説明

地絡事故点探査装置及びそれを用いた地絡事故点探査方法

【課題】 地中の事故点特定までの探査時間を極力短くすると共に、コンパクトな装置構成で確実且つ高精度に地表面から事故点を探査できる地絡事故点探査装置を提供する
【解決手段】2本の線路201、202からなる地中埋設ケーブル(地中配電線路)200と大地間に位相が180°異なる二つの高周波の探査信号S1、S2を各々注入する探査信号注入手段1と、前記2本の線路201、202を伝搬する二つの高周波の探査信号S1、S2により生じる磁界を検出する可搬型磁界センサ2と、前記探査信号注入手段1のフィードバック信号を入力し探査信号S1、S2を制御すると共にその値を表示する制御・表示手段3とを備える構成としているので、地中配電線路における探査信号の注入点から健全回路側地中配電線路の延出方向については探査信号が打消し合って受信器の反応がなくなるのに対し、事故点が存在する事故回路側地中配電線路の延出方向においては所定量の大きな検出レベルを確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の地絡(漏電)事故点を探査する地絡事故点探査装置に関し、特に地中埋設等の遮蔽状態で敷設された配電線の地絡事故点を地表面から探査できる地絡事故点探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の地絡事故点探査装置として、特開平2−17468号公報(第1の背景技術)特開2000−74979号公報(第2の背景技術)に各々開示されるものがあった。この図16は第1の技術背景に記載の配電線地絡事故点探査方法の動作説明図、図17は第2の背景技術に記載の漏電箇所探査方法の動作説明図である。
【0003】
図16において第1の背景技術に係る配電線地絡事故点探査方法は、健全区間から切り離された配電線地絡事故点を含む事故区間の配電線と大地との間に、事故点探査用のパルス電圧を印加した後、配電線地絡事故によって、パルス電圧により事故区間の配電線を流れるパルス電流を大地に導く導電体となる電柱112、113、114の周囲に発生する磁束と鎖交して誘起電圧を得るコイル状の検出体122を電柱112、113、114を挟んで略対向する2位置に同じ向きでそれぞれ置いた状態で、各誘起電圧の極性が互いに逆極性となる電柱114を探索することにより、配電線地絡事故点を探査するようにしたものである。
【0004】
また、図17において第2の背景技術に係る漏電箇所探査方法は、配電線100の電源側に探査信号を探査信号注入手段101から注入して、この注入された探査信号を前記配電線100の負荷側で検出手段102で検出し、前記検出手段102が検出した探査信号が複数の配電線100で各々所定値以上検出した場合に前記探査信号の信号レベルを低く変化させて注入し、又は検出信号を検出しなかった場合に前記探査信号の信号レベルを高く変化させて注入し、この変化後の探査信号により検出される前記検出信号に基づいて漏電箇所を特定するものである。
【0005】
このように第2の背景技術に係る漏電箇所探査方法においては、電源側に注入された探査信号に基づいて負荷側で検出された探査信号の検出状態に応じて、探査信号の信号レベルを変化させて注入するようにしているので、漏電事故による漏電抵抗に応じて流れる漏電電流の大小により感度を調整できることとなり、探査範囲を順次狭めて漏電箇所を確実且つ迅速に特定できる。
【特許文献1】特開平2−17468号公報
【特許文献2】特開2000−74979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の各背景技術は、いずれも配電線にパルス電圧を印加し、又は探査信号を注入するようにし、このパルス電圧又は探査信号により配電線に生じる磁界を検出し、この検出された磁界に基づいて配電線の地絡点又は漏電箇所を検出するようにしているので、探査開始点から地絡点又は漏電箇所の事故点まで何ら指標のない模索による手探り状態で探査しなければならず、探査に長時間を要し、正確且つ高精度な探査ができないという課題を有する。
【0007】
即ち、前記各背景技術は、一般に探査開始点がパルス電圧の印加点又は探査信号の注入点であることから、前記事故点に到達するまではパルス電圧の電圧レベル又は探査信号の信号レベルに応じた検出レベルとなり、事故点で始めて検出レベルが変化して事故点であることを認識できることから、探査開始点から事故点までが手探り状態の検出を強いられることとなる。
【0008】
また、高圧又は低圧の地中埋設線において発生する地絡事故点を探査する装置としては、前記各背景技術を応用し、配電線と対地間に信号電圧を印加して探査信号を流し、発生する磁界を地表面で検出して受信器の反応状況から事故点を特定したり、絶縁抵抗等を測定して切り分けて探査を行いながら事故点を推察するといった方法が一般的であった。
【0009】
この地中埋設線は、歩道又は車道の下に埋設配線されるが、車の重量の影響、その他の影響を受けないようにするため、埋設する深さは少なくとも歩道で60cm、車道で120cm以上で埋設される。このような状況において地絡事故が発生した場合は、配電線と対地間に信号電圧を印加して探査信号を流し、発生する磁界を地表面で検出して受信器の反応状況から事故点を特定するといった方法や、故障区間と思われる部分を掘削し絶縁抵抗等を測定して切り分けて探査を行う方法等が採られている。
【0010】
しかしながら、前者の場合は、前述した通り探査開始点から事故点まで何ら指標のない状態で探査しなければならいという課題を有していた。また、後者の場合には、広範囲の掘削を伴うため、他の埋設線の誤切断や歩道や車道の通行を規制する必要があり、事故点の特定に多大な費用と時間がかかるという課題を有する。
【0011】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、地中の事故点特定までの探査時間を極力短くすると共に、コンパクトな装置構成で確実且つ高精度に地表面から事故点を探査できる地絡事故点探査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る地絡事故点探査装置は、地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの探査信号を各々注入する探査信号注入手段と、前記地中配電線路を伝搬する二つの探査信号により生じる磁界を検出する磁界検出手段と、記磁界検出手段で検出された検出磁界に基づき前記地中配電線路の地絡事故点を検出する地絡事故点検出手段とを備えるものである。
【0013】
