説明

回転運動検出装置

【課題】従来方法の複合磁性ワイヤを使用した回転運動検出装置においては、2個以上の永久磁石を複合磁性ワイヤと検出コイル両者に近接させることによって電気パルス出力を得ていた。複合磁性ワイヤの近傍に1個の永久磁石を近接させて回転させ電気パルス発生が可能であれば、簡素で設置のために大きな体積を必要としない無電源の回転運動検出装置を実現できる。
【解決手段】大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性ワイヤにコイルを巻き回し配置し、1個以上の永久磁石を回転させる回転運動検出装置であって、前記磁性ワイヤのみの部分に磁界を与えることで前記磁性ワイヤの一部に巻きまわしたコイルによって、電気パルスを発生することが可能であって、簡素で設置のために大きな体積を必要としない回転運動検出装置が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼンジャンプを利用した電気パルス発生装置を応用した回転運動検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転する物体の回転速度に応じた電気パルスを得ることは、自動制御分野や、電気および電子機器等の各種の分野において必要とされている。従来、この種の電気パルスを発生する手段としては、光学式あるいは磁気式など種々なものがエンコーダとして開発され使用されているが、それらの一つとして、大バルクハウゼンジャンプを利用した電気パルス発生装置がある。
【0003】
この装置は、磁性ワイヤ、磁石、電気コイル等から構成されるもので、磁石などの磁界発生手段の移動あるいは置き換えにより磁気異方性を持つ磁性体中の磁束密度を変化させて、この変化により近接する電気コイルに、電磁誘導作用によって電圧を発生し、この電圧をパルス信号として使用するものである。
【0004】
一般的に、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサを使用した回転運動検出装置は、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサを駆動する為の電源が必要とされ、また、得られた信号を処理する回路が必要とされている。しかし、大バルクハウゼンジャンプを利用した回転運動検出装置は、無電源で動作可能であり、出力信号が電圧パルスであるため信号を処理する回路は簡便なものであって、低消費電力を要求される装置機器に組み込まれる場合が多い。
【0005】
本発明の背景技術となる大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性ワイヤの動作原理について説明する。強磁性体を線引きして細いワイヤにしたものは、その合金組成とともに独特な磁気的性質を持つ。このワイヤにひねり応力を加えると、ワイヤの外周部付近ほど多くひねられ、中心部ほどひねられ方が少なくなり、このため外周部と中心部では磁気特性が異なることとなる。この状態を残留させる加工を施すと、外周部と中心部で磁気特性が異なる強磁性体の磁性ワイヤができる。
【0006】
この磁性ワイヤ外周部の磁気特性は、比較的小さな磁界によってその磁化方向を変える。これに対して、中心部は、外周部よりも大きな磁界によってその磁化方向を変える。すなわち、一本の磁性ワイヤの中に比較的磁化されやすい磁気特性を持つ外周部と、磁化されにくい中心部という2種類の異なった磁気特性を持つ複合磁性体が形成されている。ここでは、外周部をソフト層、中心部をハード層と呼ぶ。
【0007】
この磁性ワイヤのハード層およびソフト層は、初期的には、どのような方向に磁化されているか定まっておらず、バラバラな磁化状態にある。この磁性ワイヤの長手方向、つまり軸線方向と平行に、ハード層の磁化方向を反転させるのに十分な外部磁界をかけると、ソフト層は、当然のこと、ハード層も磁化され同じ磁化方向にそろう。次に、ソフト層だけを磁化できるような外部磁界を、前とは逆方向にかける。その結果、磁性ワイヤのソフト層とハード層とでは磁化されている方向が逆であるという磁化状態ができる。この状態で外部磁界を取り去ってもソフト層の磁化方向は、ハード層の磁化に押さえられていて磁化状態は安定している。このときの外部磁界をセット磁界と呼ぶ。
【0008】
次に、セット磁界と反対方向の外部磁界をかけてこの外部磁界を増加させる。外部磁界の強さがある臨界強度を越すと、ソフト層の磁化方向は急激に反転する。この磁界を臨界磁界と呼ぶ。このときの反転現象は、雪崩をうつような状態でソフト層の磁壁が移動して一瞬のうちに磁化反転が起きる。この結果、ソフト層とハード層の磁化方向は同じとなり最初の状態に戻る。外部磁界は臨界磁界よりも大きな磁界をかけることとなる。この磁界をリセット磁界と呼ぶ。この雪崩をうつように磁化状態が反転する現象が大バルクハウゼンジャンプとされている。磁化反転の速度は、この大バルクハウゼンジャンプのみに依存していて外部磁界には無関係とされる。大バルクハウゼンジャンプが発生する際に、複合磁性ワイヤの近傍に電気コイルが設置されていれば、電磁誘導作用によって電圧が発生する。
