回転打撃式削孔装置
【課題】簡単な構成により、打撃動作の繰返しによって発生するピストンハンマの先端外周縁部分の変形による耐久性の低下を回避し、長期にわたり適正な打撃力を付与し得る回転打撃式削孔装置を提供する。
【解決手段】削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、削孔ビットの後端部に対して打撃力を付与する前記ダウンザホールハンマのピストンハンマ1の先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面Cに形成する。
【解決手段】削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、削孔ビットの後端部に対して打撃力を付与する前記ダウンザホールハンマのピストンハンマ1の先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面Cに形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進退可能に構成された削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式の削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の削孔ビットに対して回転力と打撃力を付与して掘削を行う回転打撃式の削孔装置における打撃力の付与の仕方は、トップハンマ方式とダウンザホールハンマ方式に大別される。後者のダウンザホールハンマ方式は、先端の削孔ビットを直接的に打撃することから、掘削性能が高く、大深度削孔にも有効である。ところで、このダウンザホールハンマ方式を採用する回転打撃式削孔装置においては、一般的にピストンハンマの端面により削孔ビットの端面を直接打撃することにより削孔ビットに打撃力を付与するように構成されている(特許文献1、特許文献2)。そして、それらのピストンハンマの端面と削孔ビットの端面との衝突面においては、きわめて強力な打撃力が作用するため、ピストンハンマの先端外周縁部分がだれて外側へ変形し、シリンダ内面とのスムーズな摺動状態が害されて装置としての耐久性が低下されるといった問題があった。
【特許文献1】特開平6−73971号公報
【特許文献2】特表平6−503622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したもので、簡単な構成により、打撃動作の繰返しによって発生するピストンハンマの先端外周縁部分の変形による耐久性の低下を回避し、長期にわたり適正な打撃力を付与し得る回転打撃式削孔装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明では、削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、削孔ビットの後端部に対して打撃力を付与する前記ダウンザホールハンマのピストンハンマの先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面に形成するという技術手段を採用した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ピストンハンマの先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面に形成するという技術手段を採用したので、打撃動作の繰返しによりピストンハンマの先端部が徐々に外側へ向けてだれるように変形しても、前記逆R状の曲面部分によりその変形が吸収されるので、短期間のうちにシリンダ内面へ接触して打撃力を弱める事態は回避できることから、簡単な構成によって長期にわたり適正な打撃力を的確に付与することが可能である。とりわけ、逆R状の曲面を採用したことから、ピストンハンマ先端部の外側への変形を吸収するためのスペースを効率よく大きくとることができるとともに応力集中を回避できるので、シリンダの外径が制約され、ピストンハンマの寸法に関しても余裕の少ない小口径用の回転打撃式削孔装置にきわめて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は小口径用の回転打撃式削孔装置としてきわめて有効であるが、削孔径の大きさに関わらず広く適用が可能である。また、単体の削孔ビットを使用する単管削孔装置にも、インナービットとその外周部に配設されたアウタービットを使用する二重管削孔装置にも適用が可能である。要は、ピストンハンマの端面により削孔ビットの端面を直接打撃することにより削孔ビットに打撃力を付与するダウンザホールハンマ式の回転打撃式削孔装置であれば、ピストンハンマの外径如何や削孔ビットの形態如何に関わらず、広く適用することが可能である。因みに、本発明においてピストンハンマの先端外周縁部分に形成される逆R状の曲面は厳密な円弧状に限られず、その先端外周縁部分に生じる外側へだれる変形を効果的に吸収できる内側へ凹んだ曲面であればよい。