説明

基板処理装置、基板処理方法、及び太陽電池の製造方法

【課題】ガラス基板の表面における縁部を除く領域に凹凸形状を形成する。
【解決手段】基板の処理面の周縁部を選択的に覆うように配され、前記真空容器における前記ガス供給部側の内壁から前記基板ステージに向かって延在している延在部120と、前記基板の処理時において、前記ガス供給部と前記延在部と前記基板の処理面とで囲まれた第1の空間101と前記第1の空間より外側の第2の空間102とが互いに分離されるように前記基板の処理面の周縁部と前記延在部との距離を近づけ、前記基板の交換時において、前記基板の処理面の周縁部と前記延在部との距離を遠ざける距離調整機構20と、第1の排気装置に接続されており、前記基板の処理時において、前記第1の空間を減圧する第1の排気口12と、第2の排気装置に接続されており、前記基板の処理時において、前記第2の空間を減圧する第2の排気口140とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、基板処理方法、及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、化石燃料による火力発電の代替エネルギーとして期待されており、太陽光発電システムの生産量は年々増加している。このために、シリコン基板を原材料に用いるバルク型太陽電池ではシリコンウエハが不足するという事態が発生し、シリコン基板の価格高騰により製造コストの増大が懸念されている。このため、ガラス基板上にシリコン膜を形成する薄膜シリコン太陽電池が注目されている。
【0003】
ガラス基板を用いた薄膜シリコン太陽電池では、ガラス基板を介して入射した太陽光を効率的に発電に利用するための方法として、ガラス基板上に形成した透明導電膜の表面にテクスチャと呼ばれる凹凸形状を形成して入射光を散乱させ、発電層内での光路長を長くすることで高い発電電流を得る方法がある。
【0004】
また、薄膜シリコン太陽電池の入射光を散乱させる他の方法として、ガラス基板の表面に凹凸形状を形成する方法もある。ガラス基板表面への凹凸形状の形成方法としては、フッ酸水溶液中にガラス基板を浸してウェットエッチングする方法、サンドブラストを用いる方法(特許文献1参照)がある。ウェットエッチングやサンドブラスト法を用いた場合には、ガラス基板表面の凹凸形状の形状制御が困難であり、この上に太陽電池を作製した場合、安定した太陽電池特性を得にくいという問題点がある。
【0005】
一方、HFガスを用いた気相エッチング装置として、半導体デバイス用の気相エッチング装置が知られている。
【0006】
特許文献2には、半導体製造装置において、処理チャンバー内で、ウエハ基板が載置されるテーブル部の上方に、テーブル部より大きい径の円筒状に形成されたカバー部を配設することが記載されている。具体的には、テーブル部にウエハ基板を載置した後に、テーブル部を上昇させてテーブル部とカバー部との間に密閉空間を形成し、この密閉空間内へ供給口からHFガスの供給を行うとともに排出口から密閉空間内の雰囲気を排気する。そして、密閉空間内へのHFガスの供給が終了したら、供給口及び排出口をいずれも閉状態にし、テーブル部の回転により密閉空間内でHFガスを撹拌させながらウエハ基板に対するエッチング処理を行う。これにより、特許文献2によれば、必要最小限のHFガスを供給してウエハ基板の表面全体に均一にエッチング処理を行い、ウエハ基板の自然酸化膜を除去することができるとされている。
【0007】
特許文献3には、ドライエッチング装置において、薄膜半導体層及び絶縁層からなる多層構造が形成されたガラス基板を試料台に固定する際にガラス基板の裏面と試料台の上面との間に間隙を有するようにピンにて固定し、ガスシャワーからガラス基板の表面に向けてエッチングガスを噴出すると同時に、試料台上の噴射孔からガラス基板の裏面に向けて不活性ガスを噴出することが記載されている。これにより、特許文献3によれば、エッチングガスがガラス基板の裏面に回り込むことを防止するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−199745号公報
【特許文献2】特開2005−142461号公報
【特許文献3】特開平5−315300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の技術は、いずれも、基板上の酸化膜をエッチングすることが前提となっている。
【0010】
一方、特許文献2に記載の技術を用いて、基板そのものの表面に凹凸形状を形成するためのエッチング処理を行うことは困難である。すなわち、特許文献2及び特許文献3に記載の装置を用いて薄膜シリコン太陽電池用のガラス基板をエッチングして基板表面に凹凸形状の形成を行なった場合、ガラス基板の表面全体にわたって凹凸形状が形成される。そのため、モジュール化した場合に周縁部にも凹凸形状があるため、モジュール端面の封止部から水分が進入することがある。また、フレーム嵌合時など周縁部に応力がかかる場合に割れが生じることがある。これにより、特許文献2及び特許文献3に記載の装置を用いてガラス基板をエッチングした場合、モジュールの信頼性を著しく低下させる可能性がある。
【0011】
また、特許文献2に記載の装置を用いた場合、テーブル部の回転によりHFガスを撹拌させるので、その遠心力によりガラス基板の端面に近づくに従ってHFガスの濃度が濃くなりやすく、ガラス基板の表面における中心付近に比べて端面近傍の周縁部で顕著な凹凸形状ができやすい。
【0012】
また、特許文献3に記載の装置を用いた場合、ガスシャワーの噴射孔がガラス基板の端面近くまで設けられているのに対して、試料台上の噴射孔がガラス基板の端面より内側に設けられているので、HFガスがガラス基板の表面における端面近傍の周縁部に到達しやすく、ガラス基板の表面における端面近傍の周縁部に顕著な凹凸形状ができやすい。
【0013】
ガラス基板の表面における端面近傍の周縁部に顕著な凹凸形状が形成された場合、ガラス基板の強度が下がり、耐衝撃性が著しく低下する可能性がある。また、ガラス基板に限らずシリコン基板など他の基板でも反応性ガスで基板の端面近傍の周縁部がエッチングされたり、基板の端面近傍の周縁部に膜が付着したりすることで不具合が生じることがある。たとえば、シリコン基板の表面には周縁部に面取りされたべベル部があるが、この部分に付着した膜がエッチング工程で剥離して歩留まりを低下させることが知られている。
【0014】
