説明

圧力式炊飯器

【課題】本発明の目的は、複数の調圧装置の一部を回動部材により調圧し、更に安全弁としての機能を持たせることにより、調圧装置の構造を簡略化し、力の伝達を滑らかにし、且つコストを低減する炊飯器を提供すること。
【解決手段】炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上方に位置する蓋体とを有する圧力式炊飯器であって、前記炊飯器本体は、内鍋と、前記内鍋を加熱する加熱手段とを有し、前記蓋体は、第1圧力調整装置及び第2圧力調整装置を有し、前記第1圧力調整装置は、第1通気孔を開閉する球状の第1弁体を有し、前記第2圧力調整装置は、第2通気孔を開閉する球状の第2弁体を有し、前記第1弁体は、水平方向に押圧されることにより前記第1通気孔を開閉し、前記第2弁体は、回動部材を介して垂直方向に押圧されることにより前記第2通気孔に対する閉鎖力を高め安全弁として機能する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に複数の調圧弁を有し、多段階に調圧可能な圧力式炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に炊飯器は、ワークコイル、保温ヒータ及び蓋ヒータ等の複数個の加熱手段を有し、これら加熱手段を駆使して自動的に炊飯及び保温を行いユーザーに最適なご飯等を提供する器具として広く知られている。
【0003】
ところで、炊飯の各工程時に内鍋内を加圧状態にして炊飯を行うと、米内への熱伝導と吸水速度が早まり、その結果十分な吸水が行われ、炊きムラのないより美味しいご飯を短時間で炊き上げることができるようになる。そのような要望に応える圧力式炊飯器も既に知られている。
【0004】
ところで、圧力式炊飯器に2つの調圧弁を設け、多段階に調圧を行うものとして後記特許文献1のものが知られている。この従来のものは、第1調圧弁を、第1ソレノイド及び第1弁である球状弁から構成して、球状弁を第1ソレノイドにより水平方向に移動して第1開口を開閉するようにし、第2調圧弁を、第2ソレノイド及び第2弁であるポペット状の弁から構成するとともに、水平方向に移動可能な押圧部材55、カム部材である傾斜部を有する台形突出部56、垂直方向に移動可能な垂直押圧部材57、スプリング受部93、軸部85及び弁パッキン90の6種類の部品を介在させ、弁パッキン90を第2ソレノイドにより垂直方向に移動して第2開口を、締切圧が低い状態と、高い状態に切替可能にしている。
【0005】
そして、第1開口が開で第2開口が低締切圧の非加圧炊飯と、第1開口が閉で第2開口が低締切圧の低加圧炊飯と、第1開口が閉で第2開口が高締切圧の高加圧炊飯の3炊飯機能を有し、必要な炊飯機能を選択して炊飯が行われる。
【0006】
ところで、上記従来のものは、第2調圧弁としてポペット状のものを用いているため、上記したように6種類の部品が必要になり、それだけ構造が複雑になるとともに、コストが嵩む。
【0007】
また、圧力式炊飯器には、安全弁が必要になるが、上記従来のものは、高加圧状態時、第1弁と第2弁とをともに調圧弁として用いるものである(段落0052参照)ため、別途、安全弁が必要になり、安全弁を設けるとそれだけ費用が嵩むことになる。
【0008】
更に、上記従来のものの第2ソレノイドからポペット状の第2弁への力の伝達は、カム部材である傾斜部を有する台形突出部56と、垂直方向に移動可能な垂直押圧部材57との係合により行われることになるため、どうしても垂直押圧部材57の先端は左右方向に揺動するようになり、力の伝達が滑らかに行われ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4350680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、複数の調圧装置の一部を回動部材により調圧し、更に安全弁としての機能を持たせることにより、調圧装置の構造を簡略化し、力の伝達を滑らかにし、且つコストを低減する炊飯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0012】
請求項1に係る発明では、炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上方に位置する蓋体とを有する圧力式炊飯器であって、前記炊飯器本体は、内鍋と、前記内鍋を加熱する加熱手段とを有し、前記蓋体は、第1圧力調整装置及び第2圧力調整装置を有し、前記第1圧力調整装置は、第1通気孔を開閉する球状の第1弁体を有し、前記第2圧力調整装置は、第2通気孔を開閉する球状の第2弁体を有し、前記第1弁体は、水平方向に押圧されることにより前記第1通気孔を開閉し、前記第2弁体は、回動部材を介して垂直方向に押圧されることにより前記第2通気孔に対する閉鎖力を高め安全弁として機能する構成。
【0013】
請求項2に係る発明では、請求項1の発明の構成に加え、前記第2弁体は、水平移動部材及び回動部材を介して垂直方向に押圧される構成。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、球状の第1弁体を、水平方向に押圧して第1通気孔を開閉し、球状の第2弁体を、水平移動部材並びに回動部材を介して垂直方向に押圧して第2通気孔に対する閉鎖力を高め安全弁として機能させることにより、調圧装置の構造を簡単にし、力の伝達を滑らかにすることができ、結果的に調圧機能を高めることができる。また、部品点数を低減することができ、生産コストを低減することができる。
【0015】
