説明

地盤変状防止方法

【課題】シールド機が土被り厚の小さい地山に進入する際や地山内から地上に近づくにつれて土被り厚が小さくなる際に、土被り部分の地盤の変状を防止する地盤変状防止方法を提供する。
【解決手段】上段のカッター部2及び下段のカッター部3のカッターヘッド10を回転駆動させ、滑材29をシールド機1と地山13との間に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤変状防止方法に関し、特に、シールド機を地上から発進させる際及び地上に到達させる際の土被り部分の地盤変状を防止するのに有効な地盤変状防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、カッター部が上段及び下段に分割されたシールド機を、その上段のカッター部を下段のカッター部よりも進行方向に突出させた状態で推進させる方法が開示されている。この方法は、下段のカッター部の上部が地表面よりも上に露出する程度の深さの立坑内にシールド機を傾斜させた状態で設置し、発進とともに、まず、下段のカッター部で立坑の土留め壁を掘削し、その後、上段及び下段のカッター部で地山を掘削しつつ、地山内を掘進する。
【特許文献1】特開2006−207141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載のシールド機の推進方法では、シールド機の上段のカッター部が地山内に進入する際の土被り厚はほとんど無い。このため、土被り部分の自重がシールド機の地山内への進入に伴って地山とシールド機との間に生じる摩擦力よりも小さくなり、シールド機の上段のカッター部が地山内に進入する際に、シールド機の進行方向に土被り部分が引っ張られて盛り上がり、地山を傷めてしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、シールド機が土被り厚の小さい地山に進入する際及び地山内から地上に近づくにつれて土被り厚が小さくなる際に、土被り部分の地盤の変状を防止する地盤変状防止方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明の地盤変状防止方法は、シールド機を地上から地山に進入させる際に土被り部分の地盤変状を防止するための地盤変状防止方法であって、シールド機の前部に、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部は、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されたシールド機を地上から発進させて地山に進入させる際に、前記シールド機の外周と地山との間に、両者間に生じる摩擦力を低減するための滑材を注入しながら、地山を掘削することを特徴とする(第1の発明)。
【0006】
本発明による地盤変状防止方法によれば、シールド機の外周と地山との間に滑材を注入することにより、シールド機が地山内に進入する際にシールド機の外周と地山との間に生じる摩擦力を低減することができるので、この摩擦力よりも土被り部分の自重が大きくなる。したがって、地上から発進させたシールド機を地山内に進入させる際に、土被り部分がシールド機の進行方向に引っ張られて盛り上がる等の地盤変状を防止することができる。
【0007】
第2の発明は、シールド機を地山内から地上に到達させる際に土被り部分の地盤変状を防止するための地盤変状防止方法であって、シールド機の前部に、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部は、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されたシールド機を地山内から地上に到達させる際に、地上に近づいたら前記シールド機の外周と地山との間に、両者間に生じる摩擦力を低減するための滑材の注入を開始し、前記滑材を注入しながら、前記シールド機を地上に到達させることを特徴とする。
【0008】
本発明による地盤変状防止方法によれば、シールド機の外周と地山との間に滑材を注入することにより、地山内のシールド機が地上に近づいた際にシールド機の外周と地山との間に生じる摩擦力を低減することができるので、この摩擦力よりも土被り部分の自重が大きくなる。したがって、シールド機を地山内から地上に到達させる際に、土被り部分がシールド機の進行方向に引っ張られて盛り上がる等の地盤変状を防止することができる。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記滑材は、ゲル状で可塑性を有し、シールド機推進後に設置されるセグメントの外周と地山との間に充填される裏込材と、化学的に反応しない材料又は反応しても有害ガスを発生しない材料とからなることを特徴とする。
【0010】
本発明による地盤変状防止方法によれば、滑材は、ゲル状で可塑性を有するために一般的な滑材よりも浸透性が小さく、かつ粘度が大きいために地山中への流出が少ない。
また、滑材を裏込材と混合しても有害ガスを発生しないために、トンネル内での作業を安全に実施することができる。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記滑材は前記裏込材に混合された場合にも、前記裏込材が所定の時間で所定の強度に達する性質を有することを特徴とする。