【0009】
従来の技術において、前述の大バルクハウゼンジャンプを発生させるためには、磁極を反転した状態になるよう2個以上で偶数個の永久磁石を感磁要素である磁性ワイヤに近接させて電気パルスを発生することを動作原理としていた。
【0010】
この動作原理を利用した回転運動検出装置としては、例えば特許文献1に開示されている磁界発生方法を使用する磁気センサが公知である。このパルス信号発生装置を従来例1として図11に示する。図11においては、2個以上の偶数個の磁石が搭載された円盤が大バルクハウゼンジャンプを起こしうる感磁要素に交番磁界を印加して回転する構造となっている。
【0011】
感磁要素全体に磁界を印加する方式の回転運動検出装置について別の例が特許文献2に開示されている。特許文献2に示された回転運動検出装置を従来例2とし、図12に動作原理図を示す。従来例2は図12に示すように、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる感磁要素全体を磁化するように、磁界発生源として円周上に2個以上の偶数個の磁石を配置した磁石群を2組設けてあり、組間で最短距離にある磁石同士が互いに吸引しあうように回転させることによって、磁性ワイヤ全体に印加される磁界の方向を交番し変化させ、大バルクハウゼンジャンプを誘起する構造となっている。
【0012】
これらの回転運動検出装置は、無電源とすることができる長所があり、また回転のスピードに依存しない大きさのパルス出力が得られることを利点として、従来の電磁ピックアップやホール素子の代わりに使用することができるものである。
【特許文献1】特許2598453号公報
【特許文献2】特開2005−114609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来例1、又は従来例2に示されるように従来の大バルクハウゼンジャンプを応用する回転運動検出装置においては、少なくとも2個以上で偶数個の永久磁石が必要とされ、複数の永久磁石を搭載するために円盤が大きなものである必要がある。また図11および図12に示されるように、永久磁石を搭載する円盤は、感磁要素の中心線の方向と平行な平面で回転し、感磁要素全体に交番する磁界を印加するために該当する永久磁石の磁極間の距離を感磁要素の長さ以上の長さに設定する工夫がなされている。このためもあって永久磁石を搭載するための円盤は、大きなものであることが必要である。
【0014】
大バルクハウゼンジャンプを応用する装置においては、永久磁石と磁性ワイヤの位置関係が非常に厳しく、永久磁石と磁性ワイヤ間の距離が適切でない場合には、パルス信号が出力されない場合や2重出力が出力される場合がありその信号の精度に問題があった。この問題を回避するため磁性ワイヤに印加される磁界の大きさはバラツキの小さいほうが望ましく、従来例では永久磁石間の距離が重要であり偶数個の永久磁石を精度良く搭載することが必要である。
【0015】
このような問題があるため、大バルクハウゼンジャンプを利用した回転運動検出装置の小型化は難しく、また安価な装置を提供することが困難であった。更には、2個一対の永久磁石が必要な為、小型で高分解能をもった回転運動検出装置を提供することができなかった。
【0016】
本発明の課題は、大きな体積を必要としない簡素な構成の電気パルスを発生する回転検出装置を提供し、この方式の回転検出装置をさらに幅広い分野で応用可能なものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
小型化の要求に対して、永久磁石の個数を少なくすることができれば、全体として体積を小さくすることが可能となる。この課題を解決する手段が、磁性ワイヤに検出コイルを部分的に巻きまわして配置し、1個の永久磁石を前記磁性ワイヤの中心線に対し平行な平面上で、かつ前記磁性ワイヤの一端側面近傍を相対移動させ大バルクハウゼンジャンプを誘起させることによる回転運動検出装置である。
【0018】
発明者らは大バルクハウゼンジャンプを起こしうる複合磁性ワイヤに対して、1つの磁界発生手段から発せられる磁界を複合磁性ワイヤの一部に印加して、前記磁界発生手段の磁界強度あるいは磁界の方向を変えることで電気パルスを発生させることが可能であることを特願2005−177296号公報で明らかにした。
【0019】
この原理は、大バルクハウゼンジャンプを起こしうる複合磁性ワイヤに検出コイルを巻きまわして配置し、複合磁性ワイヤに永久磁石の磁極の一方を近接させて、複合磁性ワイヤの一部側面を励磁すると、ソフト層の磁区が励磁した部分より反転し、拡大する。複合磁性ワイヤの近傍に設置した検出コイルによって、この磁区の拡大による電気誘導を電気パルスとして出力しているものと考えられる。本発明は、この原理を応用して1個の永久磁石が、前記磁性ワイヤの中心線に対し平行な平面上を円運動するよう配置した回転運動検出装置である。
