説明

土壌改良方法ならびに改良土壌

【課題】農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えて、比較的短期間で、農作物の収量増大とともに、農作物の風味等を向上させることが可能な土壌改良方法ならびに改良土壌を提供する。
【解決手段】土壌に、竹を堆肥原料とする竹堆肥を混合して一定期間放置する工程と、竹堆肥を混合した土壌に、有用微生物含有溶液を定期的に混合する工程と、を含むことにより、竹に含まれる成長促進物質が土壌に付与されるとともに、竹が多孔質であることにより、竹堆肥に含まれる竹が有用微生物含有溶液に含まれる有用微生物の住みかとなるので、土壌中の微生物の活性を常に高い状態に維持することができ、比較的短期間で土壌の改良を良好に進めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学肥料の使用を最小限に抑えて作物の生育を良好にする土壌改良方法ならびに改良土壌に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、特許文献1において、採掘された筍の水煮加工工場で排出される筍の皮、穂先および根元等の商品としない部分(以下、「筍皮」と称す。)等の廃棄処理の問題、ならびに筍堀り従事者の老齢化と人手不足にともない、食用筍の採掘をしないまま放置され、またその後成長した若竹の伐採をしないまま親竹になるまで放置されている管理不十分な竹林の問題を解決するため、筍皮や竹を主原料とした竹の発酵肥料の製造方法を開示している。
【0003】
特許文献1に開示しているように、竹を主原料とする堆肥原料に有用微生物を加えて堆肥化することにより、竹に含まれる成長促進物質が含まれた発酵肥料となり、作物の成長促進に極めて効果的な肥料を製造することができる。また、この発酵肥料を施肥した改良土壌で作物を栽培すれば、高い部位まで作物の生育を旺盛にすることが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−131487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の堆肥原料を施肥することにより、農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えて、作物の生育に良好な土壌に改良することができるが、その効果が顕著に現れるまでには、1〜2年といった比較的長い年月を要するという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みて、比較的短期間で、作物の収量増大とともに作物の風味等も向上させることが可能な土壌改良方法ならびに改良土壌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の土壌改良方法は、土壌に、竹を堆肥原料とする竹堆肥と有用微生物含有溶液を混合することを特徴とする。
また、本発明の土壌改良方法は、土壌に、竹を堆肥原料とする竹堆肥を混合して一定期間放置する工程と、竹堆肥を混合した土壌に、有用微生物含有溶液を定期的に混合する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
竹を堆肥原料とする竹堆肥ならびに有用微生物含有溶液を土壌に混合することで、竹の驚異的な成長を支えるジベレリンをはじめ、カイネチン、チロシンといった成長促進物質が土壌に付与され、また、土壌中では、有用微生物含有溶液に含まれる有用微生物が代謝活動を行い周囲の有機物を分解する。ここで、竹が多孔質材であることにより、竹堆肥に含まれる竹が有用微生物含有溶液に含まれる有用微生物の住みかとなるとともに、通気性、透水性の高い土壌となって有用微生物の代謝活動に必要な空気や水が土壌中に適度に分布することとなる。これにより、土壌中の有用微生物の活性を常に高い状態に維持することが可能となるので、有用微生物の代謝活動を持続的に活発な状態とすることができるとともに、有用微生物の土壌中での増殖を促し、比較的短期間で土壌の改良を良好に進めることができる。
【0008】
また、有用微生物含有溶液を定期的に混合することにより、代謝をくりかえして活性が落ちた土壌中の有用微生物よりも、より活性が高い状態の有用微生物を定期的に注入することとなるので、一度だけ有用微生物含有溶液を混合する場合よりも効果的に土壌の改良を進めることができる。
