塞栓予防装置用の支柱組立体
【課題】塞栓予防装置のフィルタを支持する支柱組立体において、支柱組立体を展開及び折り畳む時における柔軟性を向上させつつフィルタエレメントの支持をより堅固なものとする。
【解決手段】支柱組立体を第1組の支柱と第2組の支柱から構成し、第1組および第2組の支柱の一端を、それぞれ展開部材に沿った異なる位置で展開部材に取り付ける。展開部材は正弦波のパターンで交互に現れる頂および谷のパターンを有しており、かつ第1組の支柱の一端がそれぞれ展開部材の谷に取り付けられるとともに第2組の支柱の一端がそれぞれ展開部材の頂に取り付けられる。
【解決手段】支柱組立体を第1組の支柱と第2組の支柱から構成し、第1組および第2組の支柱の一端を、それぞれ展開部材に沿った異なる位置で展開部材に取り付ける。展開部材は正弦波のパターンで交互に現れる頂および谷のパターンを有しており、かつ第1組の支柱の一端がそれぞれ展開部材の谷に取り付けられるとともに第2組の支柱の一端がそれぞれ展開部材の頂に取り付けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に、血管が狭窄し若しくは閉塞した領域において介入的な処置を行うときに用いることができる、処置の間に生成されて血流中に放出され得る塞栓材料を捉えるための濾過装置およびシステムに関する。本発明の塞栓濾過装置およびシステムは、非常に重要な血管、特に頸動脈のような血流中への塞栓細片の放出が脳またはその他の生命維持に必要な器官に対する酸素を含んだ血液の流れを閉塞して患者に甚大な被害をもたらすところにおいて、バルーン血管形成術、ステント留置術処置、レーザ血管形成術またはアテレクトミーを実施するときに特に有用である。本発明の塞栓予防装置およびシステムは特に頸動脈における処置に有用であるが、本発明は塞栓のリスクを伴うあらゆる血管における介入的な処置と共に用いることができる。
【発明の背景】
【0002】
血管壁上へのプラーク若しくはその他の物質の蓄積によって狭窄し若しくは閉塞した患者の血管を広げるための、様々な非外科手術的な介入性処置が長年にわたって開発されてきた。そのような処置は通常、動脈内腔への介入的な装置、通常はカテーテルの経皮的な導入を伴う。典型的な頸動脈のPTA処置においては、ガイドカテーテル若しくはシースが大腿動脈を通して患者の心臓血管系に経皮的に導入されるとともに、ガイドカテーテルの遠位端が総頸動脈に至るまで血管系を通して進められる。ガイドワイヤおよび遠位端上にバルーンを備えた膨張カテーテルは、ガイドワイヤが膨張カテーテルの内部をスライドしつつガイドカテーテルによって導入される。ガイドワイヤが最初にガイドカテーテルから患者の頸動脈血管系内に進出して動脈の病変を横切るように導かれる。その後、膨張カテーテルは、膨張バルーンが動脈の病変を横切るように適切に配置されるまで、予め前進していたガイドワイヤ上を前進する。病変を横切る位置に達すると、膨張バルーンは比較的高い圧力のX線不透過性の液体によって予め定められた寸法に膨らまされて病変部のアテローム動脈硬化症のプラークを動脈壁の内側に対して半径方向に圧縮し、それによって動脈の内腔を広げる。それから、膨張カテーテルを患者の血管系から回収し広げられた動脈を介した血流を取り戻すように、バルーンを小さな輪郭に収縮させる。当業者によって理解されるべきことは、上述した処置は典型的なものではあるが、血管形成術に用いる唯一の方法ではないということである。
【0003】
他の方法は、堆積したプラークをレーザを用いて過熱処理し蒸発させることにより狭窄を除去するレーザ血管形成術である。アテレクトミーは狭窄した血管を処理するためのさらに他の方法であるが、この方法においては堆積したプラークを動脈の壁から削るために切断カッタを回転させる。この方法を用いる間には、通常、削り取ったプラーク若しくは血栓を血流から捉えるために負圧カテーテルを用いる。
【0004】
上述した種類の方法においては、急激な再閉鎖が生じたり時間を経るにしたがって動脈の再狭窄が進行することがあるため、他の血管形成術、外科手術上のバイパス手術、またはその領域を修復し若しくは強化するためのいくつかのその他の方法を必要とする。急激な再閉鎖の発生の可能性を減少させるとともにその領域を強化するべく、医師は、血管の開通性を保つために一般的にステントとして知られている人工挿入物を動脈内部の病変を横切る部分の内部に挿入することができる。ステントは、カテーテルのバルーン部分の上にきつくかしめられるとともに、供給するときの直径において患者の血管系を通して搬送される。展開する部位において、ステントは、多くの場合にカテーテルのバルーン部分を膨らませることによって大きな直径に展開される。
【0005】
従来のステントは典型的に、2つの一般的な構造範囲に分類される。第1のタイプのステントは上述したように膨張カテーテルのバルーン部分の膨張によって制御された力が負荷されると膨張可能であり、かつ膨張カテーテルは、バルーン若しくはその他の拡大手段が膨張すると、目標部位の動脈内の所定位置にステントを留置するために圧縮されているステントをより大きな直径に展開させる。第2のタイプのステントは、例えば形状記憶金属若しくは超弾性ニッケルチタン(NiTi)合金から形成された自ら展開するステントであり、供給カテーテルの遠位端から身体管腔内に進出すると折り畳まれた状態から自動的に展開する。展開可能な熱感受性材料から製造されたそのようなステントは、材料に相変態が生じることを許容し、その結果としてステントの膨張および収縮が生じる。
【0006】
上述した非外科手術的な介入性の処置は、成功したときには大きな外科手術の必要性を回避できる。しかしながら、これらの非外科手術的な処置の全てに関連して発生し得る一つの共通の問題がある。すなわち、遠位側の血管系を閉塞するとともに患者に重大な健康問題を生じさせ得る血流内への塞栓細片の放出である。例えば、ステントが展開する間にステントの金属製の支柱が狭窄部分に切り込んでプラーク片を剪断し、それが塞栓細片となって下流側に移動し患者の脈管系内のどこかに引っかかることがあり得る。プラーク材料の断片は、バルーン血管形成術の間に時々狭窄部分から外れて血流中に放出される。さらに、レーザ血管形成術の間におけるプラークの完全な蒸発が意図するゴールではあるが、非常に多くの場合に小片が完全には蒸発せず、したがって血流中に入り込む。同様に、アテレクトミーの間に生成される塞栓の全てが負圧カテーテルに吸引される訳ではなく、その結果として同じように血流に入り込む。
【0007】
頸動脈若しくは動脈内において上述した処置のいずれを実行するときでも、循環器系への塞栓の放出は極めて危険であり、時には患者にとって致命的である。血流によって脳の遠位端の血管に運ばれた細片は大脳の血管の閉塞を生じさせ、脳卒中、若しくはいくらかのケースにおいては死亡に帰結する。したがって、大脳の経皮経管血管形成術が過去に実行されているものの、塞栓細片が血流中に入り込んで生命維持に必要な下流側の血液流路を遮断すると塞栓による脳卒中を生じさせるというもっともな心配により、実行された処置の数は限られている。
【0008】
上述した方法のいずれかを用いて血管を治療した後に細片若しくは断片が循環器系に入った時に生じる問題を処理するために、医療装置が開発されてきた。試みられてきた一つのアプローチは、患者の血管系の大きな血管において閉塞する可能性をほとんど起こさない微細な寸法にあらゆる細片を切断することである。しかしながら、形成される断片の寸法を制御することは多くの場合困難であり、血管が閉塞する潜在的なリスクが依然として現存し、頸動脈におけるそのような処置をハイリスクなものとしている。
【0009】
塞栓細片を取り除く問題に取り組むために開発されたその他の技術には、血流から塞栓細片を取り除くために一時的な吸引を提供する負圧源と共にカテーテルを使用することが含まれる。しかしながら、上述したように、吸引カテーテルが必ずしも血流中からすべての塞栓材料を取り除くことができるというわけではなく、かつ強力な吸引が患者の血管系に問題を生じさせ得るので、そのようなシステムには厄介な問題があった。限定されたいくつかの成功を収めたその他の技術には、下流側のより小さな血管に達する前に塞栓細片を捉えるためのフィルタ若しくはトラップを治療部位の下流に配置することが含まれる。しかしながら、特に身体血管内においてフィルタを展開しかつ折り畳む間における、フィルタシステムに関連した問題があった。そのフィルタ装置がフィルタを閉じたるための適切な機構を備えていないと、捉えた塞栓細片がフィルタの入口開口から逆流し、フィルタシステムが折り畳まれて患者から取り出されるときに血流中に入り込む可能性がある。そのような場合、フィルタ装置を折り畳む行為が実際的に、捉えた塞栓材料をフィルタの開口を介して血流中に絞り出すことなる。
【0010】
血管内で展開することができる従来のフィルタの多くは、ガイドワイヤが所定位置に操作されたときにフィルタ装置を患者の血管系内に配置できるようにするガイドワイヤ若しくはガイドワイヤに似た管材料の遠位端に取り付けられる。ガイドワイヤが血管系内の適切な位置に達すると、塞栓フィルタは塞栓細片を捉えるために血管内で展開される。次いで、バルーン血管形成術膨張カテーテル若しくはステントのような介入的な装置を治療領域に供給するためにガイドワイヤが医師によって用いられる。塞栓フィルタとガイドワイヤとの組み合わせを用いるときには、介入的な装置をオーバーザワイヤ法によりガイドワイヤ上で供給するときに、ガイドワイヤの近位端は通常は意図することなく医師によって回転させられる。 塞栓フィルタがガイドワイヤの遠位端に堅固に取り付けられていると、ガイドワイヤの近位端をねじり若しくは回転させたときに、その回転がガイドワイヤに沿って塞栓フィルタに中継され、フィルタを回転させ若しくは血管内で動かして血管壁に外傷を生じさせ得る。さらに、介入的な装置をガイドワイヤ上で供給するときにガイドワイヤがねじれると、展開されたフィルタを医師が偶然に折り畳み若しくは変位させることがあり得る。さらに、供給カテーテル若しくは介入的な装置のガイドワイヤに沿った交換により生じる衝撃波(振動運動)が、展開されたフィルタ装置を半開きにするとともに血管に外傷を生じさせることがあり得る。介入的な処置の間におけるこの種の発生は望ましくない。それらが患者の健康に有害な外傷を血管に生じさせ、および/または展開されたフィルタを血管内で変位させていくらかの塞栓細片がフィルタを流れ過ぎて下流側に至らせるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
必要とされてきたものは、下流側の位置における血管の封鎖を生じさせ得る塞栓細片が血流中に放出されたときに関連するリスクを防止するための、血管内の狭窄を治療するときに用いる信頼できるフィルタ装置およびシステムである。その装置は、治療の間に血流中に放出され得るあらゆる塞栓細片をろ過するとともに、フィルタ装置が折り畳まれて患者の血管系から取り除かれるまで細片を安全に収納する能力を持つべきである。その装置は、医師にとってその使用が比較的容易であるとともに、あらゆる塞栓細片を捉えて血流中から取り除くフェイルセーフなフィルタ装置を提供するべきである。さらに、そのような装置は、展開および患者の血管系からの取り除きが比較的容易であるべきである。本明細書に開示される発明は、これらのおよびその他の必要性を満たす。
【0012】
本発明は、バルーン血管形成術若しくはステント留置術のような治療的な介入性処置を実行する間に生成された血管内の塞栓細片を捉えて、処置を施した部位より下流の血管を塞栓細片が遮断することを防止するための多数のフィルタ装置およびシステムを提供する。本発明の装置およびシステムは頸動脈のような危険な動脈に介入的な処置を実行する間に特に有用であるが、そこにおいては脳に至る主要な血管を含む生命維持に必要な下流側の血管が塞栓細片によって容易に遮断され得る。頸動脈の処置内に用いられるときに、本発明は処置の間に脳卒中が発生する可能性を最小にする。その結果、本発明は、介入的な処置の間に塞栓細片を適切に集めて患者の血管系から取り除くことができるという高度な確信を医師に与える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に基づいて作られる塞栓予防装置およびシステムは、ガイドワイヤのような管状軸部材の遠位端に取り付けられる展開可能なフィルタ組立体を備える。このフィルタ組立体は、ニッケルチタン(NiTi)合金若しくはばね鋼のような自己展開材料から作られる展開可能な支柱組立体と、収縮し若しくは折り畳まれた状態から展開し若しくは広げられた状態へと患者の血管系内において自ら展開する能力を有した多数の外側に広がる支柱とを含んでいる。塞栓捕捉媒体から作られたフィルタエレメントは、展開可能な支柱組立体に取り付けられるとともに、この展開可能な支柱の動きによって折り畳まれた状態から展開された状態へと動く。この展開可能な支柱組立体は、フィルタ組立体の全体が自由に回転し若しくは「旋回」して患者の血管系内で展開された後にフィルタ組立体が回転させられることを防止するように、ガイドワイヤに取り付けられる。このように、ガイドワイヤの近位端の偶発的若しくは意図的なあらゆる回転が展開されたフィルタ組立体に伝達されないので、フィルタ組立体は患者の血管系内で静止したままとなり、ガイドワイヤの回転および/または操作によって生じる血管壁に外傷を与える恐れおよびフィルタの変位を実質的に排除することができる。
【0014】
支柱組立体の展開可能な支柱は、支柱を折り畳むとともに収縮し若しくは折り畳まれた状態に保つために支柱上に負荷されている外力が取り除かれるまで、展開した状態のままでいるように付勢することができる。このことは、支柱組立体を折り畳んだ状態に保つためにフィルタ組立体上に同軸に配置された拘束シースを用いることにより行われる。ガイドワイヤとフィルタ組立体、およびフィルタ組立体上に配置された拘束シースの複合体は、患者の血管系内に配置することができる。医師が目標領域内に適切にガイドワイヤを押し入れると、その展開状態に支柱を展開するために、展開可能な支柱組立体から離れるように拘束シースを引込めることができる。このことは、(患者の体外に配置されている)拘束シースの近位端をガイドワイヤに沿って単純に引込むことにより、医師によって容易に実行することができる。拘束シースが引き込まれると、支柱組立体の自己展開特性がガイドワイヤから離れる半径方向外側に支柱を動かして血管壁に接触させる。また、支柱が半径方向に展開するとフィルタエレメントも同様に展開し、医師が介入的な処置を実行するときに血流中に放出され得る塞栓細片を集めるための所定状態となる。フィルタサブ組立体は、塞栓予防装置の遠位端および近位端において心線に接合することができる。この心線は、ステンレス鋼や生体適合性の形状記憶材料から作ることができる。塞栓予防装置を有したガイドワイヤは、供給シースに装填することができる。供給シースは、意図する血管部位に向けて装置を進めるためにトルクを与えることができる。
【0015】
フィルタ組立体は、その近位端をガイドワイヤに回転可能に取り付けることにより、ガイドワイヤに回転可能に取り付けることができる。支柱組立体の遠位端は、ガイドワイヤに沿って長手方向に動くことができるとともにガイドワイヤ上で回転することもできる。このことは、支柱組立体が折り畳まれた状態と展開した状態との間で動くことを許容するとともに、フィルタ組立体の全体がガイドワイヤの周りに自由に回転し若しくは「旋回する」ことを許容する。ガイドワイヤに対する支柱組立体の近位端のこの取付けは、拘束シースをフィルタ組立体から引込めることを許容するとともに、塞栓予防装置を患者の血管系から取り除くときに支柱組立体を折り畳まれた状態に動かすために、復元シースを展開された支柱組立体上に配置することを許容する。
【0016】
フィルタ組立体はまた、医師によるガイドワイヤの取り扱いの間にガイドワイヤに沿って伝達され得る衝撃波(振動運動)のいくらかを吸収するために用いる、減衰要素若しくは減衰部材を有することができる。フィルタ組立体への突然の衝撃はフィルタに血管の壁をこすったり血管内で変位させたりするので、減衰部材は「ショックアブソーバ」に非常に良く似た作用をして衝撃のいくらかを吸収するとともにフィルタ組立体に対する衝撃の伝達を防止する。この衝撃は、様々な理由によって、例えば介入的な装置のガイドワイヤに沿った交換によって生じ得る。また、拘束シースをフィルタ組立体から取り除くときに、自己展開する支柱があまりに素早く拡がると衝撃波が生じ得る。減衰部材を利用する結果、患者の血管系に対する衝撃および外傷が最小になるとともにフィルタが変位する可能性が実質的に排除される。減衰部材の一つの特定の実施例においては、組立体に減衰力を与えるために展開可能な支柱組立体の近位端上に螺旋形ばねが形成される。支柱組立体へのばね若しくはエラストマ部材の取り付けのような、減衰力を得るその他の方法もまた用いることができる。
【0017】
本発明に基づいて作られる展開可能な支柱組立体は、形状記憶合金若しくは他の自己展開材料から作られた(「ハイポチューブ」として知られている)管材料から製造することができる。ステンレス鋼若しくはその他の生体適合性の金属またはポリマも、支柱組立体を製造するために用いることができる。一つの好ましい材料は、ニッケルチタン(NiTi)のような形状記憶合金である。展開可能な支柱組立体の各支柱は、支柱の特定寸法および形状を形成するために管材料から選択的に材料を取り除くことにより、ハイポチューブ上に形成される。例えば、ハイポチューブの壁には各支柱を形成するためのみぞ穴をレーザカットすることができる。フィルタ部材を所定位置に保持するために用いる小さなタブもまた、支柱に沿わせて管材料にレーザカットすることができる。高精度のレーザによってハイポチューブの部分を選択的に取り除くことにより、ステントの製造に用いるレーザと同様に、非常に正確で輪郭が明確な支柱の形状および長さを達成することができる。本発明の一つの特定の実施例において、ハイポチューブから取り除かれる材料のパターンは、2つの逆三角が一体に噛み合った形の支柱パターンを生成するために反復する菱形とすることができる。この特定の支柱パターンは、支柱に沿った破損し若しくは弱くなる傾向を有する箇所により大きな強度を与える。そのような支柱パターンは各支柱に対してより自然な曲げ位置を与えて、展開可能な支柱組立体がより均一に開閉できるようにする。一つの特定のパターンにおいては、支柱パターンが、その支柱の形状を生成するためにレーザ若しくはその他の手段によって先端を切り取った菱形パターンが反復するような除去を要求する。この特定のパターンにおいて、各支柱は、上述した支柱パターンにいくらか似ている、2つの逆三角形の間に形成された比較的まっすぐな中央部分を有する。この特定の支柱パターンは、より大きな容積に支柱が展開することを許容する広げられた中央部分をもたらし、支柱組立体上により大きなフィルタが配置できるようにして塞栓の捕捉を助ける。2つの逆三角形間に配置された中央部分はまた、支柱組立体上にフィルタエレメントを取り付けるための充分な作業域を提供する。これらと同じ特徴は、中央部分が減少した幅を有する湾曲部分によっても達成することができる。
【0018】
塞栓予防装置はまた、自己展開せずに、展開および折り畳みのためにその近位端および遠位端上に負荷される力を用いる支柱組立体を有したフィルタ組立体を備えることができる。発明のこの特定の形態においては、塞栓予防装置が内側軸部材とこの内側軸部材上に同軸に配設された外側管状部材とを備える。この展開可能な支柱組立体は、その遠位端を内側軸部材に取り付けられることができるとともに、その近位端は外側管状部材の遠位端に取り付けることができる。内側軸部材と外側管状部材との間に相対的な動きは、支柱を収縮させ若しくは展開させるために展開可能な支柱組立体に負荷される力を生成する。例えば、上述した実施例においては、支柱組立体の近位端および遠位端に作用する内向きの力が生じるように外側管状部材と内側軸部材とを相対的に動かすと、その力は展開可能な支柱を折り畳まれた状態から展開された状態へと動かす。その後、支柱組立体を折り畳むときには、展開した支柱を折り畳まれた状態に動かすために、支柱組立体の近位端および遠位端に作用する外側の力を生成するように外側管状部材および内側軸部材を相対的に動かすことができる。医師は、必要に応じてフィルタ組立体を展開しかつ折り畳むために、内側軸部材および外側管状部材の近位端を容易に操作することができる。フィルタ組立体は、外側のシースを必要とせずに組立体を展開しかつ折り畳むための手段を提供する内側および外側の部材の動きによって自己展開することができる。
【0019】
内側軸部材は、血流中に放出され得るあらゆる塞栓細片を捉えるべくフィルタ組立体を病変部分より下流に直接動かすために用いるガイドワイヤとすることができる。内側軸部材はまた、ガイドワイヤが患者の血管系内の位置に押し入れられた後にガイドワイヤに沿って追従可能な、内側内腔を有した細長い管状部材とすることができる。塞栓予防装置の全体は、オーバーザワイヤ法を用いることによりガイドワイヤ上で所望の位置に供給することができる。
【0020】
塞栓予防装置と共に用いるフィルタエレメントは、本明細書に開示されるように多くの様々に異なる好ましい形態を取ることができる。一つの特定の実施例においては、その内部に塞栓予防装置が展開される動脈の直径に展開する近位コーン部分をフィルタが有する。この近位コーン部分は、その遠位端に配設された主要な若しくは中央のフィルタ内へと血流および塞栓細片を一ヵ所に集める。この近位コーンそれ自身は、ろ過を提供し若しくは提供しないことができる。その主要な機能は流れを導くことであり、かつ支柱組立体の展開可能な支柱を折り畳みかつ展開する能力である。主要な若しくは中央のフィルタは、近位コーン部分の遠位端に配設される細長い管状に形成された部材を有することができる。それは近位コーン部分の遠位端と一体であり、かつ塞栓材料を保持するための貯蔵部として作用する大きな濾過領域を提供する。理想的には、それは、塞栓予防装置によってろ過されるべきあらゆるかつすべての塞栓材料を受け入れるように寸法決めされる。それは、血液が通過することは許容するが塞栓材料は保持する、多数の血流開口を有する。中央フィルタは、折り畳み可能若しくは展開可能ではなく、むしろ幾分か堅固に作ることができるとともに、塞栓材料を保持するための貯蔵部を提供するために十分に大きい外径を有するが、それでも患者の血管系内に塞栓予防装置を展開するために用いる特定のガイドカテーテルを通して供給することができる。中央フィルタはまた、折り畳み可能な材料から作ることができるとともに、適切な貯蔵部を提供するために十分に大きい外径を有するが、それでもガイドカテーテルも通して回収することができる。この中央フィルタは、実質的に固定された直径を有することができるが、テーパ状とすることもできるし、かつ装置を展開するために用いる特定のガイドカテーテルの内径に嵌合するのに十分小さな外径を有するべきである。
【0021】
本発明に基づいて作られるフィルタエレメントの全てについて用いることができる材料には、折り畳み可能でありかつフィルタ内に塞栓を捉えることを助けるべく弾性を回復するポリマ材料のような様々な材料が含まれる。他の適切な材料には、フィルタによって捉えるべき所望の寸法の塞栓細片をろ過することができる、撚り合わされた若しくは編まれた生体適合材料が含まれる。フィルタは、適切な材料を計画された形状にブロー成形するとともに不必要な部分を切り離すことによって形成することができる。血流開口は、エキシマレーザのようなレーザを用いて材料に穿設することができるし、若しくは所望の寸法および形状の開口を機械的に穿設し若しくは孔明けすることもできる。レーザによる孔明けは、精度、速さおよび複雑な孔形状、円、楕円およびみぞ穴を穿設する能力を提供する。これに代えて、中央フィルタは、近位コーン部分と同一若しくは異なる材料から作るとともに、一体ユニットを生成するために融合し若しくは接合することができる。
