説明

土木基礎用の重量資材及びその供給方法

【課題】重晶石を含む重量コンクリートの活用を図り、かつ廃棄される建機用カウンターウエイトの廃棄の際の処理コストを低減すると同時に、排出される廃材をリサイクルし、土木基礎用として好適な重量資材等を提供する。
【解決手段】重晶石を含む重量コンクリートの破砕物からなる土木基礎用の重量資材。廃棄される建設機械用カウンターウエイトから回収した廃重量コンクリートの破砕物を用いることができ、破砕物の嵩比重を2.0以上に調整して重量盛土材等に利用することができる。前記土木基礎用資材を、水中構造物又は地中構造物の浮き上がりを防止するために用いることができる。土木基礎用の重量資材を供給するにあたり、廃棄される各種建設機械用カウンターウエイトから回収した重晶石を含む各種廃重量コンクリートの破砕物の混合物を用途目的に合致した安定した品質の資材とすべく、一元的な管理の下で、用途ごとに品質調整してから供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重晶石を含む重量コンクリートの破砕物からなる土木基礎用の重量資材及びその供給方法に関し、特に、廃棄される各種建設機械用カウンターウエイトに用いられていた重晶石を含む廃重量コンクリートの有効利用を図った土木基礎用の重量資材と、該重量資材を供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやクレーン車等の各種建設機械(以下、適宜「建機」という)には、建機の作動時にバランスを取ることで転倒を防止するため、カウンターウエイトが用いられる。このカウンターウエイトは、鋳物タイプと、製缶タイプの2種類が存在し、製缶タイプは、外側は鉄板で、内部には通常のコンクリートより単位容積重量の大きい重量コンクリートが充填される。
【0003】
建機の法定耐用年数は11年であり、日本国内で解体処理される建機の台数は年間6000台を超えるが、建機の廃棄に伴い、年間で8000トン程度のカウンターウエイトが廃棄処理されている。鋳物タイプのカウンターウエイトは、既存の鋳物破砕機で処理することができ、80%を超えるリサイクル率を達成している。一方、製缶タイプは、内部に充填された重量コンクリートを破砕処理しているが、重量骨材として鉄系材料を使用しており、重量コンクリートが高強度であることから、処理に多量のエネルギーを消費し、特別な処理システムも必要であるため、リサイクル率が20%を僅かに上回る程度に留まっている。
【0004】
ところで、軟弱地盤等においては、地中構造物が地下水や地震等での揚圧力を受けて浮き上がることを防止する必要があり、そのため、従来、インゴットや重量コンクリート、アンカー工法等による浮き上がり防止策が提案されてきた。例えば、特許文献1には、経済的に地中構造物の浮き上がりを防止し、地中構造物に作用する地下水の揚圧力を低減するため、地中構造物の下部に拡底部を形成し、拡底部に地中構造物に作用する揚水圧力から地中構造物の自重を減じた重量以上の上載土を載置する地中構造物の浮き上がり防止方法が記載されている。
【0005】
また、既設の下水管等の埋設管等を取替えたり、新設したりする際には、堀さくによって大量の残土を生じるが、この残土をそのまま堀さく部に埋め戻すと、多量の粘土の存在により、各地下施設の周域の土質の安定性が低下して地下施設を確実に保護できないため、改良土が使用される。この改良土として、例えば、特許文献2には、掘さくした残土中の粘土に、土砂と破砕再生コンクリートを混合撹拌して作製した改良土が提案されている。
【0006】
さらに、コンクリート廃材等の廃材は、上記上載土(浮き上がり防止材)、改良土(埋め戻し材)の他に、土木基礎用資材として、盛土材、路盤材、ケーソンの中込材、埋立地の地盤安定化材、土嚢の中詰め材等に使用されている。
【0007】
【特許文献1】特開平06−158671号公報
