説明

堆肥攪拌装置

【課題】有機廃棄物の攪拌効率を向上させる。
【解決手段】堆積された有機廃棄物Bを攪拌する攪拌体2を外周に備えた回転軸1には、該回転軸1及び前記攪拌体2を振動させる振動体3が内蔵されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物を攪拌して堆肥化する縦軸型の堆肥化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理槽内に堆積された有機廃棄物を攪拌する攪拌体を外周に備えた回転軸が、平面方向に移動可能に垂設された縦軸型の堆肥化装置では、その処理効率を向上させるために、処理槽の深さや縦横幅を大きくして、有機廃棄物の堆積量を増やすことが試みられている。この場合、回転軸の長さを有機廃棄物の堆積高さに対応させて長くするとともに、回転軸の移動距離を処理槽の縦横幅に対応させて増やしている。
【0003】
ところで、攪拌時における回転軸の移動及び回転に対しては、有機廃棄物による抵抗力が作用するため、攪拌時においては、回転軸の移動速度及び回転速度を、有機廃棄物の抵抗力によって回転軸や攪拌体等が破損しない程度に設定している。
【0004】
しかしながら、有機廃棄物の堆積量が増えるとその重量に比例して抵抗力が大きくなり、更に、有機廃棄物が自身の重量で押し潰されて密度が高くなって固くなることによって、その抵抗力が大きくなってしまうため、実際には、回転軸の移動速度及び回転速度を下げなければならず、逆に攪拌効率が低下してしまうものである。すなわち、有機廃棄物の堆積量を増やせば、一回当たりの処理量は増えるものの、回転軸の移動速度及び回転速度を下げることによる攪拌効率の低下が生じるため、有機廃棄物の堆積量を増やすだけでは、処理効率を向上させるための根本的な解決手段とはならないものである。
【0005】
そこで、回転軸の移動及び回転に対する有機廃棄物の抵抗力を低減して攪拌効率を向上させるために、たとえば、攪拌体の外周をノコギリ刃形に形成したり、攪拌体の外周に突起を設けたり、更には、回転軸を自転させながら縦軸周りに公転させたりする構成が提案されている。(たとえば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−281471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、外周をノコギリ刃形に形成した攪拌体や、前記突起、更には、回転軸を公転させるため等の各種部材及び部品を要する上に、構造的に複雑である。また、有機廃棄物の抵抗力によっては、各種部材及び部品の破損や回転軸の公転が行われず、有機廃棄物の攪拌効率が低減するおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、簡易な構成で回転軸の移動及び回転に対する有機廃棄物の抵抗力を低減して有機廃棄物の攪拌効率を向上させることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にかかる堆肥化装置は、次の構成を少なくとも具備する。
【0009】
すなわち、堆積された有機廃棄物を攪拌する攪拌体を外周に備えた回転軸が、平面方向に移動可能に垂設された縦軸型の堆肥化装置において、前記回転軸は、該回転軸及び前記攪拌体を振動させる振動体が内蔵されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記振動体は、前記回転軸の軸線方向の全域の内、有機廃棄物の密度が高い部位と対応する部位に内蔵されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記振動体は、前記回転軸の軸線方向の全域の内、少なくとも下端を含む下部を振動させる部位に内蔵されていることを特徴とする。
【0012】
前記回転軸が、上端側を給気口とし、下端側を噴出口とする管構造のものであって、該回転軸の内側に前記振動体を保持する保持手段と、前記給気口と噴出口とを連通する連通空間と、を有した保持部が備えられていることを特徴とする。
【0013】