さらに、特許文献3に記載の装置を用いた場合、ガスシャワーの噴射孔がガラス基板の端面近くまで設けられているのに対して、試料台上の噴射孔がガラス基板の端面より内側に設けられているので、HFガスがガラス基板の端面や裏面に回り込む可能性があり、ガラス基板の端面や裏面にまで顕著な凹凸形状が形成される可能性がある。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板の裏面、端面、及び基板の表面内の周縁部がガスにさらされることを抑制でき、基板の表面における周縁部を除く処理面をガスで処理できる基板処理装置、基板処理方法、及び太陽電池の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかる基板処理装置は、真空容器と、前記真空容器内に配され、基板が載置される基板ステージと、前記基板ステージに対向する位置から前記基板を処理するガスを供給するガス供給部と、前記基板の処理面に垂直な方向から透視した場合に前記基板の処理面の周縁部を選択的に覆うように配され、前記真空容器における前記ガス供給部側の内壁から前記基板ステージに向かって延在している延在部と、前記基板の処理時において、前記ガス供給部と前記延在部と前記基板の処理面とで囲まれた第1の空間と前記第1の空間より外側の第2の空間とが互いに分離されるように前記基板の処理面の周縁部と前記延在部との距離を近づけ、前記基板の交換時において、前記基板の処理面の周縁部と前記延在部との距離を遠ざける距離調整機構と、第1の排気装置に接続されており、前記基板の処理時において、前記第1の空間を減圧する第1の排気口と、第2の排気装置に接続されており、前記基板の処理時において、前記第2の空間を減圧する第2の排気口とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、延在部を基板の表面における周縁部に近づけて基板の処理面が面する第1の空間と第1の空間より外側の第2の空間とが互いに分離された状態で基板の処理面にガスを供給するので、基板の裏面、端面、及び基板の表面内の周縁部がガスにさらされることを抑制することができ、基板の表面における周縁部を除く処理面をガスで処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施の形態1に係る気相エッチング装置を説明するための断面模式図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る気相エッチング装置を用いた処理方法を説明するための断面模式図である。
【図3】図3は、実施の形態1に係る気相エッチング装置を用いた処理方法を説明するためのフロー図である。
【図4】図4は、実施の形態1に係る気相エッチング装置を用いてガラス基板表面に凹凸形状を形成した薄膜シリコン太陽電池及び太陽電池モジュールの構造を説明するための断面模式図である。
【図5】図5は、実施の形態1に係る気相エッチング装置を用いてシリコン基板表面のシリコン酸化膜をエッチングした場合の構造を説明するための断面模式図である。
【図6】図6は、実施の形態1に係る気相エッチング装置を説明するための断面模式図である。
【図7】図7は、実施の形態2に係る気相エッチング装置を説明するための断面模式図である。
【図8】図8は、実施の形態2に係る気相エッチング装置を用いた処理方法を説明するためのフロー図である
【図9】図9は、実施の形態3に係る気相エッチング装置を説明するための断面模式図及び制御系模式図である。
【図10】図10は、実施の形態3に係る気相エッチング装置を用いた処理方法を説明するためのフロー図である。
【図11】図11は、実施の形態4に係る気相エッチング処理方法を説明するための上面図及び断面図である。
【図12】図12は、実施の形態5に係る気相エッチング装置を用いた処理方法を説明するためのフロー図である。
【図13】図13は、実施の形態6に係る気相エッチング装置を説明するための断面模式図である。
【図14】図14は、実施の形態6に係る気相エッチング装置を用いた処理方法を説明するためのフロー図である。
【図15】図15は、透明導電膜表面に凹凸形状を形成した薄膜シリコン太陽電池の構造を説明するための断面模式図である。
【図16】図16は、ガラス基板表面に凹凸形状を形成した薄膜シリコン太陽電池の構造を説明するための断面模式図である。
【図17】図17は、基本の形態に係る気相エッチング装置を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる基板処理装置として気相エッチング装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
実施の形態1.
実施の形態1にかかる気相エッチング装置100で形成すべき薄膜シリコン太陽電池の基本構成について説明する。
【0021】
ガラス基板を用いた薄膜シリコン太陽電池では、ガラス基板を介して入射した太陽光を効率的に発電に利用するための方法として、ガラス基板上に形成した透明導電膜の表面にテクスチャと呼ばれる凹凸形状を形成して入射光を散乱させ、発電層内での光路長を長くすることで高い発電電流を得る方法がある。
【0022】
薄膜シリコン太陽電池の一例として、図15にアモルファスシリコンを発電層に用いたアモルファスシリコン太陽電池1の断面模式図を示す。ガラス基板2上には、表面に凹凸形状3aを有する第1の透明導電膜3が形成され、この上に、P型アモルファスシリコン膜4、発電層であるI型アモルファスシリコン膜5およびN型アモルファスシリコン膜6から成るアモルファスシリコンセル7が形成される。アモルファスシリコンセル7の上には、第2の透明導電膜8および金属電極膜9が形成されている。すなわち、ガラス基板2上には、第1の透明導電膜3、アモルファスシリコンセル7、第2の透明導電膜8および金属電極膜9を含む太陽電池素子SCEが形成される。
【0023】
薄膜シリコン太陽電池では、ガラス基板を介して入射した太陽光を効率的に発電に利用するため、ガラス基板2上に形成した第1の透明導電膜3の表面にテクスチャと呼ばれる凹凸形状3aを形成して入射光を散乱させ、発電層(I型アモルファスシリコン膜5)内での光路長を長くすることができ、これにより高い発電電流を得ることができる。
【0024】
凹凸形状を形成する第1の透明導電膜3の材料としては、一般的には、酸化スズ(SnO)や酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物材料が用いられる。これらの膜を熱CVDにより数100nm〜1000nm程度形成することで、結晶粒の成長過程において膜表面に凹凸形状を形成する方法がある。また、これらの膜を製膜した後、塩酸水溶液などの酸薬液に浸して膜表面をウェットエッチングして凹凸形状を形成する方法などがある。
【0025】