【特許文献2】特開2001−11844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、建機の製缶タイプのカウンターウエイトには重量コンクリートが用いられているが、重量コンクリートを構成する重量骨材としてこれまで多く用いられてきた磁鉄鉱や赤鉄鉱の鉄鉱石は、近年の旺盛な鉄鋼需要によって価格が高騰していることから、また、骨材自体の強度が高いことから、再生骨材製造設備によって骨材の分取、再生、重量骨材としての再利用が進んでいる。しかし、黄鉄鋼等の硫化鉄鉱を含むものは、硫酸等の有害物質の溶出が懸念される。それに対し、重晶石は重量骨材の一つとして知られてはいるものの、強度、品質の安定性、供給等の面でやや難があったため、十分に実用化されていなかった(図1は、重晶石の粒径によって強度が異なることを示す)。
【0009】
一方、上記土木基礎用資材として、重量コンクリートの破砕物を利用することも考えられるが、鉄系の重量コンクリートの破砕物は、鉄鉱石が分取、活用されるのみで、コンクリート部分は活用されていない。また、黄鉄鋼等の硫化鉄鉱を含むものは、硫酸等の有害物質の溶出の懸念がある。従って、重量コンクリートの破砕物からなる安価で使い易い土木基礎用の重量資材はこれまで存在しなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、重晶石を含む重量コンクリートの活用を図り、かつ廃棄される建機用カウンターウエイトの処理コストを低減すると同時に、建機用カウンターウエイトの重量コンクリートの廃材をリサイクルし、土木基礎用として好適な重量資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者らは、重晶石そのものの特性、及び重晶石を重量骨材として用いた重量コンクリートの特性、市場価格等に着目し、鋭意検討を行った結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、土木基礎用の重量資材であって、重晶石を含む重量コンクリートの破砕物からなることを特徴とする。
【0012】
重晶石を含むコンクリートを用いるのは次の理由による。重晶石は、鉄鉱石に比較して安価であるため、重量骨材として重晶石を用いることにより、重量コンクリートの製造コストを低減することができる。また、重晶石は強度が低いため(図1参照)、重晶石を用いた重量コンクリートは容易に破砕することができ、破砕に多量のエネルギーを必要とせず、重量コンクリートを破砕する上での処理コストを低減することができる。これらに加え、破砕物についても、骨材とセメントペースト分とに選別することなく、粒度調整を行う程度でそのまま土木基礎用の重量資材として利用することができるため、安価な土木基礎用の重量資材を提供することができ、さらに、重晶石は無害安全な鉱物であり水質汚染や土壌汚染の懸念がないため水中や地中に適用でき、品質の安定した土木基礎用の重量資材を提供することができる(図1と表2に示すように、重晶石を単味で用いると品質は安定し難いが、コンクリートの破砕物とすることにより、品質は安定する)。
【0013】
本発明でいう「土木基礎用の重量資材」とは、浮き上がり防止材、埋め戻し材、盛土材、中込材、埋立地の地盤安定化材、土嚢の中詰め材等の土木等の基礎に用いられる嵩比重が2.0以上の粉粒塊である。この粉粒塊は、上記の通り、重晶石を含む重量コンクリートの破砕物からなる。粉粒塊の粒度は特に限定されないが、好ましくは最大粒径40mm以下である。
【0014】
上記土木基礎用の重量資材において、前記破砕物を、廃棄される建機用カウンターウエイトから回収した廃重量コンクリートの破砕物とすることは好ましい。これにより、廃棄される建機用カウンターウエイトの処理コストを低減することができるとともに、排出される廃材のリサイクルが可能となり、土木基礎用の重量資材を安価に提供することができる。
【0015】
また、上記土木基礎用の重量資材において、前記破砕物を、嵩比重が2.0以上、好ましくは2.2以上に調整したものとすることができる。これにより、破砕物の品質がより安定し、重量盛土材等に利用することができる。比重の調整は、容積升等により行う。