本発明でいう有機廃棄物とは、発酵することにより堆肥化するものであればよく、たとえば、畜舎に敷かれる敷料(家畜の糞尿が混合されているもの)、家畜(牛、豚、鶏)の糞尿、生ごみ等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明にかかる堆肥化装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6は、本発明にかかる堆肥化装置の実施の一例を示す概略構成図である。本実施例で示す堆肥化装置Aの構成は、基本的に周知のものであるので、詳細な説明は省略するが、概略的には、次のとおりである。
【0015】
本実施例の堆肥化装置Aは、有機廃棄物Bを堆積する容器状の処理槽Cと、該処理槽Cに対して図1及び図2において左右方向に掛け渡されるとともに、図2において前後方向に走行する走行体Dと、該走行体Dに対して左右方向に移動可能に支持された台車Eと、該台車Eに垂設された攪拌装置Fとを備えて構成されたものである。
【0016】
前記処理槽Cは、コンクリートを用いて平面四角形状に形成された底部C1と、該底部の三辺に立設された側壁C2とで形成されたものである。前記走行体Dは、枠状に形成されたものであり、前記処理槽Cにおける対面する2つの側壁C2の縁に設けられたレールD1上を転がる車輪D2を備えたものである。前記台車Eは、枠状に形成されたものであり、前記走行体Dの上下面に接触して転がる車輪E1を備えたものである。前記走行体D及び台車Eは、夫々駆動モータ(図示せず)により動作するようにされている。
【0017】
本実施例の攪拌装置Fは、前記有機廃棄物Bに対して攪拌しながら空気を送る構造のものであり、図3及び図4管構造の回転軸1の外周にスクリュ状の攪拌体2を一体に設けてなる攪拌スクリュF1と、回転軸1の上端部が回転可能に嵌入される空気吸入管F2とを備えている。前記回転軸1の上部側面には給気口1Aが開口され、下端には噴出口1Bが開口されており、この給気口1Aと噴出口1Bとが空気の通路1Cを介して連通している。すなわち、給気口1Aから給気された空気を、通路1Cを通って噴出口1Bから噴出するようにしている。
【0018】
前記攪拌スクリュF1は、前記攪拌体2が設けられていない回転軸1の上部が、前記台車Eに固定されるスリーブE2に対して回転可能、且つ抜け止めされた状態で貫通して支持されている。また、前記スリーブE2の下側から貫通した回転軸1の側面には、スプロケット11が回転軸1と同軸として固着されている。このスプロケット11には、台車Eに取付けられた駆動モータGの回転を回転軸1に伝達するためのチェーンHが巻き掛られる。
【0019】
前記空気流入管F2は、回転軸1の上端が回転可能に貫通し、前記給気口1Aが開孔された回転軸1の外側面全周を囲むように閉塞可能な管状に形成され、下端部分が前記上側のスリーブE2に対して固定されている。すなわち、この空気流入管F2は、回転軸1の回転が伝達されず常に定位置を保つようにされている。
【0020】
前記空気流入管F2の内面と回転軸1の外側面との間には、空気の流通空間F20が確保されている。また、空気流入管F2の外側面には、前記流通空間F20に空気を給気する給気パイプF21が設けられている。この給気パイプF21は、給気ポンプ(図示せず)と配管されている。そして、該給気ポンプからの空気が給気パイプF21を経て前記流通空間20へ給気される。
【0021】
この構成の堆肥化装置Aによれば、前記走行体Dの前後移動及び前記台車Eの左右移動に伴って、前記攪拌装置Fが処理槽C内を移動しながら、該処理槽C内に堆積された有機廃棄物Bを攪拌する。そして、攪拌される有機廃棄物Bは、前記噴出口1Bから噴出する空気と混合されながら、徐々に発酵、乾燥して堆肥となる。
【0022】
図中、符号3は、本実施例における堆肥化装置Aの新規な構成である振動体である。該振動体3は、自身の振動を前記回転軸1及び攪拌体2に対して振動を伝えることにより、該回転軸1及び攪拌体2を振動させるようにしたものである。すなわち、有機廃棄物Bの攪拌時において、該振動体3の振動により前記回転軸1及び攪拌体2が振動すると、この振動が有機廃棄物Bに伝わって、回転軸1及び攪拌体2周りの有機廃棄物Bを振動させる。有機廃棄物Bが振動すると、堆積により互いにくっついて固まっていた有機廃棄物Bの粒子同士が離れるような現象が生じる。そして、このような現象により、固まっていた有機廃棄物Bが軟らかくなるとともに、崩れやすくなるため、回転軸1の移動時及び回転時において、回転軸及び攪拌体に対する有機廃棄物Bの抵抗力が低減する。したがって、回転軸1の移動速度及び回転速度を高くすることができるので、有機廃棄物Bの攪拌効率を向上させることができる。
