、筒状の出力部11と、この出力部11の下部に出力部11と略直交する方向に延びるグリップ部13と、グリップ部13の下部に設けられた電池パック取付部14と、を備えている。
【0020】
(出力部11)
出力部11には、特に図示しないが、モータ31が内蔵されており、このモータ31の回転軸と同軸上に、スピンドル、打撃機構、アンビルが直列に設けられている。アンビルの先端部に形成された出力軸12には、図示しないドライバビット(先端工具)が装着可能となっており、モータ31の駆動力によってドライバビットを回転させ、ネジ締めができるように形成されている。
【0021】
なお、出力軸12の周囲には、図3〜5に示すように、作業箇所を照らすための照明手段32としてLEDが複数配設されており、暗所での作業時には照明手段32を点灯させて安全かつ確実に作業ができるようになっている。
【0022】
(グリップ部13)
グリップ部13は、回転工具10を把持するための部位である。このグリップ部13の出力部11との境目付近には、図1に示すように、前方にトリガ19が配置され、後方に切替レバー20が配置されている。
【0023】
トリガ19は、回転工具10を作動させるためのものであり、このトリガ19を引き操作することで、後述する電源スイッチ21や回転制御スイッチ22がオンになり、回転工具10が作動を開始するようになっている。このトリガ19は、グリップ部13を握ったときにちょうど人差し指がかかる位置に配設されている。
【0024】
また、切替レバー20は、モータ31の回転方向を決定するためのものであり、図3〜5等に示すように、左右の端部がグリップ部13の側面から突出するように配置されている。この切替レバー20は、この左右の端部のいずれかを押し込み操作することにより、出力軸12と直交する方向にスライドするようになっている。この切替レバー20は、グリップ部13を握った状態で親指や人差し指によって操作できる位置に配設されている。 本実施形態においては、図3に示すように、正面視で切替レバー20の左側の端部を押し込んだ状態がモータ31を正転させる正転状態となっており、この正転状態でトリガ19が引き操作されるとモータ31が正転するように形成されている。
【0025】
また、図5に示すように、正面視で切替レバー20の右側の端部を押し込んだ状態がモータ31を逆転させる逆転状態となっており、この逆転状態でトリガ19が引き操作されるとモータ31が逆転するように形成されている。
【0026】
また、図4に示すように、正面視で切替レバー20が中間位置にある状態が正転状態及び前記逆転状態のいずれでもない中立状態となっている。この中立状態においては、トリガ19が引き操作できないように制限されている。この点は後ほど詳述する。
【0027】
(電池パック取付部14)
電池パック取付部14は、図示しない電池パックを下面に着脱させる部位である。この電池パック取付部14の上面側には、図1に示すように、操作パネル15が設けられている。この操作パネル15には、現在の回転モードを表示するためのモード表示ランプ16、回転モードを変更するためのモード設定ボタン17、照明手段32の照射輝度を設定するためのライト切替ボタン18が設けられている。
【0028】
この操作パネル15の裏側に位置する電池パック取付部14の内部には、操作パネル15の各ボタンやランプが接続された制御基板が内蔵されており、この制御基板上に実装された制御装置100(図2参照)が回転工具10の作動を制御するように構成されている。
【0029】
この制御装置100は、特に図示しないが、CPUを中心に構成され、各種スイッチなどの入力を処理し、モータ31などの駆動を制御するように構成されている。
【0030】
この制御装置100には、図2に示すように、電源スイッチ21、回転制御スイッチ22、回転方向決定スイッチ23、モード設定スイッチ24、ライト切替スイッチ25の各スイッチが接続されている。
【0031】
以下、各スイッチについて説明する。
【0032】
(電源スイッチ21)
電源スイッチ21は、トリガ19が所定の位置まで引かれたときに、回転工具10の電源を入れるスイッチである。具体的には、トリガ19が最大引量の約1/5程度引かれたときに接点が入ることで、電源を通電させるための起動信号を出力するスイッチである。制御装置100が起動信号を受信すると、スリープ状態から復帰して、モータ31への通電やモード表示ランプ16の点灯などを実行する。
【0033】
(回転制御スイッチ22)
回転制御スイッチ22は、トリガ19が前記所定の位置を超えて引かれたときに、前記トリガ19の引き量に応じた回転数でモータ31を回転させるスイッチである。この回転制御スイッチ22は、トリガ19の引き量に応じた制御信号を制御装置100に出力し、制御装置100は、この制御信号が所定の閾値以上である場合に、当該制御信号に応じた回転数でモータ31を回転させる。
【0034】
(回転方向決定スイッチ23)
