説明

基礎スリーブ、基礎貫通口セット及び建物の排水管配管構造

【課題】同一サイズの基礎スリーブ1に対して多様なサイズの排水管2を適用可能にする。
【解決手段】基礎スリーブ1は、建物内の床下から建物外に導出される排水管2が挿通される貫通穴3aを建物の基礎の立上り部3に形成するものであり、スリーブ本体4とシールパッキン5と固定部6とを有している。スリーブ本体4は、一端から他端にかけて連通された円筒形状に形成されている。スリーブ本体4は、立上り部3の貫通穴3aを形成するように、立上り部3に貫設されている。シールパッキン5は、スリーブ本体4と排水管2との隙間を液密状態及び気密状態で封止するように環状に形成されている。固定部6は、スリーブ本体4のスリーブ内周部40とシールパッキン5のシール外周部51とを所定の保持力で固定するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物内の床下から建物外に導出される排水管が挿通される貫通穴を、建物の基礎の立上り部に形成するための基礎スリーブ、基礎貫通口セット及び建物の排水管配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排水管配管構造の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、建物の基礎の立上り部に貫通穴を形成するための鞘管に、外周方向に突出したリブを形成し、このリブにより鞘管内に形成された凹部にシール材を嵌合状態で設け、シール材により鞘管と排水管(内管)との隙間を充填する構成が開示されている。これにより、鞘管内のシール材により鞘管と排水管との隙間からの建築物内への水や虫などの浸入を防止することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−127227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、鞘管に挿通される排水管の管径を変更する場合において、鞘管と排水管との隙間の変更に対応させてシールパッキンの径方向幅やシール厚み、即ち、シールパッキンのサイズを変更することが必要になるが、シールパッキンのサイズを変更すると、リブによる凹部に設けられたシールパッキンの嵌合状態が不安定になるため、排水管の挿通時にシールパッキンが外れるという不具合が起こり易くなる。即ち、上記従来の構成では、同一サイズの鞘管に用いることができる排水管のサイズの変更幅が小さな許容範囲に制限されるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、同一サイズの鞘管に対して多様なサイズの排水管を適用することができる基礎スリーブ、基礎貫通口セット及び建物の排水管配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような目的を達成するために、本発明は、建物内の床下から当該建物外に導出される排水管が挿通される貫通穴を、前記建物の基礎の立上り部に形成するための基礎スリーブであって、前記立上り部に貫設される円筒形状のスリーブ本体と、前記スリーブ本体と前記排水管との隙間を封止する環状のシールパッキンと、前記スリーブ本体のスリーブ内周部と前記シールパッキンのシール外周部とを所定の保持力で固定する固定部とを有している。
【0007】
上記の構成によれば、スリーブ本体のスリーブ内周部とシールパッキンのシール外周部とが固定部により所定の保持力で固定されることによって、シールパッキンのシール外周部からシール内周部までの径方向幅を変更したり、径方向幅に直交するシール厚みを変更した場合でも、シールパッキンを所定の保持力でスリーブ内周部に固定しておくことができる。これにより、同一サイズのスリーブ本体に対して異なる管径の排水管を挿通させるため、シールパッキンの径方向幅やシール厚みを排水管とスリーブ本体との隙間に合わせて変更した場合であっても、排水管の挿通時にシールパッキンが外れるという不具合の起こり易さは、排水管の管径に殆ど影響されることがない。従って、同一サイズのスリーブ本体に対して異なる管径の排水管の適用をシールパッキンの変更だけで容易に行うことができる。即ち、上記の構成によれば、同一サイズのスリーブ本体に用いることができる排水管のサイズの変更幅が従来よりも大きな許容範囲に拡大できる。換言すれば、同一サイズのスリーブ本体に対して多様なサイズの排水管を適用することができる。
【0008】
本発明における前記固定部は、前記スリーブ本体のスリーブ内周部に形成された凸部と、前記シールパッキンのシール外周部に形成され、前記凸部が圧入状態で嵌合される凹部とを有していても良い。
【0009】
上記の構成によれば、シールパッキンのシール外周部側の凹部とスリーブ本体の凸部とを圧入状態で嵌合するという作業を行うだけで、容易に所定の保持力でシールパッキンをスリーブ本体に固定することができる。さらに、シールパッキン及びスリーブ本体に凹部及び凸部がそれぞれ形成されているため、基礎スリーブの部品点数を削減することができる。
【0010】
本発明における前記固定部は、前記スリーブ本体の円筒軸方向の中心位置に対して前記建物内側に配置されていても良い。
【0011】
上記の構成によれば、固定部の配置場所がシールパッキンの配置場所でもあるため、暴風雨等により建物外から多量の水が基礎スリーブにかかったときに、建物外や建物外側でシールされている場合と比較して、シール性の低下や劣化を小さくすることができる。
【0012】
本発明における前記スリーブ本体は、外周面から突出する複数の突出片を有し、これら突出片は、前記スリーブ本体の円筒軸方向の中心位置から外れた位置に配置されていても良い。
【0013】
上記の構成によれば、建物の基礎の立上り部が縦筋及び横筋を備えた鉄筋構造であるときに、応力中心である立上り部における幅方向の中心位置に配筋することになるが、この場合における配筋がスリーブ本体の突出片の障害物になることを回避することができる。そして、番線を用いて配筋と突出片とを結び付けることによって、コンクリート打設前の鉄筋構造体にスリーブ本体を取り付けて容易に位置決めすることができる。
【0014】
本発明における前記スリーブ本体は、前記固定部から前記建物外側のスリーブ内周部に、前記排水管を挿通する筒状部材を着脱可能に取付けるための取付部を有しても良い。
【0015】