【0016】
さらに、上記破砕物を、水中構造物又は地中構造物の浮き上がりを防止するために用いることができる。重晶石は、比重が4.0〜4.3程度と大きいため、重晶石を含む重量コンクリートの破砕物を水中構造物等の浮き上がり防止に用いると、普通の土砂を用いる場合よりも効果的に機能させることができる。水中構造物としては、沈埋函が挙げられる。また、地中構造物としては、パイプライン、マンホールが挙げられる。
【0017】
また、本発明は、上記重量コンクリートの破砕物からなる土木基礎用の重量資材の供給方法であって、廃棄される各種建機用カウンターウエイトから回収した重晶石を含む各種廃重量コンクリートの破砕物の混合物を用途目的に合致した安定した品質の資材とすべく、一元的な管理の下で、用途ごとに品質調整してから供給することを特徴とする。
【0018】
各種建機用カウンターウエイトから回収した重晶石を含む各種廃重量コンクリートの破砕物は、含まれる重晶石の種類、強度、比重、粒度等において種々の品質のものが含まれるとともに、土木基礎用の重量資材の用途も前記の通り種々存在するため、一元的な管理の下で、用途ごとに品質調整してから供給することで、用途目的に合致した安定した品質の資材を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、重晶石を含む重量コンクリートの活用を図ることができ、特に廃棄される建機用カウンターウエイトに該コンクリートが使われている場合には、その処理コストを低減すると同時に排出されるコンクリート廃材をリサイクルし、土木基礎用として好適な重量資材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上述のように、本発明は、土木基礎用の重量資材であって、重晶石を含む重量コンクリートの破砕物からなることを特徴とする。重晶石とは、硫酸バリウムが結晶した鉱物であり、英名をBariteという。主に、中国、米国で多く産出され、比重が4.0〜4.3程度であり、結晶構造であるため、図1のグラフに示すように脆い。しかし、重晶石を重量骨材として用いて重量コンクリートを製造(表1に配合を示す)すると、表2に示すように、普通コンクリート、及びDSM(溶融スラグ)及び酸化鉄粉を使用した従来の重量コンクリートよりも強度が少し低いものの、重量コンクリートとしては使用可能な強度を有する。
【0021】
破砕物とは、上記重量コンクリートをジョークラッシャなどの破砕機によって破砕して得られるものをいう。破砕物の粒度は特に限定されないが、単粒度(粒度分布が鋭く、特定の粒径の破砕物が偏在した状態)では、容積当たりの質量が低下するため好ましくなく、粒度分布が広い方が骨材同士の空隙に粒子の小さな骨材が入り込み、最密充填される結果、単位容積当たりの質量が増加し、重量化を目的とした土木資材としての性能が得られるため好ましい。具体的には、最大粒径が40mm以下の破砕物あって、粒径0.4〜8mmのものを10〜25質量%含むものが好ましい。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
本発明は、重晶石を用いた重量コンクリートの強度が従来の鉄鉱石を用いた重量コンクリートに比べ少し低いという特性を利用したものであって、重晶石を用いた重量コンクリートを製造し、特に高強度を要求されない工業製品(建機のカウンターウエイトなど)に用い、数年から数十年後の該工業製品の廃棄時等に、該工業製品を破砕して土木基礎用の重量資材として利用することを予定することで、比較的安価な重晶石を用いることによる前記工業製品の製造コスト及び処理コストの低減のみならず、安価な土木基礎用の重量資材を供給することも可能とし、前記工業製品のリサイクル率の向上にも貢献することができる。重晶石単味では、強度が低くかつ粒径によっても強度が異なるので、使い難いが、コンクリートの破砕物にすれば、これらの問題は解消できる。また、重晶石を含む重量コンクリートからの重晶石の回収は困難であるが、本発明では回収を図る必要はないので、実用性が高い。