また、薄膜シリコン太陽電池の入射光を散乱させる他の方法として、ガラス基板の表面に凹凸形状を形成する方法もある。図16に示すアモルファスシリコン太陽電池1iでは、ガラス基板2iの表面に予め凹凸形状2aiを形成し、このガラス基板2iの上に第1の透明導電膜3i、P型アモルファスシリコン膜4、I型アモルファスシリコン膜5、N型アモルファスシリコン膜6、第2の透明導電膜8および金属電極膜9を形成する。すなわち、ガラス基板2i上には、第1の透明導電膜3i、アモルファスシリコンセル7、第2の透明導電膜8および金属電極膜9を含む太陽電池素子SCEiが形成される。この構造では、ガラス基板2iの表面の凹凸形状2aiに対応した凹凸形状3aiが第1の透明導電膜3iの表面に形成されるので、図15に示す構造と同様に、光散乱効果により発電層(I型アモルファスシリコン膜5)内での光路長を伸ばすことが可能である。
【0026】
ガラス基板表面への凹凸形状の形成方法としては、フッ酸水溶液中にガラス基板を浸してウェットエッチングする方法、サンドブラストを用いる方法やHFガス(フッ化水素ガス)を真空中でガラス表面に接触させて気相エッチングする方法がある。
【0027】
ウェットエッチングやサンドブラスト法を用いた場合には、ガラス基板表面の凹凸形状の形状制御が困難であり、この上に太陽電池を作製した場合、安定した太陽電池特性を得にくいという問題点がある。そこで、安定した太陽電池特性を有した薄膜シリコン太陽電池を製造するための装置として気相エッチング装置が期待される。
【0028】
次に、実施の形態1にかかる気相エッチング装置に対する基本の形態について説明する。
【0029】
HFガスを用いた気相エッチング装置としては、シリコン基板上に作製する半導体デバイス用の気相エッチング装置が知られている。図17に、基本の形態にかかる気相エッチング装置10の断面模式図を示す。
【0030】
気相エッチング装置10は、真空容器11、基板ステージ15、排気通路(第2の排気口)12、プロセスガス供給機構19、及びシャワーヘッド(ガス供給部)14を備える。
【0031】
真空容器11は、気相エッチング装置10の外壁を形成するとともに、真空排気可能な空間として反応室CHを形成する。
【0032】
基板ステージ15は、真空容器11内(すなわち、反応室CH内)に配されている。基板ステージ15上には、シリコン酸化膜17が表面に形成されたシリコン基板16が載置される。
【0033】
排気通路12は、真空容器11を貫通する。真空容器11内は、排気通路12を介して真空ポンプ(図示しない)により真空排気される。排気通路12には、図示しない圧力調整バルブと真空ポンプが接続され、真空容器11内の圧力を所望の圧力に調整できる。
【0034】
プロセスガス供給機構19は、シャワーヘッド14を介して真空容器11内のシリコン酸化膜17へ向けてプロセスガスを供給する。プロセスガス供給機構19は、HFガス供給配管22、HOガス供給配管23、及び流量制御装置13を有する。
【0035】
流量制御装置13は、シリコン酸化膜17へ向けて供給すべきプロセスガスの流量を調整する。例えば、流量制御装置13aは、HFガス供給源(図示せず)からHFガス供給配管22を介して供給されたHFガスの流量を調整し、流量調整されたHFガスをシャワーヘッド14へ供給する。例えば、流量制御装置13bは、HOガス供給源(図示せず)からHOガス供給配管23を介して供給されたHO(水蒸気)ガスの流量を調整し、流量調整されたHO(水蒸気)ガスをシャワーヘッド14へ供給する。
【0036】
シャワーヘッド14は、少なくとも一部が真空容器11内(すなわち、反応室CH内)に配され、真空容器11内のシリコン基板16へプロセスガスを供給する。例えば、シャワーヘッド14は、一部が気相エッチング装置10の上壁を形成し、他の一部が真空容器11内で基板ステージ15と対向していてもよい。すなわち、シャワーヘッド14は、基板ステージ15に対向する対向面14aを有する。また、シャワーヘッド14は、流量制御装置13a、13bからプロセスガス(HFガス、HO(水蒸気)ガス)が導入される導入室14bを有する。対向面14aには、導入室14bと反応室CHとを連通する複数のガス供給口21が形成されている。複数のガス供給口21は、例えば、プロセスガスをシリコン基板16へ均一に導入するように、対向面14aにおけるシリコン基板16に対応した領域に略一様に配されている。
【0037】
これにより、導入室14bへ導入されたプロセスガス(HFガス、HO(水蒸気)ガス)が複数のガス供給口21を介してシリコン基板16へ供給され、シリコン基板16の表面の形成されたシリコン酸化膜17がエッチング除去される。
【0038】
基本の形態にかかる気相エッチング装置10は、シリコン基板16上の所定の膜(例えば、シリコン酸化膜17)をHFエッチングすることが前提となっている。
【0039】
一方、基本の形態にかかる気相エッチング装置10を用いて、ガラス基板2iの表面に凹凸形状を形成するためのエッチングを行うことは困難である。すなわち、基本の形態にかかる気相エッチング装置10は、シリコン基板16表面に形成された所定の膜(例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜)をエッチングするための装置であり、基本の形態にかかる気相エッチング装置10を用いて薄膜シリコン太陽電池用のガラス基板2iをエッチングして基板表面に凹凸形状2aiの形成を行なった場合、図16に示すように、ガラス基板2iの表面全体と端面及び裏面の一部にわたって凹凸形状2aiが形成される。そのため、本来であれば、ガラス基板2iに入射する光が散乱されてしまい、局所的に太陽電池特性が劣化してしまうことがある。また、モジュール化した場合に周縁部にも凹凸形状2aiがあるため、モジュール端面の封止部から水分が進入することがある。また、フレーム嵌合時など周縁部に応力がかかる場合に割れが生じることがある。これにより、基本の形態にかかる気相エッチング装置10を用いてガラス基板2iをエッチングした場合、モジュールの性能及び信頼性を著しく低下させる可能性がある。
【0040】
次に、実施の形態1にかかる気相エッチング装置100の構成について図1を用いて説明する。図1は、気相エッチング装置100の構成を示す断面模式図である。以下では、基本の形態にかかる気相エッチング装置10(図17参照)と異なる部分を中心に説明する。
【0041】
気相エッチング装置100は、真空容器11と連結された真空容器111を有する。真空容器111は、真空容器11の壁に設けられた開口部を介して、連結されており、開口部にはゲートバルブ112が設けられている。真空容器111内には、処理すべき基板を載置し、真空容器111から真空容器11に搬送するための基板搬送機構113と、排気通路110が設けられている。また、真空容器111は、図示しない基板を挿入するためのゲートバルブを設けた開口部を有する。
【0042】
