説明

地中穿穴装置及び地中穿穴装置付き走行体

【課題】十分なエアレーション作業を行うことができ、また突き刺して形成した穴内部以外にもエアーが土中に触れるようにして、効率的なエアレーションを行うことのできる地中穿穴装置を提供する。
【解決手段】複数のタイン1のうち少なくともいずれかは、棒体内に中空部1aを有すると共にこの中空部1aと連通する噴出孔1hが棒体の下端付近に形成された中空タインからなり、さらに、中空タインの中空部1aと流体連通した連通管42と、この連通管42を介して中空タインの内部へ加圧流体を送り込む流体送出機構とを具備し、流体送出機構は、中空タインを含むタイン支持部2を支持する可動アーム3aが所定の対水平角度以下となったときにのみ加圧流体を送出することで、中空タインの噴出孔1hが地中でのみ流体を噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクター等の走行体によって牽引しながら用いることで広域の栽培土に通気性を付与する地中穿穴装置(エアレーター)、及び、この地中穿穴装置(エアレーター)付き走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場、各種競技場や圃場において、芝生、ゴルフ場のバンカー、整備土や栽培土に空気を接触させるエアレーション作業の際に、「芝生用通気孔穿孔装置」あるいは「エアレーター」と呼ばれる器具を使用する。例えば従来の「芝生用通気孔穿孔装置」は、トラクターなどの後部に駆動軸が該機体の進行方向と直交する方向に水平に支承されて、該駆動軸に多数の穿孔ユニットが装着され、該駆動軸の回転により、多数の穿孔ユニットの各穿孔ロッドが位相を異にして順次昇降して、その下端に取付けられたタインにより芝生に通気孔を穿孔する。
【0003】
具体的には、トラクターなどの機体の後部に駆動軸が該機体の進行方向と直交する方向に水平に支承されて、該駆動軸に、その軸心方向に所定の間隔をおいて多数の穿孔ユニットが装着され、該駆動軸の回転により、多数の穿孔ユニットの各穿孔ロッドが位相を異にして順次昇降して、その下端に取付けられたタインにより芝生に通気孔を穿孔する構成の芝生用通気孔穿孔装置であって、自身の偏心位置に前記駆動軸が挿通固定されて、該駆動軸の回転により、その軸心を中心にして偏心回転を行う偏心回転円盤と、複数の支承体を介して該偏心回転円盤に、これとほぼ同心となって回転可能に支承された環体と、自身の上端部が該環体の最下部となる部分に一体に固着されることにより、偏心回転中の該偏心回転円盤に対して僅かに回動運動を行う穿孔ロッドと、該穿孔ロッドが常時機体の前方に回動するように付勢させるための付勢手段と、該穿孔ロッドの機体の前方への回動位置を規制するためのストッパー部材との各部材によって前記穿孔ユニットを構成したものが開示される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−205605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような芝生用通気孔穿孔装置は、芝生面へタインを突き刺すことでのみ通気孔を穿孔するものであるため、石が存在して突き刺せない場合や突き刺す位置間隔が広すぎる場合には、十分なエアレーション作業を行うことができない。また突き刺して形成した穴内部のみエアーが土中に触れる形のため、効率的なエアレーションとはいえなかった。
【0005】
そこで本発明では、石が存在して突き刺せない場合や突き刺す位置間隔が広すぎる場合にも十分なエアレーション作業を行うことができ、また突き刺して形成した穴内部以外にもエアーが土中に触れるようにして、効率的なエアレーションを行うことのできる地中穿穴装置(エアレーター)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、下記(1)〜(5)の手段を採用するものとしている。
【0007】
(1)すなわち、本発明の地中穿穴装置(エアレーター)は、
