説明

圧力式炊飯器

【課題】本発明の目的は、食味を損なわず、且つ圧抜き時に蒸気やおねばが噴出しない加圧炊飯機能を有する圧力式炊飯器を提供すること。
【解決手段】内鍋を収納する炊飯器本体と、蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、前記内鍋内の圧力を調整する圧力調整装置とを有する炊飯器において、炊飯開始から炊き上げ後の追い炊き工程まで前記内鍋内を加圧状態にし、前記追い炊き工程では、前記内鍋内の温度を段階的に低下させる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に加圧炊飯機能を有する圧力式炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に炊飯器は、ワークコイル、保温ヒータ及び蓋ヒータ等の複数個の加熱手段を有し、これら加熱手段を駆使して自動的に炊飯及び保温を行いユーザーに最適なご飯等を提供する器具として広く知られている。
【0003】
また、炊飯器は、一般にお米に充分な水を吸水させるための吸水工程、火力をあげてお米と水を沸騰させるための昇温工程、沸騰を維持するための沸騰維持工程、その後の追い炊き工程及びむらし工程とを有する炊飯工程と、保温工程を備え、各工程で、ワークコイル、蓋ヒータ及び保温ヒータ等の複数個の加熱手段が、内鍋の温度等を検知する温度センサの検出信号に基づいて加熱制御され、最適な炊飯及び保温が行われる。
【0004】
ところで、炊飯の各工程時に内鍋内を加圧状態にして炊飯を行い、炊きムラのないより美味しいご飯を短時間で炊き上げることができる加圧炊飯機能を有する圧力式炊飯器が既に販売されている。
【0005】
圧力式炊飯器は、基本的には通常の炊飯器とほぼ同じである。即ち、圧力式炊飯器は、強度が高められた構造の炊飯器本体及び炊飯器本体の上方開口を開閉する蓋体等からなり、前記炊飯器本体内の内ケースには、調理物を入れて調理する内鍋がセットされ、内ケースの底面等に設けられるワークコイル、保温ヒータ等の加熱手段により内鍋内の調理物が加熱調理される。
【0006】
そして、多くの場合、蓋体内に内鍋内の圧力を調圧するための圧力調整装置が設けられ、加圧炊飯時、圧力調整装置を作動させ内鍋内を密閉状態にして所定圧力での加圧炊飯が行われることになる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ところで、圧力式炊飯器で加圧炊飯を行う場合、炊飯開始から炊き上げ後の追い炊き工程まで圧力調整装置をオンして内鍋内を加圧状態にし、追い炊き工程からむらし工程に移行する時に圧力を抜いてむらしを行うと、お米を早く柔らかく炊くことができるようになる。
【0008】
また、圧力式炊飯器での炊飯をより早く行いたいとの要望があり、このような要望に答えるため、加圧炊飯工程に、吸水工程を省略したり、或いは、各工程時間を短くした早炊きコースが考えられている。
【0009】
ところが、加圧炊飯で早炊きを行うような場合、お米を早く炊くことができる反面、追い炊き工程からむらし工程に移行する時の圧力を抜く時までの時間も短くなるため、例えば図5の2点鎖線(従来例)で示すように、追い炊き工程からむらし工程に移行する時に内鍋内の圧力が十分に下がらない状態(1気圧近傍より高い状態)が生じる恐れがある。
【0010】
そして、そのような状態で圧力調整装置をオフして圧抜きを行うと、内鍋内の圧力の高い蒸気やおねばが急激に噴出し、蓋体内の蒸気通路がおねばで詰まったり、或いは蒸気口から蒸気やおねばが外部に急激に噴出し、ユーザー等に弊害を与える怒れが生じる。
【0011】
なお、このような弊害が生じないように、追い炊き工程で加熱せずに追い炊き工程を短時間で終わらせることが考えられるが、追い炊き工程で加熱しないと加熱不足で食味が落ち、美味しいお米を炊くことができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−325843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、食味を損なわず、且つ圧抜き時に蒸気やおねばが噴出しない加圧炊飯機能を有する圧力式炊飯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0015】