また、気相エッチング装置100は、基板ステージ115、上下機構(距離調整機構)20、シャワーヘッド114、延在部120、排気通路(第2の排気口)140、及び基板搬送機構(基板交換機構)113を備える。
【0043】
基板ステージ115は、表面が第1の空間SP101を向き、側面が第2の空間SP102を向いている。第1の空間SP101及び第2の空間SP102は、反応室CH100に含まれている。
【0044】
基板ステージ115上には、ガラス基板2jが載置される。基板ステージ115は、例えば加熱機構(図示せず)を有し、載置されたガラス基板2jを加熱する。
【0045】
上下機構20は、基板ステージ115の下方に設けられており、基板ステージ115全体を上下させることができる。例えば、上下機構20は、ガラス基板2jの処理時において、シャワーヘッド114に近づくように基板ステージ115を上昇させ、ガラス基板2jの交換時において、シャワーヘッド114から遠ざかるように基板ステージ115を下降させる。
【0046】
シャワーヘッド114は、対向面114a及び延在部120を有する。対向面114aは、シャワーヘッド114における基板ステージ115に対向する面である。対向面114aには、導入室114bと第1の空間SP101とを連通する複数のガス供給口121が形成されている。複数のガス供給口121は、例えば、プロセスガスをガラス基板2jへ均一に導入するように、対向面114aにおけるガラス基板2jに対応した領域に略一様に配されている。
【0047】
延在部120は、シャワーヘッド114における対向面114aの縁部114a1(すなわち、真空容器11におけるシャワーヘッド114側の内壁)から基板ステージ115に向かってガラス基板2jを囲むように延在している。すなわち、延在部120は、ガラス基板2jの表面に垂直な方向から透視した場合にガラス基板2jの表面における周縁部を選択的に覆うように配されている。延在部120は、ガラス基板2jに対応した形状を有しており、ガラス基板2jが略長方形である場合、略角筒形状を有している。
【0048】
シール部材130は、ガラス基板2jの表面における周縁部に密着するように、延在部120の先端面(すなわち基板ステージ115と対向する面)に設けられている。すなわち、シール部材130は、ガラス基板2jと対向する面として連続面130aを有している。シール部材130の材料は、HFに耐性があり、かつ、高温でも劣化しないものが好ましい。また、基板ステージ115が上昇し、ガラス基板2jの表面における周縁部とシール部材130とを密着させるため、シール部材130の材料は、弾性に優れた材料が好ましく、テフロン(登録商標)やポリプロピレンやブチルゴムなどの樹脂材料やゴム材料が好ましい。
【0049】
排気通路140は、延在部120を貫通しさらに真空容器11も貫通して真空容器11の外部まで延びている。排気通路140は、排気通路12とは別系統の排気通路であり、延在部120及び真空容器11を貫通している。これにより、排気通路140は、第2の空間SP102を経由せずに第1の空間SP101と真空容器11外とを連通している。排気通路140には図示しない圧力調整機構(第2の圧力調整機構)と真空ポンプ(第2の排気装置)とが接続され、ガラス基板2jの処理時において、シャワーヘッド114と延在部120とシール部材130とガラス基板2jとで囲まれた第1の空間SP101を所望の圧力に調整できる。
【0050】
なお、排気通路12には、図示しない圧力調整機構(第1の圧力調整機構)と真空ポンプ(第1の排気装置)とが接続され、ガラス基板2jの処理時において、第1の空間SP101より外側の第2の空間SP102を所望の圧力に調整できる。
【0051】
基板搬送機構113は、ガラス基板2jの交換時において、上下機構20によりガラス基板2jの表面の周縁部と延在部120との距離が遠ざけられた状態で、真空容器11における基板ステージ115側方の内壁に設けられた開口部を介して基板ステージ115上のガラス基板2jを交換する。
【0052】
次に、図2及び図3を用いて、気相エッチング装置100の動作及びガラス基板2jの表面に凹凸形状を形成する処理手順について説明する。
【0053】
まず、真空容器111を大気開放し、ガラス基板2jを基板搬送機構113に設置し、真空容器11内を真空排気する(S1.1)。真空容器111の真空排気完了後、ゲートバルブ112を開きガラス基板2jを真空容器11へ基板搬送機構113により搬送する(S1.2)。その後、基板ステージ115にガラス基板2jを載置する(S1.3)。基板搬送機構113が真空容器111に戻り、ゲートバルブ112を閉じた後、基板ステージ115が上下機構20により延在部120の対向面とガラス基板2jとが近づくように上昇する(S1.4)。このとき、延在部120の対向面に設けられたシール部材130はガラス基板2jの表面における周縁部と密着する。次に、シャワーヘッド114からHFガスを含むプロセスガスを供給し(S1.5)、シャワーヘッド114とシール部材130とガラス基板2jとで囲まれた第1の空間SP101の圧力を所定の圧力に調整する(S1.6)。
【0054】
この際、HFガスがガラス基板2jに吸着することで、ガラス基板2jの表面における周縁部を除く領域(処理面)がエッチングされて凹凸形状2aj(図4(a)参照)が形成される。このとき、ガラス基板2jの表面における周縁部は、平坦形状2bj(図4(a)参照)に維持される。
【0055】
また、排気通路140を介して、反応生成物や未反応ガスが排気される。
【0056】
そして、エッチング処理を所定の時間行った後(S1.7)、HFガスを含むプロセスガスの供給を停止してエッチングを終了する(S1.8)。真空容器11内(すなわち、第1の空間SP101内)の残留ガスや反応生成物を真空排気した後(S1.9)、延在部120及びシール部材130をガラス基板2jから離し(S1.10)、表面に凹凸形状2ajの形成されたガラス基板2jを取り出す(S1.11)。前述の通り、少なくとも、HFガスを含むプロセスガスを真空容器11内に供給している期間、延在部120の先端面に設けたシール部材130とガラス基板2jの表面における周縁部とを接触(密着)させ、第1の空間SP101と第2の空間SP102とに分離する。
【0057】
