説明

園芸用の培養土とその製造方法

【課題】膨大な発生量の茶殻を簡単かつ容易に、しかも速やかに低コストに培養土にする。それ自体を培養土として使用して使用量を相当に多くする。植物栽培用として極めて優れた物性を実現する。
【解決手段】園芸用の培養土は、茶殻2を、2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固してなる茶殻粒1からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨大な発生量の茶殻を有効に再利用する園芸用の培養土とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機の普及で膨大な茶殻が発生するようになった。缶やボトルに充填された茶が工場生産されるようになったからである。膨大な茶殻は、焼却する等の方法で廃棄している。ただ、茶殻は多量の水分を含有するので、焼却に大きな熱エネルギーを必要とする。また、短時間で腐敗して悪臭を発生する欠点もある。
【0003】
茶殻を有効に再利用するために、培養土に使用する技術が開発されている。(特許文献1ないし3参照)
【特許文献1】特開2003−325044号公報
【特許文献2】特開平7−123856号公報
【特許文献3】特開平6−298585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、食品製造にて発生する茶殻等の有機性廃棄物の炭化物を植物栽培培地として利用する技術が記載される。この培養土は、食品製造にて発生する茶殻等の有機性廃棄物を炭化物としたものである。この公報の培養土は、有機性廃棄物を炭化させるので、茶殻のみでなく、ビール粕、ウイスキー粕、麦根、製麦粕、酒粕、醤油粕、おから、ふすま、コーヒー粕、リンゴ粕、ホップ粕、酵母、残飯、梅種残渣等と種々のものを使用できる。しかしながら、この培養土は、茶殻を炭化するので加工コストが高くなる欠点がある。また、炭化した茶殻は、それ自体では培養土として使用できない欠点もある。
【0005】
特許文献2は、茶殻等の基材の表面に、パルプ繊維を絡ませている植生基盤材を記載している。この植生基盤材は、パルプ繊維として古紙パルプを使用する。古紙パルプを茶殼等の表面に絡み付けて所定の大きさの植生基盤材としている。この植生基盤材は、製造に極めて手間がかかる欠点があり、製造コストが極めて高くなる欠点がある。
【0006】
特許文献3は、ALC粉末等の多孔性珪酸カルシウム水和物とコーヒー滓、茶滓類と混合して堆肥化して堆肥化組成物とする技術を記載する。この堆肥化組成物は、たとえば、水分を含有するインスタントコーヒー用抽出残渣や茶殻に、ALC粉末を混合し、これに種菌を添加して2週間発酵させる。この間、ショベルローダーで5日毎に1回、切り返し、さらに、団塊を破砕し、粒度を調整する。さらに、15日間の副発酵を経た後、送気を止め、1ケ月間静置し、後熟発酵を行う。その後、ふるい分けし、粒径5mm以下の堆肥化組成物とする。この工程で製造される堆肥化組成物は、充分に発酵させて製造するので、製造日数が長く、加工処理に手間がかかって製造コストが高くなる欠点がある。また、この方法で製造された組成物は、堆肥として使用されるものであって、それ自体を培養土としては使用できないので、使用量が制限される欠点もある。
【0007】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、膨大な発生量の茶殻を簡単かつ容易に、しかも速やかに低コストに培養土にでき、さらにそれ自体を培養土として使用して使用量を相当に多くでき、また、植物栽培用として極めて優れた物性を実現する園芸用の培養土とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の園芸用の培養土は、茶殻2を、2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固してなる茶殻粒1からなる。
【0009】
本発明の請求項2の園芸用の培養土は、茶殻2を、2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固してなる茶殻粒1を無機粉粒体に混合している。この園芸用の培養土は、茶殻粒1の混合比を、体積比で無機粉粒体の1/6以上としている。
【0010】
本発明の請求項3の園芸用の培養土は、請求項2に記載される園芸用の培養土であって、無機粉粒体が、フライアッシュと赤玉土と天然石の粉粒体の何れか、あるいは複数を含んでいる。
【0011】
本発明の請求項4の園芸用の培養土は、茶殻2を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻をフライアッシュに混合している。この園芸用の培養土は、非造粒茶殻の混合比を、体積比でフライアッシュの1/4以上であって4倍以下としている。
【0012】
本発明の請求項5の園芸用の培養土は、茶殻2を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻を赤玉土に混合している。この園芸用の培養土は、非造粒茶殻の混合比を、体積比で赤玉土の1/4以上であって4倍以下としている。
【0013】
