説明

基板検査装置

【課題】電源部と被測定部との間で電流値を測定する低コストな基板検査装置の提供
【解決手段】絶縁回路部InC−yは、オペアンプA2−y、抵抗Rs−y、ツェナーダイオードD1−y、リミッターLM−y、抵抗R2−y、ダイアックD2−y、及びオペアンプA3−yを有している。オペアンプA2−yの非反転入力端子には、オペアンプA1の出力が接続される。オペアンプA2−yの出力は、抵抗Rs−y、リミッターLM−yを介して、基板接続部MaR−yの入力端子に入力される。オペアンプA2−yの出力は、オペアンプA3−y等を介して、オペアンプA2−yの反転入力端子に入力される。これにより、電源部EC−と基板接続部MaR−y間で、複数の被測定抵抗Rx−yに流れる電流値を同時に計測し、また、ある被測定部Rx−yの短絡時においても、他の被測定部Rx−yに流れる電流値を正確に計測できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板検査装置であって、特に、電源部と被測定部との間で電流値を測定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
基板検査装置であるマイグレーションテスターについて説明する。マイグレーションテスターとは、プリント基板の配線間の抵抗を測定し、測定結果に基づいてプリント基板の長期信頼性を評価するための装置である。マイグレーションテスターには、ロヮサイド型とハイサイド型が存在する。
【0003】
ロヮサイド型のマイグレーションテスターとは、プリント基板の配線間の抵抗(被測定抵抗)のリターン側で電流値を測定するものをいう。ロヮサイド型のマイグレーションテスターの一例を図9に示す。ロヮサイド型のマイグレーションテスター50では、被測定抵抗のリターン側で電流値を測定するため、電流値を計測する回路にかかる電圧を接地電圧とすることができる。このため、ロヮサイド型のマイグレーションテスターは、高電圧に対する処理技術・製品を必要とせず、技術的にも、コスト的にも実現が容易であることから、これまで多く使用されてきた。しかし、ロヮサイド型のマイグレーションテスターでは、実装済み基板等の信頼性試験を行う場合、被測定抵抗のリターン側に続く回路構成が実際の実装済み基板等の回路構成とは異なるものとなるため、マイグレーションテスターによる信頼性試験を行うにあたって、実装済み基板等に改良を加える必要があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−45349 一方、ハイサイド型のマイグレーションテスターとは、被測定抵抗のバイアス印加側で電流値を計測するものをいう。ハイサイド型のマイグレーションテスターの一例を図10に示す。ハイサイド型のマイグレーションテスター100では、被測定抵抗のバイアス印加側で電流値を計測するため、実装済み基板等であっても、実装済み基板等い改良を加えることなく信頼性試験を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のハイサイド型のマイグレーションテスターには、次のような問題点がある。ハイサイド型のマイグレーションテスターで、同時に複数の配線間抵抗を測定する多チャンネル化を行おうとすると、各チャンネルごとに高圧アンプを設ける必要がある。単体でも高価な高圧アンプを複数用いるため、複数チャンネルを有するハイサイド型のマイグレーションテスターはコスト高となる、という問題点がある。
【0006】
なお、ハイサイド型のマイグレーションテスターにおいて、多チャンネル化を実現しようためには、各チャンネルを他のチャンネルから絶縁することを、バイアス印加側という高圧下において実現する必要があり、高度な絶縁技術を要する。
【0007】
そこで、本発明では、電源部と被測定部との間で電流値を測定する低コストな基板検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に関する課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0009】
本発明に係る基板検査装置は、一つの電源部、及び、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部を有し、前記電源部と前記基板接続部との間で前記被測定部に流れる電流値を計測する基板検査装置において、ある前記被測定部において短絡が生じた場合に、他の前記被測定部に流れる電流値が変化しないようにする絶縁部を、前記電源部と前記基板接続部のそれぞれとの間に有する。
【0010】
これにより、前記電源部と前記基板接続部との間において、複数の前記被測定部に流れる電流値を同時に計測することができる。また、ある前記被測定部において短絡が生じたとしても、他の前記被測定部に流れる電流値を正確に計測することができる。
【0011】
本発明に係る基板検査装置では、前記絶縁部は、前記電源部に対して高インピーダンスを有している。
