説明

圃場管理システム及びプログラム

【課題】 圃場の土壌分析データの関連や経年変化などを空間的、時間的に容易に確認することができる圃場管理システムを提供すること。
【解決手段】 地図データベースから管理対象の圃場が存在する地図データを取得し、表示画面に表示する第1の手段と、表示された地図上において任意の圃場の指定操作を受付け、過去において前記指定された圃場と空間的に一部が重なる圃場を圃場データベースから検索して表示画面に強調表示する第2の手段と、強調表示された圃場に関連付けられた土壌分析データを土壌データベースから検索し、時間軸に沿って並べて分析値の推移を表示する第3の手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圃場管理システムに係り、特に、土壌分析の結果を検索し、その時系列的な関連あるいは空間的な関連を表示する圃場管理システム及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農業にIT(Information Technology)を積極的に導入するようになっているが、農業基盤である土壌の性質については空間的または時間的な尺度をつかって広い範囲で分析する必要がある。
作物の生産量や質と強くかかわりを持つものとして土壌の養分があるが、これを客観的に判断する方法として土壌診断が行われている。土壌診断は対象とする圃場の土を採取し、分析器や薬品を利用して土の土壌酸性度や電気伝導度を測定したり、含まれる窒素、燐酸、加里、石灰、苦土、鉄、マンガンなどの成分の数値を取得している。
これらの土壌診断は様々な団体がサービスを提供しており、生産者の必要に応じて定期、不定期に実施されている。通常は持ち込んだサンプルの土を分析の対象として実施し、その時点での定点としての分析が実施されている。サンプルの採取位置としての管理は緯度経度などの座標で実施することも可能であるが、多くは圃場の単位で記録されて管理されている。
本発明に関連する公知技術文献としては下記の特許文献1、特許文献2がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−312346
【特許文献2】特開2006−343303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施肥によって土壌の改良などを実施する際には、分析を依頼した時点における定点での分析結果を利用して資材を選択、量の調整をすることはもちろん可能ではあるが、土壌の改良には時間がかかるため過去に実施してきた診断と比較して改良の推移を確認し、資材の選択などを調整することが必要である。
しかしながら、圃場は分筆や合筆によって形や大きさが変わったり、それぞれの圃場に付けられている圃場の管理番号は作付けごとに変わったりすることは珍しいことではないので、空間的にも時間的にも情報間の関連がつかみにくく、文字として用意されている分析結果を見るだけでは、それらの間にどのような推移があるのかを判断するのは難しい。
また、正確に空間的に座標としてサンプルの採取点をおさえていても、近隣の座標点との位置関係を数値で判断するのは困難である。
また、土壌の分析結果と、土壌改良の結果である収量との関連性の紐付けも圃場番号のような管理番号とで結びつける他なく、その経年での変化の推移などは理解しづらい。
また、それぞれの圃場で収集した分析データでは、圃場を越えた、地域などの広い範囲での傾向を把握することはできない。
【0005】
本発明の目的は、圃場の土壌分析データの関連や経年変化などを空間的、時間的に容易に確認することができる圃場管理システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る圃場管理システムは、地図データベースから管理対象の圃場が存在する地図データを取得し、表示画面に表示する第1の手段と、表示された地図上において任意の圃場の指定操作を受付け、過去において前記指定された圃場と空間的に一部が重なる圃場を圃場データベースから検索して表示画面に強調表示する第2の手段と、強調表示された圃場に関連付けられた土壌分析データを土壌データベースから検索し、時間軸に沿って並べて分析値の推移を表示する第3の手段とを備えることを特徴とする。
また、前記第3の手段が時間軸に沿って並べて表示した分析値について、基準値を満たしていない成分を抽出して強調表示する第4の手段をさらに備えることを特徴とする。
また、成分単位での分析対象となる複数の圃場の指定操作を受付け、その指定された各圃場の土壌分析データを土壌データベースから取得し、土壌分析データの成分単位で基準を満たしていない圃場を抽出してその圃場を強調表示第5の手段をさらに備えることを特徴とする。