【0020】
従来例においては、図11および図12に示すように複合磁性ワイヤの設置場所と設置方向について、磁性ワイヤが磁石を搭載した円盤の外周部側面に、あるいは外周部側面の近傍に設置され、磁性ワイヤの中心線を円盤の回転軸と垂直でかつ永久磁石の回転の接線方向と並行に設置される方法であった。磁性ワイヤの方向に関して、円盤の直径方向に磁性ワイヤの中心線を配置することが可能であれば、磁性ワイヤが円盤外周のさらに外側へ設置される部分を少なくすることができ、回転運動検出装置全体の体積をより小さくすることが可能となる。
【0021】
また、前記磁性ワイヤは検出コイルより充分長く、検出コイルから離れた位置で磁性ワイヤ近傍を永久磁石が通過することを特徴とすることによってさらに体積を小さくした回転運動検出装置が可能である。
【0022】
磁性ワイヤに巻きまわしてある検知コイルの位置について、磁性ワイヤの片側の一方に検知コイルを巻きまわす構造とし、永久磁石が近接する部分を磁性ワイヤのみの部分とすることによって、磁性ワイヤの側面に永久磁石がより近接する構造とすることができる。この配置を採ることによって検知コイルを巻きまわした部分に永久磁石を近接させる設置方法に比較すると少なくとも検知コイルの占める体積を小さくすることが可能となる。
【0023】
上記の構成は、前記磁性ワイヤに検知コイルが巻きまわしてない部分がある構造とし、円盤の回転面と平行する面内に、永久磁石の回転運動の中心線と直交するように、複合磁性ワイヤを配置し、かつ永久磁石を複合磁性ワイヤの検出コイルの巻きまわしてない部分に近接と離隔を行なう動作を行う。前記のダイバルクハウゼンジャンプの前動作原理によって、永久磁石の運動に対応した電気パルスを複合磁性ワイヤの磁石が近接しない部分に設置した検出コイルより発生することが可能である。この構成によって、より永久磁石を小さくして磁性ワイヤを置き電気パルスを発生させることが可能となって、体積がより小さく簡素な構造の回転検出装置を構成することが可能となるとともに、より分解能の高い回転運動検出装置とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば円盤に搭載された永久磁石が磁性ワイヤの近傍を通過する構成をとることによって、簡素な構成の電気パルスを発生する回転運動検出装置を構成することが可能である。
【0025】
また、本発明によれば、磁性ワイヤの一部に検知コイルが設置してあれば電気パルスを発生することができ、磁性ワイヤに磁界を印加する部分には、特に検出コイルを巻き回しておく必要がない。従って、永久磁石に相対する磁性ワイヤの部分については、磁性ワイヤの周囲に検知コイルが無い部分であって、非常に細い感磁部分を構成することができる。回転運動する円盤と平行面に磁性ワイヤを設置して、前記磁性ワイヤを円盤の外側まで延長し、円盤の外側へ磁性ワイヤが伸びた部分に検知コイルを設置する事によって、より体積が小さく設置可能で簡素な構造の回転運動検出装置が構成可能となる。
【0026】
また、本発明によれば1個の円盤に複数の永久磁石を搭載し、それぞれの永久磁石が磁性ワイヤのみの細い部分に近接と離隔とをなさしめることによって電気パルス列を発生させることができ、磁石の配列に応じた電気パルス列を出力することが可能となる。
【0027】
従来
細い磁性ワイヤに磁界を印加する永久磁石は、磁性ワイヤに大バルクハウゼンジャンプを発生する磁界変化を与えるために充分な磁界強度を持つ必要があるが、永久磁石の大きさについては、関連しない。この結果、永久磁石を従来より小さくし従来に比較して高分解能をもつ回転検出装置を構成することが可能となる。
【0028】
本発明による回転運動検出装置は、とくに回転体の運動に伴い電気パルスを得るための応用分野において、複合磁性ワイヤを使用した電気パルス発生装置の利用範囲を拡大することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明では、1個の永久磁石を複合磁性ワイヤの一部に局所的に近接することにより、複合磁性ワイヤの一部に磁界を印加する構成をとる。この構成をとることにより搭載に大きな体積を必要としない回転運動検出装置の構造を実現することができる。以下実施例に従って説明する。
【0030】
なお、以下の実施例において回転体の回転中心線の方向をX方向、複合磁性ワイヤの中心線方向をそれぞれY方向、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向として説明する。
【実施例1】
【0031】
