説明

回転軸の草巻付き防止構造

【課題】作業中に回転軸に草等が巻付くことを抑制する草巻付き防止構造を供する。
【解決手段】伝動ケース10から水平方向に突出して設けられる回転軸15と、回転軸15と共に回転する略円筒状に形成された回転ドラム20と、回転ドラム20に設けられる複数の刈刃21とを有し、伝動ケース10は、略円筒状に形成されたカバー30によって覆われ、回転ドラム20の伝動ケース10側の端縁部は、カバー30の内周面に所定の間隙をもって挿設され、該間隙部分において回転ドラム20に段部40が設けられていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレールモーアの回転軸に対する草等の巻付き防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牧草、野草、雑草等を刈り取る機械として、水平に設けられた回転軸に複数の刈刃を取り付け、該刈刃の回転によって牧草等を粉砕しながら刈り取るフレールモーアが知られている。例えば、特許文献1には中央の伝動ケースから左右両側に延設された回転軸に、複数の刈刃が取り付けられた回転ドラムが設けられた構成のフレールモーアが記載されている。
【0003】
このようなフレールモーアでは、作業中に回転軸に対して草等が巻き付くことを防止するために、巻付き防止部材が設けられることがある。特許文献1には、左右の回転ドラムの最内側の外周部に回転ドラムと一体に形成され、外観が皿状をなし、凹部側が伝動ケース側を向いて設けられる巻付き防止部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−161136号公報(段落0036、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような皿状の巻付き防止部材を設けることにより、該巻付き防止部材が設けられた位置より内側に草等が入り込まないようにする一定の効果はあると考えられる。しかしながら、高速で回転する回転ドラムの下方における草等の動きは一定でないため、単に皿状の部材を回転ドラムの最内側に配しただけでは草等が巻付き防止部材を越えて内側に入り込み回転軸に巻き付いてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題を課題の一例とし、作業中に回転軸に草等が巻付くことを抑制する草巻付き防止構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、本発明による回転軸の草巻付き防止構造は、出力部から水平方向に突出して設けられる回転軸と、該回転軸と共に回転する略円筒状に形成された回転体と、該回転体に設けられる複数の作業部とを有し、前記出力部は、略円筒状に形成されたカバーによって覆われ、前記回転体の前記出力部側の端縁部は、前記カバーの内周面に所定の間隙をもって挿設され、該間隙部分において前記回転体に段部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業中に回転軸に草等が巻付くことを抑制する草巻付き防止構造を備えたフレールモーアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態である回転軸の草巻付き防止構造を備えたフレールモーアの正面模式図である。
【図2】(a)本発明の一実施の形態である回転軸の草巻付き防止構造に用いられるカバーの斜視模式図である。(b)本発明の一実施の形態である回転軸の草巻付き防止構造に用いられるカバーの斜視模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態である回転軸の草巻付き防止構造を備えたフレールモーアの断面模式図である。
【図4】(a)図3のA部拡大図である。(b)図4(a)を説明するための参考図である。
【図5】(a)本発明の他の実施の形態である回転軸の草巻付き防止構造に用いられるカバーの斜視模式図である。(b)本発明の他の実施の形態である回転軸の草巻付き防止構造に用いられるカバーの斜視分解模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0011】
図1はフレールモーアの一例として、例えば農作業用の管理機(全体図省略)において動力の出力部としての伝動ケース10(図3参照)の左右に設けられる回転体としての回転ドラム20に刈刃21が取り付けられた状態を示す正面図である。図1において、説明の簡単のために、刈刃21は回転ドラム20に直線状に並設されているが、実際には刈刃21は回転ドラム20に対して所定の配列で全周囲に配設される。
【0012】
エンジン(図示省略)からの駆動が伝えられる伝動シャフト(図示省略)が挿入された動力伝達軸13の先端には動力の出力部としての伝動ケース10(図3参照)が設けられ、該伝動ケース10には左右に水平な回転軸15が突出して設けられている。なお、回転軸15は、軸受部材(図示省略)を覆うために伝動ケース10の左右に設けられる円柱状に形成された軸受カバー16の中心から突出している。回転軸15は、回転体としての回転ドラム20の回転中心に設けられた中空軸23に嵌合される。これにより、回転ドラム20は回転軸15の回転にあわせて回転可能となる。ここで、例えば回転軸15は六角柱状を呈し、中空軸23の中空部分も同じく六角柱状であり、これらが嵌合することによって、回転軸15の動力が回転ドラム20に伝動されるものである。なお、中空軸23と回転軸15との固定は、回転軸15の側面に穿設されたピン孔15aと中空軸23の側面に穿設されたピン孔23aとにピン3が係止されることによってなされる。また、回転軸15の端面に穿設されたネジ孔15bに対して中空軸23の外端部側から締付ボルト5を螺着すことによってなされる。なお、ピン3は、例えばアールピン(図示省略)によって、抜け落ちが防止されている。