【0022】
本発明に基づいて作られる一つの特定のフィルタにおいては、近位コーンは、展開可能な支柱組立体からの脱落防止を助ける有利な特徴を有する。これらの特徴はまた、患者の血管系から除去するためにフィルタを折り畳んだときに、捉えた塞栓細片がフィルタから絞り出されることを防止する。フィルタは、例えば、支柱組立体上へのフィルタの固定を助けるために支柱の各近位端に取り付けられるように設計された一組の拘束ストラップを有することができる。これらのストラップは、各支柱に巻きつけるとともに適切な接着剤を用いてそこに永久的に取り付けることができるタブを有することができる。フィルタの近位コーン部分はまた、中央フィルタの入口開口を閉鎖するために協動する、多数のくぼみフラップを有することができる。これらのくぼみフラップは、近位コーン上に形成されるとともに、近位コーン部分が支柱組立体によって折り畳まれたときに中央フィルタの開口部を覆うための位置に動く。したがって、開口がこれらのくぼみフラップによって閉鎖されるので、中央フィルタの深い貯蔵部内に捉えられたいずれかの塞栓細片が入口開口を通って吐出されるという可能性が大幅に減少する。同様に、フィルタの近位コーン部分はまた、支柱組立体が折り畳まれたときはいつでも近位コーン部分の大きな入口開口を閉鎖するべく協動する、近位コーン部分の入口開口の近傍に配設された内側に逆さまのフラップを有することができる。これらの要素は、患者から除去するためにフィルタ組立体が折り畳まれるときはいつでも、捉えた塞栓細片の偶発的な漏れを防止する。
【0023】
本発明のこれらのおよびその他の利点は、添付の例示的な図面を参照しつつなされる以下の発明の詳細な説明から、より明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ここで図面を参照すると、図1および図2は本発明の特長を含む塞栓予防装置10を図示しているが、類似の参照符号は図面内の類似の若しくはそれに相当する要素を表している。図1および図2に示されている特定の実施例において、塞栓予防装置10は、展開可能な支柱組立体14およびフィルタ要素16を有したフィルタ組立体12を備えている。フィルタ組立体12は、ガイドワイヤ18のような細長い管状の軸の遠位端上に回転可能に取り付けられている。フィルタ組立体12を作り上げている様々な要素の特定の構造および形状に関する追加の詳細は以下に与えられる。
【0025】
塞栓予防装置10は、患者の動脈20若しくは他の血管内に配置された状態で示されている。動脈20のこの部分は、アテローム性動脈硬化症のプラーク24が動脈20の内壁26に堆積した処置領域22を有している。フィルタ組立体12は、図1および図2に示された処置領域22の遠位側であってかつ下流側に配置されている。図示されてはいないが、バルーン血管形成術カテーテルを通常のセルジンガー法により、ガイドカテーテル(図示せず)を介して患者の脈管構造内に導入することができる。ガイドワイヤ18は処置領域を通して配設されるとともに、バルーン部分が直接処置領域に来るまで動脈20内において膨張カテーテルをガイドワイヤ18上を前進させることができる。膨張カテーテルのバルーンが膨張すると、プラーク24を動脈20の内壁26に対して押し広げて動脈を拡げ、プラーク24の状態における血管の詰まりを減少させる。膨張カテーテルを患者の脈管構造内から取り除いた後、(図2に示されている)ステント25がオーバーザワイヤ法を用いて処置領域22に供給され、動脈20のこの部分を保持して維持するとともに処置領域に生じる再狭窄の防止を助ける。介入的な処置の間に生成されたあらゆる塞栓細片27は、血流中に放出されると処置領域2の下流に配置されているフィルタ組立体12に入る。処置が完了すると、フィルタ組立体12は折り畳まれ、フィルタエレメント16内に捉えた全ての塞栓細片をその内部に取り込んだまま患者の脈管構造から取り出される。
【0026】
展開可能な支柱組立体14の1つの特定な形態が図14に示されている。これらの図から分かるように、展開可能な支柱組立体14は半径方向に展開可能な複数の支柱28を有しているが、これらは図1に示されている圧縮され若しくは折り畳まれた状態から図2に示されている膨張し若しくは展開した状態へと動くことができる。図3は、展開可能な支柱組立体14を形成するために利用可能な一本の管材料30を示している。
【0027】
展開可能な支柱組立体14は、ガイドワイヤ18に回転可能に取り付けられる近位端32と、ガイドワイヤ18に沿って長手方向にスライド自在でその周りに回転可能な遠位端34とを有している。支柱が展開した状態と収縮した状態との間で動くときはいつでも、遠位端34はガイドワイヤに沿って長手方向に動く。近位端32は、減衰部材または減衰要素38として作用するコイルスプリングを有した、短い管状部分若しくはスリーブ36を含んでいる。この減衰要素38の機能は以下に説明されている。管材料30の遠位端34もまた、ガイドワイヤ18上にスライド自在にかつ回転可能に配設された短い部分若しくはスリーブ40を有している。
【0028】
図1、図2および図7を参照すると、展開可能な支柱組立体14の近位端32は、減衰要素38の近位側に配置されたテーパ状取付部品42と近位端32の遠位側に配置されたX線不透過性のマーカーバンド44との間に取り付けられている。テーパ状端取付部品42およびマーカーバンド44は、近位端32をガイドワイヤ18上へ固定してこの近位端のガイドワイヤに沿った長手方向の動きを妨げるが、近位端32およびフィルタ組立体12の回転を許容する。この特殊な構造は、展開可能な支柱組立体がガイドワイヤの周りに自由に回転し若しくは「旋回する」ことを許容する。このようにして、フィルタ組立体12は、塞栓予防装置10が患者の脈管構造内で展開された後にガイドワイヤ18がその近位端において回転させられない限り静止したままとなる。これは、展開可能な支柱組立体14がガイドワイヤ18上で回転し若しくは旋回できるようにガイドワイヤ18上に取り付けるまさしく1つの方法である。これと同じ機能を実行するその他の方法もまた、本発明に使用することができる。
【0029】
展開可能な支柱組立体14の近位端32をガイドワイヤ18に取り付けることの利点は、ガイドワイヤ18が一旦患者の脈管構造内に配置されるとフィルタ組立体12を動脈内で正確に展開する能力を有することにある。近位端32がガイドワイヤに沿って長手方向に動くことができないので、展開可能な支柱がその展開状態に動くことができるように拘束シース46が引き抜かれると、医師はそれを配置したところにフィルタ要素12が正確に配置されることを確実なものとすることができる。さらに、近位端32がガイドワイヤに取り付けられているので、拘束シース46が引き抜かれるときにフィルタ要素にはいかなる動きも生じない。展開可能な支柱28が自己展開材料から作ることができるので、拘束シース46によってその折り畳まれた状態に保持されると、フィルタ組立体12内にはいくらかの蓄積エネルギーが存在し得る。拘束シース46が引き抜かれると、近位端32がガイドワイヤ18に取り付けられていないとすると支柱組立体14の外側への動きを生じさせる摩擦の蓄積があり得る。その結果、支柱組立体14の両端部がガイドワイヤ上に固定されていないとすると、拘束シースが引き抜かれるにつれてフィルタ要素12がそこから弾け出そうとする傾向が生じ得る。その結果、拘束シース46が引き抜かれるとフィルタ組立体12がどれだけ動くかを医師が予め決定することができなくなるので、フィルタ要素12の配置は正確ではなくなる。
【0030】
減衰要素38は、本発明のこの特定の実施例においては支柱組立体14の近位端32に形成されたヘリカルコイルとして示されているが、例えば、介入的な装置がワイヤ上をオーバーザワイヤ法で供給され若しくは交換されるときにガイドワイヤ18に沿って伝達され得るあらゆる衝撃波(振動的な動き)も減衰する。同様に、この減衰要素38は、図2で示すように半径方向に展開可能な支柱がその展開状態に動くことを許容するために拘束シース46が引き抜かれることによって生じるあらゆる衝撃力も減衰する。ヘリカルコイルはまた、ガイドワイヤの柔軟性の保持を助ける取付け方法として作用することができる。減衰要素38はまた、塞栓予防装置を患者の脈管構造から取り除く際に、フィルタ組立体12を折り畳むための復元シース48(図2)が支柱と接触して生成される衝撃を減衰するべきである。その結果、この減衰要素38は、さもなければ展開されたフィルタ組立体12上に作用して組立体12が動脈20の内壁26を擦るようにし若しくは血管に外傷を生じさせる力を吸収して放散させる。この減衰要素38はまた、ガイドワイヤ18に沿って伝達された突然の衝撃の結果として生じる動脈内におけるフィルタエレメントの変位若しくは誤整列を防止する。
【0031】
本発明の好適な実施例に関連して用いられるフィルタエレメント16は、血液がフィルタ16を通って流れることは許容するが塞栓をコーン形状の内側に捉える複数の開口52を有した、テーパ状若しくはコーン形の部分50を有している。フィルタエレメント16は、コーン形状部分50と一体であるとともに支柱組立体14の支柱28が展開されたときに実質的に円筒形状に展開する、短い近位部分52を有している。入口開口51は、あらゆる塞栓細片27がフィルタエレメント16に入って捕捉されるようにする。この短い円筒状部分52はまた、フィルタエレメント16を支柱組立体14の各支柱28に対して接着によって若しくは他の方法によって取り付けるために適切な場所として役に立つ。フィルタエレメント18は、このフィルタの残りの部分と一体であるとともに展開可能な支柱組立体14の遠位端34を形成するスリーブ部分40に取り付けられる、短い遠位円筒状部分54を有している。この遠位円筒状部分54は、接着剤若しくは他の結合技術を用いてスリーブ40に取り付けることができる。
【0032】
再び図1を参照すると、フィルタ組立体12は、支柱28およびフィルタエレメント16に接触してフィルタ組立体12を折り畳まれた状態に維持する拘束シース46の使用によって、その折り畳まれた若しくは圧縮された状態に維持される。図示されてはいないが、ガイドワイヤおよび拘束シース46は患者の体外に延びる近位端を有している。支柱28は、拘束シース46を(その近位端を介して)引っ込めて支柱28を露出させることにより、展開された状態に操作することができる。支柱28は自己展開するので、拘束シース46の取り外しは、支柱28およびフィルタエレメント16が動脈20内で展開状態に動くことを許容する。
【0033】
ガイドワイヤ18は、患者の脈管構造内に塞栓予防装置10を供給する間に有益な、そこに取り付けられた小さな球体56を有している。この球体56は、拘束シース46の内径とほぼ同じ大きさでありかつ「ノーズコーン」として用いられ、患者の動脈を通って供給されるときの塞栓予防装置の「雪かき」を防止する。球体56は、非外傷性であるとともに滑らかな表面を有しており、拘束シース46の遠位端が動脈の壁を「掘る」若しくは「雪かき」させることなしに、塞栓予防装置が患者の脈管構造を通って移動して病変を通過することを助ける。塞栓予防装置10が患者の脈管構造から取り除かれるときには、フィルタ組立体12を折り畳んで復元させるために復元シース48が用いられる。(図2)一般的に、復元シース48は、支柱28が今や展開されているので拘束シース46よりもいくらか大きい内径を有するとともに、支柱組立体14を適切に動かして折りたたまれた状態に戻すためにその遠位端47においていくらか増加された輪強度を必要とする。展開可能な支柱組立体14の折り畳みは、ガイドワイヤ18を保持しつつ、復元シース48の近位端(図示せず)を前方に動かしてシース48の遠位端47を支柱28上に動かすことによって達成することができる。これに代えて、フィルタ組立体12の全体をシース48内に引き込むためにガイドワイヤの近位端を後方に引っ張る間、復元シース48は静止した状態に保持することができる。フィルタ組立体12が折り畳まれると、介入的な処置の間に生じて血流中に入ったあらゆる塞栓細片がフィルタエレメント16の内部で捉えられたままであり、かつ塞栓予防装置10が患者の脈管構造から取り出されるときに血流から引き上げられる。
【0034】
展開可能な支柱組立体14のほぼ長手方向中央に配置されるX線不透過性マーカー58がガイドワイヤ18に取り付けられて、この装置を患者の動脈20内に配置するときの基準マーカーを医師に提供する。
【0035】
展開可能な支柱組立体14上に形成される支柱28の数は、フィルタエレメント16を適切に展開して所定位置に維持するために動脈内において充分な展開性を与える任意の数とすることができる。図1および図2に示した実施例においては、展開可能な支柱組立体は自ら展開する4つの支柱28を有している。同様に、各支柱28の特定の寸法および形状は、本発明の範囲から逸脱することなく変更することができる。この好ましい実施例において、支柱パターンは、逆三角形状の第1部分60、実質的にまっすぐな中央部分62、および支柱を完成させる第2の逆三角形状部分64を有している。この特別な支柱パターンは、支柱が破損し若しくは弱くなる傾向にある領域にこの設計がより大きな強度を与えるので好ましい。これらの領域は、より広い基部を有するように設計された各支柱の近端および遠位端を有している。この特別な設計はまた複合的な支柱組立体がより均一に開きかつ閉じるようにするが、これは患者から取り外すために支柱を折り畳むときに特に有益である。さらに、中央部分62は支柱28がより大きな容積に展開できるようにするが、このことは必要な場合により大きなフィルタエレメントを支柱組立体14上に配置することを可能とする。
【0036】
ここで図4を参照すると、支柱28を形成するために用いられる管材料30の平らにしたシートの平面図が示されている。図5から理解できるように、特別な設計パターンが各支柱28を形成するために管材料30の壁にカットされる。図3に示した実施例においては、そのパターンは、第1の部分60の形成を助ける先端を切り取った菱形形状65と、中央部分62および第2の部分64とを有している。レーザ切断若しくはその他の適切な手段によって管材料30の一部を選択的に取り除くことにより、特定の支柱28をそれぞれ正確な形状、幅および長さに作ることができる。先端を切り取った菱形パターン68は、図4から分かるように反復してその内側に形成される各支柱28に均一な寸法を与える。
【0037】
展開可能な支柱組立体14の他の好適な実施例は、図5および図6に示されている。中央部分がないことを除いて、この特別な支柱組立体14は図3および図4に示したものと同様である。図5および図6に示した支柱68は、第1の部分70および第2の部分72を形成する一対の逆三角形を有している。支柱組立体14を形成するために用いられる管材料30の平らなシートの平面図は、図6に示すように、各支柱28を生成するために管材料に切り込まれる反復した菱形パターン74を示している。同様に、破損若しくは脆弱な傾向となりがちな各支柱の近位端および遠位端の近傍により大きな強度が与えられるので、この特別なパターンは好ましい。この特別なパターンを管材料にカットするときには、図3乃至図4若しくは図5乃至図6に示されたパターンであるにせよまたはいくつかの他のパターンであるにせよ、支柱組立体14の近位端32を形成するスリーブ36を、支柱組立体14上に減衰要素38を形成するヘリカルコイルを作成するためにその後で同様にカットすることができる。
【0038】
本発明の他の実施例が、図9乃至図11に示されている。図9から分かるように、塞栓予防装置100は、展開可能な支柱組立体104および独特なフィルタ要素106を有したフィルタ組立体102を有している。この塞栓予防装置100に用いられる特有な支柱組立体104は、前述した実施例に示される展開可能な支柱組立体14の構造と同様である。フィルタ要素106は、以下により詳細に記載するが、あらゆる塞栓細片を集めて患者の血流から取り除くために展開された状態で用いられる。
【0039】
この塞栓予防装置100の特有な実施例を作り上げている様々な要素は、図10に示されている。この独特な実施例においては、前述した実施例で開示された支柱組立体14のように、支柱組立体104は必ずしも自己展開材料から作る必要はない。むしろ、収縮した状態と展開された状態との間で支柱108を動かすために支柱組立体104の近位端110および遠位端112上に外部からの軸線方向力の負荷を必要とする、ステンレス鋼若しくはその他の材料から作ることができる。図10および図11に示すように、組立体104の近位端110は、短い管状若しくはスリーブ状の部分114および同様の遠位セグメント116を有している。支柱108は、支柱組立体104の近位端110および遠位端112に内向きの力を負荷することにより、収縮した状態から展開された状態に動く。このことは、まず最初に、組立体104の遠位端112をガイドワイヤ118に直接取り付けることによって達成することができる。支柱組立体104の近位端110は、その後、ガイドワイヤ118とともに患者の体外に延びる近位端を有した外側管状部材120に取り付けられる。外側管状部材120およびガイドワイヤ118の両方の近位端(図示せず)は医師が操作することにより、支柱組立体104の2つの端110および112上に内向きの軸線方向力を与えて支柱108を展開状態に動かし、若しくは両端110および112上に外向きの軸線方向力を与えてその折り畳み状態に支柱108を折り畳むことができる。
【0040】
支柱組立体104の支柱108は管材料(ハイポチューブ)から作ることができるが、管材料の選択された部分が取り除かれて各支柱を特有な寸法および形状に形成する。支柱組立体104はまた、必要に応じてニッケルチタン(NiTi)のような自己展開材料から作ることができる。次いで支柱108は、支柱組立体104を展開し若しくは収縮させるべく近位端110を動かすために用いる外側管状部材120によって、展開可能な支柱108を付勢する方法に応じて折り畳まれた状態若しくは展開された状態に付勢される。また、図10に示した実施例においては、支柱108は図14の実施例に示される支柱28と同様の形状を有している。塞栓予防装置のこの特別な実施例は、したがって、塞栓予防装置を展開しかつ収縮させるために必要な拘束シースおよび復元シースを利用する必要性を排除する。しかしながら、この特別な設計は、いくらか回転することができるが、前述した実施例のようにフィルタ組立体102がガイドワイヤ118に沿って自由に回転することは許容しない。しかしながら、塞栓予防装置110が患者の脈管構造内の所定位置に置かれた後に介入的装置が外側管状部材上をオーバーザワイヤ法で供給することにより、これらの外側管状部材120およびガイドワイヤ118は同様に用いられる。
【0041】
留意されるべきことには、支柱組立体104はまた、支柱108を展開状態に付勢した状態に維持する自己展開材料から作ることができる。外側管状部材120は、展開された支柱108を折り畳まれた状態に戻すべく動かすために依然として利用される。外側管状部材120およびガイドワイヤ118の近位端は、患者の脈管構造内で展開される準備ができるまで支柱組立体104をその折り畳まれた状態に維持するために、外側管状部材をガイドワイヤに対して動かすために利用可能な(図39および図40に示されている)単純な係止機構600に取り付けることができる。さらに理解されるべきことには、この特別な塞栓予防装置100はまた、外側管状部材120を排除するとともに図12に示した実施例と同様に自己展開型の組立体とするために変更することができる。そのような場合、支柱組立体104の近位端110をガイドワイヤ118に回転自在に取り付けるとともに遠位端112をガイドワイヤ上にスライド自在に取り付けて、ガイドワイヤ118に対して長手方向の動きおよび回転方向の動きを許容する。
【0042】
この特別な実施例に関連して用いられる、若しくは本願明細書に開示される他の任意の実施例と共に用いることができるフィルタエレメント106は、フィルタ106に捉えることができるあらゆる塞栓細片を集めて保持するための大きな貯蔵部を提供するために、ユニークな形状を有している。ここで図9乃至図12を参照し、フィルタエレメント106の様々な部分をより詳細に記載する。留意されるべきことには、図22のフィルタエレメント122は、図10乃至図12に示されるフィルタエレメント106と同じフィルタ部分の多くを有している。したがって、これらのユニークなフィルタエレメントの基礎をなしている原理をより良く理解するために、これらのフィルタの相当する部分が同時に記載される。両フィルタエレメントは、動脈の直径内に嵌合するように展開する近位コーン部分124を有している。この独特の近位コーン部分124は、血流および塞栓細片を遮断して主要な若しくは中央のフィルタ126に集める。図9および図22に示されるフィルタエレメントの両方において、近位コーン部分124は塞栓細片の濾過に用いる複数の開口128を有している。しかしながら、血流および塞栓細片を直接中央フィルタ126に導くようにするために、近位コーン部分124上の開口128を取り除くことは可能である。この中央フィルタ126は近位コーン形状部分124と一体であり、かつ血流がフィルタのこの部分を通ることは許容するが開口128の寸法より大きいいかなる塞栓細片をも保持するために用いられる多数の開口128を有している。開口128は、中央フィルタ126をレーザでカットすることにより若しくは他の方法で貫設することができる。この中央フィルタ126は、実質的に円筒状の形状を有すると共に塞栓細片を保持するための大きな貯蔵部として作用する。理想的には、塞栓物質で完全に一杯になるとより小さな輪郭に折り畳めないように寸法取りされる。しかしながら、その内部に捉えた塞栓細片によって一杯に展開された状態のときに、(図示されない)ガイドカテーテル内に回収することもできる。したがって、この中央フィルタ126を最大に展開したときの外径は、患者の脈管構造内において塞栓予防装置100を展開するために用いる案内シースの内径よりも小さくなければならない。中央フィルタは、その形状および外径を維持して使用の後にこのフィルタが折り畳まれることを防止する、より固いポリマ材料から作ることができる。その結果としてのより固い中央フィルタは、捉えた塞栓細片が中央フィルタの貯蔵部部分から絞り出されることを防止すべきフィルタ組立体の折り畳みおよび動脈からの取り外しの間に、押しつぶされることがない。
【0043】
フィルタ106および122は共に、ガイドワイヤ118の軸までテーパ状に細くなる遠位テーパ領域130を有している。フィルタエレメント106および122の特定の領域のテーパは、塞栓予防装置100の供給を容易にするとともに患者の脈管構造を通した供給の際に「雪かき」効果の防止を助ける。フィルタエレメントの一部を形成するとともにフィルタの遠位端をガイドワイヤ上に直接取り付けるために用いられる、小さな遠位部分132がある。この遠位部分132は、それをガイドワイヤ118に永久的に取り付けるとともにあらゆる塞栓細片がこの遠位部分132の遠位側開口から流出しないようにするために、周知の接着剤若しくは他の接合技術を用いて固定することができる。
【0044】
近位コーン部分を有した大きな中央フィルタを用いることの主な利点は、塞栓予防装置100が患者の脈管構造から取り出すときに捉えた塞栓細片が絞り出されそうにない、中央フィルタ126によってもたらされる大きな濾過面があることである。図22から分かるように、中央フィルタ126は全体的に円筒状の形状を有しているが、図9の中央フィルタ126は全般的に円筒形状であるが独特な外観デザインを生じさせる側面ひだ134を有することができる。フィルタエレメント106の中央フィルタ126に特有な断面形状は図16に示されているが、中央フィルタ126を形成するために用い得る多数の異なる形状のうちの1つを示している。使用の際には、図22のフィルタエレメント122は、接着剤若しくはその他の接合技術を用いて支柱組立体104およびガイドワイヤ118に取り付けられる。