上記の構成によれば、スリーブ本体に筒状部材を容易に取り付けることができる。
【0016】
本発明における前記取付部は、ネジ溝であっても良い。
【0017】
上記の構成によれば、スリーブ本体に筒状部材をネジ溝に沿って回転させることにより容易に取り付けることができる。また、筒状部材の、スリーブ本体の外端縁から突出させる長さを容易に調節及び変更することができる。
【0018】
本発明における基礎貫通口セットは、前記基礎スリーブと、前記取付部に着脱可能に取り付けられ、前記排水管を挿通する筒状部材とを有している。
【0019】
上記の構成によれば、基礎スリーブと筒状部材とで排水管を建物内から建物外に導出することができる。
【0020】
本発明における前記筒状部材は、第1分割部材と第2分割部材とで半径方向に二つ割れ構造とされていても良い。
【0021】
上記の構成によれば、排水管の設置後においても筒状部材の取り付け及び取り外しを行うことができる。
【0022】
本発明における前記筒状部材は、一端部が前記基礎スリーブにおける前記スリーブ本体の取付部に進退移動可能に取り付けられており、他端部にフランジ部が形成されていても良い。
【0023】
上記の構成によれば、フランジ部を基礎スリーブの建物外側の端面から外側に突出した状態にして用いることができるため、フランジ部を用いて各種の構成部品を取り付けたり、構成部品に取り付けることができる。また、基礎外面に仕上げモルタルを塗装するときの厚み定規とすることができ、仕上げモルタルがスリーブ本体内に入り込むことを防止でき、さらに、仕上げモルタルの塗装の仕上がりを綺麗にできる。
【0024】
本発明における前記スリーブ本体は、前記フランジ部を収容するフランジ収容部を有していても良い。
【0025】
上記の構成によれば、フランジ部を含めた筒状部材の全体をスリーブ本体内に収容することができるため、基礎貫通口セットをスリーブ本体のサイズだけの小型化した状態で保管や移送することができる。
【0026】
本発明における基礎貫通口セットは、さらに、前記筒状部材から前記建物外に導出された前記排水管を覆うカバー部材を有していても良い。
【0027】
上記の構成によれば、建物外に導出された排水管をカバー部材で覆うことにより美観を良好にすることができると共に、水の基礎スリーブ内への浸入を防止することができる。
【0028】
本発明における基礎貫通口セットは、さらに、前記筒状部材から前記建物外に導出された前記排水管を覆うカバー部材を有しており、前記筒状部材は、一端部が前記基礎スリーブにおける前記スリーブ本体の取付部に進退移動可能に取り付けられており、他端部に前記カバー部材を前記進退移動方向に係止可能なフランジ部が形成されていても良い。
【0029】
上記の構成によれば、カバー部材を基礎スリーブに容易に取り付けることができる。
【0030】
本発明における前記フランジ部は、外周面部に係止溝を有しており、前記カバー部材は、前記基礎スリーブに対向する側面壁の下端側が開口された切欠き部を有し、前記切欠き部は、前記係止溝に嵌合するように形成されていても良い。
【0031】
上記の構成によれば、簡単な構造でカバー部材を基礎スリーブに容易に取り付けることができる。
【0032】
本発明における前記カバー部材は、上面壁が開口されたカバー本体と、該カバー本体における上面壁の開口を塞ぐ蓋体とを有していても良い。
【0033】
上記の構成によれば、カバー部材で覆われた内部の状態、例えば、排水管の状態等を蓋体を取り外すことで開口を介して容易に目視により確認することができる。
【0034】
本発明は、排水管が、建物内の床下を通り、当該建物の基礎の立上り部に形成された貫通穴を挿通された後、当該建物外で敷地内に設けられた排水経路に接続されている建物の排水管配管構造において、前記建物の基礎の立上り部に形成された貫通穴には円筒形状の基礎スリーブが埋設されており、前記基礎スリーブは、前記立上り部に貫設される円筒形状のスリーブ本体と、前記スリーブ本体と前記排水管との隙間を封止する環状のシールパッキンと、前記スリーブ本体のスリーブ内周部と前記シールパッキンのシール外周部とを所定の保持力で固定する固定部とを有している。
【0035】
上記の構成によれば、スリーブ内周部とシール外周部とが固定部により所定の保持力で固定されることによって、シールパッキンのシール外周部からシール内周部までの径方向幅を変更したり、径方向幅に直交するシール厚みを変更した場合でも、シールパッキンを所定の保持力でスリーブ内周部に固定しておくことができる。これにより、同一サイズのスリーブ本体に対して異なる管径の排水管を挿通させるため、シールパッキンの径方向幅やシール厚みを排水管とスリーブ本体との隙間に合わせて変更した場合であっても、排水管の挿通時にシールパッキンが外れるという不具合の起こり易さは、排水管の管径に殆ど影響されることがない。従って、同一サイズのスリーブ本体に対して異なる管径の排水管の適用をシールパッキンの変更だけで容易に行うことができる。
【0036】
本発明における建物の排水管配管構造は、さらに、前記基礎スリーブにおけるスリーブ本体のスリーブ内周部には取付部が形成され、該取付部に排水管を挿通する筒状部材が取付けられており、前記筒状部材は、一端部が前記取付部に取付けられ、他端部が前記基礎スリーブから前記建物外側に突出されており、前記基礎の立上り部の前記建物外側の外壁面には仕上げモルタルが塗着されていても良い。
【0037】
本発明は、排水管が、建物内の床下を通り、当該建物の基礎の立上り部に形成された貫通穴を挿通された後、当該建物外で敷地内に設けられた排水経路に接続されていると共に、前記排水管の建物外の地上部分がカバー部材で覆われている建物の排水管配管構造において、前記建物の基礎の立上り部に形成された開口には円筒形状の基礎スリーブが埋設されており、前記基礎スリーブは、前記立上り部に貫設される円筒形状のスリーブ本体と、前記スリーブ本体と前記排水管との隙間を封止する環状のシールパッキンと、前記スリーブ本体のスリーブ内周部と前記シールパッキンのシール外周部とを所定の保持力で固定する固定部とを有しており、前記スリーブ本体の内周壁には取付部が形成され、該取付部に排水管を挿通する筒状部材が取付けられ、該筒状部材は一端部が取付部に取付けられ、他端部がスリーブ本体の前記建物外側に突出し、筒状部材の突出する他端部には係止溝を有するフランジ部が形成され、カバー部材におけるスリーブ本体に対向する側面壁には切欠部が形成され、該切欠部の周縁の一部が筒状部材のフランジ部の係止溝に係止されている。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、同一サイズの基礎スリーブに対して多様なサイズの排水管を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】基礎スリーブが基礎の立上り部に設置された状態を示す説明図である。