本発明に係る圃場管理プログラムは、圃場の管理を行うコンピュータを、
地図データベースから管理対象の圃場が存在する地図データを取得し、表示画面に表示する第1の手段と、表示された地図上において任意の圃場の指定操作を受付け、過去において前記指定された圃場と空間的に一部が重なる圃場を圃場データベースから検索して表示画面に強調表示する第2の手段と、強調表示された圃場に関連付けられた土壌分析データを土壌データベースから検索し、時間軸に沿って並べて分析値の推移を表示する第3の手段として機能させることを特徴とする。
また、前記第3の手段が時間軸に沿って並べて表示した分析値について、基準値を満たしていない成分を抽出して強調表示する第4の手段としてさらに機能させることを特徴とする。
また、成分単位での分析対象となる複数の圃場の指定操作を受付け、その指定された各圃場の土壌分析データを土壌データベースから取得し、土壌分析データの成分単位で基準を満たしていない圃場を抽出してその圃場を強調表示第5の手段としてさらに機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、次のような効果がある。
(1)参照対象の圃場に対して、過去のどの圃場が土壌分析データとして比較対象となるのかの判断を地図上で圃場や位置を指定するだけで判定することができる。
(2)1回の土壌診断のデータだけでなく、これまでにそこで実施してきた過去の土壌診断との比較、推移の確認を、データの突合せ作業をすることなく、該当の圃場や位置を指定するだけで参照することができる。
(3)単一の圃場の分析だけでなく、それぞれの圃場で蓄積された分析データを参照して、基準に到達していない圃場を抽出し、それらを全体の中で強調表示することにより、広い範囲での土壌の傾向を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施する場合の一形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の圃場管理システムの一実施の形態を示す図である。
本実施形態の圃場管理システムは、図1に示すように、中央処理装置1とキャラクタ及びグラフィック画面を有する端末装置2と、背景データとして地図データを格納している地図データベース3、圃場図形の位置情報と栽培作物の種類等の情報を含む圃場データを格納している圃場データベース4と、土壌分析項目の値を格納した土壌データベース5と、土壌の分析項目ごとの分析基準値を格納した基準値データベース6からなる。
【0009】
中央処理装置1は、データ入力処理7、データ表示処理8、経年土壌データ取得処理9、指定領域土壌データ判定処理10、データベースアクセス処理11を有している。
データ入力処理7は、端末装置2で入力されるデータを受け付ける処理を行うものである。
データ表示処理8は、背景データである地図データ上に圃場を描き、土壌情報表示対象の圃場の強調表示や、特定の土壌項目が分析基準値を満たしていない圃場の強調表示や、土壌情報の時間軸に沿った表形式の表示処理を行うものである。
データベースアクセス処理11は、必要に応じ地図データベース3、圃場データベース4、土壌データベース5、基準値データベース6を参照し、また更新などを行う処理である。
【0010】
各データベースに格納されているデータについて説明する。
図2は、圃場データのデータ構造を表した図である。
圃場データは、圃場を特定するための圃場番号を持つ。また、図形を特定するための図形ID21や形状情報22、その図形を表示する際の表示色23を持っている。さらに圃場データは、栽培年25、作物品種26、耕作者氏名などの情報を持つ。
形状情報22は、圃場を表す図形を構成する複数の頂点のX,Y座標値、形状の種別、頂点数のデータで構成されている。
【0011】
図3は、土壌データのデータ構造を表した図である。
土壌データは、土壌データを特定するための土壌データID301、圃場データと関連付けるための圃場番号302、調査対象の土壌を採取した日付を保持する調査日303、同一圃場の同一日の調査内容を管理するための調査番号304、土壌の調査サンプルの受付を行った日付を保持する受付日305、土壌サンプルの分析を行った日付を保持する分析日306、分析結果を受信した日付を保持する受信日307を持つ。また、土壌の種類を格納する土壌308、土性の種類を格納する土性309を持つ。さらに分析値1〜分析値nとして、分析項目の値を格納している。
【0012】
図4は、基準値データのデータ構造を表した図である。