走行体に設けられるものであって、
下端が地面に突き刺さって穿穴する棒体からなるタイン1と、
タインを複数本ずつ併設させて上部支持する複数のタイン支持部2と、
一または複数個ずつのタイン支持部2を、タイン先端が常に下方を向くようにしたまま先端側に支持し、基端側の回動軸周りに回動し得る複数の可動アーム3aと、
クランク機構によって各可動アームの先端側を角度可変可能に支持し、クランク動によってタイン支持部2の支持位置を上下に往復制動するクランクアーム33と、複数の可動アームおよびクランクアームを幅方向に連接して収納すると共に、走行体への取り付け機構を有した収納枠8とを具備してなり、
前記複数のタイン1のうち少なくともいずれかは、棒体内に中空部1aを有すると共にこの中空部1aと連通する噴出口1hが棒体の下端付近に形成された中空タインからなり、
さらに、中空タインの中空部1aと流体連通した連通管42と、この連通管42を介して中空タインの内部へ加圧流体を送り込む流体送出機構とを具備し、流体送出機構は、中空タインを含むタイン支持部2を支持する可動アーム3aが所定の対水平角度以下となったときにのみ加圧流体を送出することで、中空タインの噴出口1hが地中でのみ流体を噴出することを特徴とする。
(2)前記地中穿穴装置において、タイン1の突き刺し位置にそれぞれ櫛状の切欠き部62dを有して地表面に近接配置された押さえ板62を配設してなり、
前記流体送出機構は、可動アーム3aの対水平角度が所定以下となり、かつ中空タインの噴出口1hが押さえ板62よりも下方に位置するときにのみ、流体を中空タインへ送出することが好ましい。
(3)前記いずれかの地中穿穴装置において、流体送出機構は、可動アーム3aの端部または端部近傍にて回動可能に設けられた接触式のアームスイッチ41Tと、連通管42に介在し、アームスイッチ41Tの入/切に応じて連通管と連通形成されて流体の送出有無を切り替えるプロセスバルブ4と、アームスイッチ41Tと接触可能な非可動位置に固定されたドグ5とを有してなり、
アームスイッチ41Tと接触/非接触のいずれかの状態にあるドグ5が、可動アーム3aの可動によってアームスイッチ41Tに対し非接触/接触した状態となることで、プロセスバルブ4が閉状態から一時的に開状態に切り替えられることが好ましい。
(4)前記いずれか記載の地中穿穴装置において、タイン支持部2に併設支持される複数本のタイン1のうち両端を除く中央寄りのタインは、中空部1aの両側部に連通した噴出口1hを有する中空タインからなり、タイン支持部2よりも両側方へ流体を噴出し得ることが好ましい。
(5)本発明の地中穿穴装置(エアレーター)付き走行体は、前記いずれか記載の地中穿穴装置が装置自体の走行ローラー9を有し、乗用の走行機の進行方向前方または後方に取り付けられて従走する走行体TRであって、流体送出機構として、連通管42と連通したコンプレッサー7及びコンプレッサー7の電源ユニットが走行機に車載されることを特徴とする。
【0008】
中空タインを含むタイン支持部2と、中空タインが地中にあるときに噴出口1hから流体を噴出させる流体送出機構と、支持アーム3aを往復制動するクランクアーム33とによって、中空タインを突き刺したタイミングで中空タインの穿穴内からさらに四方へ広がって流体を土内注入することができる。流体として圧縮空気を使用した場合には、タインの突き刺し部分以外へもエアーレーション効果を果たすことができる。また、さらに地面を押さえるための押さえ板61を具備し、噴出口1hが押さえ板61の下部位置にあるときにのみ流体を噴出させることで、押さえ板61の下方にて噴出流体を効率的に拡げるものとなり、噴出による効果を高めることができる。
【0009】
また、さらに流体送出機構として、支持アーム3aの可動に伴うアームスイッチ41Tとドグ5の機械的接触によってバルブの開閉制御をすることで、支持アーム3aの角度による確実な流体創出制御が可能となり、タイミングのずれが生じにくいものとなる。また、さらに中空タインの両側部に連通した噴出口1hから両側方へ流体を噴出することで、タイン支持部2で複数のタイン1を支持して構成されるタインユニット単位において、効率的に流体を広範囲噴出するものとなる。