【図2】基礎貫通口セットが基礎の立上り部に設置された状態を示す説明図である。
【図3】スリーブ本体の斜視図である。
【図4】スリーブ本体の正面図である。
【図5】図4におけるスリーブ本体の縦断面図である。
【図6】スリーブ本体の側面図である。
【図7】シールパッキンの構成を示す説明図である。
【図8】筒状部材を2分割した状態を示す説明図である。
【図9】カバー本体の正面図である。
【図10】カバー本体の平面図である。
【図11】蓋体の平面図である。
【図12】蓋体の正面図である。
【図13】建物の排水管配管構造を示す説明図である。
【図14】建物の排水管配管構造を示す説明図である。
【図15】建物の排水管配管構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更しても良い。
【0041】
(基礎スリーブ1)
本実施形態に係る基礎スリーブ1は、図1に示すように、建物内の床下から建物外に導出される排水管2が挿通される貫通穴3aを建物の基礎の立上り部3に形成する用途に使用される。基礎スリーブ1は、スリーブ本体4とシールパッキン5と固定部6とを有している。スリーブ本体4は、一端から他端にかけて連通された円筒形状に形成されている。スリーブ本体4は、立上り部3の貫通穴3aを形成するように、立上り部3に貫設されている。シールパッキン5は、スリーブ本体4と排水管2との隙間を液密状態及び気密状態で封止するように環状に形成されている。また、固定部6は、スリーブ本体4のスリーブ内周部40とシールパッキン5のシール外周部51とを所定の保持力で固定するように形成されている。スリーブ本体4、シールパッキン5及び固定部6の詳細については後述する。
【0042】
上記の構成によれば、スリーブ本体4のスリーブ内周部40とシールパッキン5のシール外周部51とが固定部6により所定の保持力で固定されることによって、シールパッキン5のシール外周部51からシール内周部52までの径方向幅を変更したり、径方向幅に直交するシール厚みを変更した場合でも、シールパッキン5を所定の保持力でスリーブ本体4のスリーブ内周部40に固定しておくことができる。これにより、同一サイズのスリーブ本体4に対して異なる管径の排水管2を挿通させるため、シールパッキン5の径方向幅やシール厚みを排水管2とスリーブ本体4との隙間に合わせて変更した場合であっても、排水管2の挿通時にシールパッキン5が外れるという不具合の起こり易さは、排水管2の管径に殆ど影響されることがない。
【0043】
従って、同一サイズのスリーブ本体4に対して異なる管径の排水管2の適用をシールパッキン5の変更だけで容易に行うことができる。即ち、上記の構成によれば、同一サイズのスリーブ本体4に用いることができる排水管2のサイズの変更幅が従来よりも大きな許容範囲に拡大できる。換言すれば、同一サイズのスリーブ本体4に対して多様なサイズの排水管2を適用することができる。
【0044】
(スリーブ本体4:筒状部41)
基礎スリーブ1のスリーブ本体4は、硬質塩化ビニル樹脂等の合成樹脂により形成されている。スリーブ本体4は、図3〜図6に示すように、両端面が開口された円筒形状の筒状部41を有している。筒状部41は、立上り部3内において軸心が水平方向に一致するように設置される。尚、筒状部41内を挿通される排水管2は、軸心が水平方向に対して建物内側から建物外側へ下降するように傾斜された水勾配を有した状態で設置される。尚、排水管2を流れる水の流動方向を基準にすれば、建物内側は上流側であり、建物外側は下流側となる。筒状部41の両端面間の長さは、立上り部3の建屋内側の一方の側壁面3aから建屋外側の他方の側壁面3bまでの長さに一致されている。
【0045】
(スリーブ本体4:第1フランジ部46・第2フランジ部42)
筒状部41の建物内側の一端部及び建物外側の他端部には、第1フランジ部46及び第2フランジ部42がそれぞれ形成されている。第1フランジ部46及び第2フランジ部42のフランジ面46a・42aは、筒状部41の軸心方向に対して直交する線分方向を含むように設定されている。即ち、第1フランジ部46及び第2フランジ部42のフランジ面は、筒状部41の軸心に対して直交するように形成されている。これにより、図2に示すように、第1フランジ部46及び第2フランジ部42は、立上り部3に組み込まれたときに、フランジ面46a・42aが立上り部3の側壁面3a・3bに対して面一状になることによって、立上り部3の側壁面3a・3bの一部を構成するようになっている。
【0046】
また、第1フランジ部46及び第2フランジ部42は、筒状部41の外周方向に突出されている。これにより、第1フランジ部46及び第2フランジ部42は、立上り部3をコンクリートの打設により形成するときに、コンクリートが筒状部41内に流入することを防止するようになっている。
【0047】
さらに、第1フランジ部46には、複数の貫通穴46bが形成されている。これらの貫通穴46bは、円周方向に等間隔に分散配置されている。貫通穴46bは、図2に示すように、釘11を立上り部3の型枠に打ち込むことによって、基礎スリーブ1を仮止めするときに用いられる。
【0048】
(スリーブ本体4:突出片45)
筒状部41の側周壁411には、4枚の突出片45が形成されている。図6に示すように、突出片45は、円周方向の4か所に等分配置されている。尚、突出片45は、1枚以上であれば良いし、複数枚の場合において等分配置されていなくても良い。図3及び図4に示すように、全ての突出片45は、筒状部41における側周壁411の外周面411aから突出されている。突出した形状は、筒状部41の軸心方向から見て二等辺三角形となるように設定されている。突出片45のサイズは、4枚の突出片45の斜辺同士を結んだときに、筒状部41の内径を一辺とした正方形状となるように設定されている。
【0049】