基準値データは、土壌データの分析値1〜nに対応する項目のマスタ情報を管理するデータである。基準値データは、基準値データを特定するための分析項目ID41、土壌データの分析値1〜nに対応させるための値である分析項目番号42、分析項目の名称を格納する分析項目名称43、分析項目の単位を格納する単位44、分析値の基準の下限値を示す分析基準下限45、分析値の基準の上限値を示す分析基準上限46を持つ。
【0013】
図5は、地図データベース3及び圃場データベース4のレイヤ構造を示したものである。
地図データベース3は、図5に示すように、複数のレイヤによる層構造になっており、道路図形は道路レイヤ55に格納され、河川図形は河川レイヤ56に格納されており、地図データベース3内のすべてのレイヤを重ねると地図51と同じ絵になるように構成されている。
圃場データベース4も同様に、2008年の圃場図形は2008年圃場レイヤ57に、2007年の圃場図形は2007年圃場レイヤ58に、2006年の圃場図形は2006年圃場レイヤ59という具合に、年毎に格納され、重ね合わせ表示をすることができるように構成されている。
【0014】
次に、経年土壌データ取得処理9について説明する。
図6は、経年土壌データ取得処理9の概要を示すフローチャートである。
まずステップS601において、土壌データを表示する圃場図形について、端末装置2に表示された地図画面上でマウスなどの入力装置の指定操作によって受け付ける。
次に、ステップS602において、受け付けた圃場図形と空間的に一部分が重なる他年度の圃場データを取得する。これらの圃場データは、土壌データ取得の対象となる圃場である。対象となる圃場は、データ表示処理8において、端末装置2の地図画面上に強調色での表示を行う。
続くステップS603において、土壌データベース5より対象圃場の圃場番号の値と同一の圃場番号の値をもつ土壌データを取得する。
次に、ステップS604において、取得した土壌データの調査日と調査番号の値の降順でソートを行い、端末装置2にて、表形式で一覧表示を行う。
次に、ステップS605において、基準値データベース6より分析基準値データを取得する。
次に、ステップS606において、各土壌データの各分析値が、分析基準値データの分析基準値下限以上、分析基準値以下という条件を満たしているか判定を行う。条件を満たしていない場合、ステップS607において、表形式で端末装置2に表示した土壌データの該当箇所を警告色で塗りつぶして表示する。
次に、ステップS608で、取得した全ての土壌データ、分析値で処理が完了したか判定する。完了している場合は、処理を終了する。完了していない場合は、ステップS606に戻り、処理を継続する。
【0015】
図8は、経年土壌データ取得処理9を行った結果を端末装置2に表示した例である。
土壌データ取得対象となる圃場81,82,83を強調色で塗りつぶし、対象とならない圃場84,85は枠線のみの表示を行うことで、どの圃場が土壌データの取得対象となっているか分かりやすくする。
図8では、土壌データを表示する圃場として圃場81を指定し、それに一部分が重なる圃場82,83を強調表示している例を示している。
また、取得した各圃場における土壌データの一覧を表形式で表示し、分析基準を満たしていない分析値86,87を警告色で塗りつぶして表示することで、分析値の時系列的な変化や分析基準値との比較結果の把握を行いやすくする。
【0016】
図9は、指定した圃場と空間的に一部が重なる圃場データの取得方法を説明した図である。この例では、2008年圃場レイヤ91で指定した圃場と、2007年圃場レイヤ92、2006年圃場レイヤの93で空間的に一部が重なる圃場を所定の色(例えば黄色)で塗りつぶすことで表している。
【0017】
次に、指定領域土壌データ判定処理10について説明する。
図7は、指定領域土壌データ判定処理10の概要を示すフローチャートである。
まずステップS701において、分析基準値の判定を行う分析項目の入力をマウスやキーボード等の入力装置7で受け付ける。
次に、ステップS702において、端末装置2に表示されている地図画面の範囲に含まれる圃場データの取得を行う。
ステップS703において、取得した圃場データの圃場番号と同一の圃場番号を持つ土壌データを、土壌データベース5より取得する。
ステップS704において、基準値データベース6より分析基準値データを取得する。
ステップS705において、取得した土壌データに対して、ステップS701で指定した分析値が、ステップS704で取得した分析基準値データの分析基準値下限以上、分析基準値上限以下という条件を満たしているか判定を行う。条件を満たしていない場合、ステップS706において、分析基準値を満たさなかった土壌データに関連付いている圃場図形の色を警告色で塗りつぶして表示する。