【0009】
ここで、有用微生物含有溶液として、竹もしくは竹の抽出液を有用微生物により発酵させて得られる竹液を用いる方が望ましい。
【0010】
上記竹液には、植物ホルモンやアミノ酸等の成長促進物質、また、害虫等に対する忌避成分が含まれており、竹堆肥に加えてこの竹液を混合することで、植物の生育を良好にする土壌とすることができる。また、上記竹液を定期的に土壌に付与することにより、活性の高い有用微生物だけでなく、成長促進物質や害虫忌避成分も定期的に注入されることとなるので、より効果的に土壌を改良することができる。
【0011】
ここで、竹堆肥は、竹を主とした堆肥原料に有用微生物を混合して製造したものである方が望ましい。
【0012】
竹を主原料とし、放線菌、光合成菌、糸状菌、乳酸菌、酵母、麹菌等の有用微生物の少なくとも1つを添加して堆肥化することにより、竹に含まれる成長促進物質が含まれた発酵肥料となり、植物の成長促進に極めて効果的な成分を土壌に与えることができる。また、発酵肥料に含まれる有用微生物と有用微生物含有溶液に含まれる有用微生物が、ともに土壌中で活発に代謝活動を行うので、作物の生育に良好な土壌に改良することができる。ここで、主原料となる竹としては、筍皮や若竹を用いる方が望ましい。筍皮や若竹は、ジベレリン、カイネチン、チロシン等の成長促進物質を豊富に含むため、これらを主原料として用いれば、植物の生育に好適な栄養成分が豊富に含まれた発酵肥料とすることができる。
【0013】
ここで、筍皮と若竹のいずれか一方または両方の堆肥原料中に占める好ましい割合は5%以上、望ましくは20%以上、さらに望ましくは40%以上であり、さらに親竹を添加する場合は、筍皮と若竹のいずれか一方または両方の占める割合が5%以上、望ましくは20%以上、さらに望ましくは40%以上で、さらに親竹を加えた割合が50%以上とする。筍皮や若竹、親竹以外の堆肥原料としては、野菜屑、食品絞り粕、食品屑、籾殻、草木その他の有機物原料を少量使用することができる。また、必要に応じて貝殻、骨粉、水産加工廃棄物等の肥料成分としての物質を添加してもよい。堆肥原料の50%以上を筍皮や若竹、親竹のいわゆる竹成分とすることで、他の竹成分以外のものを堆肥原料とする発酵肥料との差別化ができ、トレーサビリティの点からも安心な発酵肥料となる。また、堆肥原料に最適の発酵方法、とくに混合する有用微生物群のなかの最適な微生物を選定することができる。
【0014】
ここで、若竹とは親竹となる以前の成長過程の竹を指し、食用筍として掘らずにおいたため成長して食用にはならなくなったもので、およそ竹の枝が出る前迄のものである。わが国で最も多い孟宗竹でいえば、生育場所によって差異があるが、通常高さ1〜4m程度(地表から出て約1週間から1ヶ月)迄のものを言う。親竹とはそれ以上成長したもので、通常1年以上経過した竹質が硬くなった竹である。およそ1年生までの竹は親竹としての機能はなく、また竹質が柔らかいので若竹に分類しても良く、およそ2年生以上の竹質が硬い親竹と区別して、特に新竹という名称で呼ぶこともある。このように分類法は定まったものではなく、竹の性状から呼ぶことが多い。
【0015】
また、用いる有用微生物は、有害物質を含まず、発酵過程において活性を示すものであればよい。例えば、筍皮を主原料に多く含む配合では発酵が早期に始まって約75℃に上昇し、切り返し攪拌が不足すると約45℃に低下するので、高温好気性菌を主体にして、嫌気性菌を含む2種以上の微生物を組合せて使用することが望ましい。
【0016】
実際に用いる有用微生物としては、嫌気性微生物と好気性微生物が共存した有用微生物で、放線菌、光合成菌、乳酸菌、糸状菌、酵母、麹菌のいずれか1種以上を含むものであることが好ましい。これらの微生物のなかで、放線菌としてはStreptomyces、Streptoverticillium、Nocardia、Micromonospora、Rhodococcus、Actinomyces、Corynebacterium、光合成菌としてはChlorobium、Chromatium、Chloroflexus、Rhodospirillum、Rhodopseudomonas、Rhodobacter、Acetobacter、Azotobacter、Rhizobium、Methlomonas、乳酸菌としてはPropionibacterium、Lactobacillus、Pediococcus、Streptococcus、Micrococcus、Leunostoc、糸状菌としてはAspergillus、Mucor、Trichodema、酵母に属するものとしてはPichia、Saccharomyces、Candida、細菌としてはBacillus、Cellulomonas、Celluribrio、Cytohaga、Clostridium、Desuifotomaculumのなかから選定して使用するのが望ましい。