本発明の請求項6の園芸用の培養土は、茶殻2を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻をピートモスに混合している。この園芸用の培養土は、非造粒茶殻の混合比を、体積比でピートモスの1/4以上であって4倍以下としている。
【0014】
本発明の請求項7の園芸用の培養土は、茶殻2を、2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固して茶殻粒1とし、この茶殻粒1を、茶殻2を乾燥してなる非造粒茶殻に混合している。
【0015】
本発明の請求項8の園芸用の培養土は、茶殻2を、2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固して茶殻粒1とし、この茶殻粒1を、茶殻2を乾燥してなる非造粒茶殻と、無機粉粒体に混合している。この園芸用の培養土は、無機粉粒体の混合比を、体積比で茶殻粒1及び非造粒茶殻の1/6以上としている。
【0016】
本発明の請求項9の園芸用の培養土の製造方法は、茶殻2を湿潤な状態で造粒して茶殻2に含まれる水分で結合して造粒し、造粒された茶殻2を乾燥し、乾燥状態では茶殻2に含まれるバインダー成分でもって、平均粒子径を2mm〜25mmとする大きさに凝固させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の園芸用の培養土は、膨大な発生量の茶殻を簡単かつ容易に培養土にしながら、植物栽培用として極めて優れた物性を実現できる特長がある。それは、本発明の園芸用の培養土が、茶殻を造粒、乾燥、凝固してなる茶殻粒、あるいは茶殻を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻を培養土に使用しているからである。茶殻を造粒している茶殻粒は、単独で、あるいは無機粉粒体に混合して培養土として使用することができる。培養土として単独で使用される茶殻粒は、それ自体を培養土として使用できるので、使用量を相当に多くして、膨大な発生量の茶殻を有効に再利用できる。また、茶殻粒を無機粉粒体に混合してなる培養土は、それ自体では培養土として好ましい物性ではない無機粉粒体であっても、茶殻粒を混合して優れた培養土にできる。また、茶殻を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻は、フライアッシュ、赤玉土、ピートモスあるいは茶殻粒に混合して培養土として好ましい物性にできる。このように、本発明の培養土は、膨大な発生量の茶殻を有効に培養土に使用して、植物栽培用として極めて優れた物性を実現できる。
【0018】
さらに、本発明の園芸用の培養土の製造方法は、膨大な発生量の茶殻を簡単かつ容易に、しかも速やかに、なおかつ低コストに茶殻粒として培養土にできる特長がある。それは、本発明の製造方法が、茶殻を湿潤な状態で造粒して茶殻に含まれる水分で結合して造粒し、造粒された茶殻を乾燥し、乾燥状態では茶殻に含まれるバインダー成分で凝固させるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための園芸用の培養土とその製造方法を例示するものであって、本発明は培養土とその製造方法を以下のものに特定しない。
【0020】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0021】
図1に示す園芸用の培養土は、茶の葉を煎じた粕である茶殻2を、2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固してなる茶殻粒1である。茶殻粒1は、湿潤な茶殻を回転しているトロンメルに供給し、トロンメルで造粒して乾燥、凝固させる。トロンメルは、茶殻の移送方向に向かって下り勾配に傾斜しており、中心軸を回転軸として回転している円筒である。水分を含む湿潤な茶殻が、トロンメルの一端に設けている開口部から供給される。供給された茶殻は、トロンメルの内面でコロコロと転動されながら、下り勾配のトロンメルの内面を他端の排出側に向かって移送される。このとき、トロンメルの内面で転動される茶殻は、雪が坂を転がり落ちて大きくなるように、次第に大きく成長して造粒される。茶殻は、含有される水分の付着力で凝集して造粒される。
【0022】
造粒される茶殻粒の平均粒子径は、トロンメルを長くし、あるいは内径を大きくし、茶殻を転動して造粒する距離を長くして大きくなる。トロンメルは、内面の底部で茶殻を転動させながら、下り勾配に傾斜する方向に移送できる回転速度で回転される。トロンメルの回転速度が速くなって、遠心力が重力加速度(9.8m/sec)よりも大きくなると、トロンメルの内面から離れなくなる。したがって、トロンメルの回転速度は、遠心力が重力加速度よりも小さくなる回転数で回転される。
【0023】
トロンメルは、網や多孔板を円筒状にしたもので、外部から内側に加熱された乾燥空気を強制送風して、造粒された茶殻粒を乾燥する。造粒された茶殻粒は、茶殻に含まれるバインダー成分で凝固させる。このように、茶殻を湿潤な状態で造粒して、茶殻に含まれる水分で結合して造粒し、造粒された茶殻を茶殻に含まれるバインダー成分でもって凝固させる方法は、茶殻にバインダーを添加することなく、茶殻のみを造粒して茶殻粒にできる。ただ、本発明の培養土は、茶殻に少量のバインダーを添加し、このバインダーと茶殻のバインダー成分の両方で造粒することもできる。バインダーは、たとえばトロンメルの内側に霧状にスプレーして、あるいは茶殻に混合して茶殻を凝固させる。バインダーには、たとえば酢酸ビニル樹脂等のエマルジョンタイプの接着剤を使用する。