【0010】
また、コンプレッサー7及びコンプレッサー7の電源ユニットを車載式とすることで、走行体TRにて重量及び稼働動力を負担してコンプレッサーを動作させながら運搬することとなり、地中穿穴装置を効率的に連続移動動作させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述のような構成としたことで、芝生面へタインを突き刺すと共にタインの噴出孔殻の流体噴出によっても通気孔を穿孔するものであるため、石が存在して突き刺せない場合や突き刺す位置間隔が広すぎる場合にも、十分なエアレーション作業を行い得る。また突き刺して形成した穴内部から広げて突き刺した部分以外にもエアーが土中に触れる形のため、効率的なエアレーション及び流体噴出を行うことができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の中空タインの側面図。
【図2】実施例1の中空タインの平面図。
【図3】実施例1の中空タインの正面図。
【図4】実施例1の中空タインの背面図。
【図5】図1に示す実施例1の中空タインの中央縦断面図。
【図6】実施例1の地中穿穴装置(エアレーター)の稼働状態を示す背面構成図。
【図7】実施例1の地中穿穴装置付き走行体の後側方斜視外観図。
【図8】流体送出機構の構成を示す一部抽出斜視図。
【図9】実施例1の地中穿穴装置における流体送出機構の一系統の作動状態(非接触・非作動状態S1)を示す側面説明図。
【図10】実施例1の地中穿穴装置における流体送出機構の一系統の作動状態(接触・作動状態S2)を示す側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、各実施例として示す各図と共に説明する。図1ないし図5に、本発明のエアレーターに用いる中空タインの実施例を示す。図6、図7に、前記中空タインを備えた実施例1の地中穿穴装置(エアレーター)及び地中穿穴装置(エアレーター)付き走行体を示す。図8,9,10に、実施例1の地中穿穴装置(エアレーター)における一系統の流体送出機構の構成および各作動状態(非接触状態・非作動状態S1、及び接触状態・作動状態S2)を示す。
【0014】
本発明の地中穿穴装置(エアレーター)は基本的には、トラクターなどの走行体TRの後部又は前部に駆動軸が該機体の進行方向と直交する方向に水平に支承されて、該駆動軸に、その軸心方向に所定の間隔をおいて複数のタイン支持部穿孔ユニットが装着され、該駆動軸の回転により、多数の穿孔ユニットの各穿孔ロッドが位相を異にして順次昇降して、その下端に取付けられたタインにより芝生に通気孔を穿孔する構成からなる。
具体的には、
・下端が地面に突き刺さって穿穴する棒体からなるタイン1と、
・タインを複数本ずつ併設させて上部支持する複数のタイン支持部2と、
・一または複数個ずつのタイン支持部2を、タイン先端が常に下方を向くようにしたまま先端側に支持し、基端側の回動軸周りに回動し得る複数の可動アーム3aと、
・クランク機構によって各可動アームの先端側を角度可変可能に支持し、クランク動によってタイン支持部2の支持位置を上下に往復制動するクランクアーム33と、複数の可動アーム3aおよびクランクアーム33を幅方向に連接して収納すると共に、走行体への取り付け機構を有した収納枠8とを具備してなる。
【0015】
そして、前記複数のタイン1のうち少なくともいずれかは、棒体内に中空部1aを有すると共にこの中空部1aと連通する噴出孔1hが棒体の下端付近に形成された中空タインからなると共に、この中空タインの中空部1aと流体連通した連通管42と、この連通管42を介して中空タインの内部へ加圧流体を送り込む流体送出機構とを具備し、流体送出機構は、中空タインを含むタイン支持部2を支持する可動アーム3aが所定の対水平角度以下となったときにのみ加圧流体を送出することで、中空タインの噴出孔1hが地中でのみ流体を噴出することを特徴とする。