回転方向決定スイッチ23は、モータ31の回転方向を決定するための回転方向信号を出力するスイッチである。この回転方向決定スイッチ23は、上述した切替レバー20によって出力が切り替えられる。この回転方向決定スイッチ23は、図3に示すように、正転信号を出力するか、逆転信号を出力するか、正転信号及び逆転信号のいずれも出力しないか、の3つのパターンをとり得るように構成されている。制御装置100は、正転信号を受信中にトリガ19が操作された場合にはモータ31を正転させ、逆転信号を受信中にトリガ19が操作された場合にはモータ31を逆転させる。また、制御装置100は、正転信号及び逆転信号のいずれも受信していないことによって、回転方向決定スイッチ23が中立であることを検出可能となっている。
【0035】
(モード設定スイッチ24)
モード設定スイッチ24は、操作パネル15のモード設定ボタン17が操作されたときにモード設定信号を出力するスイッチである。制御装置100がこのモード設定信号を受信すると、内部ステータスのモードフラグを書き換えることで回転モードを変更し、当該回転モードに応じてモード表示ランプ16の表示を切り替える。
【0036】
なお、本実施形態に係る回転工具10は、図14に示すように、「強(鋼用)」「強(木用)」「弱」「増し締め」の4つの回転モードを備えている。「強(鋼用)」モードは軽負荷作業時のねじ締めスピードを重視したモード、「強(木用)」モードは高負荷作業時にビットはずれしにくいモード、「弱」モードは小ねじなどの細かい微調整が必要な場合に使用するモード、「増し締め」モードはせっこうボード留めなどで少し浮いたねじを締め付ける場合にご使用するモード(トリガ19を1回引くと打撃開始後約1/4回転締め付け、回転が停止するモード)である。
【0037】
内部処理としては、モード設定信号を1回受信するごとにモードフラグ(図14参照)が1ずつインクリメントされ、「強(鋼用)」→「強(木用)」→「弱」→「増し締め」の順にモードを移行する。なお、「増し締め」モードにおいてモード設定信号を受信した場合には、モードフラグを0に設定して「強(鋼用)」モードに移行する。
【0038】
このように設定された回転モードは、上述した制御信号が出力されてモータ31を回転させるときに制御装置100によって参照される。
【0039】
(ライト切替スイッチ25)
ライト切替スイッチ25は、照明手段32の照射輝度を変更するためのスイッチであり、操作パネル15のライト切替ボタン18が操作されたときにライト切替信号を出力するスイッチである。制御装置100がこのライト切替信号を受信すると、内部ステータスの照射輝度モードを変更し、当該照射輝度モードに応じて照明手段32の照射輝度を変更する。例えば、照射輝度モードとして「強」「中」「弱」を備えている場合、ライト切替信号を受信するたびに照射輝度を「強」→「中」→「弱」と順次変更する処理を行う。
【0040】
(切替レバー20とトリガ19との関係について)
次に、切替レバー20とトリガ19との関係について説明する。
【0041】
図6は、切替レバー20周辺の内部機構を示す図である。この図6が示すように、グリップ部13の内部には、箱形のスイッチケース42が設けられている。特に図示しないが、このスイッチケース42には電源スイッチ21、回転制御スイッチ22、回転方向決定スイッチ23の各スイッチが内蔵されている。
【0042】
また、スイッチケース42の前方には、トリガ19が摺動可能に取り付けられており、トリガ19を引き操作することでトリガ19がスイッチケース42の中に押し込まれるようになっている。トリガ19はスイッチケース42から突出する方向に常時付勢されており、また、トリガ19はスイッチケース42の内部において電源スイッチ21及び回転制御スイッチ22に接続されている。このため、トリガ19が引き操作されるとスイッチケース42の内部において電源スイッチ21及び回転制御スイッチ22が入るようになっている。
【0043】
このトリガ19の上部には揺動部材41が揺動可能に取り付けられている。この揺動部材41の端部には、上方に突起41aが突出形成されており、この突起41aと係合するように切替レバー20が設けられている。
【0044】
切替レバー20は、グリップ部13の中に収容したときにグリップ部13の側部から突出して操作可能となる操作部20aと、操作部20aの長手方向と直交するように前方に突出する係合部20bと、を備えている。係合部20bの中央には長孔20cが設けられており、この長孔20cに揺動部材41の突起41aが差し込まれることで、切替レバー20と揺動部材41とが係合している。これにより、切替レバー20を左右にスライドさせたときに揺動部材41が揺動するように形成されている。
【0045】