本発明による地盤変状防止方法によれば、滑材を裏込材と混合しても、裏込材は所定の時間で所定の強度に達するので、土被り部分の地盤変状を防止することができる。
【0012】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記滑材は、ベントナイト溶液に水ガラスを混合させてゲル化した材料であることを特徴とする。
本発明による地盤変状防止方法によれば、滑材としてベントナイト溶液に水ガラスを混合させたものを用いることにより、セグメントと地山との間の隙間、つまりテールボイドに充填される裏込材と混合しても、裏込材は所定の時間で所定の強度に達することができる。
【0013】
第6の発明は、第3又は第4の発明において、前記滑材は、吸水性ポリマーに水を混合させてゲル化した材料であることを特徴とする。
本発明による地盤変状防止方法によれば、滑材として吸水性ポリマーに水を混合させたものを用いることにより、セグメントと地山との間の隙間、つまりテールボイドに充填される裏込材と混合しても、裏込材は所定の時間で所定の強度に達することができる。
【0014】
第7の発明は、第1又は第2の発明において、前記土被り部分に地盤改良を施すことを特徴とする。
本発明による地盤変状防止方法によれば、土被り厚が小さい部分の地山を地盤改良により補強することができるので、土被り部分の地盤変状を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地盤変状防止方法によれば、シールド機が土被り厚の小さい地山に進入する際及び地山内から地上に近づくにつれて土被り厚が小さくなる際に、土被り部分の地盤の変状を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1及び図2は、それぞれ本発明の実施形態に係るシールド機1の正面図及び側断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、シールド機1は、互いに独立して駆動可能なカッター部2、3をそれぞれ上段及び下段に備えたフード部4と、シールド機1本体を推進させるためのシールドジャッキ5等を備えたガーダ部6と、セグメント7を組み立てるエレクタ8等を備えたテール部9とから構成されている。なお、本発明の説明に不要と思われる部分の図示は省略している。
【0018】
上段のカッター部2及び下段のカッター部3は、シールド機1本体の前面に設けられ、地山13を掘削するためのカッターヘッド10と、カッターヘッド10を回転させるための駆動源11とを備えており、各カッター部2、3は、それぞれ独立して駆動可能である。
【0019】
上段のカッター部2は、下段のカッター部3よりも進行方向に1.0mだけ突出するように固定配置されている。本実施形態においては、上段のカッター部2を下段のカッター部3よりも進行方向に1.0m突出させたが、突出する長さは、地質条件等により異なる値であって、設計等により現場毎に適宜決定される。
【0020】
各カッター部2、3は、それぞれ複数のカッターヘッド10を備えており、本実施形態においては、それぞれ3台ずつ設けた。なお、掘削対象断面の形状、大きさ等に応じて適宜のカッターヘッド10の数を変更する。
【0021】
ガーダ部6は、シールド機1本体を推進させるためのシールドジャッキ5と、各カッター部2、3で掘削した土砂を排出するためのスクリューコンベア12と、シールド機1の外周と地山13との間に滑材29を注入するためにガーダ部6を貫通する注入孔23と、一端が注入孔23に接続される注入管24と、この注入管24の他端に接続され、この注入管24及び注入孔23を介してシールド機1の外周と地山13との間に滑材29を供給する注入装置25と、注入孔23付近に設けられ、シールド機1の外周と地山13との間の圧力を測定する圧力計26とを備える。注入孔23はガーダ部6の上部に2箇所設けられる。
【0022】
テール部9は、シールド機1の外周と地山13との間に滑材29を注入するためにテール部9を貫通する注入孔27と、一端が注入孔27に接続され、他端が注入装置25に接続される注入管28と、注入孔27付近に設けられた圧力計26と、セグメント7を組み立てるためのエレクタ8とを備える。注入孔27はテール部9の上部に2箇所設けられる。
【0023】
エレクタ8により、テール部9内にて順次セグメント7が組み立てられ、セグメント7による環状の内壁が構築される。セグメント7を構築した後にシールド機1が推進すると、シールド機1の推進と同時にセグメント7と地山13との間にテールボイドが生じる。このテールボイドを放置するとセグメント7周辺部の地山13が緩み、地盤沈下が生じる可能性があるためにテールボイドに裏込材を注入して充填する。裏込材は、硬化時間の設定が可能で、早期強度が得られるものを用い、テール部9の前進と同時に注入する。
【0024】