更に、第2弁体を安全弁として使用することができ、より部品点数並びに生産コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】圧力式炊飯器の蓋上部材を取り外した状態の全体断面図(図2のA−A線断面図)
【図2】蓋上部材を取り外した状態の蓋体を斜め上方から見た斜視図
【図3】第1圧力調整装置等の各部品の分解斜視図
【図4】第2圧力調整装置の各部品の分解斜視図
【図5】第2圧力調整装置の回動部材ユニットを斜め上方から見た斜視図
【図6】第2圧力調整装置の回動部材ユニットを斜め下方から見た斜視図
【図7】蓋下部材がない状態の第1及び第2圧力調整装置等の各部品の組立斜視図
【図8】第1圧力調整装置の非動作時(ソレノイドオフ時)及び動作時(ソレノイドオン時)の状態、並びに加圧炊飯中に蓋体を開放する際予め蒸気を排出する状態を示す拡大断面図
【図9】第2圧力調整装置の非動作時(ソレノイドオフ時)の状態を示す拡大断面図
【図10】第2圧力調整装置の動作時(ソレノイドオン時)の状態を示す拡大断面図
【実施例】
【0017】
図1は蓋上部材を取り外した状態の図2のA−A線縦断面図を示し、図2は蓋上部材を取り外した状態の蓋体を斜め上方から見た斜視図を示し、図3は第1圧力調整装置等の各部品の分解斜視図を示し、図4は第2圧力調整装置等の各部品の分解斜視図を示し、図5、6は第2圧力調整装置の一部の部品の組立図を示し、図7は蓋下部材を取り外した状態の第1及び第2圧力調整装置等の組立斜視図を示す。なお、圧力式炊飯器20のヒンジ軸58側を後方側とし、ヒンジ軸58の反対側のロックレバー50側を前方側とし、前後方向に直交する側を左右方向側とする。
【0018】
圧力式炊飯器20の略全体を図1に示す。圧力式炊飯器20は、炊飯器本体21及び蓋体40からなる。炊飯器本体21は、鋼板ケースまたは合成樹脂製の外ケース22を有し、この外ケース22の内部には、金属鍋或いは土鍋等の内鍋23が着脱自在にセットされ、この内鍋23の外側には内鍋23の形状に沿った保護枠である内ケース24が設けられる。この内ケース24は、例えばポリエチレンテレフタレート等の耐熱性の合成樹脂製のもので、その底部中央にはサーミスタからなる温度センサ25を臨ませるためのセンサ挿入孔が設けられる。
【0019】
内ケース24の上端は、外ケース22の上端と肩部材26を介して一体に結合される。内ケース24の底部外面及び底部から側部にかけての湾曲部外面には、内鍋23を誘導加熱する加熱手段である底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28が設けられる。これら底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28は、内ケース24の底部及び湾曲部の各位置に、内ケース24の底部中央を中心として同心円状に設けられる。
【0020】
これら底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28の外側には合成樹脂製のコイル支持台29が設けられており、このコイル支持台29をネジ等で内ケース24に取り付けることにより、底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28は図示する所定位置に位置決め固定される。
【0021】
前記外ケース22の下端部には、底部材31がビス等で取り付けられ、外ケース22と底部材31とで上方に開口を有する容器を形成する。外ケース22の後方の内部には、肩部材26から垂下する形態で、制御基板32が設けられる。
【0022】
この制御基板32には、底部ワークコイル27、側部ワークコイル28等の加熱手段を制御するためのマイコン及び電源回路等の電気部品が搭載される。それら電気部品のなかには発熱するものがあるため、制御基板32の近傍には発熱素子等を冷却するための冷却フィン33と、冷却フィン33の熱を放熱するための冷却ファン34が設けられる。なお、制御基板32の後方側にはコード巻取器35が設けられる。
【0023】
蓋体40は、図示しない外周面を形成する樹脂製の蓋上部材と、蓋下部材42を有する。蓋下部材42は、蓋上部材と同様に樹脂製の部材であり、その後方部には、ヒンジ軸58及びヒンジばね59が配置される平面視コ字状の切欠43が設けられる。
【0024】
また、蓋下部材42の中央且つ後方よりには円形の蒸気排出筒44が設けられており、内鍋23内の蒸気は、この蒸気排出筒44より蓋上部材に設けられる蒸気通路を経て蓋上部材の上面に設けられる蒸気口より外部に放出される。
【0025】
蓋下部材42上には、図2に示すように蓋体40の強度を高めるための金属製の補強部材46が設けられる。この補強部材46は、前方側に位置する第1補強部材46aと、後方側に位置する第2補強部材46bからなり、前後方向に延伸する形態で蓋下部材42にビス止めされる。
【0026】
なお、第1補強部材46aと第2補強部材46bとの分割位置は後方側であり、補強部材46が一体のものに比べて全体の耐久性を下げてあり、圧力調整装置等が故障する等の異常時に分割位置近傍で変形させ、変形箇所から蒸気を逃がすことにより蓋体40が急激に開放したり、或いは蒸気が前方側から急激に噴出する等の弊害を防止する。
【0027】
第1補強部材46aの前方端には、ロックレバー50のレバー軸57を軸支するための軸受孔47が設けられ、第2補強部材46bの後方端には、ヒンジ軸58を軸支するための軸受孔48が設けられる。
【0028】
蓋下部材42の前方側には、蓋開閉部材である金属製のロックレバー50が設けられる。図3に示すようにロックレバー50は、水平部51及び垂直部52からなる断面L字状の金属製の部材である。
【0029】