以上のように、実施の形態1では、気相エッチング装置100において、延在部120が、ガラス基板2jの表面に垂直な方向から透視した場合にガラス基板2jの表面の周縁部を選択的に覆うように配され、対向面114aの縁部114a1(真空容器11におけるシャワーヘッド114側の内壁)から基板ステージ115に向かって延在している。シール部材130が、延在部120の先端面に設けられ、ガラス基板2jの表面と対向する面として連続面130aを有する。これにより、少なくともHFガスを真空容器11内に供給する期間において、シール部材130をガラス基板2jの表面における周縁部に密着させることができ、ガラス基板2jの表面における周縁部へのHFガスの供給を抑制することができる。すなわち、延在部120をガラス基板2jの表面における周縁部に近づけてガラス基板2jの処理面が面する第1の空間SP101と第1の空間SP101より外側の第2の空間SP102とが互いに分離された状態でガラス基板2jの処理面にガスを供給するので、ガラス基板2jの裏面、端面、及び基板の表面内の周縁部がガスにさらされることを抑制することができ、ガラス基板2jの表面における周縁部を除く処理面をガスで処理できる。これにより、ガラス基板2jの表面における周縁部への凹凸形状の形成を抑制することができ、ガラス基板2jの端面、裏面への凹凸形状の形成を抑制することができ、ガラス基板2jの表面における周縁部を除く領域に凹凸形状を形成できる(図4(a)参照)。
【0058】
なお、残留ガスや反応生成物を真空排気した後(S1.9)、S1.5からS1.9の操作を繰り返し行っても良い。そうすることで、反応性生物が除去され、エッチレートを大きくすることが可能となる。また、繰り返し回数を変えることにより、凹凸の大きさを変えることができるため、所望の大きさの凹凸を得られるという効果も奏する。
【0059】
次に、実施の形態1の基板処理装置を用いて作製した太陽電池モジュールについて、図4を用いて説明する。ガラス基板2jを実施の形態1の基板処理装置を用いてエッチングすると、表面における周縁部に平坦形状2bjを有するガラス基板2jとなる。また、側面、裏面においても凹凸が形成されることはなく、側面、裏面もそれぞれ平坦形状を有する。そのガラス基板上にスパッタなどを用いて第1の透明電極3jを形成する。第1の透明導電膜3jも、表面における周縁部の内側に凹凸形状2ajに対応した凹凸形状3ajを有するとともに、表面における周縁部に平坦形状2bjに対応した平坦形状3bjを有する。さらにその上に、CVD装置などを用いて、P型アモルファスシリコン膜4、I型アモルファスシリコン膜5、N型アモルファスシリコン膜6を形成し、さらにスパッタ装置などを用いて第2の透明導電膜8および金属電極膜9を形成する。これらの膜も同様に表面における周縁部に平坦形状2bjに対応した平坦形状9bjを有する。以上によりアモルファスシリコン太陽電池1jを得ることができる。
【0060】
アモルファスシリコン太陽電池1jのモジュール化について図4(b)を用いて説明する。アモルファスシリコン太陽電池1jはレーザースクライブ加工溝により直列接続されており、基板両端の電力取出し領域から外部に電力を取出すリード線が接続されている(図示せず)。アモルファスシリコン太陽電池1jとガラスやバックシートからなる保護部材2kをEVAやPVBなどの充填材24を介して貼り付けることで太陽電池モジュール10jとなる。この構造では、周縁部において、平坦形状9bjを介して接するEVAなどの充填材24との間に隙間ができにくい。これにより、アモルファスシリコン太陽電池1jをモジュール化した場合に、モジュール端面の封止部から水分が進入することを抑制できる。また、端面に凹凸が形成されないため、ガラスの強度を維持することができ、モジュールの耐衝撃性を向上できる。さらに、裏面に凹凸が形成されないため、ガラス基板に入射する光が散乱されにくく、局所的な太陽電池特性の劣化を抑制でき、高性能の太陽電池モジュールを得ることが可能となる。なお、ガラス基板2jの上に配置する太陽電池素子として上記のような薄膜シリコン系に限らず、化合物系や有機系など他の材料系であってもよく、結晶基板などを用いた素子であってもよい。
【0061】
また、実施の形態1の基板処理装置を用いたシリコン基板16上のシリコン酸化膜17のエッチングについて図5を用いて説明する。シリコン基板16上のシリコン酸化膜17を実施の形態1の基板処理装置を用いてエッチングすると、図5のように基板周縁部16aとベベル部16bのみシリコン酸化膜17a、17bがエッチングされずに残った形状となる。これにより、エッチング工程中のベベル部16bの膜剥がれを抑制することができ、歩留まり低下を抑制することが可能となる。
【0062】
また、実施の形態1では、排気通路240は、排気通路12とは別系統の排気通路であり、延在部120及び真空容器11を貫通している。これにより、排気通路240は、第2の空間SP102を経由せずに第1の空間SP101と真空容器11外とを連通している。これにより、第1の空間SP101で発生した残留ガスや反応生成物を第2の空間SP102及び排気通路12を経由することなく真空容器11外へ排気することができる。
【0063】
また、実施の形態1では、気相HFエッチング処理方法において、延在部120の先端面に設けられたシール部材130をガラス基板2jの表面における周縁部に密着させるように、基板ステージ115をシャワーヘッド114側へ移動させる。これにより、ガラス基板2jの表面における周縁部へのHFガスの供給を抑制することができると同時に、第1の空間SP101と第2の空間SP102とを分離し、第1の空間SP101からプロセスガスが第2の空間SP102に漏れ出さないようにすることができる。
【0064】
また、実施の形態1では、シール部材130が、耐HF性、耐熱性、弾性を有する樹脂材料またはゴム材料からなる。これにより、ガラス基板2jの表面における周縁部とシール部材130とを効果的に密着させることができる。
【0065】
なお、延在部120は、基板ステージ115よりも真空容器11におけるシャワーヘッド114側の内壁から、ガラス基板2jの処理面を囲むように延びていればよい。すなわち、ガラス基板2jの表面に垂直な方向から透視した場合に、ガラス基板2jの表面における周縁部を選択的に覆うように配されていればよい。例えば、延在部120は、変形例である図6に示すような構成でもよい。延在部120は、ガラス基板2jを基板ステージ115上に搬送する際に妨げとならないようになっていればよい。また、基板ステージ115に対向する位置からガラス基板2jを処理するガスを供給するガス供給部としてシャワーヘッド114を用いたので、基板面内にガスを均一に供給することができるが、これに限らずガス供給配管の開口部を真空容器11の基板ステージ115に対向する位置に設けた構造としてもよい。
【0066】
また、基板の反りによってシール部材130とガラス基板2jとの間に隙間ができたり、ガラス基板2jが割れるなどして、第1の空間SP101からHFなどのプロセスガスが漏れる可能性がある。それに対して、実施の形態1では、第2の空間SP102及び排気通路12を設けて2重構造としているため、外部へのプロセスガスの漏れを防止することができる。
【0067】
実施の形態2.