【0016】
(押さえ板62)
タイン1の突き刺し位置にそれぞれ櫛状の切欠き部62dを有して地表面に近接配置された側面視略横倒J字型の押さえ板62を配設してなる。押さえ板62は地面の盛り上がりを押さえて平坦にならす機能のほか、櫛状の切り欠き部62dと平坦な板面とによって、噴出した流体が上方へ逃げるのを防ぎ、押さえ板62か方での流体の拡散を助ける機能を有する。流体送出機構は、可動アーム3aの対水平角度が所定以下となり、かつ中空タインの噴出孔が押さえ板62よりも下方に位置するときにのみ、流体を中空タインへ送出するように制御される。
【0017】
(流体送出機構)
流体送出機構は図8に示すように、可動アーム3aの端部または端部近傍にて、プロセスバルブ4に付属して回動可能に設けられた接触式のアームスイッチ41Tと、連通管42、74の間に介設され、アームスイッチ41Tの入/切に応じて連通管42,74と連通形成されてコンプレッサー7からの流体の送出有無を切り替えるプロセスバルブ4と、アームスイッチ41Tと接触可能な非可動位置に固定されたドグ5とを有して構成される。
【0018】
そして図9に示すように、支持アーム3aの先端が水平又はそれよりも上方を向いているときは、アームスイッチ41とドグ5の上端のテーパー状の接触部5Tとが互いに離間し、アームスイッチ41及びプロセスバルブは非接触・非作動状態S1にある。この状態から図10に示すように、支持アーム3aの先端が下方へ回動し、これに伴って前下方へ移動した接触アームスイッチ41Tと接触することで、アームスイッチ41Tを支持するスイッチアーム41が回動して接触・作動状態S2となり、プロセスバルブ4が閉状態から一時的に開状態に切り替えられる。
【0019】
(タイン1)
タイン1は図2,図3,図4に示す円柱棒状の外形からなり、中空タインは前記各図に加えてさらに図1,図4,図5に示す噴出口、下面キャップ及び筒状の軸断面構成を有する。タイン1の上部には中央細径部1b及び係止溝1cを有した取り付け部11が形成され、その直下に前方位置を示す矩形窪み1dが形成される。矩形窪み1dは取り付け位相を確認する際に用いると共に、取り付け部の回転防止用の押さえ具(図示せず)に嵌め込み支持される。タイン下端は前下方を向く傾斜面12からなるカット面が形成されてなり、地表への小面積接触部から地中進行の断面積が徐々に大きくなる形状をもって、先端の突き刺しによる穿穴を効率的に行うものとしている。なおタインユニットの構造上、穿穴時には図10に示すように、傾斜面12の耐水平傾斜角度が大きくなるようにやや斜めに突き刺さることとなり、この突き刺し状態から角度を変えながら地表へ向かう湾曲穴路を介して抜き出るため、穴径を大きくすることなくエアレーションの通気量を増やし、効率的にエアレーションを行うことができる。以上の構成は非中空タイン、中空タインのいずれにも共通する。
【0020】
そして中空タインにおいては特に、棒状の軸方向に沿って中空部1aが貫通形成され、傾斜面12を貫通する下端を下面キャップ1eで閉塞している。この下面キャップ1eの上部近傍であって筒体下部に、内部の中空部と連通する左右一対の噴出口1hが両側方に形成される。なお他の形態として、噴出口1hの形成箇所を側方ではなく斜め方向または前後方に対形成することができる。またタインの周方向への形成個数を増やして放射状に配置することで、あるいは軸方向の形成個数を増やして縦方向に列設することで、各噴出口1hからの噴出量を小さくし、代わりに噴出範囲を広げることができる。複数本の中空タインを用いる場合、複数種類の噴出孔1h形成態様の中空タインを組み合わせて使用することもできる。
【0021】
また噴出口1hは、砂や土が逆流して詰まるのを防ぐため、中空部と連通する水平の連通路によって形成される。噴出口1hの詰まりをより効果的に防ぐとともに地表へ連通するエアレーションを効率的に行うため、噴出口1hに向かって斜め上方に穿孔された斜め上向きの連通路によって形成されてもよい。或いは逆に、噴出流体を地中深くまで到達させるべく、噴出口1hに向かって斜め下方に穿孔された斜め下向きの連通路によって形成されるものとしてもよい。薬剤散布等の場合は斜め下向きの連通路によって形成されることが好ましい。