【0017】
また、竹を主原料とする堆肥原料に、有用微生物とともに、発酵促進用助剤や水分調整剤や有用微生物の栄養剤、を添加する方が望ましい。発酵促進用助剤としては家畜糞や木酢液、竹酢液があり、水分調整剤としては竹細片、木屑、炭化物、酢酸あるいはプロピオン酸含有材等があり、有用微生物の栄養剤としては米糠等が挙げられる。鶏糞あるいは米糠は窒素分の補給を兼ねて有用微生物の活性化を助け、竹細片は水分調整と脱臭の作用があり、木酢液や竹酢液は肥料成分の添加のほかに難分解性有機物の細胞外皮を軟化させ、pHの低下の防止と発酵促進、悪臭物質分解の作用がある。
【0018】
また、堆肥の発酵を促すために、ステビア植物体の粉末やステビア抽出物を添加するとよい。これにより、リグニン等の難分解性成分を含む親竹が堆肥原料に含まれる場合であっても、堆肥原料の分解ならびに発酵を促進させることが可能となる。
【0019】
また、竹堆肥は、竹の粉砕物に農産物由来の非木質材料を原料とした廃菌床を混合して発酵させたものであってもよい。
【0020】
キノコ類を栽培した後に残る菌床である廃菌床は、キノコ栽培業者にとっては産業廃棄物となるため、この廃菌床を使用することは有機物のリサイクルの面でも好ましく、堆肥製造の低コスト化が可能となる。また、廃菌床の原料が農産物由来の非木質材料であり、リグニンが少ない菌床であるので、廃菌床自体が発酵・分解の律速にならず、竹の粉剤物の発酵を促進させることができる。
【0021】
非木質材料は、とうもろこし、米糠、小麦ふすま、大豆皮、綿実を主体とすれば、菌床として使用した場合には高品質なキノコ類が栽培できる上に、残渣となる廃菌床には栄養分が残存することとなる。この廃菌床が栄養分、特に窒素成分を含むことにより、堆肥化初期において良好な栄養剤となり、有用微生物による窒素危餓を防止して、竹の発酵を促進することができる。さらに、上記の材料は菌床としてキノコ類を栽培している間に、繊維質のある程度が分解されて養分を含んだ状態であるため、竹と混合した際には、栄養剤として即効性を示すものとなる。
【0022】
とうもろこしは、主に子実、穂軸、皮等の粉砕物であるが、これには窒素分等の栄養分が多く含まれており、菌床としての栄養剤として好適なものであり、廃菌床にも残存することとなる。ここで、とうもろこしの青刈りの状態では炭素率(C/N比)は約33、全窒素分で約3.3%含有され、とうもろこしの穂軸は、炭素率約108、全窒素分で約0.45%含有されている。従って、とうもろこしの穂軸や皮等を主体的に使用すれば、炭素率を30〜110程度の範囲で調整可能であり、廃菌床が堆肥化の栄養剤として機能する。なお、一般的なオガクズの炭素率は200以上であり、平均が約340程度であるため、木質材料に比べても、とうもろこしの栄養分は豊富である。
【0023】
また、米糠は、玄米を精米する際、種皮や胚芽の粉末、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラルを含んでおり、炭素率は約10.5、全窒素分は約3.2%であり、栄養分が豊富である。また、米糠は、全リン酸分で約6.7%、全加里分で約1.5%、全苦土分で約2.4%を含有し、ミネラルが豊富である。従って、廃菌床の原料として米糠が使用されることにより、得られる竹の発酵堆肥のミネラル分も豊富となり、良質な堆肥を得ることができる。また、炭素率が小さいため、菌床の炭素率の調整剤としても機能する。
【0024】
さらに、小麦ふすまは、脱脂後の小麦の表皮を粉末にしたものであり、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラルが含まれ、炭素率は70以上である。小麦ふすまを菌床に使用すれば、廃菌床の原料として米糠が使用されることにより、得られる竹の発酵堆肥のミネラル分も豊富となり、良質な堆肥を得ることができる。