なお、特に図示しないが、揺動部材41はスイッチケース42の内部において回転方向決定スイッチ23に接続されており、切替レバー20が正転状態に操作されて揺動部材41が揺動したときには回転方向決定スイッチ23に正転信号を出力させ、切替レバー20が逆転状態に操作されて揺動部材41が揺動したときには回転方向決定スイッチ23に逆転信号を出力させ、切替レバー20が中立状態に操作されて揺動部材41が中央位置にあるときには回転方向決定スイッチ23に正転信号及び逆転信号のいずれも出力させないように形成されている。
【0046】
また、図6等に示すように、トリガ19の上面には規制リブ19aが設けられている。この規制リブ19aは、トリガ19の摺動方向に沿って筋状に突出して設けられており、これによってこの規制リブ19aの両側に正転ガイド溝19bと逆転ガイド溝19cとの2つの溝を形成している。
【0047】
正転ガイド溝19bは、切替レバー20が正転状態に操作されたときにトリガ19の摺動をガイドするものである。切替レバー20が正転状態に操作されたときには、図7及び図8に示すように、揺動部材41の先端が正転ガイド溝19bの側に揺動しているため、揺動部材41の先端が正転ガイド溝19bに入り込むことでトリガ19が深くまで引き操作できるように形成されている。
【0048】
また、逆転ガイド溝19cは、切替レバー20が逆転状態に操作されたときにトリガ19の摺動をガイドするものである。切替レバー20が逆転状態に操作されたときには、図11及び図12に示すように、揺動部材41の先端が逆転ガイド溝19cの側に揺動しているため、揺動部材41の先端が逆転ガイド溝19cに入り込むことでトリガ19が深くまで引き操作できるように形成されている。
【0049】
トリガ19が正転ガイド溝19b又は逆転ガイド溝19cに沿って引き操作されると、スイッチケース42の内部においてトリガ19に接続されている電源スイッチ21及び回転制御スイッチ22がオンとなる。具体的には、まず電源スイッチ21が起動信号を出力してモータ31等に通電が開始され、その後、回転制御スイッチ22が制御信号を出力してモータ31が回転を開始する。
【0050】
ところで、切替レバー20が中立状態に操作されたときには、図9及び図10に示すように、揺動部材41の先端が揺動していないため、揺動部材41の先端が規制リブ19aに臨むような配置となる。このため、切替レバー20が中立状態に操作されたときには、揺動部材41の先端が規制リブ19aに当接する所定の位置(図10に示す位置)までしかトリガ19を引き操作できない。
【0051】
この所定の位置までトリガ19を引き操作したときには、電源スイッチ21が起動信号を出力するものの、回転制御スイッチ22が制御信号を出力しない(または、モータ31の回転開始に必要な閾値に満たない制御信号を出力する)ように形成されている。このため、切替レバー20が中立状態に操作された状態でトリガ19を最大限引き操作したとしても、起動信号が出力されるだけでモータ31の回転が開始しないように形成されている。
【0052】
つまり、トリガ19は、切替レバー20が中立状態に操作されたときに所定の位置を超えて引き操作できないように制限されているため、モード切り替え時にはトリガ19の操作によって回転制御スイッチ22によるモータ31の回転が行われることがなく、安全にモードの切り替えを行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、このように切替レバー20が中立状態に操作された状態でトリガ19が引き操作されて起動信号が出力された場合に、電源がオフであれば電源をオンにする処理を行い、電源がオンであれば回転モードを変更する処理を行う。
【0054】
(処理フローについて)
次に、本実施形態に係る回転工具10の処理フローについて説明する。
【0055】
(メイン処理)
まずは回転工具10のメイン処理について、図15のフローを参照しながら説明する。
【0056】
まず、図15に示すステップS100において、電源がオフの状態でトリガ19が所定の位置まで引かれたことにより、電源スイッチ21の接点がオンになり、起動信号が制御装置100に出力される。制御装置100が起動信号を受信することで電源がオンになり、モータ31への通電やモード表示ランプ16の点灯が実行される。
【0057】
このとき、後述する初期化済みフラグはOFFにリセットされ、モードスイッチカウントも0にリセットされる。なお、モードフラグは不揮発性のメモリに記憶されているため、リセットされずに前回の回転モードが復元される。そして、ステップS101に進む。
【0058】
ステップS101では、1ミリ秒待機する。この待機時間を利用して、制御装置100は回転制御スイッチ22の制御信号を読み込む。そして、ステップS102に進む。
【0059】
ステップS102では、後述するモード変更処理を実行する。そして、ステップS103に進む。
【0060】
ステップS103では、エラー検出処理を実行する。具体的には、過放電エラーや異常電圧エラーが発生していないかをチェックする。そして、ステップS104に進む。