【0013】
回転ドラム20は、略円筒状を呈し、外周面に作業部としての刈刃21が保持されるブラケット25が複数設けられる。図示例における回転ドラム20は、中空軸23と回転軸15との固定において回転軸15の側面に穿設されたピン孔15aにピン3を係止しやすいように、外周面に取り付け用の窓として開口20aが設けられている。これにより、ピン孔15aとピン3を係止する際には、開口20aから作業者が手を入れることで容易に作業を行うことができる。なお、一の回転ドラム20に対して開口20aが周方向に4個設けられている例を示してあるが、これに限られず、3個以下又は5個以上であっても構わない。
【0014】
伝動ケース10には、伝動ケース10を回転軸15の周方向に沿って覆うためのカバー30が取付可能となっている。図2(a)に示すように、カバー30は、略円筒状からなる円筒部31を有し、該円筒部31は略半円筒状の円弧部32及び円弧部33から構成される。円弧部32と円弧部33とは周方向の一端側が例えば蝶番のような可動連結部材35によって枢支されることで開閉自在となっている(開状態のカバーを図2(b)に示す)。そして、他端側は伝動ケース10の上部に設けられた動力伝達軸13にカバー30を固定するための固定部34となっている。図示例において、固定部34は動力伝達軸13の形状に合わせた凹部34aと該凹部34aに対向する板状部材34bとによって動力伝達軸13が挟持される構成となっているが、これに限られず、例えば円弧部32,33のそれぞれの端部に凹部を設けこれによって動力伝達軸13を挟持する構成としても構わない。カバー30において円筒部31の幅は伝動ケース10の幅より大きく形成されているため、伝動ケース10だけでなく伝動ケース10から左右に延設された回転軸15の一部もカバー30によって覆われることになる。
【0015】
円弧部32,33の内周面には位置調節部材36が設けられ、伝動ケース10に対するカバー30の相対的な位置を調節することが可能となっている。図示例では、位置調節部材36は、伝動ケース10に当接するための当接部36aが先端に設けられたネジ状体からなり、該ネジ状体がそれぞれの円弧部32,33の内周面において、中心より可動連結部材35側に設けられている取付位置に螺着される。ネジ状体はそれぞれの取付位置において回転させることで高さが調節可能であり、これによってカバー30を動力伝達軸13に取り付けた際に、カバー30における円筒部31の中心と伝動ケース10における回転軸15の中心とが一致するように調節することができる。なお、位置調節部材36には調節された位置で高さを固定するための調節用ナット36bが設けられている。
【0016】
図3に示すように、回転ドラム20において伝動ケース10側の端部側は、カバー30の内側に所定の寸法(例えば10mm〜20mm程度)だけ挿入されている。これにより、カバー30における円筒部31の端部側と回転ドラム20の端部側とが所定の寸法だけ内外にラップすることになる。回転ドラム20の外径はカバー30の内径より所定の寸法だけ小さく形成されているため、回転ドラム20はカバー30の内周に接触することなく回転することができる。
【0017】
図4(a)は図3のA部拡大図である。回転ドラム20における伝動ケース10側の端部付近の周縁は、上述のカバー30における円筒部31の端部側とのラップ部分において、少なくとも円筒部31の端縁とのラップ部分に所定の厚さ(例えば5mm以上)の段部40が形成されている。図示例では、円筒部31の端部側とのラップ部分の全てに一様な厚さの段部40が回転ドラム20に一体的に形成されているが、これに限られず、回転ドラム20とは別部材のリング状部材を回転ドラム20の端縁部に嵌合しても構わない。この場合、従来の回転ドラム20に取り付けるだけで段部40を形成するのと同様の作用が得られるため簡便である。
【0018】
伝動ケース10にカバー30を設け、該カバー30によって回転軸15の露出部分と回転ドラム20の伝動ケース10側の端部付近とを覆うことにより、従来のような回転ドラムの端縁部に皿状部材を設けた構成よりも、回転軸15に対する草等の巻付き防止効果が高くなる。しかしながら、例えば図4(b)に示すように回転ドラム120とカバー30とのラップ部分に段部が設けられていない場合、同図に白抜きの矢印によって示すように、回転ドラム120の外周面に沿って草等が左右に移動し、回転ドラム120とカバー30とのラップ部分の僅かな間隙から伝動ケース10側に入り込み回転軸15に巻き付いてしまう虞がある。
【0019】
これに対し、上記実施例のように回転ドラム20に段部40を設けることで、図4(a)において白抜きの矢印によって示すように、回転ドラム20の外周面に沿って草等が伝動ケース10側に移動してきても、草等は高速で回転する段部40の壁部40aに弾かれることにより回転ドラム20とカバー30との間隙に入り込み難くなる。このように、同じ大きさの間隙であっても間隙部分に段部40が設けられることによって、より効果的に草等の侵入及び巻付きが抑制される。