【0025】
また、大豆皮は、大豆の加工産物であり、水溶性ヘミセルロースが多く含まれており、キノコ類の栽培時には良好な炭素源となり得る。また、大豆皮が廃菌床に残存していると、水溶性ヘミセルロースが堆肥化中に有用微生物の栄養源になり、有用微生物が活性化して良好に堆肥化することができる。また、マメ科作物は一般的に窒素成分が多く含まれており、大豆皮の窒素分も好適な栄養源や、炭素率の調整材料となると考えられる。さらに、大豆皮は保水性にも優れており、堆肥の水分を好適に保持できると考えられる。
【0026】
綿実は、子実の粉砕物を使用する。綿実は、その油粕の窒素分が5〜7%と高いことが知られているように、窒素分が高い。これにより、竹の堆肥化の栄養剤として有効である。また、リン酸、カリウムも多く含まれており、得られる堆肥の肥料的効果が高くなる。
【0027】
なお、上記以外の農産物由来のものであれば、前述の条件を逸脱しない範囲で廃菌床の原料とすることができ、例えば、野菜屑、食品絞り粕、食品屑、籾殻、草木その他の有機物原料を少量使用することができる。また、必要に応じて貝殻、骨粉、水産加工廃棄物等の肥料成分としての物質を添加してもよい。
【0028】
さらに、竹の粉砕物と廃菌床とを混合する質量割合が、竹60%〜90%、廃菌床40%〜10%であることを特徴とする。一般的に、竹は繊維質に富んでいるため分解しにくく、発酵させるのに時間を要し、さらに堆肥化するのに長期間を要するが、廃菌床を質量割合で10%以上40%以下、より好ましくは、20%以上30%以下として混合すれば、栄養源として充分供給されることとなり、竹の発酵を促して堆肥化を速めることができる。ここで、廃菌床の質量割合が10%未満の場合、栄養源として不十分であり、発酵が遅れる。また、廃菌床の質量割合が40%を超えると、発酵を充分に促して堆肥化できるものの、竹本来の有用成分の含有量が相対的に少なくなり、竹成分を目的とした良好な竹堆肥が得られなくなる。
【0029】
また、竹には、若竹、筍皮の少なくとも一つが含まれることが望ましい。竹は、親竹のみとしても堆肥を製造できるが、親竹以外にも、繊維が柔らかく栄養分を含む若竹と筍皮の少なくとも一つを含んでいれば、これらが栄養剤として機能し、且つ、難分解性のリグニンをほとんど含んでいないため、さらに発酵を行いやすくなって、より短期間で竹堆肥を製造することができる。
【0030】
また、竹液は、竹を粉砕した粉砕物に有用微生物を添加し、発酵熱として60℃以上の状態で発酵させて得られた半発酵物に水を加え、さらに有用微生物を添加し、所定期間静置して有用成分を抽出することによって得られたものである方が望ましい。
【0031】
上記方法によれば、予め半発酵させてから、水中において発酵させるため、水中での発酵を行いやすくなるとともに有用成分が抽出されやすくなって抽出効率が高まり、短期間で竹液を製造することが可能となる。ここで、半発酵とは、竹の難分解性繊維の一部が分解されていることを意味する。粉砕物には、有用微生物の他に発酵促進用助剤を添加する方が望ましく、7〜25日間、60℃以上の状態で発酵させれば、好適に半発酵状態とすることができる。発酵開始後、発酵熱として60℃以上、好ましくは70℃以上の状態で発酵を維持し、しばらくすると、酸欠状態となって微生物の活動が低下し、温度が徐々に低下して60℃未満になる。この時に再度切り返すと、酸欠状態が解消されて有用微生物の活動が再度活発になり、温度は再び60℃以上(好ましくは70℃以上)となる。このように、温度が60℃未満に低下した後に切り返しを3度、7〜25日程度かけて発酵を行えば、良好な半発酵状態の竹を得ることができる。
【0032】
また、抽出工程においては、容器等に水を溜めて、半発酵物、有用微生物の他に、発酵促進用助剤を混合すれば、半発酵物(竹粉砕物)をさらに発酵させて竹の有用成分を抽出することができる。ここで、竹は半発酵させて難分解性の繊維が分解し易い状態にあるため、水の中でさらに発酵を進めれば、竹の有用成分を効率良く抽出することができる。抽出後は、濾過する等して液体物を得れば、そのままの状態、或いは希釈する等して、竹の有効成分を活かした竹液として使用することができる。
【0033】