請求項1に係る発明では、内鍋を収納する炊飯器本体と、蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、前記内鍋内の圧力を調整する圧力調整装置とを有する炊飯器において、炊飯開始から炊き上げ後の追い炊き工程まで前記内鍋内を加圧状態にし、前記追い炊き工程では、前記内鍋内の温度を段階的に低下させる構成。
【0016】
請求項2に係る発明では、請求項1の構成に加え、前記内鍋内の段階的な温度低下は、合数が多い程長い所定時間の間で行われる構成。なお、所定時間は、予め決められた時間であり、追い炊き工程の実行時間である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明は、炊飯開始から炊き上げ後の追い炊き工程まで内鍋内を加圧状態にし、追い炊き工程では、内鍋内の温度を段階的に低下させることにより、食味を損なうことがないとともに、圧抜き時に高圧の蒸気やおねばの噴出を防止することができる。その結果、加圧炊飯での圧抜きを安全に行うことができるとともに、加圧炊飯での早炊きをより短時間で且つ適確に行うことができる。
【0018】
なお、追い炊き工程終了時の所定最低温度は、後記実施例では105℃に設定しているが、できるだけ100℃近傍まで下げるようにするとよい。このような段階的温度制御をすることにより、追い炊き工程終了までに内鍋内の圧力を1.0気圧近傍にまで減圧することができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、内鍋内の段階的な温度低下を、予め設定した所定時間の間で行うことにより、食味を落とすことなく追い炊き工程の実行時間をできるだけ短くすることができるとともに、合数に関係なく食味を落とさず安全な圧抜きを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】圧力式炊飯器の蓋上部材を取り外した状態の全体断面図
【図2】操作パネルの正面図
【図3】圧力式炊飯器の制御手段のシステムブロック図
【図4】圧力調整装置のオンオフ状態を示す概略図
【図5】圧力式炊飯器での早炊きタイムチャート図
【図6】圧力式炊飯器での早炊きフローチャート図
【図7】合数に応じた温度降下線図
【実施例】
【0021】
図1は蓋上部材を取り外した状態の全体断面図を示し、図2は操作パネルの正面図を示し、図3は制御手段のシステムブロック図を示し、図4は圧力調整装置のオンオフ状態概略図を示し、図5、6は制御手段のタイムチャート図、フローチャート図を示す。
【0022】
圧力式炊飯器20の略全体断面図を図1に示す。圧力式炊飯器20は、炊飯器本体21及び蓋体40からなる。炊飯器本体21は、鋼板ケースまたは合成樹脂製の外ケース22を有し、この外ケース22の内部には、金属鍋或いは土鍋等の内鍋23が着脱自在にセットされ、この内鍋23の外側には内鍋23の形状に沿った形状を有する保護枠である内ケース24が設けられる。
【0023】
この内ケース24は、例えばポリエチレンテレフタレート等の耐熱性の合成樹脂製のもので、その底部中央にはサーミスタからなる温度センサであるセンターセンサ25を臨ませるためのセンサ挿入孔24aが設けられる。
【0024】
内ケース24の上端は、外ケース22の上端と肩部材26を介して一体に結合される。内ケース24の底部外面及び底部から側部にかけての湾曲部外面には、内鍋23を誘導加熱する加熱手段である底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28が設けられる。
【0025】
これら底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28は、内ケース24の底部及び湾曲部の各位置に、内ケース24の底部中央を中心として同心円状に設けられる。また、内ケース24の側部上方には、保温ヒータ30が設けられ、炊飯工程及び保温工程時に内鍋23を側面から加熱する。
【0026】
これら底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28の外側には合成樹脂製のコイル支持台29が設けられており、このコイル支持台29をネジ等で内ケース24に取り付けることにより、底部ワークコイル27及び側部ワークコイル28は図示する所定位置に位置決め固定される。
【0027】