各突出片45の頂部には、穴部45aが形成されている。穴部45aは、図示しない番線を通過させる穴径を有している。これにより、建物の基礎の立上り部3が配筋31(縦筋及び横筋)を備えた鉄筋構造であるときに、応力中心である立上り部3における幅方向の中心位置に配筋31が配置されることになるが、番線を用いて配筋31と突出片45とを結び付けることによって、コンクリート打設前の鉄筋構造体にスリーブ本体4を取り付けることにより容易に位置決めすることができる。尚、穴部45aは、複数形成されていても良い。また、穴部45aの径は、複数本の番線を通過させるように設定されていても良い。
【0050】
上記の突出片45は、図4に示すように、筒状部41の円筒軸方向の中心位置から外れた位置に配置されている。即ち、立上り部3の幅方向中心部に埋設される配筋31(縦筋や横筋)に突出片45が当接しないように配置されている。これにより、突出片45は、配筋31の障害物になることを回避するようになっている。また、180度対向配置された2枚の突出片45は、筒状部41の中心位置から一方端側に配置されている。一方、残りの2枚の突出片45は、筒状部41の中心位置から他方端側に配置されている。これにより、配筋31に番線を用いてスリーブ本体4を固定するときに、左右方向から中心部に向かうように支持することによって、スリーブ本体4を支持する重量バランスを左右方向(軸心方向)において均等に近づけることを可能にし、スリーブ本体4の位置決めを容易化することを可能にしている。
【0051】
(スリーブ本体4:取付部44)
図3に示すように、筒状部41における側周壁411の内周面411bには、取付部44と凸部47とが形成されている。取付部44は、凸部47よりも建物外側に配置されている。取付部44は、図1の筒状部材7を着脱可能に取付けるためのものである。具体的に説明すると、取付部44は、図3及び図5に示すように、周方向の3箇所に配置されたネジ溝部441を有している。各ネジ溝部441は、螺旋状に形成された雌ネジの一部を切り欠いた関係を有するように形成されている。これにより、取付部44は、分散配置されたネジ溝部441の組み合わせによりネジ溝を構成し、筒状部材7をネジ溝部441によるネジ溝に沿って回転させることにより容易に取り付けることを可能にしている。
【0052】
上記のネジ溝部441は、1mm/ピッチで形成されている。これにより、ネジ溝部441は、図1の筒状部材7を1回転させる毎に、1mm進退移動させることを可能にすることによって、スリーブ本体4に対する筒状部材7の進退移動位置を作業者に容易に把握可能にしている。
【0053】
尚、本実施形態においては、取付部44を3箇所に分散配置されたネジ溝部441により形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、取付部44は、各ネジ溝部441が連続した状態、即ち、全周にネジ溝が形成されたものであっても良いし、2以上のネジ溝部441が分散配置されたものであっても良い。さらに、取付部44は、ネジ溝部441以外の形態で形成されていても良い。
【0054】
(スリーブ本体4:凸部47)
上記の取付部44よりも建物内側には、凸部47が配置されている。凸部47は、側周壁411の内周面411b全体に環状に形成されている。凸部47は、内周面411bから内周側(軸心側)に向けて突設することより形成されている。軸心を含む平面による凸部47の断面形状は、軸心方向を頂部とした長方形状に設定されている。換言すれば、凸部47の両側面は、排水管2の挿通方向に略一致する軸心方向に対して直交するように設定されている。
【0055】
スリーブ本体4(筒状部41)は、側周壁411と凸部47とを有することによって、平坦な内周面411bと内周方向に突出した凸部47の突出面とを備えたスリーブ内周部40を有している。凸部47は、スリーブ内周部40においてシールパッキン5を固定する固定部6の一部を構成している。固定部6の詳細については後述する。
【0056】
(スリーブ本体4:フランジ収容部43)
筒状部41の建物外側の端部には、フランジ収容部43が形成されている。フランジ収容部43は、図1の筒状部材7のフランジ部70を収容するように形成されている。具体的に説明すると、図5に示すように、フランジ収容部43は、第2フランジ部42の内周側に配置されている。フランジ収容部43は、側周壁411よりも外周側に突出されていると共に、建物外側の端面が開口された収容空間を有している。フランジ収容部43の収容空間は、図1の筒状部材7のフランジ部70の外形と同一形状であり、且つ、フランジ部70の外形よりも僅かに大きなサイズに設定されている。
【0057】
これにより、フランジ収容部43は、図2に示すように、フランジ部70を含めた筒状部材7の全体を筒状部41(スリーブ本体4)内に収容可能にすることによって、スリーブ本体4と筒状部材7とを組み合わせた基礎貫通口セット8をスリーブ本体4のサイズだけの小型化した状態で保管や移送することを可能にしている。
【0058】
(シールパッキン5)
上記のように構成されたスリーブ本体4には、スリーブ本体4と排水管2との隙間を気密状態及び液密状態に封止するシールパッキン5が設けられている。シールパッキン5は、EPDM(エチレン-プロピレンゴム)樹脂により形成されており、耐オゾン性、耐候性及び耐熱性に優れている。尚、シールパッキン5は、NBR(ニトリルゴム)、NBRとPVC(ポリ塩化ビニル)との混合物、FKM(フッ素ゴム)、ウレタンゴム等の合成樹脂により形成されていても良い。
【0059】
シールパッキン5は、図7に示すように、環状に形成されている。尚、図7は、シールパッキン5の外形を示す説明図であり、中心線を境界として図中上側がシールパッキン5を外周側から目視した状態である一方、中心線を境界として図中下側がシールパッキン5を内周側から目視した状態である。
【0060】
シールパッキン5は、スリーブ本体4の凸部47を含むスリーブ内周部40にシール外周部51が密接されると共に、排水管2の管外周面2aにシール内周部52が密接されるように形成されている。具体的に説明すると、シール外周部51の幅方向中心部には、凹部511が形成されている。凹部511は、シール外周部51の全周囲に形成されている。凹部511は、図3の凸部47が圧入状態で嵌合されるように形成されている。
【0061】
