説明

地域冷暖房装置の運転方法および装置

【目的】 冷暖房負荷の変動を精度よく予測し、地域冷房装置の省エネルギ化と省力化を図る。
【構成】 複数日にわたって負荷の変化パターンを求めて正規化する(a2)。天気予報値から日平均気温Tavおよび日平均絶対湿度Aavを予測し、(a3)、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBを予測する(a4)。正規化された過去の変化パターンとQPおよびQBとに基づいて、翌日の負荷の変化パターンを予測し(a5)、翌日のための冷暖房装置の運転計画を決定する(a6,a7,a8)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一定地域内の建物全ての冷房および暖房や、給湯などを1個所の熱発生施設でまかなう地域冷暖房装置の運転方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、地域冷暖房装置は、エネルギ効率がよく、公害や都市災害の防止に役立ち、都市景観の向上に貢献するなどの多くの利点を備えているので、都市再開発やいわゆるウォーターフロント開発などで積極的に導入されている。地域冷暖房システムには、蓄熱設備が含まれ、夜間の安価な電力を利用して昼間のピーク負荷時に必要な熱あるいは冷熱を蓄え、冷暖房機の能力を補うようにしている。このようにすると、冷暖房機の能力は必ずしも予想される最大負荷までは必要でなく、地域冷暖房装置の総合的な経済性が向上する。
【0003】しかしながら、蓄熱設備を含む蓄熱冷暖房装置を効率的に運転するには、翌日の負荷の変化パターンを予測し、深夜電力を利用して予測される熱あるいは冷熱を蓄えておく必要がある。蓄えられた熱あるいは冷熱の量が不足すると、昼間にも冷暖房機を運転する必要があり、エネルギコストが上昇する。また蓄えられた熱あるいは冷熱が過剰であると、過剰分の発生に要したエネルギが無駄になる。特に冷熱に関しては、氷蓄熱槽などの特性によって氷はその日のうちに一旦全部融かしてしまうことが必要であり、過剰な冷熱は蓄熱能力の低下を招く。
【0004】以上のように、地域冷暖房システムを効率的に運用するためには、1日の負荷の変化パターンを精度良く予測することが必要である。そのような予測を行う典型的な先行技術は、たとえば特開平4−347439号公報に開示されている。また技術文献として、「花の万博会場における地域冷房のカルマンフィルタによる予測制御」(空気調和・衛生工学 第65巻第12号 平成3年11月発行第49頁〜第55頁)が存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来からの負荷の変化パターンの予測方法は、まだ系統的でかつ実用的な方法とは言えず、地域冷暖房装置を操作するオペレータの経験と勘に頼らざるを得ない。たとえば特開平4−347439号公報の先行技術では、日間負荷パターンの予測について具体的な方法が不明である。また前述の技術文献では、4つの気象変量を因子とする1時間毎の予測モデルを設定し、カルマンフィルタで係数を推定しているので、1日には24の予測モデルが必要となり、計算量が多く、かつ春、秋の季節変化時期の追従性が遅れるなどの課題がある。このため、オペレータがたとえば1週間前の日間負荷パターンを参考に、1日の日間負荷パターンを予測するなどの方法がとられることになる。このため、蓄熱設備や冷暖房機などの熱源機の運転計画も、ある程度の余裕を見込んだものとなり、エネルギ損失が大きくなる。
【0006】本発明の目的は、系統的で実用的な自動予測が可能な地域冷暖房設備の運転方法および装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、過去の複数日にわたって、時間経過に伴う負荷の変化パターンを求めて正規化し、翌日の日最大負荷QPと、日最小負荷QBとを予測し、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBと正規化された変化パターンとから翌日の負荷の変化パターンを予測し、予測された負荷の変化パターンに基づいて熱源機を運転することを特徴とする地域冷暖房装置の運転方法である。
【0008】また本発明は、前記日最大負荷QPおよび日最小負荷QBは、平均気温Tavと、平均絶対湿度Aavとから求めることを特徴とする。
【0009】また本発明は、特定曜日の日最大負荷QPおよび日最小負荷QBを、前記特定曜日以外の日を対象とする予測方法により求め、この予測値に特定曜日の前記特定曜日以外の日に対する比率を乗じて求めることを特徴とする。