このように本発明においては、地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの高周波の探査信号を探査信号手段から各々注入し、前記地中配電線路を伝搬する二つの高周波の探査信号により生じる磁界を磁界検出手段が検出し、前記磁界検出手段で検出された検出磁界に基づき前記地中配電線路の地絡事故点を地絡事故点検出手段が検出するようにしているので、地中配電線路における探査信号の注入点から健全回路側地中配電線路の延出方向については探査信号が打消し合って受信器の反応がなくなるのに対し、事故点が存在する事故回路側地中配電線路の延出方向においては所定量の大きな検出レベルを確保できる。また、前記検出磁界が探査信号注入点0から事故点が存在する地中配電線路に沿って所定量の大きな検出レベルを確認しながら探査を実行できるため、広範囲な探査が必要なく地中の事故点特定まで最短で到達できるため探査時間を極力短くすると共に、コンパクトな装置構成で確実且つ高精度に地表面から事故点を探査できるという効果を奏する。
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、探査信号注入手段が、探査信号を地中配電線路に注入した状態で、当該注入点を中心に水平方向360度の範囲において磁界検出手段により複数の方向で磁界を検出し場合に、当該検出した磁界の最大値を示す方向以外の検出磁界が最小値となるように各探査信号の電圧値及び/又は位相を調整制御する制御部を備えるものである。
【0014】
このように本発明においては、探査信号を地中配電線路に注入した状態で、当該注入点を中心に水平方向360度の範囲において磁界検出手段により複数の方向で磁界を検出した場合の最大値を示す場所以外の検出磁界が最小値となるように各探査信号の電圧値及び/又は位相を調整制御することから、信号注入点を基点に地絡事故を発生した事故側線路と健全な線路(無事故線路)との探査信号に基づく検出レベルの差をより大きくして、事故側線路方向を明確に差別化できることとなり、また事故側線路における事故点特定までの探査時間を極力短くすると共に、コンパクトな装置構成で確実且つ高精度に地表面から事故点を探査できるという効果を有する。
【0015】
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、探査信号注入手段が、当該探査信号の注入された地中配電線路の上方に磁界検出手段を複数設置し、最大値を示すもの以外の磁界検出手段の検出磁界が最小値となるように各探査信号の電圧値及び/又は位相差を調整制御する制御部を備えるものである。
【0016】
このように本発明においては、探査信号を地中配電線路に注入した状態で、この注入された地中配電線路の上方に磁界検出手段を複数配置し、最大値を示すもの以外の磁界検出手段の検出磁界が最小値となるように各探査信号の電圧値及び/又は位相を制御部が調整制御することから、地中配電線路のインピーダンスの相違を補償して各線路で生じる磁界を正確に打消し合うように探査信号を注入できることとなり、より確実且つ高精度な事故点探査が可能となるという効果を有する。
【0017】
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、探査信号注入手段から注入される探査信号により生じる前記磁界検出手段で検出した磁界の最大値が一定の所定値になるように前記探査信号の信号電圧値を調整制御する制御部を備えるものである。
【0018】
このように本発明においては、制御部が磁界検出手段で検出した磁界の最大値が一定の所定値となるようにしているので、地絡抵抗値によって信号電流が変化するのを防止でき、受信器が受ける信号磁界レベルを一定にし事故点を特定し易くなるという効果を有する。
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、磁界検出手段が、前記地中配電線路へ探査信号を注入する注入点より地中配電線の敷設経路に沿って連続して又は所定間隔で磁界を検出するものである。
【0019】
このように本発明においては、地中配電線路へ探査信号を注入する注入点より地中配電線路の敷設経路に沿って連続して又は所定間隔で磁界を検出し、検出磁界の大きさで地絡事故点を特定することから、地中配電線路における探査信号の注入点から地中配電線路の延出方向のいずれかに地絡事故点が存在するかを検出磁界の所定量の検出レベルで判別し、探査を実行できることとなり地中の事故点特定までの探査時間を極力短くすると共に、コンパクトな装置構成で確実且つ高精度に地表面から事故点を探査できるという効果を有する。
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、前記地中配電線路の各相における探査信号の注入点と大地との間の地絡事故抵抗値を、テスト信号の注入による電圧の印加で生じる電流値から演算して測定する地絡抵抗測定手段と、前記測定された地絡事故抵抗値に対して所定の信号電流の探査信号が流れるように信号電圧及び/又は位相を調整制御する制御手段とを備えるものである。
このように本発明においては、地絡抵抗測定手段が地中配電線路の各相にテスト信号を注入して地絡事故抵抗値を測定し、この測定された地絡事故抵抗値に基づいて制御手段が所定の信号電流となるように探査信号の信号電圧及び/又は位相を調整制御するようにしているので、磁界検出手段により検出する磁界強度を地中配電線路の埋設常態(埋設深さ、埋設地質等)又は、磁界検出手段の検出精度の程度等に拘わらず最適値に維持できることとなり、過大・過少な信号電圧の印加による事故点探査精度の低下を未然に防止して、高精度且つ確実な事故点の探査ができるという効果を有する。
【0020】
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、磁界検出手段で検出した磁界の最大値が一定の所定値となるように探査信号の信号電圧値を調整制御し、地中配電線路の敷設の経路に沿って連続又は所定間隔で磁界を検出する磁界検出手段からの情報をもとに、磁界検出手段の検出磁界が最小値となるように地絡事故を生じた地中配電線路の相に印加する探査信号の信号電圧と逆位相側の信号電圧及び/又は位相調整制御する制御手段を備えるものである。
【0021】