即ち、凹部511は、シール外周部51の先端部(内周側端部)が狭くて外周側が広がる台形形状に近似した溝形状に形成されている。凹部511の開口幅は、凸部47の幅よりも狭い幅に設定されている。一方、凹部511の底面幅は、凸部47の幅に一致した幅に設定されている。これにより、図2に示すように、シールパッキン5の凹部511がスリーブ本体4の凸部47に圧入されたときに、凹部511が弾性変形して凸部47の両側面を挟み込むような状態で密接することによって、凹部511と凸部47とで固定部6の機能を発揮するようになっている。
【0062】
上記の凹部511は、第1側壁部512と第2側壁部513と底壁部514とで形成されている。第1側壁部512は、第2側壁部513よりも先端部が内周側に突出されている。また、底壁部514は、シール内周部52側に配置されている。底壁部514における凹部511側に対する反対側には、当接面521が形成されている。当接面521は、排水管2に面状に密接されるように、平坦状に形成されている。
【0063】
当接面521は、第1側壁部512側の一方側から第2側壁部513側の他方側にかけて内周側に向かうように傾斜されている。また、当接面521の他方側の端部には、突出部522が接続されている。突出部522は、当接面521に接続された固定端側から自由端側にかけて半径方向幅を縮小した形状に形成されている。即ち、突出部522は、先端部が尖った先細り形状となるように形成されている。これにより、シールパッキン5は、当接面521側から突出部522に向かって排水管2を挿入したときに、排水管2の挿入を安定化させ、排水管2の挿入時におけるシールパッキン5の過剰な外力の発生を抑制することを可能にしている。
【0064】
(固定部6)
上記のスリーブ本体4の凸部47とシールパッキン5の凹部511とは、スリーブ本体4のスリーブ内周部40とシールパッキン5のシール外周部51とを所定の保持力で固定する固定部6を構成している。即ち、固定部6は、スリーブ本体4のスリーブ内周部40に形成された凸部47と、シールパッキン5のシール外周部51に形成され、凸部47が圧入状態で嵌合される凹部511とを有している。これにより、固定部6は、シールパッキン5のシール外周部51の凹部511とスリーブ本体4の凸部47とを圧入状態で嵌合するという作業を行うだけで、容易に所定の保持力でシールパッキン5をスリーブ本体4に固定することができるようになっている。さらに、シールパッキン5及びスリーブ本体4に凹部511及び凸部47がそれぞれ形成されているため、固定部6を別個に設ける場合よりも、基礎スリーブ1の部品点数を削減することが可能になっている。
【0065】
また、固定部6は、スリーブ本体4の円筒軸方向の中心位置よりも建物内側に配置されている。これにより、固定部6の配置場所がシールパッキン5の配置場所でもあるため、暴風雨等により建物外から多量の水が基礎スリーブにかかったときに、建物外や建物外側でシールされている場合と比較して、シール性の低下や劣化を小さくすることができる。さらに、固定部6は、筒状部材7がスリーブ本体4内に収容されたときに、筒状部材7が固定部6で固定されたシールパッキン5に接触しないように配置されている。
【0066】
尚、本実施形態においては、固定部6をスリーブ本体4の凸部47とシールパッキン5のシール外周部511とで形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、固定部6は、スリーブ本体4の凹部とシールパッキン5の凸部とで形成されていても良い。また、固定部6は、凹部及び凸部からなる嵌合構造体を複数備えたものであっても良い。さらに、固定部6は、スリーブ本体4やシールパッキン5とは別体に設けられた嵌合部材であっても良いし、接着材からなる接着層であっても良い。即ち、固定部6は、スリーブ本体4のスリーブ内周部40とシールパッキン5のシール外周部51とを所定の保持力で固定することができれば、どのような構造や材料、方法で形成されていても良い。
【0067】
(基礎貫通口セット8:筒状部材7)
以上にように構成された基礎スリーブ1は、基礎貫通口セット8の一部を構成している。基礎貫通口セット8は、図1及び図2に示すように、基礎スリーブ1と、排水管2を挿通する筒状部材7とを有している。筒状部材7は、一端部が基礎スリーブ1におけるスリーブ本体4の取付部44に進退移動可能及び着脱可能に取り付けられている。また、筒状部材7は、図8に示すように、第1分割部材71と第2分割部材72とで半径方向に二つ割れ構造とされている。これにより、排水管2の設置後においても筒状部材7の取り付け及び取り外しを行うことが可能になっている。
【0068】
具体的に説明すると、筒状部材7を構成する第1分割部材71及び第2分割部材72のそれぞれの外周面には、螺旋部71a・72aが形成されている。螺旋部71a・72aは、一端部から他端部の近傍位置にかけて形成されている。螺旋部71a・72aは、第1分割部材71と第2分割部材72とで筒状部材7とされたときに、一端部が図3のスリーブ本体4におけるネジ溝部441に螺合可能に形成されている。
【0069】
また、第1分割部材71の分割面には、複数の嵌合穴71bが形成されている。嵌合穴71bは、第1分割部材71の一端部と他端部と中間部との3箇所に配置されている。一方、第2分割部材72の分割面には、複数の突設部72bが形成されている。突設部72bは、第2分割部材72の一端部と他端部と中間部との3箇所に配置されている。これらの嵌合穴71b及び突設部72bは、第1分割部材71及び第2分割部材72の分割面同士が当接されたときに、互いに嵌合することによって、第1分割部材71と第2分割部材72とを筒状部材7の形態に位置決めするようになっている。
【0070】
また、第1分割部材71の他端部には、外周方向に突出された第1フランジ部711が形成されている。第1フランジ部711は、第1係止溝711aと係合凹部711bと把持部711cとを有している。一方、第2分割部材72の他端部には、外周方向に突出された第2フランジ部721が形成されている。第2フランジ部721は、第2係止溝721aと係合凸部721bと把持部721cとを有している。
【0071】
上記の第1係止溝711a及び第2係止溝721aは、第1フランジ部711及び第2フランジ部721の周方向の全体に形成されており、第1フランジ部711の外周面に開口した断面矩形状に形成されている。これらの第1係止溝711a及び第2係止溝721aは、第1フランジ部711及び第2フランジ部721が接合されてフランジ部70とされたときに、カバー部材9の側面壁を嵌合することによりカバー部材9を容易に固定可能にするようになっている。カバー部材9の詳細については後述する。