次に、実施の形態2にかかる気相エッチング装置200について説明する。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0068】
実施の形態1の装置構成では、第1の空間SP101に供給されたプロセスガスがシール部材130をガラス基板2jの表面における周縁部に密着させることで、周縁部へのHFガスの供給の抑制及び、真空容器11内の第2の空間SP102へのHFガスの供給の抑制を図っているが、ガラスの反りや圧力差によって、僅かではあるが、HFガスがガラス基板2jの縁部や第2の空間SP102にもれ、表面の縁部、端面、裏面がエッチングされる可能性がある。
【0069】
そこで、実施の形態2では、第2の空間SP102に不活性ガスを供給する。
【0070】
具体的には、図7に示すように、気相エッチング装置200は、不活性ガス供給機構221をさらに備える。不活性ガス供給機構221は、例えば、ガラス基板2jの処理時において、第2の空間SP102に不活性ガスを供給する。不活性ガスは、例えば、N、Arなどのガスを用いることができる。
【0071】
また、気相エッチング装置200の動作が、図8に示すように、次の点で実施の形態1と異なる。
【0072】
実施の形態1と同様にS1.1〜S1.4の処理を行った後に、シャワーヘッド114により第1の空間SP101にプロセスガスを供給するとともに、不活性ガス供給機構221により第2の空間SP102に不活性ガスを供給する(S2.5)。その後、実施の形態1と同様にS1.6〜S1.8の処理を行った後に、第1の空間SP101内の残留ガスや反応生成物を真空排気するとともに、第2の空間SP102内の不活性ガスを真空排気する(S2.9)。その後、実施の形態1と同様にS1.10〜S1.11の処理を行う。
【0073】
このように、実施の形態2では、不活性ガス供給機構221が、例えば、ガラス基板2jの処理時において、第2の空間SP102に不活性ガスを供給する。これにより、ガラス基板2jの処理時において、僅かに第1の空間SP101から第2の空間SP102に漏れ出たプロセスガスを不活性ガス供給部221から供給された不活性ガスにより希釈できる。この結果、ガラス基板2jの表面における周縁部、端面、裏面への凹凸形状の形成をさらに抑制することができる。
【0074】
実施の形態3.
次に、実施の形態3にかかる気相エッチング装置300について説明する。以下では、実施の形態1、2と異なる部分を中心に説明する。
【0075】
実施の形態1、2の装置構成では、第1の空間SP101に供給されたプロセスガスが、圧力差により第2の空間SP102へ漏れ出る可能性がある。また、圧力差によりガラス基板2jが割れてしまう可能性がある。
【0076】
そこで、実施の形態3では、ガラス基板2jの処理時において、第1の空間SP101の圧力が第2の空間SP102の圧力より低くなるように制御する。
【0077】
具体的には、気相エッチング装置300は、図9(a)に示すように、第1の空間SP101の圧力と第2の空間SP102の圧力とを調整する圧力調整機構340をさらに備える。圧力調整機構340は、第1の空間SP101の圧力と第2の空間SP102の圧力とをそれぞれ検知して、検知結果に応じて、第1の空間SP101の圧力が第2の空間SP102の圧力より低くなるように、排気通路240による第1の空間SP101からの排気量と排気通路212による第2の空間SP102からの排気量とをそれぞれ調節する。
【0078】
さらに具体的には、圧力調整機構340は、図9(b)に示すように、圧力計P1、P2、制御部330、流量制御装置13a、13b、13c、及び調整バルブ222b、242bを有する。圧力計P1は、例えば、排気通路240における調整バルブ222bと第1の空間SP101との間に設けられ、第1の空間SP101の圧力を検知し、検知結果を制御部330へ供給する。圧力計P2は、例えば、排気通路212における調整バルブ242bと第2の空間SP102との間に設けられ、第2の空間SP102の圧力を検知し、検知結果を制御部330へ供給する。
【0079】
制御部330は、圧力の検知結果を圧力計P1、P2からそれぞれ受ける。制御部330は、圧力計P1による検知結果と圧力計P2による検知結果とに応じて、流量制御装置13a、13b、13cによる制御すべき流量や、調整バルブ222b、242bのそれぞれの制御すべき開度を求める。すなわち、制御部330は、第1の空間SP101の圧力が第2の空間SP102の圧力より低くなるように、流量制御装置13a、13bによる第1の空間SP101への目標流量と排気通路240による第1の空間SP101からの目標排気量と流量制御装置13cによる第2の空間SP102への目標流量と排気通路212による第2の空間SP102からの目標排気量とを求め、各目標値がそれぞれ得られるように、各目標値に応じた制御信号を生成する。制御部330は、生成された制御信号を流量制御装置13a、13b、13c、調整バルブ222b、242bへそれぞれ供給する。
【0080】
流量制御装置13a、13bは、それぞれ、制御部330から制御信号を受け、制御信号に従って第1の空間SP101へ供給すべきプロセスガスの流量を調整する。流量制御装置13cは、制御部330から制御信号を受け、制御信号に従って第2の空間SP102へ供給すべき不活性ガスの流量を調整する。
【0081】
調整バルブ222bは、制御部330から制御信号を受け、制御信号に従ってその開度を変更する。調整バルブ242bは、制御部330から制御信号を受け、制御信号に従ってその開度を変更する。
【0082】
また、気相エッチング装置300の動作が、図10に示すように、次の点で実施の形態1と異なる。
【0083】
実施の形態1と同様にS1.1〜S1.4の処理を行った後に、不活性ガス供給機構221により第2の空間SP102に不活性ガスを供給し(S3.5)、シャワーヘッド114により第1の空間SP101にプロセスガスを供給する(S3.6)。
【0084】
このとき、常に「第1の空間SP101の圧力」<「第2の空間SP102の圧力」となるように第1の空間SP101にプロセスガスを供給し始めるよりも早いタイミングで第2の空間SP102に不活性ガスを供給し始め、制御部330により圧力を制御しながら双方のガスを供給する(S3.7)。その後、実施の形態1と同様にS1.7〜S1.8の処理を行った後に、第1の空間SP101内の残留ガスや反応生成物を真空排気するとともに、第2の空間SP102内の不活性ガスを真空排気する(S2.9)。その後、実施の形態1と同様にS1.10〜S1.11の処理を行う。
【0085】
このように、実施の形態3では、圧力調整機構340が、例えば、ガラス基板2jの処理時において、第1の空間SP101の圧力が第2の空間SP102の圧力より低くなるように制御する。これにより、第1の空間SP101にプロセスガスが供給された際に、第1の空間SP101から第2の空間SP102へプロセスガスが漏れることを抑制できる。
【0086】
なお、第1の空間の圧力P1と第2の空間の圧力P2はP1<P2となればよく、さらにその圧力差は1000Pa以下であることが好ましい。例えば基板サイズが1m×1mで、厚みが4mm、のガラス基板の場合には基板に生じる最大曲げ応力σmax=β・q・a2/t2 (σmax:最大曲げ応力、β:応力係数、q:圧力差、a:短辺の長さ、t:基板厚さ)が約27MPaとガラスの許容応力以下となり、基板が割れることを抑制できる。
【0087】
実施の形態4.