【0045】
図9のフィルタエレメント106はまた、図22のより基本的なフィルタ設計には示されていないいくつかの独特な特徴を有している。これらの利点には、支柱組立体104の支柱108にフィルタエレメント106をしっかりと取り付けたままとするためのその他の特徴に加えて、図16に示されている中央フィルタ126の独特な断面形状が含まれる。また図10乃至図12を再度参照すると、フィルタエレメント106は、コーン部分124の端部の近位側にある短い外側リム136を含むとともに、血流および大動脈内に放出されたあらゆる塞栓細片を受け入れる大きな入口開口125を有している。この近位側の外側リム136は環状に形成されており、かつ組立体104の支柱108上にフィルタを取り付けるために利用することができる。図10から分かるように、この近位外輪は、各支柱108の中央部分138に取り付けられるとともに支柱108に巻きついて取り付くことができるタブ123を有している。この近位外輪136はまた、患者の動脈内で展開したままとならなければならない円形の入口開口125の維持を助ける。外側リム136の前方に取り付けられているものは、組立体104の支柱108上にフィルタを保持するために用いられる拘束ストラップ142である。各拘束ストラップ142は、各支柱の周りに巻きつけた後に接着剤のような接合剤を用いてそこに取り付けることができるタブ状の突出部144を有している。これらの要素は、拘束ストラップ142が支柱組立体104上にフィルタエレメント106を保持させるようにする。留意されるべきことは、これらの拘束ストラップ142と協動して組立体104上にフィルタを固定するために、任意の数のタブ状突出部144を用いることができることである。各拘束ストラップ144の近位端は、支柱組立体104の近位端110に形成されている管状部分114に接着によって固定可能なスリーブ146に取り付けられている。フィルタ106のこれらの様々な部分は、1つの複合ユニットとして作ることができるし、予め形成されたフィルタ素材にパターンを切り込むことにより形成することもできる。その後、フィルタエレメント106の長さに沿って開口128をしかるべく配置することができる。
【0046】
図9に示したフィルタエレメント106の近位コーン部分126は、近位コーン124が折り畳まれた状態にあるときに中央フィルタ126の開口を閉鎖するために用いる、複数のくぼみフラップ148を有している。これらのくぼみフラップ148は、図11、図17および図18に示すように、近位コーン部分124が閉鎖されるとこれらのフラップが一体に結びついて協動し、塞栓細片が中央フィルタ126の入口開口127から放出されることを防止するための障壁を形成するように作成されている。図9に示した特定の実施例においては、中央フィルタ126の開口を閉鎖するための必要な障壁を形成するために4つのそのようなくぼみフラップが用いられている(それらのうちの2つのみが図11、図17および図18に示されている)。しかしながら、くぼみフラップ148の数および各フラップ148の寸法および形状は、患者からの取り出しのために装置100を折り畳んだときに捉えた塞栓細片が中央フィルタ126から流出することを防止する保護障壁を形成するべく、変更することができる。
【0047】
ここで図19、図20および図21を参照すると、くぼみフラップ148の変形例がフィルタエレメント106の近位コーン部分124に示されている。これらの図面から分かるように、近位コーン部分124内に配置されるとともに、フィルタ組立体が折り畳まれたときにフィルタエレメント106の入口開口127を閉鎖するための機構として用いられる、複数組のフラップ部分150がある。これらのフラップ部分150はくぼみフラップ148と全く同様に、近位コーン部分124が折り畳まれるとこれらのフラップ部分150がフィルタエレメント106の入口開口127を横切って延びて、捉えた塞栓細片が放出されて血流中に戻ることを防止する障壁を形成するように動作する。これらのフラップ部分150は、フィルタが展開されたときに入口開口を横切って延びるがフィルタエレメント106内に血流が入り込むことを妨げない、小さく適切に形成された片とすることができる。血液は単純に塞栓細片とともにフラップ部分150の周囲を移動して中央フィルタ126内に入り込み、塞栓細片は細片貯蔵部内に捉えられる。この特徴は、塞栓予防装置100を折り畳んで患者の脈管構造から取り出すときに起こり得る捉えた塞栓細片の放出を減少させるための予防手段を提供する。
【0048】
ここで図14および図15を参照すると、フィルタエレメント106を固定するために用いる拘束ストラップおよびタブの他の形態が示されている。これらの特定な図面においては、拘束ストラップ152が各支柱108に沿って延びるとともに、各支柱108に拘束ストラップを取り付けるためのタブ状の突出部154が用いられている。使用の間にフィルタエレメント106が支柱組立体104から離れることを防止するために、各拘束ストラップ152から横方向に延びる追加の横方向の紐掛け部材156を用いることができる。これらの様々な設計は支柱組立体104上にフィルタエレメント106を取り付ける他の方法を示している。理解されるべきことは、支柱組立体104にフィルタエレメント106を取り付けるために、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくさらに他の形態を用い得ることである。
【0049】
本発明のその他の好適な実施例は図23および図24に示されている。この特定の実施例においては、塞栓予防装置200は支柱組立体204およびフィルタエレメント206を有したフィルタ組立体202を備えている。支柱組立体204は、図14内に示される支柱組立体と同様である。それは、折りたたまれた状態から完全に展開された状態まで展開可能な自己展開する支柱208を有している。支柱組立体204は、近位端210および遠位端212を有している。支柱組立体204は管材料の一片から作ることができるが、これらの支柱は管材料の一部を選択的に取り除くことによって形成される。この特定の実施例においては、管材料をニッケルチタン(NiTi)のような形状記憶材料から作られるハイポチューブとすることができる。その結果としての支柱組立体204は、展開された状態を維持するように通常的に付勢されるとともに、折りたたまれた状態に支柱208を配置するためには端210,212上への力の負荷を必要とする。
【0050】
近位端210が管材料214の一部を有するとともに遠位端212も同様に管材料216の一部を有している。遠位端212は、ガイドワイヤの遠位コイル220の近傍においてガイドワイヤ218に永久的に取り付けられる。遠位端212は、接着剤若しくは溶接、ろう付け若しくはハンダ付けを用いてガイドワイヤ218に接合することができる。同様に、支柱組立体204の近位端210は、患者の体外に延びる近位端を有した細長い外側管状部材222に接合し、溶接し、ろう付けし若しくはハンダ付けすることができる。細長い管状部材222およびガイドワイヤ218の近位端は、フィルタ組立体202を開閉するために医師が操作することができる。支柱組立体204を折り畳んだ若しくは閉鎖した状態に維持するための適切な係止機構600が、図43および図44に開示されるとともに後により詳細に記述される。
【0051】
フィルタエレメント206は、各支柱208の中央部分226に取り付けられるコーン形状部分224を有している。複数の開口228が、レーザでカットされ若しくは他の方法でフィルタ206に形成されているが、これらは血液がフィルタを通って流れることは許容するが開口の寸法より大きい塞栓細片は捉える。これは、本発明に基づいて作ることができる塞栓予防装置の変形例の更なる実施例である。
【0052】
本発明の他の実施例は、図25乃至図28に塞栓予防装置300として示されている。他の実施例と同様に、この装置300は展開可能な支柱組立体304およびこの支柱組立体304に取り付けられるフィルタエレメント306を有したフィルタ組立体302を備えている。各支柱308が、患者の脈管構造内においてフィルタエレメント306を展開状態に動かすために支柱組立体304上に形成されている。支柱組立体304は、支柱組立体304を折り畳みかつ展開するために外側の細長い管状部材310をガイドワイヤ312と関連させて用いる点において、前述した実施例と幾分似ている。図25および図26は示されないが、フィルタ組立体302を展開し若しくは折りたたむために医師が近位端を動かすことができるように、外側管状部材310はガイドワイヤの近位端と共に患者の体外に延びる近位端を有している。支柱組立体304は、各支柱308を作成するために、外側管状部材310の遠位端近傍から材料を選択的に取り除くことによって形成することができる。これらの支柱は、各支柱308の端に内向きの力が負荷されると開く。あるいは、支柱組立体304は、本発明の前述した実施例のいくつかに示されているように外側管状部材310に取り付けることができるハイポチューブの一片から作ることができる。外側管状部材310の全体は支柱組立体304と共にガイドワイヤ312に沿ってスライド自在であり、オーバーザワイヤ法によってフィルタ組立体302が患者の脈管構造内に配置されることを可能とする。
【0053】
図25乃至図28から分かるように、ガイドワイヤ312の遠位コイル322の近傍にストッパ要素320が配置されている。この遠位ストッパ要素320は、支柱308を展開状態に拡げるために必要な力を生じさせるべく、外側管状部材310と共に用いられる。塞栓の予防装置300は、以下のように利用することができる。最初に、医師は病変若しくは治療領域を通り過ぎた位置にガイドワイヤ312を動かし入れる。その後、外側管状部材310は支柱組立体304と共にオーバーザワイヤ法によってガイドワイヤ312上を前進する。塞栓予防装置300は、ガイドワイヤ312上でガイドワイヤの遠位端313に供給されるまでの間、図27に示されるように折り畳まれたままである。その後で、医師は外側管状部材310の遠位スリーブ313が、ガイドワイヤ312上に配置されているストッパ要素320と接触するようにする。細長い管状部材310の近位端に力を追加して負荷することにより、医師は動脈内における展開のために支柱308を半径方向外側に拡げる。その結果としての支柱308の展開は、動脈内においてフィルタエレメント306を開かせる。次いで、医師は治療領域に介入的な細片を供給して病変上に処置を施す。介入的な処置の間に生じ得るあらゆる塞栓細片がフィルタ306の内部に集められる。
【0054】
図43および図44に示されているような、外側管状部材およびガイドワイヤの近位端に配置されている単純な係止機構600を、支柱組立体304を動かして展開状態に保つために用いることができる。その後、塞栓予防装置300の脈管構造からの取り除きが望まれると、医師は単に外側管状部材310の近位端を引き込んで支柱組立体304上への力を取り除いて支柱308が折り畳み状態に戻るようにする。その後、塞栓予防装置300およびガイドワイヤ312を患者の脈管構造から取り除くことができる。
【0055】
フィルタエレメント306は、その主要部分が血管形成術に用いる展開バルーンの半分の形状を有している点において、前述したフィルタエレメントとは幾分異なった形状を有している。塞栓細片を捉える間の血液灌流をもたらすための血流開口313がフィルタエレメント306上に配置されている。フィルタエレメント306の近位端は、支柱308の近位側にある外側管状部材310に取り付けられる近位スリーブ316に延びる、複数の拘束ストラップ314を有している。フィルタエレメント306の遠位端318はまた、支柱308が形成されるときに外側管状部材310上に形成される遠位スリーブ321に取り付けられる。
【0056】
図29および図30は、本発明に基づいて作られた塞栓予防装置400の他の実施例を示している。この特定の実施例は、支柱の外側への展開および内側への縮小を容易にするために支柱組立体の支柱の端に外力が生じる点において、前述した実施例と幾分似ている。特に図29を参照すると、塞栓予防装置400は、フィルタエレメント406がそこに取り付けられる支柱組立体404を有したフィルタ組立体402を備えている。各支柱408はそれぞれ、内側管状部材414の遠位端413に取り付けられる遠位端412を有した外側管状部材410上に形成されている。内側部材414および外側部材410の両方が患者の脈管構造の外に配置される近位端を有している。支柱408は、支柱を外側に展開させるために必要な軸線方向力を負荷するために内側管状部材414に対して外側管状部材410を動かすことによって半径方向に展開される。装置を患者の脈管構造から取り除くときには、支柱408を折りたたみ状態に動かすために反対方向の軸線方向力が必要である。この実施例においては、動脈420内でフィルタエレメント406を展開するために4つ以上の支柱408が用いられている。また、支柱408の数、寸法および形状は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更することができる。
【0057】
フィルタエレメント406もまた、フィルタを通って血液が流れることは許容するが所望の寸法の塞栓細片は捉える開口416を有した、血管形成術に用いられる展開バルーンの半分の形状を有している。入口開口417を有するフィルタエレメント406の近位端は、支柱408の各中央部分418に取り付けられている。フィルタ406の遠位端420は、支柱組立体404の遠位端412に取り付けられている。
【0058】
内側管状部材414の管腔422は、動脈内に配置されたときに展開したフィルタ組立体402を血液灌流が通過するように、多数の目的のために用いることができる。したがって、フィルタを通って血液が流れることを妨げる細片によってフィルタエレメント406の開口416が詰まったときには、酸素を与えられた血液が内側管状部材414の内側管腔を通って下流の血管に灌流することができる。この管腔はまた、塞栓予防装置404をガイドワイヤ上でオーバーザワイヤ法により供給するために用いることができる。
【0059】
図31および図32は、本発明と共に用いることができる、前述したフィルタエレメントの変形例を示している。このフィルタ塞栓予防装置400は、フィルタエレメント430の設計が異なる点を除いて図29および図30に示された装置と基本的に同じである。図31から分かるように、フィルタエレメント430は、フィルタエレメント430の入口開口432の前方に延びる近位コーン形状部分431を有している。このタイプのフィルタ430は、支柱組立体404への取り付けが容易であるという利点を有している。さらに、動脈の壁が拘束ストラップ434によって支柱408から隔離される。この装置はまた小さな輪郭であるという利点を有するとともに、任意のガイドワイヤを用いることができ、加えてガイドワイヤを交換することもできる。この特定の実施例は、前述した実施例と同様に、オーバーザワイヤ法による介入的な装置の交換を可能にする。
【0060】
ここで図33乃至図38を参照すると、支柱組立体の支柱を展開するために異なる機構を用いる、本発明の2つの異なる実施例が示されている。図33においては、展開可能な支柱組立体504およびフィルタエレメント506を有したフィルタ組立体502を備える塞栓予防装置500が示されている。その他の実施例と同様に、支柱組立体504は、フィルタエレメント506を患者の脈管構造内において展開状態とするために用いる半径方向に展開可能な複数の支柱508を有している。半径方向に展開可能な支柱508を展開するための機構は、展開可能な支柱組立体504を作り上げている各支柱508に取り付けられた、複数の自己展開する配置部材510を用いる。自己展開する部材510はニッケルチタン合金のような自己展開材料から作られるが、それは非常に小さな輪郭に圧縮されるとともにむしろ大きな展開状態に展開されて、支柱508およびフィルタ506を一杯に展開された状態に動かす。図33および図34に見られるように、各支柱508に沿って配置された多数の展開部材510がある。各支柱508の近位領域に沿って配置された、展開部材510の近位側の組512がある。各ステント508の中央部分に配置された、展開部材510の中央の組514がある。図34から分かるように、フィルタエレメント506による被覆は中央の組514から始まっている。展開部材510の第3すなわち遠位側の組516は、各支柱の展開を高めるためにフィルタエレメント506が配置されている領域において支柱上に配置されている。
【0061】
図37から分かるように、各展開部材510は基本的に、一杯に展開されたときに最終的な寸法に展開する自己展開材料の折り畳み可能な一片となっている。図38は、支柱508に沿って配置されたとおりの展開部材の中央の組514および遠位側の組516の端面図である。展開部材510の各組は、展開部材の組が一杯に展開されたときに協働して形成する「リング」の4分の1周に展開する。この特別な構造を使用することの結果としてフィルタエレメント506は完全に展開し、塞栓予防装置500が患者脈管構造内で展開したときに動脈の壁と接触する円形の開口507を維持する。
【0062】
この特別な塞栓予防装置500の第1の実施例においては、展開可能な支柱組立体504の遠位端518はガイドワイヤ520に永久的に取り付けられる。支柱組立体504の近位端522は、翻って、ガイドワイヤの近位端とともに患者の脈管構造の外に延びる(図示されない)近位端を有した細長い外側管状部材524に取り付けられる。塞栓予防装置500は、単に外側管状部材524の近位端を引っ込めて支柱組立体504の端に外向きの力を与えることにより、図35に示すようにその折り畳み状態に動かすことができる。支柱組立体504の端に負荷する力は、各支柱508が折り畳み状態に戻るようにする各展開部材510を折り畳むために充分なものでなければならない。他の実施例と同様に、支柱508が一度その折り畳み状態に置かれるとフィルタエレメント506も同様に折り畳まれ、フィルタエレメント506内に先に捉えたあらゆる塞栓細片をその内部に閉じ込める。
【0063】
ここで図36を参照すると、図33に示したものと同様な塞栓予防装置の他の実施例が開示されている。この特定の塞栓予防装置530は、前述した実施例で示したように同じフィルタ組立体502および支柱組立体504を用いている。塞栓予防装置530の支柱組立体532における相違点は、この支柱組立体532から展開部材510の近位側の組512が取り除かれていることである。 一方、フィルタ組立体534は前述した装置500のフィルタ組立体502と実質的に同じものである。
【0064】
支柱組立体534の遠位端518はまた、この特定の実施例においてはガイドワイヤ520に永久的に取り付けられている。この特別な支柱組立体534の近位端は、展開状態から折り畳み状態およびその反対方向に動くときに、ガイドワイヤに沿って長手方向に自由に動くことができる。フィルタ組立体532を展開するための機構は、展開部材510上に力を掛けて拘束シース536が引っ込められるまでそれらが展開することを妨げる拘束シース536である。塞栓予防装置530が患者の脈管構造内の適切に所定位置に来ると、拘束シース536の近位端(図示せず)が引っ込められて、展開部材510が支柱508を開くとともにフィルタエレメント506が動脈内において完全に展開された状態となるようにする。装置が患者の脈管構造から取り除かれるべきときには、拘束シース536が支柱508の近位側の領域535に配置されるとともに、支柱の上に引き込まれて展開部材510がその折り畳み状態に戻るようにする。その後、フィルタエレメント506内に捉えられたあらゆる塞栓細片を保持して患者の脈管構造から安全に取り除く。展開部材510の近位側の組は、近位側の領域535において支柱に負荷される展開方向の力の量を減少させる必要があるので、この特別な実施例に関しては使用しなくともよい。しかしながら、シースがこの領域において支柱を折りたたむための充分な強度を有しているならば、この近位側の領域535に展開部材の第1の組を配置することは依然として可能である。
【0065】
図33乃至図38に示したフィルタエレメント506は、そこを通って血液が灌流することは許容するが塞栓材料は捉える網目組織の材料から作られている。網目組織材料は、所望の寸法の塞栓を捉える小さな寸法の開口を有した任意の織り混ぜられた織物から作ることができる。これに対して、フィルタ506はその中に見出される血流開口を有したポリマ材料から作ることができる。
【0066】
ここで図39A,図39Bおよび図40を参照すると、本発明に基づいて作られた任意のフィルタ組立体と共に用いることができる他の支柱組立体550が示されている。この支柱組立体550は、支柱552を展開状態に拡げるために用いる支柱552および展開部材554を有している。この展開部材554は、一旦完全に展開されると最終的な寸法に展開する自己展開材料から作ることができるので、前述した展開部材と同様に作用する。展開部材554はまた、展開部材554を折り畳まれた状態に保つために組立体上に外力を負荷したときに、未だ展開していない状態に折り畳むことができる。図39A、図39Bおよび図40から分かるように、展開部材554は、組立体550の支柱552に取り付けられる、頂556および谷558からなる蛇行パターンを有している。本発明のこれらの特定の実施例においては、展開部材554は、支柱552の端に取り付けられる頂556および谷558を含む正弦波パターンを有している。この特別なパターンは、支柱が互いにオフセットし若しくは互い違いになって組立体550が小さな輪郭に折り畳まれるようにし、より隙間のない病変に達するとともに遠位側の解剖学的組織にもうまく入り込む能力を向上させる。互い違いの支柱設計はまた組立体の柔軟性を増加させ、組立体を患者の解剖学的組織内において動かす能力を向上させる。フィルタエレメントは、複合体のフィルタ組立体を生成するために支柱552の上若しくは内側に同様に配置することができる。展開部材554は、完全な血管壁反力をもたらして、血管壁にフィルタ縁のシールを押し付ける。展開部材554は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなしに複数の幾何学的形状を有することができる。この特定の支柱組立体550も、互い違いに設計された支柱を含むレーザー光線を当てたハイポチューブから生成することができる。支柱の数は、支柱の特定の長さに合わせて変更することができる。これに対して、展開部材554は、支柱から分離した材料の一片から作ることができるとともに、ハンダ付け、ろう付け若しくは適切な接着剤を用いた接合のような方法を用いて取り付けることができる。図39Aおよび図39Bから分かるように、展開部材554の頂556および谷558に対する支柱552の取り付けは変更することができる。これらの特定の設計の両方が、支柱組立体を小さな輪郭に折り畳めるようにする。
【0067】