このように本発明においては、制御手段が磁界検出手段で検出した磁界の最大値が一定の所定値となるように探査信号の信号電圧値を調整制御し、地中配電線路の敷設経路に沿って連続又は所定間隔で磁界を検出する磁界検出手段からの情報をもとに、磁界検出手段の検出磁界が最小値となるように地絡事故を生じた地中配電線路の相に印加する探査信号の信号電圧と逆位相側の信号電圧及び/又は位相調整制御するようにしているので、同一の地中配電線路中の三相三線からさらに延長される三相二線が敷設されて各々異なる負荷に接続されている場合等に、三相三線と三相二線とを各地中配電線路の分布静電容量の差異に基づく検出誤差を予め補償する探査信号を地中配電線路に注入できることとなり、三相三線・三相二線が混在する地中配電線路においても正確且つ確実に地絡事故点の探査を行うことができる効果を有する。
【0022】
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、磁界検出手段が、地中配電線路の敷設経路に沿って連続又は所定間隔で磁界を検出し、当該検出場所毎において検出磁界レベルに関連づけた地中配電線路敷設位置、地中配電線路の敷設深さのいずれか少なくとも一つを表示する表示手段を備えたものである。
【0023】
このように本発明においては、磁界探査手段で検出する検出場所毎に検出磁界レベルを関連付けて地中配電線路の敷設位置、敷設深さを表示手段に表示するようにしているので、検出された地絡事故点を明確且つ適正に表示し確認できるという効果を有する。
【0024】
また、本発明に係る地絡事故点探査装置は必要に応じて、地中配電線路に磁気的に結合する結合部を有し、地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの探査信号のいずれか一つの探査信号を前記結合部からの地中配電線路に注入する第2の探査信号注入手段を備えるものである。
【0025】
このように本発明においては、地中配電線路に磁気的に結合する結合部を有する探査信号注入手段が、地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの探査信号を結合部を介して注入するようにしているので、高圧配線路のケーブル等からなる地中配電線路に直接接続することなく探査信号を注入できることとなり、地中配電線路の被覆に傷つけることなく安全且つ簡易に地絡事故点の探査を行えるという効果を有する。
また、本発明に係る地絡事故点探査方法は、地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの高周波の探査信号を各々注入し、前記地中配電線路を伝搬する二つの高周波の探査信号により生じる磁界を検出し、検出された検出磁界に基づき地中配電線路の地絡事故点を特定するものである。
このように本発明においては、地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの高周波の探査信号を各々注入し、前記地中配電線路を伝搬する二つの高周波の探査信号により生じる磁界を検出し、検出された検出磁界に基づき地中配電線路の地絡事故点を特定するものであるから、地絡事故点特定までの探査時間を極力短くすると共に、確実且つ高精度に地表面から地絡事故点を探査できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る地絡事故点探査装置をその探査方法と共に、図1ないし図4に基づいて説明する。この図1は本実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図、図2は本実施形態に係る地絡事故点探査装置の詳細ブロック構成図、図3は本実施形態に係る地絡事故点探査装置の地絡事故探査動作説明図、図4は本実施形態に係る地絡事故点探査装置の地絡事故探査動作フローチャートを示す。
【0027】
前記図1、図2において本実施形態に係る地絡事故点探査装置は、2本の線路201、202からなる地中埋設ケーブル(地中配電線路)200と大地間に位相が180°異なる二つの高周波の探査信号S1、S2を各々注入する探査信号注入手段1と、前記2本の線路201、202を伝搬する二つの高周波の探査信号S1、S2により生じる磁界を検出する可搬型磁界センサ2と、前記探査信号注入手段1のフィードバック信号を入力し探査信号S1、S2を制御するとともにその値を表示する制御・表示手段3とを備える構成である。
【0028】
前記探査信号注入手段1は、直流電圧又は交流電圧を出力する電源回路11と、この直流電圧又は交流電圧から制御・表示手段3の制御信号に基づき所定の高周波信号電圧を発生する信号電圧発生回路12と、この高周波信号電圧を所定値に昇圧すると共に出力信号を計測し、その値をフィードバック信号S6として制御・表示手段3に帰還する信号電圧昇圧回路13と、この昇圧された高周波信号電圧を探査信号S1として出力すると共に、この探査信号S1の逆位相の高周波信号電圧を探査信号S2として出力し、前記高周波信号の電流を検出してフィードバック信号S3として制御・表示手段3に帰還する電流検出回路14と、を備える構成である。
【0029】
前記磁界センサ2は、探査信号周波数を受信した場合、受信感度に応じたレベル表示を行う可般型の受信器で地中埋設ケーブル200の2本の線路201、202に探査信号S1、S2を注入した際に生じる地中埋設ケーブル200の磁界を検出し表示する。
【0030】
前記制御・表示手段3は、電流検出回路14からのフィードバック信号S3に基づいて地中埋設ケーブル200の電流変動を演算して地絡事故点の有無を特定すると共に、前記探査信号S1、S2を生成するための制御信号S4を出力する演算制御回路32と、この制御信号S4に基づいて探査信号S2の位相を探査信号S1の逆位相(180°の位相ずれ)となるように信号電圧を制御して逆位相制御信号S5を出力する位相制御回路33と、演算制御回路32で演算しS4として制御した信号電圧または信号電流および位相等の情報を表示する表示装置34とを備える構成である。
【0031】
また、前記信号電圧発生回路12は、演算制御回路32の制御信号S4及び位相制御回路33の逆位相制御信号S5に基づいて位相が180°異なる二つの信号電圧を発生させ、この二つの信号電圧を信号電圧昇圧回路13へ出力する構成である。
【0032】
次に、図3、図4において前記構成に基づく本実施形態に係る地絡事故点探査装置の地絡事故点探査動作について説明する。
まず、地絡事故が生じた地域の配線経路を遮断し、この配線経路の地中埋設ケーブル200を死線状態とする(ステップ1)。この死線状態となった地中埋設ケーブル200が接続される地上設置機器4から探査信号注入手段1が地中埋設ケーブル200の線路201と大地間に探査信号S1を注入すると共に、線路202と大地間に探査信号S2を注入する。この場合の注入信号のレベルは、ケーブル埋設深さの最大値(例えば車道埋設部分においては120cm)および、探査装置の性能としてあらかじめ設定した最大検出可能地絡抵抗値(例えば、少なくとも地絡事故が発生した場合に動作する保護継電器の動作電流と回路電圧から求めた値で数kΩ〜数十kΩ程度)において地上面から探査した場合に、可搬型磁界センサ2が確実に反応する信号レベル(例えば、前記車道埋設部分の埋設深さ120cmのケーブルを探査可能な信号の強さ)に設定される(ステップ2)。