【0010】また本発明は、過去の複数日にわたる負荷の変化データが記憶されている記憶手段と、平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavを入力する入力手段と、記憶手段および入力手段からの出力に応答して、負荷の変化データから時間経過に伴う正規化された変化パターンを算出し、平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavに基づいて日最大負荷QPおよび日最小負荷QBを算出し、正規化された変化パターン、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBから翌日の負荷の変化パターンを算出する演算手段と、演算手段からの出力に応答し、算出された負荷の変化パターンに基づいて熱源機を運転する制御手段とを含むことを特徴とする地域冷暖房装置の運転装置である。
【0011】
【作用】本発明に従えば、過去の複数日にわたって求められる時間経過に伴う負荷の変化パターンが正規化され、予測された翌日の日最大負荷QPと、日最小負荷QBを用いて翌日の負荷の変化パターンが予測される。過去の実績に従って求められる負荷の変化パターンと、予測される翌日の日最大負荷QPおよび日最小負荷QBとに従って翌日の負荷の変化パターンを予測するので、系統的かつ実用的な予測を行うことができる。予測に基づいて熱源機を運転するときの運転計画も、余裕を多く見込む必要はないので、地域冷暖房装置を経済的に運転することができる。
【0012】また本発明に従えば、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBは、平均気温Tavと平均絶対湿度Aavとから求めるので、春や秋など、季節変化に伴って気温や湿度が変化し易い時期であっても、追従性良く熱源機を運転することができる。
【0013】また本発明に従えば、たとえば土曜日、日曜日および祝祭日などの特定曜日の日最大負荷QPおよび日最小負荷QBは、前記特定曜日以外の日、たとえば平日を対象にして予測し、その予測値QP,QBに、特定曜日の特定曜日以外の日に対する比率を乗じて求められる。これによって特定曜日が土曜日、日曜日および祝祭日などのように実績日が少なく、したがって実績データが少ない曜日であっても、正確で信頼性の高い負荷の予測を行うことができる。
【0014】また本発明に従えば、演算手段は、記憶手段に記憶されている過去の複数日にわたる負荷の変化データから時間経過に伴う正規化された変化パターンを算出する。また入力手段に入力された平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavに基づいて、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBを算出する。制御手段は、演算手段によって正規化された変化パターンと、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBから算出される翌日の負荷の変化パターンとに基づいて、熱源機を運転する。負荷の変化パターンが系統的かつ実用的に算出され、それに基づいて熱源機の運転が行われるので、効率的な運転が可能である。さらに、春や秋などの季節変化時でも、平均温度Tavや平均絶対湿度Aavを用いて負荷の変化パターンが予測されているので、熱源機を追従性良く運転することができる。
【0015】
【実施例】図1は、本発明の一実施例による地域冷暖房設備の運転装置の構成を示す。地域の需要家側にある冷暖房負荷1の運転を制御するため、環境変量入力装置2、計算機3および記録装置4を含む運転装置が使用される。この運転装置は、冷温水機11〜1m(以下、総称するときは参照符10で示す)、および蓄熱設備21〜2n(総称するときは参照符20で示す)などを含む冷凍機の運転状態を制御する。
【0016】環境変量入力装置には、冷凍機から冷暖房負荷1に送る送水温度、冷暖房負荷1から冷凍機に戻る還水温度、これらの流量、大気温度および絶対湿度が環境変量として入力される。さらに天気予報から予想最高気温、予想最低気温、場合によっては予想平均絶対湿度なども入力される。環境変量入力装置2からの出力は、計算機3内の負荷演算部31に与えられる。負荷演算部31には、冷暖房負荷1の冷房負荷実測値も与えられる。このような負荷実測手段である負荷演算部31からの出力は、データ記憶部32に与えられて記憶される。負荷予測部33は、データ記憶部32に記憶されたデータと、記憶装置4に記憶されている日間予測パターンや日間予測パターンに対する実測パターンの変動を表す関係式などに基づいて、負荷予測値を算出し、制御部34に与える。制御部34は、与えられた負荷予測値に基づいて、冷凍機の運転状態を制御する。