ここで図41および図42を参照すると、拘束シース内への塞栓予防装置の装填および取り出しを助けるために用いる、角を付けたフィルタ縁572を有した代わりのフィルタエレメント570が示されている。このフィルタエレメント570は、このフィルタエレメント570が、塞栓細片のろ過に用いる複数の開口576を有した中央部分574を有している点で、前述したフィルタと類似している。フィルタエレメント570は、先のとがった頂578および谷580を有する、王冠に類似して構成された縁572を備えている。フィルタ縁572のこの構造は、拘束シース内にフィルタが徐々に導入されるようにして、シース内に材料が突然入り込むことを防止する。図41および図42から分かるように、縁572は幾分正弦波状の形態を有しており、フィルタの谷領域580への応力集中を減少させている。フィルタ要素570の頂578は、支柱組立体584の支柱582に合わされている。頂578の数は、支柱組立体584上の支柱582の数に合わせて変更することができる。この特定の実施例においては、フィルタエレメント570を支柱組立体584の内側に配置することができるし、若しくは、これに対してフィルタを組立体584の外側に配置することもできる。理解されるべきことは、本願明細書に記載されている他のフィルタエレメントを、特定のフィルタ組立体と共に用いる支柱組立体の内側若しくは外側に置き換えることができるということである。支柱組立体584が装填され若しくは取り戻されにつれ、フィルタエレメント570の頂578は最初に拘束シースに入る。このことは、フィルタ材料の全部が同時にシース内に入ることを防止して、フィルタエレメント570が徐々にかつ次第にシース内に装填されるようにする。さらに、図42に示されている寸法AおよびBは、フィルタ縁572の正弦波のパターンにおける谷の深さの差異を示している。このことは、形状の変化をもたらす。1つの可能な構造はA=B=0である。さらに、シース内へのフィルタの装填が滑らかなものとなるようにB>A>0である。この特別な構造は、谷580の全部が同時にシース内に入ることを排除し若しくは実質的に排除する。フィルタ縁572は、開口576を有することもできるし有しないこともできる。頂578はまた、様々な高さを有することができる。図42に示されている寸法C、DおよびEは、フィルタ縁572の正弦波パターンにおける頂の高さの相違を示している。この特定のパターンもまた様々な形状をもたらす。1つの可能な形状はC=D=E=0である。さらに、谷580の深さに応じて、若しくは応じることなくE≧D≧C≧0である。
【0068】
ここで図43および図44を参照すると、本願明細書に記載されているフィルタ組立体を展開しかつ折りたたむための単純な係止機構600が示されている。これらの特別な機構は、支柱組立体を展開状態若しくは折り畳み状態に動かすために塞栓予防装置が内側軸部材および外側管状部材を用いるときはいつでも有用である。最初に図43を参照すると、外側管状部材604の近位端602が、塞栓予防装置を展開若しくは展開されていない状態のいずれかにロックするために用いることができるロック機構600と共に示されている。ロック機構600は、外側管状部材604の壁にカットされた細長いみぞ穴606を有するとともに、第1のロック位置608および第2のロック位置610を有している。内側軸部材612は、ガイドワイヤのような中実の軸若しくは中空の管状軸とすることができるが、細長いみぞ穴606内で動く引き上げられたダボ614を有している。この引き上げられたダボ614は、第1のロック位置608若しくは第2のロック位置610に動いてフィルタ組立体を展開状態若しくは非展開状態に保つことができる。理解されるべきことは、この特定の実施例においては2つのロック位置だけが示されているが、ユーザがいくつかの展開位置を持つことを望む場合には多数の異なるロック位置を用いることが可能であるということである。フィルタ組立体が自己展開する場合には、内側および外側の部材を押し引きする着脱可能なハンドルを用いることができる。このハンドルは、組立体を閉じた状態に保持するために内側および外側の部材を押し/引きし、次いでその他の介入的な装置が内側管状部材上を通過できるように取り外される。その後、このハンドルは、フィルタ組立体を折り畳んで取り除くために内側および外側の部材の近位端に取り付け直される。
【0069】
外側管状部材の近位端602は内側軸部材612がそうであるようにローレット掛616の小さな部分を有しており、これらの装置の近位端をつかんで操作するときに医師に対して掴むための表面を提供する。ロック機構600はまた、引き上げられたダボ614を第1のロック位置608の近傍に保つ外向きの力で内側軸部材612を付勢するために、外側管状部材604の内側管腔620内に配置された付勢ばね618を有することができる。この付勢機構は、外側管状部材の近位端に配置された肩領域621と内側軸部材612上に配置されたカラー622とを有している。ばね618の力は、第1のロック位置608に若しくはその近傍にダボ614を保つための役に立つ。そのような機構は、展開される準備ができるまで展開しない状態に保たれるようにこの装置が設計されているときに好ましい。使用のために準備ができるまで未だ展開してない状態にフィルタ組立体を保持することは有益である。展開された状態のままとされた場合にフィルタ組立体に損傷が生じる可能性があるからである。フィルタ組立体が展開されもしくは拡げられた状態に置かれることが望まれるときには、医師は単に内側軸部材の近位端を掴むとともにダボ614が第2のロック位置610に置かれるまでそれを後方に引くだけである。支柱組立体が自己展開する要素から作られているときには、付勢ばね618を設ける必要がないかもしれない。支柱組立体上の支柱がいくらか付勢ばねに似た作用をしてフィルタ組立体を展開された状態に保つからである。
【0070】
本発明の支柱組立体はさまざまな方法で作ることができる。しかしながら、支柱組立体を作る好ましい方法は、ニッケルチタン製のハイポチューブのような薄い壁の管状部材をカットして、各支柱のための所望のパターンに管材料部分を取り除き、各支柱を形成する管材料部分を相対的に触れないままにしておくことである。機械制御されたレーザによって所望のパターンに管材料をカットすることが好ましい。
【0071】
支柱組立体を作るために用いる管材料は、ステンレス鋼のような適切な生体適合材料から作ることができる。ステンレスの鋼管は、合金タイプとすることができる:316L SS、特殊化学分野 ASTM F138−92 若しくはASTM F139−92 グレード2。特殊化学分野 タイプ316L ASTM F138―92若しくはASTM F139−92「外科手術用移植片のためのステンレス鋼」(重量パーセント)
【0072】
支柱の寸法は通常非常に小さいので、それを作る管材料もまた必然的に小さな直径を有しなければならない。典型的に、管材料は非展開状態において約0.020〜0.040インチのオーダーの外径を有する。管材料の肉厚は約0.076mm(0.003〜0.006インチ)である。例えばPTAのような身体管腔内に移植される支柱組立体においては、管材料の寸法がそれに対応してより大きくなり得る。レーザカットした管材料から支柱組立体を作ることが好ましいが、平らな薄板をレーザカットした後に円筒状に巻き上げるとともに円筒状の部材を形成するために長手方向の縁部を溶接して支柱組立体を形成することは当業者の理解するところである。
【0073】
一般的に、レーザに対して管材料を位置決めするために機械制御される装置の回転可能なコレット取付具にハイポチューブを取り付ける。機械的にコード化された命令に従って、機械制御されるレーザに対して管材料が回転されかつ長手方向に動かされる。レーザがアブレーションによって管材料から選択的に材料を取り除くと、パターンが管材料にカットされる。したがって、管材料は仕上がった支柱の個別的なパターンにカットされる。このようにして、ステントがレーザカットされるのと全く同様に支柱組立体をレーザカットすることができる。管材料をどのようにしてレーザカットするかの詳細は、Advanced Cardiovascular Systems, Inc.に譲渡された米国特許第5,759,192号(Saunders)および米国特許第5,780,807号(Saunders)に見い出されるが、それらの全体はこの参照によって本願明細書の開示に含まれるものとする。
【0074】
支柱組立体のためのパターンを管材料にカットするプロセスは全般的に、管材料の装填および取り外しを除いて自動化される。例えば、管材料を軸線回りに回転させるためにCNC対向コレット取付具を、記載したような機械制御レーザに対して管材料を軸線方向に動かすためのCNC X/Yテーブルと共に用いることによって、パターンを管材料にカットすることができる。コレット間の全体スペースは、二酸化炭素若しくはネオジウムヤグレーザ装置を用いてパターン化することができる。装置を制御するプログラムは、特定の形状および除去するパターンの符号によって左右される。
【0075】
本発明の支柱組立体を製造するために使用するニッケルチタンの適切な組成は、ニッケルが約55%およびチタンが約45%(重量)であり、その他の痕跡量は組成の約0.5%である。超弾性を達成するためのオーステナイト変態温度は約−15℃と0℃の間にある。オーステナイト温度は、曲げおよび自由回復接線法によって測定される。上側プラトー強度は最低で約60,000psi、最小の極限引張強さは約155,000psiである。(8%の歪を負荷して除荷した後における)永久歪みは約0.5%である。破壊伸率は最低で10%である。理解されるべきことには、本発明に基づいて作られる自己展開ステントと同じ特徴を得るために、他の自己展開合金と同様にニッケルチタンの他の組成を用いることができる。
【0076】
本発明の支柱組立体は、その変態温度が体温より低い(しばしば擬似弾性と呼ばれる)超弾性のニッケルチタン(ニチノール)の管からレーザカットすることができる。ハイポチューブに支柱パターンをカットした後、管材料は所望の最終的な直径において安定するように展開されて熱処理される。熱処理はまた、支柱組立体の変態温度を体温において超弾性であるように制御する。変態温度は、ステントが体温において超弾性であるように体温若しくはそれより低い。支柱組立体は通常、フィルタエレメントを展開された状態に保つために支柱が血管壁に力を負荷するように、展開された状態の支柱組立体の直径より小さい目標とする血管内に移植される。
【0077】
支柱組立体を形成するために本発明にしたがって用いることができる管状ハイポチューブは、外側管状部材および支柱組立体の両方を形成する1つの連続した片とすることができる。本明細書に開示されるいくつかの実施例において、支柱組立体は、支柱パターンを形成するために選択的にカットされるハイポチューブの短い部分から作られるように示されている。その後、支柱組立体の近位端は、接着剤、溶着、ろう付け若しくはハンダ付けのいずれかによって外側管状部材の遠位端に接合される。しかしながら、これらの2つの分離した部分は、本発明の好適な実施例においては単一の管材料部分から形成することができる。
【0078】
本発明の実施例のうちの1つに示されている減衰要素はまた、本明細書に開示されている他の実施例のいずれとも一緒に用いることができる。減衰要素は、図1および図2に示されているように支柱組立体の近位端にカットすることもできるし、他の減衰要素を支柱組立体に取り付けることもできる。例えば、異なる材料若しくは類似した材料から作られている分離したばねは、支柱組立体の端に溶接し、ろう付し若しくはハンダ付けすることができる。また、減衰力を提供するために螺旋形のばねの他に他の減衰材料を用いることができる。例えば、システムの「ショックアブソーバ」として作用するようにエラストマ材料の部分を支柱組立体に接合することができる。
【0079】
外側管状部材は、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金若しくは形状記憶を有する材料等の様々な材料から作ることができる。上述したように、支柱組立体に取り付けられる分離した外側部材を用いるときには、公知の接合方法によって支柱組立体に対して容易にその遠位端を取り付けることができる。外側管状部材の内径は、外側管状部材が同軸配置においてスライドできるように、内側軸部材の外径に対してもちろん匹敵していなければならない。内側軸部材もまた、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金若しくは形状記憶材料から作ることができる。一つの実施例においては、装置がガイドワイヤ上をオーバーザワイヤ法によってスライドすることを許容する、内側管腔を有した内側軸部材が管状の部材として示されている。その他の実施例は、内側軸部材をガイドワイヤ若しくはガイドワイヤに似た軸として示している。一般的に、内側軸部材がガイドワイヤとして用いられるときには、ガイドワイヤが患者の脈管構造内に押し入れられるときに血管に対して傷害を与えることを防止するために、非外傷性のガイドワイヤコイルチップを有するべきである。理解されるべきことは、ガイドワイヤを内側軸部材として利用する実施例においては、このコイルチップがフィルタ組立体のすぐ隣に配置される必要がないということである。フィルタ組立体は、患者の脈管構造に通す際の舵取りを助けるために医師が予め曲げることができるガイドワイヤの短い遠位セグメントを生成するために、コイルチップに対してより一層近位側に配置することができる。
【0080】
また、支柱組立体を生成するために用いることができる管材料若しくはハイポチューブは、ニチノールのようなニッケルチタン合金若しくはその他形状記憶材料とすることができる。支柱組立体を形成するためにステンレス鋼を用いることもまた可能である。支柱組立体はまた、使用の間に装置を展開しもしくは収縮させるのに必要な軸線方向力を与えるために外側管状部材および内側軸部材が用いられる実施例においてさえ、自己展開材料から作ることができる。さらに支柱組立体は、折りたたまれた状態もしくは展開された状態のままとしておくために所望の通りに付勢されることができる。
【0081】
フィルタ要素を作成するために用いることができるポリマ材料はポリウレタンやGortex、商業的に入手可能な材料を含むが、それらには制限されない。その他に考えられる適切な材料はPTFEを含む。材料は、弾性もしくは非弾性であることができる。フィルタ要素の肉厚は、約0.001〜0.005インチとすることができる。肉厚は、選択された特定の材料に応じて変更することができる。材料は、ブロー成形技術を用いてコーンもしくは同じサイズの形に作ることができる。血流のための開口は任意の異なった形状もしくは寸法とすることができる。
【0082】
血流のための開口をフィルタ材料に作成するために、レーザ、加熱された棒若しくはその他のプロセスを用いることができる。孔は、関心事である特定のサイズの塞栓細片を捕えるためにもちろん適切に寸法決めされる。孔はいくつかの類似したパターンと共に脊髄パターン状にレーザ光線で開けることができるが、それはこの装置を閉じる間に濾過物質の再包み込みを助ける。さらにフィルタ材は、折り畳まれた状態に置かれたときにフィルタエレメントをより容易に再び包み込むために、展開バルーンに用いる「セット」と非常に良く似たその内側に置かれる「セット」を有することができる。
【0083】
拘束シースおよび復元シースのために用いることができる材料は、架橋された高密度ポリエチレンのような同様のポリマ材料から作ることができる。あるいは、圧縮された支柱組立体を保持するために充分な強度を有するとともにフィルタ組立体とシースとの間のあらゆる摩擦を最小にするために比較的低い摩擦特性を有する、ポリオレフィンのような材料から作ることができる。摩擦は、シースをフィルタ組立体上に配置する前に、拘束シースの内面にMicroglide(登録商標)のようなシリコーン潤滑剤の被膜を付加することによってさらに減少させることができる。
【0084】
上述したことを考慮すると、本発明のシステムおよび装置が、生成されて患者の血流中に放出される塞栓材料に関連するリスクを大幅に減少させることにより、ある種の介入的な処置を実行する際の安全性を実質的に高めることは明らかである。本明細書に開示されたシステム及び方法に対して、本発明の範囲から逸脱することなしに更なる変更および改善を追加的になすことができる。したがって、添付の請求の範囲による他に、発明が制限されることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】血管内に配設されるとともにその展開可能なフィルタ組立体を拘束シース内において折り畳まれた状態で示す本発明の特長を具現化する塞栓予防装置の部分断面側面図。
【図2】展開可能なフィルタ組立体が血管内で展開している状態を示す図1と同様の部分断面側面図。
【図3】本発明のフィルタ組立体の一部を形成する支柱組立体を折り畳んだ状態で示す斜視図。
【図4】展開可能な支柱組立体のための1つの特有な支柱パターンを示す、図3に示した展開可能な支柱組立体の平らにした切開部分の平面図。
【図5】本発明のフィルタ組立体の一部を形成する展開可能な支柱組立体の他の実施例を、折り畳んだ状態で示す斜視図。
【図6】展開可能な支柱組立体のための代わりの支柱パターンを示す、図5の展開可能な支柱組立体の平らにした切開部分の平面図。
【図7】図7は、ガイドワイヤに回転自在に取り付けられた、図2の展開可能な支柱組立体の部分断面側面図。
【図8】図8は、図2のフィルタ組立体のガイドワイヤにスライド自在に取り付けられた遠位端を示す、要部破断部分断面側面図。
【図9】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例の斜視図。
【図10】図9の塞栓予防装置を作り上げている様々な構成部分の側面図。
【図11】図9の塞栓予防装置を展開された状態で示す側面図。
【図12】図11の塞栓保護装置のフィルタエレメントの破断線12−12に沿った端面図。
【図13】フィルタエレメントを支柱組立体上に保持するために展開可能な支柱組立体の支柱に巻きつける前の状態のフィルタの保持タブを示す、図12のフィルタエレメントの端面図。
【図14】フィルタエレメントを支柱組立体上に保持するために用いることができる保持タブおよび構造部材の代わりの実施例を示す、塞栓予防装置のフィルタエレメントの他の実施例の図12と同様の端面図。
【図15】図15は、フィルタエレメントを支柱組立体上に保持するために展開可能な支柱組立体の支柱に巻きつける前の状態のフィルタの保持タブを示す、図14のフィルタエレメントの端面図。
【図16】図11の濾過装置の中央フィルタの破断線16−16に沿った断面図。
【図17】近位コーン部分のくぼみフラップを展開状態で示す、図11の塞栓予防装置の要部破断部分断面側面図。
【図18】くぼみフラップが装置の中央フィルタの入口開口を閉鎖する折り畳まれた状態で近位コーン部分のくぼみフラップを示す、要部破断部分断面側面図。
【図19】装置が折り畳まれたときにフィルタエレメントの近位コーン部分の入口開口を閉鎖する逆さフラップを有する、本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の斜視図。
【図20】近位コーン部分および逆さフラップを展開された状態で示す、図19の塞栓予防装置の要部破断部分断面側面図。
【図21】近位コーン部分が折り畳まれてフィルタエレメントの近位コーン部分の入口開口を逆さフラップが閉鎖している、図19の塞栓予防装置の要部破断部分断面側面図。
【図22】本発明に基づいて製造されたフィルタエレメントの他の実施例の斜視図。
【図23】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例を作り上げている様々な構成部品の側面図。
【図24】図23の塞栓予防装置を展開された状態で描く側面図。
【図25】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例を作り上げている、様々な構成部品の側面図。
【図26】図25の塞栓予防装置を展開された状態で描く側面図。
【図27】図27は、図25の塞栓予防装置を血管内において折り畳まれた状態で描く部分断面側面図。
【図28】塞栓予防装置が血管内において展開されている、図27と同様の部分断面側面図。
【図29】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例。
【図30】血管内において展開された状態にある、図29の塞栓予防装置の部分断面側面図。
【図31】本発明に基づいて製造された塞栓フィルタ装置の他の実施例。
【図32】血管内に配設されて展開状態にある図31の塞栓フィルタ装置の部分断面側面図。
【図33】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例を作り上げている様々な構成部品の側面図。
【図34】図33の塞栓予防装置を展開された状態で描く側面図。
【図35】図25の塞栓予防装置を折り畳まれた状態で描く側面図。
【図36】図34と同様の塞栓予防装置の他の実施例の部分断面側面図。
【図37】支柱組立体の支柱を展開された状態若しくは折り畳まれた状態に動かす2つの展開部材の側面図。
【図38】図34のフィルタ組立体の破断線38−38に沿った端面図。
【図39A】組立体をより低い輪郭に折り畳めるようにした、本発明に基づいて製造された他の支柱組立体を描く側面図。
【図39B】組立体をより低い輪郭に折り畳めるようにした、本発明に基づいて製造された他の支柱組立体を描く側面図。
【図40】図39の支柱組立体における支柱の構造を示す展開側面図。
【図41】本発明に基づいて製造された他のフィルタエレメントを有するフィルタ組立体の他の実施例。
【図42】図41のフィルタ組立体のフィルタエレメントの展開側面図。
【図43】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の実施例に従って利用することができる近位側係止機構の側面図。
【図44】図44は、塞栓予防装置を折り畳まれた状態若しくは展開された状態のいずれかに保つことができる図39の係止機構の付勢ばねを示す部分断面側面図。
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に、血管が狭窄し若しくは閉塞した領域において介入的な処置を行うときに用いることができる、処置の間に生成されて血流中に放出され得る塞栓材料を捉えるための濾過装置およびシステムに関する。本発明の塞栓濾過装置およびシステムは、非常に重要な血管、特に頸動脈のような血流中への塞栓細片の放出が脳またはその他の生命維持に必要な器官に対する酸素を含んだ血液の流れを閉塞して患者に甚大な被害をもたらすところにおいて、バルーン血管形成術、ステント留置術処置、レーザ血管形成術またはアテレクトミーを実施するときに特に有用である。本発明の塞栓予防装置およびシステムは特に頸動脈における処置に有用であるが、本発明は塞栓のリスクを伴うあらゆる血管における介入的な処置と共に用いることができる。
【発明の背景】
【0002】
血管壁上へのプラーク若しくはその他の物質の蓄積によって狭窄し若しくは閉塞した患者の血管を広げるための、様々な非外科手術的な介入性処置が長年にわたって開発されてきた。そのような処置は通常、動脈内腔への介入的な装置、通常はカテーテルの経皮的な導入を伴う。典型的な頸動脈のPTA処置においては、ガイドカテーテル若しくはシースが大腿動脈を通して患者の心臓血管系に経皮的に導入されるとともに、ガイドカテーテルの遠位端が総頸動脈に至るまで血管系を通して進められる。ガイドワイヤおよび遠位端上にバルーンを備えた膨張カテーテルは、ガイドワイヤが膨張カテーテルの内部をスライドしつつガイドカテーテルによって導入される。ガイドワイヤが最初にガイドカテーテルから患者の頸動脈血管系内に進出して動脈の病変を横切るように導かれる。その後、膨張カテーテルは、膨張バルーンが動脈の病変を横切るように適切に配置されるまで、予め前進していたガイドワイヤ上を前進する。病変を横切る位置に達すると、膨張バルーンは比較的高い圧力のX線不透過性の液体によって予め定められた寸法に膨らまされて病変部のアテローム動脈硬化症のプラークを動脈壁の内側に対して半径方向に圧縮し、それによって動脈の内腔を広げる。それから、膨張カテーテルを患者の血管系から回収し広げられた動脈を介した血流を取り戻すように、バルーンを小さな輪郭に収縮させる。当業者によって理解されるべきことは、上述した処置は典型的なものではあるが、血管形成術に用いる唯一の方法ではないということである。