水平部51は、第1水平部51a、第2水平部51b及び第3水平部51cを有し、第1水平部51aには、後記第1摺動部材70が当接する上方に略直角に折れ曲がった折曲部53が形成され、第2水平部51bには、後記押圧部材55(図1、2参照)を挿入する円形の挿通口55aが形成され、第3水平部51cには、ロックレバー50を回動するためのレバーばね57a(図8参照)の一端を係止する係止口56が形成されている。
【0030】
押圧部材55は、水平円板及び棒状部からなる断面T字状の部材であり、コイルばね55b(図1参照)を棒状部に挿入した状態で第2水平部51bの円形の挿通口55aに挿入し、その下端部にナットを螺合して揺動自在に固定しており、斜め上方から力が加わったとしてもロックレバー50を適正に回動する。
【0031】
前記垂直部52は、中央が下方から略トンネル状に切り掛かれており、残りの左右の垂直部分の下端には、後方側に直角に折り曲げられた平面視略矩形状の係止部52aが形成される。この係止部52aは肩部材26に形成される係止片26a(図8参照)に係止されることにより、蓋体40を閉蓋する。
【0032】
ロックレバー50には、コイル状のレバーばね57aが挿着される棒状のレバー軸57が嵌合されており、そのレバー軸57の両端は、第1補強部材46aの左右の軸受孔47、47に挿入され軸支される。レバー軸57を軸受孔47、47に挿入後、レバーばね57aの一端を第3水平部51cの係止口56に係止し、他端を蓋下部材42側に係止する。その結果、ロックレバー50は反時計方向のばね力を付与された状態で図2、3の状態で取付けられる。
【0033】
そして、蓋上部材の上面に設けられる図示しない押圧ボタンを上方から押したり、或いはスライドレバー等によって押されるとその力は押圧部材55に伝わり、押圧部材55が下動されるとロックレバー50は時計方向に回動され、その結果蓋体40はヒンジばね59のばね力により開蓋する。
【0034】
蓋下部材42の後方側の切欠43には、ヒンジ部であるヒンジ軸58及びヒンジばね59が設けられる。このヒンジ軸58の両端は、第2補強部材46bの後方端の軸受孔48、48に挿入され軸支される。また、ヒンジ軸58にはコイル状のヒンジばね59が挿着されるとともに、ヒンジばね59の一端部59aは第1補強部材46aに係止され(図2参照)、他端部59bは肩部材26に係止されており、蓋体40に常時開方向のばね力を付与している。
【0035】
蓋下部材42の中央部には、下方が開口し、上方に突き出た平面視矩形状の弁カバー60が設けられる。この弁カバー60は、第1弁カバー60aと第2弁カバー60bからなり、第2弁カバー60bは、高さは低いが平面視の面積は大きい矩形状の部分で、その下方に後記第2弁収納室95等を収納し、第1弁カバー60aは、第2弁カバー60bの略1/4の部分を更に上方に突き出した平面視矩形状の部分で、その下方に後記第1弁収納室94を収納する。
【0036】
そして、この第1弁カバー60aの前方側には、第1圧力調整装置の一部品である後記第1ソレノイド68が水平且つ前後方向に配置され、第2弁カバー60bの前方側には、第2圧力調整装置の一部品である後記第2ソレノイド75が水平且つ前後方向に配置される。その結果、第1ソレノイド68と第2ソレノイド75は近接且つ平行に配置される。なお、第1ソレノイド68及び第2ソレノイド75は、2ポジションのものが用いられるが、それ以外のものであってもよい。
【0037】
図2及び図3で示すように蓋下部材42の弁カバー60より前方側の上面には、平面視略矩形状で樹脂製の支持部材63が配設される。この支持部材63は、その上面に圧力調整装置等を載置する底浅の皿状の部材で、その側壁上端には、左右方向に張り出し、それぞれ1個のビス穴63a1を有するフランジ63aが設けられるとともに、その前方端には、ロックレバー50のレバー軸57が挿通される軸貫通口63b(図3参照)が設けられる。そして、支持部材63は、その軸貫通口63bにレバー軸57を挿通し、ビスをビス穴63a1から蓋下部材42に螺合することにより第1補強部材46aの上面に取付けられる。
【0038】
支持部材63の上面には、後記第1ソレノイド68を収納するための平面視矩形状の第1ソレノイド収納室64、後記第1摺動部材70の一部を収納するための平面視細長矩形状の第1摺動部材収納室65、後記第2ソレノイド75を収納するための平面視矩形状の第2ソレノイド収納室66、及び後記第2摺動部材77を収納するための平面視L字状の第2摺動部材収納室67が設けられる。
【0039】
前記支持部材63上の第1ソレノイド収納室64には、第1ソレノイド68が水平且つ前後方向に収納される。第1ソレノイド68の側壁面の上端及び下端には、それぞれ左右方向に張り出した平面視矩形状で、その中央部にビス穴68bを有する取付フランジ68aが設けられており、このビス穴68bからビスを螺合することにより第1ソレノイド68を蓋下部材42に固定する。
【0040】
また、第1ソレノイド68には、第1ソレノイド68のオン、オフにより進退する第1プランジャ69が設けられる。
【0041】
この第1プランジャ69の先端は、高さの高い第1弁カバー60aに対向する形態で前後方向に設けられるとともに、その先端には、正面視C字状のばね支持具69aが取り付けられ、更に第1プランジャ69の外周に挿入される形態で第1ソレノイド68とばね支持具69aとの間にコイルばね69bが挿設されており、第1プランジャ69は、第1ソレノイド68のオフ時には第1ソレノイド68から後方側に引き出されている。
【0042】
図3に示すように摺動部である第1摺動部材70は、前後方向長伸部71、左右方向短伸部73及び前後方向短伸部72を有する平面視略釣り針状で一体形成される樹脂製部材であり、平面視矩形状の第1ソレノイド収納室64に沿って前後方向に移動可能に配設される。