【0033】
前記探査信号S1、S2が注入された探査信号注入点0の近傍における地中埋設ケーブル200を可搬型磁界センサ2で探査し(ステップ3)、この探査により磁界が検出されたか否かを可搬型磁界センサ2に配置したレベル表示器で表示させる。(ステップ4)。この探査信号注入点0では探査信号注入点0を中心に360度の範囲を探査し、検出磁界のレベルが最も大きい場所1箇所を確定する。また、最大値以外の箇所の磁界検出レベルが最小値となるように電圧及び/又は位相を調整する(ステップ5)。このように最大値以外の箇所の磁界レベルを最小値となるように調整することにより、地中埋設ケーブル200の地絡抵抗値等の相違があっても健全相側の各線路間で生じる磁界を正確に打ち消すことができる。この検出磁界が1箇所しか検出されない場合は現在の条件で探査を進める。なお、前記最大値以外の箇所の磁界検出レベルを最小値に調整する構成に加え、さらに最大値側(事故相側の)検出磁界が一定の所定値となるように電圧及び/又は位相を制御して、精密且つ安定した検出を行うこともできる。
【0034】
前記探査信号注入点0から磁界が検出された地中埋設ケーブル200の延出方向に沿って可搬型磁界センサ2を移動しつつ探査する(ステップ6)。以下、この探査信号S1、S2の注入による地中埋設ケーブル200の磁界発生状態及び可搬型磁界センサ2の検出状態を詳述する。
【0035】
前記地上設置機器4を探査信号注入点0として注入された探査信号S1、S2は、このOから延出する地中埋設ケーブル200を各々伝搬し、地中埋設ケーブル200に分布定数的に存在する対地静電容量Cに信号電圧Vが印加されると共に、地絡事故点PのインピーダンスZに信号電圧Vが印加される。この対地静電容量Cに印加された信号電圧Vで電流i1(i1=jwC・V)が流れ、インピーダンスZに印加された信号電圧Vで電流i2(i2=V/Z;i1+i2>i1)が流れることとなる。
【0036】
このように地中埋設ケーブル200の線路201、202には電流i1、i2が流れることとなるが、探査信号注入点0から延出する地中埋設ケーブル200の健全回路部分(A部)は線路201に電流i1及び線路202に電流i1が互いに逆向きに流れるのみであることから、各電流iにより発生する各磁界も打消し合って磁界センサ2では磁界が検出されず未反応領域となる。
【0037】
また、前記探査信号注入点0から延出する地中埋設ケーブル200の地絡事故点Pまでの事故回路部分(B部)は、線路201に電流i1が流れると共に電流i2が重畳して流れ、線路202に線路201の電流i1+i2と逆向きの電流i1のみが流れることから、互いに逆向きの電流i1により発生する各磁界のみが打消し合って、電流i2により発生する磁界が存在し、この磁界が可搬型磁界センサ2で検出される反応領域となる。従って、2つの線路において互いに逆向きに流れる電流i1の位相を調整して合せることで、より正確にi2による磁界のみ検出することができることとなる。
【0038】
さらにまた、前記地絡事故点Pからさらに延出する地中埋設ケーブル200の健全回路部分(C部)は、前記A部と同様線路201に電流i1及び線路202に電流i1が互いに逆向きに流れることから、各電流iにより発生する各磁界も打消し合って可搬型磁界センサ2では磁界が検出されず未反応領域となる。
【0039】
前記可搬型磁界センサ2の移動探査により、大きな値として検出される検出磁界が消滅(又は大きな減衰)したか否かを可搬型磁界センサ2の受信レベルで判断する。(ステップ7)。検出磁界の消滅(又は大きな減衰)が生じたと判断した場合には、その消滅(又は大きな減衰)した地点を地絡事故点として特定して探査を終了する(ステップ8)。
【0040】
以上のように本実施形態に係る地絡事故点探査装置は地絡事故が発生した地中埋設ケーブル200に対して探査信号S1、S2を注入する探査信号注入点0近傍から地絡事故点Pに至るまで連続して大きな値の磁界を検出磁界として検出できるのに対し、この延出する地中埋設ケーブル200の地絡事故点P以降においては全く検出磁界が検出できなくなるので、地中の事故点特定までの探査時間を極力短くできると共に、コンパクトな装置構成で確実且つ高精度に地表面から事故点を探査できることとなる。
【0041】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る地絡事故点探査装置を図5ないし図7に基づいて説明する。この図5は本実施形態に係る地絡事故点探査装置の詳細ブロック構成図、図6は図5に記載の地絡事故点探査装置における地絡事故探査の動作説明図、図7は図5に記載の地絡事故点探査装置における地絡事故探査の動作フローチャートを示す。
【0042】
前記各図において本実施形態に係る地絡事故点探査装置は、前記図1及び図2に記載の第1の実施形態とは異なり、探査信号注入手段1、複数の地上設置型磁界センサ21、・・・、24及び制御・表示手段3を備えて構成され、前記地上設置型磁界センサは通信線(有線または無線)で磁界センサ入力回路31に接続される。また、地絡事故点検出用の可搬型磁界センサ20とで形成され、制御・表示手段3が前記各地上設置型磁界センサ21、・・・、24からの各検出磁界に基づいて地絡事故点Pの方向を特定して探査を行う構成である。
【0043】
前記地上設置型磁界センサは、探査信号注入点0近傍の探査信号注入点0を基点に推察される配線方向に配置するもので、地中埋設ケーブル200に対する地上設置型磁界センサ21、22、23、24で検出される複数の検出磁界のうちで最も大きな値の検出磁界以外を最小値となるように探査信号S1、S2の電圧または電流および位相差を制御する位相制御信号を探査信号注入手段1へ出力する構成である。
【0044】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る地絡事故点探査装置における地絡事故点の探査動作について説明する。まず、前記実施形態と同様に地絡事故が生じた地中埋設ケーブル200を含む地域の配線経路を遮断し(ステップ10)、この地中埋設ケーブル200に探査信号S1、S2を注入する。この場合の注入信号のレベルは、ケーブル埋設深さの最大値(例えば車道埋設部分においては120cm)および、探査装置の性能としてあらかじめ設定した最大検出可能地絡抵抗値において地上面から探査した場合に、地上設置型磁界センサ21、22、23、24および可搬型磁界センサ20が確実に反応する信号レベルに設定される。(ステップ11)。