ステップS707において、取得した全ての土壌データで処理が完了したか判定する。完了している場合は、処理を終了する。完了していない場合は、ステップS705に戻り、処理を継続する。
【0018】
図10は、指定領域土壌データ判定処理10の結果を端末装置2に表示した例である。この例では、土壌の分析値が基準に満たない圃場を警告色101,102で塗りつぶすことで、分析基準値に満たない土壌データに関連付く圃場の空間的な分布を把握しやすくしている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る圃場管理システムの一実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】圃場データのデータ構造の例を示す図である。
【図3】土壌データのデータ構造の例を示す図である。
【図4】基準値データのデータ構造の例を示す図である。
【図5】地図データベース及び圃場データベースのレイヤ構造を示す図である。
【図6】経年土壌データ取得処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】指定領域土壌データ判定処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】経年土壌データ取得処理の結果の表示例を示す図である。
【図9】空間的に一部が重なる圃場データの説明図である。
【図10】指定領域土壌データ判定処理の結果の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 中央処理装置
2 端末装置
3 地図データベース
4 圃場データベース
5 土壌データベース
6 分析基準値データベース
9 経年土壌データ取得処理
10 指定領域土壌データ判定処理
11 データベースアクセス処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データベースから管理対象の圃場が存在する地図データを取得し、表示画面に表示する第1の手段と、
表示された地図上において任意の圃場の指定操作を受付け、過去において前記指定された圃場と空間的に一部が重なる圃場を圃場データベースから検索して表示画面に強調表示する第2の手段と、
強調表示された圃場に関連付けられた土壌分析データを土壌データベースから検索し、時間軸に沿って並べて分析値の推移を表示する第3の手段と
を備えることを特徴とする圃場管理システム。
【請求項2】
前記第3の手段が時間軸に沿って並べて表示した分析値について、基準値を満たしていない成分を抽出して強調表示する第4の手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項3】
成分単位での分析対象となる複数の圃場の指定操作を受付け、その指定された各圃場の土壌分析データを土壌データベースから取得し、土壌分析データの成分単位で基準を満たしていない圃場を抽出してその圃場を強調表示第5の手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の圃場管理システム。
【請求項4】
圃場の管理を行うコンピュータを、
地図データベースから管理対象の圃場が存在する地図データを取得し、表示画面に表示する第1の手段と、
表示された地図上において任意の圃場の指定操作を受付け、過去において前記指定された圃場と空間的に一部が重なる圃場を圃場データベースから検索して表示画面に強調表示する第2の手段と、
強調表示された圃場に関連付けられた土壌分析データを土壌データベースから検索し、時間軸に沿って並べて分析値の推移を表示する第3の手段と
して機能させることを特徴とする圃場管理プログラム。
【請求項5】
前記第3の手段が時間軸に沿って並べて分析値について、基準値を満たしていない成分を抽出して強調表示する第4の手段としてさらに機能させることを特徴とする請求項4に記載の圃場管理プログラム。
【請求項6】
成分単位での分析対象となる複数の圃場の指定操作を受付け、その指定された各圃場の土壌分析データを土壌データベースから取得し、土壌分析データの成分単位で基準を満たしていない圃場を抽出してその圃場を強調表示第5の手段としてさらに機能させることを特徴とする請求項4または5に記載の圃場管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−258939(P2009−258939A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106408(P2008−106408)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】