図1に実施例1を示す。図1の回転運動検出装置は、複合磁性ワイヤ1と、この複合磁性ワイヤ1の周りに巻き回された検出コイル2と、複合磁性ワイヤ1の一部を磁化しうる磁界を発生する磁界発生手段としての直方体の永久磁石3を備えている。永久磁石3は複合磁性ワイヤ1の長さ方向の中心線位置から適度な距離を持って、複合磁性ワイヤ1に接触せず、複合磁性ワイヤ1の側面より複合磁性ワイヤ1の一部を磁化するよう近接配置されている。図1の状態では、永久磁石3は、複合磁性ワイヤ1の中心線(Y方向)と直交する方向(Z方向)に着磁されていて、図1の例では円盤4が図1中の矢印の方向に回転するのに伴い複合磁性ワイヤ1にN極が近接した後S極がワイヤに近接する配置になっている。
【0032】
図1において、永久磁石3が矢印のZ方向へ移動した場合、ほぼ永久磁石3のZ方向の二つの上端部と下端部、二つの複合磁性ワイヤが最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。したがって磁石3の移動するスピードと磁石3の幅に対応した間隔で正負の電気パルスを発生することができる。
【0033】
具体的に、このような構成を有する回転運動検出装置の動作例について説明する。図1において、複合磁性ワイヤ1として直径250μm長さ22mmのバイカロイワイヤを用い、一方の端部より2mmから12mmの範囲に3000ターンの検出コイル2が巻きまわしてある。永久磁石3はX方向の厚さ1mm、Y方向の幅3mm、Z方向2mmの大きさであり、Z方向に350mTの磁界強度に着磁してある。
【0034】
永久磁石3は、複合磁性ワイヤ1に接触しないようXY方向へ1mm離れた状態で回転運動できるよう配置されており、永久磁石3のY方向移動時中心の位置は、複合磁性ワイヤ1の回転中心中心側端部より5mmの位置に一致してYZ方向へ移動する。永久磁石が複合磁性ワイヤに相対的に移動する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイルに電気パルスが発生する。実施例1のZ方向へ永久磁石3が移動する場合、ほぼ永久磁石3のZ方向の上端部とおよび下端部が、それぞれ複合磁性ワイヤ1にが最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。すなわち永久磁石3の移動する速度に依存しない正負のそれぞれ1個のパルスが発生する。図3に実施例1の電気パルス出力を図示する。実施例1のような構造を持つ回転運動検出装置においては、正負二つの電気パルスの大きさは異なる。
【0035】
実施例1において、永久磁石3の着磁によりN極とS極の方向を逆に配置した場合、検出コイルに発生する電気パルスは、極性が逆転した電気パルスが得られ図37を反転した出力パルス図4となる。
【0036】
実施例1において示したように、本発明によれば円盤に近接する複合磁性ワイヤのみの細い部分を永久磁石に近接する構造が可能となり、複合磁性ワイヤおよび検出コイルの設置のために大きな体積を必要としない。従って、これを搭載する回転運動検出装置も体積を大きくする必要がない。無電源で回転スピードによることなくパルス出力が得られる回転運動検出装置が、大きな体積を必要としないで実現できる。
【実施例2】
【0037】
図2に実施例2を概略的に示している。図2の回転運動検出装置は、基本的な構成は図1と同様であって、電気パルス発生装置を構成する各要素は図1と同じものとして説明できる。
【0038】
実施例2では、永久磁石3および33は、円盤上4上および円盤44上に搭載されている。円盤4および円盤44は、複合磁性ワイヤ1の中心線と直交する回転運動中心線軸を共通として回転運動する。回転運動の中心軸方向を、X方向とし複合磁性ワイヤの中心軸線方向をYとする。永久磁石3および永久磁石33は、複合磁性ワイヤ1の中心線(Y方向)と直交する方向(Z方向)に着磁されていて、図2の例では回転円盤4および44が図1中の矢印の方向に回転するのに伴い複合磁性ワイヤ1にN極が近接した後S極が近接する配置になっている。円盤44は図中の矢印方向に回転するのに伴い複合磁性ワイヤ1にS極が近接した後N極が近接する配置になっている。
【0039】
このような構成を有する電気パルス発生装置の動作について説明する。図2において、永久磁石3は複合磁性ワイヤ1に対して、図中の矢印Z方向へ回転する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイル2に電気パルス信号が発生する。実施例2のZ方向へ永久磁石3が移動する場合、ほぼ永久磁石3のZ方向の上端部と下端部が複合磁性ワイヤ1の端一部に最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。したがって永久磁石3の移動するスピードと永久磁石3の幅に対応した間隔で電気パルスを発生することができる。
【0040】