【0043】
前後方向長伸部71は、前後方向に長く延伸する平面視細長矩形状の部分で、その前方端の上面には、上方に突き出るとともに、前方から後方に向かって上方に傾斜する正面視矩形状の傾斜突部71aが一体に設けられるとともに、その下面には、前方側垂下部71b及び後方側垂下部71cが間を空けて平行に設けられている。
【0044】
前後方向長伸部71の前方側垂下部71bより後方側は、支持部材63上の第1摺動部材収納室65に収納されるとともに、後方側垂下部71cの後方壁面と、第1摺動部材収納室65の内端壁面65a(図3参照)との間には、コイルばね74が介在され、第1摺動部材70を常時前方側に付勢している。
【0045】
前後方向短伸部72は、前後方向に短く延伸する平面視矩形状の部分で、第1ソレノイド収納室64の外壁部に沿う形態で前後方向に移動する。
【0046】
左右方向短伸部73は、前後方向長伸部71と前後方向短伸部72を連結する部分で、その略中央部には、前方と上方が開口した半円弧状の半円弧空間73a(図3参照)が一体に形成され、その後方側の側壁面には、後方側に突き出た棒状の弁押圧突起73bが一体に形成される。
【0047】
そして、半円弧空間73aには、第1プランジャ69のばね支持具69aが収納配置され、第1ソレノイド68のオフ時には、ばね支持具69aはコイルばね69bのばね力により第1摺動部材70全体を後方側に押している。
【0048】
なお、第1ソレノイド68のオン時には、第1プランジャ69は、ばね支持具69aとともに前方側に引き込まれるが、ばね支持具69aと半円弧空間73aとは連結されていないため、第1摺動部材70は前方側に移動しない。しかしこの場合、第1摺動部材70と支持部材63との間には前記コイルばね74が介在しているため、第1摺動部材70は、コイルばね74のばね力により第1プランジャ69の前方側への移動と同時に前方側に移動する。
【0049】
前記弁押圧突起73bは、後記の第1球状弁99に対向するように配置されており、第1ソレノイド68のオフ時にはその第1球状弁99を押して、後記第1通気孔97を開放し、第1ソレノイド68のオン時にはその第1球状弁99から離れる。その結果、第1球状弁99は自重で第1通気孔97の真上に移動して、その第1通気孔97を閉鎖する。
【0050】
前記支持部材63上の第2ソレノイド収納室66には、第2ソレノイド75が水平且つ前後方向に収納される。第2ソレノイド75の側壁面の上端及び下端には、第1ソレノイド68と同様の形態でそれぞれ左右方向に張り出した平面視矩形状で、その中央部にビス穴75bを有する取付フランジ75aが設けられており(図4に図2の右方側から見たものを示す。)、このビス穴75bからビスを螺合することにより第2ソレノイド75を蓋下部材42に固定する。
【0051】
また、第2ソレノイド75には、第2ソレノイド75のオン、オフにより進退する水平移動部材である第2プランジャ76が設けられる。
【0052】
この第2プランジャ76の先端は、高さの低い第2弁カバー60bに対向する形態で前後方向に設けられるとともに、その先端には、正面視C字状のばね支持具76aが取り付けられ、更に第2プランジャ76の外周に挿入される形態で第2ソレノイド75とばね支持具76aとの間にコイルばね76bが挿設されており、第2プランジャ76は、第2ソレノイド75のオフ時には第2ソレノイド75から後方側に引き出されている。
【0053】
図4に示すように摺動部である第2摺動部材77は、左右方向延伸部78及び前後方向延伸部79を有する平面視L字状で一体形成される樹脂製部材であり、前記平面視L字状の第2摺動部材収納室67に前後方向に移動可能に配設される。
【0054】
前後方向延伸部79は、前後方向に延伸する平面視矩形状の部分で、第2ソレノイド収納室66の外壁部に沿う形態で前後方向に移動する。
【0055】
左右方向延伸部78は、前後方向延伸部79に直交して連結される部分で、その略中央部には、前方の一部と上方が開口した半円弧状の半円弧溝空間78a(図4参照)が一体に形成され、その後方壁面78bの下端には、後方側に突き出た筒状突起80が左右方向に離れて2個形成される。
【0056】
そして、半円弧溝空間78aには、第2プランジャ76のばね支持具76aが収納配置され、第2ソレノイド75のオフ時には、ばね支持具76aはコイルばね76bのばね力により第2摺動部材77全体を後方側に押している。
【0057】
第2ソレノイド75のオン時には、第2プランジャ76は、ばね支持具76aとともに前方側に引き込まれるが、ばね支持具76aと半円弧溝空間78aとは係合されているため、第2摺動部材77も同時に前方側に移動される。
【0058】
前記2個の筒状突起80のそれぞれの内側上端にはばね溝80aが設けられ、そのばね溝80aには、後記回動部材87に係合されるステンレス製で棒状のばね棒81が嵌合される。
【0059】
前記第2摺動部材77の後方側には、後方壁面78bに対向する形態で回動部材ユニット85が設けられる。回動部材ユニット85は、収納ケーシング86、回動部材87、連動部材88及びばね89を有し、図5に上方からの斜視図を示し、図6に下方からの斜視図を示す(なお、図4と図5とは向きが左右逆である。)。
【0060】
前記収納ケーシング86は、平面視前方後円状の樹脂部材であり、その前方側の方形状の部分は、上方が開口し、その両側壁には対向する形態で回動部材87の回動軸87cが軸支される軸受溝86aが形成される。
【0061】
また、その後方側の円形状の部分は、上下方向に開放されており、その上方には、左右方向に指し渡される断面門形状の屋根部86bが形成されるとともに、その両側面には対向する形態で連動部材88が上下方向に摺動するための摺動溝86cが形成される。