前記外ケース22の下端部には、底部材31がビス等で取り付けられ、外ケース22と底部材31とで上方に開口を有する容器状部材を形成する。外ケース22の後方の内部には、肩部材26から垂下する形態で、制御基板32が設けられる。
【0028】
この制御基板32には、底部ワークコイル27、側部ワークコイル28、保温ヒータ30及び蓋ヒータ61からなる加熱手段を制御するためのマイコン及び電源回路等の電気部品が搭載される。それら電気部品のなかには発熱するものがあるため、制御基板32の近傍には発熱素子等を冷却するための冷却フィン33と、冷却フィン33の熱を放熱するための冷却ファン34が設けられる。なお、制御基板32の後方側にはコード巻取器35が設けられる。
【0029】
蓋体40は、図示しない外周面を形成する樹脂製の蓋上部材と、蓋下部材42を有する。蓋下部材42は、蓋上部材と同様に樹脂製の部材であり、その後方側に肩部材26に取付けられるヒンジ軸43により開閉自在に取付けられている。
【0030】
蓋下部材42の中央且つ後方よりには円形の蒸気排出筒44が設けられており、内鍋23内の蒸気は、この蒸気排出筒44より蓋上部材に設けられる蒸気通路を経て蓋上部材の上面に設けられる蒸気口より外部に放出される。
【0031】
蓋下部材42の前方側には、略L字状でその中央部がレバー軸47に軸支されるロックレバー45が設けられる。このロックレバー45の一方には、蓋上部材に設けられる蓋開放部材48(図2参照)の上下動に連動して上下動し、上動ばね46aを備えた押圧部材46が設けられるとともに、その他方には、肩部材26に設けられる図示しない係止溝に係合する係止片が設けられており、蓋上部材に設けられる蓋開放部材48が下方に押されると押圧部材46が下動し、ロックレバー45をレバー軸47を中心にして時計方向に回動し、ロックレバー45の係止片と肩部材26の係止溝との係合を解除して蓋体40をヒンジ軸43を中心にして時計方向に開放する。
【0032】
蓋下部材42には、圧力調整装置50が設けられる。その概略を図4に示すように、圧力調整装置50は、ソレノイド51、球状弁52、プランジャ53等からなる。ソレノイド51には、突起部54を有するプランジャ53が摺動自在に嵌合されており、ソレノイド51がオフ状態の非作動時には、図4(A)に示すように、コイルばね55により図の右方に付勢されており、図4(B)に示すように、ソレノイド51がオン状態の作動時にはコイルばね55の力に抗して左方に引き込まれる。
【0033】
また、蓋体40の下部に取り付けられ、内鍋23に対向する内蓋58には、内鍋23内で発生する蒸気を排出するための通気孔56が設けられ、この通気孔56上には通気孔56を閉鎖する形態で球状弁52が設けられる。
【0034】
そして、ソレノイド51がオフ状態の非作動時には、プランジャ53は図4(A)に示す位置にあり、プランジャ53の突起部54は、球状弁52を右方に押し、通気孔56を開放し、ソレノイド51がオン状態の作動時(図1の状態)には、図4(B)に示すようにプランジャ53は左方に引き込まれ、球状弁52は自重で通気孔56上に移動して通気孔56を閉鎖し、内鍋23内を密閉状態にする。
【0035】
炊飯コースが選択されて炊飯が実行されると、通気孔56が閉鎖され、例えば1.2〜1.3気圧での加圧炊飯が行われ、炊飯中に内鍋23内の圧力が球状弁52を押し上げることができる圧、即ち1.2〜1.3気圧になると、球状弁52は押し上げられ通気孔56は開いて所定以上の圧力が大気に開放される。この動作を繰り返すことにより圧力調整装置50は、内鍋23内の圧力を所定圧、即ち1.2〜1.3気圧に調圧する。
【0036】
前記蓋体40の下方には、内鍋23に対向して内蓋58が着脱自在に取付けられる。内蓋58には、上記したようにその略中央には球状弁52によって開閉される通気孔56を有しており、内蓋58が取付けられると、蓋下部材42との間に蒸気室59が形成される。
【0037】
この蒸気室59は、蒸気排出筒44に連通しており、通気孔56が開放されると、内鍋23内の高圧の蒸気及び圧力は、蒸気室59及び蒸気排出筒44を介して外部に放出される。
【0038】
また、内蓋58の蒸気室59側の面には、温度センサである蓋センサ60と、内鍋23内を上方から加熱するための蓋ヒータ61が設けられる。蓋センサ60は、主として内鍋23内のお米の沸騰状態を検知するために用いられる。
【0039】