【0024】
トロンメルを使用して茶殻を茶殻粒に造粒する方法は、造粒と乾燥凝固を1工程で出来るので、茶殻粒を能率よく製造できる。ただ、茶殻の造粒と乾燥、凝固を別工程として茶殻粒を製造することもできる。たとえば、上方を開口している皿状のパンに茶殻を供給し、このパンを水平面内で回転させて、茶殻を転動して造粒し、造粒された茶殻粒を乾燥機で乾燥することもできる。
【0025】
茶殻2を造粒している茶殻粒1は、赤玉土やフライアッシュ等の無機粉粒体を混合し、あるいはピートモス等を混合して培養土として使用できる。また、茶殻粒の培養土は、無機粉粒体やピートモス等を混合することなく、それ自体を単独で培養土として使用することもできる。茶殻粒に混合する無機粉粒体は、フライアッシュと赤玉土と天然石の粉粒体の何れか、あるいはこれ等の複数種の混合体である。茶殻粒と無機粉粒体やピートモスを混合している培養土は、茶殻粒の混合比を、体積比で無機粉粒体やピートモスの1/6以上、好ましくは1/4以上とする。茶殻粒の混合量が、無機粉粒体やピートモスの1/6よりも少ないと、培養土として好ましい物性として、植物を好ましい状態で生育できなくなる。とくに、フライアッシュや天然石の粉粒体は、それ自体では培養土として好ましい物性のものではないが、これに茶殻粒を混合して、優れた培養土にできる。
【0026】
フライアッシュや赤玉土等の土資材を混合している培養土は、茶殻を造粒することなく、非造粒茶殻として使用することもできる。この培養土は、非造粒茶殻に土資材を混合したもので、土資材には、フライアッシュと赤玉土とピートモスと天然石の粉粒体等のいずれか、又はこれ等を複数種混合したものを使用する。この培養土は、非造粒茶殻の混合比を、体積比で土資材の1/4以上であって4倍以下として培養土として好ましい物性にできる。土資材に特定量の非造粒茶殻を混合している培養土は、非造粒茶殻によって培養土としての物性が向上される。ただ、非造粒茶殻は、茶殻粒のようにそれ自体を単独で培養土としては使用しない。さらに、非造粒茶殻は、茶殻粒に混合して培養土として使用することはできる。この培養土は、茶殻粒の混合比を、体積比で非造粒茶殻の1/4以上とする。非造粒茶殻は、茶殻の造粒工程を省略して、乾燥機で乾燥して製造されるので、茶殻粒に比べて安価に多量生産できる。
【実施例1】
【0027】
茶殻を造粒、乾燥、凝固して、平均粒子径を15mmとする茶殻粒とする。この茶殻粒に、体積比で1:1の割合で等量の赤玉土を混合して培養土とする。この培養土に、ダイコンとコマツナを植え付け、2カ月経過後に培養土から完全に分離し、分離されたダイコンとコマツナの重量を計測する。
培養土を赤玉土とし、同じ環境でダイコンとコマツナを生育させて比較例のダイコンとコマツナとする。比較例のダイコンとコマツナの重量を100とし、実施例1のダイコンとコマツナの重量を比較すると、実施例1の培養土で生育されたダイコンの重量は、比較例の培養土で生育させたダイコンの7倍となり、コマツナの重量は3.7倍と極めて大きくなる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも極めて大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【実施例2】
【0028】
茶殻粒と赤玉土の混合比を、体積比で1:4として、赤玉土の混合量を全体の80%、茶殻粒1を20%とする以外、実施例1と同様にして、ダイコンとコマツナを生育させて、重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の3.7倍となり、コマツナの重量は3倍となる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも極めて大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【実施例3】
【0029】
茶殻を造粒、乾燥、凝固して、平均粒子径を15mmとする茶殻粒とする。この茶殻粒に体積比で1:1の割合でフライアッシュを混合し、茶殻粒とフライアッシュとが等量混合された培養土とする。この培養土に、ダイコンとコマツナを植え付け、2カ月経過後に培養土から完全に分離し、分離されたダイコンとコマツナの重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の2.3倍となり、コマツナの重量は1.5倍となる。この培養土は、ダイコンもコマツナもほとんど生育できないフライアッシュの混合量を50%と多くしながら、培養土として使用している赤玉土の1.5〜2.3倍にも、ダイコンやコマツナを生育できる極めて優れた培養土となる。
【実施例4】
【0030】
茶殻粒とフライアッシュの混合比を、体積比で4:1として、茶殻粒を80%、フライアッシュを20%とする以外、実施例3と同様にして、ダイコンを生育させて、重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の1.9倍となり、コマツナの重量は1.2倍となる。このことから、この実施例の培養土は、ダイコンやコマツナをほとんど生育できないフライアッシュを混合しながら、培養土として使用される赤玉土の約2倍にもダイコンを生育でき、また赤玉土以上にコマツナを生育できる優れた培養土となる。