【0045】
地中埋設ケーブルは道路に沿って埋設される場合が多く、探査信号注入点0を基点とした場合、埋設ケーブルは道路と平行または直行する方向に埋設されている確率が高い。図6は、この状態を想定した場合の実施例で、道路と平行に配置した地上設置型磁界センサ22、24に対し、直交方向に地上設置型磁界センサ21、23を配置したものである。図6の実施例では地上設置型磁界センサ22、24に対し、直交方向に地上設置型磁界センサ21、23を配置したが、探査信号注入点0周辺の状況から判断して埋設ケーブルが敷設されていると考えられる場所に自由に配置しても良い。このように探査信号S1、S2が注入された状態で探査信号注入点0の近傍における地中埋設ケーブル200が埋設されていると推察される配線方向に配置した地上設置型磁界センサ21、22、23、24の出力を取込む(ステップ12)。この取込まれた出力に基づいて演算制御回路32は磁界が検出されたか否かを判断する(ステップ13)。このステップ13において磁界検出がなされない場合は、事故点がないものと判断される。また、磁界が検出されて地上設置型磁界センサ21、22、23、24による探査が終了したと判断された場合には、この探査が実行されたうちで、最も大きな検出磁界が検出された地上設置型磁界センサ以外の出力値が最小値「0」となるように探査信号S1、S2の電圧値または電流値および位相を制御する。また、最も大きい出力の地上設置型磁界センサの方向を事故点方向として表示する(ステップ14)。
【0046】
前記検出磁界が最小値「0」となったか否かを演算制御回路32が判断し(ステップ15)、最小値「0」となったと判断された場合には探査信号注入点0から前記最大の検出磁界が検出された地上設置型磁界センサの延長方向に沿って可搬型磁界センサ20を移動させつつ探査を実行する(ステップ16)。 この可搬型磁界センサ20による探査移動により磁界検出が消滅したか否かを判断する(ステップ17)。このステップ17の判断において磁界検出が消滅したと判断された場合に、この消滅地点を地絡事故点として特定できることとなる(ステップ18)。
【0047】
なお、前記ステップ15で検出磁界が最小値「0」でないと判断された場合には、前記ステップ14に戻り、制御・表示手段3により探査信号S1、S2の電圧値または電流値および位相を制御することを繰り返す。また、前記ステップ17において磁界検出が消滅しないと判断された場合には、ステップ16に戻り、可搬型磁界センサ20による移動探査を延出方向に沿って継続することとなる。
【0048】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る地絡事故点探査装置を図8ないし図10に基づいて説明する。この図8は本実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図、図9は図8に記載の地絡事故点探査装置の詳細ブロック構成図、図10は図8に記載の地絡事故点探査装置の地絡事故探査動作説明図である。
【0049】
前記図8及び図9において本実施形態に係る地絡事故点探査装置は、前記図1及び図2に記載の第1の実施形態に係る地絡事故点探査装置と同様に探査信号注入手段1、可搬型磁界センサ2、制御・表示手段3を備えて構成され、この探査信号注入手段1と共に地絡抵抗測定手段(図示を省略)との各機能を有する信号注入手段10を備え、この信号注入手段10が三相三線の三本の地中配電線路200R、200S、200T探査信号S1、S2を注入すると共にテスト信号S0を注入する構成である。
【0050】
前記信号注入手段10は、直流電圧及び交流電圧を出力する電源回路101と、この直流電圧又は交流電圧から制御・表示手段3の制御信号に基づき所定の直流信号電圧及び所定の高周波信号電圧を発生する信号電圧発生回路102と、この直流信号電圧を所定値に昇圧すると共に出力信号を計測し、その値をフィードバック信号S6として制御・表示手段3に帰還させ、前記直流信号電圧をテスト信号S0として出力する信号電圧昇圧回路103と、昇圧された高周波信号電圧を探査信号S1として出力すると共に、この探査信号S1の逆位相の高周波信号電圧を探査信号S2として出力し、前記高周波信号の電流を検出してフィードバック信号S3として制御・表示手段3に帰還させる電流検出回路104と、を備える構成である。
【0051】
前記磁界センサ2は、探査信号S1、S2周波数を受信した場合、受信感度に応じたレベル表示を行う可般型の受信器で地中埋設ケーブル200の三本の地中配電線路200R、200S、200Tの中の事故相と健全相の二本に探査信号S1、S2を注入した際に生じる地中埋設ケーブル200の磁界を検出し表示する。
【0052】
前記制御・表示手段3は、電流検出回路104からのフィードバック信号S3に基づいて地中埋設ケーブル200の電流変動を演算して地絡事故点の有無を特定すると共に、前記探査信号S1、S2を生成するための制御信号S4を出力する演算制御回路32と、この制御信号S4に基づいて探査信号S2の位相を探査信号S1の逆位相(180°の位相ずれ)となるように信号電圧を制御して逆位相制御信号S5を出力する位相制御回路33と、演算制御回路32で演算しS4として制御した信号電圧または信号電流および位相等の情報を表示する表示装置34とを備える構成である。
【0053】
また、前記信号電圧発生回路102は、演算制御回路32の制御信号S4及び位相制御回路33の逆位相制御信号S5に基づいて位相が180°異なる二つの信号電圧を発生させ、この二つの信号電圧を信号電圧昇圧回路103へ出力する構成である。
【0054】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る地絡事故点探査装置の地絡事故点探査動作について前記図10に基づいて説明する。
まず、地絡事故が生じた地域の配線経路を遮断し、この配線経路の地中埋設ケーブル200の地中配電線路200R、200S、200Tを死線状態とする(ステップ1)。この死線状態となった各地中配電線路200R、200S、200Tに信号注入手段10からテスト信号S0が順次注入されて、各地中配電線路200R、200S、200Tにおける探査信号注入点と大地との間に所定電圧を印加する(ステップ10)。
【0055】