上記半発酵工程で使用する有用微生物は、嫌気性微生物と好気性微生物が共存した有用微生物で、放線菌、光合成菌、糸状菌、乳酸菌、酵母、麹菌のいずれか1種以上であり、また、竹土着菌を使用することもできる。また、抽出工程で使用する有用微生物は、乳酸菌、特にLactobacillus属やStreptococcus属に属する乳酸菌を使用して乳酸発酵させることが望ましい。乳酸菌により生成された乳酸は他の有害な微生物の増殖を抑制するため、発酵中は、ほぼ乳酸菌のみが増殖し乳酸発酵する。
【0034】
また、発酵促進用助剤としては、半発酵工程においては米糠を、抽出工程においては糖蜜が望ましいが、これらに限定されるものではなく、微生物が好適に発酵できるように適宜選択して利用することができる。
【0035】
ここで、抽出工程における所定期間とは、気温の変動により異なるが、気温が20℃〜30℃の範囲では、7〜10日間程度である。しかし、冬場など気温がさらに低い状況においては、さらに長い日数を要する。また、状況に応じて、攪拌して酸素供給しても良い。
【0036】
なお、原料としての竹は、親竹のみでもよいが、親竹以外にも、若竹と筍皮の少なくとも一つを含む方が望ましい。若竹や筍皮は、繊維が柔らかく、且つ、難分解性のリグニンをほとんど含んでいないため、これらを原料として含むことにより、さらに発酵を行いやすくなって、より短期間で竹液を製造することができる。また、親竹は、成長促進物質の含有量が少なく、筍には、忌避剤としての有用物質が含まれていないと考えられるが、若竹や筍皮には、成長促進物質や忌避剤としての有用成分を多く含むので、これらを原料として含むことにより、植物の成長促進剤としての効果および忌避剤としての効果を併せ持った竹液とすることができる。また、若竹を使用することによって、成長途中にある竹を伐採できることから、山林を保護することができ、環境保全上有効である。
【0037】
また、竹液は、竹を粉砕した粉砕物と水の混合物を80℃以上で加熱して得られた抽出液に有用微生物を添加して発酵させることによって得られたものであってもよい。
【0038】
上記方法で得られた竹液には、竹の有用成分が効率的に抽出され、植物の成長を調整する植物ホルモンやアミノ酸等が豊富に含まれているので、竹堆肥との相乗効果で、さらに、作物の収量増大や作物の風味の向上を図ることができる。また、上記方法で得られた竹液には、害虫等に対する忌避成分も豊富に含まれているので、これを土壌に混合することにより、作物に害虫がつきにくくなり、農薬の使用を最小限に抑えることができる。なお、有用微生物としては、放線菌、光合成菌、糸状菌、乳酸菌、酵母、麹菌のいずれか1種以上の微生物や、竹土着菌などを使用することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、土壌に、竹を堆肥原料とする竹堆肥と有用微生物含有溶液を混合することにより、有用微生物の代謝活動を持続的に活発な状態とすることができるとともに、有用微生物の土壌中での増殖を促すことができるので、比較的短期間で、土壌を改良することができ、作物の収量増大とともに、作物の風味等を向上させることが可能な改良土壌とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0041】
(竹堆肥の製造方法1)
孟宗竹の親竹、若竹、筍皮を主原料とし、発酵促進用助剤として家畜糞、水分調整剤として竹細片(親竹を約3mm角程度に破砕したもの)、米糠を添加した水分約60%の堆肥原料に有用微生物を混合し攪拌する。堆肥床の温度が約75℃に上昇した時点で最初の筍皮とほぼ同量の筍皮を追加混合し、切り返し攪拌する。約1日後にさらに同量の筍皮を追加混合し、切り返し攪拌する。筍皮の追加混合と切り返し攪拌を合計4回繰り返すと、堆肥床のなかの筍皮の比率が約94%になる。なお、使用する筍皮は水煮後2〜3日自然放置して水切り自然乾燥したものが大半で、これに水煮前の生の筍皮を一部含むものであるが、水分が多い場合は全体の水分が約60%になるように竹細片で調整する。筍皮の添加を止めると堆肥床の温度が約45℃に下降するので、ここで1週間に1回の割合で切り替えし攪拌する。これを約4回繰り返す。上記の堆肥床を常温で約1ケ月放置する。以上の工程を経て、約2ヶ月で筍皮を主原料とした発酵肥料が得られる。なお、主原料としての親竹、若竹、筍皮の混合割合は適宜設定することができる。
【0042】
(竹堆肥の製造方法2)