【実施例5】
【0031】
茶殻を造粒しないで乾燥して非造粒茶殻とする。この非造粒茶殻に体積比で4:1の割合で赤玉土を混合し、20%の赤玉土と、80%の非造粒茶殻の培養土とする。この培養土に、ダイコンとコマツナを植え付け、2カ月経過後に培養土から完全に分離し、分離されたダイコンとコマツナの重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は非造粒茶殻の8.2倍と飛躍的に大きくなり、コマツナの重量は2.3倍と相当に大きくなる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも極めて大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【実施例6】
【0032】
非造粒茶殻と赤玉土の混合比を、体積比で1:1として、赤玉土と非造粒茶殻を等量混合する以外、実施例5と同様にして、ダイコンとコマツナを生育させて、重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は赤玉土の7倍となり、コマツナの重量は4.8倍となる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも極めて大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【実施例7】
【0033】
非造粒茶殻と赤玉土の混合比を、体積比で1:4として、非造粒茶殻の混合量を全体の20%、赤玉土を80%とし、赤玉土の比率を多くする以外、実施例5と同様にして、ダイコンとコマツナを生育させて、重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の5.6倍となり、コマツナの重量は3.6倍となる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも極めて大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【実施例8】
【0034】
茶殻を造粒しないで、乾燥して非造粒茶殻とする。この非造粒茶殻に体積比で4:1の割合でフライアッシュを混合し、20%のフライアッシュと80%の非造粒茶殻からなる培養土とする。この培養土に、ダイコンとコマツナを植え付け、2カ月経過後に培養土から完全に分離し、分離されたダイコンとコマツナの重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の5.1倍と大きくなり、コマツナの重量は1.8倍と大きくなる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも極めて大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【実施例9】
【0035】
非造粒茶殻とフライアッシュの混合比を、体積比で1:1として、フライアッシュと非造粒茶殻を等量混合する以外、実施例8と同様にして、ダイコンとコマツナを生育させて、重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の2.8倍となり、コマツナの重量は0.8倍となる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較してダイコンを3倍に、コマツナを0.8倍に成長できる。コマツナの生育は、赤玉土に比較して小さくなるが、50%ものフライアッシュを使用して、赤玉土に匹敵する生育を示すことは、コマツナをほとんど生育できないフライアッシュに比較すると極めて優れた培養土となる。
【実施例10】
【0036】
非造粒茶殻とフライアッシュの混合比を、体積比で1:4として、フライアッシュの混合量を非造粒茶殻の4倍と相当に多くして、全体の80%をフライアッシュ、20%を非造粒茶殻とする以外、実施例8と同様にして、ダイコンとコマツナを生育させて、重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の2.6倍となり、コマツナの重量は0.7倍となる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較してダイコンを2.6倍に、コマツナを0.7倍に成長できる。コマツナの生育は、比較例の赤玉土に比較して小さくなるが、フライアッシュの混合量を80%と極めて多くしながら、赤玉土に近い生育にできることは、コマツナをほとんど生育できないフライアッシュに比較すると極めて優れた培養土となる。
【実施例11】
【0037】
茶殻を造粒、乾燥、凝固して、平均粒子径を15mmとする茶殻粒とする。この茶殻粒のみを培養土として、ダイコンとコマツナを植え付け、2カ月経過後に培養土から完全に分離し、分離されたダイコンとコマツナの重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の2倍となり、コマツナの重量は1.3倍となる。このことから、この実施例の培養土は、比較例の赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【実施例12】