【0003】
他の方法は、堆積したプラークをレーザを用いて過熱処理し蒸発させることにより狭窄を除去するレーザ血管形成術である。アテレクトミーは狭窄した血管を処理するためのさらに他の方法であるが、この方法においては堆積したプラークを動脈の壁から削るために切断カッタを回転させる。この方法を用いる間には、通常、削り取ったプラーク若しくは血栓を血流から捉えるために負圧カテーテルを用いる。
【0004】
上述した種類の方法においては、急激な再閉鎖が生じたり時間を経るにしたがって動脈の再狭窄が進行することがあるため、他の血管形成術、外科手術上のバイパス手術、またはその領域を修復し若しくは強化するためのいくつかのその他の方法を必要とする。急激な再閉鎖の発生の可能性を減少させるとともにその領域を強化するべく、医師は、血管の開通性を保つために一般的にステントとして知られている人工挿入物を動脈内部の病変を横切る部分の内部に挿入することができる。ステントは、カテーテルのバルーン部分の上にきつくかしめられるとともに、供給するときの直径において患者の血管系を通して搬送される。展開する部位において、ステントは、多くの場合にカテーテルのバルーン部分を膨らませることによって大きな直径に展開される。
【0005】
従来のステントは典型的に、2つの一般的な構造範囲に分類される。第1のタイプのステントは上述したように膨張カテーテルのバルーン部分の膨張によって制御された力が負荷されると膨張可能であり、かつ膨張カテーテルは、バルーン若しくはその他の拡大手段が膨張すると、目標部位の動脈内の所定位置にステントを留置するために圧縮されているステントをより大きな直径に展開させる。第2のタイプのステントは、例えば形状記憶金属若しくは超弾性ニッケルチタン(NiTi)合金から形成された自ら展開するステントであり、供給カテーテルの遠位端から身体管腔内に進出すると折り畳まれた状態から自動的に展開する。展開可能な熱感受性材料から製造されたそのようなステントは、材料に相変態が生じることを許容し、その結果としてステントの膨張および収縮が生じる。
【0006】
上述した非外科手術的な介入性の処置は、成功したときには大きな外科手術の必要性を回避できる。しかしながら、これらの非外科手術的な処置の全てに関連して発生し得る一つの共通の問題がある。すなわち、遠位側の血管系を閉塞するとともに患者に重大な健康問題を生じさせ得る血流内への塞栓細片の放出である。例えば、ステントが展開する間にステントの金属製の支柱が狭窄部分に切り込んでプラーク片を剪断し、それが塞栓細片となって下流側に移動し患者の脈管系内のどこかに引っかかることがあり得る。プラーク材料の断片は、バルーン血管形成術の間に時々狭窄部分から外れて血流中に放出される。さらに、レーザ血管形成術の間におけるプラークの完全な蒸発が意図するゴールではあるが、非常に多くの場合に小片が完全には蒸発せず、したがって血流中に入り込む。同様に、アテレクトミーの間に生成される塞栓の全てが負圧カテーテルに吸引される訳ではなく、その結果として同じように血流に入り込む。
【0007】
頸動脈若しくは動脈内において上述した処置のいずれを実行するときでも、循環器系への塞栓の放出は極めて危険であり、時には患者にとって致命的である。血流によって脳の遠位端の血管に運ばれた細片は大脳の血管の閉塞を生じさせ、脳卒中、若しくはいくらかのケースにおいては死亡に帰結する。したがって、大脳の経皮経管血管形成術が過去に実行されているものの、塞栓細片が血流中に入り込んで生命維持に必要な下流側の血液流路を遮断すると塞栓による脳卒中を生じさせるというもっともな心配により、実行された処置の数は限られている。
【0008】
上述した方法のいずれかを用いて血管を治療した後に細片若しくは断片が循環器系に入った時に生じる問題を処理するために、医療装置が開発されてきた。試みられてきた一つのアプローチは、患者の血管系の大きな血管において閉塞する可能性をほとんど起こさない微細な寸法にあらゆる細片を切断することである。しかしながら、形成される断片の寸法を制御することは多くの場合困難であり、血管が閉塞する潜在的なリスクが依然として現存し、頸動脈におけるそのような処置をハイリスクなものとしている。
【0009】
塞栓細片を取り除く問題に取り組むために開発されたその他の技術には、血流から塞栓細片を取り除くために一時的な吸引を提供する負圧源と共にカテーテルを使用することが含まれる。しかしながら、上述したように、吸引カテーテルが必ずしも血流中からすべての塞栓材料を取り除くことができるというわけではなく、かつ強力な吸引が患者の血管系に問題を生じさせ得るので、そのようなシステムには厄介な問題があった。限定されたいくつかの成功を収めたその他の技術には、下流側のより小さな血管に達する前に塞栓細片を捉えるためのフィルタ若しくはトラップを治療部位の下流に配置することが含まれる。しかしながら、特に身体血管内においてフィルタを展開しかつ折り畳む間における、フィルタシステムに関連した問題があった。そのフィルタ装置がフィルタを閉じたるための適切な機構を備えていないと、捉えた塞栓細片がフィルタの入口開口から逆流し、フィルタシステムが折り畳まれて患者から取り出されるときに血流中に入り込む可能性がある。そのような場合、フィルタ装置を折り畳む行為が実際的に、捉えた塞栓材料をフィルタの開口を介して血流中に絞り出すことなる。
【0010】
血管内で展開することができる従来のフィルタの多くは、ガイドワイヤが所定位置に操作されたときにフィルタ装置を患者の血管系内に配置できるようにするガイドワイヤ若しくはガイドワイヤに似た管材料の遠位端に取り付けられる。ガイドワイヤが血管系内の適切な位置に達すると、塞栓フィルタは塞栓細片を捉えるために血管内で展開される。次いで、バルーン血管形成術膨張カテーテル若しくはステントのような介入的な装置を治療領域に供給するためにガイドワイヤが医師によって用いられる。塞栓フィルタとガイドワイヤとの組み合わせを用いるときには、介入的な装置をオーバーザワイヤ法によりガイドワイヤ上で供給するときに、ガイドワイヤの近位端は通常は意図することなく医師によって回転させられる。 塞栓フィルタがガイドワイヤの遠位端に堅固に取り付けられていると、ガイドワイヤの近位端をねじり若しくは回転させたときに、その回転がガイドワイヤに沿って塞栓フィルタに中継され、フィルタを回転させ若しくは血管内で動かして血管壁に外傷を生じさせ得る。さらに、介入的な装置をガイドワイヤ上で供給するときにガイドワイヤがねじれると、展開されたフィルタを医師が偶然に折り畳み若しくは変位させることがあり得る。さらに、供給カテーテル若しくは介入的な装置のガイドワイヤに沿った交換により生じる衝撃波(振動運動)が、展開されたフィルタ装置を半開きにするとともに血管に外傷を生じさせることがあり得る。介入的な処置の間におけるこの種の発生は望ましくない。それらが患者の健康に有害な外傷を血管に生じさせ、および/または展開されたフィルタを血管内で変位させていくらかの塞栓細片がフィルタを流れ過ぎて下流側に至らせるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
必要とされてきたものは、下流側の位置における血管の封鎖を生じさせ得る塞栓細片が血流中に放出されたときに関連するリスクを防止するための、血管内の狭窄を治療するときに用いる信頼できるフィルタ装置およびシステムである。その装置は、治療の間に血流中に放出され得るあらゆる塞栓細片をろ過するとともに、フィルタ装置が折り畳まれて患者の血管系から取り除かれるまで細片を安全に収納する能力を持つべきである。その装置は、医師にとってその使用が比較的容易であるとともに、あらゆる塞栓細片を捉えて血流中から取り除くフェイルセーフなフィルタ装置を提供するべきである。さらに、そのような装置は、展開および患者の血管系からの取り除きが比較的容易であるべきである。本明細書に開示される発明は、これらのおよびその他の必要性を満たす。
【0012】
本発明は、バルーン血管形成術若しくはステント留置術のような治療的な介入性処置を実行する間に生成された血管内の塞栓細片を捉えて、処置を施した部位より下流の血管を塞栓細片が遮断することを防止するための多数のフィルタ装置およびシステムを提供する。本発明の装置およびシステムは頸動脈のような危険な動脈に介入的な処置を実行する間に特に有用であるが、そこにおいては脳に至る主要な血管を含む生命維持に必要な下流側の血管が塞栓細片によって容易に遮断され得る。頸動脈の処置内に用いられるときに、本発明は処置の間に脳卒中が発生する可能性を最小にする。その結果、本発明は、介入的な処置の間に塞栓細片を適切に集めて患者の血管系から取り除くことができるという高度な確信を医師に与える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に基づいて作られる塞栓予防装置およびシステムは、ガイドワイヤのような管状軸部材の遠位端に取り付けられる展開可能なフィルタ組立体を備える。このフィルタ組立体は、ニッケルチタン(NiTi)合金若しくはばね鋼のような自己展開材料から作られる展開可能な支柱組立体と、収縮し若しくは折り畳まれた状態から展開し若しくは広げられた状態へと患者の血管系内において自ら展開する能力を有した多数の外側に広がる支柱とを含んでいる。塞栓捕捉媒体から作られたフィルタエレメントは、展開可能な支柱組立体に取り付けられるとともに、この展開可能な支柱の動きによって折り畳まれた状態から展開された状態へと動く。この展開可能な支柱組立体は、フィルタ組立体の全体が自由に回転し若しくは「旋回」して患者の血管系内で展開された後にフィルタ組立体が回転させられることを防止するように、ガイドワイヤに取り付けられる。このように、ガイドワイヤの近位端の偶発的若しくは意図的なあらゆる回転が展開されたフィルタ組立体に伝達されないので、フィルタ組立体は患者の血管系内で静止したままとなり、ガイドワイヤの回転および/または操作によって生じる血管壁に外傷を与える恐れおよびフィルタの変位を実質的に排除することができる。
【0014】
支柱組立体の展開可能な支柱は、支柱を折り畳むとともに収縮し若しくは折り畳まれた状態に保つために支柱上に負荷されている外力が取り除かれるまで、展開した状態のままでいるように付勢することができる。このことは、支柱組立体を折り畳んだ状態に保つためにフィルタ組立体上に同軸に配置された拘束シースを用いることにより行われる。ガイドワイヤとフィルタ組立体、およびフィルタ組立体上に配置された拘束シースの複合体は、患者の血管系内に配置することができる。医師が目標領域内に適切にガイドワイヤを押し入れると、その展開状態に支柱を展開するために、展開可能な支柱組立体から離れるように拘束シースを引込めることができる。このことは、(患者の体外に配置されている)拘束シースの近位端をガイドワイヤに沿って単純に引込むことにより、医師によって容易に実行することができる。拘束シースが引き込まれると、支柱組立体の自己展開特性がガイドワイヤから離れる半径方向外側に支柱を動かして血管壁に接触させる。また、支柱が半径方向に展開するとフィルタエレメントも同様に展開し、医師が介入的な処置を実行するときに血流中に放出され得る塞栓細片を集めるための所定状態となる。フィルタサブ組立体は、塞栓予防装置の遠位端および近位端において心線に接合することができる。この心線は、ステンレス鋼や生体適合性の形状記憶材料から作ることができる。塞栓予防装置を有したガイドワイヤは、供給シースに装填することができる。供給シースは、意図する血管部位に向けて装置を進めるためにトルクを与えることができる。
【0015】
フィルタ組立体は、その近位端をガイドワイヤに回転可能に取り付けることにより、ガイドワイヤに回転可能に取り付けることができる。支柱組立体の遠位端は、ガイドワイヤに沿って長手方向に動くことができるとともにガイドワイヤ上で回転することもできる。このことは、支柱組立体が折り畳まれた状態と展開した状態との間で動くことを許容するとともに、フィルタ組立体の全体がガイドワイヤの周りに自由に回転し若しくは「旋回する」ことを許容する。ガイドワイヤに対する支柱組立体の近位端のこの取付けは、拘束シースをフィルタ組立体から引込めることを許容するとともに、塞栓予防装置を患者の血管系から取り除くときに支柱組立体を折り畳まれた状態に動かすために、復元シースを展開された支柱組立体上に配置することを許容する。
【0016】
フィルタ組立体はまた、医師によるガイドワイヤの取り扱いの間にガイドワイヤに沿って伝達され得る衝撃波(振動運動)のいくらかを吸収するために用いる、減衰要素若しくは減衰部材を有することができる。フィルタ組立体への突然の衝撃はフィルタに血管の壁をこすったり血管内で変位させたりするので、減衰部材は「ショックアブソーバ」に非常に良く似た作用をして衝撃のいくらかを吸収するとともにフィルタ組立体に対する衝撃の伝達を防止する。この衝撃は、様々な理由によって、例えば介入的な装置のガイドワイヤに沿った交換によって生じ得る。また、拘束シースをフィルタ組立体から取り除くときに、自己展開する支柱があまりに素早く拡がると衝撃波が生じ得る。減衰部材を利用する結果、患者の血管系に対する衝撃および外傷が最小になるとともにフィルタが変位する可能性が実質的に排除される。減衰部材の一つの特定の実施例においては、組立体に減衰力を与えるために展開可能な支柱組立体の近位端上に螺旋形ばねが形成される。支柱組立体へのばね若しくはエラストマ部材の取り付けのような、減衰力を得るその他の方法もまた用いることができる。
【0017】
本発明に基づいて作られる展開可能な支柱組立体は、形状記憶合金若しくは他の自己展開材料から作られた(「ハイポチューブ」として知られている)管材料から製造することができる。ステンレス鋼若しくはその他の生体適合性の金属またはポリマも、支柱組立体を製造するために用いることができる。一つの好ましい材料は、ニッケルチタン(NiTi)のような形状記憶合金である。展開可能な支柱組立体の各支柱は、支柱の特定寸法および形状を形成するために管材料から選択的に材料を取り除くことにより、ハイポチューブ上に形成される。例えば、ハイポチューブの壁には各支柱を形成するためのみぞ穴をレーザカットすることができる。フィルタ部材を所定位置に保持するために用いる小さなタブもまた、支柱に沿わせて管材料にレーザカットすることができる。高精度のレーザによってハイポチューブの部分を選択的に取り除くことにより、ステントの製造に用いるレーザと同様に、非常に正確で輪郭が明確な支柱の形状および長さを達成することができる。本発明の一つの特定の実施例において、ハイポチューブから取り除かれる材料のパターンは、2つの逆三角が一体に噛み合った形の支柱パターンを生成するために反復する菱形とすることができる。この特定の支柱パターンは、支柱に沿った破損し若しくは弱くなる傾向を有する箇所により大きな強度を与える。そのような支柱パターンは各支柱に対してより自然な曲げ位置を与えて、展開可能な支柱組立体がより均一に開閉できるようにする。一つの特定のパターンにおいては、支柱パターンが、その支柱の形状を生成するためにレーザ若しくはその他の手段によって先端を切り取った菱形パターンが反復するような除去を要求する。この特定のパターンにおいて、各支柱は、上述した支柱パターンにいくらか似ている、2つの逆三角形の間に形成された比較的まっすぐな中央部分を有する。この特定の支柱パターンは、より大きな容積に支柱が展開することを許容する広げられた中央部分をもたらし、支柱組立体上により大きなフィルタが配置できるようにして塞栓の捕捉を助ける。2つの逆三角形間に配置された中央部分はまた、支柱組立体上にフィルタエレメントを取り付けるための充分な作業域を提供する。これらと同じ特徴は、中央部分が減少した幅を有する湾曲部分によっても達成することができる。
【0018】
塞栓予防装置はまた、自己展開せずに、展開および折り畳みのためにその近位端および遠位端上に負荷される力を用いる支柱組立体を有したフィルタ組立体を備えることができる。発明のこの特定の形態においては、塞栓予防装置が内側軸部材とこの内側軸部材上に同軸に配設された外側管状部材とを備える。この展開可能な支柱組立体は、その遠位端を内側軸部材に取り付けられることができるとともに、その近位端は外側管状部材の遠位端に取り付けることができる。内側軸部材と外側管状部材との間に相対的な動きは、支柱を収縮させ若しくは展開させるために展開可能な支柱組立体に負荷される力を生成する。例えば、上述した実施例においては、支柱組立体の近位端および遠位端に作用する内向きの力が生じるように外側管状部材と内側軸部材とを相対的に動かすと、その力は展開可能な支柱を折り畳まれた状態から展開された状態へと動かす。その後、支柱組立体を折り畳むときには、展開した支柱を折り畳まれた状態に動かすために、支柱組立体の近位端および遠位端に作用する外側の力を生成するように外側管状部材および内側軸部材を相対的に動かすことができる。医師は、必要に応じてフィルタ組立体を展開しかつ折り畳むために、内側軸部材および外側管状部材の近位端を容易に操作することができる。フィルタ組立体は、外側のシースを必要とせずに組立体を展開しかつ折り畳むための手段を提供する内側および外側の部材の動きによって自己展開することができる。
【0019】
内側軸部材は、血流中に放出され得るあらゆる塞栓細片を捉えるべくフィルタ組立体を病変部分より下流に直接動かすために用いるガイドワイヤとすることができる。内側軸部材はまた、ガイドワイヤが患者の血管系内の位置に押し入れられた後にガイドワイヤに沿って追従可能な、内側内腔を有した細長い管状部材とすることができる。塞栓予防装置の全体は、オーバーザワイヤ法を用いることによりガイドワイヤ上で所望の位置に供給することができる。
【0020】
塞栓予防装置と共に用いるフィルタエレメントは、本明細書に開示されるように多くの様々に異なる好ましい形態を取ることができる。一つの特定の実施例においては、その内部に塞栓予防装置が展開される動脈の直径に展開する近位コーン部分をフィルタが有する。この近位コーン部分は、その遠位端に配設された主要な若しくは中央のフィルタ内へと血流および塞栓細片を一ヵ所に集める。この近位コーンそれ自身は、ろ過を提供し若しくは提供しないことができる。その主要な機能は流れを導くことであり、かつ支柱組立体の展開可能な支柱を折り畳みかつ展開する能力である。主要な若しくは中央のフィルタは、近位コーン部分の遠位端に配設される細長い管状に形成された部材を有することができる。それは近位コーン部分の遠位端と一体であり、かつ塞栓材料を保持するための貯蔵部として作用する大きな濾過領域を提供する。理想的には、それは、塞栓予防装置によってろ過されるべきあらゆるかつすべての塞栓材料を受け入れるように寸法決めされる。それは、血液が通過することは許容するが塞栓材料は保持する、多数の血流開口を有する。中央フィルタは、折り畳み可能若しくは展開可能ではなく、むしろ幾分か堅固に作ることができるとともに、塞栓材料を保持するための貯蔵部を提供するために十分に大きい外径を有するが、それでも患者の血管系内に塞栓予防装置を展開するために用いる特定のガイドカテーテルを通して供給することができる。中央フィルタはまた、折り畳み可能な材料から作ることができるとともに、適切な貯蔵部を提供するために十分に大きい外径を有するが、それでもガイドカテーテルも通して回収することができる。この中央フィルタは、実質的に固定された直径を有することができるが、テーパ状とすることもできるし、かつ装置を展開するために用いる特定のガイドカテーテルの内径に嵌合するのに十分小さな外径を有するべきである。
【0021】
本発明に基づいて作られるフィルタエレメントの全てについて用いることができる材料には、折り畳み可能でありかつフィルタ内に塞栓を捉えることを助けるべく弾性を回復するポリマ材料のような様々な材料が含まれる。他の適切な材料には、フィルタによって捉えるべき所望の寸法の塞栓細片をろ過することができる、撚り合わされた若しくは編まれた生体適合材料が含まれる。フィルタは、適切な材料を計画された形状にブロー成形するとともに不必要な部分を切り離すことによって形成することができる。血流開口は、エキシマレーザのようなレーザを用いて材料に穿設することができるし、若しくは所望の寸法および形状の開口を機械的に穿設し若しくは孔明けすることもできる。レーザによる孔明けは、精度、速さおよび複雑な孔形状、円、楕円およびみぞ穴を穿設する能力を提供する。これに代えて、中央フィルタは、近位コーン部分と同一若しくは異なる材料から作るとともに、一体ユニットを生成するために融合し若しくは接合することができる。
【0022】
本発明に基づいて作られる一つの特定のフィルタにおいては、近位コーンは、展開可能な支柱組立体からの脱落防止を助ける有利な特徴を有する。これらの特徴はまた、患者の血管系から除去するためにフィルタを折り畳んだときに、捉えた塞栓細片がフィルタから絞り出されることを防止する。フィルタは、例えば、支柱組立体上へのフィルタの固定を助けるために支柱の各近位端に取り付けられるように設計された一組の拘束ストラップを有することができる。これらのストラップは、各支柱に巻きつけるとともに適切な接着剤を用いてそこに永久的に取り付けることができるタブを有することができる。フィルタの近位コーン部分はまた、中央フィルタの入口開口を閉鎖するために協動する、多数のくぼみフラップを有することができる。これらのくぼみフラップは、近位コーン上に形成されるとともに、近位コーン部分が支柱組立体によって折り畳まれたときに中央フィルタの開口部を覆うための位置に動く。したがって、開口がこれらのくぼみフラップによって閉鎖されるので、中央フィルタの深い貯蔵部内に捉えられたいずれかの塞栓細片が入口開口を通って吐出されるという可能性が大幅に減少する。同様に、フィルタの近位コーン部分はまた、支柱組立体が折り畳まれたときはいつでも近位コーン部分の大きな入口開口を閉鎖するべく協動する、近位コーン部分の入口開口の近傍に配設された内側に逆さまのフラップを有することができる。これらの要素は、患者から除去するためにフィルタ組立体が折り畳まれるときはいつでも、捉えた塞栓細片の偶発的な漏れを防止する。
【0023】
本発明のこれらのおよびその他の利点は、添付の例示的な図面を参照しつつなされる以下の発明の詳細な説明から、より明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ここで図面を参照すると、図1および図2は本発明の特長を含む塞栓予防装置10を図示しているが、類似の参照符号は図面内の類似の若しくはそれに相当する要素を表している。図1および図2に示されている特定の実施例において、塞栓予防装置10は、展開可能な支柱組立体14およびフィルタ要素16を有したフィルタ組立体12を備えている。フィルタ組立体12は、ガイドワイヤ18のような細長い管状の軸の遠位端上に回転可能に取り付けられている。フィルタ組立体12を作り上げている様々な要素の特定の構造および形状に関する追加の詳細は以下に与えられる。
【0025】
塞栓予防装置10は、患者の動脈20若しくは他の血管内に配置された状態で示されている。動脈20のこの部分は、アテローム性動脈硬化症のプラーク24が動脈20の内壁26に堆積した処置領域22を有している。フィルタ組立体12は、図1および図2に示された処置領域22の遠位側であってかつ下流側に配置されている。図示されてはいないが、バルーン血管形成術カテーテルを通常のセルジンガー法により、ガイドカテーテル(図示せず)を介して患者の脈管構造内に導入することができる。ガイドワイヤ18は処置領域を通して配設されるとともに、バルーン部分が直接処置領域に来るまで動脈20内において膨張カテーテルをガイドワイヤ18上を前進させることができる。膨張カテーテルのバルーンが膨張すると、プラーク24を動脈20の内壁26に対して押し広げて動脈を拡げ、プラーク24の状態における血管の詰まりを減少させる。膨張カテーテルを患者の脈管構造内から取り除いた後、(図2に示されている)ステント25がオーバーザワイヤ法を用いて処置領域22に供給され、動脈20のこの部分を保持して維持するとともに処置領域に生じる再狭窄の防止を助ける。介入的な処置の間に生成されたあらゆる塞栓細片27は、血流中に放出されると処置領域2の下流に配置されているフィルタ組立体12に入る。処置が完了すると、フィルタ組立体12は折り畳まれ、フィルタエレメント16内に捉えた全ての塞栓細片をその内部に取り込んだまま患者の脈管構造から取り出される。