【0025】
重晶石を用いた重量コンクリートの製造にあたっては、重晶石を重量骨材として用い、重晶石の他に、セメント、水、混和剤(材)を用い、配合割合は、水セメント比30〜80%程度(表1参照)として重量コンクリートを製造する。製造した重量コンクリートの特性例は、表2に示す通りである。
【0026】
この重量コンクリートを用いて建機用カウンターウエイトを製造するには、従来と同様に、鉄板等で形成した円筒状等の容器に重量コンクリート充填する。建機用カウンターウエイト中の重量コンクリートは、高強度を要求されないため、鉄鉱石等を重量骨材に用いた重量コンクリートのような高強度でなくともよい。重晶石を含む重量コンクリートを用いれば、建機用カウンターウエイトの廃棄処理時には、簡単に破砕することができて、破砕に要するエネルギーを大幅に低減することができるだけでなく、破砕後に重晶石とセメントペースト分とが一体になった破砕物を得ることができ、その破砕物を粒度調整等を行うだけで土木基礎用資材として利用することができるため好ましい。重晶石を単味で土木基礎用資材として用いると強度のばらつきなどの点で好ましくないが、重晶石がセメントペーストで被覆された破砕物を用いれば、比較的安定して十分な強度が得られるため好ましい。また、重晶石を含むコンクリートからの重晶石の回収は困難であるが、本発明ではその必要はないので実用性も高い。
【0027】
上記重晶石を用いた重量コンクリートの破砕物は、土木基礎用の種々の重量資材に利用することができ、例えば、上載土(浮き上がり防止材)、改良土、盛土材、路盤材、ケーソンの中込材、埋立地の地盤安定化材、土嚢の中詰め材等に利用することができる。尚、これらのうち、幾つかの利用例を後述する。
【0028】
尚、土木基礎用資材のうち、盛土材とは、宅地の開発や、道路整備等の際に、低い地盤や斜面に敷設して盛り上げる際に用いられる資材である。軟弱な地盤の上に単に盛土をするだけでは、将来地盤沈下を起こし易いため、転圧や地盤の改良工事等を併せて行うことが多い。本発明の破砕物からなる重量資材を用いると、地盤改良のための沈下時間が短縮され、早期に安定化するため、土地の利用促進という点においても好ましい。
【0029】
路盤材とは、道路の地盤等に用いられる資材であり、上層路盤材と、下層路盤材とに分類されている。これら各々の路盤材は、JISに規格が定められている。本発明の破砕物からなる重量資材を用いると、再生路盤材と同等の締固め性を有するため好ましい。
【0030】
ケーソンの中込材とは、防波堤等の水中構造物や、地中構造物を構築する際に用いられる鋼製の大型箱状のケーソンに充填される材料をいう。本発明の破砕物からなる重量資材を用いると、容易に安定化に必要な質量が得られるため好ましい。
【0031】
埋立地の地盤安定化材とは、埋立地のような軟弱地盤を安定化させるための材料であり、地中の比重の小さい構造物(下水管等)の浮き上がりなどを防止するためのものである。
【0032】
土嚢の中詰め材とは、布袋の中に詰めて土嚢を生産するために用いられる資材であり、通常は土砂が充填される。本発明の破砕物からなる重量資材を用いると、容易に高い質量が得られるので土嚢設置箇所の安定化が可能となり好ましい。
【0033】
本発明にかかる、重晶石を含む重量コンクリートの破砕物を、重量資材として上記に例示される各土木基礎に用いることができるが、特に、特許文献1に示されたような地中構造物の浮き上がり防止のための上載土に用いることがより好ましく、重量資材であるため、上載土として用いると、容積当たりの使用量が少なくて済む。特許文献1に記載された地中構造物以外にも、同様の目的で、埋立地に建設された建物、建物を撤去した跡地に建てた建物、地中埋設管、地中に設置される組立マンホールなどの地中構造物及び水中構造物の浮き上がり防止に好適に用いることができる。尚、本発明にかかる重量資材の充填、敷設、転圧、締め固めなどには特別な機械や設備は不要であり、一般的な土木工事の場合と同様に施工することができる。