堆肥の原料となる孟宗竹の親竹、若竹、筍皮をそれぞれ約1cm以下となるように粉砕する。また、廃菌床をキノコ製造工場より入手し、予め約1cm以下となるように粉砕する。そして、質量割合で、親竹を約500kg、若竹を約300kg、廃菌床を約200kgとしてそれぞれ混合し、発酵前に約1トンの混合物を得る。なお、混合物の混合割合、ならびに合計量はこれに限定されるものではなく、また、発酵助剤として糖蜜を加えても良く、製造状況を考慮して適宜調整することができる。この混合物に、有用微生物を接種して、発酵を開始させる。本実施の形態においては、発酵開始後2〜3日で70℃に達し、通常の発酵方法により要する期間である4日程度よりも、1〜2日程早まる。また、堆肥化に伴う切り返し、温度管理は、従来の管理方法を採用することができる。以上のように堆肥を製造すれば、1ヶ月〜1ヶ月半程度の所要期間で竹堆肥を得ることができる。
【0043】
(竹堆肥の製造方法3)
(1)第一発酵工程(半発酵工程)
堆肥の原料となる孟宗竹の親竹、若竹、筍皮をそれぞれ約1cm以下となるように粉砕して竹粉砕物を得る。そして、親竹約800kg、若竹約100kg、筍皮約100kgを混合し、発酵前に約1トンの竹由来の原料堆肥を得る。この堆肥原料に有用微生物を接種して発酵を開始させて、14日間発酵させる。なお、ここでの親竹、若竹、筍皮の混合割合はこれらに限定されるものではなく、目的に合わせて適宜設定することができる。
【0044】
発酵開始後、原料堆肥の内部の温度が、発酵熱として60℃以上(好ましくは70℃以上)の状態で静置して発酵を維持し、しばらくすると、原料堆肥の内部が酸欠状態となって微生物の活動が低下し、温度が徐々に低下して60℃未満になる。この時に再度切り返しを行うと、原料堆肥内部の酸欠状態が解消されて微生物の活動が再度活発になり、静置して温度は再び60℃以上(好ましくは70℃以上)となる。同様に再度温度は下降して60℃未満となり、2回目の切り返しを行う。これにより再々度温度が上昇して60℃以上(好ましくは70℃以上)となる。更に下降後、3回目の切り返しを行って、温度上昇し、60℃未満に下降したところで、発酵を終える。
【0045】
以上のように、切り返しを3回行って、温度60℃以上の期間を4回設けて半発酵状態とする。本実施の形態では、前述の工程を経るのに約2週間程度要して半発酵状態となるが、状況に応じて発酵期間を調節することが望ましく、気温状況等によっては7〜25日程度、好ましくは10〜20日程度で終了させるような状況とすると良い。なお、室内で温度を一定とする環境であれば、所用日数のばらつきを抑えて、均一な半発酵物を得ることができる。このとき、竹の繊維の一部は、分解されずに残存している。
【0046】
(2)第二発酵工程(完熟工程)
次に、第一発酵工程で得られた半発酵物である原料堆肥約1000kgに、ステビア植物体粉末約20kgを添加し、均一になるように混合して静置して、第二発酵工程を開始させる。このとき、前述の竹に残存している有機成分を分解し初めて、温度が再度上昇し、60℃以上、好ましくは70℃以上の状態で発酵が進む。そして、静置と切り返しを数回繰り返して、発酵が終了する。第二発酵工程に要する期間は、約10〜20日である。なお、半発酵物の分解がすすんで、半発酵物が1000kgよりも少なくなる場合には、半発酵物とステビア植物体粉末とを100:2(質量比)となるように、ステビア植物体粉末を添加する。以上のように堆肥を製造すれば、1ヶ月〜1ヶ月半程度の所要期間で竹堆肥を得ることができる。
【0047】
(竹液の製造方法1)
(1)第一発酵工程(半発酵工程)
竹液の原料となる孟宗竹の親竹、若竹、筍皮をそれぞれ約1cm以下となるように粉砕する。粉砕後、質量比で、親竹50%、若竹20%、筍皮20%、発酵促進用助剤としての米糠10%を混合し、さらに有用微生物を混合して約100kgの混合物を得る。なお、ここでの竹の混合量はこれらに限定されるものではなく、目的に合わせて設定することができる。例えば、成長促進物質を多く含有させたい場合には、若竹と筍皮を主体とし、忌避剤としての有用成分を多く含有させたい場合には、親竹の混合量を増やせば良い。
【0048】
発酵開始後、混合物の内部の温度が、発酵熱として60℃以上(好ましくは70℃以上)の状態で静置して発酵を維持し、しばらくすると、混合物の内部が酸欠状態となって微生物の活動が低下し、温度が徐々に低下して60℃未満になる。この時に再度切り返しを行うと、混合物内部の酸欠状態が解消されて有用微生物の活動が再度活発になり、静置して温度は再び60℃以上(好ましくは70℃以上)となる。同様に再度温度は下降して60℃未満となり、2回目の切り返しを行う。これにより再々度温度が上昇して60℃以上(好ましくは70℃以上)となる。更に下降後、3回目の切り返しを行って、温度上昇し、60℃未満に下降したところで、発酵を終える。