また永久磁石33は複合磁性ワイヤ1に対して、図中の矢印Z方向へ回転する場合、複合磁性ワイヤ1に巻き回された検出コイル2に電気パルス信号が発生する。電気パルスは、永久磁石33の上端部及び下端部が復合磁性ワイヤ1に最近接する位置で、正負それぞれ1個の電気パルスが発生する。したがって永久磁石33の移動するスピードと永久磁石33の幅に対応した間隔で電気パルスを発生させることができる。従って、永久磁石3と永久磁石33を異なる大きさに設定しておけば、それぞれの磁石の回転運動に対応した時間間隔で電気パルスを発生させることができる。
【0041】
具体的に、このような構成を有する電気パルス発生装置の動作例について説明する。各要素について大きさと性能は実施例1と同様とするが、永久磁石3はX方向の厚さ1mm、Y方向の幅3mm、Z方向2mmの大きさであり、Z方向に350mTの磁界強度に着磁してあるのに対して、永久磁石33はX方向の厚さ1mm、Y方向の幅3mm、Z方向3mmの大きさであり、Z方向に350mTの磁界強度に着磁してある。
【0042】
永久磁石3は、複合磁性ワイヤ1に接触しないようX方向へ1mm離れた状態で回転運動する回転円盤4上に取り付けられており、永久磁石3は、図2中に示される矢印方向に複合磁性ワイヤ1の中心線の方向(Y方向)に直交して運動する。実施例2においては、さらに永久磁石33が、回転円盤4と回転中心軸を共通にして回転する円盤44上に搭載されている。円盤4と円盤44は、それぞれ独立して回転する。実施例2では、円盤4の回転に伴い永久磁石3に対応した正負二つの電気パルスと、円盤44の回転に伴い永久磁石33に対応した正負二つの電気パルスが発生し、この永久磁石3と永久磁石33に対応した正負の電気パルスの間隔は、それぞれ永久磁石3と永久磁石33のZ方向の長さに対応して異なる。
【0043】
実施例2において、永久磁石3および永久磁石33の着磁によりどちらか一方のN極とS極の方向を逆に配置した場合、検出コイルに発生する電気パルスは、永久磁石により極性が逆転したパルス信号が得られるため図5に示す出力パルスとなる。
【0044】
永久磁石3が搭載された円盤4および永久磁石33が搭載された円盤44がそれぞれ独立して回転運動をする場合、従来例によってパルス出力を得る場合には、それぞれの円盤に対応して複数の磁性ワイヤ素子を必要としたのに対し、実施例2の構成をとることによって、一組の磁性ワイヤと検出コイルで構成され簡素な構成とすることができる。また、設置スペースも2枚の円盤間の狭い空間に複合磁性ワイヤを設置する構造となり従来例より小さい体積で搭載が可能となる。

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の回転運動検出装置は、簡素な構成で無電源の電気パルス出力が得られるため、回転スピードの検出、あるいは回転数の計数などに利用可能である。
【0046】
従来、磁気バイアスの変動を与えるために複雑な構成をとっていたことにより実用化が充分進展しなかった複合磁性ワイヤを応用のした回転検出装置が、簡素な構成で実現可能となることによって、パルス出力の回転スピード計、回転数カウンタ、各種のエンコーダなどが容易に実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の回転運動検出装置の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の回転運動検出装置の第2の実施例を示す構成図である。
【図3】本発明の回転運動検出装置の第1の実施例の出力を示す図である。
【図4】本発明の回転運動検出装置の第2の実施例の出力を示す図である。
【図5】本発明の回転運動検出装置の第2の実施例の出力を示す第二の図である。
【図11】回転運動検出装置の従来例1を示す構成図である。
【図12】回転運動検出装置の従来例2を示す構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1 複合磁性ワイヤ
2 検出コイル
3 永久磁石
4 円盤
10 電気パルス発生素子
33 永久磁石
44 円盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大バルクハウゼンジャンプを起こしうる磁性ワイヤに検出コイルを巻きまわして配置し大バルクハウゼンジャンプを誘起させる磁界発生源として少なくとも1個以上の永久磁石をもつ回転運動検出装置であって、前記永久磁石は、前記磁性ワイヤの中心線に対し平行な平面上で、かつ前記磁性ワイヤの一端側面近傍を相対移動することを特徴とする回転運動検出装置。
【請求項2】
前記磁性ワイヤは前記検出コイルより充分長く、検出コイルから離れた位置で前記磁性ワイヤ近傍を前記永久磁石が通過することを特徴とする請求項1記載の回転運動検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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