滑材29は、一般的に、(1)シールド機1の通過後にテールボイドに充填される裏込材と混合しても化学的に反応しない又は反応しても有害ガスを発生しない性質と、(2)裏込材に混合された場合にも、裏込材が所定の時間で所定の強度に達する性質と、(3)シールド機1の外周と地山13との摩擦を低減するために摩擦係数が、滑材29を使用しない場合のシールド機1の外周と地山13との摩擦係数である、例えば、0.274よりも小さい性質と、(4)切羽面への回り込みを防止するために粘性が大きい性質と、(5)地山13への浸透を防止するために浸透性が小さい性質と、(6)練り置きをしたり、注入管24、28内に2〜3日間残置されたりするために、前述した(1)〜(5)の性質を長期間維持する性質とを有する材料であることが望ましい。
【0025】
図3は、滑材29として用い得る各種材料についての物性の試験結果を示す図である。図3に示した各種材料はすべて(1)の性質を有している。そこで、本実施形態においては、(2)の裏込材と混合されても短時間で強度が得られる性質を有することを最重要項目とし、次に(3)の摩擦係数が上述した0.274よりも小さい性質を有し、さらに、(4)の粘性が大きく、(5)浸透性が小さく、(6)前述した(1)〜(5)の性質を長期間維持する(図示せず)性質を有するNo.3のベントナイト溶液に水ガラスを混合させたゲル化した状態の滑材29、又はNo.4の吸水性ポリマーに水を混合させたゲル化した状態の滑材29を採用した。
【0026】
滑材29を注入する際は、注入圧が土被り圧よりやや高めの圧力となるように圧力計26にて確認しながら注入するとともに、地盤沈下計にて計測される地表面の変状に応じて適宜圧力を調整する。また、滑材29の注入量も同様に、地盤沈下計にて計測される地表面の変状に応じて適宜調整する。
【0027】
以下に、シールド機1の発進方法及び到達方法について説明する。本実施形態においては、図4に示すように、道路14をアンダーパスするトンネル22をシールド機1により掘削する場合のシールド機1の発進方法及び到達方法について説明する。
【0028】
図5は、シールド機1を発進させる発進位置18aに架台20及び反力壁21を設置した状態を示す側断面図である。
図5に示すように、地上のシールド機1を発進させる発進位置18aに掘削予定のトンネル22の傾斜角度に沿った架台20と、発進の際に反力を得るための反力壁21とを構築する。
【0029】
図6は、シールド機1を架台20上に設置した状態を示す側断面図である。
図6に示すように、シールド機1を架台20上に設置する。また、このシールド機1の後端と反力壁21との間にセグメント7を設置する。
【0030】
図7〜図9は、シールド機1の発進方法を示す図である。
図7に示すように、下段のカッター部3のカッターヘッド10を回転駆動させるとともに、シールドジャッキ5を伸張させることによりシールド機1本体を推進させる。そして、進行方向に位置する地表面を下段のカッター部3のカッターヘッド10で掘削しつつ、地山13内にシールド機1を進入させる。
【0031】
シールド機1の上段のカッター部2が地表面付近まで推進したら、図8に示すように、上段のカッター部2及び下段のカッター部3のカッターヘッド10を共に回転駆動させるとともに、シールドジャッキ5を伸張させることによりシールド機1本体を推進させる。そして、進行方向に位置する地表面を上段のカッター部2のカッターヘッド10で掘削すると同時に地山13を下段のカッター部3のカッターヘッド10で掘削し、地山13内にシールド機1を更に進入させる。
【0032】
地山13内にシールド機1を進入させる際の土被り部分の自重は、土被り厚が小さいのでシールド機1の地山13内への進入に伴って地山13とシールド機1との間に生じる摩擦力よりも小さい。したがって、シールド機1の上段のカッター部2が地山13内に進入する際に、シールド機1の進行方向に土被り部分が引っ張られて盛り上がる可能性がある。
【0033】
そこで、シールド機1の外周と地山13との間に生じる摩擦力を低減し、土被り部分の損傷を防止するために、上段のカッター部2が地山13に進入すると同時に、注入装置25から吐出される滑材29を注入管24及び注入孔23を介してシールド機1の外周と地山13との間に注入する。滑材29を注入する際は、注入圧を圧力計26にて常時監視し、注入装置25にて圧力を調整する。シールド機1は、シールド機1本体の上部に複数の注入孔23を有しており、これらの注入孔23からそれぞれ滑材29が注入されるために、シールド機1の全外周にわたって良好に滑材29の注入が行われる。
【0034】
そして、シールド機1を所定の距離だけ掘進させたら、上段のカッター部2及び下段のカッター部3のカッターヘッド10の回転を停止し、掘削を一旦停止する。
【0035】
次に、図9に示すように、シールドジャッキ5を収縮させて、テール部9とセグメント7との間に生じた空間に新たなセグメント7を構築する。
セグメント7構築後、シールド機1本体の進入時に注入された滑材29は、充填されてから、テール部9が前進するまでに2〜3時間が経過しており、滑材29が雨水により希釈されたり、地山13に混合して劣化する等により滑材29としての摩擦低減作用が低下している可能性がある。そこで、テール部9を前進させる際は、シールド機1本体を掘進させるときと同様に、注入装置25から吐出される滑材29を注入孔23、27を介してシールド機1の外周と地山13との間に注入し、シールド機1の外周と地山13との間に生じる摩擦を低減する。
【0036】