【0034】
次に、廃棄される建機用カウンターウエイトから、本発明の土木基礎用の重量資材を製造する方法について示す。
【0035】
まず、廃棄されるパワーショベルなどの建設機械(建機)が置かれている処理場所で建機からカウンターウエイトをはずす。このカウンターウエイトは、鋼製の缶内に重晶石を含む重量コンクリートが充填されているものである。次に、ラバンディを用いて鋼製缶から鋼板をはがし、クラッシャなどの破砕機により重量コンクリートを破砕する。破砕の程度は特に限定されないが、通常、コンクリート用骨材や路盤材となる粒径程度まで破砕する。
【0036】
次に、本発明にかかる上記破砕による破砕物からなる重量資材の土木基礎への幾つかの利用例について図面を参照しながら説明する。
【0037】
(1)地中構造物の浮き上がり防止材
図2は、本発明にかかる重量資材を地中構造物の一例としてのマンホールの浮き上がり防止に使用した場合を示す概略図である。このマンホール1は、例えば、下水道等に用いられる組立式であって、底部に鍔部1aを備える。マンホール1は、地中に存在するが、地下水のレベルが上昇したり、周りの地盤3が軟弱であると浮き上がる虞がある。そこで、本発明にかかる重量資材2をマンホール1の鍔部1aの上方から地表付近まで積層することでマンホール1の浮き上がりを防止する。尚、図2では、マンホール1の周囲に積層されている重量資材2の一部のみを示している。重量資材2は、実際には、マンホール1の全周にわたって配置される。施工にあたっては、マンホール1を地盤3中に据え付けるために空間を形成し、マンホール1を空間内に配置した後、マンホール1の周りの空間に重量資材2を投入することによって重量資材2を積層する。本発明に係る破砕物の粒径は特に限定されない。重量資材2は単味で用いてもよいが、必要に応じて掘削土砂、各種充填材、セメントなどの結合材と混合して用いられる。
【0038】
(2)水中構造物の浮き上がり防止材
図3は、本発明にかかる重量資材を水中構造物としての沈埋函の浮き上がり防止に使用した場合を示す。この沈埋函11は、例えば、ボックス状のコンクリートブロックを連設してトンネル状にしたものであって、例えば、内部の空間内を自動車等の車両が走行する。この沈埋函11は、海、湖、運河等の中に存在し、地盤13の表面上に位置するが、上方に水14が存在するため、浮力によって浮き上がる虞がある。そこで、本発明にかかる重量資材12を沈埋函11の上方に載置することで沈埋函11の浮き上がりを防止する。施工にあたっては、沈埋函11を地盤13上に据え付けた後、沈埋函11の上に重量資材12を敷設する。敷設に際しては、載置する重量資材12が流水等により散逸しないよう袋に入れて繋げたり、結合材により固定化するなどの措置を講ずることが好ましい。また、海面上まで盛土して、沈下安定するまで放置してもよい。本発明に係る破砕物の粒径は特に限定されない。また、沈埋函11以外にも、桟橋や、海底油田、海底ガス田の掘削用構造物のバランサ(錘)等に本発明にかかる重量資材を同様にして用いることができる。
【0039】
(3)盛土材
図4は、本発明にかかる重量資材を盛土材に使用した場合を示す。旧河川や沼、湿地では、地盤が軟弱であるため、そのままの状態では、建築物を建てることができない。そこで、本発明にかかる重量資材22を軟弱地盤21の上方に載置することで、軟弱地盤21の水抜きを行って、不安定な軟弱状態を早期に解消し、安定した地盤としてから建築物を建てる。従来は沈下や壁の側圧が高くならないよう軽量盛土材が多く使われていたが、本発明ではあえて沈下させて早期地盤の安定化を図ることにより軟弱地盤の問題を解消する。すなわち、本資材を盛土材として適用すべき条件は、壁等への側圧を考慮する必要がない場所、例えば、元低湿地で周辺に傭壁等が存在しない場所等であり、軽量盛土の適用が望ましい土圧低減が必要な場所と正反対の性格の土地に好適に用いることができる。本発明に係る破砕物の粒径は、従来盛土材に用いられる一般コンクリートの破砕物と同程度である。
【0040】