【0062】
更に収納ケーシング86の側壁面には、対向する形態でビス穴86d1を有する取付フランジ86dが2個設けられており、このビス穴86d1からビスを螺合することにより収納ケーシング86を蓋下部材42に固定する。
【0063】
前記回動部材87は、前方側平板部87a及び後方側平板部87bからなる平面視前後方向に細長い矩形状の樹脂部材であり、後方側平板部87bは前方側平板部87aより若干長くされるとともに、両平板部を境に略直角に折り曲げられた断面く形状を呈し、前方側平板部87aは略下方に垂下する形態で、後方側平板部87bは略水平になる形態で取付けられる。この回動部材87はシーソー構造で水平方向の力を垂直方向に変換する機能を有するものである。
【0064】
後方側平板部87bの先端部87b1は、一段下がった形態に形成されており、前記連動部材88が挿入される。また、後方側平板部87bの根本近傍には、左右方向に張り出す形態で回動軸87cが一体に設けられている。そして、後方側平板部87bの先端部87b1は、収納ケーシング86の屋根部86bの下方に挿入される連動部材88に挿着されるとともに、回動軸87cは、収納ケーシング86の摺動溝86cに嵌合され軸支される。
【0065】
前記連動部材88は、枠体88a及び弁押圧突起88bを有する樹脂製の部材であり、枠体88aは、中央にロ形状の貫通口88a1を有する正面視ロ形状の部分で、その貫通口88a1内には回動部材87の先端部87b1が挿入される。枠体88aの幅は収納ケーシング86の摺動溝86cより若干短くされており、この摺動溝86c内にその全体が嵌入される。
【0066】
また、前記弁押圧突起88bは、枠体88aの下端部から垂下する形態で一体に設けられており、枠体88aが収納ケーシング86の摺動溝86c内に挿入されると、図6に示すように収納ケーシング86から下方に突き出る形態になる。
【0067】
前記ばね89は、図4に示すように中央に円形部89a、一端にコ状部89b及び他端にL状部89cを有するコイルばねで、図5に示すように円形部89aを回動部材87の回動軸87cに挿入し、コ状部89bを回動部材87の後方側平板部87bの上面に係止し、L状部89cを収納ケーシング86の前方壁85aに係止する。その結果、ばね89は巻き戻し方向の変位を加えられて装着され、回動部材87は収納ケーシング86に対し時計方向の回転を付与される。即ち、前記弁押圧突起88bは、最も下方位置に常時押圧される。この場合、回動部材87の下動は収納ケーシング86の後方側円形状の上端部で規制され、回動部材87の上動は収納ケーシング86の屋根部86bの下端部で規制される。
【0068】
回動部材ユニット85の取付けについて説明する。まず、収納ケーシング86を逆向きに置き、収納ケーシング86の摺動溝86c内に、連動部材88をその弁押圧突起88bが上になるようにして挿入する。
【0069】
次いで、回動部材ユニット85を正立させ、連動部材88を指で上動させつつ回動部材87の先端部87b1を屋根部86bの下方に押し込み、先端部87b1を連動部材88の貫通口88a1内に挿入する。その場合、回動部材87の回動軸87cにばね89の円形部89aを挿入し、コ状部89bを後方側平板部87bの上面に係止しておく。
【0070】
次いで、回動部材87の回動軸87cを収納ケーシング86の摺動溝86c(図6参照)内に嵌合する。その結果、図5及び図6に示す回動部材ユニット85が完成する。組み立てられた回動部材ユニット85は、収納ケーシング86の側壁面に形成される2個の取付フランジ86dのビス穴86d1からビスを螺合することにより図2に示すように第2弁カバー60b上に固定される。
【0071】
回動部材ユニット85が第2弁カバー60b上に固定されると、回動部材87の後方側平板部87bは、第2摺動部材77の後方壁面78bとばね棒81の間に挿入されるとともに、図9に示すように第2ソレノイド75のオフ時には第2プランジャ76は後方側に突き出て第2摺動部材77の後方壁面78bを介して回動部材87の後方側平板部87bを後方側に押し、回動部材87を反時計方向に回動する。その結果、弁押圧突起88bは後記第2球状弁102から上方に引き離される。なお、前記ばね棒81は、一種の弾性部材であり回動部材87に第2ソレノイド75側、或いは弁押圧突起88b側から急激な力が作用するとその力を吸収し、和らげることができる。また、ばね89は、コイルばね76bより弱く設定される。
【0072】
そして、図10に示すように第2ソレノイド75のオン時には第2プランジャ76は前方側に引き込まれて第2摺動部材77を前方側に移動する。すると、回動部材87の後方側平板部87bは、ばね棒81により前方側に押されるとともに、回動部材87の全体はばね89により時計方向のばね力を付与されているため、時計方向に回動し、弁押圧突起88bは後記第2球状弁102を上方から押圧し、この第2球状弁102が開放する力をより高める。
【0073】
蓋下部材42の中央部に設けられる高さの高い第1弁カバー60aの前方側側面には図示しない円形の開口が設けられるとともに、その開口には、周囲に嵌合溝62aを有し、その内部に円形状のシール膜62bを有する全体として円形状のパッキン62(図3参照)が嵌合されており、第1弁カバー60aの内外をシールしている。このパッキン62の円形状のシール膜62bの中心には、第1摺動部材70の弁押圧突起73bが嵌合しており、この円形状のシール膜62bは弁押圧突起73bとともに前後方向に移動する。
【0074】