このようにテスト信号S0による所定電圧を印加した状態で、各地中配電線路200R、200S、200Tの各相に流れる電流を電流検出回路104で検出する。(ステップ11)。この検出された電流値に基づいて各相地中配電線路200R、200S、200Tについての地絡事故抵抗値を演算する(ステップ12)。この地絡事故抵抗値は、可搬型磁界センサ2が検出磁界値により地絡抵抗値を演算する機能を備える構成とすることもでき、又、検出磁界が制御・表示手段3に別途入力されてこの制御・表示手段3の演算制御回路32により地中配電線路200R、200S、200Tの各地絡事故抵抗値を演算する機能を備える構成とすることもできる。
【0056】
この演算された各地絡事故抵抗値に基づいて、配電線路200R、200S、200Tのうちで地絡事故が発生した事故相を特定すると共に、信号注入手段10から地中配電線路200R、200S、200Tの中から、事故相とその他の健全相の1線に注入する探査信号S1、S2の電圧値を設定する(ステップ13)。
【0057】
この設定された電圧値の探査信号S1、S2をステップ2からステップ8の各工程で地絡事故点の特定を前記第1の実施形態の場合と同様に実行される。なお、このステップ2からステップ8において探査信号S1、S2を前記特定された事故相の地中配電線路と他の健全相の地中配電線路との間に前記特定された電圧値で印加される構成である。
【0058】
このように本実施形態に係る地絡事故点探査装置は、地中配電線路200R、200S、200Tの各相における地絡事故点の検出動作に先立って、予め配電線路200R、200S、200Tの各相に対してテスト信号S0を信号注入手段10から順次注入することにより配電線路200R、200S、200Tに電流値に基づいて各相の地絡事故抵抗値を測定し、この測定された地絡事故抵抗値により、可搬型磁界センサ2又は制御・表示手段3内の制御手段(図示を省略する。制御・表示手段3において演算制御回路32に相当する。)が可搬型磁界センサ2の最適検出磁界を励磁する所定の信号電流となるように探査信号を調整制御するようにしているので、磁界検出手段により検出する磁界強度を地中配電線路の埋設常態(埋設深さ、埋設地質等)又は、磁界検出手段の検出精度の程度等に拘わらず最適値に維持できることとなり、過大・過少な信号電圧の印加による事故点探査精度の低下を未然に防止して、高精度且つ確実な事故点の探査ができるという効果を有する。
【0059】
(本発明の第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る地絡事故点探査装置を、図11ないし図14に基づいて説明する。この図11は本実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図、図12は図11に記載の地絡事故点探査装置の探査動作説明図、図13は図11に記載の地絡事故点探査装置の探査動作における探査信号電流調整ベクトル説明図、図14は図11に記載の地絡事故点探査装置の探査動作における探査信号電圧調整ベクトル説明を示す。
【0060】
前記図11において本実施形態に係る地絡事故点探査装置は、前記図8及び図9に記載の第1の実施形態に係る地絡事故点探査装置と同様に信号注入手段10、制御・表示手段3及び可搬型磁界センサ2を共通して備え、この構成に加え、この制御・表示手段3が可搬型磁界センサ2で検出した磁界の最大値を一定の所定値になるように探査信号S1、S2の信号電圧値を調整制御し、地中配電線路200R、200S、200Tの敷設経路に沿って可搬型磁界センサ2で所定間隔で検出された各測定点の検出磁界の値が最小値となるように配電線路200R、200S、200Tのうち地絡事故相(例えば、地中配電線路200S)に印加する探査信号S1(又はS2)の信号電圧と逆位相側の信号電圧を調整制御する構成である。
【0061】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る地絡事故点探査装置の地絡事故点探査動作について図12ないし図14に基づいて説明する。前提として前記第1ないし第3の各実施形態の場合と同様に地中配電線路200R、200S、200Tのうちの地絡事故相が検出されているものとする。
【0062】
まず、前記各実施形態と同様に配電線路200R、200S、200Tにおける地絡事故を生じた地域を遮断して死線状態とする(ステップ1)。この死線状態となった地絡事故相の地中配電線路200Sに探査信号S1を注入すると共に健全相である地中配電線路200R(又は200T)に探査信号S2を注入する(ステップ21)。
【0063】
この探査信号S1、S2を注入している状態において、可搬型磁界センサ2を設置し(ステップ22)、この設置した可搬型磁界センサ2により地中配電線路200R、200S(200T)について磁界を検出する(ステップ23)。この検出された検出磁界に基づく、地中配電線路200Sの地絡抵抗R及び分布容量C、C1による検出電流(i2)S、(i11+i12)Sと地中配電線路200Rの分布容量C、C1による検出電流(i11+i12)Rとの各ベクトル図を図13(A)に示す。
【0064】
また、前記検出された検出磁界に基づく地中配電線路200Sの地絡抵抗R及び分布容量C、C1による検出電流(i2)S、(i11+i12)Sと、地中配電線路200Tの分布容量Cによる検出電流(i11)Tとの各ベクトル図を図13(B)に示す。さらにの地中配電線路200R、200S、200Tのうち地絡事故相の200Tの地絡抵抗R及び分布容量Cによる検出電流(i2)T、(i11)Tと健全相の地中配電線路200R(又は地中配電線路200S)の分布容量C、C1による検出電流(i11+i12)R(又は(i11+i12)S)との各ベクトル図を図13(C)に示す。
前記ステップ23において検出した検出磁界の磁界レベルを調整するために探査信号S1(又はS2)の電圧(又は位相)を調整する(ステップ24)。
【0065】
このように探査信号S1、S2を注入する地中配電線路200R、200Sが同一の線路長さである場合には、ステップ24の調整動作により探査信号S1、S2の電圧を変化させたとしても各相の分布容量C、C1が同一であるため検出磁界の強さが最小で有るか判断すると(ステップ25)、最小となることが解る。この場合には探査信号S1、S2の各電圧値を同じ値として各地中配電線路200R、200Sに注入し、以下の地絡事故点の探査を実行する。
【0066】
また、探査信号S1、S2を注入する地中配電線路200R、200T(又は200S、200T)が異なる線路長さである場合には、ステップ24の調整動作により200Tに注入される探査信号S1の電圧を図14(B)に示すように増加するように調整する。この検出磁界が最小と判断された場合には(ステップ25)、以下の地絡事故点の探査を実行する。
【0067】