(4)路盤材
図5は、本発明にかかる重量資材を路盤材に使用した場合を示す。例えば、推進工法でガス管31、暗渠32、下水管33を地盤36に敷設した場合には、埋め戻しを行わないため、埋め戻し時に実施可能な浮き上がり防止策を講ずることができない。そのため、地下水のレベル37が上昇したり、周りの地盤36が軟弱であると、ガス管31等が浮き上がる虞がある。そこで、本発明にかかる重量資材34をガス管31等の上方に重量路盤材として敷設し、ガス管31等の浮き上がりを防止する。用いる重量コンクリートの破砕物は、従来の路盤材についての各種規格に準じて用いられる。この重量資材34の上方には、従来の表層路盤材35を別途敷設する。
【0041】
(5)中込材
図6は、本発明にかかる重量資材をケーソンの中込材に使用した場合を示す。ケーソン41は、防波堤等の水中構造物や、地中構造物を構築する際に用いられる鋼製の大型箱状のものであって、通常は、内部が空洞となっていて、そのままの状態で海43などの中に立設されている。そこで、本発明にかかる重量資材44をケーソン41の空洞部に充填し、ケーソン41そのものを重量化したり、重心を下げることで安定化させることができる。また、ケーソン41を地盤42にアンカーなどで固定している場合には、ケーソン41の安定化により、アンカー工事の軽減にも繋がる。重量資材44として用いる本発明の重量コンクリート破砕物の粒径や強度は特に限定されないが、比重はばらつきが小さい方が好ましい。該破砕物は、充填率が略々同等となるよう、そのまま空洞部に充填して用いられる。尚、岸壁に使用されるケーソンの場合には、上面近くまで中込材が充填された後、コンクリート(普通コンクリート)で蓋がされる。一方、防波堤用のケーソンの場合には消波用のものがあり、この場合には、海面から数メートルまでしか中込材は充填されず、中込材の充填後、コンクリートの蓋がなされ、その上の部分は波消のための設備となる。
【0042】
次に、本発明にかかる土木基礎用の重量資材(以下、「重量資材」という)の供給方法について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図7は、各種廃棄建設機械の処理場で廃棄建機から重晶石を含む廃重量コンクリートを分離・破砕し、本発明にかかる重量資材を製造する場合の例を示す。
【0044】
廃棄建設機械処理場51は、廃棄された各種建機から重量資材を製造するため全国に点在する。廃棄建設機械処理場51は、受け入れた廃棄建機を保管する各種廃棄建設機械置場52と、受け入れた廃棄建機を分解し、廃カウンターウエイトなどを建機から分離及び分解する分解処理場53と、分離された廃カウンターウエイトなどを処理する機械部品等の処理場54と、事務所55と、試験室56等を備える。
【0045】
機械部品等の処理場54は、分解処理場53で分離された廃カウンターウエイトを鉄板とコンクリートに分解する分解処理場54aと、分離されたコンクリートを破砕するための破砕装置を備えた破砕処理場54bと、破砕されたコンクリートの粒度を調整するための篩装置、混合装置を備えた品質調整設備54cと、粒度調整され重量資材として出荷される破砕物を保管する破砕物置場54dと、コンクリートの破砕及び品質調整の結果生じ、重量資材として出荷されない粉部分等の廃棄物を保管する廃棄物置場54e等を備える。また、試験室56には、上記破砕物の粒度、比重等を測定するための各種試験装置が備えられる。
【0046】
廃棄建設機械処理場51に受け入れた廃棄建機は、一旦各種廃棄建設機械置場52に保管し、分解処理場53で分解し、廃カウンターウエイトなどを分離及び分解し、機械部品等の処理場54へ搬送する。
【0047】
次に、機械部品等の処理場54の分解処理場54aで、分離された廃カウンターウエイトを鉄板とコンクリートに分解し、破砕処理場54bで分離したコンクリートを破砕し、品質調整設備54cで破砕されたコンクリートの粒度を調整する。場合によっては、品質調整設備54cで破砕物同士を混合する。破砕物は、試験室56で試験され、出荷可能な破砕物は、破砕物置場54dに一旦保管し、出荷に備える。一方、コンクリートの破砕等で生じた廃棄物は、廃棄物置場54eに保管し、廃棄処理する。