蓋下部材42の中央部に設けられる高さの低い第2弁カバー60bの上面には円形の開口60b1(図9参照)が設けられるとともに、その開口60b1には、周囲に嵌合溝90aを有し、その内部に円形状のシール膜90bを有する全体として円形状のパッキン90(図4参照)が嵌合されており、第2弁カバー60bの内外をシールしている。このパッキン90の円形状のシール膜90bの中心には、枠体88aの下端に設けられる弁押圧突起88bが嵌合しており、この円形状のシール膜90bは弁押圧突起88bとともに上下方向に移動する。
【0075】
前記蓋体40の下方には、内鍋23に対向して内蓋91が着脱自在に取付けられる。そして、この内蓋91の上面には、弁ユニット92が前記弁カバー60の下方に位置する形態で取付けられる。そして、内蓋91を蓋下部材42の下面に取り付けると、弁ユニット92の上面と第1弁カバー60aの下面との間に蒸気室93(図1参照)が形成される。
【0076】
弁ユニット92には、第1弁収納室94、第2弁収納室95及び必要に応じて安全弁96が設けられる。
【0077】
第1弁収納室94は、前後方向に開口94aを有する断面逆U字状の部分で、その内部には、中央に第1通気孔97を有するすり鉢状の第1弁載置部98(図1、3参照)が設けられるとともに、その上方には弁体である第1球状弁99が配設される。
【0078】
前記第1通気孔97は、内鍋23内に連通しており、第1球状弁99が第1通気孔97を開放すると内鍋23内の蒸気は、蒸気室93に流入し、その後、蒸気排出筒44及び蓋上部材に設けられる蒸気通路を経て蓋上部材の上面に設けられる蒸気口より外部に放出される。
【0079】
そして、内蓋91が蓋下部材42の下面に挿着されると、第1弁収納室94は蓋下部材42の下面から上方に突き出す形態で形成される第1弁カバー60a内に進入するとともに、第1球状弁99は弁押圧突起73bに対向して位置する。
【0080】
前記第2弁収納室95は、上方向に開口95aを有する断面逆U字状の部分で、その内部には、中央に第2通気孔100を有するすり鉢状の第2弁載置部101(図3参照)が設けられるとともに、その上方には弁体である第2球状弁102が配設される。なお、第2弁収納室95、第2弁載置部101及び第2球状弁102は、第1弁収納室94、第1弁載置部98及び第1球状弁99より小さく軽いものが用いられる。
【0081】
前記第2通気孔100も内鍋23内に連通しており、第2球状弁102が第2通気孔100を開放すると内鍋23内の蒸気は、同様に蒸気室93に流入し、その後、蒸気排出筒44及び蓋上部材に設けられる蒸気通路を経て蓋上部材の上面に設けられる蒸気口より外部に放出される。
【0082】
そして、内蓋91が蓋下部材42の下面に挿着されると、第2弁収納室95は蓋下部材42の下面から上方に突き出す形態で形成される第2弁カバー60b内に進入するとともに、第2球状弁102は弁押圧突起88bに対向して位置する。
【0083】
第1圧力調整装置は、前記第1ソレノイド68、第1プランジャ69、第1摺動部材70及び第1球状弁99を有し、加圧炊飯が選択されない第1ソレノイド68の非作動(オフ)時には、第1プランジャ69は外方に押し出され、第1球状弁99を押して第1通気孔97を開放する(後記の非加圧炊飯)。
【0084】
そして、加圧炊飯が選択される第1ソレノイド68の作動(オン)時には、第1プランジャ69は引き込まれ、弁押圧突起73bは第1球状弁99から離れるため、第1球状弁99は自重で第1通気孔97の直上に移動して第1通気孔97を閉鎖する。
【0085】
その結果、第1球状弁99の自重に相当する圧力での炊飯が行われ、内鍋23内がそれ以上の圧力になると余分な蒸気は第1球状弁99を押し上げて第1通気孔97より排出される(後記の高加圧炊飯)。なお、重い重量の第1球状弁99の開放圧は、例えば、1.25atmに設定されており、蒸気圧がその圧力になると持ち上げられ、第1通気孔97を開放する。
【0086】
第2圧力調整装置は、前記第2ソレノイド75、第2プランジャ76、第2摺動部材77、回動部材87及び第2球状弁102を有し、加圧炊飯が選択されない第2ソレノイド75の非作動(オフ)時には、第2プランジャ76は外方に押し出され、回動部材87は反時計方向に回動され、弁押圧突起88bは第2球状弁102の上方に位置する。
【0087】
その結果、第2通気孔100は第2球状弁102の自重で閉鎖される(後記の非加圧炊飯或いは低加圧炊飯)。なお、軽い重量の第2球状弁102の開放圧は、例えば、1.05atmに設定されており、蒸気圧がその圧力になると持ち上げられ、第2通気孔100を開放する。
【0088】
そして、加圧炊飯が選択されると第2ソレノイド75は作動(オン)され、第2プランジャ76は引き込まれ、回動部材87は時計方向に回動され、弁押圧突起88bは第2球状弁102を上方から押圧する。
【0089】
その結果、第2通気孔100は第2球状弁102の自重及び上方からの押圧力で閉鎖される。なお、押圧される第2球状弁102の開放圧は、例えば、1.25atmより大きく設定されており、蒸気圧がその圧力になると持ち上げられ、第1通気孔97を開放する。
【0090】
この場合、押圧状態の第2球状弁102が開放する時は、例えば、第1球状弁99が閉鎖されたままの異常であり、安全弁として機能するように設定されている。
【0091】
前記安全弁96は押圧された第2球状弁102の開放圧より高い圧力、例えば、1.30atm以上の圧力で開放するようにされるもので、第1球状弁99及び第2球状弁102が開かない等の更なる異常時に開放される。
【0092】