【0072】
また、第1分割部材71の係合凹部711bは、第1フランジ部711の両端部に形成されている。一方、第2分割部材72の係合凸部721bは、第2フランジ部721の両端部に形成されている。これらの係合凹部711b及び係合凸部721bは、第1フランジ部711及び第2フランジ部721が接合されてフランジ部70とされたときに、係合凸部721bが係合凹部711bに嵌合及び係合することにより第1分割部材71と第2分割部材72との接合状態を維持するようになっている。
【0073】
また、第1分割部材71の把持部711c及び第2分割部材72の把持部721cは、第1フランジ部711の他端側の端面に形成されている。これらの把持部711c・721cは、第1フランジ部711及び第2フランジ部721の端面から他端側に突出されており、周方向に等間隔で配置されている。これらの把持部711c・721cは、第1分割部材71の曲率半径中心から半径方向に一致した長手方向を有するように形成されている。把持部711c・721cは、第1フランジ部711及び第2フランジ部721が接合されてフランジ部70とされたときに、周方向に等間隔で配置されることによって、筒状部材7の軸心を回転中心として回転させるとき、即ち、筒状部材7をスリーブ本体4に対して進退移動させるときの指先の引っ掛かり部分として用いることが可能になっている。
【0074】
(基礎貫通口セット8:カバー部材9)
以上にように構成された筒状部材7は、図1に示すように、フランジ部70によりカバー部材9を固定可能にしている。カバー部材9は、筒状部材7から建物外に導出された排水管2を覆うように形成されている。これにより、カバー部材9は、建物外に導出された排水管2をカバー部材で覆うことにより美観を良好にしていると共に、水の基礎スリーブ1内への浸入を防止している。
【0075】
カバー部材9は、上面壁が開口されたカバー本体91と、カバー本体91における上面壁の開口を塞ぐ蓋体92とを有している。これにより、カバー部材9で覆われた内部の状態、例えば、排水管2の状態等を蓋体92を取り外すことで開口を介して容易に目視により確認することが可能になっている。
【0076】
具体的に説明すると、図9に示すように、カバー部材9は、カバー本体91を有している。カバー本体91は、基礎スリーブ1側から目視して左右方向に配置される側面壁914・914と、基礎スリーブ1側に配置され、排水管2が導入される第1切欠き部911と、基礎スリーブ1側とは反対側に配置される背面壁915と、背面壁915の下部に形成され、排水管2を導出させる第2切欠き部916と、カバー本体91の底部に配置され、地面に設置されるカバー支持部912とを有している。
【0077】
第1切欠き部911は、図8の第1係止溝711a及び第2係止溝721aに嵌合する幅で形成されていると共に、下端側が開口されている。これにより、カバー本体91を上下方向に移動させて第1切欠き部911の側壁部を第1係止溝711a及び第2係止溝721aに嵌合させるという簡単な作業を行うだけでカバー部材9を基礎スリーブ1に取り付けることができる。
【0078】
カバー本体91の上端部には、蓋勘合部913が形成されている。蓋勘合部913は、図10に示すように、上端面の開口部913bの周囲を囲むように形成されている。また、蓋勘合部913には、上下方向に貫通された本体側取付穴913aが左右対称に形成されている。蓋勘合部913には、図11及び図12に示すように、蓋体92が着脱可能に設けられている。蓋体92は、カバー本体91の蓋勘合部913に嵌合可能に形成されている。また、蓋体92には、本体側取付穴913aに対応する位置に蓋側取付穴921が形成されている。そして、カバー本体91の本体側取付穴913aと蓋体92の蓋側取付穴921とにビスやボルト、ピン等の固定部材が挿通されることによって、蓋体92がカバー本体91に固定されるようになっている。
【0079】
尚、本実施形態においては、図9に示すように、カバー本体91に第1切欠き部911を形成し、この第1切欠き部911を図8の第1及び第2係止溝711a・721aに嵌合させることによって、カバー部材9を固定するようになっているが、これに限定されるものではない。例えば、図14及び図15に示すように、カバー部材9は、上端面が開口され、上端面までの高さが筒状部材7の下端部に位置するように設定されたカバー本体94と、カバー本体94の上端面に着脱可能に設けられる蓋体95とを有し、蓋体95の図示しない切欠き部とカバー本体94の上端部とが筒状部材7の第1及び第2係止溝711a・721aに嵌合可能にされる構成にされていても良い。
【0080】
(建物の排水管配管構造)
上記のように構成された基礎スリーブ1及び基礎貫通口セット8は、図1及び図14〜図16に示すように、建物の排水管配管構造に適用される。排水管配管構造は、排水管2が建物内の床下を通り、建物の基礎の立上り部3に形成された貫通穴3aを挿通された後、建物外で敷地内に設けられた排水経路に接続されている構造である。この排水管配管構造において、建物の基礎の立上り部3に形成された貫通穴3aには円筒形状の基礎スリーブ1が埋設されている。基礎スリーブ1は、上述のように、立上り部3に貫設される円筒形状のスリーブ本体4と、スリーブ本体4と排水管2との隙間を封止する環状のシールパッキン5と、スリーブ本体4のスリーブ内周部40とシールパッキン5のシール外周部51とを所定の保持力で固定する固定部6とを有している。
【0081】
さらに、排水管配管構造は、下記の構成を備えていても良い。即ち、基礎スリーブ1におけるスリーブ本体4のスリーブ内周部40には、取付部44が形成され、取付部44に排水管2を挿通する筒状部材7が取付けられている。また、筒状部材7は、一端部が取付部44に取付けられ、他端部が基礎スリーブ1から建物外側に突出されている。また、基礎の立上り部3の建物外側の外壁面には、仕上げモルタル10が塗着されている。
【0082】