【0049】
以上のように、切り返しを3回行って、温度60℃以上の期間を4回設けて半発酵状態とする。本実施の形態では、前述の工程を経るのに約2週間程度要して半発酵状態となるが、状況に応じて発酵期間を調節することが望ましく、気温状況等によっては7〜25日程度、好ましくは10〜20日程度で終了させるような状況とすると良い。なお、室内で温度を一定とする環境であれば、所用日数のばらつきを抑えて、均一な半発酵物を得ることができる。
【0050】
(2)第二発酵工程(完熟工程)
次に、前述のように得られた半発酵物を、500リットル容器に入れ、水を300〜350リットル入れる。水は、水道水、地下水、井戸水等を使用する。さらに、有用微生物、および発酵促進用助剤である糖蜜を加えて混合する。なお、竹は多孔質材料であるので、微生物の住みかとなりやすく発酵には好適な環境となる。気温が20℃〜30℃の範囲において、7〜10日間静置する。冬場など気温がさらに低い状況においては、適宜調整する。また、状況に応じて、攪拌して酸素供給しても良い。所定期間静置後には、濾過する等して精製し、竹液を得る。本実施の形態で得られる竹液には、酢酸は含有しないものの、竹酢液に含まれる有用成分の多くが抽出されていると考えられ、これらの成分が複合的に働いて植物の成長調整剤および忌避剤として利用することができる。濾過した残渣は、発酵が進んでいるため堆肥として有効利用することができる。また、酢酸を含有しないため、中性となり、土壌改良材として有用となる。
【0051】
(竹液の製造方法2)
(1)抽出工程
竹液の原料となる孟宗竹の若竹、筍皮をそれぞれ約1cm以下となるように粉砕する。原料には親竹を加えてもよい。体積割合で、水10に対して、前記原料を3〜5の割合で混合し、80℃以上となるように加熱し、竹に含まれる有用成分を煮出して抽出する。少なくとも10分〜20分、好ましくは1時間ほど経過したら、加熱をやめ、抽出液が40℃以下となるように冷却するか静置する。
【0052】
(2)発酵工程
次に、有用微生物を混合して、7〜10日間静置する。この間、2度ほどかき混ぜを行う。その後、pHが3.5〜4程度になると、濾過する等して精製して竹液を得る。本実施の形態で得られる竹液には、酢酸は含有しないものの、竹酢液に含まれる有用成分の多くが抽出されていると考えられ、これらの成分が複合的に働いて植物の成長調整剤および忌避剤として利用することができる。
【0053】
(土壌改良方法)
土壌に、上記方法のうち、いずれか1つの方法で製造された竹堆肥を加えて混合し、一定期間放置する。次に、竹堆肥を混合した土壌に、上記方法のうち、いずれか1つの方法で製造された竹液を、水等で薄めた状態で定期的に混合する。本実施の形態によれば、竹が多孔質材であることにより、竹堆肥中に含まれる竹が有用微生物の住みかとなるとともに、通気性、透水性の高い土壌となる。これにより、有用微生物の代謝活動に必要な空気や水が土壌中に適度に分布することとなるので、土壌中の有用微生物の活性を常に高い状態に維持することが可能となる。よって、有用微生物の代謝活動を持続的に活発な状態とすることができるとともに、有用微生物の土壌中での増殖を促し、比較的短期間で土壌の改良を良好に進めることができる。また、竹液を定期的に混合することにより、成長促進物質を定期的に土壌に付与するだけでなく、代謝をくりかえした土壌中の有用微生物よりも、より活性が高い状態の有用微生物を定期的に注入することとなり、短期間で、土壌の改良を進めることができる。
【0054】