蓋体40の前方側には、図示しない液晶パネル及び各種スイッチボタンが設けられており、そのメニューには、通常炊飯(非加圧炊飯)、低加圧炊飯及び高加圧炊飯が設定されており、非加圧炊飯を選択すると、第1ソレノイド68がオフ(第1通気孔97は開)で第2ソレノイド75がオフ(第2通気孔100は第2球状弁102の自重で閉)での炊飯が行われ、低加圧炊飯を選択すると、第1ソレノイド68がオン(第1通気孔97は閉)で第2ソレノイド75がオフ(第2通気孔100は第2球状弁102の自重で閉)での炊飯が行われ、高加圧炊飯を選択すると、第1ソレノイド68がオン(第1通気孔97は閉)で第2ソレノイド75がオン(第2通気孔100は第2球状弁102の自重及び上方からの押圧力で閉)での炊飯が行われる。
【0093】
高加圧炊飯時に、内鍋23内の圧力が1.25atmになると第1球状弁99は第1通気孔97を開放して内鍋23内の圧力が1.25atm以上にならないようにしている。仮に、その圧力で、第1球状弁99が第1通気孔97を開放しなくなり(即ち、異常時)、内鍋23内の圧力が1.30atm以上になると、押圧状態にある第2球状弁102が押し上げられ第2通気孔100が開放されることになる。
【0094】
その炊飯は、制御基板32等に設けられる制御回路により底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28等への通電量を制御することにより行われる。
【0095】
非加圧炊飯時について説明する。非加圧炊飯を選択すると、第1ソレノイド68及び第2ソレノイド75はオフされる。第1ソレノイド68がオフされると、第1プランジャ69は第1摺動部材70と共に後方側に押され、第1摺動部材70の弁押圧突起73bは、第1球状弁99水平方向にを押して、第1通気孔97を開放する。
【0096】
そして、第2ソレノイド75がオフされると、第2プランジャ76は回動部材87を押して反時計方向に回動し、連動部材88の弁押圧突起88bを第2球状弁102から上方に引き離し、第2通気孔100を閉鎖する力を第2球状弁102の自重のみにする。その結果、内鍋23内は第1通気孔97を介して常時大気に連通される。
【0097】
低加圧炊飯時について説明する。低加圧炊飯を選択すると、第1ソレノイド68はオンで第2ソレノイド75はオフされる。第1ソレノイド68がオンされると、第1プランジャ69は第1摺動部材70と共に前方側に引き込まれ、第1摺動部材70の弁押圧突起73bは、第1球状弁99から離れ、第1通気孔97は第1球状弁99により閉鎖される。
【0098】
そして、第2ソレノイド75がオフされると、第2プランジャ76は回動部材87を押して反時計方向に回動し、連動部材88の弁押圧突起88bを第2球状弁102から上方に引き離し、第2通気孔100を閉鎖する力を第2球状弁102の自重のみにする。
【0099】
その結果、内鍋23内の圧力が1.05atm以上になると第2球状弁102は持ち上げられ、第2通気孔100を開放して余分な蒸気を排出し、内鍋23内を1.05atm近傍の圧力に調圧する。
【0100】
高加圧炊飯時について説明する。高加圧炊飯を選択すると、第1ソレノイド68及び第2ソレノイド75はオンされる。第1ソレノイド68がオンされると、第1プランジャ69は第1摺動部材70と共に前方側に引き込まれ、第1摺動部材70の弁押圧突起73bは、第1球状弁99から離れ、第1通気孔97は第1球状弁99により閉鎖される。
【0101】
そして、第2ソレノイド75がオンされると、第2プランジャ76は第2摺動部材77と共に前方側に引き込まれ、回動部材87は、ばね棒81及びばね89の作用により時計方向に回動され、弁押圧突起88bが第2球状弁102を上方から押圧する。
【0102】
その結果、内鍋23内の圧力が1.25atm以上になると第1球状弁99は持ち上げられ、第1通気孔97を開放して余分な蒸気を排出し、内鍋23内を1.25atm近傍の圧力に調圧する。このように第1圧力調整装置及び第2圧力調整装置をそれぞれ別々で動作形態を異ならせることにより多段階の圧力調整が行われる。
【0103】
なお、第1球状弁99が第1通気孔97を開放しない状態が生じ、内鍋23内の圧力が1.30atm以上になる異常時には、押圧状態にある第2球状弁102が押し上げられ第2通気孔100が開放される。この場合、第2ソレノイド75はオン状態で、第2プランジャ76及び第2摺動部材77は共に前方側に引き込まれているが、回動部材87はばね棒81を介して係合されており、第2球状弁102の下方に1.30atm以上の圧力が掛かると、回動部材87はばね棒81を後方側に押し伸ばすことにより反時計方向に回動することができ、その結果、第2球状弁102は弁押圧突起88bと共に上方に押し上げられ第2通気孔100を開放することになる。
【0104】
また、第1球状弁99が第1通気孔97を開放しなく、第2球状弁102が第2通気孔100を開放しない更に異常な状態が生じた場合、安全弁96を設けることにより、このような異常を回避することができる。いずれにしても、押圧状態にある第2球状弁102を安全弁として機能させることにより、更には安全弁96を第2の安全弁として機能させることにより圧力式炊飯器の安全性をより確実に担保することができるようになる。
【0105】
図8に第1圧力調整装置である第1ソレノイド68のオンオフ時の第1球状弁99と第1通気孔97との関係、並びに第1摺動部材70の他の作用、即ち加圧炊飯中に蓋体40を開放すると蓋体40の開蓋前に蒸気が排出される作用について説明する。
【0106】
図(A)は、加圧炊飯を行っていないロック状態時である。この状態では、第1ソレノイド68はオフ状態にあり、第1プランジャ69及び第1摺動部材70は後方側に押し出されており、弁押圧突起73bは第1球状弁99を押して第1通気孔97を開放している。なお、コイルばね74は、コイルばね69bより弱く設定される。
【0107】
図(B)は、加圧炊飯中のロック状態時である。この状態では、第1ソレノイド68はオン状態にあり、第1プランジャ69及び第1摺動部材70は前方側に引き込まれており、弁押圧突起73bは第1球状弁99から離れ、その結果第1通気孔97は閉鎖される。