【0017】図2は、図1に示す実施例を用いた地域冷暖房システムの構成を示す。この地域冷暖房システムにおいては、エネルギプラント40で地域冷暖房に必要な熱および冷熱を集中的に発生し、さらに発電も行って、コ・ジェネレーションシステムとしてエネルギの有効利用を図る。エネルギ源の1つは商用電力41であり、これによって付勢されるモータ42がターボ冷凍機43を駆動する。ターボ冷凍機43は、安定した負荷条件で運転するのに適しており、氷蓄熱槽44内に冷熱を蓄積するために運転される。冷水ポンプ45,46の出力は、冷水管47に接続される。地域冷房に使用された還り冷水は、還り冷水管48で戻される。これらの冷水管47および還り冷水管48は、地域配管49として、エネルギプラント40と冷暖房地域50との間を結ぶ。エネルギプラント40のエネルギ源としては、都市ガス51も使用される。都市ガス51は、ガスタービン52に使用され、発電機53を駆動する。発電機53からの電力は、前述のモータ42、冷水ポンプ45,46を駆動するために使用される。余分の電力は、商用電力41側に売却することもある。ガスタービン52からの排ガスは、排ガスボイラ54に導かれて、排熱を利用して蒸気を発生させる。都市ガス51を燃焼させて直接蒸気を発生させる蒸気ボイラ55も設けられる。排熱ボイラ54および蒸気ボイラ55から発生する蒸気は、蒸気管56に導出される。蒸気管56は、地域配管49内に含まれ、冷暖房地域50を暖房するために使用される。暖房に使用された蒸気は、水に還り、還水管57を介して戻される。排熱ボイラ54および蒸気ボイラ55から発生する蒸気を利用して、吸収式冷凍機58が作動する。排熱ボイラ54、蒸気ボイラ55および吸収式冷凍機58は、冷温水機10を構成する。モータ42、ターボ冷凍機43および氷蓄熱槽44は、蓄熱設備20を構成する。冷水管47の温度T1と、還り冷水管48の温度T2を用いると、冷房負荷Qを次の第1式によって求めることができる。
【0018】
Q = F(T2−T1) …(1)
ここでFは冷水の流量に比例する係数である。暖房負荷は蒸気管56から冷暖房地域50に供給される蒸気量に比例して求められる。この暖房負荷と冷房負荷Qとの和が地域冷暖房設備の負荷となる。
【0019】図3は、冷房負荷Qの日間変動パターンを示す。本実施例では、日間変動を時刻t1以前および時刻t4以降の夜間ベース区間、時刻t1から時刻t2までの負荷上昇区間、時刻t2から時刻t3までのピーク区間、時刻t3から時刻t4までの負荷下降区間の4区間に分割し、各区間毎に予測方式を変更する。負荷上昇区間および負荷下降区間では、予め計算済みの日間負荷変動パターン予測値による一定期間予測値に、当日の成り行き変動分を、上記パターン予測値と実測値との差を三重指数平滑して計算し、補正する。夜間ベース区間およびピーク区間では、上記パターン予測値と、気温や湿度などの環境変量による補正とを、三重指数平滑に組み合わせて予測する。夕方の負荷下降直前に日間負荷変動パターン予測値を、当日の日最大負荷実績値および日最小負荷実績値を用いて修正し、これを負荷下降区間による予測に使用する。三重指数平滑とは、対象時系列データが2次式(a+bt+1/2ct2)状に変化すると仮定し、データの3次までの指数平滑値によってa,b,cを逐次計算し、この2次式を使って予測する手法である。
【0020】図4は図1に示す実施例による負荷の予測動作を示し、図5は過去複数日にわたって正規化された負荷の変化パターンを平滑化する方法を示す。特に図3に示すように、負荷変化パターンは、負荷上昇区間、ピーク区間、負荷下降区間および夜間ベース区間に分けられる。ピーク区間と夜間ベース区間とでは、商業施設やオフィスビルが営業中あるいは閉店中であり、人間の活動がほぼ安定しているため、気温や湿度などの気象条件の要因の影響が大きい。日最大負荷は、平日と特定曜日である土曜日や日曜日あるいは祝祭日とでは、同じ気象条件下でも平日>土曜日>日曜日と差がある。土曜日、日曜日および祝祭日にはオフィスビルなどが休業しているからである。
【0021】以上のような前提のもとに、図4のステップa1から動作を開始し、ステップa2では、過去の変化パターンを正規化する。図1に示す記憶装置4には、過去の複数日、たとえば3週間分の負荷データが記憶されている。図1の負荷予測部33は、次の第2式に示すような演算によって負荷の変化パターンを0%〜100%の範囲に正規化する。
【0022】
【数1】


【0023】ここで、xwk.jは、w週間前のj曜日のk時点での正規化負荷比率〔%〕であり、qwk.jは、w週間前のj曜日のk時点での負荷実績値であり、qwmax.jは、w週間前のj曜日の日最大負荷実績値であり、qwmin.jは、w週間前のj曜日の日最小負荷実績値である。第2式で求められた結果、配分パターンは、たとえば1時間の区間にわたって、第3式に示すように移動平均処理され、蓄積される。
【0024】
【数2】


【0025】ここで、rwk.jは、w週間前のj曜日のk時点での正規化負荷配分率であり、Nは、移動平均区間内の時点の数である。前述のように、移動平均区間を1時間にとり、k時点を5分毎にとれば、N=12となる。
【0026】ステップa3では、平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavを予測する。これらの値は、天気予報から得られる翌日の日最高気温Tmaxおよび日最低気温Tminから次の第4式および第5式に従ってそれぞれ予測される。
【0027】
Tav=α(Tmax−Tmin)+Tmin …(4)
Aav=β1Tmin+β2 …(5)