【0022】
(タインユニット)
ひとつのタイン支持部2に併設支持される複数本のタイン1が幅方向に列状支持されることでひとつのタインユニットを構成する。タインユニットは可動アーム3aによって上下往復可動し得るものであり、可動量は可動アーム3aに上方連結されたクランクアーム33によって制御される。タイン1はタイン支持部2に複数本(実施例では3本)が、走行体TRの進行方向と交わる方向に一列に併設支持される。このひとつのタイン支持部2における複数本のタイン1のうち、少なくとも両端を除く中央寄りのタイン(中央の一本)は、中空部1aの両側部に連通した噴出口1hを有する中空タインからなり、タイン支持部2よりも両側方へ流体を噴出し得ることが好ましい。
【0023】
実施例では3本のタインがすべて、中空部1aの両側部に連通した噴出口1hを有する中空タインからなり、各中空タイン全てがタイン支持部2よりも両側方へ流体を噴出するものとなっている。このとき3本のタインのうち両端の中空タインの噴出口1hを、中央寄りの中空タインの噴出口1hよりも高い位置に設けることで、中央で地中のより深部に深く噴出すると共に両側部でやや浅部に広く噴出することも可能である。噴出口1hの高低は中央部と両端寄りで逆の関係にしてもよいし、複数本すべてで異なる高さにしてもよい。またタインの軸周りの取り付け位相を右廻り寄り、又は左回り寄りに調整することで、少なくともいずれかの中空タインの噴出口1hの噴出方向を真横ではなく斜め方向に設定してもよい。これにより、走行体TRの直進方向と直交する方向以外に広く噴出流体を散布することができる。
【0024】
(収納枠8)
収納枠8は、幅方向に併設された複数のタインユニット及び可動アーム3aの全体を、両側方の側枠板83及び上方の後ろカバー81付きの上部板によって三方から囲う箱形枠体であり、上部板の前方に走行体TRとの接続機構を有する。具体的には、各可動アーム3aの関節部をアーム支持枠35で上方から支持すると共に、可動アーム3aの先端側を角度可変可能に上方支持するクランクアーム33を、一端が回転軸固定さえたクランクロッド34を介して支持する。そして、幅方向中央の回転動力部36から幅方向両側に軸通し、この軸周りにクランクロッド34とアーム支持枠35とを複数本ずつ、交互に連接してなる。このとき、各クランクアーム33の位相を隣り合う順に等量ずつ変えた状態で軸周りに固定する。またアーム支持枠35は非回転の固定枠として、軸と非接触で枠構成する。後ろカバー82の中央には、駆動軸の駆動回転数を調節する調節レバー82が貫通突出してなり、走行速度に応じて調節レバー82を手動または自動で調節し得る。
【0025】
側枠板84の下部には走行ローラーを吊り下げるための切り欠き部が形成され、切り欠き部内に吊り下げたアームを介して前方底板61が固定され、この前方底板61にによって、前方走行ローラーが固定される。側方へはこの底板61を固定するローラーアーム固定レバー84が側方へ突出形成される。底板61からはL型アングル51を介して棒状のドグ5が複数本立設固定される。
【0026】
後方走行ローラーのアームを吊り下げるローラーーアーム92はローラーを側方支持する支持枠91を吊設し、左右の支持枠の先に後ろの走行ローラー9Rが軸回転可能に取り付けられる。
【0027】

クランクロッド34は、基端部が駆動軸に接続され、駆動軸に対して垂直に伸長する棒状のロッド体からなり、駆動軸の回転と共に先端部が回転し得る。このクランクロッド34は駆動軸の軸方向に沿って複数本が位相を変えながら軸連結され、このクランクロッド34の先端に、クランクアーム33の上端が回動可能に接続される。クランクアームの下端は可動アーム3aの先端部付近を上部から吊設支持しており、可動アーム3aの対水平角度を規制する。
【0028】