【0012】
このため、一の前記被測定部を、他の前記被測定部及び前記電源部から絶縁することができる。よって、ある前記被測定部において短絡が生じたとしても、他の前記被測定部に流れる電流値を正確に計測することができる。
【0013】
本発明に係る基板検査装置では、前記絶縁部は、前記電源部からの出力電圧を入力電圧とする電圧増幅器を有する。
【0014】
これにより、高インピーダンスの電圧増幅器を設けるだけで、容易に、一の前記被測定部を、他の前記被測定部及び前記電源部から絶縁することができる。
【0015】
本発明に係る基板検査装置では、前記電圧増幅器は、さらに、前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、前記電源部の出力電圧を増幅する。
【0016】
これにより、前記絶縁部を設けたとしても、前記電源部の出力電圧を前記被測定部にかけることができる。
【0017】
本発明に係る基板検査装置では、前記電圧増幅器は、さらに、前記基板接続部の入力電圧を入力電圧とする負帰還回路を有する。
【0018】
これにより、前記電源部の出力電圧と前記被測定部の入力電圧とを比較しながら、前記電源部の出力電圧を前記被測定部の入力電圧と等しくなるように増幅することができる。
【0019】
本発明に係る基板検査装置では、前記電圧増幅器は、前記負帰還回路上に、利得を1とする電圧増幅器を有する。
【0020】
これにより、容易に、前記電源部の出力電圧を前記被測定部の入力電圧と等しくなるように増幅することができる。
【0021】
本発明に係る基板検査装置は、前記電圧増幅器の出力電流を入力とする電流制御回路であって、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御する電流制御回路を有する。
【0022】
これにより、ある前記被測定部において短絡が生じたとしても、過電流による前記電圧増幅器の破壊を防止することができる。よって、ある前記被測定部において短絡が生じたとしても、他の前記被測定部に流れる電流値を正確に計測することができる。
【0023】
本発明に係る基板検査装置では、前記電流制御部品は、さらに、高耐圧を有している。
【0024】
これにより、容易に、過電流による前記電圧増幅器の破壊を防止することができる。
【0025】
本発明に係る基板検査装置では、さらに、前記電圧増幅器に供給される駆動電圧を供給する浮動電源部であって、前記電源部の出力電圧を基準電圧とするものを有する。
【0026】
これにより、容易に、過電流による前記電圧増幅器の破壊を防止することができる。
【0027】
本発明に係る基板検査装置は、一つの電源部、及び、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部を有し、前記電源部と前記基板接続部との間で前記被測定部に流れる電流値を計測する基板検査装置において、前記電源部と前記基板接続部のそれぞれとの間に、前記電源部に対して高インピーダンスとなる絶縁部、を有し、前記絶縁部は、前記電源部からの出力電圧を非反転端子の入力電圧、前記基板接続部の入力電圧を反転端子の入力電圧とする負帰還回路を有する第1のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、前記電源部の出力電圧を増幅する第1のオペアンプ、前記負帰還回路上に存在する利得が1である第2のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を非反転端子の入力電圧とし、当該第2のオペアンプの出力電圧を反転端子の入力電圧とする第2のオペアンプ、前記第1のオペアンプからの出力電流を入力とし、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御するリミッターであって、高耐圧を有するリミッター、前記第1のオペアンプ及び前記第2のオペアンプに供給される駆動電圧を供給する浮動電源部であって、前記電源部の出力電圧を基準電圧とする浮動電源部、を有する。
【0028】
これにより、前記電源部と前記基板接続部との間において、複数の前記被測定部に流れる電流値を同時に計測することができる。また、ある前記被測定部において短絡が生じたとしても、他の前記被測定部に流れる電流値を正確に計測することができる。
【0029】