【0026】
展開可能な支柱組立体14の1つの特定な形態が図14に示されている。これらの図から分かるように、展開可能な支柱組立体14は半径方向に展開可能な複数の支柱28を有しているが、これらは図1に示されている圧縮され若しくは折り畳まれた状態から図2に示されている膨張し若しくは展開した状態へと動くことができる。図3は、展開可能な支柱組立体14を形成するために利用可能な一本の管材料30を示している。
【0027】
展開可能な支柱組立体14は、ガイドワイヤ18に回転可能に取り付けられる近位端32と、ガイドワイヤ18に沿って長手方向にスライド自在でその周りに回転可能な遠位端34とを有している。支柱が展開した状態と収縮した状態との間で動くときはいつでも、遠位端34はガイドワイヤに沿って長手方向に動く。近位端32は、減衰部材または減衰要素38として作用するコイルスプリングを有した、短い管状部分若しくはスリーブ36を含んでいる。この減衰要素38の機能は以下に説明されている。管材料30の遠位端34もまた、ガイドワイヤ18上にスライド自在にかつ回転可能に配設された短い部分若しくはスリーブ40を有している。
【0028】
図1、図2および図7を参照すると、展開可能な支柱組立体14の近位端32は、減衰要素38の近位側に配置されたテーパ状取付部品42と近位端32の遠位側に配置されたX線不透過性のマーカーバンド44との間に取り付けられている。テーパ状端取付部品42およびマーカーバンド44は、近位端32をガイドワイヤ18上へ固定してこの近位端のガイドワイヤに沿った長手方向の動きを妨げるが、近位端32およびフィルタ組立体12の回転を許容する。この特殊な構造は、展開可能な支柱組立体がガイドワイヤの周りに自由に回転し若しくは「旋回する」ことを許容する。このようにして、フィルタ組立体12は、塞栓予防装置10が患者の脈管構造内で展開された後にガイドワイヤ18がその近位端において回転させられない限り静止したままとなる。これは、展開可能な支柱組立体14がガイドワイヤ18上で回転し若しくは旋回できるようにガイドワイヤ18上に取り付けるまさしく1つの方法である。これと同じ機能を実行するその他の方法もまた、本発明に使用することができる。
【0029】
展開可能な支柱組立体14の近位端32をガイドワイヤ18に取り付けることの利点は、ガイドワイヤ18が一旦患者の脈管構造内に配置されるとフィルタ組立体12を動脈内で正確に展開する能力を有することにある。近位端32がガイドワイヤに沿って長手方向に動くことができないので、展開可能な支柱がその展開状態に動くことができるように拘束シース46が引き抜かれると、医師はそれを配置したところにフィルタ要素12が正確に配置されることを確実なものとすることができる。さらに、近位端32がガイドワイヤに取り付けられているので、拘束シース46が引き抜かれるときにフィルタ要素にはいかなる動きも生じない。展開可能な支柱28が自己展開材料から作ることができるので、拘束シース46によってその折り畳まれた状態に保持されると、フィルタ組立体12内にはいくらかの蓄積エネルギーが存在し得る。拘束シース46が引き抜かれると、近位端32がガイドワイヤ18に取り付けられていないとすると支柱組立体14の外側への動きを生じさせる摩擦の蓄積があり得る。その結果、支柱組立体14の両端部がガイドワイヤ上に固定されていないとすると、拘束シースが引き抜かれるにつれてフィルタ要素12がそこから弾け出そうとする傾向が生じ得る。その結果、拘束シース46が引き抜かれるとフィルタ組立体12がどれだけ動くかを医師が予め決定することができなくなるので、フィルタ要素12の配置は正確ではなくなる。
【0030】
減衰要素38は、本発明のこの特定の実施例においては支柱組立体14の近位端32に形成されたヘリカルコイルとして示されているが、例えば、介入的な装置がワイヤ上をオーバーザワイヤ法で供給され若しくは交換されるときにガイドワイヤ18に沿って伝達され得るあらゆる衝撃波(振動的な動き)も減衰する。同様に、この減衰要素38は、図2で示すように半径方向に展開可能な支柱がその展開状態に動くことを許容するために拘束シース46が引き抜かれることによって生じるあらゆる衝撃力も減衰する。ヘリカルコイルはまた、ガイドワイヤの柔軟性の保持を助ける取付け方法として作用することができる。減衰要素38はまた、塞栓予防装置を患者の脈管構造から取り除く際に、フィルタ組立体12を折り畳むための復元シース48(図2)が支柱と接触して生成される衝撃を減衰するべきである。その結果、この減衰要素38は、さもなければ展開されたフィルタ組立体12上に作用して組立体12が動脈20の内壁26を擦るようにし若しくは血管に外傷を生じさせる力を吸収して放散させる。この減衰要素38はまた、ガイドワイヤ18に沿って伝達された突然の衝撃の結果として生じる動脈内におけるフィルタエレメントの変位若しくは誤整列を防止する。
【0031】
本発明の好適な実施例に関連して用いられるフィルタエレメント16は、血液がフィルタ16を通って流れることは許容するが塞栓をコーン形状の内側に捉える複数の開口52を有した、テーパ状若しくはコーン形の部分50を有している。フィルタエレメント16は、コーン形状部分50と一体であるとともに支柱組立体14の支柱28が展開されたときに実質的に円筒形状に展開する、短い近位部分52を有している。入口開口51は、あらゆる塞栓細片27がフィルタエレメント16に入って捕捉されるようにする。この短い円筒状部分52はまた、フィルタエレメント16を支柱組立体14の各支柱28に対して接着によって若しくは他の方法によって取り付けるために適切な場所として役に立つ。フィルタエレメント18は、このフィルタの残りの部分と一体であるとともに展開可能な支柱組立体14の遠位端34を形成するスリーブ部分40に取り付けられる、短い遠位円筒状部分54を有している。この遠位円筒状部分54は、接着剤若しくは他の結合技術を用いてスリーブ40に取り付けることができる。
【0032】
再び図1を参照すると、フィルタ組立体12は、支柱28およびフィルタエレメント16に接触してフィルタ組立体12を折り畳まれた状態に維持する拘束シース46の使用によって、その折り畳まれた若しくは圧縮された状態に維持される。図示されてはいないが、ガイドワイヤおよび拘束シース46は患者の体外に延びる近位端を有している。支柱28は、拘束シース46を(その近位端を介して)引っ込めて支柱28を露出させることにより、展開された状態に操作することができる。支柱28は自己展開するので、拘束シース46の取り外しは、支柱28およびフィルタエレメント16が動脈20内で展開状態に動くことを許容する。
【0033】
ガイドワイヤ18は、患者の脈管構造内に塞栓予防装置10を供給する間に有益な、そこに取り付けられた小さな球体56を有している。この球体56は、拘束シース46の内径とほぼ同じ大きさでありかつ「ノーズコーン」として用いられ、患者の動脈を通って供給されるときの塞栓予防装置の「雪かき」を防止する。球体56は、非外傷性であるとともに滑らかな表面を有しており、拘束シース46の遠位端が動脈の壁を「掘る」若しくは「雪かき」させることなしに、塞栓予防装置が患者の脈管構造を通って移動して病変を通過することを助ける。塞栓予防装置10が患者の脈管構造から取り除かれるときには、フィルタ組立体12を折り畳んで復元させるために復元シース48が用いられる。(図2)一般的に、復元シース48は、支柱28が今や展開されているので拘束シース46よりもいくらか大きい内径を有するとともに、支柱組立体14を適切に動かして折りたたまれた状態に戻すためにその遠位端47においていくらか増加された輪強度を必要とする。展開可能な支柱組立体14の折り畳みは、ガイドワイヤ18を保持しつつ、復元シース48の近位端(図示せず)を前方に動かしてシース48の遠位端47を支柱28上に動かすことによって達成することができる。これに代えて、フィルタ組立体12の全体をシース48内に引き込むためにガイドワイヤの近位端を後方に引っ張る間、復元シース48は静止した状態に保持することができる。フィルタ組立体12が折り畳まれると、介入的な処置の間に生じて血流中に入ったあらゆる塞栓細片がフィルタエレメント16の内部で捉えられたままであり、かつ塞栓予防装置10が患者の脈管構造から取り出されるときに血流から引き上げられる。
【0034】
展開可能な支柱組立体14のほぼ長手方向中央に配置されるX線不透過性マーカー58がガイドワイヤ18に取り付けられて、この装置を患者の動脈20内に配置するときの基準マーカーを医師に提供する。
【0035】
展開可能な支柱組立体14上に形成される支柱28の数は、フィルタエレメント16を適切に展開して所定位置に維持するために動脈内において充分な展開性を与える任意の数とすることができる。図1および図2に示した実施例においては、展開可能な支柱組立体は自ら展開する4つの支柱28を有している。同様に、各支柱28の特定の寸法および形状は、本発明の範囲から逸脱することなく変更することができる。この好ましい実施例において、支柱パターンは、逆三角形状の第1部分60、実質的にまっすぐな中央部分62、および支柱を完成させる第2の逆三角形状部分64を有している。この特別な支柱パターンは、支柱が破損し若しくは弱くなる傾向にある領域にこの設計がより大きな強度を与えるので好ましい。これらの領域は、より広い基部を有するように設計された各支柱の近端および遠位端を有している。この特別な設計はまた複合的な支柱組立体がより均一に開きかつ閉じるようにするが、これは患者から取り外すために支柱を折り畳むときに特に有益である。さらに、中央部分62は支柱28がより大きな容積に展開できるようにするが、このことは必要な場合により大きなフィルタエレメントを支柱組立体14上に配置することを可能とする。
【0036】
ここで図4を参照すると、支柱28を形成するために用いられる管材料30の平らにしたシートの平面図が示されている。図5から理解できるように、特別な設計パターンが各支柱28を形成するために管材料30の壁にカットされる。図3に示した実施例においては、そのパターンは、第1の部分60の形成を助ける先端を切り取った菱形形状65と、中央部分62および第2の部分64とを有している。レーザ切断若しくはその他の適切な手段によって管材料30の一部を選択的に取り除くことにより、特定の支柱28をそれぞれ正確な形状、幅および長さに作ることができる。先端を切り取った菱形パターン68は、図4から分かるように反復してその内側に形成される各支柱28に均一な寸法を与える。
【0037】
展開可能な支柱組立体14の他の好適な実施例は、図5および図6に示されている。中央部分がないことを除いて、この特別な支柱組立体14は図3および図4に示したものと同様である。図5および図6に示した支柱68は、第1の部分70および第2の部分72を形成する一対の逆三角形を有している。支柱組立体14を形成するために用いられる管材料30の平らなシートの平面図は、図6に示すように、各支柱28を生成するために管材料に切り込まれる反復した菱形パターン74を示している。同様に、破損若しくは脆弱な傾向となりがちな各支柱の近位端および遠位端の近傍により大きな強度が与えられるので、この特別なパターンは好ましい。この特別なパターンを管材料にカットするときには、図3乃至図4若しくは図5乃至図6に示されたパターンであるにせよまたはいくつかの他のパターンであるにせよ、支柱組立体14の近位端32を形成するスリーブ36を、支柱組立体14上に減衰要素38を形成するヘリカルコイルを作成するためにその後で同様にカットすることができる。
【0038】
本発明の他の実施例が、図9乃至図11に示されている。図9から分かるように、塞栓予防装置100は、展開可能な支柱組立体104および独特なフィルタ要素106を有したフィルタ組立体102を有している。この塞栓予防装置100に用いられる特有な支柱組立体104は、前述した実施例に示される展開可能な支柱組立体14の構造と同様である。フィルタ要素106は、以下により詳細に記載するが、あらゆる塞栓細片を集めて患者の血流から取り除くために展開された状態で用いられる。
【0039】
この塞栓予防装置100の特有な実施例を作り上げている様々な要素は、図10に示されている。この独特な実施例においては、前述した実施例で開示された支柱組立体14のように、支柱組立体104は必ずしも自己展開材料から作る必要はない。むしろ、収縮した状態と展開された状態との間で支柱108を動かすために支柱組立体104の近位端110および遠位端112上に外部からの軸線方向力の負荷を必要とする、ステンレス鋼若しくはその他の材料から作ることができる。図10および図11に示すように、組立体104の近位端110は、短い管状若しくはスリーブ状の部分114および同様の遠位セグメント116を有している。支柱108は、支柱組立体104の近位端110および遠位端112に内向きの力を負荷することにより、収縮した状態から展開された状態に動く。このことは、まず最初に、組立体104の遠位端112をガイドワイヤ118に直接取り付けることによって達成することができる。支柱組立体104の近位端110は、その後、ガイドワイヤ118とともに患者の体外に延びる近位端を有した外側管状部材120に取り付けられる。外側管状部材120およびガイドワイヤ118の両方の近位端(図示せず)は医師が操作することにより、支柱組立体104の2つの端110および112上に内向きの軸線方向力を与えて支柱108を展開状態に動かし、若しくは両端110および112上に外向きの軸線方向力を与えてその折り畳み状態に支柱108を折り畳むことができる。
【0040】
支柱組立体104の支柱108は管材料(ハイポチューブ)から作ることができるが、管材料の選択された部分が取り除かれて各支柱を特有な寸法および形状に形成する。支柱組立体104はまた、必要に応じてニッケルチタン(NiTi)のような自己展開材料から作ることができる。次いで支柱108は、支柱組立体104を展開し若しくは収縮させるべく近位端110を動かすために用いる外側管状部材120によって、展開可能な支柱108を付勢する方法に応じて折り畳まれた状態若しくは展開された状態に付勢される。また、図10に示した実施例においては、支柱108は図14の実施例に示される支柱28と同様の形状を有している。塞栓予防装置のこの特別な実施例は、したがって、塞栓予防装置を展開しかつ収縮させるために必要な拘束シースおよび復元シースを利用する必要性を排除する。しかしながら、この特別な設計は、いくらか回転することができるが、前述した実施例のようにフィルタ組立体102がガイドワイヤ118に沿って自由に回転することは許容しない。しかしながら、塞栓予防装置110が患者の脈管構造内の所定位置に置かれた後に介入的装置が外側管状部材上をオーバーザワイヤ法で供給することにより、これらの外側管状部材120およびガイドワイヤ118は同様に用いられる。
【0041】
留意されるべきことには、支柱組立体104はまた、支柱108を展開状態に付勢した状態に維持する自己展開材料から作ることができる。外側管状部材120は、展開された支柱108を折り畳まれた状態に戻すべく動かすために依然として利用される。外側管状部材120およびガイドワイヤ118の近位端は、患者の脈管構造内で展開される準備ができるまで支柱組立体104をその折り畳まれた状態に維持するために、外側管状部材をガイドワイヤに対して動かすために利用可能な(図39および図40に示されている)単純な係止機構600に取り付けることができる。さらに理解されるべきことには、この特別な塞栓予防装置100はまた、外側管状部材120を排除するとともに図12に示した実施例と同様に自己展開型の組立体とするために変更することができる。そのような場合、支柱組立体104の近位端110をガイドワイヤ118に回転自在に取り付けるとともに遠位端112をガイドワイヤ上にスライド自在に取り付けて、ガイドワイヤ118に対して長手方向の動きおよび回転方向の動きを許容する。
【0042】
この特別な実施例に関連して用いられる、若しくは本願明細書に開示される他の任意の実施例と共に用いることができるフィルタエレメント106は、フィルタ106に捉えることができるあらゆる塞栓細片を集めて保持するための大きな貯蔵部を提供するために、ユニークな形状を有している。ここで図9乃至図12を参照し、フィルタエレメント106の様々な部分をより詳細に記載する。留意されるべきことには、図22のフィルタエレメント122は、図10乃至図12に示されるフィルタエレメント106と同じフィルタ部分の多くを有している。したがって、これらのユニークなフィルタエレメントの基礎をなしている原理をより良く理解するために、これらのフィルタの相当する部分が同時に記載される。両フィルタエレメントは、動脈の直径内に嵌合するように展開する近位コーン部分124を有している。この独特の近位コーン部分124は、血流および塞栓細片を遮断して主要な若しくは中央のフィルタ126に集める。図9および図22に示されるフィルタエレメントの両方において、近位コーン部分124は塞栓細片の濾過に用いる複数の開口128を有している。しかしながら、血流および塞栓細片を直接中央フィルタ126に導くようにするために、近位コーン部分124上の開口128を取り除くことは可能である。この中央フィルタ126は近位コーン形状部分124と一体であり、かつ血流がフィルタのこの部分を通ることは許容するが開口128の寸法より大きいいかなる塞栓細片をも保持するために用いられる多数の開口128を有している。開口128は、中央フィルタ126をレーザでカットすることにより若しくは他の方法で貫設することができる。この中央フィルタ126は、実質的に円筒状の形状を有すると共に塞栓細片を保持するための大きな貯蔵部として作用する。理想的には、塞栓物質で完全に一杯になるとより小さな輪郭に折り畳めないように寸法取りされる。しかしながら、その内部に捉えた塞栓細片によって一杯に展開された状態のときに、(図示されない)ガイドカテーテル内に回収することもできる。したがって、この中央フィルタ126を最大に展開したときの外径は、患者の脈管構造内において塞栓予防装置100を展開するために用いる案内シースの内径よりも小さくなければならない。中央フィルタは、その形状および外径を維持して使用の後にこのフィルタが折り畳まれることを防止する、より固いポリマ材料から作ることができる。その結果としてのより固い中央フィルタは、捉えた塞栓細片が中央フィルタの貯蔵部部分から絞り出されることを防止すべきフィルタ組立体の折り畳みおよび動脈からの取り外しの間に、押しつぶされることがない。
【0043】
フィルタ106および122は共に、ガイドワイヤ118の軸までテーパ状に細くなる遠位テーパ領域130を有している。フィルタエレメント106および122の特定の領域のテーパは、塞栓予防装置100の供給を容易にするとともに患者の脈管構造を通した供給の際に「雪かき」効果の防止を助ける。フィルタエレメントの一部を形成するとともにフィルタの遠位端をガイドワイヤ上に直接取り付けるために用いられる、小さな遠位部分132がある。この遠位部分132は、それをガイドワイヤ118に永久的に取り付けるとともにあらゆる塞栓細片がこの遠位部分132の遠位側開口から流出しないようにするために、周知の接着剤若しくは他の接合技術を用いて固定することができる。
【0044】
近位コーン部分を有した大きな中央フィルタを用いることの主な利点は、塞栓予防装置100が患者の脈管構造から取り出すときに捉えた塞栓細片が絞り出されそうにない、中央フィルタ126によってもたらされる大きな濾過面があることである。図22から分かるように、中央フィルタ126は全体的に円筒状の形状を有しているが、図9の中央フィルタ126は全般的に円筒形状であるが独特な外観デザインを生じさせる側面ひだ134を有することができる。フィルタエレメント106の中央フィルタ126に特有な断面形状は図16に示されているが、中央フィルタ126を形成するために用い得る多数の異なる形状のうちの1つを示している。使用の際には、図22のフィルタエレメント122は、接着剤若しくはその他の接合技術を用いて支柱組立体104およびガイドワイヤ118に取り付けられる。
【0045】
図9のフィルタエレメント106はまた、図22のより基本的なフィルタ設計には示されていないいくつかの独特な特徴を有している。これらの利点には、支柱組立体104の支柱108にフィルタエレメント106をしっかりと取り付けたままとするためのその他の特徴に加えて、図16に示されている中央フィルタ126の独特な断面形状が含まれる。また図10乃至図12を再度参照すると、フィルタエレメント106は、コーン部分124の端部の近位側にある短い外側リム136を含むとともに、血流および大動脈内に放出されたあらゆる塞栓細片を受け入れる大きな入口開口125を有している。この近位側の外側リム136は環状に形成されており、かつ組立体104の支柱108上にフィルタを取り付けるために利用することができる。図10から分かるように、この近位外輪は、各支柱108の中央部分138に取り付けられるとともに支柱108に巻きついて取り付くことができるタブ123を有している。この近位外輪136はまた、患者の動脈内で展開したままとならなければならない円形の入口開口125の維持を助ける。外側リム136の前方に取り付けられているものは、組立体104の支柱108上にフィルタを保持するために用いられる拘束ストラップ142である。各拘束ストラップ142は、各支柱の周りに巻きつけた後に接着剤のような接合剤を用いてそこに取り付けることができるタブ状の突出部144を有している。これらの要素は、拘束ストラップ142が支柱組立体104上にフィルタエレメント106を保持させるようにする。留意されるべきことは、これらの拘束ストラップ142と協動して組立体104上にフィルタを固定するために、任意の数のタブ状突出部144を用いることができることである。各拘束ストラップ144の近位端は、支柱組立体104の近位端110に形成されている管状部分114に接着によって固定可能なスリーブ146に取り付けられている。フィルタ106のこれらの様々な部分は、1つの複合ユニットとして作ることができるし、予め形成されたフィルタ素材にパターンを切り込むことにより形成することもできる。その後、フィルタエレメント106の長さに沿って開口128をしかるべく配置することができる。
【0046】
図9に示したフィルタエレメント106の近位コーン部分126は、近位コーン124が折り畳まれた状態にあるときに中央フィルタ126の開口を閉鎖するために用いる、複数のくぼみフラップ148を有している。これらのくぼみフラップ148は、図11、図17および図18に示すように、近位コーン部分124が閉鎖されるとこれらのフラップが一体に結びついて協動し、塞栓細片が中央フィルタ126の入口開口127から放出されることを防止するための障壁を形成するように作成されている。図9に示した特定の実施例においては、中央フィルタ126の開口を閉鎖するための必要な障壁を形成するために4つのそのようなくぼみフラップが用いられている(それらのうちの2つのみが図11、図17および図18に示されている)。しかしながら、くぼみフラップ148の数および各フラップ148の寸法および形状は、患者からの取り出しのために装置100を折り畳んだときに捉えた塞栓細片が中央フィルタ126から流出することを防止する保護障壁を形成するべく、変更することができる。
【0047】