日最高気温Tmaxおよび日最低気温Tminは、たとえば午後9時の天気予報から得られる。αは、過去の実績データによって定められ、たとえば1976〜1985年の大阪の日間気温の荷重平均係数として、α=0.465が求められる。日平均絶対湿度Aavは、日最低気温Tminと相関関係があると推定されるので、月毎に設定される係数β1,β2を用いて予測する。
【0028】ステップa4では、次の第6式および第7式に示すような予測モデルに従って、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBをそれぞれ予測する。
【0029】
P=a1Tav+a2Aav+a3 …(6)
B=b1Tav+b2Aav+b3 …(7)
1,a2,a3;b1,b2,b3はそれぞれモデルパラメータを表し、最小二乗法計算によって逐次更新する。逐次最小二乗法計算の計算時間を少なくするためには、カルマンフィルタを用いることが好ましい。
【0030】これらの予測値QP,QBは、平日に対応し、土曜日、日曜日および祝祭日などの休日の日最大負荷予測値QPおよび日最大負荷予測値QBは、平日の予測値QP,QB に指数平滑した対平均負荷比率ηijを乗算して求める。これらの対平日負荷比率ηijは、負荷変化に適応できるように、土曜日、日曜日、および祝祭日の終了時に、それぞれ当日の日最大負荷実績値qWmax.jと、平日の日最大負荷予測モデルに当日の平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavを使って得られる日最大負荷実績値qw'max.jとの比率ηij′(=qwmax.j/qw'max.j)を求め、この比率ηij′を指数平滑によって週毎に更新する。すなわち、更新後の指数平滑値ηijは、次式によって求められる。
【0031】
ηij = ηij+ε・(ηij′−ηij) …(8)
ここで、係数εは、0<ε≦1である。またηijについては、i=1のとき日最大負荷用、i=2のとき日最小負荷用であり、j=1のとき土曜日用、j=2のとき日曜日(祝祭日を含む)用とする。
【0032】このようにして指数平滑された比率ηを、上述した第6式および第7式の日最大負荷予測値QPおよび日最小負荷予測値QBに乗ずることによって、特定曜日である土曜日、日曜日および祝祭日の日最大負荷予測値および日最小負荷予測値を求めることができる。
【0033】ステップa5では、翌日の変化パターンを予測する。このため、図5に示すように、平滑処理を施した過去3週間内の同一曜日の負荷パターンを平均化する。すなわち図5(1),(2),(3)に示すように、3,2,1週間前のj曜日のk時点での正規化負荷配分率r3k.j,r2k.j,r1k.jを平均して、図5(4)に示すようなj曜日のk時点の負荷配分率fj (k)の変化パターンを得る。このような計算は、次の第9式に従って行われる。
【0034】
【数3】


【0035】ここで、mwは、次の第10式の条件を満たす係数である。
【0036】
【数4】


【0037】ここで、0≦mw ≦1である。
【0038】j曜日が平日であっても、w週間(1≦w≦3)前に祝祭日があれば、該当する係数をmw =0とし、他の係数mw が第9式および第10式を満足するように調整する。このようにして求めた図5(4)に示すような日間負荷配分パターンのピーク区間に、日最大負荷予測値QPを適用し、夜間ベース区間に日最小負荷予測値QBを適用して、次の第11式に示すような翌日の負荷変化パターンを予測する。
【0039】
n=0.01・fj(n)・(QP−QB)+QB …(11)
ステップa6では、求められた翌日の変化パターン予測値に基づいて、夜間の蓄熱量を算出する。この算出値に基づいて、夜間の安価な電力を利用し、蓄熱設備に熱または冷熱を蓄熱する。
【0040】次にステップa7では、予測された負荷の変化パターンに基づき、熱源機器の発停スケジュールを決定する。予測される負荷の変化パターンには、予測誤差が避けられないため、発停スケジュールは負荷の余裕を見て安全側に計画する。しかしながら、翌日の変化パターンが系統的かつ実用的に予測されるので、オペレータの経験や勘に頼る場合よりも余裕を小さくして省エネルギ化を図ることができる。
【0041】次にステップa8では、蓄熱設備からの放熱スケジュールを決定する。氷蓄熱層を利用するときには、蓄熱開始時点までに前夜の蓄熱量は全部放熱する必要がある。熱あるいは冷熱の需要が予測を上回るようなときには、熱源機器を追起動して対応する。ステップa9で動作を終了する。
【0042】吸収式冷凍機を冷房に使用するときには、起動に30分程度の時間がかかる。ステップa7では、たとえば30分先の負荷の予測に基づいて、冷凍機の発停のタイミングを決める。
【0043】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、過去の複数日にわたって時間経過に伴う負荷の変化パターンを求めてから正規化するので、データのサンプル数が多くなり、データをサンプリングした特定の日の負荷変動が平滑化され、系統的かつ実用的に負荷の変化パターンを求めることができる。熱源機を運転する日に特有な条件は、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBの予測値に反映させることができるので、予測された負荷の変化パターンの精度は向上する。負荷の変化パターンの予測精度が向上するので、熱源機の運転計画に見込む余裕も少なくてよく、エネルギ効率や経済性が向上する。