本発明に係る絶縁回路は、一つの電源部と、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部との間で前記被測定部のそれぞれに流れる電流値を計測する際に、ある前記被測定部において短絡が生じた場合に、他の前記被測定部に流れる電流値が変化しないように絶縁する絶縁回路であって、前記絶縁回路は、前記電源部からの出力電圧を非反転端子の入力電圧、前記基板接続部の入力電圧を反転端子の入力電圧とする負帰還回路を有する第1のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、前記電源部の出力電圧を増幅する第1のオペアンプ、前記負帰還回路上に存在する利得が1である第2のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を非反転端子の入力電圧とし、当該第2のオペアンプの出力電圧を反転端子の入力電圧とする第2のオペアンプ、前記第1のオペアンプからの出力電流を入力とし、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御するリミッターであって、高耐圧を有するリミッター、前記第1のオペアンプ及び前記第2のオペアンプに供給される駆動電圧を供給する浮動電源部であって、前記電源部の出力電圧を基準電圧とする浮動電源部、を有する。
【0030】
これにより、前記絶縁回路を用いるだけで、前記電源部と前記基板接続部との間において、複数の前記被測定部に流れる電流値を同時に計測することができる。また、ある前記被測定部において短絡が生じたとしても、他の前記被測定部に流れる電流値を正確に計測することができる。
【0031】
本発明に係る基板検査方法は、一つの電源部、及び、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部を有する基板検査装置であって、前記電源部と前記基板接続部のそれぞれとの間で、ある前記被測定部において短絡が生じた場合に、他の前記被測定部に流れる電流値が変化しないように絶縁している基板検査装置を用いて、前記電源部と前記基板接続部との間で前記被測定部に流れる電流値を計測する基板検査方法において、前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、負帰還回路によって前記電源部の出力電圧を増幅し、前記基板接続部の入力電圧を入力電圧とし、前記電圧増幅器の出力電流について、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御する。
【0032】
これにより、前記電源部と前記基板接続部との間において、複数の前記被測定部に流れる電流値を同時に計測することができる。また、ある前記被測定部において短絡が生じたとしても、他の前記被測定部に流れる電流値を正確に計測することができる。
【0033】
ここで、請求項に記載されている構成要素と実施例における構成要素との対応関係を示す。基板検査装置はハイサイド型マイグレーションテスター1に、電源部は電源回路部ECに、基板接続部は基板接続部MaR−yに、絶縁部は絶縁回路部InC−yに、それぞれ対応する。また、被測定部はプリント基板の配線間抵抗である被測定抵抗Rxに対応する。さらに、電圧増幅器はオペアンプA2−yに、負帰還回路上の利得を1とする電圧増幅器はオペアンプA3−yに、電流制御回路はリミッターLM−yに、浮動電源部は浮動電源部FEに、それぞれ対応する。
【0034】
さらに、第1のオペアンプはオペアンプA2−yに、第2のオペアンプはオペアンプA3−yに、それぞれ対応する。さらに、絶縁回路は、絶縁回路部InC−yに対応する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明における表示装置の実施例を以下において説明する。
【実施例1】
【0036】
1. ハイサイド型マイグレーションテスター1の構成
本発明に係る基板検査装置の一例であるハイサイド型マイグレーションテスター1を説明する。ハイサイド型マイグレーションテスターとは、プリント基板等の基板の配線間抵抗を検査する基板検査装置であり、基板を接続する接続部と電源部との間で、配線間抵抗の抵抗値を測定するものをいう。本実施例におけるハイサイド型マイグレーションテスター1は、同時に複数の配線間抵抗の抵抗値を測定することができる。
【0037】
ハイサイド型マイグレーションテスター1の主要な回路構成を図1を用いて説明する。
【0038】
ハイサイド型マイグレーションテスター1は、一つの電源回路部EC、一つの浮動電源部、一つ又は複数の絶縁回路部InC−y、一つ又は複数の基板接続部MaR−y(yは、正数を示す。以下、同様)を有している。なお、一つの絶縁回路部InC−y及び一つの基板接続部MaR−yによって、一つの測定チャネルが構成される。
【0039】
電源回路部ECは、設定電源E1、高圧アンプA1、抵抗R1を有している。高圧アンプA1では、非反転入力端子に設定電源E1からの出力が、反転入力端子にスイッチが、それぞれ接続されている。高圧アンプA1の出力は、抵抗R1を介して、反転入力端子に接続される。つまり、高圧アンプA1及び抵抗R1は、反転増幅器を構成している。
【0040】