【0020】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、段部40の形状は、円筒部31と回転ドラム20とのラップ部分に所定の高さで一様に形成されるものを示したが、これに限られず、少なくとも円筒部31の端縁とのラップ部分に所定の高さの壁部があれば良い。
【0021】
また、伝動ケース10に対して別部材であるカバー30を着脱自在に設けることでカバー30に汎用性をもたせる例を示したが、これに限られず、伝動ケースに対して円筒状の部材を一体的に形成し、回転軸15を覆うようにしても構わない。この場合、カバーの中心と回転軸15の中心とを一致させる手間を省くことができる。
【0022】
また、出力部として伝動ケース10を例示したが、これに限られず、例えば出力部として、エンジンからの駆動をチェーンによって回転軸15に伝えるチェーンケースを備え、該チェーンケースから回転軸15が水平方向に突出して設けられる構造でも構わない。
【0023】
この場合、上記実施の形態に示したカバー30における固定部34を変形して、チェーンケースに固定できるようにしても良いし、例えば図5(a)に示すようにチェーンケース50の回転軸55周辺を周方向に沿って覆う略円筒状の本体61と該本体61に嵌合する蓋体62とによってカバー60を構成するようにしても良い。図示例において、チェーンケース50の内部は図示しないが、伝動シャフトからの駆動力が入力される駆動スプロケットが上部に設けられ、該駆動スプロケットの回転が伝動される従動スプロケットが下部に設けられており、これら駆動スプロケットと従動スプロケットとの間にチェーンが巻回されている。そして従動スプロケットの回転が軸受部材(図示省略)に支持された回転軸55によって出力される。なお、チェーンケース50の一般的な構成として、回転軸55は軸受部材を覆っている円柱状に形成された軸受カバー53の中心から突出している。
【0024】
図示例の本体61及び蓋体62は、いずれも円筒状に形成された筒状部61a,62aと、軸受カバー53が係止される孔部65aが中央に設けられた側面部65とによって構成されている。本体61の筒状部61aはチェーンケース50の下部側の回転軸55周辺を周方向に沿って覆うため、少なくともチェーンケース50の厚さ以上の幅(筒状部61aの高さ)を有している。さらに図示例においては、筒状部61aには所定の大きさの切欠部61bが設けられ、該切欠部61bにチェーンケース50が嵌合するように構成される。ここで、切欠部61bの高さはチェーンケース50の厚さより大きくなるように形成されるため、切欠部61bにチェーンケース50が嵌合すると、筒状部61aがチェーンケースの下部側を覆うことになる。
【0025】
蓋体62において筒状部62aの幅は本体61の筒状部61aより小さく形成されている。さらに筒状部62aの外径が本体61の筒状部61aの内径と略同じになるように形成されるため、蓋体62は本体61の内側に嵌合することができる。これにより、図5(b)に示すように、蓋部62と本体61とが左右からチェーンケース50の下部側を挟み込むようにして嵌合して、覆うことができる。ここで、孔部65aに軸受カバー53が係止されるように位置決めをすれば、筒状部61a,62aの中心と軸受カバー53の中心に設けられた回転軸55の中心とが一致するので、上記実施の形態のような位置調節部材36による調節等が必要なく簡便に扱うことができる。なお、本体61と蓋体62との固定はボルト等によって行われている。
【0026】
また、出力部としてセンタードライブ方式による伝動ケース10やチェーンケースを実施例として示したが、これに限られず、サイドドライブ方式による出力部の場合であっても、出力部及び回転軸の一部を覆うようにカバーを取り付けることによって巻付き防止構造を構成することができる。
【符号の説明】
【0027】
3…ピン、5…ボルト、10…伝動ケース、13…動力伝達軸、15…回転軸、15a…ピン孔、15b…ネジ孔、20…回転ドラム、20a…開口、21…刈刃、23…中空軸、25…ブラケット、30…カバー、31…円筒部、32,33…円弧部、34…固定部、36…位置調節部材、40…段部、40a…壁部、120…回転ドラム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力部から水平方向に突出して設けられる回転軸と、該回転軸と共に回転する略円筒状に形成された回転体と、該回転体に設けられる複数の作業部とを有し、
前記出力部は、略円筒状に形成されたカバーによって覆われ、
前記回転体の前記出力部側の端縁部は、前記カバーの内周面に所定の間隙をもって挿設され、
該間隙部分において前記回転体に段部が設けられていることを特徴とする回転軸の草巻付き防止構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−103846(P2011−103846A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264889(P2009−264889)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(591121524)株式会社宮丸アタッチメント研究所 (8)
【Fターム(参考)】