【0048】
図8は、各種廃棄建設機械から得られる重晶石を含む廃重量コンクリートの破砕物や塊(以下、「破砕物」という)を一ヶ所(重量資材センター)に集め、一元的な管理の下で、用途ごとに混合・品質調整して本発明の重量資材を得る場合の例を示す。
【0049】
重量資材センター61は、日本全国に一箇所乃至数箇所配置され、大別して、各種廃棄建設機械の処理場51A〜51Dから種々の破砕物を受け入れる受入・ストックヤード61aと、受け入れた多品種の破砕物を保管するストックヤード61bと、受け入れた破砕物の品質調整施設61cと、品質調整後の破砕物を重量資材として出荷するための出荷ヤード61dと、破砕物の試験を行う試験室61eと、重量資材センター61全体を管理する事務室(制御室)61fからなる。
【0050】
受入・ストックヤード61aは、複数の各種廃棄建設機械の処理場51A〜51Dから種々の破砕物を受け入れるために設けられ、ホッパや、破砕物の輸送機等を備える。
【0051】
ストックヤード61bは、受入・ストックヤード61aに受け入れた多品種の破砕物を大量に保管することのできる規模を備え、受け入れた破砕物について品質等に応じて異なる場所に一時的に保管するために備えられる。
【0052】
品質調整施設61cは、ストックヤード61bに保管された破砕物の品質を調整して重量資材を得るための施設であり、混合機、破砕機、篩、比重選別機、分級機等を備える。
【0053】
試験室61eは、品質調整施設61cで品質調整がなされた重量資材の品質等を試験するために備えられ、強度、比重、粒度、水分等を測定するための各種試験装置が備えられる。
【0054】
出荷ヤード61dは、ユーザーからの注文に応じて、ストックヤード61bに保管した破砕物(重量資材)をそのまま出荷したり、上述のように品質調整施設61cにおいて品質調整がなされた重量資材を出荷するために備えられ、出荷に必要な装置や機器を有する出荷設備を備える。
【0055】
次に、上記重量資材センター61の運用例について、図8を参照しながら説明する。
【0056】
各種廃棄建設機械の処理場51A〜51Dで製造した破砕物は、重量資材としてそのままユーザーに提供できる場合には、各々の処理場51A〜51Dから直接ユーザーに出荷する。それ以外の破砕物は、重量資材センター61に輸送し、重量資材センター61の受入・ストックヤード61aで受け入れる。
【0057】
各種廃棄建設機械の処理場51A〜51Dで製造した破砕物は、各種建機用カウンターウエイトから回収した重晶石を含む各種廃重量コンクリートを破砕した物であるため、含まれる重晶石の種類、強度、比重、粒度等において種々の品質のものが含まれる。そのため、重量資材センター61の受入・ストックヤード61aに受け入れた各破砕物は、ストックヤード61bに、各破砕物の品質に応じて異なる場所に保管する。
【0058】
重量資材センター61が顧客から注文を受けると、ストックヤード61bに保管した破砕物をそのまま重量資材として使用することができる場合には、直接破砕物を出荷ヤード61dに搬送し、そのまま重量資材として使用することができない場合には、品質調整施設61cにおいて品質調整を行う。上述のように、重量資材の用途も種々存在するため、重量資材の用途に応じて品質を調整する必要がある。例えば、ケーソンの中込材に用いる場合には、嵩比重を重量2.0以上(水中単位容積質量2.3以上)、マンホールの浮き上がり防止材に用いる場合には、嵩比重を2.0以上とすることを要する。その他、盛土に用いる場合には、路盤材のJIS(A5032、A5023等)に規定された品質を有することが必要となる。
【0059】
品質調整施設61cにおいて品質調整がなされた破砕物は、試験室61eで比重、強度等の測定がなされ、所定の品質を有し重量資材として出荷可能と判断されると、出荷ヤード61dに搬送され、出荷ヤード61dから各種重量資材としてユーザーのもとへ出荷される。