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の一実施例の要部を示した縦断面図である。図中1はピストンハンマで、シリンダ2の内部に摺動可能に嵌装されている。シリンダ2の先端部には、そのシリンダ2の端部に螺着された案内支持部材3を介して削孔ビット4が進退可能に嵌装されており、該削孔ビット4の後端部をピストンハンマ1により打撃することにより打撃力が伝達されるように構成されている。削孔ビット4の先端部には複数個の削孔用チップ5が備えられており、内部にはエア流通用の内部流通路6が形成されている。この内部流通路6の上流側はバルブ細管7を介してピストンハンマ1の内部に形成された内部流通路8に対して嵌入・脱離可能に構成され、下流側は流出孔9を介して外部に連通されている。また、削孔ビット4は案内支持部材3の内面との間に形成されたスプライン結合によって前後方向のみ摺動可能に案内され、シリンダ2の回転動作によって共に回転するように構成されている。削孔ビット4の後部外周面には、凹部10が形成されており、シリンダ2側に固定された係止部材11との係合によって削孔ビット4のストロークが規制されるように構成されている。
【0008】
前記ピストンハンマ1は、中央部の小径部12と両側の大径部13,14から構成され、前方の大径部13をシリンダ2の内面に摺接するとともに、後方の大径部14をシリンダ2の後端部に螺入された給気管15の連結部16の内面に摺接することにより、ピストンハンマ1を両側で軸線方向に進退可能に支持している。図2の部分拡大図に示したように、本発明では、削孔ビット4の後端部に対して打撃力を付与するピストンハンマ1の大径部13側の先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面Cに形成した点を特徴としており、これにより前述のように、打撃動作の繰返しによりピストンハンマ1の先端部が徐々に外側へ向けてだれるように変形した場合であっても、その変形を前記曲面Cにより吸収して短期間のうちにシリンダ2の内面へ接触して打撃力を弱める事態を回避し、長期にわたり適正な打撃力が的確に付与されるように構成されている。なお、給気管15からは加圧エアが供給され、バルブシート17に接離可能に配設された逆止弁18を介してバルブ室19に流入した後、シリンダ2と給気管15の連結部16との間に形成された連通路20を経て給気口21から給気されるように構成されている。また、逆止弁18の背圧側にはバネ材22が配設されるとともに、バルブ細管23が一体的に形成されており、ピストンハンマ1の内部流通路8に対して嵌入・脱離可能に構成されている。
【0009】
次に、加圧エアの流れと共にピストンハンマ1の打撃動作に関して説明する。しかして、図1に示した削孔ビット4の前進状態から地盤からの反力によって、図3のように削孔ビット4がシリンダ2に対して相対的に後退(図において上動)した場合には、前記給気口21からピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24へ加圧エアが流入し、さらにピストンハンマ1の大径部13の外周面の後半部に形成された縦溝25及びシリンダ2の内周面に形成された凹部26を経てピストンハンマ1と削孔ビット4の後端部との間に流入し、図4に示したようにフロントチャンバ27を拡大しながらピストンハンマ1を後退させることになる。本実施例では、図1に示したように、前記凹部26は、前進状態の削孔ビット4の後端部から離れた位置まで形成し、その凹部26が形成されていない部分をクッション室として構成している。これにより、後述のように、軟弱な地盤の掘削時における装置の損傷を軽減することが可能である。
【0010】
しかして、上述のように、図3においてピストンハンマ1と削孔ビット4の後端部との間に加圧エアが供給されると、図4に示したようにフロントチャンバ27が拡大し、ピストンハンマ1が後退する。この図3から図4へのピストンハンマ1の後退動作においては、ピストンハンマ1の後方のリアチャンバ28がピストンハンマ1の内部流通路8、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ開放されているので、ピストンハンマ1はスムーズに後退する。そして、やがて図示のように縦溝25が凹部26から外れると、フロントチャンバ27への加圧エアの供給が停止され、同時にピストンハンマ1の内部流通路8の後端側にバルブ細管23が嵌入し、リアチャンバ28が密閉される。因みに、この状態においても、フロントチャンバ27には加圧エアが充満されているので、ピストンハンマ1は、リアチャンバ28を圧縮しながら後退動作を継続する。
【0011】