【0038】
茶殻を造粒、乾燥、凝固して、平均粒子径を15mmとした茶殻粒と、茶殻を造粒しないで乾燥した非造粒茶殻を1:1の割合で混合して培養土する。この培養土に、ダイコンとコマツナを植え付け、2カ月経過後に培養土から完全に分離し、分離されたダイコンとコマツナの重量を計測する。
培養土を赤玉土として同じ環境で生育させた比較例のダイコンとコマツナの重量を100として、重量を比較すると、この実施例の培養土で生育されたダイコンの重量は比較例の4.4倍となり、コマツナの重量は1.1倍となる。このことから、この実施例の培養土は、赤玉土に比較して、ダイコンもコマツナも大きく成長し、培養土として極めて優れた物性を示す。
【0039】
以上の結果を図2と図3のグラフに示す。図2はダイコンの生育比較を示し、図3はコマツナの生育比較を示している。ただし、これらのグラフは、縦軸である重量を、比較例の生育状態を100とする相対値で示している。これらのグラフからもわかるように、以上の実施例は、ダイコンとコマツナの2カ月経過後の重量を計測して、本発明の培養土が、比較例の赤玉土に比較して優れた物性を示すことを証明する。以上の実施例は、2カ月経過後の重量を計測するが、本発明の培養土は、1カ月経過後の重量も比較例よりも優れ、さらに2カ月以上経過した後も、ダイコンやコマツナを大きく生育させる。本発明の実施例の培養土は、茶殻粒、非造粒茶殻、赤玉土、フライアッシュ等の混合率によって、ダイコンとコマツナの生育に差がある。しかしながら、本発明の実施例の培養土は、ダイコンとコマツナの両方の植物の生育に優れた物性を示し、これ等以外の植物においても、その差はあっても極めて優れた特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例にかかる園芸用の培養土の概略図である。
【図2】本発明の実施例の培養土によるダイコンの生育比較を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例の培養土によるコマツナの生育比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1…茶殻粒
2…茶殻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶殻(2)を2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固してなる茶殻粒(1)からなる園芸用の培養土。
【請求項2】
茶殻を2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固してなる茶殻粒を無機粉粒体に混合し、茶殻粒(1)の混合比を、体積比で無機粉粒体の1/6以上としてなる園芸用の培養土。
【請求項3】
無機粉粒体が、フライアッシュと赤玉土と天然石の粉粒体の何れかあるいは複数を含む請求項2に記載される園芸用の培養土。
【請求項4】
茶殻を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻をフライアッシュに混合し、非造粒茶殻の混合比を、体積比でフライアッシュの1/4以上であって4倍以下としてなる園芸用の培養土。
【請求項5】
茶殻を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻を赤玉土に混合し、非造粒茶殻の混合比を、体積比で赤玉土の1/4以上であって4倍以下としてなる園芸用の培養土。
【請求項6】
茶殻を非造粒状態で乾燥してなる非造粒茶殻をピートモスに混合し、非造粒茶殻の混合比を、体積比でピートモスの1/4以上であって4倍以下としてなる園芸用の培養土。
【請求項7】
茶殻(2)を2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固して茶殻粒(1)とし、この茶殻粒(1)を、茶殻を乾燥してなる非造粒茶殻に混合してなる園芸用の培養土。
【請求項8】
茶殻(2)を2mm〜25mmの平均粒子径となる大きさに造粒し、これを乾燥、凝固して茶殻粒(1)とし、この茶殻粒(1)を、茶殻を乾燥してなる非造粒茶殻と、無機粉粒体に混合し、無機粉粒体の混合比を、体積比で茶殻粒(1)及び非造粒茶殻の1/6以上としてなる園芸用の培養土。
【請求項9】
茶殻(2)を湿潤な状態で造粒して茶殻(2)に含まれる水分で結合して造粒し、造粒された茶殻(2)を乾燥し、乾燥状態では茶殻(2)に含まれるバインダー成分でもって、平均粒子径を2mm〜25mmとする大きさに凝固させる園芸用の培養土の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−43929(P2007−43929A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230170(P2005−230170)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(505299811)オオノ開發株式会社 (6)
【Fターム(参考)】