次に、実施の形態4にかかる気相エッチング処理方法について説明する。以下では、実施の形態1〜3と異なる部分を中心に説明する。
【0088】
実施の形態1〜3の装置構成では、シール部材のガラス基板との対向面に反応生成物などのゴミが付着した場合、第1の空間SP101から第2の空間SP102へプロセスガスが漏れ出る可能性がある。また、ゴミを除去しようとした場合、真空容器11を大気開放する必要があり、その作業は非常に煩雑である。
【0089】
そこで、実施の形態4では、シール部材に代えて、ガラス基板の表面における周縁部を覆う枠を予めガラス基板に付けて装置に導入する。
【0090】
例えば、図11(a)に示すように、ガラス基板2jの縁部に樹脂材料からなる枠430を載置する。枠430はガラス基板2jに対応した形状を有している。枠430の断面形状は、例えば、図11(b)〜(d)に示すようなものが考えられる。図11(b)〜(d)は、それぞれ、図11(a)の枠430をA−A’線で切った場合の断面を示す図である。枠430の断面形状は、例えば図11(b)に示すように、ガラス基板2jと密着するように扁平な円形や角形でもよい。あるいは、枠430の断面形状は、例えば図11(c)に示すように、枠の位置ずれを抑制するため、一部または全周にわたって端面を覆うような形状でもよく、あるいは、例えば図11(d)に示すように、裏面にかかる形状であってもよい。
【0091】
実施の形態1〜3と同様、基板ステージ115が上昇し、延在部120とガラス基板2jとの距離が近づいた際、枠430は延在部120とガラス基板2jにはさまれ、第1の空間SP101と第2の空間SP102とを分離することができる。
【0092】
このように、実施の形態4では、枠430をガラス基板2jの表面における周縁部に密着させることができ、ガラス基板2jの表面における周縁部へのHFガスの供給及び、真空容器11内の第2の空間SP102へのHFガスの供給を抑制することができる。これにより、ガラス基板2jの表面における周縁部への凹凸形状の形成を抑制することができ、また、ガラス基板2jの端面、裏面への凹凸形状の形成を抑制することができる。
【0093】
なお、処理後のガラス基板2jが装置外に出てくる度に枠430を洗浄すればよく、装置内にシール部材を設けた場合とは異なり、真空容器11を大気開放する必要性を低減できる。
【0094】
実施の形態5.
次に、実施の形態5にかかる気相エッチング処理方法について説明する。以下では、実施の形態1〜3と異なる部分を中心に説明する。
【0095】
実施の形態1〜3に記載の処理方法では、プロセスガスを常に供給、排気しながら、一定の圧力に保ってエッチング処理をしているが、ガスを常に流すため、ガス消費量が多くなる。
【0096】
そこで、実施の形態5では、ガス消費量を低減するために、所望の圧力に達するまで、プロセスガスを供給した後、プロセスガスの供給、真空排気を停止する封じ切りプロセスを行う。
【0097】
具体的には、気相エッチング装置200の動作が、図12に示すように、以下の点で実施の形態1〜3と異なる。
【0098】
実施の形態3と同様にS1.1〜S3.7の処理を行った後に、第1の空間SP101へのプロセスガスの供給及び第1の空間SP101からの真空排気を停止する(S5.8)。そして、プロセスガスの供給及び真空排気を停止した状態、すなわち封じ切りの状態で、所定の時間エッチング処理する(S5.9)。そして、第1の空間SP101内の残留ガスや反応生成物を真空排気するとともに、第2の空間SP102内の不活性ガスを真空排気する(S2.9)。その後、実施の形態1と同様にS1.10〜S1.11の処理を行う。
【0099】
このように、実施の形態5では、封じ切りプロセスを用いて、ガス消費量を低減でき、ガラス基板2jの表面における周縁部、端面、裏面への凹凸形状の形成を抑制することができる。
【0100】
また、実施の形態5では、エッチング処理時におけるプロセスガスの圧力を安定化及び均一化することが容易なので、凹凸形状の制御性を向上できる。
【0101】
なお、ガラス基板2jの表面に垂直な方向における延在部120の長さを短くし、シャワーヘッド114の対向面114aとガラス基板2jの表面との距離を縮めてもよい。この場合、第1の空間SP101の体積を狭くすることができるため、供給するガス量をさらに低減することが可能となる。
【0102】
また、実施の形態4と実施の形態5とを組み合わせてもよい。すなわち、実施の形態5において、シール部材に代えて、ガラス基板の表面における周縁部を覆う枠を予めガラス基板に付けて装置に導入してもよい。
【0103】
実施の形態6.