クランクロッド34の駆動軸周りの回転によってクランクアーム33が各位相からクランク運動を起こし、クランク運動によってタイン支持部2の支持位置を上下に往復制動することとなる。クランクアーム33は可動アームの先端付近の上部に回動可能に接続され、後方基端側の回転軸による関節部を中心とした回動角度が規制される。
【0029】
(地中穿穴装置(エアレーター)付き走行体)
本発明の地中穿穴装置(エアレーター)付き走行体Tは、図7に示すように前記いずれか記載の地中穿穴装置が装置自体の走行ローラー9を有し、乗用の走行機の進行方向前方または後方に取り付けられて従走する走行体TRであって、流体送出機構として、連通管42と連通したコンプレッサー及びコンプレッサーの電源ユニットが走行機に車載される。コンプレッサーの電源ユニットとして走行体TRに走行用として搭載された走行エンジンユニットあるいはバッテリーを用いることで、走行エンジンの出力の低い時に余能力分の出力を流体の加圧送出に回すことで、効率的な運転作業が可能となる。
【0030】
実施例において、前記地中穿穴装置(エアレーター)を、走行体TRたる芝刈り機の進行方向後方に取り付けて追従走行体TRとして使用する。そして基本的には、芝刈り機の後方に少なくとも一つ或いは複数個が配設され、芝草との接触によって自由回転する前ローラー及び後ろの走行ローラー9Rと、芝刈り機との所定以上の距離を保ちながらそれ自体の先端で収容枠8を保持するアームとを具備する。具体的には、図9或いは図10の様に、ローラー1部が芝生に接触するように芝刈り機の前方或いは斜め前方へ取り付けて使用する。
【0031】
左右の側枠板83で挟まれた収容枠8内には、幅方向の軸心方向に沿って所定の間隔をおいて複数のクランクロッド34とアーム支持枠35とが交互に装着され、幅方向中央の駆動部36から回転駆動力が伝達されることで、アーム支持枠に挟まれたクランクロッドが回転し、クランクロッドの先端に回動可能に連結されたクランクアーム33がクランク運動を開始する。可動アーム3aを一対一対応で支持する各クランクアーム33の先端が、隣設ユニット間で位相を異にしたクランクロッド34の回転に伴ってクランク運動することで、複数のタインユニットの可動アーム3aが、順次上下方向に往復動することにより、各タイン支持部2の下方に列設されたタイン1により複数個ずつ地中を穿穴する。
【0032】
上記構成による地中穿穴装置によれば、タインユニットが最下点に来たときに、走行体TRに取り付けられたコンプレッサーから加圧空気が供給され、中空タインの先端部に噴出口から圧縮空気が噴出される。噴出タイミングを支持アーム3aの角度に基づいて制御することで、確実に地中へ圧縮空気を噴出することができる。
【0033】
また、穿穴径を不要に大きくすることなく小さい穴径を保ったまま、地中の広面積に新鮮な空気をいきわたらせ、特に芝の固結も改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
このようにして得られた各実施例のエアレーター及びこれを備えた芝刈り機は、芝生内に穿穴して芝の根部分に新鮮空気を供給して根腐れを防ぐエアレーション作業として、特にゴルフ場のグリーンをはじめとする芝生において、芝の質を維持向上させるために好適に用いられる。その他の状況でシード散布機と共に使用することで種まき用の穿穴として使用したり、エアレーションと共に行う地表及び地中への水撒きや薬剤散布、或いは、エアレーションを行わない地中への薬剤または水の抽液作業に用いることができる。また走行体TRたる芝刈り機は、乗用型か非乗用型か、或いは車輪の数を問わず採用される。
【符号の説明】
【0035】
1 タイン
1a 中空部
1h 噴出孔
2 タイン支持部
3a 可動アーム
33 クランクアーム
42 連通管
41T アームスイッチ
4 プロセスバルブ
5 ドグ
62d 切欠き部
62 押さえ板
7 コンプレッサー
8 収納枠
9 走行ローラー
TR 走行体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体(TR)に設けられる地中穿穴装置であって、