そして、図5の状態に至ると、ピストンハンマ1の後方の大径部14が給気管15の連結部16の内面に形成した凹部29内に位置し、給気口21からの加圧エアがその大径部14と凹部29との間隙を介してリアチャンバ28に流入する。そして、さらにピストンハンマ1が後退すると、図6のように大径部14により後方のクッション室30が密閉され、ピストンハンマ1に対する前進方向への押圧力が急増する。同時に、前方のバルブ細管7がピストンハンマ1の内部流通路8から抜けて脱離するので、フロントチャンバ27内の加圧エアはバルブ細管7、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ放出され、フロントチャンバ27の内圧は激減する。その結果、ピストンハンマ1は前進動作に切替えられる。
【0012】
しかる後、ピストンハンマ1の前進動作が図7の状態まで進むと、給気口21からの加圧エアがピストンハンマ1の大径部14と前記凹部29との間隙を介してリアチャンバ28に流入し、リアチャンバ28内の内圧が急増する結果、ピストンハンマ1の前進動作が加速される。因みに、この時点で、ピストンハンマ1の内部流通路8の前端側にバルブ細管7が嵌入して、フロントチャンバ27が密閉される。その後、図8に示したようにピストンハンマ1が前進して大径部14と前記凹部29との間隙が遮断されても、フロントチャンバ27内は低圧のままであることから、リアチャンバ28内の加圧エアによりピストンハンマ1の前進動作が継続される。
【0013】
そして、図9に示したように、ピストンハンマ1の前方の大径部13に形成した縦溝25とシリンダ2の内周面に形成された凹部26との連通が開始されると、給気口21からピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24を介して供給される加圧エアがフロントチャンバ27へ流入して、ピストンハンマ1の後退動作への切替えの準備に入る。因みに、このフロントチャンバ27への加圧エアの流入によりピストンハンマ1の前進動作に対してブレーキがかかることになるが、この時点では、ピストンハンマ1はそれ自体の慣性によって高速での前進動作を維持するように各部の寸法が設定されている。
【0014】
しかして、ピストンハンマ1が高速で更に前進すると、図10に示したように削孔ビット4の後端面を打撃することになる。ところで、この打撃動作の繰返しによりピストンハンマ1の先端部が徐々に外側へ向けてだれるように変形した場合でも、前述のようにその変形が前記曲面Cにより吸収され、短期間のうちにシリンダ2の内面へ接触して打撃力を弱める事態は回避されるので、長期にわたり適正な打撃力が的確に付与される。なお、この打撃の瞬間におけるピストンハンマ1と削孔ビット4との間のエアは凹部26側へ逆流したり削孔ビット4の外周部のスプライン結合部から逃げることになる。因みに、この打撃動作の際には、後方のバルブ細管23はピストンハンマ1の内部流通路8の後端側から抜けて脱離した状態にあり、リアチャンバ28は内部流通路8、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ開放された状態にある。そして、硬質の地質部分を掘削中の場合には、掘削量が小さいことからピストンハンマ1の打撃を受けても削孔ビット4はあまり前進しない。しかも、図10の状態では給気口21がピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24に連通した状態にあり、打撃後のピストンハンマ1と削孔ビット4との間には加圧エアが供給され続けるので、更に以上の図3〜図10の動作を繰返すことになる。
【0015】
これに対して、軟弱な地質部分を掘削する場合には、1回の打撃毎の掘削量が大きく、図10に示したようにピストンハンマ1が高速で削孔ビット4の後端面を打撃すると、削孔ビット4は図11に示したように前進する。この図11の場合には、給気口21とピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24との連通が大径部14により遮断された状態にある。そこで、以上の打撃動作を再度実行させるには、装置を押込んで地盤からの反力により削孔ビット4をシリンダ2に対して相対的に後退(図において上動)させ、前記給気口21と間隙24を連通させて加圧エアをピストンハンマ1の前方部分へ供給することにより可能である。
【0016】
ところで、この地質が軟弱な場合の掘削においては、図9に関して説明したようにフロントチャンバ27へ加圧エアが供給された際に、その加圧エアによって削孔ビット4が前進してしまうこともある。また、打撃時のピストンハンマ1と削孔ビット4との間のエアの圧力上昇や、打撃タイミングのずれなどによって打撃位置が前方(図において下方)にずれることがある。このような場合には、地盤からの反力が弱いため、削孔ビット4に作用した打撃力を前記係止部材11を介して装置側で受止めなければならないことから装置が損傷を受けやすい。本実施例では、この装置の損傷を軽減するため、図12に示したように、凹部26が形成されていない前方の部分をクッション室31として構成するという技術手段を採用した。すなわち、図示のように、ピストンハンマ1の前進に伴って削孔ビット4の後端面との間に閉じられたクッション室31が形成されるので、そのクッション手段としての緩衝機能により削孔ビット4に対する打撃力が緩和され、装置が損傷から保護されることになる。なお、クッション室31内のエアはやがて削孔ビット4の外周部のスプライン結合部から漏出することになる。因みに、このクッション手段としては、バネ材等の弾性手段を付設する形態も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の要部を示した縦断面図である。