【0108】
図(C)〜(E)は、加圧炊飯中の開蓋動作を順に示すものである。図(C)に示すように、ロックレバー50が開放方向である時計方向に回動されていくと、ロックレバー50の折曲部53が傾斜突部71aに当接する。更にロックレバー50が開放方向に回動されるとロックレバー50の折曲部53が傾斜突部71aを後方側に押圧する。すると、第1摺動部材70はコイルばね74に抗して後方側に押され、第1摺動部材70の弁押圧突起73bは第1球状弁99を押して図(D)の状態になる。この場合、第1ソレノイド68はオン状態であるため第1プランジャ69は前方側に引き込まれたままである。
【0109】
図(D)の状態になると、内鍋23の蒸気は排出されることになる。そのため、図(E)のように蓋体40が開放されたとしても、内部の高圧の蒸気は既に噴出されているため蓋体40の開放時に蒸気が噴き出すことがなくなる。このように第1摺動部材70を加圧炊飯中の開蓋動作途中に蒸気を排出するための手段として利用することにより、圧力式炊飯器の利便性をより高めることができる。
【0110】
そして、本願発明の第2圧力調整装置は、第2摺動部材77、ばね棒81、回動部材87及び連動部材88の4部材であり、上記従来のものより部品点数を少なくすることができるとともに、回動部材87を用いているため力を滑らかに伝達することができるようになり、結果的に圧力式炊飯器の利便性を高めることができる。また、特に安全弁を設ける必要がないため、部品点数をより低減することができる。
【0111】
本発明は、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であり、例えば、加熱手段はヒータでもよく、内鍋も金属製等、どのような材質のものでもよく、第1球状弁99及び第2球状弁102の設定圧も上記した値以外であってもよい。
【符号の説明】
【0112】
20…圧力式炊飯器 21…炊飯器本体
22…外ケース 23…内鍋
24…内ケース 25…温度センサ
26…肩部材 26a…係止片
27…底部ワークコイル 28…側部ワークコイル
29…コイル支持台 31…底部材
32…制御基板 33…冷却フィン
34…冷却ファン 35…コード巻取器
40…蓋体 42…蓋下部材
43…切欠 44…蒸気排出筒
46…補強部材 46a…第1補強部材
46b…第2補強部材 47,48…軸受孔
50…ロックレバー 51…水平部
51a…第1水平部 51b…第2水平部
51c…第3水平部 52…垂直部
52a…係止部 53…折曲部
55…押圧部材 55a…挿通口
56…係止口 57…レバー軸
57a…レバーばね 58…ヒンジ軸
59…ヒンジばね 60…弁カバー
60a…第1弁カバー 60b…第2弁カバー
62…パッキン 63…支持部材
63a…フランジ 64…第1ソレノイド収納室
65…第1摺動部材収納室 65a…内端壁面
66…第2ソレノイド収納室 67…第2摺動部材収納室
68…第1ソレノイド 69…第1プランジャ
69a…ばね支持具 70…第1摺動部材
71…前後方向長伸部 71a…傾斜突部
71b…前方側垂下部 71c…後方側垂下部
72…前後方向短伸部 73…左右方向短伸部
73a…半円弧空間 73b…弁押圧突起
74…コイルばね 75…第2ソレノイド
76…第2プランジャ 76a…ばね支持具
77…第2摺動部材 78…左右方向延伸部
78a…半円弧溝空間 78b…後方壁面
79…前後方向延伸部 80…筒状突起
80a…ばね溝 81…ばね棒
85…回動部材ユニット 86…収納ケーシング
86a…軸受溝 86b…屋根部
86c…摺動溝 86d…取付フランジ
87…回動部材 87a…前方側平板部
87b…後方側平板部 87b1…先端部
87c…回動軸 88…連動部材
88a…枠体 88a1…貫通口
88b…弁押圧部材 89…ばね
90…パッキン 91…内蓋
92…弁ユニット 93…蒸気室
94…第1弁収納室 95…第2弁収納室
96…安全弁 97…第1通気孔
98…第1弁載置部 99…第1球状弁
100…第2通気孔 101…第2弁載置部
102…第2球状弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上方に位置する蓋体とを有する圧力式炊飯器であって、
前記炊飯器本体は、内鍋と、前記内鍋を加熱する加熱手段とを有し、
前記蓋体は、第1圧力調整装置及び第2圧力調整装置を有し、
前記第1圧力調整装置は、第1通気孔を開閉する球状の第1弁体を有し、
前記第2圧力調整装置は、第2通気孔を開閉する球状の第2弁体を有し、
前記第1弁体は、水平方向に押圧されることにより前記第1通気孔を開閉し、
前記第2弁体は、回動部材を介して垂直方向に押圧されることにより前記第2通気孔に対する閉鎖力を高め安全弁として機能することを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
前記第2弁体は、水平移動部材及び回動部材を介して垂直方向に押圧されることを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249945(P2012−249945A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126446(P2011−126446)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【出願人】(592179827)気高電機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】