下端が地面に突き刺さって穿穴する棒体からなるタイン(1)と、タイン(1)を複数本ずつ併設させて上部支持する複数のタイン支持部(2)と、一または複数個ずつのタイン支持部(2)を、タイン(1)先端が常に下方を向くように上部支持し、基端側の回動軸周りに回動し得る複数の可動アーム(3a)と、クランク機構によって各可動アーム(3a)の先端側を角度可変可能に支持し、クランク動によってタイン支持部(2)の支持位置を上下に往復制動するクランクアーム(33)と、複数の可動アーム(3a)およびクランクアーム(33)を幅方向に連接して収納すると共に、走行体(TR)への取り付け機構を有した収納枠(8)とを具備してなり、
前記複数のタイン(1)のうち少なくともいずれかは、棒体内に中空部(1a)を有すると共にこの中空部(1a)と連通する噴出口(1h)が棒体の下端付近に形成された中空タインからなり、さらに、中空タインの中空部(1a)と流体連通した連通管(42)と、この連通管(42)を介して中空タインの中空部(1a)内へ加圧流体を送り込む流体送出機構とを具備し、流体送出機構は、中空タインを含むタイン支持部(2)を支持する可動アーム(3a)が所定の対水平角度以下となったときにのみ加圧流体を送出することで、中空タインの噴出口(1h)が地中でのみ流体を噴出することを特徴とする地中穿穴装置。
【請求項2】
タイン(1)の突き刺し位置にそれぞれ櫛状の切欠き部(62d)を有して地表面に近接配置された押さえ板(62)を配設してなり、
前記流体送出機構は、可動アーム(3a)の対水平角度が所定以下となり、かつ中空タインの噴出口(1h)が押さえ板(62)よりも下方に位置するときにのみ、流体を中空タインへ送出する請求項1記載の地中穿穴装置。
【請求項3】
流体送出機構は、可動アーム(3a)の端部または端部近傍にて回動可能に設けられた接触式のアームスイッチ(41T)と、連通管(42)に介在し、アームスイッチ(41T)の入/切に応じて連通管と連通形成されて流体の送出有無を切り替えるプロセスバルブ(4)と、アームスイッチ(41T)と接触可能な非可動位置に固定されたドグ(5)とを有してなり、
アームスイッチ(41T)と接触/非接触状態にあるドグ(5)が、可動アーム(3a)の可動によってアームスイッチ(41T)に対し非接触/接触状態となることで、プロセスバルブ(4)が閉状態から一時的に開状態に切り替えられる請求項1または2記載の地中穿穴装置。
【請求項4】
タイン支持部(2)に併設支持される複数本のタイン(1)のうち両端を除く中央寄りのタインは、中空部(1a)の両側部に連通した噴出口(1h)を有する中空タインからなり、タイン支持部(2)よりも両側方へ流体を噴出し得る請求項1または2記載の地中穿穴装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載の地中穿穴装置が装置自体の走行ローラー(9)を有し、乗用の走行体(TR)の進行方向前方または後方に取り付けられて従走する地中穿穴装置付き走行体であって、流体送出機構として、連通管(42)と連通したコンプレッサー(7)及びコンプレッサーの可動電源ユニットが走行体(TR)に車載されることを特徴とする地中穿穴装置付き走行体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249552(P2012−249552A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122985(P2011−122985)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月23日 有限会社ヤブタの代表取締役薮田定一が 千葉県千葉市花見川区横戸町1501 社団法人鷹之台カンツリー倶楽部18番ホール横PGにおいて「エアレーション用アタッチメントの性能確認試験」を行う
【出願人】(599157930)有限会社 ヤブタ (6)
【Fターム(参考)】