絶縁回路部InC−yは、オペアンプA2−y、抵抗Rs−y、ツェナーダイオードD1−y、リミッターLM−y、抵抗R2−y、ダイアックD2−y、及びオペアンプA3−yを有している。オペアンプA2−yの非反転入力端子には、オペアンプA1の出力が接続される。オペアンプA2−yの出力は、抵抗Rs−y、リミッターLM−yを介して、基板接続部MaR−yの入力端子に入力される。なお、抵抗Rs−yと並行に、ツェナーダイオードD1−yが接続される。また、オペアンプA2−yの出力は、抵抗Rs−y、リミッターLM−y、抵抗R2−y、オペアンプA3−yを介して、オペアンプA2−yの反転入力端子に入力される。つまり、オペアンプA2−yは、反転増幅器を構成している。
【0041】
オペアンプA3−yの非反転入力端子には、抵抗R2−yが接続されている。オペアンプA3−yの反転入力端子には、オペアンプA3−yの出力が入力される。つまり、オペアンプA3−yは、ボルテージフォロアを構成している。オペアンプA3−yの非反転入力端子と反転入力端子との間に、ダイアックD2−yが接続されている。
【0042】
浮動電源部FEは、浮動共通端子F、及び浮動電源Efを有している。浮動電源Efは、オペアンプA2−y、オペアンプA3−yの電源入力端子に接続されている。なお、浮動電源Efの基準電圧は、オペアンプA1の出力である。
【0043】
基板接続部MaR−yは、リード線等を介して、プリント基板の所定の配線に接続される。なお、接続された配線間に存在する抵抗を、被測定抵抗Rx−yとする。
【0044】
ハイサイド型のマイグレーションテスター1においては、一つの高圧アンプA1で複数チャンネルでの被測定抵抗の測定ができるため、コストを低く抑えることができる。
【0045】
以下において、ハイサイド型マイグレーションテスター1の回路設計を行うに当たっての設計思想を説明し、続いて、絶縁回路部InC−yを構成する各構成部品の機能を説明する。
【0046】
2. 回路設計
図1に示すように、ハイサイド型マイグレーションテスター1は、一つの電源部ECに対して、複数の測定チャネルが並列に接続されている。このような一つの電源部ECに対して複数の測定チャネルを有するハイサイド型マイグレーションテスター1の回路設計を行うにあたっては、以下の点に注意が必要となる。
【0047】
1)被測定抵抗の短絡時に、各測定チャネルの他の測定チャネルからの絶縁化
図10に示す従来の1チャンネルのハイサイド型のマイグレーションテスター100に基づいて設計した、一つの電源によって複数の測定チャネルを有するマイグレーションテスター100aを図2に示す。図2から明らかなように、ハイサイド型マイグレーションテスター100aでは、被測定抵抗Rx−yのうち一つでも短絡すると、他の被測定抵抗Rx−yの測定も行えなくなる。このように、被測定抵抗の短絡時において、ある測定チャネルの状態が他の測定チャネルの状態から影響を受けないようにするためには、被測定抵抗の短絡時において、各測定チャネルを他の測定チャネルから絶縁する必要がある。
【0048】
2)通常時に、電源部ECの出力電圧と被測定抵抗部Rx−yの入力電圧との等電位化
ハイサイド型マイグレーションテスターでは、被測定抵抗が短絡していない通常時において、電源部からの出力電圧が被測定抵抗部にかかった状態での測定を保証する必要がある。例えば、図2においては、点P1と点P2とは同電位とする必要がある。なぜなら、電源部の出力電圧と被測定抵抗部の入力電圧とが等電位でなければ、ハイサイド型マイグレーションテスターの使用者は、予め設定した測定条件での被測定抵抗の検査を行えないからである。よって、電源部の出力電圧と被測定抵抗部の入力電圧とを等電位化する必要がある。
【0049】
3. 絶縁回路部InC−yの構成部品
以上の注意点を考慮した上で設計した絶縁回路部InC−yの各構成部品の機能を説明する。なお、絶縁回路部InC−yの構成部品の説明にあたっては、図2に示すハイサイド型マイグレーションテスター100aを出発点として、本実施例におけるハイサイド型マイグレーションテスター1に至るまでの経過を参照する。
【0050】
1) オペアンプA2−y
オペアンプA2−yは、第一に、各測定チャネルを他のチャネル及び電源部ECから絶縁する機能を有している。一般的に、オペアンプの入力端子の入力インピーダンスは非常に高い。したがって、電源部ECに続くオペアンプA2−yを各測定チャネルに設けることによって、各測定チャネルを他の測定チャネル及び電源部ECから絶縁することができる。各測定チャネルにオペアンプA2−yを設けたハイサイド型マイグレーションテスター100bを図3に示す。
【0051】
ハイサイド型マイグレーションテスター100bでは、オペアンプA1と各測定チャネルの電流測定用の抵抗Rs−1との間にオペアンプA2−yが配置されている。図3において、点P1と点P2との電位を等電位とするためには、抵抗Rs−1における電圧降下分だけ、オペアンプA2−yにおいて入力電圧を増幅するようにすればよい。点P1と点P2とを等電位とするようなオペアンプA2−yを用いれば、オペアンプA1の出力電圧を、被測定抵抗Rx−yにかけることができる。
【0052】