【0023】
以下、本実施例の振動体3の構成を説明する。本実施例の振動体3は、前記回転軸1の通路1Cの下端側に固定して内蔵されている構成を示している。振動体3を通路1Cの下端側に内蔵した理由としては、次のとおりである。堆積された有機廃棄物Bは、自身の重量による上方側からの圧力が作用するため、下方側に堆積する有機廃棄物Bが押し潰されることにより、該下方側の有機廃棄物Bの堆積密度が、上方側の有機廃棄物の堆積密度よりも高くなる。すなわち、堆積された有機廃棄物Bの全域の内、下方側が上方側に比べて密度が高く固い状態となるため、前記攪拌スクリュF1に対しては、下方側の有機廃棄物Bが最も大きい抵抗力を作用させることになる。したがって、振動体3を前記回転軸1の通路1Cの下端側に内蔵することにより、最も大きい抵抗力が作用する下方側の有機廃棄物Bを軟らかくするとともに、崩れやすくして、前記抵抗力を低減することができる。
【0024】
本実施例の振動体3は、たとえば、モータ及び振動子(図示せず)が内蔵され、200/240Hz程度の高周波コンクリートバイブレータに用いられるものが使用できる。ちなみに、本実施例の振動体3は、図4に示すように、前記回転軸1の上端と一体回転するように連結されたスリップリング30の回転体30Aから通路1Cに挿通されたケーブル31が配線されている。前記スリップリング30の固定体30Bには、インバータ(図示せず)からのケーブル(図示せず)が配線されている。すなわち、前記インバータからの電力がスリップリング30からケーブル31を経て振動体3に供給されるようにしているので、振動体3が回転軸1と一体回転しながら振動する。
【0025】
次に、本実施例の振動体3の前記通路1Cに対する内蔵構成を説明する。本実施例では、前記振動体3が前記通路1Cの下端から上方に挿し込まれて固着された保持部4に保持された構成にしている。前記保持部4は、図3,図5,図6に示すように、前記通路1Cの内径と同径とする外筒41と、該外筒41の内側で前記振動体3が嵌入保持される保持手段である保持筒42と、これら、外筒41と保持筒42とを上下2箇所で連結する連結板43,44とから構成されている。また、前記連結板43,44により、外筒41の内周と保持筒42の外周との間に空気が通る連通空間45が確保されている。前記外筒41と保持筒42は、同長のものであり上下端を同面としている。また、保持部4が挿し込まれた状態で、連通空間45の下端が回転軸1の下端と同面となっている。なお、本実施例では、前記連通空間45の下端を噴出口1Bとする。
【0026】
前記外筒41は、前記通路1Cに対して挿し込まれて溶接により固着されている。保持筒42は、前記外筒41と同軸上に位置し、外径を前記外筒41の半分程度の径とするとともに、内径を前記振動体3の外径と同径としたものであり、内側に前記振動体3が圧入保持される。前記連結板43,44は、夫々複数枚あって、前記外筒41の内周と前記保持筒42の外周とを連結して前記連通空間45を確保するように固着されている。また、連結板43,44は、前記連通空間45内で平面放射状を呈するように、周方向に沿って並べられている。また、連結板43,44は、径方向に沿う線に対して周方向に沿って傾斜するように設けられている。この連結板43,44の傾斜方向は、外筒41側の端部が保持筒42側の端部よりも、回転軸1の回転方向(図5及び図6の矢印方向)の後側に位置するように傾斜している。
【0027】
前記下側の連結板44の下端には、前記噴出口1Bから軸線方向に突出する空気案内板46が一体に設けられている。該空気案内板46は、連結板44と同様に径方向に沿う線に対して周方向に沿って、且つ同方向に傾斜するように設けられている。また、空気案内板46の径方向側の先端は、回転軸1の外周から径方向に突出している。この空気案内板46によれば、前記の方向に傾斜するとともに、軸線方向及び径方向に突出しているので、回転軸1の直下の有機廃棄物Bが、回転軸1の外側へ攪拌されながら移動して、回転軸1の直下に空気が入る空間が確保さる。したがって、有機廃棄物Bに対する空気の供給効率が向上するものと期待できる。また、空気案内板46の前記径方向側の先端の径方向への突出は、保持部4を挿し込む際の位置決めとなる。