蓋体40の図示しない蓋上部材の前面側(図1の左側)上部には、図2に示すような操作パネル65が設けられる。操作パネル65には、各種の操作スイッチ、例えば、炊飯スイッチ65a、保温スイッチ65b、予約スイッチ65c、メニュースイッチ65d、おこげスイッチ65e、時・分スイッチ65f及び取消スイッチ65gと、それらの各種スイッチ類によって設定される設定状態及び時刻を表示する表示部66とが設けられている。
【0040】
そして、メニューには、白米コース、早炊きコース、炊き込みコース等が設けられており、ユーザーがメニュースイッチ65dにより実行するコースを選択し、炊飯スイッチ65aを押すことにより選択したコースが実行される。
【0041】
次に、制御基板32に搭載される炊飯等を制御する制御手段であるマイコン制御装置100を中心とするワークコイル27、28、保温ヒータ30及び蓋ヒータ61の制御回路部の構成を図3により説明する。
【0042】
図中、符号70が炊飯・保温制御用のマイコン制御ユニット(CPU)であり、該マイコン制御ユニット70はマイクロコンピュータを中心とし、例えば内鍋23部分の温度検知回路部、ワークコイル駆動制御回路部、発振回路部、リセット回路部、保温ヒータおよび蓋ヒータ等駆動制御回路部、電源回路部、液晶およびLEDランプ等表示部、操作スイッチ部等を各々備えて構成されている。
【0043】
先ず内鍋23の底壁部に設けられるセンターセンサ25及び蓋センサ60に対応して設けられた温度検知回路71には、センターセンサ25及び蓋センサ60による検知温度信号が入力されるようになっている。
【0044】
また、前記ワークコイル駆動制御回路部は、例えばパルス幅変調回路72、同期トリガー回路73、IGBT駆動回路74、IGBT75、共振コンデンサ76によって形成されている。そして、前記マイコン制御ユニット70により、前記パルス幅変調回路72を制御することにより、例えば炊飯および保温の各工程に応じて前記ワークコイル27、28の出力値および同出力値でのONデューティー比(例えばn秒/16秒)をそれぞれ適切に変えることによって、同炊飯および保温の各工程における内鍋23の目標加熱温度と加熱パターンを炊飯量を考慮して適切にコントロールし、加熱ムラのないご飯の炊き上げ等を実現するための適切な加熱制御が行われるようになっている。
【0045】
尚、符号Dは前記IGBT75のフライホイールダイオードであり、家庭用AC電源77との間には、ワークコイル駆動用のダイオードブリッジを内蔵した整流回路78及び平滑回路79が配設される。
【0046】
符号30は上述の保温ヒータ、61は蓋ヒータであり、保温ヒータ30は保温ヒータ駆動回路80により、蓋ヒータ61は蓋ヒータ駆動回路81により、それぞれ所望の出力とデューティー比でON,OFF駆動されるようになっている。
【0047】
さらに、マイコン制御ユニット70には、液晶、LED等の表示部66、上記した各種操作スイッチ部65a〜65g、ブザー等の報知部82、クロック基準制御信号形成用の発振回路(OSC)83及びリセット回路84が接続される。
【0048】
次に上述のマイコン制御ユニット70を使用してなされる加圧炊飯状態での早炊きコースの制御について、図5のタイムチャート及び図6のフローチャートで説明する。
【0049】
先ず図5のタイムチャートに従って加圧炊飯状態での早炊きコースの各工程の概略について説明する。図5のタイムチャートは、その上部に設定圧力の変化が記載され、その下方に内鍋23内の圧力変化が記載され、その下方に内鍋23の温度変化が記載され、その下方に各工程での概略加熱量、各工程での実行時間、内鍋温度、設定圧力及び圧力調整装置の動作状態が記載される。なお、追い炊き工程及びむらし工程は、合数に応じて予め設定される所定時間の間で行われる。
【0050】
メニュースイッチ65dで早炊きコースが選択されると、昇温工程、沸騰維持工程、追い炊き工程及びむらし工程からなる炊飯工程が実行される。なお、早炊きコースは、加圧状態で且つ炊飯時間をできるだけ短くするコースであり、吸水工程は省略されるとともに、各工程もできるだけ短い時間で行われるように設定されている。
【0051】
即ち、高出力でワークコイル27、28の出力を急激に上げ、お米と水を沸騰させるための昇温工程が水がほぼ沸騰するまでの間行われ、この昇温工程で昇温時間に基づいて内鍋23内のご飯量である合数が判定され、そのご飯量の合数に基づいて以後の追い炊き工程等の時間が決定される。
【0052】