なお、後述するようにオペアンプA3−yの利得は1であるため、オペアンプA2−yは、点P2の電圧が点P1の電圧からずれると、点P2の電圧を点P1の電圧と等しくなるように電圧増幅を行う誤差アンプとして機能する。
【0053】
2) リミッターLM−y
しかしながら、図3において、点P1と点P2とが等電位の状態で、被測定抵抗Rx−yが短絡すると、これまで被測定抵抗Rx−yにかかっていた電圧が、点P1−点P2間にかかることになる。このため、点P1−点P2間に過電流が流れ、ハイサイド型マイグレーションテスター100bを破壊する可能性がある。このような、被測定抵抗Rx−yの短絡に伴う、過電流を防止するために、抵抗R2−yに続く点P4−点P2間にリミッターLM−yを接続する。各測定チャネルにリミッターLM−yを設けたハイサイド型マイグレーションテスター100cを図4に示す。
【0054】
リミッターLM−yは、点P1−点P2間に流れる電流を制御する機能を有する。リミッターLM−yの回路図の一例を図5に示す。図5に示すリミッターLM−yは、いわゆるデプレッション型MOSFETによって構成されている。リミッターLM−yは、例えば、1mAだけ流れるように設定することが可能である。
【0055】
また、高い耐圧を有しているリミッターLM−yを用いることによって、被測定抵抗Rx−yの短絡により点P1−点P2間に高い電圧がかかることとなった場合に、リミッターLM−yに点P1−点P2間にかかる電圧の多くを負担させることができる。これにより、抵抗R2−yを流れる電流が過電流となることを防止することができる。
【0056】
3) ツェナーダイオードD1−y
さらに、抵抗R2−yと並行にツェナーダイオードD1−yを接続する。抵抗R2−yと並行にツェナーダイオードD1−yを接続した状態を図6に示す。ツェナーダイオードD1−yは、被測定抵抗Rx−yが短絡した場合に、抵抗R2−yにかかる電圧を設定するために配置している。ツェナーダイオードD1−yを抵抗R2−yに並行に配置することによって、抵抗R2−yにかかる最大電圧を規定することができる。これによって、抵抗R2−yに流れる電流の最大値を規定することができる。
【0057】
なお、実際の回路設計においては、ツェナーダイオードD1−yによって、抵抗R2−yにかかる最大電圧を規定し、点P1−点P2間にかかる最大電圧から抵抗R2−yにかかる最大電圧を差し引いた電圧をリミッターLM−yが受け持つようにリミッターLM−yの仕様を決定する。
【0058】
4) 浮動電源FE
ここまでの説明で、被測定抵抗Rx−yが短絡した場合、点P1−点P2間に大きな電圧がかかることを説明した。また、リミッターLM−yを用いることによって、点P1−点P2間にかかる電圧の大部分をリミッターLM−yに負担させることができることを説明した。したがって、被測定抵抗Rx−yの短絡時、オペアンプA2−yが負担する電圧を低くすることができる。つまり、オペアンプA2−yは、高耐圧である必要はなくなる。高耐圧のオペアンプは高価であることから、高耐圧のオペアンプを使用する必要がなくなることは、ハイサイド型マイグレーションテスターの製造コストを低く抑えることができることになる。
【0059】
しかしながら、オペアンプA2−yは、測定チャネルの絶縁を達成する上での根幹となる構成部品であり、オペアンプA2−yが破壊されるような状態は起こってはならない。したがって、図5に示すオペアンプA2−yの駆動電源を浮動電源とする。これにより、オペアンプA2−yにかかる電圧を、常に浮動電源の電圧とすることができる。オペアンプA2−yの駆動電源を浮動電源とした状態を図7に示す。
【0060】
このように、リミッターLM−yの配置及びオペアンプA2−yの浮動電源化によって、オペアンプA2−yは、低い耐圧でよくなる。低い耐圧のオペアンプは廉価であるため、ハイサイド型マイグレーションテスターの製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0061】
5) オペアンプA3−y
通常、被測定抵抗Rx−yを検査する際には、抵抗R2−y及びリミッターLM−yに所定の負荷電流が流れる。この負荷電流は、図7において、点P2から被測定抵抗Rx−yの方向に向かう矢印a1の方向へ流さなくてはならない。オペアンプA2−yの帰還回路に流れると、正確な被測定抵抗Rx−yの測定を行うことができなくなる。そこで、図8に示すように、リミッターLM−yの出力をオペアンプA3−yの非反転出力端子に接続する。オペアンプA3−yのインピーダンスは非常に高いため、測定電流を、オペアンプA3−yに向かう矢印a3方向ではなく、被測定抵抗Rx−yに向かう矢印a1方向へ流すことができる。
【0062】
また、オペアンプA3−yの出力を、オペアンプA3−yの反転入力端子に接続する。つまり、オペアンプA3−yはボルテージフォロァを構成している。
【0063】
オペアンプA3−yは、電流測定用抵抗Rsを流れる電流が、オペアンプA3−yに流れないようにする緩衝(バッファー)増幅器として機能する。