テール部9を前進させると、セグメント7と地山13との間にテールボイドが生じるために、テール部9の前進と同時にテールボイドに裏込材を注入して速やかに充填する。ここで、ベントナイト溶液に水ガラスを混合させたもの又は吸水性ポリマーに水を混合させたもの等の滑材29は、裏込材と混合しても化学反応を生じないために、テールボイドに充填される裏込材は所定の時間で所定の強度に達する。
【0037】
なお、裏込材の所定の時間及び所定の強度は、掘進速度等の現場状況により各現場にて決められるものであり、本実施形態においては、裏込め作業を終了してから次の掘削を開始するまでに要する時間、例えば、2.5時間内に地山相当の強度に達するように裏込材の成分を適宜調整する。
【0038】
そして、上述したように、上段のカッター部2及び下段のカッター部3のカッターヘッド10を回転駆動させ、滑材29をシールド機1と地山13との間に注入しつつ、シールドジャッキ5を伸張させることにより所定の距離だけ掘進してから、セグメント7を構築するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、地上の発進位置18aから発進しつつ、地山13内にシールド機1全体を進入させる。
【0039】
次に、シールド機1の到達予定位置18bへの到達方法について説明する。
図10は、シールド機1の到達予定位置18bに架台20を設置した状態を示す側断面図である。
図10に示すように、地上のシールド機1の到達予定位置18bに掘削予定のトンネル22の傾斜角度に沿った架台20を構築する。
【0040】
図11及び図12は、シールド機1の到達方法を示す図である。図11に示すように、地山13内から地上に近づく際は、上段のカッター部2及び下段のカッター部3のカッターヘッド10を回転駆動させるとともに、シールドジャッキ5を伸張させることによりシールド機1本体を推進させて、地山13を上段のカッター部2及び下段のカッター部3のカッターヘッド10で掘削する。
【0041】
シールド機1が地上に近づく際の土被り部分の自重は土被り厚が小さいので、地山13とシールド機1との間に生じる摩擦力よりも小さく、シールド機1の進行方向に土被り部分が引っ張られて盛り上がる可能性がある。
【0042】
そこで、シールド機1の外周と地山13との間に生じる摩擦力を低減し、土被り部分の損傷を防止するために、地山13内から地上に近づく際は、滑材29をシールド機1の外周と地山13との間に注入する。
【0043】
そして、シールド機1の上段のカッター部2が地表面を通過して地上に完全に露出したら、上段のカッター部2のカッターヘッド10を停止し、下段のカッター部3のカッターヘッド10のみを回転駆動させるとともに、シールドジャッキ5を伸張させることによりシールド機1本体を更に推進させる。
【0044】
そして、図12に示すように、シールド機1を架台20に沿って推進させて、上段のカッター部2及び下段のカッター部3が地表面を通過したら、両カッター部2、3のカッターヘッド10の回転を停止し、シールド機1を解体作業を行う所定の位置まで推進させる。
【0045】
上述した本実施形態における地盤変状防止方法によれば、シールド機1の外周と地山13との間に滑材29を注入することにより、シールド機1を地上から地山13内に進入させる際及び地山13内から地上に近づくにつれて土被り厚が小さくなる際にシールド機1の外周と地山13との間に生じる摩擦力を低減することができる。したがって、この摩擦力よりも土被り部分の自重が大きくなるので、土被り部分がシールド機1の進行方向に引っ張られて盛り上がる等の地盤変状を防止することができる。
【0046】
また、滑材29は、ゲル状で可塑性を有するために一般的な滑材29よりも浸透性が小さく、かつ粘度が大きいために地山13中への流出が少ない。
【0047】
そして、滑材29としてベントナイト溶液に水ガラスを混合させたもの又は吸水性ポリマーに水を混合させたものを用いることにより、セグメント7と地山13との間の隙間、つまりテールボイドに充填される裏込材と混合しても、裏込材は所定の時間で所定の強度に達することができる。また、これらの滑材29を裏込材と混合しても有害ガスを発生しないために、トンネル22内での作業環境を向上させることができる。
【0048】
なお、シールド機1を地上から地山13内に進入させる際及び地山13内から地上に近づくにつれて土被り厚が小さくなる際に、シールド機1と地山13との間に滑材29を注入する場合についてのみ説明したが、滑材29を注入するだけでなく更に、土被り部分に対して地盤改良を施して補強してもよく、その地盤改良方法としては、周知の薬液注入工法、高圧噴射攪拌工法(例えば、CJG工法(商品名):http://www.raito.co.jp/construction/ground/cjg.html)等の地盤改良方法を用いることができる。薬液としては、例えば、水ガラスと硬化剤とを組み合わせたものを使用することができ、薬液を土被り部分に注入して硬化させることにより補強する。土被り厚が小さい土被り部分を補強することにより、シールド機1を地上から地山13内に進入させる際及び地山13内から地上に近づくにつれて土被り厚が小さくなる際の土被り部分の地盤変状を確実に防止することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、注入孔23はガーダ部6の上部に2箇所ずつ、また、注入孔27はテール部9の上部に2箇所ずつ設けたが、これに限定されるものではなく、シールド機1の掘削断面規模に応じて注入孔23、27の数及び位置は適宜変更することが可能である。