昇温工程後、沸騰維持工程が中出力で水がなくなるまで行われ、その後、追い炊き工程が低出力で且つ合数に応じた所定時間行われる。この追い炊き工程では所定の温度降下線に沿って内鍋23内の温度を段階的に低下する制御が行われ、追い炊き工程が終了する所定時間後では、内鍋23内の圧力は1気圧近傍に低下する。追い炊き工程後、むらし工程が低出力で行われ、このむらし工程で炊き上がったご飯を充分むらし、ご飯を最適な状態にして炊飯工程が終了される。なお、上記温度降下線は、直線が好ましいが、曲線であってもよい。
【0053】
炊飯が開始されると、圧力調整装置50がオンし、球状弁52が通気孔56を閉鎖し、1.2〜1.3気圧での加圧炊飯が行われる。圧力調整装置50は、追い炊き工程からむらし工程に移る直前にオフされ、球状弁52が通気孔56を開放して内鍋23内を大気に連通する。この大気開放時には、内鍋23内の圧力は、追い炊き工程で行われる温度を段階的に下げる温調制御により1気圧近傍にまで下げられているため、高圧の蒸気やおねばが蒸気口から外部に噴出する弊害はなくなる。
【0054】
追い炊き工程で行われる温調制御について図7により説明する。図7には、1〜2合のもの、3〜4合のもの及び5〜5.5合のものの温度降下線が記載される。即ち、1〜2合のものは、例えば125℃から所定温度である105℃までを所定時間である5分間で行うように設定され(5分の追い炊き工程)、3〜4合のものは、例えば128℃から所定温度である105℃までを所定時間である8分間で行うように設定され(8分の追い炊き工程)、5〜5.5合のものは、例えば130℃から所定温度である105℃までを所定時間である10分間で行うように設定されている(10分の追い炊き工程)。
【0055】
なお、いずれの合数であっても、降下させる所定温度は105℃としているが、それ以外の温度であってもよい。また、合数も3段階に分けて説明したが、それ以下であってもそれ以上に分けてもよい。要は、合数が多い程、所定時間を長くする。
【0056】
これら制御は、いずれも沸騰維持工程後の温度と所定時間とを結ぶ直線(1〜2合の場合で言えば、125℃の点と5分の点を結ぶ右下がりの直線)からなるマップを用意し、同一の出力、例えば、ワークコイル27、28を60%、ONデューティ比6/16の低出力で出力させ、保温ヒータ30及び蓋ヒータ61を10/16で出力させ、設定温度によりオンオフすることにより行われる。
【0057】
即ち、センターセンサ25により所定時間毎に内鍋23の温度を検知し、直線上の所定温度より下がったら加熱手段である、例えばワークコイル27、28をオンし、その後直線上の所定温度より上がったらワークコイル27、28をオフするというように加熱手段のオンオフを繰り返すことにより予め設定された温度降下線に沿った段階的制御を行う。
【0058】
各合数の温度降下線は、各合数に適した直線として予め設定されており、最適な追い炊きと最適な温度降下、即ちいずれの合数であっても追い炊き工程終了後には内鍋23内の圧力が1気圧近傍になる圧力降下が行われる。このような制御は、大気温度の影響を受けにくく、圧力をほぼ均一に減圧させることができる。即ち、大気温度が低い時には十分な加熱が行われ、大気温度が高い時には加熱が抑えられるため、いずれにしても圧力をほぼ均一に減圧させることができる。
【0059】
次いで図6のフローチャートに従って加圧炊飯時の早炊きコースの各工程の概略について説明する。メニュースイッチ65dで早炊きコースが選択され炊飯スイッチ65aが押されると早炊き炊飯が開始される。
【0060】
すると、ステップS1で圧力調整装置50がオンし、球状弁52が通気孔56を閉鎖し1.2〜1.3気圧での加圧炊飯が行われることになる。次いでステップS2に進み、高出力でワークコイル27、28の出力を急激に上げ、お米を一気に炊き上げる昇温工程が実行される。
【0061】
次いで、ステップS3で蓋センサ60による沸騰検知が行われ、沸騰が検出されるまでこのステップが繰り返される。なお、蓋センサ60は、内蓋58の内鍋23とは反対側の面に取り付けられているため、その検知温度は100℃より低い温度、例えば70℃に設定されている。そして、沸騰検知時間に基づいて内鍋23内のご飯量である合数が判定される。
【0062】
沸騰が検知されると、ステップS4に進み、沸騰維持工程が実行される。沸騰維持工程は、中出力で水がなくなるまで行われることになる。即ち、ステップS5で内鍋23の温度が130℃になったかの判定が行われる。この判定はセンターセンサ25の検出信号を用いて行われることになる。そして、130℃が検出されるまでこのステップが繰り返される。