さらに、図13(C)に示すような検出磁界の検出状態の場合には、地中配電線路200Tと地中配電線路200R(又は、200S)との各分布容量の差分電流i21を零となるように健全相の地中配電線路200R(又は、200S)に注入される探査信号S2の電圧を減少するように調整する(ステップ24)。この探査信号S2の電圧調整により検出磁界が最小となったと判断された場合には(ステップ25)、以下の地絡事故点の探査を実行する。
【0068】
前記各探査信号調整後の地絡事故点の検出は、地中配電線路200R、200S、200Tの敷設方向に沿って可搬型磁界センサ2を移動させて探査を行う(ステップ26)。この可搬型磁界センサ2により検出された検出磁界の磁界レベルが最小となるように探査信号S2の電圧(又は位相)を信号注入手段10において調整する(ステップ27)。
【0069】
この探査信号S2の電圧(又は位相)を調整して可搬型磁界センサ2により検出された検出磁界の強さが零となったか否かを判別する(ステップ28)。このステップ28において、零でなく検出磁界があると判断された場合には、再度ステップ27に戻り前記動作を繰り返すこととなる。他方、前記検出された検出磁界の強さが零となったと判断された場合には、地中配電線路200R、200S、200Tのいずれかについて地絡事故点を特定できることとなる(ステップ29)。
【0070】
(本発明の第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る地絡事故点探査装置を、図15に基づいて説明する。この図15は本実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図を示す。
前記図15において、本実施形態に係る地絡事故点探査装置は、前記各実施形態に係る地絡事故点探査装置と同様に探査信号注入手段1、磁界センサ25、(20、21〜24に相当する。)及び制御・表示手段30(3に相当する。)を備え、前記制御・表示手段30が磁界センサ25から送信される検出磁界のデータを受信する信号受信回路35を備える構成である。
【0071】
前記磁界センサ25は、地中埋設ケーブル200の敷設経路に沿って検出された磁界検出場所毎の検出磁界の磁界レベルを関連付けて地中埋設ケーブル200の敷設位置、敷設深さを表示する表示部25aを備える構成である。この表示部25aは、地中埋設ケーブル200の敷設経路に直交する方向における検出磁界の磁界レベル最高値幅Lの中心(1/2)を埋設位置とし、この埋設位置の埋設深さを表示すると共に、この埋設位置で探査移動したときの検出磁界について10段階の点灯ランプで埋設深さを表示する構成である。
【0072】
本実施形態に係る地絡事故点探査装置の探査動作は、前記各実施形態の場合と同様実行されるものであるが、磁界センサ25による探査動作の探査移動時に磁界センサ25の表示部25aに表示された地中埋設ケーブル200の地絡事故点における埋設位置及び埋設深さを3次元的に視覚的に確認できることとなる。このように地中深く埋設された地中埋設ケーブル200の地絡事故点を3次元的に確認できることから、地絡事故復旧工事での掘削範囲を最小限に止めることができると共に、前記地中埋設ケーブル200に隣接して埋設される水道管、ガス管、通信ケーブル等の他のライフラインに対する損傷を極力少なくすることができる。
【0073】
(本発明の他の実施形態)
本発明のその他の実施形態に係る地絡事故点探査装置は、前記実施形態のいずれかの構成に加え、地中配電線路の各相に対して磁気的に結合する磁気クランプ部を有し、この地中配電線路に磁気クランプ部が磁気的に結合した状態で位相が180°異なる二つの探査信号を注入する第2の探査信号注入手段を備える構成とすることもできる。
【0074】
このように本実施形態に係る地絡事故点探査装置においては、磁気クランプ部で地中配電線路にクランプするのみで探査信号を注入できるので、地中配電線路の活線状態で地絡事故点の探査作業を実行できると共に、高圧配線路のケーブル等からなる地中配電線路に直接接続することなく探査信号を注入できることとなり、地中配電線路の被覆に傷つけることなく安全且つ簡易に地絡事故点の探査を行えるという効果を有する。
【0075】
また、本発明のその他の実施形態に係る地絡事故点探査装置は、前記第1及び第2の実施形態と同様に構成され、事故相に流れる電流が印加電圧と、地絡抵抗値とにより変動するため、地絡抵抗が装置の最大検出可能地絡抵抗値よりも小さい場合において、電流i2が増加し、地上面から探査した場合に可搬型磁界センサが過剰に反応するのを防止するもので、最大値以外の箇所の磁界検出レベルが最小値となるように電圧及び/又は位相を調整した後、可搬型磁界センサの反応が適正値になるように設定される。
この設定は、前記ケーブル埋設深さの最大値(例えば車道埋設部分においては120cm)において、地絡抵抗値0Ωから装置の最大検出可能地絡抵抗値までの範囲で、可搬型磁界センサの反応が適正値になるように設定されるもので、電流検出回路14で検出した探査信号S1の検出電流レベルと探査信号S2の検出電流レベルの差が常に一定となるように、演算制御回路32で制御する。なお、演算制御回路にS4およびS5のレベル調整手段を設け、可搬型磁界センサの反応を目視で確認しながら適正値になるよう手動で調整する構成とすることもできる。また、可搬型磁界センサに感度調整機構を設け、可搬型磁界センサの反応を目視で確認しながら適正値になるよう手動で調整する構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る地絡事故点探査装置の詳細ブロック構成図である。
【図3】第1の実施形態に係る地絡事故点探査装置の地絡事故探査動作説明図である。
【図4】第1の実施形態に係る地絡事故点探査装置の地絡事故探査動作フローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る地絡事故点探査装置の詳細ブロック構成図である。
【図6】図5に記載の地絡事故点探査装置における地絡事故探査の動作説明図である。
【図7】図5に記載の地絡事故点探査装置における地絡事故探査の動作フローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図である。
【図9】図8に記載の地絡事故点探査装置の詳細ブロック構成図である。
【図10】図8に記載の地絡事故点探査装置の地絡事故探査動作説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図である
【図12】図11に記載の地絡事故点探査装置の探査動作説明図である。
【図13】図11に記載の地絡事故点探査装置の探査動作における探査信号電流調整ベクトル説明図である。