ここで図19、図20および図21を参照すると、くぼみフラップ148の変形例がフィルタエレメント106の近位コーン部分124に示されている。これらの図面から分かるように、近位コーン部分124内に配置されるとともに、フィルタ組立体が折り畳まれたときにフィルタエレメント106の入口開口127を閉鎖するための機構として用いられる、複数組のフラップ部分150がある。これらのフラップ部分150はくぼみフラップ148と全く同様に、近位コーン部分124が折り畳まれるとこれらのフラップ部分150がフィルタエレメント106の入口開口127を横切って延びて、捉えた塞栓細片が放出されて血流中に戻ることを防止する障壁を形成するように動作する。これらのフラップ部分150は、フィルタが展開されたときに入口開口を横切って延びるがフィルタエレメント106内に血流が入り込むことを妨げない、小さく適切に形成された片とすることができる。血液は単純に塞栓細片とともにフラップ部分150の周囲を移動して中央フィルタ126内に入り込み、塞栓細片は細片貯蔵部内に捉えられる。この特徴は、塞栓予防装置100を折り畳んで患者の脈管構造から取り出すときに起こり得る捉えた塞栓細片の放出を減少させるための予防手段を提供する。
【0048】
ここで図14および図15を参照すると、フィルタエレメント106を固定するために用いる拘束ストラップおよびタブの他の形態が示されている。これらの特定な図面においては、拘束ストラップ152が各支柱108に沿って延びるとともに、各支柱108に拘束ストラップを取り付けるためのタブ状の突出部154が用いられている。使用の間にフィルタエレメント106が支柱組立体104から離れることを防止するために、各拘束ストラップ152から横方向に延びる追加の横方向の紐掛け部材156を用いることができる。これらの様々な設計は支柱組立体104上にフィルタエレメント106を取り付ける他の方法を示している。理解されるべきことは、支柱組立体104にフィルタエレメント106を取り付けるために、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくさらに他の形態を用い得ることである。
【0049】
本発明のその他の好適な実施例は図23および図24に示されている。この特定の実施例においては、塞栓予防装置200は支柱組立体204およびフィルタエレメント206を有したフィルタ組立体202を備えている。支柱組立体204は、図14内に示される支柱組立体と同様である。それは、折りたたまれた状態から完全に展開された状態まで展開可能な自己展開する支柱208を有している。支柱組立体204は、近位端210および遠位端212を有している。支柱組立体204は管材料の一片から作ることができるが、これらの支柱は管材料の一部を選択的に取り除くことによって形成される。この特定の実施例においては、管材料をニッケルチタン(NiTi)のような形状記憶材料から作られるハイポチューブとすることができる。その結果としての支柱組立体204は、展開された状態を維持するように通常的に付勢されるとともに、折りたたまれた状態に支柱208を配置するためには端210,212上への力の負荷を必要とする。
【0050】
近位端210が管材料214の一部を有するとともに遠位端212も同様に管材料216の一部を有している。遠位端212は、ガイドワイヤの遠位コイル220の近傍においてガイドワイヤ218に永久的に取り付けられる。遠位端212は、接着剤若しくは溶接、ろう付け若しくはハンダ付けを用いてガイドワイヤ218に接合することができる。同様に、支柱組立体204の近位端210は、患者の体外に延びる近位端を有した細長い外側管状部材222に接合し、溶接し、ろう付けし若しくはハンダ付けすることができる。細長い管状部材222およびガイドワイヤ218の近位端は、フィルタ組立体202を開閉するために医師が操作することができる。支柱組立体204を折り畳んだ若しくは閉鎖した状態に維持するための適切な係止機構600が、図43および図44に開示されるとともに後により詳細に記述される。
【0051】
フィルタエレメント206は、各支柱208の中央部分226に取り付けられるコーン形状部分224を有している。複数の開口228が、レーザでカットされ若しくは他の方法でフィルタ206に形成されているが、これらは血液がフィルタを通って流れることは許容するが開口の寸法より大きい塞栓細片は捉える。これは、本発明に基づいて作ることができる塞栓予防装置の変形例の更なる実施例である。
【0052】
本発明の他の実施例は、図25乃至図28に塞栓予防装置300として示されている。他の実施例と同様に、この装置300は展開可能な支柱組立体304およびこの支柱組立体304に取り付けられるフィルタエレメント306を有したフィルタ組立体302を備えている。各支柱308が、患者の脈管構造内においてフィルタエレメント306を展開状態に動かすために支柱組立体304上に形成されている。支柱組立体304は、支柱組立体304を折り畳みかつ展開するために外側の細長い管状部材310をガイドワイヤ312と関連させて用いる点において、前述した実施例と幾分似ている。図25および図26は示されないが、フィルタ組立体302を展開し若しくは折りたたむために医師が近位端を動かすことができるように、外側管状部材310はガイドワイヤの近位端と共に患者の体外に延びる近位端を有している。支柱組立体304は、各支柱308を作成するために、外側管状部材310の遠位端近傍から材料を選択的に取り除くことによって形成することができる。これらの支柱は、各支柱308の端に内向きの力が負荷されると開く。あるいは、支柱組立体304は、本発明の前述した実施例のいくつかに示されているように外側管状部材310に取り付けることができるハイポチューブの一片から作ることができる。外側管状部材310の全体は支柱組立体304と共にガイドワイヤ312に沿ってスライド自在であり、オーバーザワイヤ法によってフィルタ組立体302が患者の脈管構造内に配置されることを可能とする。
【0053】
図25乃至図28から分かるように、ガイドワイヤ312の遠位コイル322の近傍にストッパ要素320が配置されている。この遠位ストッパ要素320は、支柱308を展開状態に拡げるために必要な力を生じさせるべく、外側管状部材310と共に用いられる。塞栓の予防装置300は、以下のように利用することができる。最初に、医師は病変若しくは治療領域を通り過ぎた位置にガイドワイヤ312を動かし入れる。その後、外側管状部材310は支柱組立体304と共にオーバーザワイヤ法によってガイドワイヤ312上を前進する。塞栓予防装置300は、ガイドワイヤ312上でガイドワイヤの遠位端313に供給されるまでの間、図27に示されるように折り畳まれたままである。その後で、医師は外側管状部材310の遠位スリーブ313が、ガイドワイヤ312上に配置されているストッパ要素320と接触するようにする。細長い管状部材310の近位端に力を追加して負荷することにより、医師は動脈内における展開のために支柱308を半径方向外側に拡げる。その結果としての支柱308の展開は、動脈内においてフィルタエレメント306を開かせる。次いで、医師は治療領域に介入的な細片を供給して病変上に処置を施す。介入的な処置の間に生じ得るあらゆる塞栓細片がフィルタ306の内部に集められる。
【0054】
図43および図44に示されているような、外側管状部材およびガイドワイヤの近位端に配置されている単純な係止機構600を、支柱組立体304を動かして展開状態に保つために用いることができる。その後、塞栓予防装置300の脈管構造からの取り除きが望まれると、医師は単に外側管状部材310の近位端を引き込んで支柱組立体304上への力を取り除いて支柱308が折り畳み状態に戻るようにする。その後、塞栓予防装置300およびガイドワイヤ312を患者の脈管構造から取り除くことができる。
【0055】
フィルタエレメント306は、その主要部分が血管形成術に用いる展開バルーンの半分の形状を有している点において、前述したフィルタエレメントとは幾分異なった形状を有している。塞栓細片を捉える間の血液灌流をもたらすための血流開口313がフィルタエレメント306上に配置されている。フィルタエレメント306の近位端は、支柱308の近位側にある外側管状部材310に取り付けられる近位スリーブ316に延びる、複数の拘束ストラップ314を有している。フィルタエレメント306の遠位端318はまた、支柱308が形成されるときに外側管状部材310上に形成される遠位スリーブ321に取り付けられる。
【0056】
図29および図30は、本発明に基づいて作られた塞栓予防装置400の他の実施例を示している。この特定の実施例は、支柱の外側への展開および内側への縮小を容易にするために支柱組立体の支柱の端に外力が生じる点において、前述した実施例と幾分似ている。特に図29を参照すると、塞栓予防装置400は、フィルタエレメント406がそこに取り付けられる支柱組立体404を有したフィルタ組立体402を備えている。各支柱408はそれぞれ、内側管状部材414の遠位端413に取り付けられる遠位端412を有した外側管状部材410上に形成されている。内側部材414および外側部材410の両方が患者の脈管構造の外に配置される近位端を有している。支柱408は、支柱を外側に展開させるために必要な軸線方向力を負荷するために内側管状部材414に対して外側管状部材410を動かすことによって半径方向に展開される。装置を患者の脈管構造から取り除くときには、支柱408を折りたたみ状態に動かすために反対方向の軸線方向力が必要である。この実施例においては、動脈420内でフィルタエレメント406を展開するために4つ以上の支柱408が用いられている。また、支柱408の数、寸法および形状は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更することができる。
【0057】
フィルタエレメント406もまた、フィルタを通って血液が流れることは許容するが所望の寸法の塞栓細片は捉える開口416を有した、血管形成術に用いられる展開バルーンの半分の形状を有している。入口開口417を有するフィルタエレメント406の近位端は、支柱408の各中央部分418に取り付けられている。フィルタ406の遠位端420は、支柱組立体404の遠位端412に取り付けられている。
【0058】
内側管状部材414の管腔422は、動脈内に配置されたときに展開したフィルタ組立体402を血液灌流が通過するように、多数の目的のために用いることができる。したがって、フィルタを通って血液が流れることを妨げる細片によってフィルタエレメント406の開口416が詰まったときには、酸素を与えられた血液が内側管状部材414の内側管腔を通って下流の血管に灌流することができる。この管腔はまた、塞栓予防装置404をガイドワイヤ上でオーバーザワイヤ法により供給するために用いることができる。
【0059】
図31および図32は、本発明と共に用いることができる、前述したフィルタエレメントの変形例を示している。このフィルタ塞栓予防装置400は、フィルタエレメント430の設計が異なる点を除いて図29および図30に示された装置と基本的に同じである。図31から分かるように、フィルタエレメント430は、フィルタエレメント430の入口開口432の前方に延びる近位コーン形状部分431を有している。このタイプのフィルタ430は、支柱組立体404への取り付けが容易であるという利点を有している。さらに、動脈の壁が拘束ストラップ434によって支柱408から隔離される。この装置はまた小さな輪郭であるという利点を有するとともに、任意のガイドワイヤを用いることができ、加えてガイドワイヤを交換することもできる。この特定の実施例は、前述した実施例と同様に、オーバーザワイヤ法による介入的な装置の交換を可能にする。
【0060】
ここで図33乃至図38を参照すると、支柱組立体の支柱を展開するために異なる機構を用いる、本発明の2つの異なる実施例が示されている。図33においては、展開可能な支柱組立体504およびフィルタエレメント506を有したフィルタ組立体502を備える塞栓予防装置500が示されている。その他の実施例と同様に、支柱組立体504は、フィルタエレメント506を患者の脈管構造内において展開状態とするために用いる半径方向に展開可能な複数の支柱508を有している。半径方向に展開可能な支柱508を展開するための機構は、展開可能な支柱組立体504を作り上げている各支柱508に取り付けられた、複数の自己展開する配置部材510を用いる。自己展開する部材510はニッケルチタン合金のような自己展開材料から作られるが、それは非常に小さな輪郭に圧縮されるとともにむしろ大きな展開状態に展開されて、支柱508およびフィルタ506を一杯に展開された状態に動かす。図33および図34に見られるように、各支柱508に沿って配置された多数の展開部材510がある。各支柱508の近位領域に沿って配置された、展開部材510の近位側の組512がある。各ステント508の中央部分に配置された、展開部材510の中央の組514がある。図34から分かるように、フィルタエレメント506による被覆は中央の組514から始まっている。展開部材510の第3すなわち遠位側の組516は、各支柱の展開を高めるためにフィルタエレメント506が配置されている領域において支柱上に配置されている。
【0061】
図37から分かるように、各展開部材510は基本的に、一杯に展開されたときに最終的な寸法に展開する自己展開材料の折り畳み可能な一片となっている。図38は、支柱508に沿って配置されたとおりの展開部材の中央の組514および遠位側の組516の端面図である。展開部材510の各組は、展開部材の組が一杯に展開されたときに協働して形成する「リング」の4分の1周に展開する。この特別な構造を使用することの結果としてフィルタエレメント506は完全に展開し、塞栓予防装置500が患者脈管構造内で展開したときに動脈の壁と接触する円形の開口507を維持する。
【0062】
この特別な塞栓予防装置500の第1の実施例においては、展開可能な支柱組立体504の遠位端518はガイドワイヤ520に永久的に取り付けられる。支柱組立体504の近位端522は、翻って、ガイドワイヤの近位端とともに患者の脈管構造の外に延びる(図示されない)近位端を有した細長い外側管状部材524に取り付けられる。塞栓予防装置500は、単に外側管状部材524の近位端を引っ込めて支柱組立体504の端に外向きの力を与えることにより、図35に示すようにその折り畳み状態に動かすことができる。支柱組立体504の端に負荷する力は、各支柱508が折り畳み状態に戻るようにする各展開部材510を折り畳むために充分なものでなければならない。他の実施例と同様に、支柱508が一度その折り畳み状態に置かれるとフィルタエレメント506も同様に折り畳まれ、フィルタエレメント506内に先に捉えたあらゆる塞栓細片をその内部に閉じ込める。
【0063】
ここで図36を参照すると、図33に示したものと同様な塞栓予防装置の他の実施例が開示されている。この特定の塞栓予防装置530は、前述した実施例で示したように同じフィルタ組立体502および支柱組立体504を用いている。塞栓予防装置530の支柱組立体532における相違点は、この支柱組立体532から展開部材510の近位側の組512が取り除かれていることである。 一方、フィルタ組立体534は前述した装置500のフィルタ組立体502と実質的に同じものである。
【0064】
支柱組立体534の遠位端518はまた、この特定の実施例においてはガイドワイヤ520に永久的に取り付けられている。この特別な支柱組立体534の近位端は、展開状態から折り畳み状態およびその反対方向に動くときに、ガイドワイヤに沿って長手方向に自由に動くことができる。フィルタ組立体532を展開するための機構は、展開部材510上に力を掛けて拘束シース536が引っ込められるまでそれらが展開することを妨げる拘束シース536である。塞栓予防装置530が患者の脈管構造内の適切に所定位置に来ると、拘束シース536の近位端(図示せず)が引っ込められて、展開部材510が支柱508を開くとともにフィルタエレメント506が動脈内において完全に展開された状態となるようにする。装置が患者の脈管構造から取り除かれるべきときには、拘束シース536が支柱508の近位側の領域535に配置されるとともに、支柱の上に引き込まれて展開部材510がその折り畳み状態に戻るようにする。その後、フィルタエレメント506内に捉えられたあらゆる塞栓細片を保持して患者の脈管構造から安全に取り除く。展開部材510の近位側の組は、近位側の領域535において支柱に負荷される展開方向の力の量を減少させる必要があるので、この特別な実施例に関しては使用しなくともよい。しかしながら、シースがこの領域において支柱を折りたたむための充分な強度を有しているならば、この近位側の領域535に展開部材の第1の組を配置することは依然として可能である。
【0065】
図33乃至図38に示したフィルタエレメント506は、そこを通って血液が灌流することは許容するが塞栓材料は捉える網目組織の材料から作られている。網目組織材料は、所望の寸法の塞栓を捉える小さな寸法の開口を有した任意の織り混ぜられた織物から作ることができる。これに対して、フィルタ506はその中に見出される血流開口を有したポリマ材料から作ることができる。
【0066】
ここで図39A,図39Bおよび図40を参照すると、本発明に基づいて作られた任意のフィルタ組立体と共に用いることができる他の支柱組立体550が示されている。この支柱組立体550は、支柱552を展開状態に拡げるために用いる支柱552および展開部材554を有している。この展開部材554は、一旦完全に展開されると最終的な寸法に展開する自己展開材料から作ることができるので、前述した展開部材と同様に作用する。展開部材554はまた、展開部材554を折り畳まれた状態に保つために組立体上に外力を負荷したときに、未だ展開していない状態に折り畳むことができる。図39A、図39Bおよび図40から分かるように、展開部材554は、組立体550の支柱552に取り付けられる、頂556および谷558からなる蛇行パターンを有している。本発明のこれらの特定の実施例においては、展開部材554は、支柱552の端に取り付けられる頂556および谷558を含む正弦波パターンを有している。この特別なパターンは、支柱が互いにオフセットし若しくは互い違いになって組立体550が小さな輪郭に折り畳まれるようにし、より隙間のない病変に達するとともに遠位側の解剖学的組織にもうまく入り込む能力を向上させる。互い違いの支柱設計はまた組立体の柔軟性を増加させ、組立体を患者の解剖学的組織内において動かす能力を向上させる。フィルタエレメントは、複合体のフィルタ組立体を生成するために支柱552の上若しくは内側に同様に配置することができる。展開部材554は、完全な血管壁反力をもたらして、血管壁にフィルタ縁のシールを押し付ける。展開部材554は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなしに複数の幾何学的形状を有することができる。この特定の支柱組立体550も、互い違いに設計された支柱を含むレーザー光線を当てたハイポチューブから生成することができる。支柱の数は、支柱の特定の長さに合わせて変更することができる。これに対して、展開部材554は、支柱から分離した材料の一片から作ることができるとともに、ハンダ付け、ろう付け若しくは適切な接着剤を用いた接合のような方法を用いて取り付けることができる。図39Aおよび図39Bから分かるように、展開部材554の頂556および谷558に対する支柱552の取り付けは変更することができる。これらの特定の設計の両方が、支柱組立体を小さな輪郭に折り畳めるようにする。
【0067】
ここで図41および図42を参照すると、拘束シース内への塞栓予防装置の装填および取り出しを助けるために用いる、角を付けたフィルタ縁572を有した代わりのフィルタエレメント570が示されている。このフィルタエレメント570は、このフィルタエレメント570が、塞栓細片のろ過に用いる複数の開口576を有した中央部分574を有している点で、前述したフィルタと類似している。フィルタエレメント570は、先のとがった頂578および谷580を有する、王冠に類似して構成された縁572を備えている。フィルタ縁572のこの構造は、拘束シース内にフィルタが徐々に導入されるようにして、シース内に材料が突然入り込むことを防止する。図41および図42から分かるように、縁572は幾分正弦波状の形態を有しており、フィルタの谷領域580への応力集中を減少させている。フィルタ要素570の頂578は、支柱組立体584の支柱582に合わされている。頂578の数は、支柱組立体584上の支柱582の数に合わせて変更することができる。この特定の実施例においては、フィルタエレメント570を支柱組立体584の内側に配置することができるし、若しくは、これに対してフィルタを組立体584の外側に配置することもできる。理解されるべきことは、本願明細書に記載されている他のフィルタエレメントを、特定のフィルタ組立体と共に用いる支柱組立体の内側若しくは外側に置き換えることができるということである。支柱組立体584が装填され若しくは取り戻されにつれ、フィルタエレメント570の頂578は最初に拘束シースに入る。このことは、フィルタ材料の全部が同時にシース内に入ることを防止して、フィルタエレメント570が徐々にかつ次第にシース内に装填されるようにする。さらに、図42に示されている寸法AおよびBは、フィルタ縁572の正弦波のパターンにおける谷の深さの差異を示している。このことは、形状の変化をもたらす。1つの可能な構造はA=B=0である。さらに、シース内へのフィルタの装填が滑らかなものとなるようにB>A>0である。この特別な構造は、谷580の全部が同時にシース内に入ることを排除し若しくは実質的に排除する。フィルタ縁572は、開口576を有することもできるし有しないこともできる。頂578はまた、様々な高さを有することができる。図42に示されている寸法C、DおよびEは、フィルタ縁572の正弦波パターンにおける頂の高さの相違を示している。この特定のパターンもまた様々な形状をもたらす。1つの可能な形状はC=D=E=0である。さらに、谷580の深さに応じて、若しくは応じることなくE≧D≧C≧0である。
【0068】
ここで図43および図44を参照すると、本願明細書に記載されているフィルタ組立体を展開しかつ折りたたむための単純な係止機構600が示されている。これらの特別な機構は、支柱組立体を展開状態若しくは折り畳み状態に動かすために塞栓予防装置が内側軸部材および外側管状部材を用いるときはいつでも有用である。最初に図43を参照すると、外側管状部材604の近位端602が、塞栓予防装置を展開若しくは展開されていない状態のいずれかにロックするために用いることができるロック機構600と共に示されている。ロック機構600は、外側管状部材604の壁にカットされた細長いみぞ穴606を有するとともに、第1のロック位置608および第2のロック位置610を有している。内側軸部材612は、ガイドワイヤのような中実の軸若しくは中空の管状軸とすることができるが、細長いみぞ穴606内で動く引き上げられたダボ614を有している。この引き上げられたダボ614は、第1のロック位置608若しくは第2のロック位置610に動いてフィルタ組立体を展開状態若しくは非展開状態に保つことができる。理解されるべきことは、この特定の実施例においては2つのロック位置だけが示されているが、ユーザがいくつかの展開位置を持つことを望む場合には多数の異なるロック位置を用いることが可能であるということである。フィルタ組立体が自己展開する場合には、内側および外側の部材を押し引きする着脱可能なハンドルを用いることができる。このハンドルは、組立体を閉じた状態に保持するために内側および外側の部材を押し/引きし、次いでその他の介入的な装置が内側管状部材上を通過できるように取り外される。その後、このハンドルは、フィルタ組立体を折り畳んで取り除くために内側および外側の部材の近位端に取り付け直される。