【0050】
さらに、本実施形態においては、シールド機1に注入孔23、27のみを設けて滑材29を注入する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、注入孔23、27にチェックバルブ、リリーフバルブ等の可変圧力型バルブを用いて注入する方法を用いてもよい。
【0051】
なお、本実施形態においては、シールド機1を地上の発進位置18aから発進させて地上の到達予定位置18bに到達させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、地上の発進位置18aから発進させて縦坑に到達させる場合の地上発進時に適用したり、縦坑から発進させて地上の到達予定位置18bに到達させる場合の地上到達時に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るシールド機の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシールド機の側断面図である。
【図3】滑材として用い得る各種材料についての物性の試験結果を示す図である。
【図4】シールド機で掘削するトンネルの概略を示す側断面図である。
【図5】シールド機を発進させる発進位置に架台及び反力壁を設置した状態を示す側断面図である。
【図6】シールド機を架台上に設置した状態を示す側断面図である。
【図7】シールド機の発進方法を示す図である。
【図8】シールド機の発進方法を示す図である。
【図9】シールド機の発進方法を示す図である。
【図10】シールド機の到達予定位置に架台を設置した状態を示す側断面図である。
【図11】シールド機の到達方法を示す図である。
【図12】シールド機が地上に到達した状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 シールド機 2 上段のカッター部
3 下段のカッター部 4 フード部
5 シールドジャッキ 6 ガーダ部
7 セグメント 8 エレクタ
9 テール部 10 カッターヘッド
11 駆動源 12 スクリューコンベア
13 地山 14 道路
18a 発進位置 18b 到達予定位置
20 架台 21 反力壁
22 トンネル 23 注入孔
24 注入管 25 注入装置
26 圧力計 27 注入孔
28 注入管 29 滑材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機を地上から地山に進入させる際に土被り部分の地盤変状を防止するための地盤変状防止方法であって、
シールド機の前部に、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部は、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されたシールド機を地上から発進させて地山に進入させる際に、前記シールド機の外周と地山との間に、両者間に生じる摩擦力を低減するための滑材を注入しながら、地山を掘削することを特徴とする地盤変状防止方法。
【請求項2】
シールド機を地山内から地上に到達させる際に土被り部分の地盤変状を防止するための地盤変状防止方法であって、
シールド機の前部に、互いに独立して駆動可能なカッター部が上段及び下段に配置され、これら上段及び下段のカッター部は、上段のカッター部が下段のカッター部よりも進行方向に突出するように固定配置されたシールド機を地山内から地上に到達させる際に、地上に近づいたら前記シールド機の外周と地山との間に、両者間に生じる摩擦力を低減するための滑材の注入を開始し、
前記滑材を注入しながら、前記シールド機を地上に到達させることを特徴とする地盤変状防止方法。
【請求項3】
前記滑材は、ゲル状で可塑性を有し、シールド機推進後に設置されるセグメントの外周と地山との間に充填される裏込材と、化学的に反応しない材料又は反応しても有害ガスを発生しない材料とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤変状防止方法。
【請求項4】
前記滑材は前記裏込材に混合された場合にも、前記裏込材が所定の時間で所定の強度に達する性質を有することを特徴とする請求項3に記載の地盤変状防止方法。
【請求項5】
前記滑材は、ベントナイト溶液に水ガラスを混合させてゲル化した材料であることを特徴とする請求項3又は4に記載の地盤変状防止方法。
【請求項6】
前記滑材は、吸水性ポリマーに水を混合させてゲル化した材料であることを特徴とする請求項3又は4に記載の地盤変状防止方法。
【請求項7】
前記土被り部分に地盤改良を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤変状防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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