【0044】また本発明によれば、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBに、平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavを反映させることができるので、春や秋などの季節変化時の追従性を良好にすることができる。
【0045】また本発明によれば、特定曜日以外の日を対象にとして予測し、その予測値に特定曜日の特定曜日以外の日に対する比率を乗じて日最大負荷および日最小負荷を求めるようにしたので、たとえば土曜日、日曜日および祝祭日などのような平日に比べて実績日が少なく、信頼できる予測が困難である曜日に対しても、正確で信頼性の高い負荷の変化パターンを予測することができる。
【0046】また本発明によれば、時間経過に伴う正規化された負荷の変化パターンは、過去の複数日にわたる負荷の変化データから算出されるので、データをサンプリングした日に特有の条件は平滑化され、負荷の変化パターンへの影響は少なくなる。このようにして算出された負荷の変化パターンと、平均気温Tavおよび平均湿度Aavに基づいて算出された日最大負荷QPおよび日最小負荷QBとから翌日の負荷の変化パターンを算出するので、春や秋などの季節変化時期であっても追従性良く熱源機を運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す実施例を用いる地域冷暖房システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】典型的な1日の負荷の変化パターンを示すグラフである。
【図4】図1の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図5】過去の負荷変化パターンから翌日の負荷変化パターンを予測する過程を示すグラフである。
【符号の説明】
1 冷暖房負荷
2 環境変量入力装置
3 計算機
4 記憶装置
10,11〜1m 冷温水機
20,21〜2n 蓄熱設備
31 負荷演算部
32 データ記憶部
33 負荷予測部
34 制御部
40 エネルギプラント
42 モータ
43 ターボ冷凍機
44 氷蓄熱槽
47 冷水管
48 還り冷水管
50 冷暖房地域
52 ガスタービン
53 発電機
54 排熱ボイラ
55 蒸気ボイラ
58 吸収式冷凍機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 過去の複数日にわたって、時間経過に伴う負荷の変化パターンを求めて正規化し、翌日の日最大負荷QPと、日最小負荷QBとを予測し、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBと正規化された変化パターンとから翌日の負荷の変化パターンを予測し、予測された負荷の変化パターンに基づいて熱源機を運転することを特徴とする地域冷暖房装置の運転方法。
【請求項2】 前記日最大負荷QPおよび日最小負荷QBは、平均気温Tavと、平均絶対湿度Aavとから求めることを特徴とする請求項1に記載の地域冷暖房装置の運転方法。
【請求項3】 特定曜日の日最大負荷QPおよび日最小負荷QBを、前記特定曜日以外の日を対象とする予測方法により求め、この予測値に特定曜日の前記特定曜日以外の日に対する比率を乗じて求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地域冷暖房装置の運転方法。
【請求項4】 過去の複数日にわたる負荷の変化データが記憶されている記憶手段と、平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavを入力する入力手段と、記憶手段および入力手段からの出力に応答して、負荷の変化データから時間経過に伴う正規化された変化パターンを算出し、平均気温Tavおよび平均絶対湿度Aavに基づいて日最大負荷QPおよび日最小負荷QBを算出し、正規化された変化パターン、日最大負荷QPおよび日最小負荷QBから翌日の負荷の変化パターンを算出する演算手段と、演算手段からの出力に応答し、算出された負荷の変化パターンに基づいて熱源機を運転する制御手段とを含むことを特徴とする地域冷暖房装置の運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−43001
【公開日】平成7年(1995)2月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−186469
【出願日】平成5年(1993)7月28日
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)