【0064】
なお、図8に示すように、オペアンプA3−yの非反転出力端子と反転出力端子との間に、ダイアックD2を接続している。このように、オペアンプA3−yの非反転出力端子と反転出力端子との間にダイアックD2を接続することによって、非反転出力端子と反転出力端子とを等電位に保つことができる。
【0065】
6) 抵抗R2−y
さらに、抵抗R2−yを、点P2とオペアンプA3−yの非反転出力端子との間に接続する(図1参照)。これによって、被測定抵抗R2−yが短絡した場合に、点P2−点P5間にかかる電圧の多くを抵抗R2−yに負担させることが可能となる。このように、抵抗R2−yに続いてオペアンプA3−yの非反転出力端子を接続することによって、オペアンプA3−yに要求される耐圧を低いものとすることができる。このように、低い耐圧のオペアンプA3−yを使用することによって、ハイサイド型マイグレーションテスターの製造コストを低く抑えることができることになる。
【0066】
[その他の実施例]
(1)被測定抵抗
前述の実施例1においては、基板検査装置の一例としてプリント基板の配線間の抵抗を測定するマイグレーションテスターを示したが、配線間の容量を測定するインピーダンス・マイグレーションテスターであってもよい。
【0067】
(2)リミッター
前述の実施例1においては、リミッターLM−yは、各測定チャネルに一つ配置することとしたが、リミッターLM−yによっては、所定の耐圧が得られるまで複数のリミッターを直接に接続するようにしてもよい。
【0068】
(3)浮動電源部
前述の実施例1においては、浮動電源部を設けることとしたしたが、十分な耐圧を有するオペアンプA2−yを用いるのであれば、浮動電源部を設けないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明におけるハイサイド型マイグレーションテスター1の主要回路の構成図である。
【図2】図1の絶縁回路部InC−yの各構成部品の機能を説明する図である。
【図3】図1の絶縁回路部InC−yの各構成部品の機能を説明する図である。
【図4】図1の絶縁回路部InC−yの各構成部品の機能を説明する図である。
【図5】図1のリミッターLM−yの構成図である。
【図6】図1の絶縁回路部InC−yの各構成部品の機能を説明する図である。
【図7】図1の絶縁回路部InC−yの各構成部品の機能を説明する図である。
【図8】図1の絶縁回路部InC−yの各構成部品の機能を説明する図である。
【図9】従来のロヮサイド型マイグレーションテスターを示す図である。
【図10】従来のハイサイド型マイグレーションテスターを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・ハイサイド型マイグレーションテスター
EC・・・電源部
InC・・・絶縁部
MaR・・・基板接続部
FE・・・浮動電源部
A1・・・オペアンプ
A2・・・オペアンプ
A3・・・オペアンプ
LM・・・リミッター
R1・・・抵抗
R2・・・抵抗
Rs・・・電流測定用抵抗
Rx・・・被測定抵抗
D1・・・ツェナーダイオード
D2・・・ダイアック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの電源部、及び、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部を有し、前記電源部と前記基板接続部との間で前記被測定部に流れる電流値を計測する基板検査装置において、
ある前記被測定部において短絡が生じた場合に、他の前記被測定部に流れる電流値が変化しないようにする絶縁部を、前記電源部と前記基板接続部のそれぞれとの間に有する基板検査装置。
【請求項2】
請求項1に係る基板検査装置において、
前記絶縁部は、
前記電源部に対して高インピーダンスを有していること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項3】
請求項2に係る基板検査装置において、
前記絶縁部は、
前記電源部からの出力電圧を入力電圧とする電圧増幅器を有すること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項4】
請求項3に係る基板検査装置において、
前記電圧増幅器は、さらに、
前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、前記電源部の出力電圧を増幅すること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項5】
請求項4にかかる基板検査装置において、さらに、
前記電圧増幅器は、さらに、
前記基板接続部の入力電圧を入力電圧とする負帰還回路を有すること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項6】