改良された土壌には、植物の成長を促進する成分が豊富に含まれているだけでなく、土壌中の有用微生物が周囲の有機物を次々に分解していくので、植物に継続的に養分を供給することができる。また、本実施の形態における竹液には、害虫等に対する忌避成分が含まれているので、作物に害虫がつきにくくなり農薬の使用を最小限に回避することができる。なお、本実施の形態における土壌改良方法の場合、竹液に含まれる成分は害虫を殺虫するわけではないので、農薬に比べれば植物の葉等に害虫や昆虫はつきやすい。しかしながら、植物の葉を食べた害虫や昆虫が死んでも、農薬の使用を最小限としていることで土壌中に活性の高い状態で豊富に存在している有用微生物が、その害虫や昆虫の死骸等の有機物を分解して土壌の栄養成分とするので、改良された土壌と植物と害虫との間で有機物の閉サイクルを作ることができ、生態系のバランスを保った作物の栽培を行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について詳細に述べたが、本実施の形態における竹堆肥の製造方法ならびに竹液の製造方法は上記製造方法に限定するものではなく、竹を原料とした竹堆肥や竹液であればどのようなものであってもよい。また、本実施の形態では、有用微生物含有溶液として竹もしくは竹の抽出液を有用微生物により発酵させた竹液を用いたが、これに限らず、有用微生物を任意の培養液で培養したものを有用微生物含有溶液として用いてもよい。
【実施例】
【0056】
農作物を栽培する場合、土壌991.7m2(1反)あたり、5〜10m3の竹堆肥を混合して攪拌する。その後、1ヶ月に2〜3回ほど、約50lの竹液を水に薄めた状態で混合する。稲作の場合は、薄めた竹液を灌漑用水に混合した状態で田に供給する。また、野菜や果物の場合は、水に薄めた竹液を土に散布する。この竹液の混合作業は、作物の実が成熟する直前まで繰り返す。
【0057】
本実施例の方法により改良された土壌で栽培された作物は、稲であれば、常法で栽培されたものより粒数が15〜20%程度多く、収量が2割程度増加した。また、茎径が2割程度太くなっており、強風が吹いても倒れにくく、台風等の被害に強いことがわかった。また、本実施例の方法により改良された土壌で栽培された稲の米は、食味が平均して85程度であった。また、本実施例の方法により改良された土壌で栽培されたピーマンは、一般的な常法で栽培されるものよりも、糖度が平均して約2度上がっていた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、化学肥料の使用を最小限に抑えて作物の生育を良好にする土壌改良方法ならびに改良土壌として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に、竹を堆肥原料とする竹堆肥と有用微生物含有溶液とを混合することを特徴とする土壌改良方法。
【請求項2】
土壌に、竹を堆肥原料とする竹堆肥を混合して一定期間放置する工程と、
前記竹堆肥を混合した土壌に、有用微生物含有溶液を定期的に混合する工程と、
を含むことを特徴とする土壌改良方法。
【請求項3】
前記有用微生物含有溶液は、竹もしくは竹の抽出液を有用微生物により発酵させて得られる竹液であることを特徴とする請求項1または2に記載の土壌改良方法。
【請求項4】
前記竹堆肥は、竹を主とした堆肥原料に有用微生物を混合して発酵させたものである請求項1から3のいずれかの項に記載の土壌改良方法。
【請求項5】
前記竹堆肥は、竹の粉砕物に農産物由来の非木質材料を原料とした廃菌床を混合して発酵させたものである請求項1から4のいずれかの項に記載の土壌改良方法。
【請求項6】
前記竹液は、竹を粉砕した粉砕物に有用微生物を添加し、発酵熱として60℃以上の状態で発酵させて得られた半発酵物に水を加え、さらに有用微生物を添加し、所定期間静置して有用成分を抽出することによって得られるものである請求項1から5のいずれかの項に記載の土壌改良方法。
【請求項7】
前記竹液は、竹を粉砕した粉砕物と水の混合物を80℃以上で加熱して得られた抽出液に有用微生物を添加して発酵させることによって得られるものである請求項1から6のいずれかの項に記載の土壌改良方法。
【請求項8】
土壌に、竹を堆肥原料とする竹堆肥と、有用微生物含有溶液とを混合した改良土壌。
【請求項9】
前記有用微生物含有溶液は、竹もしくは竹の抽出液を微生物により発酵させて得られる竹液である請求項8記載の改良土壌。

【公開番号】特開2008−81604(P2008−81604A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263446(P2006−263446)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(304065086)マイクロメディアジャパン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】