【0060】
以上説明したように、各種建機用カウンターウエイトから回収した重晶石を含む各種廃重量コンクリートの破砕物は、種々の品質のものが含まれるため、各種廃棄建設機械の処理場51A〜51Dで製造した破砕物も種々の品質を有し、また、重量資材の用途も種々存在するが、重量資材センター61において、一元的な管理の下で、用途ごとに管理を行うことで、用途目的に合致した安定した品質の資材を常に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】重晶石等の割裂引張強度を示すグラフである。
【図2】本発明にかかる土木基礎用重量資材の地中構造物(マンホール)への浮き上がり防止材としての使用図である。
【図3】本発明にかかる土木基礎用重量資材の水中構造物(沈埋函)への浮き上がり防止材としての使用図である。
【図4】本発明にかかる土木基礎用重量資材の盛土材としての使用図である。
【図5】本発明にかかる土木基礎用重量資材の路盤材としての使用図である。
【図6】本発明にかかる土木基礎用重量資材のケーソン中込材としての使用図である。
【図7】本発明にかかる土木基礎用重量資材の供給方法を実施するための廃棄建設機械処理場の一例を示す概略図である。
【図8】本発明にかかる土木基礎用重量資材の供給方法を実施するための重量資材センターでの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 マンホール
1a 鍔部
2 重量資材
3 地盤
11 沈埋函
12 重量資材
13 地盤
14 水
21 軟弱地盤
22 重量資材
23 地盤
31 ガス管
32 暗渠
33 下水管
34 重量資材
35 表層路盤材
36 地盤
37 地下水レベル
41 ケーソン
42 地盤
43 海
44 重量資材
51(51A〜51D) 廃棄建設機械処理場
52 各種廃棄建設機械置場
53 分解処理場
54 機械部品等の処理場
54a 分解処理場
54b 破砕処理場
54c 品質調整設備
54d 破砕物置場
54e 廃棄物置場
55 事務所
56 試験室
61 重量資材センター
61a 受入・ストックヤード
61b ストックヤード
61c 品質調整施設
61d 出荷ヤード
61e 試験室
61f 事務室(制御室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重晶石を含む重量コンクリートの破砕物からなることを特徴とする土木基礎用の重量資材。
【請求項2】
前記破砕物が、廃棄される建設機械用カウンターウエイトから回収した廃重量コンクリートの破砕物であることを特徴とする請求項1に記載の土木基礎用の重量資材。
【請求項3】
前記破砕物は、嵩比重が2.0以上に調整されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の土木基礎用の重量資材。
【請求項4】
前記土木基礎用資材は、水中構造物又は地中構造物の浮き上がりを防止するために用いられる資材であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の土木基礎用の重量資材。
【請求項5】
請求項2に記載の土木基礎用の重量資材の供給方法であって、廃棄される各種建設機械用カウンターウエイトから回収した重晶石を含む各種廃重量コンクリートの破砕物の混合物を用途目的に合致した安定した品質の資材とすべく、一元的な管理の下で、用途ごとに品質調整してから供給することを特徴とする土木基礎用の重量資材の供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−43157(P2010−43157A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206840(P2008−206840)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】