請求項5に係る基板検査装置において、さらに、
前記電圧増幅器は、
前記負帰還回路上に、利得を1とする電圧増幅器を有すること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項6に係る基板検査装置のいずれかにおいて、さらに、
前記電圧増幅器の出力電流を入力とする電流制御回路であって、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御する電流制御回路を有すること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項8】
請求項7に係る基板検査装置において、
前記電流制御回路は、さらに、
高耐圧を有していること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項9】
請求項4〜請求項8に係る基板検査装置のいずれかにおいて、さらに、
前記電圧増幅器に供給される駆動電圧を供給する浮動電源部であって、前記電源部の出力電圧を基準電圧とするものを有すること、
を特徴とする基板検査装置。
【請求項10】
一つの電源部、及び、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部を有し、前記電源部と前記基板接続部との間で前記被測定部に流れる電流値を計測する基板検査装置において、
前記電源部と前記基板接続部のそれぞれとの間に、前記電源部に対して高インピーダンスとなる絶縁部、
を有し、
前記絶縁部は、
前記電源部からの出力電圧を非反転端子の入力電圧、前記基板接続部の入力電圧を反転端子の入力電圧とする負帰還回路を有する第1のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、前記電源部の出力電圧を増幅する第1のオペアンプ、
前記負帰還回路上に存在する利得が1である第2のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を非反転端子の入力電圧とし、当該第2のオペアンプの出力電圧を反転端子の入力電圧とする第2のオペアンプ、
前記第1のオペアンプからの出力電流を入力とし、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御するリミッターであって、高耐圧を有するリミッター、
前記第1のオペアンプ及び前記第2のオペアンプに供給される駆動電圧を供給する浮動電源部であって、前記電源部の出力電圧を基準電圧とする浮動電源部、
を有する基板検査装置。
【請求項11】
一つの電源部と、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部との間で前記被測定部のそれぞれに流れる電流値を計測する際に、ある前記被測定部において短絡が生じた場合に、他の前記被測定部に流れる電流値が変化しないように絶縁する絶縁回路であって、
前記絶縁回路は、
前記電源部からの出力電圧を非反転端子の入力電圧、前記基板接続部の入力電圧を反転端子の入力電圧とする負帰還回路を有する第1のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、前記電源部の出力電圧を増幅する第1のオペアンプ、
前記負帰還回路上に存在する利得が1である第2のオペアンプであって、前記基板接続部の入力電圧を非反転端子の入力電圧とし、当該第2のオペアンプの出力電圧を反転端子の入力電圧とする第2のオペアンプ、
前記第1のオペアンプからの出力電流を入力とし、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御するリミッターであって、高耐圧を有するリミッター、
前記第1のオペアンプ及び前記第2のオペアンプに供給される駆動電圧を供給する浮動電源部であって、前記電源部の出力電圧を基準電圧とする浮動電源部、
を有する絶縁回路。
【請求項12】
一つの電源部、及び、基板の被測定部と接続する複数の基板接続部を有する基板検査装置であって、前記電源部と前記基板接続部のそれぞれとの間で、ある前記被測定部において短絡が生じた場合に、他の前記被測定部に流れる電流値が変化しないように絶縁している基板検査装置を用いて、前記電源部と前記基板接続部との間で前記被測定部に流れる電流値を計測する基板検査方法において、
前記基板接続部の入力電圧を、前記電源部の出力電圧と同じとなるように、前記電源部の出力電圧を増幅し、
負帰還回路によって、前記基板接続部の入力電圧を入力電圧とし、
前記電圧増幅器の出力電流について、所定の電流値以上若しくは所定の電流値より大きい電流値を有する電流は通さないように制御すること、
を特徴とする基板検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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