次に、実施の形態6にかかる気相エッチング処理装置500について説明する。以下では、実施の形態1〜3と異なる部分を中心に説明する。
【0104】
実施の形態1〜3に記載の装置構成では、基板の表面における縁部、基板の端面、裏面への凹凸形状の形成を抑制するため、排気通路を別に設ける必要があり、装置が高価になり、コスト増となる問題がある。モジュールの信頼性に最も影響が大きい表面における縁部への凹凸形状を抑制し、装置構成を簡単にする必要がある。
【0105】
そこで、実施の形態6では、排気通路240(図1参照)を設ける代わりに、第1の空間SP101と第2の空間SP102とを連通させる。
【0106】
具体的には、図13のように、気相エッチング処理装置500において、延在部520は、複数の貫通孔522を有している。各貫通孔522は、第1の空間SP101と第2の空間SP102とを連通する。第1の空間SP101は、シール部材130をガラス基板2jの表面における縁部に密着させた際のシャワーヘッド114、シール部材130、及びガラス基板2jにより囲まれた空間である。第2の空間SP102は、排気通路12に至る空間である。
【0107】
また、気相エッチング装置の動作が、図14に示すように、次の点で実施の形態1と異なる。
【0108】
実施の形態1と同様にS1.1〜S1.5の処理を行った後に、第1の空間SP101の圧力と第2の空間SP102の圧力とをそれぞれ所定の圧力に調整する(S6.5)。このとき、例えば、第1の空間SP101から第2の空間SP102へプロセスガスがスムーズに排出されるように、「第1の空間SP101の圧力」>「第2の空間SP102の圧力」が維持されるように調整してもよい。そして、実施の形態1と同様にS1.7〜S1.8の処理を行った後に、貫通孔522及び第2の空間SP102を介して第1の空間SP101を真空排気する(S6.8)。その後、実施の形態1と同様にS1.10〜S1.11の処理を行う。
【0109】
このように、実施の形態6では、装置構成を簡略化できるので、低コストで太陽電池を作製可能である。
【0110】
なお、上記の実施の形態1〜6において、プロセスガスとしてHFガスおよびHOガスを含むプロセスガスについて例示的に説明したが、これに限定されない。例えば、エッチング反応を促進させるHOガスについて、エチルアルコールやメチルアルコール、もしくはこれらの混合ガスを用いても良い。
【0111】
また、上記の実施の形態1〜6において、薄膜シリコン太陽電池のガラス基板を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、ガラスの片面に凹凸形状を形成し、端面を封止して用いる光起電力装置であれば、たとえば結晶シリコン系や化合物半導体の太陽電池など、他の構造であっても良い。
【0112】
また、ガラス基板に限らずシリコン基板など他の基板でも反応性ガスで縁部がエッチングされたり、縁部に膜が付着したりすることで不具合が生じることがある。本発明の基板処理装置および基板処理方法によれば、そのような不具合を抑制することができる。たとえば、シリコン基板には縁に面取りされたべベル部があるが、この部分に付着した膜がエッチング工程で剥離して歩留まりを低下することが知られている。本発明によればエッチングマスクを作製することなく、縁の膜のエッチングを防止して、製造の歩留まりを向上できる。また、本発明を成膜装置に応用すれば、膜が縁に成膜されないため、そのような問題が生じることを防止できる。たとえば、オゾンとTEOSを用いたCVD装置、オゾンによる表面処理などにも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明にかかる気相エッチング装置、及び気相HFエッチング処理方法は、薄膜シリコン太陽電池を含む光起電力装置の製造に有用である。
【符号の説明】
【0114】
1、1i、1j アモルファスシリコン太陽電池
2、2i、2j ガラス基板
2ai、2aj 凹凸形状
2bj 平坦形状
3、3i、3j 第1の透明導電膜
3a、3ai、3aj 凹凸形状
3bj 平坦形状
4 P型アモルファスシリコン膜
5 I型アモルファスシリコン膜
6 N型アモルファスシリコン膜
7 アモルファスシリコンセル
8 第2の透明導電膜
9 金属電極膜
10 気相エッチング装置
11 真空容器
12 排気通路
13、13a、13b、13c 流量制御装置
14 シャワーヘッド
14a、114a 対向面
15 基板ステージ
16 シリコン基板
17 シリコン酸化膜
19 プロセスガス供給機構
20 上下機構
21 ガス供給口
22 HFガス供給配管
23 HOガス供給配管
24 充填材
100 気相エッチング装置
110 排気通路
111 真空容器
112 ゲートバルブ
113 基板搬送機構
114 シャワーヘッド
114c、214c 延在部
115 基板ステージ
120 延在部
121 ガス供給口
130 シール部材
140 排気通路
200 気相エッチング装置
212 排気通路
221 不活性ガス供給機構
222b、242b 調整バルブ
240 排気通路
300 気相エッチング装置
330 制御部
340 圧力調整機構
430 枠
500 気相エッチング処理装置
520 延在部
522 貫通孔
CH 反応室
SP101 第1の空間
SP102 第2の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器内に配され、基板が載置される基板ステージと、
前記基板ステージに対向する位置から前記基板を処理するガスを供給するガス供給部と、
前記基板の表面に垂直な方向から透視した場合に前記基板の表面の周縁部を選択的に覆うように配され、前記真空容器における前記ガス供給部側の内壁から前記基板ステージに向かって延在している延在部と、
前記基板の処理時において、前記ガス供給部と前記延在部と前記基板の処理面とで囲まれた第1の空間と前記第1の空間より外側の第2の空間とが互いに分離されるように前記基板の表面の周縁部と前記延在部との距離を近づけ、前記基板の交換時において、前記基板の表面の周縁部と前記延在部との距離を遠ざける距離調整機構と、
第1の排気装置に接続されており、前記基板の処理時において、前記第1の空間を減圧する第1の排気口と、
第2の排気装置に接続されており、前記基板の処理時において、前記第2の空間を減圧する第2の排気口と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記延在部の先端面に設けられた、樹脂材料からなるシール部材をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1の空間の圧力と前記第2の空間の圧力とを調整する圧力調整機構をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板の処理時において、前記第2の空間に不活性ガスを供給する第2のガス供給部をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板の交換時において、前記距離調整機構により前記基板の表面の周縁部と前記延在部との距離が遠ざけられた状態で、前記真空容器における前記基板ステージ側方の内壁に設けられた開口部を介して前記基板ステージ上の前記基板を交換する基板交換機構をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
真空容器内に配された基板ステージへ基板を載置する工程と、
前記基板の表面に垂直な方向から透視した場合に前記基板の表面の周縁部を選択的に覆うように配され前記真空容器におけるガス供給部側の内壁から前記基板ステージに向かって延在している延在部を前記基板の表面の周縁部に近づけて、前記ガス供給部と前記延在部と前記基板の処理面とで囲まれた第1の空間と前記第1の空間より外側の第2の空間とを互いに分離する工程と、
前記第1の空間及び前記第2の空間をそれぞれ減圧する工程と、
前記ガス供給部から前記第1の空間にガスを供給し前記基板を処理する工程と、
前記基板の表面の周縁部と前記延在部との距離を遠ざけて、前記基板ステージ上の前記基板を交換する工程と、
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
前記処理する工程では、前記第1の空間の圧力が前記第2の空間の圧力より低くなるように制御される
ことを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記載置する工程では、前記基板の表面の周縁部に樹脂材料からなる枠を付けて、前記基板を載置し、
前記分離する工程では、前記延在部と前記基板の表面の周縁部とで前記枠を挟み込んで、前記第1の空間と前記第2の空間とを互いに分離する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記処理する工程は、
前記ガス供給部から前記第1の空間にガスを供給する工程と、
前記第1の空間へのガスの供給と前記第1の空間からの排気とを停止する工程と、
を含む
ことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板は、ナトリウム及びカルシウムの少なくとも一方を含むガラス基板であり、
前記基板を処理すべきガスは、HFガスを含み、
前記処理する工程では、前記基板の処理面に対して前記HFガスでエッチング処理を施して粗面に加工する
ことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理方法でガラス基板を処理する工程と、
前記処理されたガラス基板の上に、太陽電池素子を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−84895(P2013−84895A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−116447(P2012−116447)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】