【0061】
ステップS104では、初期化済みフラグをONにセットする。そして、ステップS105に進む。
【0062】
ステップS105では、所定時間操作が実行されなかったかがチェックされる。所定時間操作が実行されなかった場合には、ステップS106へ進む。一方、操作が実行されている場合には、ステップS107に進む。
【0063】
ステップS106に進んだ場合、回転工具10が所定時間操作が実行されていないので、電源をオフにして待機状態に入る。そして、処理が終了し、次に電源スイッチ21が入って電源がオンとなるまで待機する。
【0064】
一方、ステップS107に進んだ場合、回転制御スイッチ22の制御信号が所定の閾値以上であるかがチェックされる。制御信号が所定の閾値未満の場合には、ステップS101に戻る。一方、制御信号が所定の閾値以上の場合には、ステップS108に進む。
【0065】
ステップS108では、モータ31の駆動を開始する。このとき、モータ31の駆動制御は、ステップS101で読み込んだ制御信号、不揮発性のメモリに書き込まれたモードフラグ、回転方向決定スイッチ23から出力されている正転信号または逆転信号を参照して行われる。すなわち、制御信号の大きさに応じた回転数、モードフラグ(回転モード)に応じた回転制御、正転信号または逆転信号に応じた回転方向でモータ31の駆動を開始する。そして、ステップS109に進む。
【0066】
ステップS109では、回転制御スイッチ22の制御信号が所定の閾値未満となるか、または、エラーが検出されるまでモータ31の駆動を続行する。そして、回転制御スイッチ22の制御信号が所定の閾値未満となるか、または、エラーが検出された場合には、ステップS110に進む。
【0067】
ステップS110では、ブレーキ処理を実行し、モータ31を停止する。そして、ステップS101に戻る。
【0068】
(モード変更処理)
次に本実施形態に係るモード変更処理について、図16のフローを参照しながら説明する。
【0069】
まず、図16に示すステップS201において、初期化済みフラグがONかをチェックする。初期化済みフラグがONの場合には、ステップS202へ進む。一方、初期化済みフラグがOFFの場合には、処理を終了する。
【0070】
ステップS202では、モード設定スイッチ24からのモード設定信号、回転方向決定スイッチ23からの正転信号及び逆転信号、モード設定スイッチ24からのモード設定信号をチェックする。モード設定信号を受信している場合、または、切替レバー20が中立状態であることを検出し(正転信号も逆転信号も受信しておらず)、かつ起動信号を受信している場合には、ステップS203へ進む。それ以外の場合は、処理を終了する。
【0071】
ステップS203では、モードスイッチカウントが10以上であるかがチェックされる。モードスイッチカウントが10以上の場合には、ステップS205へ進む。一方、モードスイッチカウントが10未満の場合には、ステップS204に進み、モードスイッチカウントを1インクリメントして処理を終了する。
【0072】
ステップS205では、回転モードを変更する。具体的には、前述したモードフラグの値を1インクリメント(モードフラグの値が3の場合には0にリセット)し、不揮発性のメモリに書き込む。このとき、新しい回転モードに対応してモード表示ランプ16の表示も切り換える。そして、ステップS206に進む。
【0073】
ステップS206では、モード設定スイッチ24からのモード設定信号、回転方向決定スイッチ23からの正転信号及び逆転信号、モード設定スイッチ24からのモード設定信号をチェックする。モード設定信号を受信している場合、または、切替レバー20が中立状態であることを検出し、かつ起動信号を受信している場合には、ステップS207へ進み、10ミリ秒待機し、再びステップS206を実行する。それ以外の場合には、モード変更の条件となる信号が停止しているので、処理を終了する。
【0074】
このモード変更処理によれば、以下の(1)または(2)の条件のいずれかを満たした状態が所定の時間(例えば10ミリ秒)継続したときに回転モードが変更される。
【0075】
(1)モード設定信号を受信
(2)切替レバー20が中立状態であることを検出かつ起動信号を受信
このため、モード設定ボタン17の押下のみならず、切替レバー20を中立状態としたトリガ19の引き操作でも回転モードを変更できる。
【0076】
なお、電源がオフの状態でトリガ19が引き操作された場合、初期化済みフラグがOFFであるため、ステップS201の分岐でモード変更処理が終了し、回転モードの変更は実行されない。すなわち、電源がオンの状態でトリガ19を引き操作した場合にのみ回転モードの変更が行われる。