【図2】同実施例に使用されたピストンハンマの部分拡大図である。
【図3】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図4】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図5】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図6】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図7】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図8】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図9】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図10】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図11】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図12】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1…ピストンハンマ、2…シリンダ、3…案内支持部材、4…削孔ビット、5…削孔用チップ、6…内部流通路、7…バルブ細管、8…内部流通路、9…流出孔、10…凹部、11…係止部材、12…小径部、13,14…大径部、15…給気管、16…連結部、17…バルブシート、18…逆止弁、19…バルブ室、20…連通路、21…給気口、22…バネ材、23…バルブ細管、24…間隙、25…縦溝、26…凹部、27…フロントチャンバ、28…リアチャンバ、29…凹部、30,31…クッション室、C…曲面
【技術分野】
【0001】
本発明は、進退可能に構成された削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式の削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の削孔ビットに対して回転力と打撃力を付与して掘削を行う回転打撃式の削孔装置における打撃力の付与の仕方は、トップハンマ方式とダウンザホールハンマ方式に大別される。後者のダウンザホールハンマ方式は、先端の削孔ビットを直接的に打撃することから、掘削性能が高く、大深度削孔にも有効である。ところで、このダウンザホールハンマ方式を採用する回転打撃式削孔装置においては、一般的にピストンハンマの端面により削孔ビットの端面を直接打撃することにより削孔ビットに打撃力を付与するように構成されている(特許文献1、特許文献2)。そして、それらのピストンハンマの端面と削孔ビットの端面との衝突面においては、きわめて強力な打撃力が作用するため、ピストンハンマの先端外周縁部分がだれて外側へ変形し、シリンダ内面とのスムーズな摺動状態が害されて装置としての耐久性が低下されるといった問題があった。
【特許文献1】特開平6−73971号公報
【特許文献2】特表平6−503622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したもので、簡単な構成により、打撃動作の繰返しによって発生するピストンハンマの先端外周縁部分の変形による耐久性の低下を回避し、長期にわたり適正な打撃力を付与し得る回転打撃式削孔装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明では、削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、削孔ビットの後端部に対して打撃力を付与する前記ダウンザホールハンマのピストンハンマの先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面に形成するという技術手段を採用した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ピストンハンマの先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面に形成するという技術手段を採用したので、打撃動作の繰返しによりピストンハンマの先端部が徐々に外側へ向けてだれるように変形しても、前記逆R状の曲面部分によりその変形が吸収されるので、短期間のうちにシリンダ内面へ接触して打撃力を弱める事態は回避できることから、簡単な構成によって長期にわたり適正な打撃力を的確に付与することが可能である。