さらに、排水管配管構造は、下記の構成を備えていても良い。即ち、排水管配管構造は、排水管2が建物内の床下を通り、建物の基礎の立上り部3に形成された貫通穴3aを挿通された後、建物外で敷地内に設けられた排水経路に接続されていると共に、排水管2の建物外の地上部分がカバー部材9で覆われている構造である。この排水管配管構造において、建物の基礎の立上り部3に形成された開口には円筒形状の基礎スリーブ1が埋設されている。基礎スリーブ1は、立上り部3に貫設される円筒形状のスリーブ本体4と、基礎スリーブ1と排水管2との隙間を封止する環状のシールパッキン5と、スリーブ本体4のスリーブ内周部40とシールパッキン5のシール外周部51とを所定の保持力で固定する固定部6とを有している。そして、スリーブ本体4の内周壁には、取付部44が形成され、取付部44に排水管2を挿通する筒状部材7が取付けられている。筒状部材7は、一端部が取付部44に取付けられ、他端部がスリーブ本体4の建物外側に突出し、筒状部材7の突出する他端部には係止溝(第1係止溝711a・第2係止溝721a)を有するフランジ部70が形成されている。また、カバー部材9におけるスリーブ本体4に対向する側面壁には第1切欠き部911(切欠き部)が形成され、第1切欠き部911の周縁の一部が筒状部材7のフランジ部70の係止溝に係止されている。
【0083】
上記の排水管配管構造によれば、スリーブ内周部40とシール外周部51とが固定部6により所定の保持力で固定されることによって、シールパッキン5のシール外周部51からシール内周面までの径方向幅を変更したり、径方向幅に直交するシール厚みを変更した場合でも、シールパッキン5を所定の保持力でスリーブ内周部40に固定しておくことができる。これにより、同一サイズのスリーブ本体4に対して異なる管径の排水管2を挿通させるため、シールパッキン5の径方向幅やシール厚みを排水管2とスリーブ本体4との隙間に合わせて変更した場合であっても、排水管2の挿通時にシールパッキン5が外れるという不具合の起こり易さは、排水管2の管径に殆ど影響することがない。従って、同一サイズのスリーブ本体4に対して異なる管径の排水管2の適用をシールパッキン5の変更だけで容易に行うことができる。
【0084】
(組立・動作)
上記の構成において、基礎スリーブ1及び基礎貫通口セット8の組み立て方法や立上り部3への設置方法等について説明する。
【0085】
先ず、スリーブ本体4とシールパッキン5とがそれぞれ準備される。そして、スリーブ本体4の凸部47にシールパッキン5の凹部511が嵌合されることによって、スリーブ本体4内にシールパッキン5が取り付けられる。この後、第1分割部材71と第2分割部材72とを接合した筒状部材7が準備され、筒状部材7の螺旋部71a・72aがスリーブ本体4のネジ溝部441に螺合される。筒状部材7がスリーブ本体4内に挿入されるように回転される。そして、筒状部材7のフランジ部70がスリーブ本体4のフランジ収容部43に嵌入し、当接したときに筒状部材7の回転が停止される。これにより、筒状部材7が基礎スリーブ1内に収容された状態の基礎貫通口セット8となり、基礎スリーブ1のサイズで保管及び搬送が行われることになる。
【0086】
次に、配筋31が完了したコンクリート打設前の基礎の立上り部3に基礎貫通口セット8が運び込まれる。そして、排水管2を挿通させる貫通穴3aの形成場所に、基礎貫通口セット8がセットされる。基礎貫通口セット8は、配筋31に番線を介して結び付けられ、基礎スリーブ1の軸心が水平方向となり、基礎スリーブ1の両端面が立上り部3の両側面に一致するように位置決めされると共に固定される。また、図2の釘11が必要に応じて型枠に打ち込まれ、第1フランジ部46が固定される。この後、コンクリートが打設されることによって、鉄筋構造の立上り部3が形成されたときに、立上り部3の貫通穴3aが基礎貫通口セット8の基礎スリーブ1により形成されることになる。
【0087】
次に、排水管2が建物外側から基礎スリーブ1内に挿通され、シールパッキン5でシールされながら建物内に進行される。この際、固定部6によりシールパッキン5の外周側が所定の保持力で保持されているため、シールパッキン5のサイズが排水管2の管径に合わせて変更されていた場合でも、シールパッキン5が外れるという不具合が発生し難いものとなり、安定したシール性能を発揮することになる。そして、基礎スリーブ1と排水管2との隙間がシールパッキン5により封止されることによって、建物外からの水やシロアリの浸入が防止されることになる。また、シールパッキン5が基礎スリーブ1内に設けられているため、長期間に亘って初期のシール性能が維持されることになる。
【0088】
次に、排水管2の排水経路等への接続が完了すると、筒状部材7が回転されることによって、筒状部材7が基礎スリーブ1から所定長だけ突出される。そして、カバー本体91が準備され、筒状部材7の上方から被せられることによって、カバー本体91の第1切欠き部911が筒状部材7のフランジ部70に形成された第1及び第2係止溝711a・721aに嵌合される。これにより、カバー本体91が筒状部材7の軸心方向に対して係止された状態で取り付けられることになる。この後、カバー本体91の上端部に蓋体92が装着される。蓋体92は、排水管2等の点検時においてカバー本体91から抜脱される。
【0089】
筒状部材7が破損等により交換を必要とするときは、カバー部材9が持ち上げられることにより筒状部材7から取り外される。この後、筒状部材7が回転されることにより基礎スリーブ1から取り外される。そして、筒状部材7が第1分割部材71と第2分割部材72とに2分割されることによって、排水管2の接続状態を維持したまま筒状部材7が取り除かれる。新しい第1分割部材71と第2分割部材72とが準備され、排水管2を挟んだ状態で結合されることによって、筒状部材7とされる。そして、筒状部材7が基礎スリーブ1に逆方向の回転により組み付けられることになる。
【0090】
また、排水管2を交換する場合には、カバー部材9が取り除かれた後、排水管2が引き抜かれ、新規の排水管2が基礎スリーブ1に挿入される。この際、必要に応じて、シールパッキン5も更新される。このときの更新作業においても、シールパッキン5の不具合は生じ難いものとなっている。
【符号の説明】
【0091】
1 基礎スリーブ
2 排水管
3 立上り部
4 スリーブ本体
5 シールパッキン
6 固定部
7 筒状部材
8 基礎貫通口セット
9 カバー部材
10 仕上げモルタル
41 筒状部
42 第2フランジ部
43 フランジ収容部
44 取付部
45 突出片
46 第1フランジ部
47 凸部
51 シール外周部
52 シール内周部
91カバー本体