【0077】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態によれば、グリップ部13近傍に配置された切替レバー20が中立状態に操作され、かつ、トリガ19が所定の位置まで引かれて電源スイッチ21から信号を受信したときに、回転モードの切り替えを実行するため、グリップ部13を握った手でモードの切り替えを行うことができる。
【0078】
しかも、トリガ19は、切替レバー20が中立状態に操作されたときに所定の位置を超えて引き操作できないように制限されているため、モード切り替え時にはトリガ19の操作によって回転制御スイッチ22によるモータ31の回転が行われることがなく、安全にモードの切り替えを行うことができる。
【0079】
なお、上記した実施形態においては、トリガ19の操作によって回転モードを変更することとしたが、これに代えて、照明手段32の照射輝度を変更するようにしてもよい。すなわち、切替レバー20が中立状態に操作され、かつ、トリガ19が所定の位置まで引かれて電源スイッチ21から信号を受信したときに、照明手段32の照射輝度を変更するようにしてもよい。
【0080】
また、上記した実施形態においては、切替レバー20が中立状態に操作され、かつ、トリガ19が所定の位置まで引かれて電源スイッチ21から信号を受信したときに、モード切り替えを実行することとしたが、これに代えて、切替レバー20が中立状態に操作され、かつ、トリガ19が所定の位置を超えて引かれて回転制御スイッチ22から信号を受信したときに、モード切り替えを実行するようにしてもよい。この場合、規制リブ19aによるトリガ19の移動規制は行わず、代わりに、切替レバー20が中立状態に操作されているときに回転制御スイッチ22から信号を受信したとしてもモータ31の回転を行わないように制御すればよい。
【0081】
また、不用意に回転モードが変更して誤作動する場合の対応として、モード変更をロック(無効化)するための手段を設けてもよい。例えば、モード変更を実行するか否かを選択するためのモード変更実行選択手段を設けてもよい。
【0082】
例えば、上記した実施形態においては、切替レバー20は、正転状態、逆転状態、中立状態のいずれかに操作されることとしたが、このうちの中立状態として2つの状態を設ける態様としてもよい。すなわち、切替レバー20は、正転状態、逆転状態、第1中立状態、第2中立状態の4段階に操作されることとし、第1中立状態においてトリガ19が引かれた場合にはモード変更を行い、第2中立状態においてトリガ19が引かれた場合にはモード変更を行わない(電源がオフであれば、電源をオンにする処理のみ実行する)ように形成してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 回転工具
11 出力部
12 出力軸
13 グリップ部
14 電池パック取付部
15 操作パネル
16 モード表示ランプ
17 モード設定ボタン
18 ライト切替ボタン
19 トリガ
19a 規制リブ
19b 正転ガイド溝
19c 逆転ガイド溝
20 切替レバー
20a 操作部
20b 係合部
20c 長孔
21 電源スイッチ
22 回転制御スイッチ
23 回転方向決定スイッチ
24 モード設定スイッチ
25 ライト切替スイッチ
31 モータ
32 照明手段
41 揺動部材
41a 突起
42 スイッチケース
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モード切り替え可能な回転工具であって、
モータと、
前記回転工具を作動させるためのトリガと、
前記トリガが所定の位置まで引かれたときに、前記回転工具の電源を入れる電源スイッチと、
前記トリガが前記所定の位置を超えて引かれたときに前記モータを回転させる回転制御スイッチと、
前記モータの回転方向を決定するためにグリップ近傍に配置された切替レバーと、
を備え、
前記切替レバーは、前記モータを正転させる正転状態、前記モータを逆転させる逆転状態、または、前記正転状態及び前記逆転状態のいずれでもない中立状態に操作されるものであって、
前記切替レバーが前記中立状態に操作され、かつ、前記トリガが前記所定の位置まで引かれて前記電源スイッチから信号を受信したときに、前記モード切り替えを実行するか、
または、前記切替レバーが前記中立状態に操作され、かつ、前記トリガが前記所定の位置を超えて引かれて前記回転制御スイッチから信号を受信したときに、前記モード切り替えを実行することを特徴とする、回転工具。
【請求項2】
前記モード切り替えによって前記モータの回転モードを変更することを特徴とする、請求項1記載の回転工具。
【請求項3】
打ち込み位置を照らすための照明手段を備え、
前記モード切り替えによって前記照明手段の照射輝度を変更することを特徴とする、請求項1記載の回転工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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