とりわけ、逆R状の曲面を採用したことから、ピストンハンマ先端部の外側への変形を吸収するためのスペースを効率よく大きくとることができるとともに応力集中を回避できるので、シリンダの外径が制約され、ピストンハンマの寸法に関しても余裕の少ない小口径用の回転打撃式削孔装置にきわめて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は小口径用の回転打撃式削孔装置としてきわめて有効であるが、削孔径の大きさに関わらず広く適用が可能である。また、単体の削孔ビットを使用する単管削孔装置にも、インナービットとその外周部に配設されたアウタービットを使用する二重管削孔装置にも適用が可能である。要は、ピストンハンマの端面により削孔ビットの端面を直接打撃することにより削孔ビットに打撃力を付与するダウンザホールハンマ式の回転打撃式削孔装置であれば、ピストンハンマの外径如何や削孔ビットの形態如何に関わらず、広く適用することが可能である。因みに、本発明においてピストンハンマの先端外周縁部分に形成される逆R状の曲面は厳密な円弧状に限られず、その先端外周縁部分に生じる外側へだれる変形を効果的に吸収できる内側へ凹んだ曲面であればよい。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の一実施例の要部を示した縦断面図である。図中1はピストンハンマで、シリンダ2の内部に摺動可能に嵌装されている。シリンダ2の先端部には、そのシリンダ2の端部に螺着された案内支持部材3を介して削孔ビット4が進退可能に嵌装されており、該削孔ビット4の後端部をピストンハンマ1により打撃することにより打撃力が伝達されるように構成されている。削孔ビット4の先端部には複数個の削孔用チップ5が備えられており、内部にはエア流通用の内部流通路6が形成されている。この内部流通路6の上流側はバルブ細管7を介してピストンハンマ1の内部に形成された内部流通路8に対して嵌入・脱離可能に構成され、下流側は流出孔9を介して外部に連通されている。また、削孔ビット4は案内支持部材3の内面との間に形成されたスプライン結合によって前後方向のみ摺動可能に案内され、シリンダ2の回転動作によって共に回転するように構成されている。削孔ビット4の後部外周面には、凹部10が形成されており、シリンダ2側に固定された係止部材11との係合によって削孔ビット4のストロークが規制されるように構成されている。
【0008】
前記ピストンハンマ1は、中央部の小径部12と両側の大径部13,14から構成され、前方の大径部13をシリンダ2の内面に摺接するとともに、後方の大径部14をシリンダ2の後端部に螺入された給気管15の連結部16の内面に摺接することにより、ピストンハンマ1を両側で軸線方向に進退可能に支持している。図2の部分拡大図に示したように、本発明では、削孔ビット4の後端部に対して打撃力を付与するピストンハンマ1の大径部13側の先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面Cに形成した点を特徴としており、これにより前述のように、打撃動作の繰返しによりピストンハンマ1の先端部が徐々に外側へ向けてだれるように変形した場合であっても、その変形を前記曲面Cにより吸収して短期間のうちにシリンダ2の内面へ接触して打撃力を弱める事態を回避し、長期にわたり適正な打撃力が的確に付与されるように構成されている。なお、給気管15からは加圧エアが供給され、バルブシート17に接離可能に配設された逆止弁18を介してバルブ室19に流入した後、シリンダ2と給気管15の連結部16との間に形成された連通路20を経て給気口21から給気されるように構成されている。また、逆止弁18の背圧側にはバネ材22が配設されるとともに、バルブ細管23が一体的に形成されており、ピストンハンマ1の内部流通路8に対して嵌入・脱離可能に構成されている。
【0009】
次に、加圧エアの流れと共にピストンハンマ1の打撃動作に関して説明する。しかして、図1に示した削孔ビット4の前進状態から地盤からの反力によって、図3のように削孔ビット4がシリンダ2に対して相対的に後退(図において上動)した場合には、前記給気口21からピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24へ加圧エアが流入し、さらにピストンハンマ1の大径部13の外周面の後半部に形成された縦溝25及びシリンダ2の内周面に形成された凹部26を経てピストンハンマ1と削孔ビット4の後端部との間に流入し、図4に示したようにフロントチャンバ27を拡大しながらピストンハンマ1を後退させることになる。本実施例では、図1に示したように、前記凹部26は、前進状態の削孔ビット4の後端部から離れた位置まで形成し、その凹部26が形成されていない部分をクッション室として構成している。これにより、後述のように、軟弱な地盤の掘削時における装置の損傷を軽減することが可能である。