【図14】図11に記載の地絡事故点探査装置の探査動作における探査信号電圧調整ベクトル説明を示す。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る地絡事故点探査装置およびその探査方法の全体概略構成図である。
【図16】第1の技術背景に記載の配電線地絡事故点探査方法の動作説明図である。
【図17】第2の背景技術に記載の漏電箇所探査方法の動作説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 探査信号注入手段
2 可搬型磁界センサ
3,30 制御・表示手段
4 地上設置機器
10 信号注入手段
11 電源回路
12 信号電圧発生回路
13 信号電圧昇圧回路
14 電流検出回路
20 可搬型磁界センサ
21 地上設置型磁界センサ
22 地上設置型磁界センサ
25 磁界センサ
25a 表示部
32 演算制御回路
33 位相制御回路
34 表示装置
35 信号受信回路
100 配電線
101 探査信号注入手段
101 電源回路
102 検出手段
102 信号電圧発生回路
103 信号電圧昇圧回路
104 電流検出回路
112、114 電柱
122 検出体
200 地中埋設ケーブル
200R、200S、200T 地中配電線路
201、202 線路
L 磁界レベル最高値幅
O 探査信号注入点
P 地絡事故点
R 地絡抵抗
V 信号電圧
Z インピーダンス
i 電流
S0 テスト信号
S1、S2探査信号
S3 フィードバック信号
S4 制御信号
S5 逆位相制御信号
S6 フィードバック信号
i1、i2 電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの探査信号を各々注入する探査信号注入手段と、
前記地中配電線路を伝搬する二つの探査信号により生じる磁界を検出する磁界検出手段と、
前記磁界検出手段で検出された検出磁界に基づき前記地中配電線路の地絡事故点を検出する地絡事故点検出手段とを備えることを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の地絡事故点探査装置において、
前記探査信号注入手段が、探査信号を地中配電線路に注入した状態で、当該注入点を中心に水平方向360度の範囲において磁界検出手段により複数の方向で磁界を検出した場合に、当該検出した磁界の最大値を示す方向以外の検出磁界が最小値となるように各探査信号の電圧値及び/又は位相を調整制御する制御部を備えることを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の地絡事故点探査装置において、
前記探査信号注入手段が、当該探査信号の注入された地中配電線路の上方に磁界検出手段を複数設置し、最大値を示すもの以外の磁界検出手段の検出磁界が最小値となるように各探査信号の電圧値及び/又は位相を調整制御する制御部を備えることを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の地絡事故点探査装置において、
前記探査信号注入手段から注入される探査信号により生じる前記磁界検出手段で検出した磁界の最大値が一定の所定値になるように前記探査信号の信号電圧値を調整制御する制御部を備えることを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の地絡事故点探査装置において、
前記磁界検出手段が、前記地中配電線路へ探査信号を注入する注入点より地中配電線路の敷設経路に沿って連続して又は所定間隔で磁界を検出することを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし3、5のいずれかに記載の地絡事故点探査装置において、
前記地中配電線路の各相における探査信号の注入点と大地との間の地絡事故抵抗値を、テスト信号の注入による電圧の印加で生じる電流値から演算して測定する地絡抵抗測定手段と、
前記測定された地絡事故抵抗値に対して所定の信号電流の探査信号が流れるように信号電圧及び/又は位相を調整制御する制御手段とを備えることを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項7】
前記請求項1ないし3、5のいずれかに記載の地絡事故点探査装置において、
前記磁界検出手段で検出した磁界の最大値が一定の所定値となるように探査信号の信号電圧値を調整制御し、地中配電線路の敷設経路に沿って連続又は所定間隔で磁界を検出する磁界検出手段からの情報をもとに、磁界検出手段の検出磁界が最小値となるように、地絡事故相に印加する探査信号の信号電圧と逆位相側の信号電圧及び/又は位相を調整制御する制御手段を備えることを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項8】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載の地絡事故点探査装置において、
前記磁界検出手段が、地中配電線路の敷設経路に沿って連続又は所定間隔で磁界を検出し、当該検出場所毎において検出磁界レベルに関連づけた地中配電線路敷設位置、地中配電線路の敷設深さのいずれか少なくとも一つを表示する表示手段を備えたことを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項9】
前記請求項1ないし8のいずれかに記載の地絡事故点探査装置において、
前記地中配電線路に磁気的に結合する結合部を有し、地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの探査信号のいずれか一つの探査信号を前記結合部からの地中配電線路に注入する第2の探査信号注入手段を備えることを
特徴とする地絡事故点探査装置。
【請求項10】
地中配電線路と大地間に位相が180°異なる二つの高周波の探査信号を各々注入し、
前記地中配電線路を伝搬する二つの高周波の探査信号により生じる磁界を検出し、
検出された検出磁界に基づき地中配電線路の地絡事故点を特定することを特徴とする地絡事故点探査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−279031(P2007−279031A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68690(P2007−68690)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【Fターム(参考)】