【0063】
ステップS5で130℃が検出されるとステップS6に進み、100℃近傍である105℃へ段階的に降下させる温調制御である追い炊き工程が実行される。この追い炊き工程での温調制御は、上記したように低出力で且つ合数に応じた所定時間、所定の温度降下線に沿って内鍋23の温度を段階的に低下する制御であり、追い炊き工程が終了するまでの所定時間の間実行され、内鍋23内の圧力を1気圧近傍に低下させる。即ち、ステップS7で所定時間が経過したかで判定され、所定時間が経過しない間、このステップが繰り返される。このように、追い炊き工程までを加圧状態で炊飯を行うことにより炊飯時間を短くすることができる。
【0064】
ステップS7で所定時間が経過するとステップS8に進み、むらし工程が実行される。むらし工程が実行される直前或いは同時であってもよいが、圧力調整装置がオフし、内鍋23内を大気に開放する。そのため、圧力調整装置がオフされたとしても高圧の蒸気やおねばが蒸気口から外部に噴出する弊害はなくなる。そして、むらし工程は大気圧である常圧で低出力で行われることになる。
【0065】
このむらし工程では、炊き上がったご飯が充分むらされ、ご飯を最適な状態にして炊飯工程が終了され、必要であれば保温工程に進むことになる。
【0066】
本発明は、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であり、例えば、加熱手段は全てヒータでもよく、内鍋も金属製、陶磁器製等、どのような材質のものでもよい。また、上記実施例では、追い炊き工程での温調制御は早炊きコースとして説明したが、かならずしも早炊きコースでなくてもよい。更に、早炊きコースに吸水工程を設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
20…圧力式炊飯器 21…炊飯器本体
22…外ケース 23…内鍋
24…内ケース 24a…センサ挿入孔
25…センターセンサ 26…肩部材
27…底部ワークコイル 28…側部ワークコイル
29…コイル支持台 30…保温ヒータ
31…底部材 32…制御基板
33…冷却フィン 34…冷却ファン
35…コード巻取器 40…蓋体
42…蓋下部材 43…ヒンジ軸
44…蒸気排出筒 45…ロックレバー
46…押圧部材 46a…上動ばね
47…レバー軸 48…蓋開放部材
50…圧力調整装置 51…ソレノイド
52…球状弁 53…プランジャ
54…突起部 55…コイルばね
56…通気孔 58…内蓋
59…蒸気室 60…蓋センサ
61…蓋ヒータ 65…操作パネル
65a…炊飯スイッチ 65b…保温スイッチ
65c…予約スイッチ 65d…メニュースイッチ
65e…おこげスイッチ 65f…時・分スイッチ
65g…取消スイッチ 66…表示部
70…マイコン制御ユニット 71…温度検知回路
72…パルス幅変調回路 73…同期トリガー回路
74…IGBT駆動回路 75…IGBT
76…共振コンデンサ 77…家庭用AC電源
78…整流回路 79…平滑回路
80…保温ヒータ駆動回路 81…蓋ヒータ駆動回路
82…報知部 83…発振回路(OSC)
84…リセット回路 100…マイコン制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋を収納する炊飯器本体と、蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、前記内鍋内の圧力を調整する圧力調整装置とを有する圧力式炊飯器において、
炊飯開始から炊き上げ後の追い炊き工程まで前記内鍋内を加圧状態にし、
前記追い炊き工程では、前記内鍋内の温度を段階的に低下させることを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
前記内鍋内の段階的な温度低下は、合数が多い程長い所定時間の間で行われることを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39296(P2013−39296A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179379(P2011−179379)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】