【0010】
しかして、上述のように、図3においてピストンハンマ1と削孔ビット4の後端部との間に加圧エアが供給されると、図4に示したようにフロントチャンバ27が拡大し、ピストンハンマ1が後退する。この図3から図4へのピストンハンマ1の後退動作においては、ピストンハンマ1の後方のリアチャンバ28がピストンハンマ1の内部流通路8、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ開放されているので、ピストンハンマ1はスムーズに後退する。そして、やがて図示のように縦溝25が凹部26から外れると、フロントチャンバ27への加圧エアの供給が停止され、同時にピストンハンマ1の内部流通路8の後端側にバルブ細管23が嵌入し、リアチャンバ28が密閉される。因みに、この状態においても、フロントチャンバ27には加圧エアが充満されているので、ピストンハンマ1は、リアチャンバ28を圧縮しながら後退動作を継続する。
【0011】
そして、図5の状態に至ると、ピストンハンマ1の後方の大径部14が給気管15の連結部16の内面に形成した凹部29内に位置し、給気口21からの加圧エアがその大径部14と凹部29との間隙を介してリアチャンバ28に流入する。そして、さらにピストンハンマ1が後退すると、図6のように大径部14により後方のクッション室30が密閉され、ピストンハンマ1に対する前進方向への押圧力が急増する。同時に、前方のバルブ細管7がピストンハンマ1の内部流通路8から抜けて脱離するので、フロントチャンバ27内の加圧エアはバルブ細管7、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ放出され、フロントチャンバ27の内圧は激減する。その結果、ピストンハンマ1は前進動作に切替えられる。
【0012】
しかる後、ピストンハンマ1の前進動作が図7の状態まで進むと、給気口21からの加圧エアがピストンハンマ1の大径部14と前記凹部29との間隙を介してリアチャンバ28に流入し、リアチャンバ28内の内圧が急増する結果、ピストンハンマ1の前進動作が加速される。因みに、この時点で、ピストンハンマ1の内部流通路8の前端側にバルブ細管7が嵌入して、フロントチャンバ27が密閉される。その後、図8に示したようにピストンハンマ1が前進して大径部14と前記凹部29との間隙が遮断されても、フロントチャンバ27内は低圧のままであることから、リアチャンバ28内の加圧エアによりピストンハンマ1の前進動作が継続される。
【0013】
そして、図9に示したように、ピストンハンマ1の前方の大径部13に形成した縦溝25とシリンダ2の内周面に形成された凹部26との連通が開始されると、給気口21からピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24を介して供給される加圧エアがフロントチャンバ27へ流入して、ピストンハンマ1の後退動作への切替えの準備に入る。因みに、このフロントチャンバ27への加圧エアの流入によりピストンハンマ1の前進動作に対してブレーキがかかることになるが、この時点では、ピストンハンマ1はそれ自体の慣性によって高速での前進動作を維持するように各部の寸法が設定されている。
【0014】
しかして、ピストンハンマ1が高速で更に前進すると、図10に示したように削孔ビット4の後端面を打撃することになる。ところで、この打撃動作の繰返しによりピストンハンマ1の先端部が徐々に外側へ向けてだれるように変形した場合でも、前述のようにその変形が前記曲面Cにより吸収され、短期間のうちにシリンダ2の内面へ接触して打撃力を弱める事態は回避されるので、長期にわたり適正な打撃力が的確に付与される。なお、この打撃の瞬間におけるピストンハンマ1と削孔ビット4との間のエアは凹部26側へ逆流したり削孔ビット4の外周部のスプライン結合部から逃げることになる。因みに、この打撃動作の際には、後方のバルブ細管23はピストンハンマ1の内部流通路8の後端側から抜けて脱離した状態にあり、リアチャンバ28は内部流通路8、削孔ビット4の内部流通路6及び流出孔9を介して外部へ開放された状態にある。そして、硬質の地質部分を掘削中の場合には、掘削量が小さいことからピストンハンマ1の打撃を受けても削孔ビット4はあまり前進しない。しかも、図10の状態では給気口21がピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24に連通した状態にあり、打撃後のピストンハンマ1と削孔ビット4との間には加圧エアが供給され続けるので、更に以上の図3〜図10の動作を繰返すことになる。
【0015】