【0069】
外側管状部材の近位端602は内側軸部材612がそうであるようにローレット掛616の小さな部分を有しており、これらの装置の近位端をつかんで操作するときに医師に対して掴むための表面を提供する。ロック機構600はまた、引き上げられたダボ614を第1のロック位置608の近傍に保つ外向きの力で内側軸部材612を付勢するために、外側管状部材604の内側管腔620内に配置された付勢ばね618を有することができる。この付勢機構は、外側管状部材の近位端に配置された肩領域621と内側軸部材612上に配置されたカラー622とを有している。ばね618の力は、第1のロック位置608に若しくはその近傍にダボ614を保つための役に立つ。そのような機構は、展開される準備ができるまで展開しない状態に保たれるようにこの装置が設計されているときに好ましい。使用のために準備ができるまで未だ展開してない状態にフィルタ組立体を保持することは有益である。展開された状態のままとされた場合にフィルタ組立体に損傷が生じる可能性があるからである。フィルタ組立体が展開されもしくは拡げられた状態に置かれることが望まれるときには、医師は単に内側軸部材の近位端を掴むとともにダボ614が第2のロック位置610に置かれるまでそれを後方に引くだけである。支柱組立体が自己展開する要素から作られているときには、付勢ばね618を設ける必要がないかもしれない。支柱組立体上の支柱がいくらか付勢ばねに似た作用をしてフィルタ組立体を展開された状態に保つからである。
【0070】
本発明の支柱組立体はさまざまな方法で作ることができる。しかしながら、支柱組立体を作る好ましい方法は、ニッケルチタン製のハイポチューブのような薄い壁の管状部材をカットして、各支柱のための所望のパターンに管材料部分を取り除き、各支柱を形成する管材料部分を相対的に触れないままにしておくことである。機械制御されたレーザによって所望のパターンに管材料をカットすることが好ましい。
【0071】
支柱組立体を作るために用いる管材料は、ステンレス鋼のような適切な生体適合材料から作ることができる。ステンレスの鋼管は、合金タイプとすることができる:316L SS、特殊化学分野 ASTM F138−92 若しくはASTM F139−92 グレード2。特殊化学分野 タイプ316L ASTM F138―92若しくはASTM F139−92「外科手術用移植片のためのステンレス鋼」(重量パーセント)
【0072】
支柱の寸法は通常非常に小さいので、それを作る管材料もまた必然的に小さな直径を有しなければならない。典型的に、管材料は非展開状態において約0.020〜0.040インチのオーダーの外径を有する。管材料の肉厚は約0.076mm(0.003〜0.006インチ)である。例えばPTAのような身体管腔内に移植される支柱組立体においては、管材料の寸法がそれに対応してより大きくなり得る。レーザカットした管材料から支柱組立体を作ることが好ましいが、平らな薄板をレーザカットした後に円筒状に巻き上げるとともに円筒状の部材を形成するために長手方向の縁部を溶接して支柱組立体を形成することは当業者の理解するところである。
【0073】
一般的に、レーザに対して管材料を位置決めするために機械制御される装置の回転可能なコレット取付具にハイポチューブを取り付ける。機械的にコード化された命令に従って、機械制御されるレーザに対して管材料が回転されかつ長手方向に動かされる。レーザがアブレーションによって管材料から選択的に材料を取り除くと、パターンが管材料にカットされる。したがって、管材料は仕上がった支柱の個別的なパターンにカットされる。このようにして、ステントがレーザカットされるのと全く同様に支柱組立体をレーザカットすることができる。管材料をどのようにしてレーザカットするかの詳細は、Advanced Cardiovascular Systems, Inc.に譲渡された米国特許第5,759,192号(Saunders)および米国特許第5,780,807号(Saunders)に見い出されるが、それらの全体はこの参照によって本願明細書の開示に含まれるものとする。
【0074】
支柱組立体のためのパターンを管材料にカットするプロセスは全般的に、管材料の装填および取り外しを除いて自動化される。例えば、管材料を軸線回りに回転させるためにCNC対向コレット取付具を、記載したような機械制御レーザに対して管材料を軸線方向に動かすためのCNC X/Yテーブルと共に用いることによって、パターンを管材料にカットすることができる。コレット間の全体スペースは、二酸化炭素若しくはネオジウムヤグレーザ装置を用いてパターン化することができる。装置を制御するプログラムは、特定の形状および除去するパターンの符号によって左右される。
【0075】
本発明の支柱組立体を製造するために使用するニッケルチタンの適切な組成は、ニッケルが約55%およびチタンが約45%(重量)であり、その他の痕跡量は組成の約0.5%である。超弾性を達成するためのオーステナイト変態温度は約−15℃と0℃の間にある。オーステナイト温度は、曲げおよび自由回復接線法によって測定される。上側プラトー強度は最低で約60,000psi、最小の極限引張強さは約155,000psiである。(8%の歪を負荷して除荷した後における)永久歪みは約0.5%である。破壊伸率は最低で10%である。理解されるべきことには、本発明に基づいて作られる自己展開ステントと同じ特徴を得るために、他の自己展開合金と同様にニッケルチタンの他の組成を用いることができる。
【0076】
本発明の支柱組立体は、その変態温度が体温より低い(しばしば擬似弾性と呼ばれる)超弾性のニッケルチタン(ニチノール)の管からレーザカットすることができる。ハイポチューブに支柱パターンをカットした後、管材料は所望の最終的な直径において安定するように展開されて熱処理される。熱処理はまた、支柱組立体の変態温度を体温において超弾性であるように制御する。変態温度は、ステントが体温において超弾性であるように体温若しくはそれより低い。支柱組立体は通常、フィルタエレメントを展開された状態に保つために支柱が血管壁に力を負荷するように、展開された状態の支柱組立体の直径より小さい目標とする血管内に移植される。
【0077】
支柱組立体を形成するために本発明にしたがって用いることができる管状ハイポチューブは、外側管状部材および支柱組立体の両方を形成する1つの連続した片とすることができる。本明細書に開示されるいくつかの実施例において、支柱組立体は、支柱パターンを形成するために選択的にカットされるハイポチューブの短い部分から作られるように示されている。その後、支柱組立体の近位端は、接着剤、溶着、ろう付け若しくはハンダ付けのいずれかによって外側管状部材の遠位端に接合される。しかしながら、これらの2つの分離した部分は、本発明の好適な実施例においては単一の管材料部分から形成することができる。
【0078】
本発明の実施例のうちの1つに示されている減衰要素はまた、本明細書に開示されている他の実施例のいずれとも一緒に用いることができる。減衰要素は、図1および図2に示されているように支柱組立体の近位端にカットすることもできるし、他の減衰要素を支柱組立体に取り付けることもできる。例えば、異なる材料若しくは類似した材料から作られている分離したばねは、支柱組立体の端に溶接し、ろう付し若しくはハンダ付けすることができる。また、減衰力を提供するために螺旋形のばねの他に他の減衰材料を用いることができる。例えば、システムの「ショックアブソーバ」として作用するようにエラストマ材料の部分を支柱組立体に接合することができる。
【0079】
外側管状部材は、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金若しくは形状記憶を有する材料等の様々な材料から作ることができる。上述したように、支柱組立体に取り付けられる分離した外側部材を用いるときには、公知の接合方法によって支柱組立体に対して容易にその遠位端を取り付けることができる。外側管状部材の内径は、外側管状部材が同軸配置においてスライドできるように、内側軸部材の外径に対してもちろん匹敵していなければならない。内側軸部材もまた、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金若しくは形状記憶材料から作ることができる。一つの実施例においては、装置がガイドワイヤ上をオーバーザワイヤ法によってスライドすることを許容する、内側管腔を有した内側軸部材が管状の部材として示されている。その他の実施例は、内側軸部材をガイドワイヤ若しくはガイドワイヤに似た軸として示している。一般的に、内側軸部材がガイドワイヤとして用いられるときには、ガイドワイヤが患者の脈管構造内に押し入れられるときに血管に対して傷害を与えることを防止するために、非外傷性のガイドワイヤコイルチップを有するべきである。理解されるべきことは、ガイドワイヤを内側軸部材として利用する実施例においては、このコイルチップがフィルタ組立体のすぐ隣に配置される必要がないということである。フィルタ組立体は、患者の脈管構造に通す際の舵取りを助けるために医師が予め曲げることができるガイドワイヤの短い遠位セグメントを生成するために、コイルチップに対してより一層近位側に配置することができる。
【0080】
また、支柱組立体を生成するために用いることができる管材料若しくはハイポチューブは、ニチノールのようなニッケルチタン合金若しくはその他形状記憶材料とすることができる。支柱組立体を形成するためにステンレス鋼を用いることもまた可能である。支柱組立体はまた、使用の間に装置を展開しもしくは収縮させるのに必要な軸線方向力を与えるために外側管状部材および内側軸部材が用いられる実施例においてさえ、自己展開材料から作ることができる。さらに支柱組立体は、折りたたまれた状態もしくは展開された状態のままとしておくために所望の通りに付勢されることができる。
【0081】
フィルタ要素を作成するために用いることができるポリマ材料はポリウレタンやGortex、商業的に入手可能な材料を含むが、それらには制限されない。その他に考えられる適切な材料はPTFEを含む。材料は、弾性もしくは非弾性であることができる。フィルタ要素の肉厚は、約0.001〜0.005インチとすることができる。肉厚は、選択された特定の材料に応じて変更することができる。材料は、ブロー成形技術を用いてコーンもしくは同じサイズの形に作ることができる。血流のための開口は任意の異なった形状もしくは寸法とすることができる。
【0082】
血流のための開口をフィルタ材料に作成するために、レーザ、加熱された棒若しくはその他のプロセスを用いることができる。孔は、関心事である特定のサイズの塞栓細片を捕えるためにもちろん適切に寸法決めされる。孔はいくつかの類似したパターンと共に脊髄パターン状にレーザ光線で開けることができるが、それはこの装置を閉じる間に濾過物質の再包み込みを助ける。さらにフィルタ材は、折り畳まれた状態に置かれたときにフィルタエレメントをより容易に再び包み込むために、展開バルーンに用いる「セット」と非常に良く似たその内側に置かれる「セット」を有することができる。
【0083】
拘束シースおよび復元シースのために用いることができる材料は、架橋された高密度ポリエチレンのような同様のポリマ材料から作ることができる。あるいは、圧縮された支柱組立体を保持するために充分な強度を有するとともにフィルタ組立体とシースとの間のあらゆる摩擦を最小にするために比較的低い摩擦特性を有する、ポリオレフィンのような材料から作ることができる。摩擦は、シースをフィルタ組立体上に配置する前に、拘束シースの内面にMicroglide(登録商標)のようなシリコーン潤滑剤の被膜を付加することによってさらに減少させることができる。
【0084】
上述したことを考慮すると、本発明のシステムおよび装置が、生成されて患者の血流中に放出される塞栓材料に関連するリスクを大幅に減少させることにより、ある種の介入的な処置を実行する際の安全性を実質的に高めることは明らかである。本明細書に開示されたシステム及び方法に対して、本発明の範囲から逸脱することなしに更なる変更および改善を追加的になすことができる。したがって、添付の請求の範囲による他に、発明が制限されることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】血管内に配設されるとともにその展開可能なフィルタ組立体を拘束シース内において折り畳まれた状態で示す本発明の特長を具現化する塞栓予防装置の部分断面側面図。
【図2】展開可能なフィルタ組立体が血管内で展開している状態を示す図1と同様の部分断面側面図。
【図3】本発明のフィルタ組立体の一部を形成する支柱組立体を折り畳んだ状態で示す斜視図。
【図4】展開可能な支柱組立体のための1つの特有な支柱パターンを示す、図3に示した展開可能な支柱組立体の平らにした切開部分の平面図。
【図5】本発明のフィルタ組立体の一部を形成する展開可能な支柱組立体の他の実施例を、折り畳んだ状態で示す斜視図。
【図6】展開可能な支柱組立体のための代わりの支柱パターンを示す、図5の展開可能な支柱組立体の平らにした切開部分の平面図。
【図7】図7は、ガイドワイヤに回転自在に取り付けられた、図2の展開可能な支柱組立体の部分断面側面図。
【図8】図8は、図2のフィルタ組立体のガイドワイヤにスライド自在に取り付けられた遠位端を示す、要部破断部分断面側面図。
【図9】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例の斜視図。
【図10】図9の塞栓予防装置を作り上げている様々な構成部分の側面図。
【図11】図9の塞栓予防装置を展開された状態で示す側面図。
【図12】図11の塞栓保護装置のフィルタエレメントの破断線12−12に沿った端面図。
【図13】フィルタエレメントを支柱組立体上に保持するために展開可能な支柱組立体の支柱に巻きつける前の状態のフィルタの保持タブを示す、図12のフィルタエレメントの端面図。
【図14】フィルタエレメントを支柱組立体上に保持するために用いることができる保持タブおよび構造部材の代わりの実施例を示す、塞栓予防装置のフィルタエレメントの他の実施例の図12と同様の端面図。
【図15】図15は、フィルタエレメントを支柱組立体上に保持するために展開可能な支柱組立体の支柱に巻きつける前の状態のフィルタの保持タブを示す、図14のフィルタエレメントの端面図。
【図16】図11の濾過装置の中央フィルタの破断線16−16に沿った断面図。
【図17】近位コーン部分のくぼみフラップを展開状態で示す、図11の塞栓予防装置の要部破断部分断面側面図。
【図18】くぼみフラップが装置の中央フィルタの入口開口を閉鎖する折り畳まれた状態で近位コーン部分のくぼみフラップを示す、要部破断部分断面側面図。
【図19】装置が折り畳まれたときにフィルタエレメントの近位コーン部分の入口開口を閉鎖する逆さフラップを有する、本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の斜視図。
【図20】近位コーン部分および逆さフラップを展開された状態で示す、図19の塞栓予防装置の要部破断部分断面側面図。
【図21】近位コーン部分が折り畳まれてフィルタエレメントの近位コーン部分の入口開口を逆さフラップが閉鎖している、図19の塞栓予防装置の要部破断部分断面側面図。
【図22】本発明に基づいて製造されたフィルタエレメントの他の実施例の斜視図。
【図23】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例を作り上げている様々な構成部品の側面図。
【図24】図23の塞栓予防装置を展開された状態で描く側面図。
【図25】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例を作り上げている、様々な構成部品の側面図。
【図26】図25の塞栓予防装置を展開された状態で描く側面図。
【図27】図27は、図25の塞栓予防装置を血管内において折り畳まれた状態で描く部分断面側面図。
【図28】塞栓予防装置が血管内において展開されている、図27と同様の部分断面側面図。
【図29】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例。
【図30】血管内において展開された状態にある、図29の塞栓予防装置の部分断面側面図。
【図31】本発明に基づいて製造された塞栓フィルタ装置の他の実施例。
【図32】血管内に配設されて展開状態にある図31の塞栓フィルタ装置の部分断面側面図。
【図33】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の他の実施例を作り上げている様々な構成部品の側面図。
【図34】図33の塞栓予防装置を展開された状態で描く側面図。
【図35】図25の塞栓予防装置を折り畳まれた状態で描く側面図。
【図36】図34と同様の塞栓予防装置の他の実施例の部分断面側面図。
【図37】支柱組立体の支柱を展開された状態若しくは折り畳まれた状態に動かす2つの展開部材の側面図。
【図38】図34のフィルタ組立体の破断線38−38に沿った端面図。
【図39A】組立体をより低い輪郭に折り畳めるようにした、本発明に基づいて製造された他の支柱組立体を描く側面図。
【図39B】組立体をより低い輪郭に折り畳めるようにした、本発明に基づいて製造された他の支柱組立体を描く側面図。
【図40】図39の支柱組立体における支柱の構造を示す展開側面図。
【図41】本発明に基づいて製造された他のフィルタエレメントを有するフィルタ組立体の他の実施例。
【図42】図41のフィルタ組立体のフィルタエレメントの展開側面図。
【図43】本発明に基づいて製造された塞栓予防装置の実施例に従って利用することができる近位側係止機構の側面図。
【図44】図44は、塞栓予防装置を折り畳まれた状態若しくは展開された状態のいずれかに保つことができる図39の係止機構の付勢ばねを示す部分断面側面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内に放出された塞栓細片を捉えるために折り畳まれた状態と展開された状態との間でフィルタエレメントを動かすための展開可能な支柱組立体であって、
それぞれが第1および第2の端部を有している第1組の支柱と、
それぞれが第1および第2の端部を有している第2組の支柱と、
折り畳まれた状態と展開された状態との間で可動な展開部材と、
を備え、
前記第1組および第2組の支柱の第1の端は、それぞれ前記展開部材に沿った異なる位置で前記展開部材に取り付けられており、
前記展開部材は正弦波のパターンで交互に現れる頂および谷のパターンを有しており、かつ前記第1組の支柱の第1の端部がそれぞれ前記展開部材の谷に取り付けられるとともに前記第2組の支柱の第1の端部がそれぞれ前記展開部材の頂に取り付けられていることを特徴とする展開可能な支柱組立体。
【請求項2】
前記展開部材は、自ら展開することを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項3】
前記第1組の支柱および前記第2組の支柱は、前記展開部材に沿って互い違いのパターンに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項4】
前記第1組の各支柱は、前記第2組の各支柱に対して前記展開部材に沿って互い違いのパターンに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項5】
前記第1組および第2組の支柱の前記第2の端部は、動くことができるカラーに取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項6】
前記展開部材は、第1組および第2組の各支柱と一体であることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項7】
前記展開部材が脈管壁に反力を与えることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項1】
患者の血管内に放出された塞栓細片を捉えるために折り畳まれた状態と展開された状態との間でフィルタエレメントを動かすための展開可能な支柱組立体であって、
それぞれが第1および第2の端部を有している第1組の支柱と、
それぞれが第1および第2の端部を有している第2組の支柱と、
折り畳まれた状態と展開された状態との間で可動な展開部材と、
を備え、
前記第1組および第2組の支柱の第1の端は、それぞれ前記展開部材に沿った異なる位置で前記展開部材に取り付けられており、
前記展開部材は正弦波のパターンで交互に現れる頂および谷のパターンを有しており、かつ前記第1組の支柱の第1の端部がそれぞれ前記展開部材の谷に取り付けられるとともに前記第2組の支柱の第1の端部がそれぞれ前記展開部材の頂に取り付けられていることを特徴とする展開可能な支柱組立体。
【請求項2】
前記展開部材は、自ら展開することを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項3】
前記第1組の支柱および前記第2組の支柱は、前記展開部材に沿って互い違いのパターンに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項4】
前記第1組の各支柱は、前記第2組の各支柱に対して前記展開部材に沿って互い違いのパターンに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項5】
前記第1組および第2組の支柱の前記第2の端部は、動くことができるカラーに取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項6】
前記展開部材は、第1組および第2組の各支柱と一体であることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【請求項7】
前記展開部材が脈管壁に反力を与えることを特徴とする、請求項1に記載の展開可能な支柱組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2007−83089(P2007−83089A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355864(P2006−355864)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【分割の表示】特願2001−549584(P2001−549584)の分割
【原出願日】平成12年12月27日(2000.12.27)
【出願人】(591040889)アドバンスド、カーディオバスキュラー、システムズ、インコーポレーテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED CARDIOVASCULAR SYSTEMS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【分割の表示】特願2001−549584(P2001−549584)の分割
【原出願日】平成12年12月27日(2000.12.27)
【出願人】(591040889)アドバンスド、カーディオバスキュラー、システムズ、インコーポレーテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED CARDIOVASCULAR SYSTEMS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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