【0028】
本実施例の堆肥化装置Aによれば、回転軸1の下端側に内蔵した振動体3が、回転軸1の下端側及び該部位の攪拌体2を振動させることにより、該回転軸1の下端側及び該部位の攪拌体2で攪拌される最も密度が高く固い有機廃棄物Bを振動させて柔らかくすることができる。また、回転軸1や攪拌体2に、固まった有機廃棄物を崩すための部品を取付けたり、加工をしたりすることなく、更には、回転軸1や攪拌体2の強度を上げたりすることもなく、固まった有機廃棄物Bを柔らかくすることができる。すなわち、回転軸1及び攪拌体2に対する有機廃棄物Bの抵抗力を低減でき、この抵抗力が低減することによって、回転軸1の移動速度及び回転速度が上がって、有機廃棄物Bの攪拌効率が向上する。そして、この攪拌効率の向上により、有機廃棄物Bの処理能力が向上する。
【0029】
なお、本発明では、本実施例で示した振動体3を前記回転軸1の通路1Cの下端側に内蔵した構成に限られず、前記振動体3を通路内の前記回転軸の全域や前記回転軸の下半部に対応する部位に内蔵した構成にしてもよい(図示せず)。また、本発明では、前記通路1Cを有していない回転軸に対して前記振動体3を内蔵した構成としてもよく、この場合、回転軸に前記振動体3を保持する保持空間及びケーブルを挿通する挿通空間を形成する(図示せず)。また、本発明では、本実施例で示した前記保持筒42とする保持手段に限られず、前記振動体3を保持できる構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる堆肥化装置の切欠正面図。
【図2】同、平面図。
【図3】図2の(3)-(3)線拡大断面図であり、攪拌装置の下半部を示す。
【図4】図2の(3)-(3)線拡大断面図であり、攪拌装置の上半部を示す。
【図5】図3の(5)-(5)線断面図。
【図6】図3の(6)-(6)線断面図。
【符号の説明】
【0031】
A:堆肥化装置
B:有機廃棄物
1:回転軸
2:攪拌体
3:振動体
4:保持部
42:保持筒(保持手段)
45:連通空間
30:スリップリング
31:ケーブル
1A:給気口
1B:噴出口
1C:通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積された有機廃棄物を攪拌する攪拌体を外周に備えた回転軸が、平面方向に移動可能に垂設された縦軸型の堆肥化装置において、
前記回転軸には、該回転軸及び前記攪拌体を振動させる振動体が内蔵されていることを特徴とする堆肥化装置。
【請求項2】
前記振動体は、前記回転軸の軸線方向の全域の内、前記有機廃棄物の密度が高い部位と対応する部位に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の堆肥化装置。
【請求項3】
前記振動体は、前記回転軸の軸線方向の全域の内、少なくとも下端を含む下部を振動させる部位に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の堆肥化装置。
【請求項4】
前記回転軸が、上端側を給気口とし、下端側を噴出口とする管構造のものであって、該回転軸の内側に前記振動体を保持する保持手段と、前記給気口と噴出口とを連通する連通空間と、を有した保持部が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の堆肥化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−37144(P2010−37144A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201873(P2008−201873)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(391014022)タナ鐵工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】