92 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の床下から当該建物外に導出される排水管が挿通される貫通穴を、前記建物の基礎の立上り部に形成するための基礎スリーブであって、
前記立上り部に貫設される円筒形状のスリーブ本体と、
前記スリーブ本体と前記排水管との隙間を封止する環状のシールパッキンと、
前記スリーブ本体のスリーブ内周部と前記シールパッキンのシール外周部とを所定の保持力で固定する固定部と
を有していることを特徴とする基礎スリーブ。
【請求項2】
前記固定部は、
前記スリーブ本体のスリーブ内周部に形成された凸部と、
前記シールパッキンのシール外周部に形成され、前記凸部が圧入状態で嵌合される凹部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の基礎スリーブ。
【請求項3】
前記固定部は、
前記スリーブ本体の円筒軸方向の中心位置に対して前記建物内側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎スリーブ。
【請求項4】
前記スリーブ本体は、外周面から突出する複数の突出片を有し、これら突出片は、前記スリーブ本体の円筒軸方向の中心位置から外れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の基礎スリーブ。
【請求項5】
前記スリーブ本体は、
前記固定部から前記建物外側のスリーブ内周部に、前記排水管を挿通する筒状部材を着脱可能に取付けるための取付部を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の基礎スリーブ。
【請求項6】
前記取付部は、ネジ溝であるとことを特徴とする請求項5に記載の基礎スリーブ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の基礎スリーブと、
前記取付部に着脱可能に取り付けられ、前記排水管を挿通する筒状部材と
を有することを特徴とする基礎貫通口セット。
【請求項8】
前記筒状部材は、第1分割部材と第2分割部材とで半径方向に二つ割れ構造とされていることを特徴とする請求項7に記載の基礎貫通口セット。
【請求項9】
前記筒状部材は、一端部が前記基礎スリーブにおける前記スリーブ本体の取付部に進退移動可能に取り付けられており、他端部にフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の基礎貫通口セット。
【請求項10】
前記スリーブ本体は、前記フランジ部を収容するフランジ収容部を有していることを特徴とする請求項9に記載の基礎貫通口セット。
【請求項11】
さらに、前記筒状部材から前記建物外に導出された前記排水管を覆うカバー部材を有していることを特徴とする請求項7乃至10の何れか1項に記載の基礎貫通口セット。
【請求項12】
さらに、前記筒状部材から前記建物外に導出された前記排水管を覆うカバー部材を有しており、
前記筒状部材は、一端部が前記基礎スリーブにおける前記スリーブ本体の取付部に進退移動可能に取り付けられており、他端部に前記カバー部材を前記進退移動方向に係止可能なフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の基礎貫通口セット。
【請求項13】
前記フランジ部は、外周面部に係止溝を有しており、
前記カバー部材は、前記基礎スリーブに対向する側面壁の下端側が開口された切欠き部を有し、
前記切欠き部は、前記係止溝に嵌合するように形成されていることを特徴とする請求項12に記載の基礎貫通口セット。
【請求項14】
前記カバー部材は、
上面壁が開口されたカバー本体と、該カバー本体における上面壁の開口を塞ぐ蓋体とを有していることを特徴とする請求項11乃至13の何れか1項に記載の基礎貫通口セット。
【請求項15】
排水管が、建物内の床下を通り、当該建物の基礎の立上り部に形成された貫通穴を挿通された後、当該建物外で敷地内に設けられた排水経路に接続されている建物の排水管配管構造において、
前記建物の基礎の立上り部に形成された貫通穴には円筒形状の基礎スリーブが埋設されており、
前記基礎スリーブは、
前記立上り部に貫設される円筒形状のスリーブ本体と、
前記スリーブ本体と前記排水管との隙間を封止する環状のシールパッキンと、
前記スリーブ本体のスリーブ内周部と前記シールパッキンのシール外周部とを所定の保持力で固定する固定部と
を有していることを特徴とする建物の排水管配管構造。
【請求項16】
さらに、前記基礎スリーブにおけるスリーブ本体のスリーブ内周部には取付部が形成され、該取付部に排水管を挿通する筒状部材が取付けられており、
前記筒状部材は、一端部が前記取付部に取付けられ、他端部が前記基礎スリーブから前記建物外側に突出されており、
前記基礎の立上り部の前記建物外側の外壁面には仕上げモルタルが塗着されていることを特徴とする請求項15に記載の建物の排水管配管構造。
【請求項17】
排水管が、建物内の床下を通り、当該建物の基礎の立上り部に形成された貫通穴を挿通された後、当該建物外で敷地内に設けられた排水経路に接続されていると共に、前記排水管の建物外の地上部分がカバー部材で覆われている建物の排水管配管構造において、
前記建物の基礎の立上り部に形成された開口には円筒形状の基礎スリーブが埋設されており、
前記基礎スリーブは、
前記立上り部に貫設される円筒形状のスリーブ本体と、
前記スリーブ本体と前記排水管との隙間を封止する環状のシールパッキンと、
前記スリーブ本体のスリーブ内周部と前記シールパッキンのシール外周部とを所定の保持力で固定する固定部とを有しており、
前記スリーブ本体の内周壁には取付部が形成され、該取付部に排水管を挿通する筒状部材が取付けられ、該筒状部材は一端部が取付部に取付けられ、他端部がスリーブ本体の前記建物外側に突出し、筒状部材の突出する他端部には係止溝を有するフランジ部が形成され、カバー部材におけるスリーブ本体に対向する側面壁には切欠部が形成され、該切欠部の周縁の一部が筒状部材のフランジ部の係止溝に係止されていることを特徴とする建物の排水管配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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