これに対して、軟弱な地質部分を掘削する場合には、1回の打撃毎の掘削量が大きく、図10に示したようにピストンハンマ1が高速で削孔ビット4の後端面を打撃すると、削孔ビット4は図11に示したように前進する。この図11の場合には、給気口21とピストンハンマ1の小径部12の周囲のシリンダ2との間隙24との連通が大径部14により遮断された状態にある。そこで、以上の打撃動作を再度実行させるには、装置を押込んで地盤からの反力により削孔ビット4をシリンダ2に対して相対的に後退(図において上動)させ、前記給気口21と間隙24を連通させて加圧エアをピストンハンマ1の前方部分へ供給することにより可能である。
【0016】
ところで、この地質が軟弱な場合の掘削においては、図9に関して説明したようにフロントチャンバ27へ加圧エアが供給された際に、その加圧エアによって削孔ビット4が前進してしまうこともある。また、打撃時のピストンハンマ1と削孔ビット4との間のエアの圧力上昇や、打撃タイミングのずれなどによって打撃位置が前方(図において下方)にずれることがある。このような場合には、地盤からの反力が弱いため、削孔ビット4に作用した打撃力を前記係止部材11を介して装置側で受止めなければならないことから装置が損傷を受けやすい。本実施例では、この装置の損傷を軽減するため、図12に示したように、凹部26が形成されていない前方の部分をクッション室31として構成するという技術手段を採用した。すなわち、図示のように、ピストンハンマ1の前進に伴って削孔ビット4の後端面との間に閉じられたクッション室31が形成されるので、そのクッション手段としての緩衝機能により削孔ビット4に対する打撃力が緩和され、装置が損傷から保護されることになる。なお、クッション室31内のエアはやがて削孔ビット4の外周部のスプライン結合部から漏出することになる。因みに、このクッション手段としては、バネ材等の弾性手段を付設する形態も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の要部を示した縦断面図である。
【図2】同実施例に使用されたピストンハンマの部分拡大図である。
【図3】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図4】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図5】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図6】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図7】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図8】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図9】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図10】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図11】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【図12】同実施例の動作過程を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1…ピストンハンマ、2…シリンダ、3…案内支持部材、4…削孔ビット、5…削孔用チップ、6…内部流通路、7…バルブ細管、8…内部流通路、9…流出孔、10…凹部、11…係止部材、12…小径部、13,14…大径部、15…給気管、16…連結部、17…バルブシート、18…逆止弁、19…バルブ室、20…連通路、21…給気口、22…バネ材、23…バルブ細管、24…間隙、25…縦溝、26…凹部、27…フロントチャンバ、28…リアチャンバ、29…凹部、30,31…クッション室、C…曲面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、削孔ビットの後端部に対して打撃力を付与する前記ダウンザホールハンマのピストンハンマの先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面に形成したことを特徴とする回転打撃式削孔装置。
【請求項1】
削孔ビットに対してダウンザホールハンマにより打撃力を付与するように構成した回転打撃式削孔装置において、削孔ビットの後端部に対して打撃力を付与する前記ダウンザホールハンマのピストンハンマの先端外周縁部分を内側へ凹んだ逆R状の曲面に形成したことを特徴とする回転打撃式削孔装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−77578(P2007−77578A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263029(P2005−263029)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】
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